タイトル: | 公開特許公報(A)_一重項酸素の消去方法 |
出願番号: | 2010245330 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/4738,A61K 8/44,A61Q 17/04,A61P 39/06,A61P 17/18,C07D 471/04,A23L 2/00,A23L 2/52,A23L 1/30 |
向井 和男 大内 綾 池本 一人 中野 昌彦 JP 2012097020 公開特許公報(A) 20120524 2010245330 20101101 一重項酸素の消去方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 国立大学法人愛媛大学 504147254 向井 和男 大内 綾 池本 一人 中野 昌彦 A61K 31/4738 20060101AFI20120420BHJP A61K 8/44 20060101ALI20120420BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20120420BHJP A61P 39/06 20060101ALI20120420BHJP A61P 17/18 20060101ALI20120420BHJP C07D 471/04 20060101ALN20120420BHJP A23L 2/00 20060101ALN20120420BHJP A23L 2/52 20060101ALN20120420BHJP A23L 1/30 20060101ALN20120420BHJP JPA61K31/4738A61K8/44A61Q17/04A61P39/06A61P17/18C07D471/04 102A23L2/00 TA23L2/00 FA23L1/30 Z 4 OL 9 4B017 4B018 4C065 4C083 4C086 4B017LC03 4B017LK04 4B017LK06 4B017LK12 4B017LK16 4B018LB08 4B018MD07 4B018ME10 4B018MF02 4C065AA04 4C065BB04 4C065CC09 4C065DD02 4C065EE02 4C065HH04 4C065JJ01 4C065KK04 4C065LL05 4C065PP01 4C083AC102 4C083AC122 4C083AC302 4C083AC342 4C083AC442 4C083AC542 4C083AC581 4C083AC582 4C083AC851 4C083AC852 4C083AD092 4C083AD411 4C083AD601 4C083AD641 4C083CC04 4C083CC19 4C083DD22 4C083DD41 4C083EE17 4C086AA02 4C086CB05 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA17 4C086MA27 4C086MA28 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89本発明は、式(1)で表されるピロロキノリンキノン還元体を使用する一重項酸素の消去方法である。更に詳しくは、皮膚で発生する一重項酸素の除去作用を有し、結果的に皮膚成分の過酸化反応を抑制する一重項酸素消去剤および該一重項酸素消去剤を含む組成物に関する。活性酸素は化学種として、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素及び一重項酸素等を含む呼び名で、老化、疾病の原因として近年その消去に関する研究が行われてきている。これまでに消去に関してはスーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素より発生するラジカルが対象として、スーパーオキシドディスムターゼ(以下、SODと記す)やSOD様の物質、あるいは連鎖切断型の物質が使用されてきた。一重項酸素は基底状態の三重項酸素(通常の空気中の酸素)より活性化されており、反応性に富む活性酸素の一種であって、不飽和化合物、例えば脂質と反応してハイドロパーオキサイド等、例えば過酸化脂質を生成する(非特許文献1)。一重項酸素は色素の存在下、光照射によるType IIの光増感反応により生成される。その他にもミエロペルオキシダーゼ反応と呼ばれる白血球の殺菌作用においても発生している。一重項酸素は主に日光を浴びた皮膚上で発生し、そこの部位での障害が問題とされている。そのため、特許文献1、2ではカロテン類やコエンザイムQ10を使用する方法が提案されている。一重項酸素消去剤はこうした化学的な反応で消去するものもあるが、それは酸化物質を生成し、それによる障害が生じる可能性がある。その為、物理的な消去で消去速度がより高いものが求められている。また、これまでに使用されている一重項酸素の消去剤は脂溶性の成分が多く、水溶性で活性の高い物質が求められている。ピロロキノリンキノン(以下、PQQと記す)は新しいビタミンの可能性があることが提案されて(例えば、非特許文献2参照)、健康補助食品、化粧品などに有用な物質として注目を集めている。更には細菌に限らず、真核生物のカビ、酵母に存在し、補酵素として重要な働きを行っている。また、PQQについて近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギ−作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラ−ゼI阻害作用−制癌作用、神経線維再生など多くの生理活性が明らかにされている。しかし、PQQの還元体に関しては研究例も少なく、ラジカル消去等に(例えば非特許文献3、特許文献3)に関して記載はあるが、一重項酸素の消去については知られていない。特開平05−320036号公報特開2006−213660号公報国際公開第1994/01142号二木鋭雄:特集 フリーラジカルの基礎と臨床,日本臨床,46巻,10号,15(2125)〜19(2129),1988nature,vol422, 24April,2003, p832A.Ouchi et al., J. Agric. Food Chem., 57, 2009, p450-456.本発明の課題は、一重項酸素を水溶性条件下で簡便に効率よく消去する方法及び消去する組成物を提供することである。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下に示す項目によって解決できることを見出した。〔1〕一重項酸素と還元型ピロロキノリンキノンとを共存させて該一重項酸素を消去する方法。〔2〕前記還元型ピロロキノリンキノンが酸化型ピロロキノリンキノンをNADPH、アスコルビン酸、システイン又はグルタチオンのいずれかで還元して得られたことを特徴とする〔1〕記載の一重項酸素を消去する方法。〔3〕還元型ピロロキノリンキノンを含む化粧品。〔4〕ピロロキノリンキノンと、モル比で1:0.01〜200のNADPH、アスコルビン酸、システイン又はグルタチオンのいずれかを含む一重項酸素の消去用組成物。本発明によれば、還元型PQQを用い、ヒト皮膚表面の過酸化反応を誘起させる原因物質の一つである一重項酸素を触媒的に高速で消去することを可能とした。また、還元型PQQを一重項酸素消去剤として含有させた一重項酸素除去組成物を提供することを可能とした。還元型PQQを用いた一重項酸素の消去反応におけるUVスペクトルの経時変化本発明は式(1)で表される還元型PQQを使用する一重項酸素の消去方法である。本発明において、一重項酸素消去方法としては、一重項酸素と反応してそのエネルギーを失わせる方法、あるいは一重項酸素との付加物を生じて結果的にそのエネルギーを失わせる方法、あるいは両者の作用によるものを指す。本発明の還元型PQQはフリー体、アルカリ金属塩、アンモニウム塩であればよく、その形態に制限がない。単独若しくは混合して用いても良い。還元型PQQは酸化型PQQを還元して使用することができ、系内で発生させて使用することができる。この時の酸化型PQQもフリー体、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が使用でき、特にナトリウム塩が手に入れやすく好ましい。系内で発生させる場合、もともと生体内にある還元剤である還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADPH)、アスコルビン酸、システイン、グルタチオンで還元するのが好ましい。モル比としては、酸化型PQQに対して還元剤を1:0.01〜200加えることが好ましい。一重項酸素を消去する際の温度は特に制限がないがー20℃から100℃、生体内や表面で使用する場合は、0から40℃が好ましい。最適なpHについても特に制限がないが、生体内や表面で使用することを考慮すると2から11、より好ましくは4から9である。還元型PQQは一重項酸素を消去、つまり、一般的な酸素(三重項酸素)へ変えるのにそれ自身は化学的構造を何ら変えることなく反応している。つまり、触媒的に消去しており、大量に存在する必要なく、消去が可能である。触媒的に消去できることは一重項酸素の生成が多い時でも消費されない為非常に有用である。また、少量でも効果的に一重項酸素を消去することが可能であることも有用である。本発明は、還元型PQQを主成分とすることを特徴とする一重項酸素消去剤、還元型PQQを含有する一重項酸素除去組成物、又は一重項酸素消去剤として還元型PQQを含有する食品及び化粧料用基剤である。一重項酸素除去組成物中における還元型PQQの配合量は0.0001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜5重量%である。本発明の組成物は、皮膚外用に適用することが特に好適である。そのような組成物中に添加する他の添加剤としては、通常の皮膚外用剤の含有成分を添加することができる。例えば、油分、界面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、粉体成分、色素、金属イオン封鎖剤、香料、紫外線吸収剤、薬効剤などが挙げられ、必要に応じて適宜組み合わせて用いられる。本発明の組成物は、化粧水、エッセンス、クリーム、乳液、ヘアーオイル、口紅、ファンデーション、サンオイル、サンスクリーン、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、ネールエナメル等の基剤に適用することができる。このような化粧品の基材に添加する他の添加剤としては、例えば、油分、界面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、粉体成分、色素、金属イオン封鎖剤、香料、紫外線吸収剤、薬効剤などが挙げられ、必要に応じて適宜組み合わせて用いられる。以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。還元型PQQ合成三菱ガス化学社製ピロロキノリンキノンジナトリウム(1.07×10-4 M)の5wt%のTriton X-100ミセル溶液(0.02Mリン酸バッファーpH7.4)と、システイン(1.26×10-3M)の5wt%Triton X-100ミセル溶液(0.02Mリン酸バッファーpH7.4)を1:1で混合することで製造することができる。一重項酸素消去能の測定原理一重項酸素の消去能は測定セル内で生じる以下の反応を想定することにより測定した。全ての測定はTriton X−100 5wt%のミセル溶液(pH 7.4)中で行った。一重項酸素は3−(1,4−エピジオキシ−4−メチル−1,4−ジハイドロ−1−ナフチル)プロピオン酸(以下、EPと略す)を35℃に加熱することで熱分解し定量的に発生させる。これが三重項酸素に戻る速度をkdとする。2,5−ジフェニル−3,4−ベンゾフラン(以下、DPBFと略す)は一重項酸素と反応して分解し、UV吸収がなくなる。この速度をkfとする。DPBFの濃度の変化は吸光度変化で測定できるため、Shimadzu UV―Vis spectrophotometer(UV−1800)を用いて測定する。抗酸化剤(antioxidant)が一重項酸素を消去する速度kQは、フィジカル・クェンチング(kq,一重項酸素と反応してそのエネルギーを物理的に失わせる。)とケミカル・リアクション(kr,一重項酸素との付加物を作り消去する。)の2種類の方法があり、両者を合わせた速度である。一重項酸素消去測定一重項酸素消去反応速度は、一重項酸素消去基準物質であるDPBFを用い、被検物質を共存させ、両者を一重項酸素に対して競争反応させる。DPBFは416nmにUV吸収を有するが一重項酸素と反応すると酸化され、吸収が減少する。つまり、抗酸化剤を加えることにより一重項酸素とDPBFとの反応が抑えられ、DPBFの一重項酸素による分解が抑えられる。時間変化を測定し、DPBFによるUV吸収の減少カーブから1次速度定数Sが算出される。何も添加しない時の速度Sblank、抗酸化剤を添加した時の速度Santioxidantとして、抗酸化時濃度[antioxidant]は以下のように表せる。Sblank/Santioxidant=1+(kQ/kd)[antioxidant]この式よりkQ/kd(kQは被検物質の一重項酸素消光速度、kdは三重項酸素の生成速度を示す)を算出できる。Zinukov, S.V.; Kamalov, V.F.; Koroteev, N.I.; Krasnovskii, A.A. Jr. Nanosecond measurements of photosensitized luminescence of singlet molecular oxygen in aqueous solutions saturated by air: effect of temperature and detergent presence, Opt. Spectrosc. (USSR) 1991, 70, 460-462.より三重項酸素の生成速度kdは2.17´105s-1として各々の物質の一重項酸素の消去速度kQを算出した。また、アスコルビン酸との消去速度比も算出した。35℃、5wt%のTriton X-100ミセル溶液(0.02Mリン酸バッファーpH7.4)中、EP9.82×10−3M、DPBF4.29×10−5M、上記還元型PQQの濃度を0から9.35×10−3Mへ変化させた。結果を表1に示す。比較例実施例1で抗酸化剤として尿酸、エピカテキン、エピガロカテキン、α‐トコフェノール、還元型コエンザイムQ10,βーカロテン、酸化型PQQを用いた他は、実施例1と同様にして測定を行った。アスコルビン酸については0から2.97×10−3Mの範囲で添加して、測定した。表1に、結果を示す。kQは一重項酸素の消去速度であり、これが大きいほど消去能が高い。また、kQ(抗酸化剤)/kQ(アスコルビン酸)はアスコルビン酸に対して何倍の抗酸化能力があるかを示す。実施例1の還元型PQQを用いた場合は、比較例1〜6よりも高い一重項酸素消去速度を有していることが分かる。還元型PQQはアスコルビン酸の6倍以上の能力を有しており、水溶性物質で最も高い消去能であった。比較例8の酸化型PQQは一重項酸素の消去を行うことができていないが、還元型PQQは高い一重項酸素消費速度を有している。比較例7のβーカロテンは高い消去速度であるが、脂溶性物質である。還元型PQQが触媒的に一重項酸素を消去している証明還元型PQQと一重項酸素発生剤EPの反応は35℃、ミセル共存下で行った。酸化型PQQジナトリウム9.58×10−4M、システイン1.34×10−2M、EP9.77×10−4Mで行った。還元型PQQと一重項酸素の発生がこれで生じる。一重項酸素の発生下で還元型PQQのUV吸収を測定した結果を図1に示す。5分間隔で12回スペクトルを測定したところ、スペクトルに変化が起きておらず、PQQ還元体の濃度低下が起こらないことが確認できた。つまり、一重項酸素が消去されているにもかかわらず、本発明では還元型PQQが消費されることなく一重項酸素は消去されており、触媒的に消去しているといえる。また、抗酸化剤(antioxidant)が一重項酸素を消去する速度kQは、フィジカル・クェンチング(kq:一重項酸素と反応してそのエネルギーを物理的に失わせる。)とケミカル・リアクション(kr:一重項酸素との付加物を作り消去する。)の2種類の方法があり、両者を合わせた速度であるが、還元型PQQは濃度変化していないことから反応していない。従って、還元型PQQはケミカルリアクションで消去するkrが存在しないため、フィジカル・クェンチングのみでkQ=kqであった。化粧水下記成分(5)、(6)、(7)を混合溶解した溶液と、下記成分の残りを混合溶解した溶液とを混合して均一にし、化粧水を得た。(成分) (重量%)(1)グリセリン 5.0(2)1,3−ブチレングリコール 6.5(3)乳酸 0.135(4)乳酸ナトリウム 0.125(5)ポリソルベート201.2(6)エチルアルコール 8.0(7)パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 3.0(8)ピロロキノリンキノンジナトリウム 0.005(9)システイン 0.007(10)水 残量冷蔵庫で2日保存すると淡いピンク色から薄い黄色の乳化した溶液が得られた。ゲル、軟膏下記成分をホモジナイザーで混合均一になるようにした。(成分) (%)(1)ポリアクリル酸ナトリウム 0.25(2)トリエタノールアミン 0.1(3)1,3−ブタンジオール 1(4)ピロロキノリンキノンジナトリウム0.02(5)システイン 0.02(6)水 残量粘度の高い溶液を作ることができた。サイダー(成分) (%)(1)ショ糖 5(2)ピロロキノリンキノンジナトリウム0.001(3)アスコルビン酸 1(4)水残量上記の組成を作成し、二酸化炭素を飽和させた。本発明は、水溶性条件下で一重項酸素の消去能を有する機能性を高めた医・農薬、化粧品、食品の分野で有用である。一重項酸素と還元型ピロロキノリンキノンとを共存させて該一重項酸素を消去する方法。前記還元型ピロロキノリンキノンが酸化型ピロロキノリンキノンをNADPH、アスコルビン酸、システイン又はグルタチオンのいずれかで還元して得られたことを特徴とする請求項1記載の一重項酸素を消去する方法。還元型ピロロキノリンキノンを含む化粧品。ピロロキノリンキノンと、モル比で1:0.01〜200のNADPH、アスコルビン酸、システイン又はグルタチオンのいずれかを含む一重項酸素の消去用組成物。 【課題】水溶性条件下で一重項酸素を除去する方法及びその組成物の提供。【解決手段】式(1)で表されるピロロキノリンキノン還元体を用いることにより、一重項酸素を触媒的に高速で効率良く除去する方法及び組成物。【選択図】なし