タイトル: | 特許公報(B2)_光学活性カルボニル化合物の調製方法 |
出願番号: | 2010504637 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 45/62,C07C 47/21,C07C 49/403,C07C 35/12,C07C 29/17,C07B 53/00,C07B 61/00 |
シュミット−ライトホフ,ヨアヒム ジェーケル,クリストフ パシエロ,ロッコ JP 5479320 特許公報(B2) 20140221 2010504637 20080417 光学活性カルボニル化合物の調製方法 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 508020155 BASF SE 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 新井 栄一 100122389 シュミット−ライトホフ,ヨアヒム ジェーケル,クリストフ パシエロ,ロッコ EP 07106922.3 20070425 20140423 C07C 45/62 20060101AFI20140403BHJP C07C 47/21 20060101ALI20140403BHJP C07C 49/403 20060101ALI20140403BHJP C07C 35/12 20060101ALI20140403BHJP C07C 29/17 20060101ALI20140403BHJP C07B 53/00 20060101ALI20140403BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140403BHJP JPC07C45/62C07C47/21C07C49/403C07C35/12C07C29/17C07B53/00 BC07B61/00 300 C07C 45/ C07C 47/ C07C 29/ C07C 35/ CA/REGISTRY(STN) 国際公開第2006/040096(WO,A1) 特開昭54−014911(JP,A) 特開昭52−078812(JP,A) 18 EP2008054644 20080417 WO2008132057 20081106 2010525008 20100722 29 20110413 井上 典之 本発明は、反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において、α,β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化することによって光学活性カルボニル化合物を調製する方法に関する。特に本発明は、一酸化炭素の存在下において、対応する光学活性α,β−不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって光学活性アルデヒドまたはケトン(特にシトロネラール)を調製する方法に関する。 多くの光学活性アルデヒドおよびケトンは、有用な活性成分の高度にアップグレードされたキラル物質の合成に有用な中間体を構成すると共に、多くの場合、それ自体が需要の多いフレグランスおよびアロマでもある。 特許文献1は、ロジウムおよびキラルホスフィンから成り、反応系に溶解する触媒錯体の存在下において、ゲラニアールまたはネラールを水素化することによって光学活性シトロネラールを調製する方法に関する。 T.−P. Dangらは、α,β−不飽和アルデヒドの均一系触媒水素化と、その方法を光学活性シトロネラールの調製に使用することについて、非特許文献1に開示している。使用されている触媒は、ロジウムカルボニルとキラルジホスフィンからなる錯体であった。 また、Chapuisらは、非特許文献2に、Rh4(CO)12および(R,R)−キラフォス(chiraphos)(すなわち(2R,3R)−2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)からなる触媒の存在下における、ゲラニアールまたはネラールの光学活性シトロネラールへの不斉水素化を記載している。 可溶性触媒による(均一系)触媒反応を実施する場合、使用する触媒錯体または触媒的に活性な金属もしくはそれから生じる遷移金属錯体の安定性が不十分であることが多いという問題がある。かかる触媒または触媒前駆体は多くの場合高価であることから、複合遷移金属触媒による均一系触媒反応は、特定の場合においてのみ、経済的に実行可能な方法の工業規模で用いられ得る。 特許文献2には、トリアリールホスフィン、化学量論的量の第3級アミン、および一酸化炭素の存在下で、ヒドロホルミル化条件下において、均一なRh触媒によってα,β−不飽和アルデヒド(例えば、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒドまたはα−メチルシンナムアルデヒド)を水素化する方法が記載されている。 特許文献3には、反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において、α,β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化することによって光学活性カルボニル化合物を調製する方法であって、一酸化炭素および水素を含む気体混合物で触媒を前処理するステップ、および/または前記反応混合物に追加供給される一酸化炭素の存在下で不斉水素化を行うステップを含む、上記方法が記載されている。 しかし、一酸化炭素および水素を含む気体混合物で触媒を前処理し、反応混合物に追加供給される一酸化炭素の存在下で後続の水素化を行なうような方法で反応を実施する場合、水素化中に反応混合物の一酸化炭素濃度を調節するのは難しいことが多い。さらに、一般に前処理は、不斉水素化に比べて非常に高濃度の一酸化炭素を使用して行われるため、触媒の前処理に由来する多量の一酸化炭素が水素化へ混入し、そこで悪影響を及ぼす可能性がある。EP−A 0 000 315JP−A 52078812WO 2006/040096J. Mol. Cat. 1982, 16, 51−59Helv. Chim. Acta 2001, 84, 230−242, 脚注4 したがって、本発明の目的は、前述のWO 2006/040096に記載されている方法を、それぞれのステップに関して、触媒の前処理および不斉水素化の実施を各場合の最適な一酸化炭素濃度という方法技術の視点から簡単な手法で行うことができるという効果を得られるように改良することである。さらに、かかる改良方法では、不斉水素化を実質的に一定の一酸化炭素濃度で行うことができるはずである。 本目的は、反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において、α,β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化することによって光学活性カルボニル化合物を調製する方法において、少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有し、かつ各場合で使用される前記光学活性触媒が一酸化炭素および水素を含む気体混合物で触媒前駆体を前処理することにより調製され、前記不斉水素化が反応混合物に追加供給される一酸化炭素の存在下で行われる方法であって、a) 20〜90容量%の一酸化炭素、10〜80容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物(ここで、前述の容量比は5〜100barの圧力下で合計100容量%とする)で触媒前駆体の前処理を行うステップと、b) そのようにして得られた触媒から、過剰の一酸化炭素を不斉水素化で使用する前に除去するステップと、c) 水素の存在下での不斉水素化を含有量100〜1200ppmの一酸化炭素を用いて行うステップとを含む、前記方法を提供することにより達成される。 本発明による方法は、カルボニル基に対してα,β位にエチレン性二重結合を有する対応するカルボニル化合物を、非対称的に(すなわち、エナンチオ選択的に)水素化することによって、光学活性カルボニル化合物(例えば、アルデヒド、ケトン、エステル、ラクトンまたはラクタム)を調製するのに適している。本発明によれば、反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素(すなわち、CO)リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下にて、カルボニル基に対してα,β位にあるエチレン性二重結合に水素化を行って炭素−炭素単結合を生じさせるが、β位に新たに作られた四面体の炭素原子は非対称的に置換されており、非ラセミ体で得られる。したがって、本発明の内容においては、「不斉水素化」という用語は、水素化生成物の2種の鏡像異性体が同じ割合で得られない水素化を意味するものと理解されたい。 少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有し、かつ各場合に使用される光学活性触媒を調製するためには、一酸化炭素および水素を含む気体混合物により触媒前駆体の前処理を行なう。本発明の不斉水素化は、反応混合物に追加供給される一酸化炭素の存在下で行なわれる。 本発明による方法は、20〜90容量%の一酸化炭素、10〜80容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物(ここで、前述の容量比を5〜100barの圧力下で合計100容量%とする)で前述の触媒前駆体の前処理を行うステップと、そのようにして得られた触媒から、過剰の一酸化炭素を不斉水素化で使用する前に除去するステップと、水素の存在下での不斉水素化を含有量100〜1200ppmの一酸化炭素を用いて行うステップとを含む。 反応混合物中において可溶性であり、かつ本発明により用いられるべき遷移金属触媒は、少なくとも、触媒サイクルを通過する形態で、または実際の触媒サイクルに先行する形態で、少なくとも1個のCOリガンドを有するが、少なくとも1個のCOリガンドを有するこの触媒形態が、実際の触媒的に活性な触媒形態を構成するか否かは重要ではない。本発明による方法では、少なくとも1個のCOリガンドを有する触媒形態は、反応混合物に追加供給される一酸化炭素によって、有利な手法で安定化される。 本発明による方法は、式(I):(式中、 R1、R2の基は、それぞれ1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個のエチレン性二重結合ならびに/または置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R3と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、ただし、R1とR2は異なるものであり、 R3の基は、水素、または1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個のエチレン性二重結合ならびに/または置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であるか、あるいはOR7またはNR8R9であり、 ここで、 R4、R5、R6は、それぞれ独立して、水素、C1-C6-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであり、 R5とR6は一緒になって、NまたはOによって中断されていてもよい、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよく、 R7は、1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数のエチレン性二重結合ならびに置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R1またはR2と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 R8は、1〜25個の炭素原子を有し、かつ場合によっては、1個または複数個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1または2個のエチレン性二重結合、ならびに置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個または複数個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1または2個の同一または異なる置換基を有していてもよい、非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R1、R2またはR9と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 R9は、水素、C1-C6-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであるか、あるいはR8と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 *は、不斉炭素原子を示す)で表わされる光学活性カルボニル化合物を、式(II):(式中、R1〜R3の基は、それぞれ上で定義した通りである)で表わされるα,β−不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって調製するのに特に適している。 本発明の内容においては、以下の定義は、記載した置換基または基の例示として表わしたものである。 C1-C6-アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピルまたは1-エチル-2-メチルプロピルである。 C6-C10-アリールは、例えば、フェニルまたはナフチルである。 C7-C12-アラルキルは、例えば、フェニルメチル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピルまたは3-フェニルプロピルである。 C3-C9-ヘタリールは、例えば、2-フリル、3-フリル、2-ピロリル(pyrroyl)、3-ピロリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリルである。 C7-C12-アルキルアリールは、例えば、1-メチルフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、1-エチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、1-プロピルフェニル、2-プロピルフェニル、3-プロピルフェニル、1-イソプロピルフェニル、2-イソプロピルフェニル、3-イソプロピルフェニル、1-ブチルフェニル、2-ブチルフェニル、3-ブチルフェニル、1-イソブチルフェニル、2-イソブチルフェニル、3-イソブチルフェニル、1-sec-ブチルフェニル、2-sec-ブチルフェニル、3-sec-ブチルフェニル、1-tert-ブチルフェニル、2-tert-ブチルフェニル、3-tert-ブチルフェニル、1-(1-ペンテニル)フェニル、2-(1-ペンテニル)フェニル、3-(1-ペンテニル)フェニル、1-(2-ペンテニル)フェニル、2-(2-ペンテニル)フェニル、3-(2-ペンテニル)フェニル、1-(3-ペンテニル)フェニル、2-(3-ペンテニル)フェニル、3-(3-ペンテニル)フェニル、1-(1-(2-メチルブチル))フェニル、2-(1-(2-メチルブチル))フェニル、3-(1-(2-メチルブチル))フェニル、1-(2-(2-メチルブチル))フェニル、2-(2-(2-メチルブチル))フェニル、3-(2-(2-メチルブチル))フェニル、1-(3-(2-メチルブチル))フェニル、2-(3-(2-メチルブチル))フェニル、3-(3-(2-メチルブチル))フェニル、1-(4-(2-メチルブチル))フェニル、2-(4-(2-メチルブチル))フェニル、3-(4-(2-メチルブチル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、1-(1-ヘキセニル)フェニル、2-(1-ヘキセニル)フェニル、3-(1-ヘキセニル)フェニル、1-(2-ヘキセニル)フェニル、2-(2-ヘキセニル)フェニル、3-(2-ヘキセニル)フェニル、1-(3-ヘキセニル)フェニル、2-(3-ヘキセニル)フェニル、3-(3-ヘキセニル)フェニル、1-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニルである。 本発明の内容においては、ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素、塩素または臭素を意味する。 したがって、本発明による方法は、例えば、光学活性形態の例として示した以下の式(I-1)〜(I-25)で表される化合物の調製に好適である。 本発明による方法は、特に、α,β-不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって、光学活性アルデヒドまたはケトンを調製するのに適している。したがって、下記式(I'):(式中、 R1'、R2'は、それぞれ、R1およびR2について上で定義した通りであってもよく、 R3'は、水素、または1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個のエチレン性二重結合ならびに/またはOR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリール置換基からなる群から選択される1個または複数個、一般に1〜約5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1もしくは2個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R1'またはR2'と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 ここで、R4、R5およびR6は、それぞれ、上で定義した通りであってもよい)で表される光学活性化合物を、式(II')(式中、R1'〜R3'の基は、それぞれ、上で定義した通りである)で表されるα,β-不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって調製するのに特に適している。 本発明による方法は、好ましくは、カルボニル基に対してβ位にメチル基を有する式(III):(式中、 R10は、2〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1または2個のエチレン性二重結合を有していてもよい非分岐状または分岐状アルキル基であり、 *は、不斉炭素原子を示す)で表わされる光学活性アルデヒドを、式(IV)または(V):(式中、R10の基は、上で定義した通りである)で表されるα,β-不飽和アルデヒドを不斉水素化することによって調製するのに適している。 本発明に従って光学活性形態で調製することができる式(I')または(III)で表されるアルデヒドまたはケトンの例としては、以下の化合物が挙げられる。 本発明によれば、式(III)のアルデヒドは、式(IV)または(V)の対応するα,β-不飽和アルデヒドを、非対称的に(すなわちエナンチオ選択的に)水素化することによって得ることができる。式(IV)および(V)の化合物は、互いのE/Z-二重結合異性体を構成する。原則的に、式(III)で表される光学活性アルデヒドは、式(IV)および(V)の両方の二重結合異性体から得ることができる。触媒の鏡像異性体の選択に応じて、すなわち、触媒の(+)-または(-)-鏡像異性体の選択、および用いられるキラルリガンドの(+)-または(-)-鏡像異性体の選択に応じて、光学活性アルデヒドの鏡像異性体のうちの一方を、本発明の方法において使用するE-またはZ-二重結合異性体から優先的に得ることができる。これは、前述の基質または生成物のクラスにも当てはまる。原則的に、本発明の方法においては、2種の二重結合異性体の混合物を変換することも可能である。このようにして、所望の標的化合物の2種の鏡像異性体の混合物が得られる。 本発明による方法は、好ましくは、式(VI):で表される光学活性シトロネラールを、式(VII)で表されるネラールまたは式(VIII)で表されるゲラニアール:を不斉水素化することによって調製するのに好適である。 本発明の方法においては、ゲラニアールおよびネラールの混合物を変換することも可能であり、この場合、上記のように、D-およびL-シトロネラールの混合物が存在し、これらは光学活性であるが、それは2種の鏡像異性体が混合物中に同じ割合で存在しない場合である。 本発明による方法において特に好ましいのは、ネラールまたはゲラニアールの不斉水素化によるD-シトロネラールの調製である。 本発明の調製方法は、反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において実施される。 かかる触媒は、例えば、反応混合物中において可溶性である少なくとも1種の好適な遷移金属化合物を、少なくとも1個のリン原子および/またはヒ素原子を有する光学活性リガンドと反応させることにより得ることができる。 好ましい遷移金属化合物は、元素周期表のVIII族の遷移金属であり、特にRu、Rh、Pd、IrおよびPtである。本発明において特に好ましい元素周期表のVIII族の遷移金属は、RhおよびIrである。 上記遷移金属の好適な化合物は、特に、選択した反応溶媒中において可溶性である化合物であり、例えば、適したリガンド、例えば、カルボニル、アセチルアセトネート、ヒドロキシル、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、メトキシ、アセチルまたは他の脂肪族もしくは芳香族カルボキシレートを有する塩または錯体である。本発明による方法において好ましい遷移金属化合物は、Rh(I)およびRh(III)およびRh(0)化合物、Ir(I)、Ir(III)、Ir(IV)およびIr(0)化合物、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)およびRu(0)化合物、Pd(II)、Pd(IV)およびPd(0)化合物、ならびにPt(II)、Pt(IV)およびPt(0)化合物である。少なくとも1個のCOリガンドを予め有するこれらの遷移金属化合物が好ましい。さらに、本発明による方法において、COリガンドを有さない遷移金属化合物を、本発明に従い使用される触媒を調製するための開始化合物として使用することもできる。これらは、場合によって本発明により実施される得る前形成(preformation)の条件、または本発明の水素化条件下において、一酸化炭素を加えることによって所望の触媒へと変換される。 本発明により使用され得る遷移金属化合物の例としては、RhCl3、Rh2(OAc)4、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16またはIr4(CO)12、[Ir(cod)Cl]2である。ここで「acac」は、アセチルアセトネートリガンドであり、「cod」はシクロオクタジエンリガンドである。 前述の遷移金属化合物および錯体およびさらなるそれらの例は公知であり、文献に十分に記載されているか、既知の化合物と同様にして当業者により調製され得る。 本発明によれば、前述の遷移金属化合物は、水素化される基質の量に対して一般的に約0.01〜約1モル%、好ましくは約0.05〜約0.5モル%、特に約0.02〜約0.2モル%(存在する遷移金属原子に基づく)の量で用いられる。 連続的な条件下で実施される反応の場合、本発明に係る均一系触媒の前駆体として用いられる遷移金属化合物の量の水素化される基質の量に対する割合は、有利には、約100ppm〜10000ppmの範囲、特に約200ppm〜5000ppmの範囲で触媒濃度が維持されるように選択される。 本発明によれば、光学活性であり、好ましくは実質的に鏡像異性的に純粋であり(すなわち、少なくとも約99%の鏡像異性体過剰率を有する)、かつ少なくとも1個のリン原子および/またはヒ素原子、好ましくは少なくとも1個のリン原子を有する、さらなる化合物と前述の遷移金属化合物とを接触させる。キラルリガンドと呼ばれるこの化合物は、反応混合物中において、または用いられる遷移金属化合物との前形成混合物中において、本発明により用いられる遷移金属触媒を形成する。 特に好ましいのは、2個のリン原子を有し、かつ用いられる遷移金属とキレート錯体を形成する、これらのキラルリガンドである。 本発明の内容における好適なキラルリガンドは、例えば、I. Ojima (編)、Catalytic Asymmetric Synthesis, Wiley-VCh, 第2版(2000)またはE. N. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto (編)、Comprehensive Asymmetric Catalysis, 2000, SpringerまたはW. Tang, X. Zhang、Chem. Rev. (2003), 103, 3029-3069に記載されているようなこれらの化合物である。 本発明により好ましく用いることができるキラルリガンドの例としては、以下の化合物が挙げられる。 さらに、本発明により用いることができるキラルリガンドの例としては、以下の化合物が挙げられる。 これらの構造において、「Ph」はフェニルを意味し、「Cy」はシクロヘキシルを意味し、「Xyl」はキシリルを意味し、「Tol」はp-トリルを意味し、「Bn」はベンジルを意味する。 本発明による特に好ましいリガンドは、構造式(1)〜(13)、および(37)、(38)、(41)、(43)、(49)、(50)、(51)、(52)、(65)、(66)、(67)、(68)、(69)、(71)、(72)、(73)、(74)、(75)、(83)、(84)、(85)、(86)、(87)のリガンドである。 特に好ましいリガンドは、一般式(IX)〜(XI):(式中、 R11、R12は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個、一般に1〜約4個のエチレン性二重結合ならびに/またはOR19、NR20R21、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリール置換基からなる群から選択される1個もしくは複数個、一般に1〜約4個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R11とR12は一緒になって、1個または複数個、一般に1または2個の酸素原子を含んでいてもよい4員〜20員環を形成していてもよく、 R13、R14は、それぞれ独立して、水素または直鎖もしくは分岐状のC1-C4-アルキルであり、 R15、R16、R17、R18は、それぞれ、C6-C10-アリールであり、それぞれ場合、場合によっては、C1-C4-アルキル、C6-C10-アリール、C1-C4-アルコキシおよびアミノ置換基からなる群から選択される1個または複数個、一般に1〜8個、好ましくは1〜4個の置換基を有していてもよく、 R19、R20、R21は、それぞれ独立して、水素、C1-C4-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであり、 また、R20、R21は、一緒になって、2〜5個の炭素原子を有し、NまたはOによって中断されていてもよいアルキレン鎖であってもよい)で表されるものである。 本発明による方法において特に好ましいリガンドは、一般式(IX)で表されるリガンドであり、特に、これ以降「キラフォス(chiraphos)」と称する式(1)の化合物である。 本発明によれば、選択されるキラルリガンドは、それらの2種の鏡像異性体の形態でそれぞれ用いることができる。本発明による極めて特に好ましいリガンドは、(R,R)-キラフォス(ent-(1))である。 2個のリン原子を有するキラルリガンドを使用する場合、有利には、これらは、用いる遷移金属化合物中に存在する金属1molにつき、約1〜約10mol、好ましくは約1〜約4mol、最も好ましくは1〜2molの量で用いる。 少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを含む実際の前触媒は、水素と一酸化炭素の混合物を下記のように組み合わせ、続いて前処理することによって、選択した遷移金属化合物および選択したキラルリガンドから得ることができる。 少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有し、かつ各場合に用いられる光学活性触媒を調製するためには、本発明による方法のステップa)において、20〜90容量%の一酸化炭素、10〜80容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物で触媒前駆体を前処理するが、この場合、前述の容量比は5〜100barの圧力下で合計100容量%とする。またこの前処理は、これ以降、本発明全体において、前形成(preformation)とも称する。 「触媒前駆体」という用語は、上で示した反応混合物中において可溶性である少なくとも1種の遷移金属化合物を、上で示した少なくとも1個のリン原子および/またはヒ素原子を有する光学活性リガンドと接触または反応させることにより得ることができる化合物を意味するものと理解されたい。 前形成を行うには、選択した遷移金属化合物および選択したキラルリガンド、また所望により不斉水素化される基質を、一般には、反応条件下で不活性な好適な溶媒または溶液媒体、例えば、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン、オクタデカノール、ビフェニルエーテル、Texanol、Marlotherm(登録商標)、Oxooel 9N(異性体オクテンから形成されるヒドロホルミル化生成物、BASF Aktiengesellschaft)などに溶解する。また用いられる溶液媒体は、変換される基質、反応によって生じる生成物または高沸点副産物であってもよい。得られた溶液に、上記のような水素および一酸化炭素を含む気体混合物を、有利には、好適な圧力リアクターまたはオートクレーブ中にて、5〜100bar(絶対圧)、好ましくは10〜100bar、さらに好ましくは20〜95barの圧力で、特に好ましくは50〜90barの圧力で(各場合において絶対圧)注入する。 本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップa)の前形成は、30〜70容量%の一酸化炭素、30〜70容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物で(この場合、前記容量比は合計100容量%とする)、最も好ましくは、30〜60容量%の一酸化炭素、40〜70容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物で、とりわけ好ましくは、40〜60容量%の一酸化炭素、40〜60容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物で(これら場合、いずれの場合にも前記容量比は合計100容量%とする)実施する。 前形成にとって特に好ましい気体混合物はいわゆる合成ガスであって、これは、一般的には約35〜55容量%の範囲の一酸化炭素と約45〜65容量%の水素からなり、微量のさらなる気体を含む場合と含まない場合がある。 本発明に係る触媒の前形成は、一般的には、約25℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約80℃、さらに好ましくは50〜70℃の温度にて行われる。前形成を不斉水素化すべき基質の存在下で行う場合、有利には、水素化する二重結合に問題となる程度の異性化が生じないように温度を選択する。前形成は、一般的には、約1〜約24時間後、多くの場合、約1〜約12時間後に完了する。 使用される遷移金属触媒またはその前駆体の前形成の後、本発明による方法のステップb)において、不斉水素化で使用する前に、前述の気体混合物による前形成または前処理で得られた触媒から過剰の一酸化炭素を除去する。 「過剰の一酸化炭素」という用語は、ステップa)での前形成によって得られた反応混合物中に気体形態または溶解形態で存在し、かつ遷移金属触媒またはその前駆体に結合してはいない一酸化炭素を意味するものと理解されたい。したがって、触媒に結合されていない過剰の一酸化炭素は、少なくとも実質的に、すなわち、溶解している一酸化炭素の全残存量が後続の水素化において著しく問題となる状況を作りださないような程度にまで除去される。一般に、本発明による方法のステップb)において、前形成に使用される一酸化炭素の約90%、好ましくは約95%以上を除去するのが確実である。本発明による方法のステップb)においては、前形成によって得られた触媒から過剰の一酸化炭素を完全に除去することが好ましい。 過剰の一酸化炭素は、ステップa)において得られた触媒から除去することができるか、あるいは本発明による方法のステップb)において各種方法で触媒含有反応混合物から除去することができる。好ましいのは、ステップa)における前形成によって得られた触媒または触媒含有混合物を5bar(絶対圧)以下の圧力まで減圧するのが好ましく、とりわけ好ましくは、5〜10barの範囲の圧力で、5bar(絶対圧)未満の圧力に、好ましくは約1bar〜約5barの範囲の圧力に、好ましくは1〜5bar未満、さらに好ましくは1〜3barの範囲の圧力に、よりさらに好ましくは約1〜2barの範囲の圧力に、とりわけ好ましくは標準気圧に減圧し、未結合で気体状の一酸化炭素が前形成の生成物から除去されるようにするのが好ましい。 前述の前形成した触媒の減圧は、例えば、当業者にはそれ自体は公知の高圧セパレーターを使用することによって行うことができる。液体が連続相にあるようなかかるセパレーターは、例えば、Perry's Chemical Engineers' Handbook, 1997, 第7版, McGraw-Hill, p. 14.95および14.96に記載されており、14.87〜14.90ページには可能性のある液滴混入の防止について記載されている。前形成した触媒は、1bar〜5barの範囲の所望の圧力に達するまで、1段階または2段階で減圧することが可能であり、その間に、一般的には温度が10〜40℃まで下がる。 別法として、ステップb)における過剰の一酸化炭素の除去は、気体による(有利には反応条件下での不活性ガスによる)触媒または触媒含有混合物のいわゆるストリッピング(stripping)によって達成することもできる。「ストリッピング」という用語は、例えば、W. R. A. Vauck, H. A. Muller, Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik [Basic Operations in Chemical Process Technology], Deutscher Verlag fur Grundstoffchemie Leipzig, Stuttgart, 第10版, 1984, 800ページに記載されているように、触媒または触媒含有反応混合物へ気体を導入することを意味することは当業者には理解されよう。この目的に適した不活性ガスの例としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素および/またはCO2、好ましくは水素、窒素、アルゴンが挙げられる。 ステップa)において前形成し、ステップb)において触媒の過剰の一酸化炭素を除去した後、本発明による方法のステップc)において、選択した基質の不斉水素化を含有量100〜1200ppmの一酸化炭素により水素の存在下で行なう。 不斉水素化の反応混合物へさらなる一酸化炭素を添加するには、様々な方法によって試みることができる。例えば、不斉水素化に使用される水素に一酸化炭素を加えてもよいし、あるいは、反応溶液へ気体形態で直接計量しながら供給することができる。さらなる例としては、一酸化炭素を容易に放出する化合物(例えば、ホルメートまたはオキサリル化合物)を反応混合物に加えることもできる。 本発明による方法の好ましい実施形態では、用いる水素中の一酸化炭素の割合は、約300〜1000ppm、さらに好ましくは400〜800ppmである。 本発明に係る不斉水素化は、約1〜約300bar、好ましくは約10〜約100bar、特に約50〜約100bar、さらに好ましくは約60〜約100barの圧力で、一般的には、約0℃〜約100℃、好ましくは約0℃〜約30℃、特に約10℃〜約30℃の温度にて行うのが有利である。 本発明に係る不斉水素化を行うために用いられる溶媒の選択は重要ではない。好適な溶媒は、例えば、本発明に係る前形成の実施(performance)に関して明記されている溶媒である。不斉水素化は、事前に実施したあらゆる前形成と同一の溶媒中で実施するのが特に有利である。 本発明に係る不斉水素化を行うのに適した反応槽は、原則的には、指定した条件(特に、圧力および温度)下での反応を可能とするもの全てのものであって、かつ水素化反応に適したもの、例えば、オートクレーブ、管型反応装置、気泡塔などである。 本発明による方法のステップc)における水素化を高沸点の一般に粘着性の溶媒、例えば、本発明による方法のステップa)における触媒の前処理での使用に関して上述したような溶媒(例えば、前述のオクタデカノール、ビフェニルエーテル、Texanol、Marlotherm、Oxooel 9Nなどの溶媒類)を使用して行う場合、あるいは、水素化を溶媒は追加使用しないが高ボイラー(high boilers)の貯留で行う場合(これは、多少、副生成物(例えば、反応物または生成物の反応および次段階の変換反応などによって形成される二量体または三量体)の形成がある)、気体の良好な導入ならびに気体相および凝縮相の良好な混合が確実に行われるようにすることが有利であろう。これは、例えば、本発明による方法の水素化ステップを気体循環リアクター中で行なうことにより可能である。気体循環リアクターはそれ自体は当業者に公知であり、例えば、P. Trambouze, J.-P. Euzen, Chemical Reactors, Technip編, 2004, p. 280-283、およびP. Zehner, R. Benfer, Chem. Eng. Sci. 1996, 51, 1735-1744、ならびに、例えばEP 1 140 349に記載されている。 上記のような気体循環リアクターを使用する場合、用いる気体または気体混合物(一酸化炭素を含有する水素)のリアクターへの導入を、1本のノズルまたは2本の物質ノズルによって、リアクターに導入される反応物と、および/または循環する反応混合物と、または触媒と平行して行うのが特に有利であることが分かった。これに関し、リアクターへ導入される液体および気体が2本の別々の内部チューブを圧力下でノズル開口部まで通過し、そこで互いに混合されることが重要である。 本発明による方法は、第三級アミンの添加の有無にかかわらず、良好に行うことができる。好ましくは、本発明による方法を、追加の第三級アミンが存在しない状態で(すなわち、追加の第三級アミンを添加しないで)行うか、あるいは、触媒量だけの追加の第三級アミンの存在下にて行う。使用するアミンの量は、使用する金属の量に対して0.5〜500モル当量であってもよいが、好ましくは、使用する金属の量に対して1〜100モル当量である。第三級アミンの選択は重要ではない。また、短鎖アルキルアミン類(例えばトリエチルアミン)の他に、長鎖アルキルアミン類(例えばトリドデシルアミン)を使用することもできる。好ましい実施形態では、本発明による水素化方法は、使用する遷移金属の量に対して約2〜30モル当量、好ましくは約5〜20モル当量、さらに好ましくは5〜15モル当量の第三級アミン、好ましくはトリドデシルアミンの存在下で行う。 有利には、この反応は、反応混合物中に標的化合物が所望の生成量で、かつ所望の光学活性(すなわち、所望の鏡像異性体過剰率(ee)を有する)で存在していることが、当業者による通常の分析(例えば、クロマトグラフィー法)によって判断された場合に終了する。一般に、水素化は、約1〜約150時間、多くの場合、約2〜約24時間後に完了する。 本発明による方法により、光学活性カルボニル化合物、特に光学活性なアルデヒドを高い収率及び鏡像異性体過剰率で得ることに成功する。一般に、所望の不斉水素化化合物は、少なくとも80%ee、多くの場合、約85〜約99%eeの鏡像異性体過剰率で得られる。達成可能な最大鏡像異性体過剰率は、用いる基質の純度、特に、水素化される二重結合の異性体純度による点に留意されたい。 したがって、好適な開始物質は、特に、E/Z 二重結合異性体に関して、異性体の割合が少なくとも約90:10、好ましくは少なくとも約95:5のものである。 本発明による方法は、用いる均一系触媒が、反応系に追加導入される一酸化炭素によって安定化される点で注目に値する。かかる一酸化炭素は、第1に触媒の寿命を有意に増し、第2に均一系触媒の再利用を可能にする。 例えば、得られた反応生成物は、それ自体は当業者に公知の方法により、例えば蒸留により(例えば微細薄膜蒸発器、Sambaysなどにより)反応混合物から取り出すことができ、残存する触媒は、適切な場合には、前記のような前形成を繰り返した後、さらなる反応に用いることができる。 したがって、本発明による方法は、バッチ式、半連続式、または連続式で行うことが可能であり、特に工業規模での反応に好適である。好ましいのは、本方法を連続式で行なうものである。 ステップa)において本発明により行なわれる触媒前駆体の前処理(前形成)およびステップc)における実際の不斉水素化は、別々の反応槽中で行なうのが有利である。実際の水素化リアクター(例えば、上記のような気体循環リアクター)に前形成した触媒を移したら、その後、例えば、前形成で使用した圧力を放つことにより、過剰の一酸化炭素を触媒から除くことができる。 また水素化は、直列に接続されている複数の(好ましくは2または3つの、さらに好ましくは2つの)水素化リアクター中で行うこともできる。同一または異なるタイプのリアクターを使用することができる。好ましい実施形態では、例えば、一連の2つの気体循環リアクター中で不斉水素化を行なう。その場合、1つがメインリアクターとして作動し、2つ目が後続リアクター(postreactor)として作動する。反応混合物をメインリアクターから後続リアクターに移すには、例えば、所望により圧力勾配を利用することによって達成することができる。 本発明による方法の特に好ましい実施形態において、約5モル%以下、好ましくは約2モル%以下の特定の二重結合異性体を含むネラールまたはゲラニアール(好ましくはネラール)を光学活性なシトロネラールに変換する。触媒を形成するためには、好ましくは、反応混合物中において可溶性であるロジウム化合物、特にRh2(OAc)4、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12またはRh6(CO)16および、ロジウムに対して約1:1〜約1:4のモル比のキラルリガンドとしての(R,R)-キラフォス(chiraphos)または(S,S)-キラフォス(chiraphos)(それぞれ、(2R,3R)-(+)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンまたは(2S,3S)-(-)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)を用いる。本発明による方法の特に好ましい実施形態において、約5モル%以下、好ましくは約2モル%以下を含むネラールを、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12またはRh6(CO)16および(R,R)-キラフォス(chiraphos)の存在下で、D-シトロネラールに変換する。 本発明による方法の好ましい実施形態においては、追加の溶媒を使用せず、上記反応が溶液媒体としての、変換される基質または生成物中および適切な場合には高沸点副産物中で行われる。特に好ましいのは、本発明により安定化された均一系触媒を再利用またはリサイクルすることによって連続反応を行うことである。 本発明のさらなる態様は、本発明による方法により調製された光学活性シトロネラールを用いて光学活性メントールを調製する方法に関する。光学活性シトロネラールより開始する光学活性メントールの調製法は知られている。ここでの重要なステップは、例えば、EP-A 1 225 163に記載のように、光学活性イソプレゴールへの光学活性シトロネラール環化である。 本発明により調製される光学活性シトロネラールは、式(XIII)のL-メントールの調製について以下に図示したように、好適な酸、特にルイス酸の存在下で式(XII)のL-イソプレゴールに環化され、その後当業者に公知の方法によって、例えばJ. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 5208-5217またはSynthesis 1991, 665-680に記載されている触媒水素化によって、L-メントールに水素化される。 したがって、本発明のさらなる態様は、 i) 本発明による上記方法において、光学活性シトロネラールを調製するステップと、 ii) そのようにして調製された光学活性シトロネラールをルイス酸の存在下で光学活性イソプレゴールに環化するステップと、 iii) そのようにして調製された光学活性イソプレゴールを光学活性メントールに水素化するステップとを含む、光学活性メントールの調製方法に関する。 この種の好ましい実施形態においては、ステップi)において、ゲラニアールまたはネラール(好ましくはネラール)の本発明に係る水素化によりR-シトロネラールが調製され、ステップii)において、そのようにして得られたR-シトロネラールがL-イソプレゴールへ環化され、ステップiii)において、そのようにして得られたL-イソプレゴールがL-メントールへ水素化される。 以下の実施例は本発明を例示するものであって、いかなる場合においても本発明を限定するものではない。 実施例1 前形成後にCO含有量を減量調整するcis-シトラールの連続的不斉水素化 総量10.4gのRh(CO)2acacおよび総量34.5gの(R,R)-キラフォスを含むトルエン(660ml)の溶液を連続系に充填した。気体混合物は、圧力80barおよび温度60℃の前形成リアクター中で、水素と一酸化炭素の比(H2:CO)を1:1に調節した。前形成リアクターの流出を高圧セパレーター中で標準気圧に減圧し、次いで、水素化リアクター中で80barまで加圧した。水素化リアクター中で、20℃にて158 l(STP)/hのH2を(400ppmのCOと一緒に)導入したところ、水素化リアクターのオフガス中でCO値が550ppmとなった。 含有量98重量%のcis-シトラール(ネラール)を100g/hの供給量で、当該系の含有量が実質的に一定に維持されるように、生成物を含有する画分を減圧下で連続的に蒸留した。これらの設定で、8日間の間にD-シトロネラールが110.9mol(17.1kg)単離された。D-シトロネラールの収率は、用いたcis-シトラールに対し93%であった。 比較例 前形成中のCO濃度を減少させ、前形成後にCO含有量を減少させない場合のcis-シトラールの連続的不斉水素化 総量10.4gのRh(CO)2acacおよび総量34.5gの(R,R)-キラフォスを含むトルエン(660ml)の溶液を連続系に充填した。前形成リアクター中の気体混合物は、圧力105barおよび温度60℃で、H2:COの比を90:10(35.1 l (STP)/h)に調節した。前形成リアクターの流出は、先行して減圧は行なわず、水素化リアクター中で直接80barに減圧した。水素化リアクター中で、20℃にて150 l(STP)/hのH2を導入したところ、水素化リアクターのオフガス中でCO値が約800ppmとなった。 含有量98重量%のcis-シトラール(ネラール)を77g/hの供給量で、当該系の含有量が実質的に一定に維持されるように、生成物を含有する画分を減圧下で連続的に蒸留した。これらの設定で、8日間の間にD-シトロネラールが82.1mol単離された。D-シトロネラールの収率は、用いたcis-シトラールに対し86%であった。 実施例2 水素化リアクター中で高含有量のCOを用いた場合のcis-シトラールの連続的不斉水素化 総量10.4gのRh(CO)2acacおよび総量25.8gの(R,R)-キラフォスを含むトルエン(約600ml)の溶液を連続系に充填した。 圧力80barおよび温度60℃の前形成リアクター中で、水素と一酸化炭素の比(H2:CO)を1:1に調節した。前形成リアクターの流出を高圧セパレーター中で標準気圧に減圧し、次いで、水素化リアクター中で80barまで加圧した。20℃で水素化リアクター中に60 l(STP)/hのH2を(245ppmのCOと一緒に)導入したところ、水素化リアクターのオフガス中でCO値が約600ppmとなった。 含有量98重量%のcis-シトラール(ネラール)を100g/hの供給量で、当該系の含有量が実質的に一定に維持されるように、生成物を含有する画分を減圧下で連続的に蒸留した。これらの設定で、5日間の間にD-シトロネラールが2.88mol(443.5g)単離された。D-シトロネラールの収率は、用いたcis-シトラールに対し92%であった。 実施例3 同様の基本設定で、水素化リアクターに、60.3 l(STP)/hのH2を265ppmのCOと一緒に充填したところ、水素化触媒のオフガス中でCO値が約1300ppmとなった。この方法では、5日間の間にD-シトロネラールが2.87mol(441.9g)単離された。D-シトロネラールの収率は、用いたcis-シトラールに対し90%であった。 反応混合物中において可溶性であり、かつ少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において、式(I):(式中、 R1、R2の基は、それぞれ1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個のエチレン性二重結合ならびに/または置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R3と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、ただし、R1とR2は異なるものであり、 R3の基は、水素、または1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個のエチレン性二重結合ならびに/または置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であるか、あるいはOR7またはNR8R9であり、 ここで、 R4、R5、R6は、それぞれ独立して、水素、C1-C6-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであり、 R5とR6は一緒になって、NまたはOによって中断されていてもよい、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよく、 R7は、1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個のエチレン性二重結合ならびに置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R1またはR2と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 R8は、1〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個のエチレン性二重結合ならびに置換基OR4、NR5R6、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリールからなる群から選択される1個もしくは複数個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R1、R2またはR9と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 R9は、水素、C1-C6-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであるか、あるいはR8と一緒になって、5員〜25員環を形成していてもよく、 *は、不斉炭素原子を示す)で表わされる光学活性カルボニル化合物を、式(II):(式中、R1〜R3の基は、それぞれ上で定義した通りである)で表わされるα,β−不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって調製する方法であって、少なくとも1個の一酸化炭素リガンドを有し、かつ各場合で使用される前記光学活性触媒が一酸化炭素および水素を含む気体混合物で触媒前駆体を前処理することにより調製され、前記不斉水素化が反応混合物に追加供給される一酸化炭素の存在下で行われ、以下の連続的ステップ:a) 20〜90容量%の一酸化炭素、10〜80容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物(ここで、前述の容量比は5〜100barの圧力下で合計100容量%とする)で触媒前駆体の前処理を行うステップと、b) そのようにして得られた触媒から、ステップa)で前処理された触媒を5bar未満の圧力に減圧することにより、過剰の一酸化炭素を不斉水素化で使用する前に除去するステップと、c) 水素の存在下での不斉水素化を含有量100〜1200ppmの一酸化炭素を用いて行うステップとを含み、該方法が連続的に行われ、反応生成物が反応混合物から取り出され、残存する触媒が、ステップa)による前形成の後に再使用される、前記方法。 光学活性アルデヒドまたはケトンをα,β-不飽和アルデヒドまたはケトンを不斉水素化することによって調製する、請求項1に記載の方法。 式(III):(式中、 R10は、2〜25個の炭素原子を有し、場合によっては、1〜5個のエチレン性二重結合を有していてもよい非分岐状または分岐状アルキル基であり、 *は、不斉炭素原子を示す)で表わされる光学活性アルデヒドを、式(IV)または(V):(式中、R10の基は、上で定義した通りである)で表されるα,β-不飽和アルデヒドを不斉水素化することによって調製する、請求項2に記載の方法。 式(VI):で表される光学活性シトロネラールを、式(VII)で表されるネラールまたは式(VIII)で表されるゲラニアール:を不斉水素化することによって調製する、請求項3に記載の方法。 D-シトロネラールをネラールの不斉水素化によって調製する、請求項4に記載の方法。 反応混合物中において可溶性である少なくとも1種の遷移金属化合物を、少なくとも1個のリン原子および/またはヒ素原子を有する光学活性リガンドと反応させることにより得ることができる遷移金属触媒前駆体を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 用いられる光学活性リガンドが一般式(IX)、(X)または(XI):(式中、 R11、R12は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有し、場合によっては、1個もしくは複数個、一般に1〜約4個のエチレン性二重結合ならびに/またはOR19、NR20R21、ハロゲン、C6-C10-アリールおよびC3-C9-ヘタリール置換基からなる群から選択される1個もしくは複数個、一般に1〜約4個の同一もしくは異なる置換基を有していてもよい非分岐状、分岐状または環状アルキル基であり、また、R11とR12は一緒になって、1個または複数個、一般に1または2個の酸素原子を含んでいてもよい4員〜20員環を形成していてもよく、 R13、R14は、それぞれ独立して、水素または直鎖もしくは分岐状のC1-C4-アルキルであり、 R15、R16、R17、R18は、それぞれ、C6-C10-アリールであり、これらは、場合によっては、C1-C4-アルキル、C6-C10-アリール、C1-C4-アルコキシおよびアミノ置換基からなる群から選択される1個または複数個、一般に1〜8個、好ましくは1〜4個の置換基を有していてもよく、 R19、R20、R21は、それぞれ独立して、水素、C1-C4-アルキル、C6-C10-アリール、C7-C12-アラルキルまたはC7-C12-アルキルアリールであり、 また、R20、R21は、一緒になって、2〜5個の炭素原子を有し、NまたはOによって中断されていてもよいアルキレン鎖であってもよい)で表される化合物である、請求項6に記載の方法。 遷移金属化合物が元素周期表のVIII族の遷移金属である、請求項6または7に記載の方法。 金属のロジウムまたはイリジウムの化合物を用いる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。 遷移金属化合物がロジウム化合物である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。 式(IX)(式中、R11、R12およびR15〜R18の基は、それぞれ上で定義した通りである)で表される光学活性リガンドを用いる、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。 用いる光学活性リガンドが式(1) の(S,S-キラフォス)またはent-(1)の(R,R-キラフォス):で表されるリガンドである、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。 不斉水素化を10〜100barの圧力で行なう、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。 ステップa)における触媒前駆体の前処理を、40〜60容量%の一酸化炭素、60〜40容量%の水素、および0〜5容量%のさらなる気体を含む気体混合物(ここで、前述の容量比は合計100容量%とする)を用いて行う、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。 ステップc)の不斉水素化を含有量400〜800ppmの一酸化炭素を含む水素の存在下で行なう、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。 ステップc)の不斉水素化を気体循環リアクター中で行なう、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。 変換すべきα,β-不飽和アルデヒドまたはケトンおよび水素が2本の物質ノズルにより気体循環リアクターへ導入される、請求項16に記載の方法。 i) 請求項1〜17のいずれか1項に記載の光学活性シトロネラールを調製するステップと、 ii) そのようにして調製された光学活性シトロネラールをルイス酸の存在下で光学活性イソプレゴールに環化するステップと、 iii) そのようにして調製された光学活性イソプレゴールを光学活性メントールに水素化するステップとを含む、光学活性メントールの調製方法。