タイトル: | 特許公報(B2)_エネルギーフィルタ及び角度フィルタを行う回折アナライザシステムを備えた試料のX線解析装置 |
出願番号: | 2010500264 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 23/207,G01N 23/223,G21K 1/06 |
オドー、ジャン−ルイ ボルデー、ピエール、アンリ、ミシェル ジャノチェリ、アレッサンドラ オルテガ、リュック プラ、アラン ワルター、フェリペ サロモン、ジョセフ ドーリエ、エリック JP 5346916 特許公報(B2) 20130823 2010500264 20080327 エネルギーフィルタ及び角度フィルタを行う回折アナライザシステムを備えた試料のX線解析装置 セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク 500531141 誠真IP特許業務法人 110000785 オドー、ジャン−ルイ ボルデー、ピエール、アンリ、ミシェル ジャノチェリ、アレッサンドラ オルテガ、リュック プラ、アラン ワルター、フェリペ サロモン、ジョセフ ドーリエ、エリック FR 0754151 20070330 20131120 G01N 23/207 20060101AFI20131031BHJP G01N 23/223 20060101ALI20131031BHJP G21K 1/06 20060101ALI20131031BHJP JPG01N23/207G01N23/223G21K1/06 CG21K1/06 K G01N 23/00−23/227 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特表平10−502741(JP,A) 特開2003−098126(JP,A) 特開平04−164239(JP,A) 特表2002−525626(JP,A) 特表平11−502025(JP,A) 特開平07−077503(JP,A) 18 EP2008053618 20080327 WO2008125450 20081023 2010523939 20100715 13 20110301 越柴 洋哉 本発明のX線による試料分析の分野に関する。特に、X線回折による試料解析装置に関する。 X線回折法は、物質構造をX線回折によって分析する技術であり、試料の物質構造の詳しい特性を明らかにするために用いられる。この技術は特に、試料の結晶構造、化合物の正確な組合せ(原子配列)と配合比率、その化合物の変化履歴の解析、微結晶サイズや微結晶構造、またその結晶方位、応力などを詳細に分析するために使用される。 粉末試料や多結晶試料をX線回折による解析に使用される簡単な装置にデバイ-シェラー装置(デバイ-シェラー法は、特性X線ビームが投射されると、無数の結晶粒の中には丁度Braggの条件を満足するような方向を向いた格子面が存在しているはずである。したがって入射面側に置かれた写真フィルム上にはDebye-Scherrer環と呼ばれる環状の図形が得られる。この方法は結晶構造の分析にしばしば利用されるものである)があり、この装置は単色X線発生源と、試料室、装置を囲んで配置される帯状のフィルムで構成されている。X線は試料によってフィルムの帯状方向に回折し、回折像がフィルム上に回折リングとして現れる。この装置はとてもシンプル且つ経済的で、簡単に回折ピーク(帯状の円弧の半径)の位置を示すことができる。しかし、装置にスリットやフィルタを設けることが困難なため、帯状写真フィルムは試料の周囲から送られる信号まで収集してしまう。よって、回折強度や回折ピークの幅を正確に測定できず、試料の構造解析が正確にできない。 このような状況から、フィルムではなく、スリット若しくはフィルタ−アナライザと一体型のポイント検出器(比例計数管)として構成される可動式アッセンブリを使用することが提案されている。このようなアッセンブリを使用することにより、特定方向に回折させたポイントのより正確な情報を収集することができる。より高い信号/ノイズ比が得られ、ライン形状をより正確に定義するために、このような装置では解析する試料と検出器との間に結晶(任意の基板上にエピタキシャル成長により作製された薄膜結晶)アナライザを置くことが多い。このアナライザによってX線エネルギーがフィルタにかけられ、また試料で回折した多数のX線がポイント検出器へと収束する。よって、このような装置により正確さが増し、また強度も上がる。しかし、各回折方向に対してそれぞれ測定を行う必要があるので解析時間が長くなる。また、試料及び/又は「検出器+結晶アナライザ」のアッセンブリの位置を移動させる必要があるので、機械部品の精密な構成が要求される。解析する試料のサイズが大きい場合や、簡単に動かすことができない場合、解析は更に困難になる。 そして一次元若しくは二次元のX線検出器(「イメージングプレート」型、CCD型など)の開発によって、回折線、蛍光線、イメージングに対する研究が進められ、また分析の統計的手法においても回折分析の研究が進んで従来の写真フィルムを用いる技術よりも簡単に解析できるようになった。また一次元若しくは二次元のX線検出器の利用はポイント検出器を使用するよりも圧倒的に時間が短縮できるが、この一次元若しくは二次元検出器には受信シグナルのフィルタ機能及び/又はエネルギー分解能が全くないか、ほとんどない。そうすると信号/バックグラウンド比(吸光比)が悪くなり、やはり正確な分析結果を得ることができない。 本発明の目的は、前記した欠点の少なくとも1つを克服可能なX線回折による試料解析装置を提供することである。 詳しくは、回折X線に色フィルタ及び角度(位相)フィルタをかけることが可能な、X線回折による試料解析装置を提供することが目的である。この装置は一次元又は二次元検出システム((「イメージングプレート」型、CCD型などの受光器を含んだ光電変換システム)と互換性があり、これらの検出システムで得たデータの保存が可能である。 本発明の他の目的は、サイズが大きいために移動が不可能な試料の分析に適した簡単で実用的な装置を提供することである。 前記目的のために、以下を備えた試料のX線解析装置を提案した。・分析平均面(analysismean plane、例えば分析ゾーンのX線強度分布平均線を規定する面)を画定する試料の分析ゾーンを照射する、一定の入射方向(入射角度)で放射されるX線ビームの発生部・前記放射された分析ゾーンで回折したX線を少なくとも1次元座標上で検出する検出器 そしてこの装置は更に、前記試料と検出器の間に配置され、前記分析平均面に含まれる回転軸を中心に回転する周面の一部を切り取った面(partial surface、以下弧状面という)からなるX線回折面を含むアナライザシステムを備え、前記回転軸は前記X線の入射方向とは異なる方向で前記分析ゾーンの中心を通り、前記X線回折面を経て前記検出器に向かって回折されたX線を出射させるように前記回折面が配置されることを特徴とする。 試料の分析ゾーンに対してアナライザシステムを本発明のような配置構成にすることによって、複数の回折方向に回折するX線を収集(捕捉)すると同時に信号/バックグラウンド比を向上させることができるので、試料分析ゾーンをより正確に分析することが可能となる。 解析装置は以下の特徴を備えることが好ましいが限定する趣旨ではない。・前記弧状面は、前記回転軸と回折ビームを含む面における前記回折面の切断面として画定されるプロファイルの部分的な回転によって形成される面であること。・前記回転軸は前記入射方向と略直交(略とはJIS規格によれば中心値(90°)±10%である)していること。・前記弧状面は、前記分析平均面をスタートとして前記プロファイルが前記回転軸を中心に回転することにより形成され、回転角度は360°未満、好ましくは180°未満、更に好ましくは2°〜80°の間の角度であること。・更に、前記試料から放出される蛍光線(回折X線)を分析するための蛍光線検出部を備え、該蛍光線検出部は前記分析平均面と略直交して配置されること。・前記プロファイルは直線であるか、前記試料の分析ゾーンに向かって凹む曲線であること。・前記プロファイルは対数スパイラル曲線の一部であり、前記対数スパイラル曲線の中心は前記分析ゾーンの中心と一致すること。・更に、前記アナライザシステムへの入射部と出射部とに前記回折X線入射/出射用のアナライザ付随スリットを設けること。・前記回折面には、熱分解グラファイトの結晶層が含まれること。・前記回折面には、多層薄膜堆積層が含まれること。・前記回折面には、単結晶被膜が含まれること。・前記回折面は、反射モードのエネルギーが分析されるように(回折面に入射したX線が反射可能なように)、回折面の面形状、厚み及び材質を設定して構成すること。・前記検出器は一次元若しくは二次元の検出器であり、前記検出器が2次元検出器の場合は、湾曲X線検出面が前記回折面の回転軸と中心軸を同一とするシリンダ表面の一部で構成されること。・前記発生部、前記アナライザシステム、前記検出器は、相互の位置が固定されている(例えば入出射されるX線のビーム中心軸間距離が規定されている)こと。 本発明の装置はまた、前記アナライザシステムの前記X線回折面を対数スパイラル曲線の一部を切り取った形状のプロファイルが回転軸を中心に部分的に回転することにより生じる弧状面を備えた光学アッセンブリであってもよい。X線回折による試料解析装置を回転軸に対して軸線と直交する面内を平面投影法で描いた概略図である。第1実施例による解析装置におけるアナライザシステム(試料の回折面断面が直線)を、中心回転軸を含む分析平均面で切断した断面(試料上に位置する中心回転軸より検出器のX線検出面までのビーム走査直交断面)図である。第2実施例による解析装置におけるアナライザシステム(試料の回折面断面が曲線)を、中心回転軸を含む分析平均面で切断した図2対応断面図である。図3の解析装置の3次元概略図である。粉末の試料について、本発明のアナライザシステムを使用して測定したグラフ(C2)と、使用せずに測定したグラフ(C1)を並べて比較したグラフ図である。複数種類の無機化合物粉末を混合した試料について、本発明のアナライザシステムを使用して測定したグラフ(C4)と、使用せずに測定したグラフ(C3)を並べて比較したグラフ図である。図6のグラフを示したテスト試料を高分解能の回折計と、「ポイント検出−回折」を行うビーム走査アッセンブリを用いて測定したグラフ図である。粒径が大きな試料に関して、本発明のアナライザシステムを使用して測定したグラフ(C6)と、使用せずに測定したグラフ(C5)を並べて比較したグラフ図である。第3実施例による解析装置におけるアナライザシステム(回折部が曲線で面積が広い)を、中心回転軸を含む分析平均面で切断した拡大断面図である。 本発明の他の特徴及び利点は以下図面を参照して説明されるが、限定する趣旨ではない。 図1は本発明の解析装置を概略的に示した図であり、本装置はX線回折によって試料1を解析する。 この解析装置は、分析する試料1にX線を放射するためのX線ビーム発生器10を備える。この発生器は、例えば単色ビーム(単波長ビーム)や多色ビーム(複数波長ビーム)を発するX線発生源と共に使用してもよい。 この発生器10から、分析する試料1、特に試料1の中で構造の特徴を調べたい分析ゾーン2にX線が放射される。分析する試料1は粉末であってもよく、その場合分析ゾーン2は一点となる。分析ゾーン2が一定の範囲を持つ面の場合に分析ゾーンにより分析平均面4(分析ゾーンのビーム中心線に沿う面、)が形成されることとする。X線ビームは、分析平均面4に対して入射角(i)を有して符号3で示す入射方向に放射される。 放射された分析ゾーン2で回折したX線は、検出器30で捕捉される。この検出器は一次元でも二次元の検出器でも良く、少なくとも1方向(1方向とは例えばX線のビーム副走査方向若しくは走査方向)に沿って検出可能であれば良い。一次元、二次元検出器はどのようなタイプでもよいが、好ましくは「イメージングプレート」やCCD型の高効率で画像解像度の高い正確な検出器を使用する。また、X線検出面31はどのような形でもよいが、広範囲にしてできるだけ多くの回折X線を捕らえるようにすることが好ましい。また、回折図が著しく変形しないようにX線検出面は回転可能であることが好ましい。 また、本発明では試料1と一次元又は二次元検出器30との間にアナライザシステム20を設ける。このアナライザシステム20の主要な機能は、分析ゾーン2で回折したX線のエネルギーフィルタを行うことである。そのために、アナライザシステムの回折面21はエネルギーフィルタを行うことができる薄膜結晶堆積層で被覆する。この薄膜結晶堆積層は、熱分解グラファイトなどの薄膜結晶堆積層の1層構造であってもよい。この例では、結晶軸方位(002)面による回折線でフィルタが行われる。また、回折面21は、エネルギー通過帯域の幅を調整するものであれば、複数薄膜堆積層(多層構造結晶薄膜堆積層)でも、Si、Ge、SiO2、LiFなどの単結晶による被膜でもよい。このようなアナライザシステム20の回折面21は、反射モードでビームをフィルタする形状、厚さ、特性を有するように設計されているが、回折面21の反対側に検知器が位置するように配向されれば透過モードでビームをフィルタする形状、厚さ、特性となるように設計してもよい。 更に、アナライザシステム20は、試料から様々な回折方向(各回折方向jの回折角をdjとする)に回折したX線を捕捉できるような形状及び配向(位相)にして、フィルタにかけたX線を二次元検出器30のX線検出面31に向かって反射させる。 このために、アナライザシステム20の回折面21は通常、分析平均面4に対して方向(位相)を固定した円弧形状とする。(in the shape of a crescent with an orientation that is fixed inrelation to the analysis mean plane 4) 回折面21は、入射方向3とは異なる方向で分析ゾーン2中心を通る回転軸5を中心に回転する弧状面である。好ましくは、回転軸5と分析ゾーン2の中心から検出器30のセンターを通る軸とを異ならせる。また好ましい実施形態では、回転軸5と入射方向3を略直交させる。分析ゾーン2が分析平均面4を形成するように一定の面積を有する場合は、回転軸5は回折する平均面4に配置することが好ましい。 更に、弧状面からなるX線回折面21は、X線が一次元又は二次元検出器30に向かって、更に正確には検出器30のX線検出面31に向かって反射するように配向する。 回転軸5と回折ビームを含む面、例えば分析平均面4で切断したときの回折面21の切断面を、プロファイル23とする。回折面21を形成する弧状面からなる部分的表面部は、プロファイル23が回転軸5を中心に回転することによって生じる面であると定義することもできる。更に好ましくは、回転面が円周全体ではなく円弧状の部分的な面として構成し、X線発生器10から放出されるX線ビームが試料分析ゾーン2へ入射することを妨害しないようにする。回転面が円周全体に渡る場合、つまり回転軸5に対してプロファイル23が360°に渡って形成された場合、発生器10から放射されたX線入射ビームが試料分析ゾーン2に到達できるようにアナライザシステムに開口部を設ける必要がある。一実施形態では、回転軸5を中心にプロファイル23を回転させると、分析平均面4からで回折されたX線ビームが、前記弧状面からなる部分的表面部が入射するよう配向(回折角度に位相合わせを行う)する。 回転する部分的表面の開放角度を、回折面を発生させるプロファイル23が部分的に回転する角度6として規定する。開放角度6が大きいほど、分析ゾーン2で様々な回折方向djに回折したX線をアナライザシステムで数多く捕らえることができる。開放角度が180°未満の装置は、大きな物体からのシグナルを回折する場合(工業用金属部品、桁、飛行機の翼などの、材料特性の測定や、応力及びテクスチャ測定)に使用することができる。このように開放角度6は0°〜180°であることが好ましく、更に好ましくは2°〜80°とする。そうすると、例えば、試料から放出される蛍光放射線を回折するための検出システムを平均面4とほぼ直交する位置で、同じアッセンブリ内に配置することができる。また、マッピングをするための(2つのレーザーダイオードなどで構成される)基準/心立て手段を配置することもできる。 このように、分析する試料から発生するビームは、アナライザシステム20により(図2、3、4に示すような反射モード(ブラッグ)、又は適当な構造/形状の透過モード(ラウエ)で)回折させる。アナライザシステム20は、回折面21を作り出すプロファイル23を備えた放射面で、試料で回折したビームの全軸方向、つまり全回折方向djのビームを回折させるように構成される。このように構成すると、構造回折をする際に装置や試料を回転させる必要がないので、調整が極めて簡単になり、時間も短縮できる上に、回折した物体の試料標本の質が向上する。 また、回折面21の曲率は、任意の回折方向djで回折面21に到達し検出器30に向かうビームの方向に影響する。 図2は、第1実施例による解析装置におけるアナライザシステム20を、分析平均面4等の回転軸と回折ビームを含む面で切断した断面図である。本実施例において、回折面21を形成するプロファイル23は直線であり、試料1の分析ゾーン2から到達したX線を検出器の表面31に反射させるように傾斜している。 このような直線プロファイルの回折面21を持つアナライザシステム20では、全回折方向djで回折したX線を単色回折することができるが、1方向に向けて回折させることしかできない。このように、試料1で任意の回折方向で回折して入射角とは異なる角度で回折面21に到達した複数のX線は、それぞれブラッグの法則に則った方向に一定のエネルギーで反射する(図2参照)。 図2は、直線プロファイル23の回折面21を備えたアナライザシステム20の放射断面を表し、回折面はグラファイト層でCu−KαX線放射を行い、試料と検出器との距離は170mmで、アナライザの幅は33mmとした。(アナライザの幅は、回転軸と回折ビームを含む分析平均面4などの面で投影したプロファイル23に対応する。)また、所定エネルギーに対して約1mmの幅となる検出器の読取り範囲に対応する許容角度は0.4°である。表面の幅が広い検出器を使用するとエネルギー帯の回折もできるので、試料の蛍光線や非弾性散乱を併せて測定できる。 第2実施例では、アナライザシステム20の回折面21が曲線プロファイル23となっている。曲線プロファイル23は試料1の分析ゾーン2の方向に向かって凹んだ形状であることが好ましい。(図3参照) 例えば対数スパイラル曲線の一部を切り取った形状のプロファイル23であってもよい。更に、プロファイル23は分析ゾーン2と中心が一致する対数スパイラル曲線の一部となるような形状としてもよい。 対数スパイラル曲線状のプロファイル23で作り出される回折面21を持つアナライザシステム20によると、全ての回折方向djのX線をモノクロ回折できるだけでなく、各回折方向djにおける光線の発生源の角度回折も可能となる。このように、任意の回折方向djについて、試料1により回折して様々な方向で回折面21に入射した光線は全て同じブラッグ角で反射するので、検出器30を適当な距離に配置すると、全ての光線がX線検出面の所定の位置に集束することになる。対数スパイラルのプロファイルを持つ回折面に沿った結晶面における傾斜方位は、所定の類似点の発生源から放出されるX線の全範囲の角度に対してブラッグの法則を満たす。アナライザシステムの回折面を部分的に回転させて適切な位置に配置したことよって簡単に回折が可能となるという利点に加えて、このような特徴の曲線にすることによって、検出する光線の数を増やして分析ゾーンを選択すれば、回折信号の強度を上げることができ、また分析する物体の試料標本の質を向上させることができる。 尚、回折面はどんな曲線プロファイルで形成されてもよく、対数スパイラル曲線に限定されない。曲線プロファイルは様々な幅の受信角度で光線を集束させる曲線であればよい。アナライザは、回折ビームの受信角度を増大させるようなサイズに設計してもよく、所定の回折方向djに対する集束可能角度はアナライザシステムのブラッグ角に対応する。(図3に示す反射モードの例では、グラファイト面(002)とCu−KαX線放射を用いた場合の集束可能角度は1°〜約20°の範囲で変化する。)粒径が大きな粉末試料に対してはこの受信角度を広げて、結晶の試料標本の質を向上させる。 図3は対数スパイラルのプロファイル23を有する回折面21を備えたアナライザシステム20の放射断面を示す図である。グラファイト層とCu−KαX線を使用し、試料と検出器との距離は170mmであり、アナライザシステムの幅は33mm、許容角度は5°であり、検出器でのモノクロ読取ラインが1mm未満となる。 図4は図3の対数スパイラルのプロファイル23を有する回折面21を備えたアナライザシステム20によって検出器30に当てられる検出ラインを概略的に示した3次元図である。 二次元検出器30は平面でもよいし湾曲面でもよい。湾曲面の曲率が回折面21の回転軸5と同軸のシリンダの曲率である場合、アナライザによる二次元画像の投影図は帯状であるか、又は図4に示すような線となる。 粉末の回折実験を行うために、湾曲面に黒鉛グラファイト層を溶着して直線プロファイルにした回折面(図2参照)により回折させる反射モードのアナライザシステムを用いてテストを行う。エネルギーをフィルタするために、多色入射ビーム(銅陽極管、Cu−Kα線、2kWの電力(power)、減速放射(制動放射)線で、Cu−Kβ線を除去するためにNiフィルタをかけたビーム)の002面による反射を利用する。このテストでは、試料の分析ゾーンとアナライザシステムとの距離は70mmであり、アナライザシステムの幅は30mmとした。X線検出面がシリンダ状の二次元検出器30を試料の分析ゾーンから170mmの距離に配置し、アナライザシステムの前後にスリットシステムを設ける。 アナライザがX線を入射させて回折しうる回折面の許容角度(傾斜角度)は0.4°であり、発生源からの入射ビームの幅は0.2°である。使用されるスリットによるが、回折線の幅は0.3°〜0.5°となる。このテストによって検出された信号が弱いものであっても、アナライザシステムを使用することによって極めて良好な信号/バックグラウンド比が得られることが分かる。 図5は、試験無機粉混合物(94.31%のAl2O3+1.36%のZnO+4.33%のCaF2)を含有する粉末に対しての入射角と回折強度の関係を示すグラフである。C1曲線はアナライザシステムを使用せずに測定した結果(縦軸の回折強度単位は20で割った値:回折強度の値については比較ができるように適度な補正が行っている)で、C2曲線はアナライザシステムを使用して測定した結果である。アナライザなしの測定結果として、回折ピークでの信号の損失は8倍近くになり(close to a factor of 8)、バックグラウンドは120〜60倍で減少しているので信号/バックグラウンド比は2桁単位で改善されていることが理解出来る。 一方、アナライザシステムを使用すると、回折角度があるためにその角度に対応して図5に示すようにノイズがほぼ一定になる。よって、アナライザシステムを使用すると、ほんの90分の取得時間で細かい結晶相(1重量%未満)であっても全ての結晶相の回折線を検出することができる。 図6のグラフは7種の無機化合物(54.90%のギブサイト、14.93%のベーマイト、10.00%のヘマタイト(赤鉄鋼)、9.98%の針鉄鋼、5.16%の石英、3.02%のカオリナイト、2.00%のアナターゼ)を含有し強い鉄の蛍光線を放出する合成ボーキサイトの混合試料を60分間測定した結果を示す。C3曲線はアナライザシステムを使用せずに測定した結果(グラフの値は実際の回折強度から1500を引いた値)であり、C4曲線はアナライザシステムを使用して測定した結果(グラフの値は実際の回折強度を10倍に拡大させた値)である。アナライザシステムを備えた解析装置によれば、ライン強度は約8倍減少し、ノイズは約80倍減少して、信号/ノイズ比の値が10になる。 この解析装置を移動させずにアナライザシステムを使用して得られたグラフは高分解能を持つ実験用回折計で3時間をかけて、ポイント検出−アナライザアッセンブリで回折角を走査することによって得たグラフに近いものである。図7は、40kV−40mA管の発生源とした、ポイント検出器付きの簡易アナライザでポイント毎に3秒間、0.02°の角度間隔で走査する(フィリプスX’pert型の)走査装置を用いた測定結果を示すグラフである。 固定した試料を用いて粉末回折をするときに、分析ゾーンの大きさに対して回折する粒子が大きい場合、試料標本が大変粗末なものになる。図8のグラフは、ヘマタイト(赤鉄鋼)と粒子の粗い石英(0.1〜0.2mm)の混合物を測定する時に、プロファイルが直線のアナライザシステムを使用した結果と使用しなかった結果を示す。C5曲線はアナライザなしの測定結果(強度は10000減少させた値)であり、C6曲線はプロファイルが直線のアナライザを用いた測定結果(強度は10倍にした値)である。この図において石英ラインの強度は再現性がないことが分かる。しかし、これは回折の時に基本的に生じる欠点であり、直線プロファイルの回折面ではなく任意の点で放射線を収束させることが可能な曲線、例えば対数スパイラルの回折面を用いて、アナライザシステムの許容角度の幅を広げることによって、このような欠点は最小限に抑えることができる。この場合、反射モードではグラファイト薄膜堆積層の回折許容角度は試料それぞれの回転位相に応じて0.4°と5−20°の間で変化させる。更に、この対数スパイラルのプロファイルにすると、潜在的強度増幅率(ゲイン)が12−50になる。 対数スパイラルのプロファイルで幅が広いアナライザシステム(グラファイト層と反射モードの20°方向Cu−KαX線を用いるもの)を使用すると、回折許容角度がより広いアッセンブリを作ることができる。図9は試料の分析ゾーンとアナライザシステム間の距離を29.1mmにした装置の断面図であり、アナライザの幅は115.6mmで、二次元検出器が試料の分析ゾーンから170mmの所に配置されている。この解析装置でアナライザを使用せずに測定したモデリングでは、ライン強度の潜在的増幅率(ゲイン)(50/8)は約6で、ノイズの減少率(50/80)は約1/2であった。この設定では、前記写真フィルム上のイメージは約15mmの幅の帯となる。対象物の円筒状検出器を変位させることにより検出領域を拡大し、回折画像の変形データを保存することができる。このように、本発明の装置によるとエネルギーフィルタを行うと同時に試料の特性回折に用いられる二次元データを(変形させて)保存することができる。この構成は特に単結晶の二次元回折グラフをフィルタするために使用する。 対象物の二次元のイメージを検出器では線に変形させたい場合は、幅の短い対数スパイラルプロファイルにして許容角度が5°から大きくとも10°と狭いアナライザシステムを使用してもよい。アナライザを使用せずに測定した場合、そのような装置はラインの強度増幅率(ゲイン)(12/8−25/8)が約1.5〜3となり、バックグラウンド減少率(12/80−25/80)が約1/8〜1/4になる可能性がある。この場合には、フィルムのイメージは幅1mm未満の線となる(図3参照)。よって円筒状検出器が中心軸に平行に直線移動するだけで粉末を回折分析することができる。 回折面が直線プロファイルまたは対数スパイラルプロファイルである色フィルタ及び角度フィルタシステムを使用することによって、極めて良好な信号/バックグラウンドノイズ比の値が得られる。プロファイルを湾曲、好ましくは対数スパイラルとすることによって、強度を増幅させることができると同時に、分析対象物の試料標本を向上させることができる。尚、本装置は図2、3、4に示すような反射モード(ブラッグモード:X線解析装置では一般にX発生部と試料と検出部は常にブラッグの条件が満たされるように連動して動くようになっている。)でもよいし、透過モード(ラウエモード:それぞれの原子によって回折されたX線が干渉によって強め合う条件、干渉によって強め合う方向にのみ回折されたX線が観測される。)でもよい。いずれにしても、適当な構造や形状にして、回転軸及び/又は対数スパイラルの曲率、また他の要素を考慮して適用する。更に、アナライザシステムを本発明のような形状及び配設位置にすることによって、可動部材を使わずに回折計/蛍光計を設計することができる。また、蛍光X線の平行測定や対象物表面の分析ポイントのセンタリング装置を使用することもできる。 本発明によるアナライザシステムは、二次元検出器を使用した複数の回折用機器と共に使用することができるので大変幅広く適用することができる。例えば以下のものに使用できる。・粉末の回折(相分析、リートフェルト法及び二体分布関数(PDF)による分析) 尚、これらは化学や材料科学の分野における様々な研究所や産業で重宝されるばかりではなく、大きな計器(シンクロトロン、ニュートロンなど)に対する研究のためにも重要である。特に、蛍光X線、非弾性散乱、試料の周囲環境に起因するバックグラウンドを減少させたい時に用いる。・バイオ結晶と単結晶分析(回折画像を変位させてエネルギーフィルタにかける。) バックグラウンドノイズを減少させて、構造を解明し、またシンクロトロン放射による多波長異常回折データ(MAD)を集積するために用いる。・表面又は原位置測定のための単結晶回折 試料の含有物、周囲環境又は蛍光X線から生じるバックグラウンドノイズを減少させるために用いる。 「2次元の画像」を「一次元の線」に光学的変換ができる二次元アナライザ/検出器の曲率を調整し配置場所を設定し、更に対応するスリットを設けることによって、以下のものに適用できる。・粉末についての動態測定、つまり連続的な測定 この測定では、各デバイリングの扇形部(5°〜10°)を一点に収束させて、粉末の全図形を一本の線に投影させる。これは、固体化学(chemistry of solid)や、薬理学、微細構造マッピングで適用される。・回折面のプロファイルを対数スパイラル状に湾曲させることによってフラックスが増幅しよりよいサンプリング結果が得られることに伴う、アナライザシステムの信号/バックグラウンドノイズ比が良好な可動型回折計/蛍光計の創作 テスト結果で示したように、このような回折計/蛍光計は可動部がなく移動させることができるため多相材料の分析に使用できる。よって、遺跡発掘現場(壁分析(wall analysis))、工場現場(製造装置のチェック及びモニター)、更には多種多様な産業上の目的(テクスチャ、レールにかかる応力、翼の動き(wing behavior)などの測定)で直接的に適用できる。・蛍光X線の測定 X線の発生源がほぼ一点として、エネルギーの選択(回折面のプロファイルを対数スパイラルにすることによる)やエネルギー範囲の選択(回折面のプロファイルを直線又は傾斜角度を付けた曲線にすることによる)を可能にするためにスロットを設けると、このような回折面のプロファイルによって新規な波長分散型X線解析装置となる。・画像測定 X線発生源がほぼ一点であり、検出器30をアナライザの準収束距離の外に置いた場合、非弾性散乱や蛍光X線を除去することができる(回折面のプロファイルは対数スパイラルとする)。発生源が無限遠の時は平面アナライザでよい。 尚、アナライザシステムを備えた装置は中性子ビームによる試料分析にも使用できる。 本発明には前記した新規な情報及びその利点の範囲を実質的に超えなければ様々な改良を付加できることは容易に理解できるだろう。よって、このような改良については前記した解析装置及びアナライザシステムの範囲に含まれるものである。 分析平均面(analysis mean plane)(4)を画定する試料(1)の分析ゾーン(2)を放射する、一定の入射方向(3)で放出されるX線ビームの発生部(10)と、 前記放射された分析ゾーン(2)で回折したX線を少なくとも1次元座標上で検出する検出器(30)と、を備えた試料(1)のX線解析装置において、 更に、前記試料(1)と検出器(30)の間に配置され、前記分析平均面(4)に含まれる回転軸(5)を中心に回転する周面の一部を切り取った面(partial surface、以下弧状面という)からなるX線回折面(21)を含むアナライザシステム(20)を備え、前記回転軸(5)は前記X線の入射方向(3)とは異なる方向で前記分析ゾーン(2)の中心を通り、前記X線回折面(21)を経て前記検出器(30)に向かって回折されたX線を出射させるように前記回折面(21)が配置されることを特徴とするX線解析装置。 前記弧状面は、前記回転軸(5)と回折ビームを含む面における前記回折面(21)の切断面として画定されるプロファイル(23)の部分的な回転によって形成される面であることを特徴とする請求項1記載の装置。 前記回転軸(5)は前記入射方向(3)と略直交することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。 前記弧状面は、前記分析平均面(4)をスタートとして前記プロファイル(23)が前記回転軸(5)を中心に回転することにより形成され、回転角度は360°未満、好ましくは180°未満、更に好ましくは2°〜80°の間の角度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。 更に、前記試料から放出される蛍光線を分析するための蛍光線検出部を備え、該蛍光線検出部は前記平均面(4)と略直交して配置されることを特徴とする請求項4記載の装置。 前記プロファイル(23)は直線であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の装置。 前記プロファイル(23)は、前記試料(1)の分析ゾーン(2)に向かって凹む曲線であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の装置。 前記プロファイル(23)は対数スパイラル曲線の一部であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の装置。 前記対数スパイラル曲線の中心は前記分析ゾーン(2)の中心と一致することを特徴とする請求項8に記載の装置。 更に、前記アナライザシステム(20)への入射部と出射部とに前記回折X線入射/出射用のアナライザ付随スリットを設けることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。 前記回折面(21)には、熱分解グラファイトの結晶層が含まれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。 前記回折面(21)には、多層薄膜堆積層が含まれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。 前記回折面(21)には、単結晶被膜が含まれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。 前記回折面(21)は、反射モードのエネルギーが回折されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。 前記検出器(30)は一次元若しくは二次元の検出器であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。 前記検出器(30)は湾曲X線検出面(31)を備えた2次元検出器であって、該湾曲X線検出面(31)は前記回折面(21)の回転軸と中心軸を同一とするシリンダ面(円筒面)の一部であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。 前記発生部(10)、前記アナライザシステム(20)、前記検出器(30)は、相互の位置が固定されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。 前記アナライザシステム(20)の前記X線回折面(21)は、対数スパイラル曲線の一部を切り取った形状のプロファイルが回転軸を中心に部分的に回転することにより生じる弧状面を備えた光学アッセンブリであることを特徴とする請求項1に記載の装置。