タイトル: | 公開特許公報(A)_タグペプチド |
出願番号: | 2010259424 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07K 7/06,C07K 1/14,G01N 33/53,C12N 15/09 |
松葉 隆雄 JP 2011140483 公開特許公報(A) 20110721 2010259424 20101119 タグペプチド 東ソー株式会社 000003300 松葉 隆雄 JP 2009277382 20091207 C07K 7/06 20060101AFI20110624BHJP C07K 1/14 20060101ALI20110624BHJP G01N 33/53 20060101ALI20110624BHJP C12N 15/09 20060101ALN20110624BHJP JPC07K7/06C07K1/14G01N33/53 DC12N15/00 A 7 2 OL 25 4B024 4H045 4B024AA11 4B024CA04 4B024DA06 4B024GA11 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA14 4H045EA50 4H045FA74 4H045GA26 本発明は、タンパク質を高感度に検出するためのタグペプチド、およびそれを用いたタンパク質の精製・検出方法に関する。 遺伝子工学的に発現させたタンパク質の精製・検出や、担体への固定化を簡便に行なうための技術として、前記タンパク質を発現させる際に、タグペプチドとよばれる、前記ペプチドを認識する物質(例えば抗体など)と特異的に結合可能なペプチドを、前記タンパク質に付加した状態で発現後、前記ペプチドを認識する物質を用いて精製・検出・固定化を行なう方法が知られている。 従来から知られているタグペプチドの例として、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるFLAGタグ(特許文献1および2)、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるMycタグ(非特許文献1)、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるHisタグ(特許文献3および4)、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるEタグ、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるHAタグ、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるT7タグ、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるPkタグ、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるHSVタグ、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるVSV−Gタグ、などの正常細胞内には本来存在しない、ウイルス、ファージ、癌遺伝子由来のタンパク質の部分領域や、同じアミノ酸配列の繰り返しからなる、10アミノ酸程度のペプチドがあげられる。前記例示した9種類のタグペプチドの中で、FLAGタグ(配列番号1)は高性能なタグとして知られている。しかしながら、近年の実験の高感度化に伴い、特異性および反応性がさらに向上したタグペプチドが要求されている。米国特許4703004号公報特許2665359号公報特開昭63−251095号公報米国特許5310663号公報特開2009−024030号公報Evan et al.、Mol.Cel.Biol.、5(12)、3610−3616(1985) 新規のタグペプチドを検討する際、タグペプチドの原理から考えると、一見いかなるアミノ酸配列からなるペプチドでも、その配列を特異的に認識する物質(抗体など)があれば、タグペプチドとして使用できると思われる。しかしながら、現実的にタグペプチドとして産業上で使用することを考えた場合、タグペプチドの配列を決定することは容易ではない。その理由として、タグペプチドを付加したタンパク質を特異的に精製・検出するには、前記タグペプチドのアミノ酸配列が通常の実験系で使用されるタンパク質のアミノ酸配列の中に含まれないことはもちろん、それに類似するアミノ酸配列も存在しないことが必要なためである。相同配列・類似配列の有無を確認するには、BLASTといったデータベースを用いた相同性検索により可能である。しかしながら、タグペプチドを認識する物質(例えば、抗体など)が、前記タグペプチドのアミノ酸配列と類似した配列からなるペプチドに対してどの程度の交差反応性があるかを推測するのは困難であり、また前記データベースに未登録のタンパク質に対する交差反応性については予測がさらに困難である。 ならば、本来タンパク質には組み込まれないアミノ酸や低分子有機化合物をタグとして用いればよいのではないかと思われるが、実際には交差反応性の原因はアミノ酸の一次配列だけではなく、配列特異的ではない静電的相互作用、疎水的相互作用などの影響で起こることもある。つまり、天然に存在しないような物質をタグとして使用することは、かえって交差反応性の予測を困難にする可能性がある。また、前記アミノ酸や有機化合物をタグとする場合、タグを遺伝子工学的にタンパク質へ付加するのが困難という新たな問題が発生する。 さらに、タグペプチドを免疫測定試薬用途に用いる場合、検体中に含まれる各種成分は検体間で異なるため、検体ごとにタグペプチドに対し異なる影響を与える可能性もある。つまり、たとえ産業上有効なタグペプチドが設計できても、前記タグペプチドがそのまま免疫測定試薬用途に用いることができるとは限らない。設計したタグペプチドを免疫測定試薬用途で使用可能かどうかを判断するには、非常に多数の検体を評価するしかないが、タグペプチドの有用性を確かめる目的で、非常に多数の検体を評価することは事実上極めて困難である。 そこで本発明の目的は、従来よりも特異性および反応性が向上し、かつ免疫測定試薬用途にも使用可能なタグペプチド、および前記タグペプチドを用いたタンパク質の精製・検出方法を提供することにある。 前記課題を鑑み発明者が鋭意検討した結果、これまでに報告例がなく、かつ免疫測定試薬用途においても使用可能なタグペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち第一の発明は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチドである。 また第二の発明は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドのうち、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換した、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチドである。 また第三の発明は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドのうち、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させた、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチドである。 また第四の発明は、第一から第三の発明のいずれかに記載のオリゴペプチドを付加したタンパク質と、前記ペプチドを認識する物質とを用いた、タンパク質の精製・検出方法である。 また第五の発明は、前記タンパク質がC末端側に第一から第三の発明のいずれかに記載のオリゴペプチドを付加したタンパク質であり、前記ペプチドを認識する物質が前記ペプチドを認識する抗体である、第四の発明に記載の精製・検出方法である。 また第六の発明は、前記タンパク質が、第一から第三の発明のいずれかに記載のオリゴペプチドを遺伝子工学的に付加することで得られたタンパク質である、第四または第五の発明に記載の精製・検出方法である。 また第七の発明は、前記タンパク質が、第一から第三の発明のいずれかに記載のオリゴペプチドを化学的に付加することで得られたタンパク質である、第四または第五の発明に記載の精製・検出方法である。 以降、本発明について詳細に説明する。 タンパク質を精製・検出するのに有用なタグペプチドには、(1)融合させるタンパク質に与える影響を少なくするためにアミノ酸の長さが短いこと、(2)類似した配列が存在せず特異性が高いこと、(3)ペプチドに対する親和性の高い物質が存在すること、が要求される。そこで、前記要求を満たすペプチドを鋭意検討した結果、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のC末端側7アミノ酸(配列番号10、以下BNCと略する)がタグペプチドとして有用であることを見出した。 BNPは32アミノ酸からなる環状ペプチドである。健常人における血漿中BNP濃度は20pg/mL以下と極めて低いが、慢性および急性心不全患者では重症度に応じて著しく増加し、BNPの測定により心不全の病態の把握に重要な意義を持っていることから、近年極めて多くの検体が測定されている。通常BNPは、BNPのC末端を認識する抗体と環状部分を認識する抗体でBNPを挟み込むサンドイッチ法で測定されている。配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCは、(1)アミノ酸の長さが短く、(2)BNCと交差反応性を有する物質の存在が否定されており、(3)親和性および特異性の高い物質が存在する、ためタグペプチドとして有用である。 これまでに報告されているタグペプチドは10アミノ酸程度の長さのものが多く、高性能なタグペプチドとして知られているFLAGタグ(配列番号1)は8アミノ酸である。一方、BNCは7アミノ酸であることから、付加するタンパク質への影響がより低減することが予想される。 また、BNCに結合する抗体を使ったBNPの測定系は、すでに免疫測定試薬として上市(例えば、東ソー社製Eテスト「TOSOH」II(BNP))されている。つまり、これまでに非常に多数の検体が測定されているが、原因不明の交差反応などの問題は発生していない。このことは、BNCまたはそれと類似した配列を有するタンパク質およびペプチドは検体中には存在しないか、あるいは存在しても測定に影響を与える濃度ではないことを意味している。以上より、BNCは特異性の高いタグペプチドとして有用であることを示唆しており、免疫測定試薬用途で有効に使用できるのはもちろん、通常の実験においても特異性や反応性の高いタグペプチドとして利用可能である。 さらに、BNCに対する親和性および特異性の高い物質として、BNCを認識する抗体が存在する。前記抗体は、単にBNCのアミノ酸配列を認識しているのはなく、BNCがタンパク質のC末端側に存在することまでも認識する。C末端側にBNCのアミノ酸配列を有するタンパク質の存在確率は極めて低い。そのため、BNCはタグペプチドとして有用であり、C末端側にBNCを付加したタンパク質とBNCを認識する抗体とを用いることで、特異性が高く、高感度な検出が可能である。 BNCをタグペプチドとして用いる際、検体(血液)に含まれるBNPにより、C末端側にBNCを付加したタンパク質とBNCを認識する物質との結合性に影響を与えるおそれが考えられた。しかしながら、実際の測定系でBNP混入による影響を確認したところ、臨床検体でみられる濃度よりもはるかに高い100ng/mLのBNPが検体中に含まれていても、C末端側にBNCを付加したタンパク質とBNCを認識する物質との結合性に影響を及ぼさないことが確認されている(実施例9参照)。しかしながら測定系により、抗体や抗原の濃度、ブロッキング剤、緩衝液の条件などが異なるため、測定系を新たに構築した際は、大過剰のBNPを測定系に添加し、どの程度の濃度で影響がではじめるかを確認したほうがよい。 BNCをタグペプチドとして利用することで、BNCを付加したタンパク質をアフィニティー精製することができる。アフィニティー精製は、適切な担体に、BNCを認識する物質をBNCを付加したタンパク質との結合性を保持した状態で結合させたものを用いて精製すればよい。BNCを認識する物質としては、BNCを認識するモノクローナル抗体・ポリクローナル抗体・抗血清が例示できるが、ロット間差の考慮が不要なモノクローナル抗体が、安定的な精製ができる点で好ましい。BNCを認識する物質と結合したBNCを付加したタンパク質の溶出は、通常pHを変化させて溶出すればよいが、pH変化に対して不安定なタンパク質を精製する場合は大過剰のBNCを添加して溶出させてもよい。 発現させるタンパク質にBNCを付加する方法として、遺伝子工学的方法で付加する方法があげられる。具体的には、発現させるタンパク質のN末端側またはC末端側にBNCをコードするポリヌクレオチドを付加すればよい。なお、発現させるタンパク質にBNCを付加する際、発現させるタンパク質のN末端側またはC末端側の直後にBNCを付加してもよいし、発現させるタンパク質との相互作用を避けるための任意のリンカーペプチドを介してBNCを付加してもよい。前記リンカーペプチドの一態様として、配列番号11に示すアミノ酸配列からなるフレキシブルなリンカーペプチドが例示できるが、前記配列に限定されるものではない。発現させるタンパク質にBNCを付加する別の方法として、化学的に付加する方法があげられる。前記方法の一態様として、発現させるタンパク質とSMCCなどの試薬とを反応させることで前記タンパク質にマレイミド基を導入後、BNCと反応させて、BNCを化学的に導入する方法があげられるが、発現させるタンパク質とBNCとの結合方法に特に限定はなく、例えば、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミンなどの高分子を介して付加してもよいし、マレイミド基以外の官能基を介して化学的に付加してもよい。 BNCは、前述したタンパク質の精製・検出目的のほかに、タンパク質の担体への固定化目的で使用することもできる。タンパク質を直接水不溶担体に固定化すると、立体構造の変化がおきやすく、活性が失われる場合が多い。そこで、BNCを認識する物質を水不溶性担体に固定化しておき、前記固定化担体にBNCを付加したタンパク質を固定化させる方法を採用することにより、立体構造の変化がおきにくい状態で担体に固定化することができる。 免疫測定試薬でしばしば問題になるのは、異好性抗動物抗体である。たとえば、ウサギ由来ポリクローナル抗体(抗原認識)と抗ウサギ抗体(水不溶性担体に固定化)とが反応系の中に含まれる場合、測定検体の中に抗ウサギ抗体が存在すると、検体中の抗ウサギ抗体により、本来想定している量のウサギ由来ポリクローナル抗体が水不溶性担体に捕捉されなくなり、正確な測定値が得られなくなってしまう。そこで、ウサギポリクローナル抗体にBNCを付加し、水不溶性担体に抗BNC抗体を固定化することで、異好性抗動物抗体の影響をなくした測定系が構築できる。 なお、BNCは配列番号10に記載の7アミノ酸からなるオリゴペプチドであるが、BNCを構成するアミノ酸のうちの一つ以上を他のアミノ酸に置換したオリゴペプチド(以下、改変BNC)も本発明のオリゴペプチドに含まれる。改変BNCは、BNCと比較し親和性(結合性能)および/または特異性が変化しているため、使用目的に応じ適切な改変BNCを選定し、タグペプチドとして使用すればよい。改変BNCの好ましい一態様として、BNCを構成するアミノ酸のうち1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上をアスパラギン酸またはグルタミン酸(すなわち酸性アミノ酸)に置換したオリゴペプチドがあげられる。さらに、BNCを構成する各アミノ酸のうち、親和性および/または特異性が変化した置換を組み合わせることで、より好ましい改変BNCが得られる。前記より好ましい改変BNCの一例として、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸を全てアスパラギン酸に置換したオリゴペプチド(DDDLRRH、配列番号21)があげられる。前述したように、BNCをタグペプチドとして利用することで、BNCを付加したタンパク質のアフィニティー精製が可能である。そのため、親和性(結合性能)および/または特異性の向上した改変BNCをタグペプチドと利用することで、BNCを付加したタンパク質のアフィニティー精製をより効率的に行なうことができる。 一方、BNCを構成するアミノ酸のうち一部のアミノ酸を欠失させたオリゴペプチド(以下、欠失BNC)も本発明のオリゴペプチドに含まれる。具体的には、BNCを構成するアミノ酸のうち1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させた欠失BNCであれば、BNCと比較して親和性(結合性能)は低下するものの、使用目的によってはタグペプチドとしての性能を十分に有している。 本発明は、長さが7アミノ酸と短く、これまでの実績から交差反応性を有する物質の存在が否定されており、親和性および特異性の高い物質(抗体)が存在する、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のC末端側7アミノ酸(BNC)、およびそれを用いたタンパク質の精製・検出方法である。精製・検出対象タンパク質のN末端側またはC末端側に遺伝子工学的にまたは化学的にBNCを付加させ、それとBNCを認識する物質とを結合させて精製・検出する方法により、従来知られているFLAGタグを用いた精製・検出方法と比較し、特異性や感度を向上させることができる。 なお前記BNCは、BNCを構成するアミノ酸のうち1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換した改変BNCであってもよく、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させた欠失BNCであってもよい。特に1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換した改変BNCは、結合性能(親和性)が向上しており、BNCと比較し、より高感度/高特異的な検出およびより効率的なアフィニティー精製が可能である。実施例2で得られた、各タグペプチドを付加したマルトース結合タンパク(MBP)のSDS−PAGE結果である。図中、MBP−BNCはMBPのC末端にBNPのC末端側ペプチド(BNC)を付加したMBPを示す。同様に、MBP−FLAGはFLAGタグを、MBP−MycはMycタグを、MBP−HisはHisタグをそれぞれMBPのC末端に付加したMBPを示す。実施例4の結果を示すものである。図上部の数値は各ウエルで電気泳動した各タグペプチドを付加したMBPのモル数を示し、右側は本ウエスタンブロッティングのアッセイフォーマットを示す。実施例5の結果を示すものである。縦軸はELISAで得られたシグナルを示し、横軸は各タグペプチドを付加したMBPの添加量(μg/mL)を示す。なお、図上部の数値は各ウェルで反応させた各タグペプチドを付加したMBPのモル数を示し、右側は本ELISAのアッセイフォーマットを示す。実施例6の結果を示すものである。図右側は本ELISAのアッセイフォーマットを示す。実施例7の結果を示すものである。図右側は本ELISAのアッセイフォーマットを示す。実施例8の結果を示すものである。実施例9で実施した、抗E2抗体へのBNC導入スキームを示すものである。実施例9の結果を示すものである。図右側には、本測定系のアッセイフォーマットを示す。H鎖C末端側に直接BNCが結合した遺伝子組み換え型抗エストラジオール抗体(RaMoAb−BNC)の検量線を示すものである。図左側は蛍光強度(FI)測定用ELISAのアッセイフォーマットを、図右側は抗体濃度測定用ELISAのアッセイフォーマットを、それぞれ示す。図9の検量線を用いた、結合性能評価の概要を示すものである。実施例13の結果のうち、BNCの1番目のシステインを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの2番目のリジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの3番目のバリンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの4番目のロイシンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの5番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの6番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの7番目のヒスチジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC2−7で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの1番目のシステインを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの2番目のリジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの3番目のバリンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの4番目のロイシンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの5番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの6番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの7番目のヒスチジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC23−11で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの1番目のシステインを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの2番目のリジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの3番目のバリンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの4番目のロイシンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの5番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの6番目のアルギニンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例13の結果のうち、BNCの7番目のヒスチジンを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例14の結果を示すものである。なお、BNC認識抗体はBC30−73を使用している。実施例13の結果のうち、BNCの1番目のシステイン、2番目のリジンまたは3番目のバリンをそれぞれアスパラギン酸に置換したオリゴペプチドをBNC認識抗体BC30−73で評価した結果である。実施例15の結果を示すものである。黒丸はBNC(配列番号10)、黒三角はN末端側1アミノ酸欠失体(配列番号25)、白丸はN末端側2アミノ酸欠失体(配列番号26)、白三角はN末端側3アミノ酸欠失体(配列番号27)の結果をそれぞれ示す。 以下に本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、これら実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。 実施例1 タグペプチドを付加したタンパク質を発現可能な形質転換体の調製 マルトース結合タンパク(MBP)のC末端側にタグペプチドを付加したタンパク質を発現可能な形質転換体を以下の方法で調製した。(1)各タグペプチドをコードするオリゴヌクレオチド(相同鎖および相補鎖)をそれぞれ10μMとなるようにTEで希釈し、それらを混合後、95℃で5分間熱処理し、その後25℃まで徐々に冷却することで、アニーリングを行なった。なお、使用したオリゴヌクレオチドとして、FLAGタグ(配列番号1)の場合は配列番号12(相同鎖)および13(相補鎖)を、Mycタグ(配列番号2)の場合は配列番号14(相同鎖)および15(相補鎖)を、Hisタグ(配列番号3)の場合は配列番号16(相同鎖)および17(相補鎖)を、BNPのC末端側ペプチド(配列番号10、以降BNCと略する)の場合は配列番号18(相同鎖)および19(相補鎖)を、それぞれ用いた。(2)(1)で得られた各タグペプチドをコードするオリゴヌクレオチド(二本鎖DNA)を、あらかじめBamHIとHindIIIで処理したpMAL−c4Xベクター(ニューイングランドレイブス社製)に挿入した。挿入方法は、制限酵素処理したpMAL−c4Xベクター67ngと(1)のオリゴヌクレオチド100ngに、DNAライゲーションキット(タカラバイオ社製)を4μL添加し、16℃で30分間ライゲーション反応を行なうことで挿入した。(3)(2)で得られた、各タグペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを挿入したpMAL−c4Xベクターで、定法に従い大腸菌(JM109株)を形質転換した。 実施例2 タグペプチドを付加したタンパク質の調製 実施例1で得られた形質転換体を、50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で培養し、600nmの濁度が0.5になった時点で終濃度1mMになるようにIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を添加後、さらに37℃で4時間培養した。その後大腸菌を集菌し、アミロースカラムを使ったアフィニティークロマトグラフィーにより、発現した各タグペプチドを付加したマルトース結合タンパク(MBP)を精製した。精製した前記タンパクのSDS−PAGE結果を図1に示す。 実施例3 BNPのC末端側ペプチド(BNC)認識抗体の単離 BNPのC末端側ペプチド(BNC)を認識する抗体を以下の方法で単離した。(1)配列番号10のアミノ酸配列からなるBNC 20mgを、10mgのマレイミドで活性化した10mgのオボアルブミン(PIERCE社製)に、添付された説明書に従い結合させた。その後PBSで透析し、1mg/mLに調製した。(2)(1)で調製したタンパク質とFCA(フロイント完全アジュバント)とを等量混合したエマルジョンを、100μL/匹でマウス腹腔内に注射した(1回目の免疫)。(3)2回目以降は、FCAをFICA(フロイント不完全アジュバント)に変更したほかは、(2)と同様に毎週免疫を行ない、これを3回繰り返した。(4)免疫後のマウスから脾臓B細胞を取り出し、ミエローマ細胞株とPEG法による細胞融合を行なった。 前記操作により、BNCに特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマ6種(BC2−7、BC23−11、BC25−2、BC25−32、BC30−62、BC30−73)が得られた。 実施例4 各タグペプチドを用いた検出感度比較(その1) ウエスタンブロッティング法により、各タグペプチドを用いた検出感度比較を行なった。(1)実施例2で精製した各タグペプチドを付加したMBP(濃度;2400fmol、800fmol、240fmol、80fmol、24fmol、8fmol、2.4fmol、0.8fmol)をSDS−PAGEにかけた。なお、試料量が少ない場合における非特異的な吸着によるロスを防止するために、精製した各タグペプチドを付加したMBPは、ミエローマ細胞をPBSで破砕した上清で希釈したものを用いた。具体的には、マウスミエローマ細胞(SP2/0)の4×107個を1mLのPBSに懸濁し、超音波で破砕後、15000rpmで10分間遠心分離した上清を使用した。(2)各タグペプチドを付加したMBPを定法に従いPVDF膜に転写後、下記に示すウエスタンブロッティングを行なった。(2−1)転写後のPVDF膜を、5%スキムミルクを含むTBS中で、4℃で一晩放置することによりブロッキングした。(2−2)一次抗体(抗FLAG抗体:SIGMA社製(M2)、抗Myc抗体:和光純薬社製(9E10)、抗His抗体:Roche社製(1922416)、BNC認識抗体:BC2−7/BC23−11/BC25−2/BC25−32/BC30−62/BC30−73(実施例3で単離した抗体))を0.5μg/mLとなるように、5%スキムミルクを含むTBSで希釈した。(2−3)室温で2時間反応し、TBS−T(TBS−Tween20)でPVDF膜を4回洗浄後、TBS−Tで50000倍に希釈したHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)標識された抗マウス抗体(GEヘルスケア社製、NA931)を添加し、室温で2時間反応した。(2−4)PVDF膜をTBS−Tで4回洗浄し、ECL Plus(GEヘルスケア社製、RPN2132)で発色させた。 結果を図2に示す。一般的に使用されているタグペプチドの中では、FLAGタグが最も性能が高く(検出感度:24fmol)、以下、Mycタグ、Hisタグの順番になった。一方、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCを認識する抗体を用いると、FLAGタグを用いた系と比較し、同等から10倍程度高感度に検出(検出感度:2.4から24fmol)することが判明した。 実施例5 各タグペプチドを用いた検出感度比較(その2) ELISA法により、各タグペプチドを用いた検出感度比較を行なった。(1)評価したい抗体(タグペプチド認識抗体)をELISAプレートに0.1μg/ウエルで固定化し、1%スキムミルクでブロッキングした。(2)実施例2で精製した各タグペプチドを付加したMBPを添加し反応させた(濃度:24pmol/ウェル、2.4pmol/ウェル、240fmol/ウェル、24fmol/ウェル、2.4fmol/ウェル、0.24fmol/ウェル)。(3)HRP標識された抗MBP抗体(ニューイングランドレイブス社製、E8038S)で、固相に捕捉された各タグペプチドを付加したMBPの量を測定した。 結果を図3に示す。配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCを認識する抗体(BC2−7/BC23−11/BC25−2/BC25−32/BC30−62/BC30−73)を固相に固定化したものは、FLAGタグ(Anti−FLAG)またHisタグ(Anti−His)を認識する抗体を固相に固定化したものと比較し、特に低濃度領域(240fmol/ウェル以下の領域)で、タグペプチドを付加したMBPの補足量が増大していることが判明した。なお、今回検討したBNC認識抗体のうち、BC30−73を固相に固定化したものは、FLAGタグを認識する抗体(Anti−FLAG)を固相に固定化したものと比較し、100倍以上の感度を有している。 実施例6 アフィニティー精製用タグとしての性能(pH変化による溶出) BNPのC末端側ペプチド(BNC)認識抗体と結合した、BNCを付加したペプチドの、pH変化による溶出を確認した。(1)実施例3で得られたBNC認識抗体のうちの5種(BC2−7/BC23−11/BC25−2/BC30−62/BC30−73)を、96ウエルプレートにそれぞれ0.1μg固定化した。(2)1%スキムミルクを含むPBSで十分にブロッキングした後、N末端にビオチンを導入した配列番号20(9番目から15番目のアミノ酸が配列番号10に記載のアミノ酸に相当)に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを1μg添加し、反応させた。(3)1時間反応後、pHが異なる緩衝液(PBS、100mM グリシン−塩酸緩衝液(pH1.5)、100mM グリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)、100mM グリシン−塩酸緩衝液(pH3.0)、100mM グリシン−塩酸緩衝液(pH3.5))で3回洗浄した。(4)アルカリホスファターゼで標識されたストレプトアビジンを反応させ、洗浄後p−ニトロフェニルリン酸(PNPP)を反応させ酵素活性を測定した。 結果を図4に示す。いずれのBNC認識抗体を用いた場合においても、pHの変化により配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを完全に解離できることがわかり、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド(BNC)がアフィニティー精製用のタグペプチドとして十分な性能を有していることが判明した。なお、今回検討したBNC認識抗体のうち、BC2−7は比較的温和な条件(pH3.5)で結合したペプチドを完全に解離できるため、アフィニティー精製用の抗体として優れていることがわかる。 実施例7 アフィニティー精製用タグとしての性能(ペプチド添加による溶出) BNPのC末端側ペプチド(BNC)認識抗体と結合した、BNCを付加したペプチドの、BNC添加による溶出を確認した。(1)実施例3で得られたBNC認識抗体のうちの5種(BC2−7/BC23−11/BC25−2/BC30−62/BC30−73)を、96ウエルプレートにそれぞれ0.1μg固定化した。(2)1%スキムミルクを含むPBSで十分にブロッキングした後、N末端にビオチンを導入した配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを1μg添加し、反応させた。(3)1時間反応後、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチド(BNC)を含んだ溶液を100μL添加し(ペプチド濃度:1μg/mL、10μg/mL、100μg/mL)、反応させた。(4)1時間反応後、十分に洗浄し、アルカリホスファターゼで標識されたストレプトアビジンを反応させた。(5)洗浄後、PNPPを反応させ酵素活性を測定した。 結果を図5に示す。いずれのBNC認識抗体を用いた場合においても、BNCの添加により、結合した配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドと完全に解離できることが判明した。pHの変化を伴わずにタグペプチドを付加したタンパク質(ペプチド)の溶出が可能なことは、pHの変化に弱いタンパク質に対しても適用可能であることを意味するため、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド(BNC)がアフィニティー精製用のタグペプチドとして好ましい性能を有していることがわかる。 実施例8 BNPのC末端側ペプチド(BNC)を付加したタンパク質の精製 配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチド(BNC)をタグペプチドとして用い、タンパク質の精製を行なった。(1)実施例1で得られたBNCを付加したMBPを発現する形質転換体(大腸菌)を、実施例2に記載の方法で培養後、超音波で破砕し、可溶性画分(ライセート)を得た。(2)実施例3で得られたBNC認識抗体のうちの5種(BC2−7/BC23−11/BC25−2/BC30−62/BC30−73)を、NHSで活性化されたカラム(GEヘルスケア社製:NHS HP SpinTrap)に、商品添付の説明書に従い固定化することで、抗体固定化カラムを調製した。(3)(2)の抗体固定化カラムに(1)の可溶性画分をロードすることで、BNCを付加したMBPを抗体固定化カラムに吸着させた。(4)吸着したBNCを付加したMBPを100mM グリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)で溶出した。なお、アミロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによるBNCを付加したMBPの精製を比較例として行なった。 SDS−PAGEによる純度検定結果を図6に示す。左から2列目のレーンが可溶性画分(ライセート)、黒四角の位置にあるバンドがBNCを付加したMBPに相当するバンドである(その他のバンドは形質転換体由来のタンパク質に相当するバンド)。図6より、BNC認識抗体結合カラムを用いてBNCを付加したMBPを精製した場合におけるタンパク質の精製度が、アミロースカラムを用いた場合と同等であることがわかる。よって、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド(BNC)をタグペプチドとして用いることにより、タンパク質を夾雑物の混入なしに高純度に精製できることが判明した。 実施例9 B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度の影響 配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチド(BNC)を免疫測定用途に用いた場合、検体中に存在するBNPの濃度によっては、前記BNPによりBNCと抗体との結合が競合的に阻害されるおそれがあった。そこで、BNP濃度によるBNCとBNC認識抗体との結合性の影響を検討した。(1)BNCを共有結合した抗エストラジオール抗体(以下抗E2抗体と略する)を作製した。(2)(1)で作製した抗E2抗体とSulfo−SMCC(PIERCE社製、22322)とを説明書に従い反応後、大過剰のBNCと反応させることで、BNCと共有結合した抗E2抗体を作製した(図7)。(3)3μgのBNC認識抗体(BC23−11)を固定化した磁性ビーズに、(1)で作製した抗E2抗体を一定量反応させた。(4)以下に示す3つの成分のうち、(b)と(c)とをそれぞれ50μL加えた中に、(a)を50μL添加することで反応を開始した。三つの成分は、 (a)BNC標識抗体(5ng/50μL)、 (b)エストラジオール標識アルカリホスファターゼ(0.05mA/50μL)、 および (c)種々の濃度のBNPである。(5)37℃で10分間反応後、十分に洗浄し、固相に残ったALPの酵素活性を定法により測定した。 反応後に得られたシグナルを縦軸に、横軸にBNPの濃度をプロットしたものを図8に示す。なお、図8においてCal2からCal6とは、東ソー株式会社で販売している免疫測定試薬(Eテスト「TOSOH」II(BNP))の検量線で使用している標準品であり、それぞれ、15.2pg/mL(Cal2)、42.5pg/mL(Cal3)、153pg/mL(Cal4)、643pg/mL(Cal5)、2450pg/mL(Cal6)である。今回の測定条件では、市販試薬における高濃度標準品よりもさらに高い濃度である、100ng/mLのBNPが検体中に存在しても、BNCを付加したタンパク質とBNC認識抗体との結合性に影響を与えないことがわかる。 なお、臨床上ではBNPの濃度が非常に高いと判定された検体でも、BNP濃度が1000pg/mLをこえることはまずない(健常人は数pg/mL)。BNPの分子量は3464であることから、1000pg/mLをモル濃度に換算すると0.29pmol/mLとなる。反応に持ち込む検体(血清)は緩衝液で2倍希釈して150μL使用すると仮定すると、0.02175pmolのBNPが各ウェルに持ち込まれることになる。一方、ELISAプレート(NUNC社製、マキシソープ)に固定化できるBNC認識抗体量を見積もると、ELISAプレートの吸着容量は650ng/cm2で、ウェルあたりの面積は2.7cm2(カタログ記載値)であることから、前記抗体固定量は1775ng/ウェルとなる。前記抗体の分子量を1.5×105と仮定して固定化される抗体のモル数を計算すると、11.7pmolとなる。前記抗体には抗原結合サイトが2箇所あるため、反応に関与できる結合部位は23.4pmolとなる。つまり23.4pmolの抗原結合サイトがあるのに対し、BNP濃度は前述したように0.02175pmol(モル比で約1000倍)である。したがって、実際臨床上の検体において高濃度のBNPが存在してもほとんどの結合サイトは残っているため、測定系への影響はないと考えられる。 実施例10 BNPのC末端側ペプチド(BNC)一置換体を結合させた抗体の調製 配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチド(BNC)を構成するアミノ酸のうちの一つを他のアミノ酸に置換したオリゴペプチド(以下、一置換BNC)の結合性能を評価するため、一置換BNCを結合させた抗体を調製した。(1)遺伝子工学的手法で、重鎖(H鎖)C末端側に直接BNCが結合した遺伝子組み換え型抗エストラジオール抗体(以下、RaMoAb)を発現可能なベクターを調製した。(2)(1)で調製したベクターのうち、RaMoAbのH鎖C末端側に結合させたBNCをコードするオリゴヌクレオチドに対し、KOD−PLUS−Mutagenesis Kit(東洋紡績社製)を用いて変異導入することで、H鎖C末端側に直接一置換BNCが結合したRaMoAbを発現可能なベクターを調製した(置換位置および置換アミノ酸の一覧を表1に示す)。(3)特許文献5の方法に基づき、(1)で調製したベクターを用いてH鎖C末端側に直接BNCが結合したRaMoAb(以下、RaMoAb−BNC)を、(2)で調製したベクターを用いてH鎖C末端側に直接一置換BNCが結合したRaMoAb(以下、RaMoAb−mBNC)を、それぞれ培養上清に発現させた。 実施例11 RaMoAb−mBNCの定量 実施例10で培養上清中に発現したRaMoAb−mBNCの濃度は一定でないため,BNC一置換体の結合性能を正確に比較するには,RaMoAb−mBNCの濃度補正が必要である。そこで、ELISA法を用いて培養上清中のRaMoAb−mBNCの濃度を定量した。(1)抗ウサギ抗体(ミリポア社製、AP132)をELISAプレートに0.1μg/ウエルで固定化し、1%スキムミルクでブロッキングした。(2)実施例10で得られたRaMoAb−mBNCを含む培養上清を添加し反応させた。(3)アルカリホスファターゼ(ALP)標識した抗ウサギ抗体(ミリポア社製、AP132A)で、固相に捕捉されたRaMoAb−mBNCの量を測定した。(4)あらかじめ前記(1)から(3)に示すELISA法で種々の濃度のRaMoAb−BNCを測定したものを検量線とし、RaMoAb−mBNCの濃度を算出した。 実施例12 BNPのC末端側ペプチド(BNC)認識抗体の標識 実施例3で得られたBNC認識抗体のうち4種(BC2−7/BC23−11/BC30−62/BC30−73)について、アルカリホスファターゼキット(同仁化学社製、LK12)を用いて、キットに添付のプロトコールに従いALPを標識した。 実施例13 BNPのC末端側ペプチド(BNC)一置換体の結合性能評価 まずRaMoAb−BNCの検量線を下記に示すELISA法を用いて作製した。(1)エストラジオール標識BSA(シグマ社製:E5630)をELISAプレートに0.1μg/ウエルで固定化し、1%スキムミルクでブロッキングした。(2)種々の濃度のRaMoAb−BNCを添加し反応させた。(3)実施例12で調製したALP標識BNC認識抗体のうち、BC23−11にALPを標識したものを1000倍希釈し、固相に捕捉されたRaMoAb−BNCと反応させた。 得られたRaMoAb−BNCの検量線を図9に示す。図9よりRaMoAb−BNCの濃度が高くなると、固相に結合するRaMoAb−BNCの量が増加するため、ALP標識BC23−11に由来する蛍光強度(FI)が増加していることがわかる。 このことから、まず、(A)(1)から(3)の方法で種々の濃度のRaMoAb−BNCを添加したときのALP標識BNC認識抗体に由来する蛍光強度を測定し、(B)RaMoAb−BNC濃度を横軸とし(A)で測定した蛍光強度を縦軸として、それぞれプロットすることでRaMoAb−BNCの検量線を作成する。次に、(C)実施例11に記載の方法で培養上清中のRaMoAb−mBNCの濃度を定量し、(D)(1)から(3)の方法でRaMoAb−mBNCと結合したALP標識BNC認識抗体(前記抗体は(A)と同じ抗体)に由来する蛍光強度を測定し、(E)(C)で定量した濃度を横軸とし(D)で測定した蛍光強度を縦軸としてプロットする。その結果、(E)のプロット位置が(B)で作成した検量線より上方であれば結合性能が向上するアミノ酸置換であり、下方であれば結合性能が低下するアミノ酸置換であることがわかる(図10)。前記(A)から(E)に示す方法は、培養上清中のRaMoAb−mBNCの濃度が異なっていても,結合性能を評価することができる点で有用な方法である。 そこで、前記(A)から(E)に示す方法を用いて、RaMoAb−mBNCの結合性能を評価した。BNC認識抗体としてBC2−7を用いたときの結果を図11から図17に、BC23−11を用いたときの結果を図18から図24に、BC30−73を用いたときの結果を図25から31に、それぞれ示す。 図11から図31に示す結果のうち、図18を例として結果を詳細に説明する。図18のうち、白丸で示したプロットはRaMoAb−BNC精製品の希釈系列を用いて得られた結果であり当該プロットを用いて作成した検量線が図18に示されている。また、黒丸で示したプロットは実施例10の方法で培養上清に発現させたRaMoAb−mBNCにおける結果である。なお、星印で示したプロットは対照実験として行なった実施例10の方法で培養上清に発現させたRaMoAb−BNCにおける結果である。前記星印で示したプロットが検量線と誤差範囲で重なっていることから、本実験に妥当性があることがわかる。図18の結果より、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち、1番目のシステイン(C)をグルタミン酸(E)に置換した場合は結合性能に変化はないものの、アスパラギン酸(D)に置換すると結合性能が若干低下し、それ以外のアミノ酸に置換すると結合性能がほぼ消失することがわかる。 図11から図31に示す結果を以下にまとめる。 (ア)1番目のシステイン(C)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図11)、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)に置換すると結合性能が向上したものの、その他のアミノ酸に置換すると結合性能が低下した。BNC認識抗体としてBC23−11を用いた場合(図18)、グルタミン酸(E)に置換した場合は結合性能に変化はなかったものの、アスパラギン酸(D)に置換すると結合性能が若干低下し、その他のアミノ酸に置換すると結合性能がほぼ消失した。BNC認識抗体としてBC30−73を用いた場合(図25)、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)に置換すると結合性能が若干向上したものの,その他のアミノ酸に置換すると結合性能が低下した。 (イ)2番目のリジン(K)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図12)、アルギニン(R)に置換した場合は結合性能に変化はなかったものの、その他のアミノ酸に置換することで結合性能が向上しており、特にアスパラギン酸(D)に置換すると効果的であった。BNC認識抗体としてBC23−11を用いた場合(図19)、アスパラギン酸(D)に置換した場合は結合性能が若干低下したものの、その他のアミノ酸については置換による結合性能への影響はなかった。BNC認識抗体としてBC30−73を用いた場合(図26)、アルギニン(R)に置換した場合は結合性能が低下したものの、その他のアミノ酸に置換することで結合性能が向上しており、特にアスパラギン酸(D)に置換すると効果的であった。 (ウ)3番目のバリン(V)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図13)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)またはプロリン(P)に置換することで結合性能が向上した。BNC認識抗体としてBC23−11を用いた場合(図20)、結合性能が向上するアミノ酸置換と変化しないアミノ酸置換と低下するアミノ酸置換とが一様に存在するが、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、プロリン(P)またはスレオニン(T)に置換すると結合性能が特に向上した。BNC認識抗体としてBC30−73を用いた場合(図27)も、結合性能が向上するアミノ酸置換と変化しないアミノ酸置換と低下するアミノ酸置換とが一様に存在するが、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)に置換すると結合性能が特に向上した。 (エ)4番目のロイシン(L)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図14)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)またはイソロイシン(I)に置換した場合は結合性能に変化がなかったものの、その他のアミノ酸に置換すると結合性能は低下した。BNC認識抗体としてBC23−11を用いた場合(図21)、結合性能が向上するアミノ酸置換と変化しないアミノ酸置換と低下するアミノ酸置換とが一様に存在するが、プロリン(P)、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)に置換すると結合性能が特に向上した。BNC認識抗体としてBC30−73を用いた場合(図28)、他のアミノ酸への置換により結合性能がほぼ消失した。 (オ)5番目のアルギニン(R)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図15)、プロリン(P)に置換した場合は結合性能に変化がなかったものの、その他のアミノ酸に置換すると結合性能は低下した。BNC認識抗体としてBC23−11を用いた場合(図22)、他のアミノ酸への置換により結合性能が低下またはほぼ消失した。一方、BNC認識抗体としてBC30−73を用いた場合(図29)、プロリン(P)に置換した場合は結合性能に変化がなかったものの、その他のアミノ酸に置換すると結合性能は向上した。 (カ)6番目のアルギニン(R)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図16)、BC23−11を用いた場合(図23)、BC30−73を用いた場合(図30)、いずれにおいても他のアミノ酸への置換により結合性能が低下またはほぼ消失した。 (キ)7番目のヒスチジン(H)を置換した場合 BNC認識抗体としてBC2−7を用いた場合(図17)、BC23−11を用いた場合(図24)、BC30−73を用いた場合(図31)、いずれにおいても他のアミノ酸への置換により結合性能が消失した。 前記(ア)から(キ)の結果をまとめると、使用したBNC認識抗体により一部傾向が異なるものの、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち1番目のシステイン(C)、2番目のリジン(K)または3番目のバリン(V)を、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)(すなわち酸性アミノ酸)に置換することで、BNCと比較し結合性能が向上していることがわかる。一方、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち6番目のアルギニン(R)または7番目のヒスチジン(H)は他のアミノ酸に置換すると結合性能が低下または消失することから、前記場所のアミノ酸置換は好ましくないことがわかる。 実施例14 BNPのC末端側ペプチド(BNC)多重置換体の結合性能評価 実施例13での検討により、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち1番目のシステイン(C)、2番目のリジン(K)または3番目のバリン(V)を、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)(すなわち酸性アミノ酸)に置換することで、結合性能(親和性)が向上することが判明した。そこで、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち1番目のシステイン(C)から3番目のバリン(V)を、全てアスパラギン酸(D)に置換したオリゴペプチド(DDDLRRH、配列番号21)を作製し、実施例10、実施例11および実施例13と同様の方法で結合性能を評価した。なお、BNC認識抗体はBC30−73を使用している。 結果を図32に示す。また、対照として、1番目のシステイン(C)のみをアスパラギン酸(D)に置換したオリゴペプチド(DKVLRRH、配列番号22)での評価結果(図25のDのプロット)、2番目のリジン(K)のみをアスパラギン酸(D)に置換したオリゴペプチド(CDVLRRH、配列番号23)での評価結果(図26のDのプロット)、3番目のバリン(V)のみをアスパラギン酸(D)に置換したオリゴペプチド(CKDLRRH、配列番号24)での評価結果(図27のDのプロット)、をまとめたものを図33に示す。検量線(種々の濃度のBNCでの結果)との比較から、結合性能の向上が一置換BNCでは最大3倍程度(配列番号23のとき)であったが、配列番号21に示す三置換BNCでは4倍程度まで向上することが判明した。したがって、特定の好ましいアミノ酸置換をBNCに複数導入することで、結合性能がより向上することがわかる。 実施例15 BNPのC末端側ペプチド(BNC)欠失体の結合性能評価 配列番号10記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち、N末端側から1アミノ酸ずつ欠失させたものを調製し、前記オリゴペプチドの結合性能を評価した。(1)実施例1および実施例2の方法に従い,マルトース結合タンパク(MBP)のC末端側にBNCのC末端から一個ずつアミノ酸を欠失させたオリゴペプチドを結合させた融合タンパク質を作製した。実際にMBPのC末端に結合させたペプチド配列は,KVLRRH(配列番号25)、VLRRH(配列番号26)およびLRRH(配列番号27)である。(2)下記に示すELISA法で前記オリゴペプチドに対する反応性を評価した.(2−1)精製タンパク質を0.1μg/ウエルから2倍希釈系列で固定化し、1%スキムミルクでブロッキングした。(2−2)実施例12で得られたALP標識されたBNC認識抗体(BC2−7、BC30−73、BC30−62、BC23−11)を1000倍希釈して反応させ,固相に残ったALPの酵素活性を定法により測定した。 結果を図34に示す。使用したBNC認識抗体によって傾向は異なるものの、アミノ酸の欠失により、BNC全長(7アミノ酸、配列番号10)と比較して、結合性能は低下している。しかしながら、N末端側3アミノ酸欠失させても一定の結合性能は残存していることがわかる。そのため、タグペプチドとしての使用目的にもよるが、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNCのうち、少なくともC末端側4アミノ酸(配列番号27)を含んでいれば(すなわち1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させたオリゴペプチドであれば)、タグペプチドとして使用可能といえる。 配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチドをタンパク質に付加することで、タンパク質の高純度な精製および高感度な検出を可能とする。これは免疫測定試薬用のタンパク質の固定化および検出において極めて有効な方法である。なお、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるBNPのC末端側ペプチドのうち、(A)1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換したオリゴペプチド、または(B)1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させたオリゴペプチド、であっても、前記高純度な精製および高感度な検出が可能である。配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチド。配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドのうち、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換した、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチド。配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドのうち、1番目のシステインから3番目のバリンまでのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させた、タンパク質を精製・検出するのに有用なオリゴペプチド。請求項1から3に記載のオリゴペプチドを付加したタンパク質と、前記ペプチドを認識する物質とを用いた、タンパク質の精製・検出方法。前記タンパク質がC末端側に請求項1から3のいずれかに記載のオリゴペプチドを付加したタンパク質であり、前記ペプチドを認識する物質が前記ペプチドを認識する抗体である、請求項4に記載の精製・検出方法。前記タンパク質が、請求項1から3のいずれかに記載のオリゴペプチドを遺伝子工学的に付加することで得られたタンパク質である、請求項4または5に記載の精製・検出方法。前記タンパク質が、請求項1から3のいずれかに記載のオリゴペプチドを化学的に付加することで得られたタンパク質である、請求項4または5に記載の精製・検出方法。 【課題】 従来よりも特異性および反応性が向上し、かつ免疫測定試薬用途にも使用可能なタグペプチド、および前記ペプチドを用いたタンパク質の精製・検出方法を提供すること。【解決手段】 B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちC末端側7アミノ酸からなるオリゴペプチドをタグペプチドとして用い、前記タグペプチドを付加したタンパク質と前記タグペプチドを認識する物質により前記タンパク質を精製・検出することにより、前記課題を解決することができた。なお、前記オリゴペプチドは、N末端側1番目から3番目までのアミノ酸のうちの一つ以上を酸性アミノ酸に置換したペプチドであってもよいし、N末端側1番目から3番目までのアミノ酸のうちの一つ以上を欠失させたペプチドであってもよい。【選択図】 図2配列表