タイトル: | 特許公報(B2)_5’−グアニル酸の製造法 |
出願番号: | 2010500701 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12P 19/32 |
浅原 貴之 深田 寛朗 松野 潔 JP 5440489 特許公報(B2) 20131227 2010500701 20090225 5’−グアニル酸の製造法 味の素株式会社 000000066 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 浅原 貴之 深田 寛朗 松野 潔 JP 2008043136 20080225 20140312 C12N 15/09 20060101AFI20140220BHJP C12P 19/32 20060101ALI20140220BHJP JPC12N15/00 AC12P19/32 Z C12N 15/00 C12N 1/20 C12P 19/32 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/WPIX(STN) CAplus(STN) CASREACT(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2002−355087(JP,A) 特開2007−105056(JP,A) Biochemistry,2006年,Vol.45,p.1183-1193 13 JP2009053358 20090225 WO2009107631 20090903 22 20111115 飯室 里美 本発明は5’−グアニル酸の製造法、及びその製造に用いられる新規微生物に関する。5’−グアニル酸は、調味料、医薬及びそれらの原料として有用である。 5’−グアニル酸(グアノシン−5’−モノリン酸、以下「GMP」ともいう)の工業的な製法としては、グアノシンを発酵法により製造し、得られたグアノシンを酵素的にリン酸化して5’−グアニル酸を得る方法が知られている(特許文献1〜4)。 また、GMP合成酵素活性を増大させたエシェリヒア属に属する微生物と、グルコースを代謝して、5’−キサンチル酸(XMP)からGMPを合成する反応に必要なアデノシン−三リン酸(ATP)を生合成する(以下、「ATPを再生する」ともいう)活性が高いブレビバクテリウム・アンモニアゲネスとを、XMPとアンモニアまたはグルタミンを含む培地で培養し、XMPを高効率にGMPに変換して培養液中にGMPを生成蓄積せしめる製造法も知られていた(非特許文献1)。 一方、GMPを発酵法により製造する方法が提案されている。例えば、特許文献5には、アデニン要求性を有し、さらにデコイニンまたはメチオニンスルフォキシドに耐性を示し、かつGMP生産能を有するバチルス属の変異株を培養し、培地中に生成蓄積したGMPを採取することを特徴とするGMPの製造法が開示されている。また特許文献6では、イノシン酸(イノシン酸−5’−モノリン酸、以下「IMP」ともいう)生産能を有するエシェリヒア属細菌の2種類の5’−ヌクレオチダーゼ遺伝子を欠失させ、更にIMP脱水素酵素およびGMP合成酵素遺伝子を増強した株を培養し、培地中に生成蓄積したGMPを採取することを特徴とするGMPの製造法が開示されている。しかし、一般的にGMPの直接発酵は収率が十分ではなく、前述の酵素法に比較して必ずしも実用的ではない。 これまでに、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性を高めたエシェリヒア属の細菌を利用して、IMPを原料としてGMPを生産した例は報告されていない。特開平07−231793号公報特開平10−201481号公報国際公開第96/37603号パンフレット特開2001−245676号公報特公昭56−12438号公報特開2002−355087号公報Tatsuro Fujioら、Biosci. Biotech. Biochem., 1997年, 第61巻, 5号, 840−845頁 本発明は、微生物を用いてIMPからGMPを製造する方法を提供すること、および該方法に使用できるIMPを高効率にGMPに変換することが可能な新規微生物を創製することを課題とする。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、IMP脱水素酵素、およびGMP合成酵素の活性が増大するように改変されたエシェリヒア属の微生物を利用することにより、IMPが高効率、高速度でGMPに変換されることを見出し、さらに、IMPを高効率にGMPに変換することが可能な新規微生物を創製することにも成功し、本発明を完成するに至った。 本発明の一態様は、イノシン酸脱水素酵素および5’−グアニル酸合成酵素の活性が増大するように改変された、イノシン酸を5’−グアニル酸に変換する能力を有する微生物に、イノシン酸を作用させて5’−グアニル酸を生成させ、これを採取することを特徴とする5’−グアニル酸の製造方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物が、guaB遺伝子およびguaA遺伝子の発現を増加させることによってイノシン酸脱水素酵素および5’−グアニル酸合成酵素の活性を増大するように改変された微生物である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、guaA遺伝子が下記(A)または(B)のタンパク質をコードする、前記方法を提供することである。(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、5’−グアニル酸合成酵素活性を有するタンパク質。 本発明の他の態様は、guaB遺伝子が下記(C)または(D)のタンパク質をコードする、前記方法を提供することである。(C)配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。(D)配列番号10に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、イノシン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。 本発明の他の態様は、前記微生物が、さらに、ushA遺伝子およびaphA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物が、さらに、purR遺伝子、add遺伝子およびpurA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物が、さらに、nagD遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物が、腸内細菌科に属する細菌、バチルス属細菌、またはコリネ型細菌である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物がエシェリヒア属細菌である、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、前記微生物がエシェリヒア・コリである、前記方法を提供することである。 本発明の他の態様は、guaB遺伝子およびguaA遺伝子の発現を増加させることによってイノシン酸脱水素酵素および5’−グアニル酸合成酵素の活性が増大するように改変され、さらにushA遺伝子、aphA遺伝子およびnagD遺伝子が正常に機能しないように改変された、イノシン酸を5’−グアニル酸に変換する能力を有する微生物を提供することである。 本発明の他の態様は、さらに、purR遺伝子、add遺伝子およびpurA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変された、前記微生物を提供することである。 本発明の他の態様は、腸内細菌科に属する細菌、バチルス属細菌、またはコリネ型細菌である、前記微生物を提供することである。 本発明の他の態様は、エシェリヒア属細菌である、前記微生物を提供することである。 本発明の他の態様は、エシェリヒア・コリである、前記微生物を提供することである。JM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBA株をIMPと反応させたときの、IMP、XMPおよびGMPの濃度変化を示すグラフ。JM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBA株、およびJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD/ pUC18-guaBA株をIMPと反応させたときの、IMP(A)およびGMP(B)の濃度変化を示すグラフ。(A)JM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD/ pUC18-guaBA株をIMPと反応させたときの、IMPおよびGMPの濃度変化を示すグラフ。(B)JM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD/ pUC18-guaBA株をXMPと反応させたときの、XMPおよびGMPの濃度変化を示すグラフ。(C)JM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD/ pUC18-guaBA株をIMPまたはXMPと反応させたときのGMPの蓄積量を示すグラフ。(A)MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd/pUC18-guaBA株をIMPと反応させたときの、IMP、XMPおよびGMPの濃度変化を示すグラフ。(B)MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd/pUC18-guaBA株をIMPまたはXMPと反応させたときのGMPの蓄積量を示すグラフ。 以下、本発明を詳細に説明する。<I>本発明の方法において使用される微生物 本発明の方法において使用される微生物は、IMP脱水素酵素活性及びGMP合成酵素活性が増大するように改変され、IMPをGMPに変換する能力を有する微生物である。 微生物としては、腸内細菌科に属する細菌、コリネ型細菌(Coryneform bacterium)、バチルス(Bacillus)属細菌などが挙げられる。 腸内細菌科に属する細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、クレブシエラ(Klebsiella)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エルビニア(Erwinia)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、モルガネラ(Morganella)属細菌などが挙げられる。 エシェリヒア属細菌としては、エシェリヒア・コリ等、エシェリヒア属に属する細菌であれば特に制限されないが、具体的にはNeidhardtらの著書(Neidhardt, FR. C. et al., Escherichia coli and Salmonella Typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D. C., 1208, table 1)に挙げられるものが利用できる。 また、エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等、パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)等が挙げられる。 コリネ型細菌としては、微生物分野の当業者に既知の分類によりコリネ型細菌として分類される細菌、今までブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在はコリネバクテリウム属に再分類されている細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255 (1991))、およびコリネバクテリウム属に近い類縁菌であるブレビバクテリウム属に属する細菌などが挙げられる。このようなコリネ型細菌の例を以下に列挙する。 コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム コリネバクテリウム・アセトグルタミカム コリネバクテリウム・アルカノリティカム コリネバクテリウム・カルナエ コリネバクテリウム・グルタミカム コリネバクテリウム・リリウム コリネバクテリウム・メラセコーラ コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス コリネバクテリウム・ハーキュリス ブレビバクテリウム・ディバリカタム ブレビバクテリウム・フラバム ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ブレビバクテリウム・ロゼウム ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ブレビバクテリウム・チオゲニタリス コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ブレビバクテリウム・アルバム ブレビバクテリウム・セリヌム ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム バチルス属細菌としては、微生物分野の当業者に既知の分類によりバチルス属として分類される細菌が使用でき、具体的には、バチルス・ズブチリス、バチルス・アミロリクファシエンス等が挙げられるが、これらに限定されない。 上記のような微生物において、IMP脱水素酵素(guaB遺伝子産物)およびGMP合成酵素(guaA遺伝子産物)の活性を増大させる方法について説明する。 本発明において、「IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性が増大するように改変された」とは、エシェリヒア属細菌などの微生物の非改変株、例えば野生株よりも、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性が高いことを意味する。 IMP脱水素酵素は、下記反応を触媒する酵素であり、「IMP脱水素酵素活性」とはIMPからXMPを生成する反応を触媒する活性をいう。IMP脱水素酵素活性は、例えば、Gilbertの方法で測定出来る(Gilbert, H.J., Lowe, C.R. and Drabble,W.T., Biochem J., 1979, Dec 1,183(3),481-94)。NAD+ + IMP + H2O → NADH + H+ + XMP また、GMP合成酵素とは、下記反応を触媒する酵素(EC 6.3.4.1)であり、「GMP合成酵素の酵素活性」とは、XMPからGMPを生成する反応を触媒する活性を意味する。 ATP + XMP + NH3 → AMP + ピロリン酸 + GMP GMP合成酵素活性は、例えば、Spectorの方法(Spector, T., Methods Enzymol., 1978,51,p219)により、NADHの減少速度を調べることで、測定することができる。 IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性を増大させるためには、これらの酵素を各々コードするguaB遺伝子、およびguaA遺伝子の発現量を上昇させることが好ましい。発現量を上昇させる方法としては、IMP脱水素酵素をコードするDNAおよびGMP合成酵素をコードするDNAの、細菌の細胞内のコピー数を上昇させる方法が挙げられる。細胞内のコピー数を上昇させるには、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素を各々コードするDNA断片を、エシェリヒア属細菌などの微生物で機能するベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを宿主に導入して形質転換すればよい。guaB遺伝子とguaA遺伝子は、同時にコピー数を高めてもよいし、各々独立にコピー数を高めてもよい。エシェリヒア・コリの場合、guaB遺伝子とguaA遺伝子はオペロン(GenBank accession No.M10101)を形成しており、guaBAオペロンをベクターに連結して組換えDNAを作製し、これを宿主に導入して形質転換してもよい。形質転換株の細胞内の、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素をコードする遺伝子(guaB遺伝子及びguaA遺伝子)のコピー数が上昇する結果、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性が増大する。 細胞内のコピー数の上昇は、IMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子を上記宿主の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。エシェリヒア属細菌に属する細菌の染色体DNA上に、IMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子を多コピーで導入するには、染色体上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行うことができる。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートなどが利用できる。あるいは、特開平2−109985号公報に開示されているように、目的遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することでも可能である。いずれの方法によっても形質転換株内のIMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子のコピー数が上昇する結果、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素の活性が増大する。 上記遺伝子を導入するためのベクターとしては、pSTV29、pMW218、pUC19等のプラスミドベクター、λ1059、λBF101,M13mp9等のファージベクターが挙げられる。またトランスポゾンとしては、Mu,Tn10、Tn5が挙げられる。 IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素をコードするDNAは、その塩基配列が公知であるので、その配列に基づいてプライマーを合成し、エシェリヒア属細菌などの微生物の染色体DNAを鋳型にしてPCR法により増幅を行うことによって取得することが出来る。例えば、エシェリヒア・コリのguaA遺伝子としては配列番号1の塩基配列を有するものが挙げられ、エシェリヒア・コリのguaB遺伝子としては配列番号9の塩基配列を有するものが挙げられる。これらの遺伝子は、同塩基配列に基づいてプローブを調製し、エシェリヒア属細菌の染色体DNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより目的のDNA断片を選択することも出来る。あるいはIMP脱水素酵素およびGMP合成酵素をコードするDNA断片を、既知の塩基配列に基づいて化学的に合成してもよい。 なお、エシェリヒア・コリのguaBAオペロンは、配列番号31と32のプライマーを用いてクローニングすることができる。 また、エシェリヒア属細菌以外の微生物からも、上記塩基配列に基づいて、IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素と同等の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を取得し得る。 Bacillus subtilis のGMP合成酵素遺伝子(guaA)としては、配列番号3の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号4に示す。 Corynebacterium glutamicum のGMP合成酵素遺伝子(guaA)としては配列番号5の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号6に示す。 Corynebacterium ammoniagenes のGMP合成酵素遺伝子(guaA)としては配列番号7の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号8に示す。 Bacillus subtilis のIMP脱水素酵素遺伝子(guaB)としては、配列番号11の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号10に示す。 Corynebacterium glutamicum のIMP脱水素酵素遺伝子(guaB)としては、配列番号13の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号14に示す。 Corynebacterium ammoniagenes のIMP脱水素酵素遺伝子(guaB)としては、配列番号15の塩基配列を有するものが挙げられる。この塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号16に示す。 上記のように、微生物が属する属、種又は菌株によって、guaA遺伝子及びguaB遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、guaA遺伝子及びguaB遺伝子は、上記遺伝子のバリアントであってもよい。 guaA遺伝子によってコードされるタンパク質は、GMP合成酵素活性を有する限り、配列番号2のアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%、特に好ましくは98%以上の同一性を有するものであってもよい。 また、guaB遺伝子によってコードされるタンパク質は、IMP脱水素酵素活性を有する限り、配列番号10のアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%、特に好ましくは98%以上の同一性を有するものであってもよい。 アミノ酸配列および塩基配列の同一性は、例えばKarlin および AltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993))やPearsonによるFASTA(MethodsEnzymol., 183, 63 (1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている (http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。 また、本発明に用いるguaA遺伝子およびguaB遺伝子は、野生型遺伝子には限られず、コードされるタンパク質の機能、すなわち、GMP合成酵素活性またはIMP脱水素酵素活性が損なわれない限り、配列番号2または10のアミノ酸配列において、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む配列を有するタンパク質をコードする、変異体又は人為的な改変体であってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個を意味する。上記置換は保存的置換が好ましく、保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換としては、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、guaA遺伝子、又はguaB遺伝子を保持する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。 また、guaA遺伝子およびguaB遺伝子は、それぞれ、配列番号1または9の塩基配列に相補的な塩基配列又は該配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、GMP合成酵素活性またはIMP脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、同一性が高いDNA同士、例えば80%、好ましくは90%以上、より好ましくは95%、特に好ましくは98%以上の同一性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSさらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度、温度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。 上記の遺伝子のバリアントに関する記載は、後述のushA遺伝子、aphA遺伝子、purR遺伝子、add遺伝子、purA遺伝子、及びその他の遺伝子にも同様に適用される。 微生物へのDNAの導入は、C.T.chungの方法(C.T.chung et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 86, 2172−2175(1989))、D.M. Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, 326 (1979))、又は受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A., J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))等により行うことが出来る。 IMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子の発現量の上昇は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上またはプラスミド上のIMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、国際公開WO00/18935に開示されているように、遺伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換または改変によりIMP脱水素酵素遺伝子およびGMP合成酵素遺伝子の発現が強化され、両タンパク質の活性が増大する。 guaB遺伝子、guaA遺伝子の発現量の増大は、ノザン法、RT-PCR法などにより検出することが出来る。 IMP脱水素酵素およびGMP合成酵素をコードするguaBAオペロン、およびプリンオペロンは、PurRタンパク質によってその発現が抑制されているため、本発明の方法において使用する細菌においては、PurRタンパク質をコードするpurR遺伝子((GenBank accession J04212:配列番号17)を正常に機能しないよう改変することが好ましく、その発現を低下させることがより好ましい。purR遺伝子を正常に機能しないよう改変することは、以下のような方法で達成できる。例えば、遺伝子組み換え法を用いた相同組換え法(Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory press (1972); Matsuyama, S. and Mizushima, S., J. Bacteriol., 162, 1196 (1985))により、染色体上のpurR遺伝子を、正常に機能しないpurR遺伝子(以下、「破壊型purR遺伝子」ということがある)で置換することによって行うことが出来る。 相同組換えは、染色体上の配列と相同性を有する配列を持つプラスミド等が菌体内に導入されると、ある頻度で相同性を有する配列の箇所で組換えを起こし、導入されたプラスミド全体が染色体上に組み込まれる。この後、さらに染色体上の相同性を有する配列の箇所で組換えを起こすと、再びプラスミドが抜け落ちるが、この時、組換えを起こす位置により、破壊された遺伝子のほうが染色体上に固定され、元の正常な遺伝子がプラスミドと一緒に染色体から抜け落ちることもある。このような菌株を選択することにより、染色体上の正常なpurR遺伝子が破壊型purR遺伝子と置換された菌株を取得することができる。 このような相同組換えを利用した遺伝子置換は、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol.97, No.12, p6640-6645)とλファージ由来の切り出しシステム(J. Bacteriol. 2002 Sep; 184(18):5200-3.)と組合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol.97, No.12, p6640-6645、米国特許第6303383号、又は特開平05-007491号公報)などがある。 また、上述のような相同組換えを利用した遺伝子置換による部位特異的変異導入は、宿主上で複製能力を持たないプラスミドを用いても行うことが出来る。また、薬剤耐性等のマーカー遺伝子が内部に挿入されたpurR遺伝子を含み、かつ、目的とする微生物内で複製できないプラスミドを用いることによっても、purR遺伝子の破壊を行うことが出来る。すなわち、前記プラスミドで形質転換され、薬剤耐性を獲得した形質転換体は、染色体DNA中にマーカー遺伝子が組み込まれている。このマーカー遺伝子は、その両端のpurR遺伝子配列と染色体上のこれらの遺伝子との相同組換えによって組み込まれる可能性が高いため、効率よく遺伝子破壊株を選択することが出来る。 遺伝子破壊に用いる破壊型purR遺伝子は、具体的には、制限酵素消化及び再結合によるこれらの遺伝子の一定領域の欠失、これらの遺伝子への他のDNA断片(マーカー遺伝子等)の挿入、または部位特異的変異法(Kramer, W. and Frits, H. J., Methods in Enzymology, 154, 350 (1987))や次亜塩素酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン等の化学薬剤による処理(Shortle, D. and Nathans, D., Proc., Natl., Acad., Sci., U.S.A., 75, 270 (1978))によって、purR遺伝子のコーディング領域又はプロモーター領域等の塩基配列の中に1つまたは複数個の塩基置換、欠失、挿入、付加または逆位を起こさせることにより、コードされるリプレッサーの活性を低下又は消失させるか、又はpurR遺伝子の転写を低下または消失させることにより、取得することが出来る。 purR遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのpurR遺伝子として配列番号18のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。purR遺伝子は、例えば、エシェリヒア・コリの染色体DNAから、配列番号19及び20に示すプライマーを用いたPCRによって取得することが出来る。 その他の微生物のpurR遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのpurR遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、微生物の改変に使用できる。 purR遺伝子は、配列番号18のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。 目的とする遺伝子が破壊されたことは、サザンブロッティングやPCR法により、染色体上の遺伝子を解析することによって確認することができる。 また、微生物を紫外線照射またはN−メチル−N’−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸などの通常変異処理に用いられる変異剤によって処理することによっても、機能を有するPurRタンパク質が産生されないようになった変異株を取得することができる。 また、guaBAオペロンプロモーター上流に位置するPurR結合配列(M.I. Hutchings, W.T. Drabble , FEMS Microbiology Letters 187 (2000) 115-122)に、1つまたは複数個の塩基置換、欠失、挿入、付加または逆位を起こさせることにより、PurRタンパク質が通常のように結合しなくなるよう改変することができる。 本発明の方法において使用する細菌においては、さらに、ushA遺伝子及び/またはaphA遺伝子が正常に機能しないように改変されていることが好ましい。これらの遺伝子の変異株又は遺伝子組み換え株は、これらの遺伝子が、それらの遺伝子によってコードされる5’−ヌクレオチダーゼの活性が低下又は消失するか、又はこれらの遺伝子の転写が低下、又は消失するように、改変することによって得られる。このような変異株又は遺伝子組み換え株は、前述のpurR遺伝子が正常に機能しない変異株又は遺伝子組み換え株と同様にして得ることができる。 ushA遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのushA遺伝子として配列番号22のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。 その他の微生物のushA遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのushA遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、改変に使用できる。 尚、ushA遺伝子は、配列番号22のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。 aphA遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのaphA遺伝子として配列番号24のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。 その他の微生物のaphA遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのaphA遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、改変に使用できる。 aphA遺伝子は、配列番号24のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。 本発明の方法において使用する細菌においては、さらに、add遺伝子及び/またはpurA遺伝子が正常に機能しないように改変されていることが好ましい。これらの遺伝子の変異株又は遺伝子組み換え株は、これらの遺伝子が、それらの遺伝子によってコードされるアデノシンデアミナーゼ及び/またはサクシニル−AMPシンターゼの活性が低下又は消失するか、又はこれらの遺伝子の転写が低下、又は消失するように、改変することによって得られる。このような変異株又は遺伝子組み換え株は、前述のpurR遺伝子が正常に機能しない変異株又は遺伝子組み換え株と同様にして得ることができる。 add遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのadd遺伝子として配列番号38のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。 その他の微生物のadd遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのadd遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、改変に使用できる。 add遺伝子は、配列番号38のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。 purA遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのpurA遺伝子として配列番号34のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。 その他の微生物のpurA遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのpurA遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、改変に使用できる。 purA遺伝子は、配列番号34のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。 本発明の方法において使用する細菌においては、さらに、nagD遺伝子が正常に機能しないように改変されていることが好ましい。nagD遺伝子の変異株又は遺伝子組み換え株は、該遺伝子が、該遺伝子によってコードされるタンパク質の活性が低下又は消失するか、又はこれらの遺伝子の転写が低下、又は消失するように、改変することによって得られる。このような変異株又は遺伝子組み換え株は、前述のpurR遺伝子が正常に機能しない変異株又は遺伝子組み換え株と同様にして得ることができる。 nagD遺伝子は、配列自体は公知であり、それらの配列に基づいて、PCR法又はハイブリダイゼーション法等によって容易に取得することが出来る。例えば、E.coliのnagD遺伝子として配列番号42のアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。 E.coliのnagD遺伝子は、N-アセチルグルコサミンの資化に関与するnagBACDオペロン内に存在し、このnagBACDオペロン遺伝子の発現は培地中にバクテリアの細胞壁の主成分を構成する糖の一種であるN-アセチルグルコサミンを添加することで誘導されることが明らかになっている(Plumbridge JA., Mol. Micobiol. (1989) 3. 505-515)。E.coliのnagDにコードされるNagDタンパク質は、保存的な構造上の特徴からハロ酸脱ハロゲン化酵素(HAD)ファミリーに属すことがわかっており、試験管内の実験によればGMPおよび5’−ウリジル酸(ウリジン−5’−モノリン酸、以下「UMP」ともいう)に対してヌクレオチダーゼ活性を有することが報告されている(Tremblay LW., Biochemistry, (2006) 45. 1183-1193)。ただし、E.coliのゲノム上には23種のHADファミリータンパク質が存在し、それらの基質特異性の範囲は非常に広い(Kuznetsova et al., J.Biol.Chem., (2006) 281., 36149-36161)ので、nagD遺伝子の細胞内での生理的な役割については知られていない。 本発明においては、guaB遺伝子およびguaA遺伝子の発現を増加させ、ushA遺伝子およびaphA遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物において、さらにnagD遺伝子が正常に機能しないように改変することでイノシン酸から効率よく5’−グアニル酸を生産することが見出された。 したがって、本発明は新規微生物として、guaB遺伝子およびguaA遺伝子の発現を増加させることによってイノシン酸脱水素酵素および5’−グアニル酸合成酵素の活性が増大するように改変され、さらにushA遺伝子、aphA遺伝子およびnagD遺伝子が正常に機能しないように改変された、イノシン酸を5’−グアニル酸に変換する能力を有する微生物を提供する。この微生物においては、さらに、purR遺伝子、add遺伝子およびpurA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変されることが好ましい。 なお、nagD遺伝子はE.coliのものに限定されず、その他の微生物のnagD遺伝子も、公知の配列または上記E.coliのnagD遺伝子との配列相同性に基づいて取得し、改変に使用できる。すなわち、nagD遺伝子は、配列番号42のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするものであればよい。<II>GMPの製造法 上述した、IMP脱水素酵素活性及びGMP合成酵素活性が増大するように改変された微生物にIMPを反応させ、IMPをGMPに変換することによって、GMPを得ることができる。 IMP脱水素酵素反応はNAD+を、GMP合成酵素反応はATPを、それぞれ必要とする。IMP脱水素酵素反応により生じたNADHは酸化的リン酸化経路により再びNAD+に変換されるが、その際にATPが生成する。したがって、IMP脱水素酵素活性及びGMP合成酵素活性を同時に増大させることによって、IMPからGMPへの反応が効率よく進行すると推定される。 本発明において、「反応させる」とは、上記微生物菌体をIMPが添加された培地に存在させて、該微生物をいわゆる微生物触媒として用いてIMPをGMPに変換すること、及び、上記微生物を培養しながらIMPを培地に加えてGMPを生成させることの両方を含む。 好ましくは、上記微生物の培養後の菌体を、IMPを含む反応液中に添加すること、または上記微生物を含む溶液中にIMPを添加することで、IMPを効率よくGMPに変換し、GMPを生成蓄積せしめることができる。 該微生物の培養を行う際の炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュークロース、糖蜜、廃糖蜜、澱粉加水分解物等の炭水化物、エタノール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類、ピルビン酸、乳酸、酢酸等の有機酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸など、上記微生物が資化可能であればいずれも使用できる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニア、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機及び有機アンモニウム塩、尿素、各種アミノ酸、ペプトン、NZアミン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、フィッシュミールまたはその消化物等が使用できる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等を用いることができる。用いる微生物がアミノ酸、核酸、ビタミン等特定の栄養物質を生育に要求する場合には、培地にこれら物質を適量添加する。 培養はpH5.0〜8.5、15℃〜45℃の適切な範囲にて好気的条件にて5時間〜72時間程度行えばよい。なお、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することが出来る。 該微生物の培養液を直接、または遠心した後に菌体のみを、あるいは菌体を適当な溶液に懸濁したものを、IMPを含む反応液に接種してIMPからGMPへの変換を行うことができる。 なお、本発明のGMPの製造法においては、上記微生物の菌体処理物を使用することもできる。菌体の処理物としては、例えば、菌体をアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した固定化菌体等が挙げられる。 反応液の炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュークロース、糖蜜、廃糖蜜、澱粉加水分解物等の炭水化物、エタノール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類、ピルビン酸、乳酸、酢酸等の有機酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸など、上記微生物が資化可能であればいずれも使用できる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニア、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機及び有機アンモニウム塩、尿素、各種アミノ酸、ペプトン、NZアミン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、フィッシュミールまたはその消化物等が使用できる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等を用いることができる。用いる微生物がアミノ酸、核酸、ビタミン等特定の栄養物質を生育に要求する場合には、培地にこれら物質を適量添加する。 なお、反応液には有機溶剤を加えてヌクレオチドの細胞透過性を活性化させることが好ましい。 ヌクレオチドの膜透過性活性化剤である有機溶剤としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、脂肪酸アルコール、酢酸エチルなどが利用でき、通常0.1〜30 ml/Lの濃度にて用いることが好ましい。 反応はpH5.0〜8.5、15℃〜45℃の適切な範囲にて好気的条件または嫌気的条件にて1時間〜7日程度行えばよい。なお、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することが出来る。 なお、原料のIMPは、化学合成されたもの、市販のもの、および発酵法(WO96/30501、特開2002−355087、特開2003−325182など)によって製造されたものなどを使用することができる。 反応液からのGMPの搾取は通常、イオン交換樹脂法、沈殿法、その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。[実施例]以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。<1−1>JM109株由来で5’−ヌクレオチダーゼをコードするushA,aphA遺伝子破壊株の構築 一般的なDNAクローニング用宿主として利用されているエシェリヒア・コリJM109株を親株として、まず5’−ヌクレオチダーゼ非産生株の構築を行った。5’−ヌクレオチダーゼは、ushA遺伝子(Genbank Accession X03895 配列番号21)、aphA遺伝子(Genbank Accession X86971 配列番号23)によってコードされている。 5’−ヌクレオチダーゼをコードするushA、aphA遺伝子の欠失は、DatsenkoとWannerによって最初に開発された「Red-driven integration」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)とλファージ由来の切り出しシステム(J. Bacteriol. 2002 Sep; 184(18): 5200-3. Interactions between integrase and excisionase in the phage lambda excisive nucleoprotein complex. Cho EH, Gumport RI, Gardner JF.)によって行った。「Red-driven integration」方法によれば、目的とする遺伝子の一部を合成オリゴヌクレオチドの5’側に、抗生物質耐性遺伝子の一部を3’側にデザインした合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて得られたPCR産物を用いて、一段階で遺伝子破壊株を構築することができる。さらにλファージ由来の切り出しシステムを組合わせることにより、遺伝子破壊株に組み込んだ抗生物質耐性遺伝子を除去することが出来る。(1)ushA遺伝子の破壊 PCRの鋳型としてPCRの鋳型として、プラスミドpMW118-attL−Cm-attRを使用した。pMW118-attL−Cm-attR(WO2006078039)は、pMW118(宝バイオ社製)にλファージのアタッチメントサイトであるattL及びattR遺伝子と抗生物質耐性遺伝子であるcat遺伝子を挿入したプラスミドであり、attL−cat−attRの順で挿入されている。 このattLとattRの両端に対応する配列をプライマーの3’末端に、目的遺伝子であるushA遺伝子の一部に対応するプライマーの5’末端に有する配列番号25及び26に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行った。 増幅したPCR産物をアガロースゲルで精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリJM109株にエレクトロポレーションにより導入した。プラスミドpKD46(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムのRed レコンビナーゼをコードする遺伝子(γ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459、 第31088番目〜33241番目)を含む。プラスミドpKD46はPCR産物をJM109株の染色体に組み込むために必要である。 エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。すなわち、100mg/Lのアンピシリンを含んだLB培地中で30℃、一晩培養したエシェリヒア・コリJM109株を、アンピシリン(20mg/L)とL−アラビノース(1mM)を含んだ5mLのSOB培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))で100倍希釈した。得られた希釈物を30℃で通気しながらOD600が約0.6になるまで生育させた後、100倍に濃縮し、10%グリセロールで3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できるようにした。エレクトロポレーションは70μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いて行った。エレクトロポレーション後のセルは1mLのSOC培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))を加えて37℃で2.5時間培養した後、37℃でCm(クロラムフェニコール)(25mg/L)を含むL−寒天培地上で平板培養し、Cm耐性組換え体を選択した。次に、pKD46プラスミドを除去するために、Cmを含むL−寒天培地上、42℃で2回継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性を試験し、pKD46が脱落しているアンピシリン感受性株を取得した。 クロラムフェニコール耐性遺伝子によって識別できた変異体のushA遺伝子の欠失を、PCRによって確認した。得られたushA欠損株をJM109ΔushA::att-cat株と名づけた。 次に、ushA遺伝子内に導入されたatt-cat遺伝子を除去するために、ヘルパープラスミド上述のpMW-intxis-tsを使用した。pMW-intxis-tsは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子、エクシジョナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製能を有するプラスミドである。pMW-intxis-ts導入により、染色体上のattLあるいはattRを認識して組換えを起こしattLとattRの間の遺伝子を切り出し、染色体上にはattLあるいはattR配列のみ残る構造になる。 上記で得られたJM109ΔushA::att-cat株のコンピテントセルを常法に従って作製し、ヘルパープラスミドpMW-intxis-tsにて形質転換し、30℃で50 mg/Lのアンピシリンを含むL−寒天培地上にて平板培養し、アンピシリン耐性株を選択した。次に、pMW-intxis-tsプラスミドを除去するために、L−寒天培地上、42℃で2回継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性、及びクロラムフェニコール耐性を試験し、att-cat、及びpMW-intxis-tsが脱落しているushA破壊株であるクロラムフェニコール、アンピシリン感受性株を取得した。この株をJM109ΔushAと名づけた。 (2)JM109ΔushA株のaphA遺伝子の欠失 JM109ΔushA株におけるaphA遺伝子の欠失は、上記手法に則って、aphA破壊用プライマーとして、配列番号27、28のプライマーを使用して行った。これによって、ushA aphA破壊株であるJM109ΔushAΔaphAを得た。<1−2>JM109ΔushAΔaphA株由来でプリンオペロンやguaBAオペロンのリプレッサーをコードするpurR遺伝子破壊株の構築 続いて、JM109ΔushAΔaphA株を親株として、guaBAオペロンのリプレッサーPurR非産生株の構築を行った。PurRは、purR遺伝子(Genbank Accession J04212 配列番号17)によってコードされている。前述のushA、aphA遺伝子破壊手法に則って、purR破壊用プライマーとして、配列番号29、30のプライマーを使用して行った。これによって、JM109ΔushAΔaphAΔpurRを得た。<1−3>IMP脱水素酵素及びGMP合成酵素発現強化プラスミドpUC18-guaBAの構築及び該プラスミドのJM109ΔushAΔaphAΔpurR株への導入 IMP脱水素酵素及びGMP合成酵素発現強化プラスミドpUC18-guaBAを以下のようにして行った。両酵素をコードするguaB、guaA遺伝子は、エシェリヒア・コリではオペロン(guaBA)を構成していることが知られている。そこで、配列番号31及び配列番号32に示したプライマーを用いてPCRを行い、エシェリヒア・コリのguaBAオペロンを増幅した。増幅断片を精製した後、両端に形成された制限酵素部位をSacI及びKpnIで切断した。切断断片を、同じくSacI及びKpnIで切断したpUC18と連結し、guaBA遺伝子が組み込まれたプラスミドpUC18-guaBAを選択した。このプラスミドを前記JM109ΔushAΔaphAΔpurR株に導入し、JM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBA株を得た。<1−4>JM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBA株菌体を利用したIMPからGMPへの変換反応 上記菌株について、IMPからGMPへの変換反応評価を実施した。以下に、IMPからGMPへの変換反応評価のための、菌体の調製方法、反応方法、反応溶液組成、分析方法を示す。[菌体の調製方法] LB培地プレート上にJM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBA株をまんべんなく塗布し、37℃で一晩培養した。翌日、1/32プレート分の菌体を、LB培地20mlを張り込んだ500 ml容の坂口フラスコに植菌し、37℃で一晩培養した。LB 600ml分の培養液の遠心後菌体を、60mlの反応溶液に用いた。[反応方法] 前述のLB 600ml分の培養後菌体を薬さじで掻き取り、後述する反応液60mlに接種して反応を開始した。反応は42℃で、pHを7.2で維持されるよう、水酸化ナトリウムを加えながら実施した。[反応溶液組成] 60 mM IMP 50 g/L Glucose 9.2 g/L ヘキサメタリン酸ナトリウム 5 g/L MgSO4・7H2O 6.6 g/L (NH4)2SO4 10 g/L KH2PO4 5 ml/L Xylene[分析方法] 反応液500μlを経時的にサンプリングし、15,000rpmで5分間遠心した上清液をNaOHで希釈して反応を停止した。反応停止液をフィルターろ過し、通常300 μlをHPLC分析に供した。分析条件は以下の通りである。 カラム:Asahipak GS-220(直径7.6mm,50cm)を2本連結 溶離液:0.2 M NaH2PO4 (pH 3.98 ) 温度:55℃ 流速:1 ml/分 検出:紫外線(254nm)吸収 結果を図1に示す。JM109ΔushAΔaphAΔpurR/ pUC18-guaBAでは反応12時間で最大約16.2g/LのGMPを反応液中に蓄積することが示された。<2−1>JM109ΔushAΔaphAΔpurR株由来のnagD遺伝子破壊株の構築 実施例1の<1−2>で得られたJM109ΔushAΔaphAΔpurR株を親株として、NagD非産生株の構築を行った。NagDはnagD遺伝子(Genbank Accession X14135 配列番号41)によってコードされている。前述のushA、aphA、purR遺伝子破壊手法に則って、nagD破壊用プライマーとして配列番号43、44のプライマーを使用してnagD遺伝子破壊を行った。これによって、JM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagDを得た。<2−2>IMP脱水素酵素及びGMP合成酵素発現強化プラスミドpUC18-guaBAのJM109ΔushAΔaphAΔpurR株およびJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD株への導入 プラスミドpUC18-guaBAを前記JM109ΔushAΔaphAΔpurR株およびJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD株に導入し、JM109ΔushAΔaphAΔpurR / pUC18-guaBA株およびJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株を得た。<2−3>JM109ΔushAΔaphAΔpurR / pUC18-guaBA株およびJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株菌体を利用したIMPからGMPへの変換反応 上記菌株について、IMPからGMPへの変換反応評価を実施した。以下に、IMPからGMPへの変換反応のための、菌体の調製方法、反応方法、反応溶液組成、分析方法を示す。 [菌体の調製方法] LB培地プレート上にJM109ΔushAΔaphAΔpurR / pUC18-guaBA株またはJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株をまんべんなく塗布し、37℃で一晩培養した。翌日、1/32プレート分の菌体を、LB培地20mlを張り込んだ500 ml容の坂口フラスコに植菌し、37℃で一晩培養した。[反応方法] 前述の培養液を遠心し、乾燥重量で0.8g相当の菌体を反応液60mlに接種して反応を開始した。反応は42℃で、pHを7.2で維持されるよう、水酸化ナトリウムを加えながら実施した。[IMPからGMPへの変換反応の反応溶液組成] 50 mM IMP 50 g/L Glucose 9.2 g/L ヘキサメタリン酸ナトリウム 5 g/L MgSO4・7H2O 6.6 g/L (NH4)2SO4 10 g/L KH2PO4 3 ml/L Xylene [分析方法] 反応液500μlを経時的にサンプリングし、NaOHで希釈して反応を停止した。反応停止液をフィルターろ過し、通常300 μlをHPLC分析に供した。分析条件は以下の通りである。 カラム:Asahipak GS-220(直径7.6mm,50cm)を2本連結 溶離液:0.2 M NaH2PO4 (pH 3.98 ) 温度:55℃流速:1 ml/分 検出:紫外線(254nm)吸収 結果を図2に示す。JM109ΔushAΔaphAΔpurR / pUC18-guaBA株では最大約12.5g/LのGMPを、JM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株では最大約14.81g/LのGMPを反応液中に蓄積することが示された。 実施例2に記載のJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株菌体を利用したIMPからGMPへの変換反応およびXMPからGMPへの変換反応とその比較 実施例2に記載のJM109ΔushAΔaphAΔpurRΔnagD / pUC18-guaBA株について、IMPからGMPへの変換反応ならびにXMPからGMPへの変換反応を評価した。変換反応評価のための、菌体の調製方法、反応方法、IMPからGMPへの変換反応溶液組成、分析方法については実施例2に従った。XMPからGMPへの変換反応では、IMPからGMPへの変換反応溶液組成のIMPの代わりに等濃度のXMPを使用した。 結果を図3に示す。IMPからGMPへの変換反応では反応4時間で最大約16.9g/LのGMPを、XMPからGMPへの変換反応では反応7.5時間で最大約24.4g/LのGMPを反応液中に蓄積し、XMPを基質とした反応よりもIMPを基質とした反応のほうがGMPの生成速度が速いことが示された。<4−1>MG1655株由来で5’−ヌクレオチダーゼをコードするushA,aphA遺伝子破壊株の構築 エシェリヒア・コリ野性株MG1655株を親株として、5’−ヌクレオチダーゼUshA, AphA非産生株の構築を行った。5’−ヌクレオチダーゼをコードするushA、aphA遺伝子の欠失は、実施例1に従って、「Red-driven integration」と呼ばれる方法とλファージ由来の切り出しシステムによって行った。作製した株をMG1655ΔushAΔaphAと名づけた。<4−2>MG1655ΔushAΔaphA株由来でサクシニル−AMPシンターゼをコードするpurA遺伝子破壊株の構築 続いて、MG1655ΔushAΔaphA株を親株として、サクシニル−AMPシンターゼ非産生株の構築を行った。E.coliのサクシニル−AMPシンターゼはpurA遺伝子(Genbank Accession J04199 配列番号33)によってコードされている。実施例1に示したushA、aphA、purR遺伝子破壊手法に則り、purA破壊用プライマーとして、配列番号35、36のプライマーを使用して行った。これによって、MG1655ΔushAΔaphAΔpurAを得た。<4−3>MG1655ΔushAΔaphAΔpurA株由来でプリンオペロンやguaBAオペロンのリプレッサーをコードするpurR遺伝子破壊株の構築 続いて、MG1655ΔushAΔaphAΔpurA株を親株として、guaBAオペロンのリプレッサーPurR非産生株の構築を行った。purR遺伝子の破壊は、実施例1に従い、purR破壊用プライマーとして、配列番号29、30のプライマーを使用して行った。これによって、MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRを得た。<4−4>MG1655ΔushAΔaphAΔpurR株由来でアデノシンデアミナーゼをコードするadd遺伝子破壊株の構築 続いて、MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurR株を親株として、アデノシンデアミナーゼ非産生株の構築を行った。E.coliのアデノシンデアミナーゼはadd遺伝子(Genbank Accession No. M59033 配列番号37)によってコードされている。実施例1に示したushA、aphA、purR遺伝子破壊手法に則り、add破壊用プライマーとして、配列番号39、40のプライマーを使用して行った。これによって、MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd株を得た。<4−5>IMP脱水素酵素及びGMP合成酵素発現強化プラスミドpUC18-guaBAのMG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd株への導入 実施例1に示したpUC18-guaBAを前記MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd株に導入し、MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd/pUC18-guaBA株を得た。<4−6>MG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd/pUC18-guaBA株菌体を利用したIMPまたはXMPからGMPへの変換反応 上記菌株について、IMPまたはXMPからGMPへの変換反応評価を実施した。変換反応評価のための菌体の調製方法、反応方法、反応溶液組成、分析方法について以下に示す。[菌体の調製方法] LB培地プレート上にMG1655ΔushAΔaphAΔpurAΔpurRΔadd/pUC18-guaBA株をまんべんなく塗布し、37℃で一晩培養した。翌日、1/32プレート分の菌体を、LB培地20mlを張り込んだ500 ml容の坂口フラスコに植菌し、37℃で一晩培養した。LB 600ml分の培養液の遠心後菌体を、60mlの反応溶液に用いた。[反応方法] 前述のLB 600ml分の培養後菌体を薬さじで掻き取り、後述する反応液60mlに接種して反応を開始した。反応は42℃で、pHを7.2で維持されるよう、水酸化ナトリウムを加えながら実施した。[反応溶液組成] 50 mM IMP または 50 mM XMP 50 g/L Glucose 9.2 g/L ヘキサメタリン酸ナトリウム 5 g/L MgSO4・7H2O 6.6 g/L (NH4)2SO4 10 g/L KH2PO4 5 ml/L Xylene [分析方法] 反応液500μlを経時的にサンプリングし、NaOHで希釈して反応を停止した。反応停止液をフィルターろ過し、通常300 μlをHPLC分析に供した。分析条件は以下の通りである。 カラム:Asahipak GS-220(直径7.6mm,50cm)を2本連結 溶離液:0.2 M NaH2PO4 (pH 3.98 ) 温度:55℃流速:1 ml/分 検出:紫外線(254nm)吸収 結果を図4に示す。XMPを基質とした反応よりもIMPを基質とした反応のほうがGMPの生成速度が速いことが示された。 本発明によれば、調味料、医薬及びそれらの原料として有用なGMPを効率よく製造することができる。〔配列表の説明〕配列番号1:E. coli GMP合成酵素(GMPS)遺伝子(guaA)塩基配列配列番号2:E. coli GMPSアミノ酸配列配列番号3:B. subtilis GMPS遺伝子(guaA)塩基配列配列番号4:B. subtilis GMPSアミノ酸配列配列番号5:C. glutamicum GMPS遺伝子(guaA)塩基配列配列番号6:C. glutamicum GMPSアミノ酸配列配列番号7:C. ammoniagenes GMPS遺伝子(guaA)塩基配列配列番号8:C. ammoniagenes GMPSアミノ酸配列配列番号9:E. coli IMP脱水素酵素(IMPDH) 遺伝子(guaB)塩基配列配列番号10:E. coli IMPDHアミノ酸配列配列番号11:B. subtilis IMPDH遺伝子(guaB)塩基配列配列番号12:B. subtilis IMPDHアミノ酸配列配列番号13:C. glutamicum IMPDH遺伝子(guaB)塩基配列配列番号14:C. glutamicum IMPDHアミノ酸配列配列番号15:C. ammoniagenes IMPDH遺伝子(guaB)塩基配列配列番号16:C. ammoniagenes IMPDHアミノ酸配列配列番号17:E. coli purR塩基配列配列番号18:E. coli PurRアミノ酸配列配列番号19:E. coli purR クローニング用プライマー配列配列番号20:E. coli purR クローニング用プライマー配列配列番号21:E. coli ushA塩基配列配列番号22:E. coli UshAアミノ酸配列配列番号23:E. coli aphA塩基配列配列番号24:E. coli AphAアミノ酸配列配列番号25:E. coli ushA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号26:E. coli ushA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号27:E. coli aphA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号28:E. coli aphA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号29:E. coli purR遺伝子破壊用プライマー配列配列番号30:E. coli purR遺伝子破壊用プライマー配列配列番号31:E. coli guaBAクローニングプライマー配列配列番号32:E. coli guaBAクローニングプライマー配列配列番号33:E. coli purA塩基配列配列番号34:E. coli PurAアミノ酸配列配列番号35:E. coli purA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号36:E. coli purA遺伝子破壊用プライマー配列配列番号37:E. coli add塩基配列配列番号38:E. coli Addアミノ酸配列配列番号39:E. coli add遺伝子破壊用プライマー配列配列番号40:E. coli add遺伝子破壊用プライマー配列配列番号41:E. coli nagD塩基配列配列番号42:E. coli NagDアミノ酸配列配列番号43:E. coli nagD遺伝子破壊用プライマー配列配列番号44:E. coli nagD遺伝子破壊用プライマー配列 有機溶剤を含む反応液中で、guaB遺伝子およびguaA遺伝子の発現を増加させることによってイノシン酸脱水素酵素および5’−グアニル酸合成酵素の活性が増大するように改変された、イノシン酸を5’−グアニル酸に変換する能力を有する微生物に、イノシン酸を作用させて5’−グアニル酸を生成させ、これを採取することを特徴とする5’−グアニル酸の製造方法。前記有機溶剤が、キシレン、トルエン、ベンゼン、脂肪酸アルコールおよび酢酸エチルから選択される、請求項1に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 guaA遺伝子が下記(A)または(B)のタンパク質をコードする、請求項1または2に記載の5’−グアニル酸の製造方法:(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、5’−グアニル酸合成酵素活性を有するタンパク質。 guaB遺伝子が下記(C)または(D)のタンパク質をコードする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の5’−グアニル酸の製造方法:(C)配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。(D)配列番号10に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、イノシン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。 前記微生物が、さらに、ushA遺伝子およびaphA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の5’−グアニル酸の製造方法。前記微生物は、ushA遺伝子およびaphA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の活性が低下又は消失するか、又はこれらの遺伝子の転写が低下もしくは消失するように改変された微生物である、請求項5に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 前記微生物が、さらに、purR遺伝子、add遺伝子およびpurA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の5’−グアニル酸の製造方法。前記微生物は、purR遺伝子、add遺伝子およびpurA遺伝子から選ばれる1種又はそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の活性が低下又は消失するか、又はこれらの遺伝子の転写が低下もしくは消失するように改変された微生物である、請求項7に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 前記微生物が、さらに、nagD遺伝子が正常に機能しないように改変された微生物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の5’−グアニル酸の製造方法。前記微生物は、nagD遺伝子によってコードされるタンパク質の活性が低下又は消失するか、又は該遺伝子の転写が低下もしくは消失するように改変された微生物である、請求項9に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 前記微生物が、腸内細菌科に属する細菌、バチルス属細菌、またはコリネ型細菌である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 前記微生物が、エシェリヒア属細菌である、請求項11に記載の5’−グアニル酸の製造方法。 前記微生物が、エシェリヒア・コリである、請求項12に記載の5’−グアニル酸の製造方法。配列表