タイトル: | 公開特許公報(A)_体外診断薬用サンプルパッド |
出願番号: | 2010257762 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 33/543 |
小川 貴之 天野 整一 JP 2012108031 公開特許公報(A) 20120607 2010257762 20101118 体外診断薬用サンプルパッド 旭化成せんい株式会社 303046303 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 小野田 浩之 100139022 齋藤 都子 100142387 小川 貴之 天野 整一 G01N 33/543 20060101AFI20120511BHJP JPG01N33/543 521 5 OL 14 本発明は、体外診断薬(装置)用のサンプルパッド及びそれを用いた体外診断薬に関する。本発明は、より詳しくは、ラテラルフロー式の体外診断薬に好適に使用されるサンプルパッドで、単位体積当たりの吸液速度,吸液倍率が高く、コンジュゲートパッドへのリリース時間が速く、また脱落繊維量の少ないサンプルパッドに関する。 体外診断薬、特に簡易検査薬が使用される検査においては、抗原抗体反応を用いる免疫学的な検査が採られることが一般的である。 その方法としては、ラテラルフロー式メンブレンアッセイ法が一般的であり、被測定物を含む溶液を被測定物に対する検出用物質が塗布された膜を垂直方向(液流れ方向)に通過させることで、呈色により検出又は定量する。つまり、被測定物を含む溶液を滴下するサンプルパッドと呼ばれる受液部、該サンプルパッドから供給された液を検出部に保持されるように反応させるコンジュゲートパッド、該コンジュゲートパッドから垂直方向に液を流すメンブレン膜、該液を吸い取り保持する吸液パッドから構成される(図1参照)。1例として、具体的には、酵素、貴金属コロイド、着色ラテックス、色素などの呈色識別物質で抗体を標識した標識抗体液を予めコンジュゲートパッドに含浸及び乾燥させておき、被測定物である抗原を含む血液、尿、痰、鼻汁、細胞などの検体を含む検査液をサンプルパッドからコンジュゲートパッドに展開させ、該抗原と該標識抗体と反応させながら、メンブレン膜に流し、該標識抗体が認識する該抗原のエピトープとは別のエピトープを認識する抗体を予め塗布したメンブレン膜上の検出部で、該抗原と標識抗体とのコンジュゲートを、補足し呈色させることで、呈色程度を目視又は光学的な変化として測定し、検査液中の抗原の定性測定又は定量測定が行われる。 上記の検査方法を利用することで、特定ウィルスの感染の有無、妊娠の判定、疾病の確認などを簡易且つ迅速に検査・診断することができ、そのための器具や、さまざまな簡易体外診断薬が開発され市販されている。 このような検査・診断において、被測定物を含む溶液を滴下するサンプルパッドとしては、従来、ろ紙、ガラス繊維不織布、合成繊維不織布、セルロース不織布などが使用されている(例えば、以下の特許文献1と2を参照のこと)。しかしながら、昨今の体外診断薬市場の拡大を受け、診断薬製造コストの削減や診断時間迅速化などが求められる中、サンプルパッドにおいても、高機能化が求められている。 診断薬の製造コスト削減においては、樹脂などで成型した外枠を設けるカセット式から、枠を設けないディップスティックタイプへ検査薬の形態を移行させることが有効である。しかしながら、通常ディップスティックタイプ検査薬には最外部にフィルムを貼り合せるが、例えば、特許文献2に開示された繊維は厚みが大きすぎるため、フィルムと繊維の間に隙間ができてしまうという問題や、被測定物を含む溶液の保持量が大きすぎるため、サンプルパッドからコンジュゲートパッドへの液の速やかなリリース性を妨げ、診断時間迅速化の観点から好ましくないという問題もある。 反面、サンプルパッドの厚みを薄くしすぎると、被測定物を含む溶液の保持性、送液性が下がってしまい、抗原抗体反応のバラツキの原因となる。 また、ガラス繊維不織布を初めとする短繊維不織布においては、割れ易く、脱落繊維が発生し易いことから製造環境を汚染したり破損するため、製品の歩留まりの低下や検査精度の低下を招き、特にガラス繊維不織布においては、取り扱い性、皮膚障害などの点でも昨今問題にされている。特許3304214号公報特開2009−85838号公報 本発明が解決しようとする課題は、診断薬製造コストの削減、診断時間迅速化などが求められる中、ラテラルフロー式の体外診断薬に適した繊維物性を維持しつつも、検査時間短縮に寄与する吸液速度、吸液倍率、コンジュゲートパッドへの検査液のリリース性能が高く、且つ歩留まりの低下を抑えたサンプルパッドを提供することである。 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、サンプルパッドに使用する不織布を構成する繊維の材質、該不織布の嵩密度、厚みを最適化させることにより、高い吸液速度、吸液量、展開性をもち、かつ製品歩留まりの高いサンプルパッドを提供することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は下記の通りのものである。 [1]嵩密度が0.06〜1.0g/cm3であり、厚みが0.07〜0.90mmであり、吸液速度が0.5〜5.0cm/秒であり、かつ、キャッチアンドリリース指数が0.7〜10.0の範囲であるセルロース系繊維不織布から構成される、体外診断薬用サンプルパッド。 [2]前記セルロース系繊維不織布が、再生セルロース繊維を主成分とする不織布である、前記[1]に記載のサンプルパッド。 [3]前記セルロース系繊維不織布の脱落繊維数が、5000個/m2未満である、前記[1]又は[2]に記載のサンプルパッド。 [4]前記セルロース系繊維不織布が連続長繊維不織布を主成分とする不織布である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のサンプルパッド。 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のサンプルパッドを含む体外診断薬。 本発明のサンプルパッドは、不織布を構成する繊維の材質、該不織布の嵩密度、厚みを特定することにより、吸液速度、コンジュゲートパッドへの展開性が高く、且つ歩留まりの低下の原因となる脱落繊維の発生の抑制に寄与できるものである。診断薬用吸収体の性能試験に用いる検査キットの一例を概略的に示す図である。 以下、本発明について詳述する。 本発明のサンプルパッドは、上記のような問題に鑑み、特定の嵩密度、厚み、吸液速度、吸収倍率とリリース性能の比率を、不織布を構成する繊維の材質、該不織布の嵩密度、厚みを特定することにより最適化し、滴下された検体液を素速く吸収し、かつコンジュゲートパッドへ素速くリリースし、検査残液が残り難いという性能を発揮することがきる。 本発明のサンプルパッドを構成する不織布の嵩密度は、0.06〜1.0g/cm3である。嵩密度は、サンプルパッドの大きさや検体液量、検査種類等により適宜変えることができるが、嵩密度を0.06g/cm3未満にすると、繊維内の空隙が高くなるため検体液のサンプルパッド内部の移動とコンジュゲートパッドへの展開性が悪くなり、また嵩密度が1.0g/cm3を超えると、繊維が密集しすぎており検体液がサンプルパッドに上手く浸透できず、サンプルパッドの上を液が滑ってしまう。したがって、嵩密度の好ましい範囲は、0.07〜0.7g/cm3、より好ましくは0.1〜0.5g/cm3である。 本発明のサンプルパッドを構成する不織布の厚みは、0.07〜0.90mmである。厚みは、サンプルパッドの大きさや検体液量、検査種類等により適宜変えることができるが、厚みを0.07mm未満にすると検体液を十分に受け取ることができず、0.9mmを超えると検体液を保持しすぎてしまうため好ましくない。厚みは、より好ましくは0.1〜0.8mmである。 本発明のサンプルパットを構成する不織布の目付は、12〜180g/m2が好ましく、より好ましくは25〜100g/m2である。 本発明のサンプルパッドの吸液速度は、JIS-L1907で規定されるバイレッグ吸水法により、サンプルパッドが検査液の流れる方向にあわせて、10cmの高さまで要する時間を測定し、評価を行った際に0.5〜5.0cm/秒である。吸液速度は、サンプルパッドの構成、大きさや検体液量、検査種類等により適宜変えることができるが、吸液速度を0.5cm/秒未満にすると、検体液を滴下する際、コンジュゲートパッドに検体が移行する前にサンプルパッド上部を検体が滑ってしまい、一部はコンジュゲートパッドにオーバーフローしてしまい、一方、吸液速度が5.0cm/秒を超えると、サンプルパッドとコンジュゲートパッドの境界面又はコンジュゲートパッドとメンブレン膜の境界面に検査液が滞留したり、滞留がない場合であっても抗原抗体反応の精度が低下したりしてしまう。吸液速度は、好ましくは0.6〜4.5cm/秒である。 本明細書中、用語「セルロース繊維」とは、麻、綿等の天然セルロース繊維、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン等の再生セルロース繊維、精製セルロース繊維などをいうが、セルロース繊維としては、繊維内の不純物が少ない再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、特に再生セルロース繊維が好適である。また、セルロース繊維の形態は、短繊維、長繊維のいずれでもよいが、好ましくは長繊維、より好ましくは脱落繊維量の少ない連続長繊維である。 本明細書中、用語「セルロース系繊維」とは、主としてセルロース繊維からなる繊維をいう。セルロース系繊維は、セルロース繊維100%から構成されていてもよく、またサンプルパッドを前処理する際の形態安定や吸液速度、キャッチアンドリリース指数をコントロールするために、例えば、ポリエチレン、ポリエステル等の合成繊維を混用してもよい。この場合、本発明における不織布を構成するセルロース系繊維中のセルロース繊維の含有量は50重量%以上であることが好ましい。 合成繊維としては、前記したサンプルパッドの所望の物性を満足すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系の合成繊維が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いてもよい。 セルロース系繊維不織布の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、スパンボンド法、スパンレース法、メルトブロー法、フラッシュスパン法、抄造法、エアレイド法などが挙げられ、更にそれぞれの方法を組み合わせた、例えば、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)などや、上記繊維を熱処理やバインダー剤、熱融着フィルムによる接着、ニードルパンチ、ウォーターパンチによって二種以上のセルロース繊維や合成繊維を、複合・混用してもよい。 セルロース系繊維不織布の構造は、前記したサンプルパッドの所望の物性を満足すれば特に限定されないが、検体液を滴下する面において、セルロース繊維が面積率で50%以上存在することが、素速く検体液を保持し且つリリースする点で、より好ましい。ここで、面積率とは表面に存在するセルロース系繊維の面積比率であり、例えば、合成繊維と複合されている場合、セルロース系繊維が染色され、合成繊維が染色されない染料で構造体を染色し、単位表面積に対する染色部分の面積を画像解析等することによって求めることができる。 以下、本発明に係るセルロース系繊維不織布の製造方法について一例を説明する。好ましい態様としては、再生セルロース連続長繊維不織布が挙げられるが、例えば、旭化成せんい株式会社製のキュプラ不織布「ベンリーゼ(登録商標)」(以下、単に「キュプラ不織布」ともいう。)がこれに相当する。 キュプラ不織布の製造方法は、異物を除去し、重合度を調整したコットンリンターを銅アンモニウム溶液に溶解させた原液を、細孔(原液吐出孔)を有した紡糸口金(紡口)から押し出し、水と共に漏斗内を落下させ、脱アンモニアさせることにより原液を凝固させつつ、延伸を行い、ネット上へ振り落としウェブ形成させる。この際、ネットを進行させながら進行方向と垂直方向へ振動させることにより、ネットへ振り落とされる繊維はSinカーブを描くことになる。紡糸時の延伸は100〜500倍が可能であり、紡糸漏斗の形状と、その中を流下させる紡糸水量を変えることにより、延伸倍率の調整が任意に可能である。延伸倍率を変えることにより、単繊度や不織布の強度を変えることが可能である。 不織布のウェブ形成において、繊維配列の均一性を得る上で、ネットへ振り落とされる繊維配列を、Sinカーブの位相を層単位で、3〜10段階で均等に変え、3〜10層の積層ウェブとすることで、極めて均一な繊維配列を有するセルロース系不織布を得ることができる。この様な均一な繊維配列を有する多層構造不織布は、繊維間隙が均一で、不織布としての平均孔径が揃っており、このような均一な孔径を有する不織布を緻密化すれば、薄く、緻密でしかも均一な孔径を有する不織布が得られる。 また、紡糸水量や温度を変化させることにより、原液内に微量残留する低分子量セルロース、いわゆるヘミセルロースをコントロールすることも可能である。また、ネットの進行速度、振動幅を制御することにより、繊維配列方向を制御し、不織布としての強度や伸度等をコントロールすることが可能である。 紡糸漏斗の形状としては、矩形型が好ましく、流下させる紡糸漏斗の長さは100〜400mm、流下出口のスリット幅は2〜5mmが好ましい。紡口の原液吐出孔の直径は0.1〜0.5mmが好ましく、形状は丸型が好ましい。また、不織布の均一性を確保する意味から、ウェブを積層して不織布化することが好ましく、その積層枚数は3〜10枚が好ましい。積層後のウェブを、例えば、特許第787914号公報、特許第877579号公報に記載の方法により、ウェブ状態でセルロースを再生させたり、精練したりした後、高圧水流により繊維交絡させ不織布を製造する。この際に意匠性を付与するために不織布に穴や凹凸をつけたりすることが高圧水流の条件や不織布の下及び/又は上に配置されるネットの柄によって可能となる。得られた不織布は乾燥、巻き取り品として得ることができる。紡糸から巻き取りまでが一連の工程で成されるため繊維が切断されずに連続的に繋がっているので連続長繊維不織布という。 セルロース系繊維不織布には、親水/撥水性、吸水倍率のコントロールのため、各種薬剤や粉体を抗原抗体反応や標識抗体との結びつきに影響しない範囲で含有させたり、セルロースの一部を改質させてもよい。セルロース系繊維不織布には、例えば、界面活性剤、撥水剤、繊維を固定するための樹脂、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤などを含有させたり、セルロースの一部官能基をカルボキシメチル化、カルボキシエチル化、オキシ化等改質させてもよい。 本明細書中、「キャッチアンドリリース指数」とは、下記式により算出されるものである: キャッチアンドリリース指数 = 吸水倍率 ÷ リリース時間 吸水倍率は、以下の測定方法によって得られる値をいう。 サンプルパッドを、20℃65%RHに制御された室内に15時間放置して調湿し、10cm角に切断したサンプルを秤量する(W1(g)とする)。 線径0.5mm、10メッシュの金網上にサンプルを置き、金網ごと20℃の水中へ30秒浸漬する。その後、サンプルを金網上で水平に保ったまま空中で10分間放置して水切りを行い、再度、秤量し(W2(g)とする)。下記式により吸水倍率を求める: 吸水倍率=(W2−W1)/W1 吸水倍率は、サンプルパッドの大きさや検体液量、検査種類等により適宜変えることができるが、検体の効率的な吸収とリリースを生み出す為に、その範囲は7.0〜55.0倍であることが好ましく、より好ましくは10.0〜35.0倍である。 また、本明細書中、「リリース時間」とは、以下のような診断薬キットを作製し、検査液をサンプルパッドに50μL滴下した際のサンプルパッドからコンジュゲートパッドに検査液が完全に移行する時間をいう(単位は分である)。 「キャッチアンドリリース指数」は、滴下された検体液を素速く吸収し、かつコンジュゲートパッドへ素速くリリースする特性を指標する。本発明のサンプルパッドを構成するセルロース系不織布のキャッチアンドリリース指数は、0.7〜10.0であり、より好ましくは0.8〜8.0である。キャッチアンドリリース指数は、サンプルパッドに用いるセルロース系繊維の材料、サンプルパッドの大きさ、検体液量、検査液の種類等により、不織布の嵩密度をコントロールすることにより調整することができる。 キャッチアンドリリース指数が0.7未満であるということは、サンプルパッドからコンジュゲートパッドへ検査液が移行する時間が長いことを意味し、この場合、検査時間の迅速化を阻害するだけでなく、滴下量によっては検体液がサンプルパッドの上を滑ってしまい正確な検査を行うことができなくなる。。一方、キャッチアンドリリース指数が10.0を超えてしまうということは、逆に展開する時間が著しく短いことを意味し、この場合、抗原と抗体が結合した検体液がコンジュゲートパッドよりメンブレン膜へ移行する速度以上にサンプルパッドからコンジュゲートパッドへ検査液が移行してしまうため、コンジュゲートパッド上に液が滞留したり、さらにはオーバーフローしてしまう虞れがある。 所望のキャッチアンドリリース指数を達成するため繊維素材としては、前記した再生セルロース繊維連続長繊維(ベンリーゼ(登録商標))が好適である。ベンリーゼ(登録商標)は上述の通りコットンリンターを一度銅アンモニア錯体に溶解させ、その後の脱溶媒によってセルロースを再構築させた再生セルロース連続長繊維であり、結晶化度がセルロース系繊維の中でも低く、水酸基を数多く有し、また微細な空孔を多く持つため、水分に対する応答性が高い。ベンリーゼ(登録商標)は一般的に11%の公定水分率を有し、また自重の13倍程度吸液することができるため、本発明においても検査液のキャッチ性能の向上に好適である。またベンリーゼ(登録商標)は繊維一本一本が繋がっている連続長繊維であるため、繊維の配列は異方性が高い。このため繊維間を液体が迅速に移行することができ、検査液のリリース性能の向上に好適である。 本明細書中、用語「脱落繊維数」とは、純水300mlに25cm×25cmのサンプルを入れ、2分間静置後、サンプルを取り出した残りの液を黒色濾紙(ADVANTEC NO131)で濾過し、濾過後の濾紙を恒温室(20℃、65%RH)に12時間入れて乾燥した後、ビデオマイクロスコープにてカウント、測定した単位平方メートル当たりの、大きさ100μm以上の脱落繊維の数をいう。 本発明においては、脱落繊維数は、好ましくは5000個/m2未満であるが、より好ましくは4000個/m2未満、更に好ましくは3000個/m2未満である。脱落繊維数が10,000個/m2を超えると繊維が脱落しやすくなり、検査液の種類によってはサンプルパッドとコンジュゲートパッドの界面に脱落繊維が集まってしまい、展開性を阻害してしまうし、また製造時に生産ライン周辺を汚染してしまうことによる歩留まりの悪化を招いてしまうため、好ましくない。脱落繊維数は小さい方が好ましいので、下限としては1個/m2以上である。 本発明に係る体外診断薬(装置)又は検査キットとは、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液又は咽頭ぬぐい液中に含まれる抗原の有無を簡便に検出するものである。当該診断薬(装置)又はキットの種類として、は主にラテラルフロー式、フロースルー式があり、本サンプルパッドは特にラテラルフロー式のものに好適に用いられ、とりわけディップスティックタイプのものに極めて好適である。 本発明に係る体外診断薬(装置)又は検査キットの形状は特に限定されないが、例えば、サンプルパッドのサイズとしては液流れ方向については、検体液からの結びつき性や検査時間を考慮すると10〜25mm程度であることが好ましく、巾(液流れに対し垂直)方向については、コンジュゲートパッドの巾より大きければ問題はない。巾が狭すぎるとサンプルパッドの端部より検査液が回り込んでしまう可能性がある。 本発明において、体外診断薬(装置)又は検査キットに使用される希釈検体液、コンジュゲートパッド、吸水パッド、メンブレン膜、標準抗体、呈色識別物質等は、公知のものが使用でき、限定されるものでない。 また、希釈検体液は、標識抗体の他に、薄め液、各種界面活性剤、塩分等を添加する場合もあり、滴下前に、検体採取時の固形物や標準抗体に含まれる異物成分等を除去するため、フィルターなどで濾過して使用してもよい。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。 尚、実施例等に使用した使用部材、検査液、測定方法、評価方法等は、下記の通りのものであった。 以下、本発明の実施例の評価に使用した部材、検査液を説明する。(a)抗体固定化メンブレン膜 ニトロセルロースメンブレン膜(ポアサイズ60μm)上に、マウス抗インフルエンザA型ウィルス抗体液を、巾2mmの線状になるように塗布して乾燥を行い、マリアリムAFB−1521及びトリス塩酸緩衝液によりブロッキングし、抗体固定化メンブレン膜を得た。得られた抗体固定化メンブレン膜を、巾5mm、長さ30mmになるように切り出した。抗体固定化位置は流れ方向に垂直となり、長さ20mmの位置になった。(b)標識抗体 およそ60nmの金コロイドと、上記抗体固定化メンブレン膜に使用した抗体とは別のエピトープを認識する抗体を、ホウ酸緩衝液(PH9.0)中で混合した後、BSA10%水溶液を添加してブロッキングを行った後、遠心分離により標識抗体を得た。(c)発色用希釈検査液 上記標識抗体を、0.2%Tween20、1%スクロース及び0.2BSAを含むPBSに混合し、A型インフルエンザ精製抗原(Kitakyusyu/159/93株由来)を含む希釈検体液(ウィルスをTCID50/test単位で1×106の濃度)を添加し、調整した。(d)コンジュゲートパッドへの標識抗体含浸 ポリエステル製コンジュゲートパッド(ポール社製、タイプ6613)5mm×5mmに上記(b)の標識抗体を10μlを含浸し凍結乾燥し、標識抗体を含浸したコンジュゲートパッドを得た。(e)簡易診断薬(装置)(診断薬キット、検査キット) 図1に示すように、台紙の上に抗体固定化メンブレン膜を貼り付け、メンブレン膜端部にコンジュゲートパッドを置き、もう一つの端部に吸水パッド(5mm巾、長さ20mm、メンブレン膜との重なり5mm No526 アドバンテック社製)、コンジュゲートパッドに重なるように実施例及び比較例のサンプルパッド(5mm巾 長さ15mm、コンジュゲートパッドの重なり5mm)を配置し、最後に透明なテープで上部から台紙を覆うように貼り付け固定しディップスティックタイプの検査キットを得た。(1)目付(g/m2) 0.5m2以上の面積の不織布を、105℃で一定重量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置してその重量を測定し、不織布の単位面積当たりの重量(g/m2)を求めた(2)厚み JIS−L1096準拠の厚み試験にて荷重を1.96kPaとして測定した(単位はmm)。(3)嵩密度 上記目付、厚みより算出した(単位はg/cm3)。(4)吸液速度 JIS-L1907で規定されるバイレッグ吸水法により、サンプルパッドが検査液の流れる方向に会わせて、10cmの高さまで要する時間を測定し、評価した。 試料は、200mm(長さ)×25mm(巾)とし、20℃65%RHに制御された室内に15時間放置し調湿した後に測定した。 吸液速度(cm/秒) = 10cm/(10cm高さ到達時間(秒))(5)キャッチアンドリリース指数 吸水倍率及び展開完了時間(リリース時間)を測定し、次式にて算出した: キャッチアンドリリース指数 = 吸水倍率 ÷ リリース時間吸水倍率評価法 吸収体を、20℃65%RHに制御された室内に15時間放置して調湿し、10cm角に切断したサンプルを秤量した(W1(g)とする)。 線径0.5mm、10メッシュの金網上にサンプルを置き、金網ごと20℃の水中へ30秒浸漬した。その後、サンプルを金網上で水平に保ったまま空中で10分間放置して水切りを行い、再度、秤量し(W2(g)とする)、吸水倍率を次式で求めた: 吸水倍率=(W2−W1)/W1リリース時間の評価法 発色用希釈検査液を簡易診断薬のサンプルパッドに50μL滴下した際のサンプルパッドからコンジュゲートパッドに検査液が完全に移行する時間(リリース時間)を測定した。(6)脱落繊維数 純水300mlに25cm×25cmのサンプルを入れ2分間静置した。サンプルを取り出した残りの液を黒色濾紙(ADVANTEC NO131)で濾過。濾過後の濾紙を恒温室(20℃、65%RH)に12時間入れて乾燥した後、ビデオマイクロスコープにて大きさ100μm以上の脱落繊維数の個数を測定した(単位は個/m2)。(7)製品歩留まり 上記(e)簡易診断薬(装置)(診断薬キット、検査キット)を作製するに当たって、サンプルパッドの破損や検査液の展開性試験での合否判断に伴うロス率を算出し、製品歩留まりを測定した。(8)総合評価 上記(1)〜(7)の項目について下記の評価基準に従って総合判断した。 ◎:製品歩留まり、診断薬キット性能共に非常に優れている。 ○:製品歩留まり、診断薬キット性能共に優れている。 △:製品歩留まりは優れているが、診断薬キット性能が悪い。 ×:診断薬キット性能、製品歩留まり共に悪い。[実施例1] 平均繊維径12μm、平均目付27.5g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布と平均繊維径10μm、平均目付12.0g/m2のポリエステル不織布をウォータージェットにて水流交絡させた不織布と、平均繊維径12μm、平均目付38.0g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布とを用意した。用意した2枚の不織布の間に有孔ポリエチレン製フィルムを置き上部,下部いずれのロールもステンレス(SUS329)製のカレンダー加工機にて、以下の表1に記載の目付、嵩密度、厚みになるように130℃の熱カレンダー処理を行い不織布を作製した。この不織布をサンプルパッドとして診断薬キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[実施例2] 平均繊維径12μm、平均目付57.2g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布を用意した。上部,下部いずれのロールもステンレス(SUS329)製のカレンダー加工機にて、以下の表1に記載の目付、嵩密度、厚みになるように熱カレンダー処理を行い不織布を作製した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[実施例3] 平均繊維径12μm、平均目付72.0g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布を作製したことを除き、実施例2と同様に不織布を用意した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[実施例4] 平均繊維径12μm、平均目付27.5g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布を作製したことを除き、実施例2と同様に不織布を用意した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[比較例1] 平均繊維径12μm、平均目付28.0g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布を作製したことを除き、実施例2と同様に不織布を用意した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[比較例2] 平均繊維径12μm、平均目付120.0g/m2の再生セルロース連続長繊維不織布を作製したことを除き、実施例2と同様に不織布を用意した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[比較例3] 平均繊維径が20μmの木材パルプを空気中に親水性バインダーと共に分散し積層させる、乾式エアレイド不織布の製法の一つであるキノクロス法にて、以下の表1に示す物性の不織布を作製した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[比較例4] 木材パルプを積層の後、木材パルプ外層の両面に平均繊維径15μmのレーヨン繊維を積層させたことを除き、比較例3と同様に、以下の表1に示す物性の不織布を作製した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。[比較例5] 抄造方式で製造したガラス繊維不織布を用い、以下の表1に示す物性の不織布を作製した。この不織布をサンプルパッドとして検査キットを作製し、上記(1)〜(7)について評価を行った。その結果を以下の表1に示す。 実施例1及び2のサンプルパッドは、非常に優れたキャッチアンドリリース性能及び製品歩留まりを示した(総合評価◎)。 実施例3及び4のサンプルパッドは、優れたキャッチアンドリリース性能及び製品歩留まりを示した(総合評価○)。 比較例1及び2のサンプルパッドは、優れた製品歩留まりを示したが、吸液速度が速すぎたり遅すぎたりするため、キット性能としては悪いものであった(総合評価△)。 比較例3〜5については、脱落繊維が多く、製品歩留まりも悪く、更にはキット性能も悪いものであった(総合評価×)。 本発明のサンプルパッドは、サンプルパッドを構成する不織布の繊維素材、該不織布の嵩密度、厚みを特定することにより、高い吸液速度、吸液量と展開性のバランスをもち、かつ製品歩留まりが改善されている。したがって本発明のサンプルパッドは、診断薬製造コストの削減、検査キットの性能の向上などに寄与でき、各種のラテラルフロー方式の検査キットに利用可能である。 1 メンブレン膜 1a 塗布部(呈色箇所) 2 コンジュゲートパッド 3 サンプルパッド 4 吸水パッド 5 台紙 嵩密度が0.06〜1.0g/cm3であり、厚みが0.07〜0.90mmであり、吸液速度が0.5〜5.0cm/秒であり、かつ、キャッチアンドリリース指数が0.7〜10.0の範囲であるセルロース系繊維不織布から構成される、体外診断薬用サンプルパッド。 前記セルロース系繊維不織布が、再生セルロース繊維を主成分とする不織布である、請求項1に記載のサンプルパッド。 前記セルロース系繊維不織布の脱落繊維数が、5000個/m2未満である、請求項1又は2に記載のサンプルパッド。 前記セルロース系繊維不織布が連続長繊維不織布を主成分とする不織布である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプルパッド。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のサンプルパッドを含む体外診断薬。 【課題】ラテラルフロー式の体外診断薬に適した繊維物性を維持しつつも、検査時間短縮に寄与する吸液速度、吸液倍率、コンジュゲートパッドへの検査液のリリース性能が高く、且つ歩留まりの低下を抑えた体外診断薬用サンプルパッドを提供する。【解決手段】本発明の体外診断薬用サンプルパッドは、嵩密度が0.06〜1.0g/cm3であり、厚みが0.07〜0.90mmであり、吸液速度が0.5〜5.0cm/秒であり、かつ、キャッチアンドリリース指数が0.7〜10.0の範囲であるセルロース系繊維不織布から構成される。【選択図】なし