タイトル: | 公開特許公報(A)_潤滑油の劣化度評価方法 |
出願番号: | 2010230548 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 27/02 |
長瀬 直樹 JP 2012083254 公開特許公報(A) 20120426 2010230548 20101013 潤滑油の劣化度評価方法 出光興産株式会社 000183646 特許業務法人樹之下知的財産事務所 110000637 長瀬 直樹 G01N 27/02 20060101AFI20120330BHJP JPG01N27/02 Z 4 OL 6 2G060 2G060AE30 2G060AF02 2G060AF08 2G060AG03 本発明は、潤滑油の劣化度評価方法に関する。 潤滑油は、電気・機械・自動車等、非常に多くの分野で使用されている。また、潤滑油は、長期間に渡って使用されることも多い。一方、潤滑油は長期間の使用により劣化してしまい、潤滑性に大きな影響を与えることもある。それ故、使用中の潤滑油の劣化度を評価することは極めて重要である。 そこで、潤滑油の電気特性に基づいて劣化度を判定する方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2)。特許文献1では、潤滑油のインピーダンスまたはコンダクタンスの温度に対する変化率を求めて潤滑油の劣化度を評価している。また、特許文献2では、pH−ISFETを使用して、潤滑油の水素濃度変化についてドレインとソース間に一定電圧を印加した場合のドレインとソース間に流れる電流の変化を測定することにより潤滑油の劣化度を評価している。特開2009−002887号公報特開2009−276148号広報 しかしながら、特許文献1、2に開示された潤滑油の劣化度評価方法や評価装置はそれなりに優れてはいるものの、防錆油のように僅かな量を薄膜状に塗布するタイプの潤滑油について劣化度を簡便に評価することは困難である。 本発明の目的は、薄膜状態の潤滑油の劣化度を簡便に評価する方法を提供することにある。 前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような潤滑油の劣化度評価方法を提供するものである。(1)潤滑油の劣化度評価方法であって、大気腐食センサを用いることを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。(2)上述の(1)に記載の潤滑油の劣化度評価方法において、前記大気腐食センサがACM型腐食センサであることを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。(3)上述の(1)または(2)に記載の潤滑油の劣化度評価方法において、前記潤滑油が防錆油であることを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の潤滑油の劣化度評価方法において、前記大気腐食センサに対して前記潤滑油の塗布厚みが0.1μm以上3μm以下であることを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。 本発明では、大気腐食センサを用いるので、薄膜状で使用される潤滑油の劣化度を簡便に評価することができる。それ故、特に防錆剤の劣化度評価方法として好適である。本実施形態に係る大気腐食センサ(ACM型腐食センサ)を模式的に示す図。実施例において、試験中の室内の温度と相対湿度の推移を示す図。実施例において、センサ表面の錆び面積率の推移を示す図。実施例において、センサに流れる電流値の推移を示す図。 本実施形態における大気腐食センサは、ACM型腐食センサである。〔ACM型腐食センサの構成〕 図1に示すACM型腐食センサ100は、鉄製基板10の上に絶縁材11が接合され、絶縁材11の上に鉄製基板10との絶縁が保たれるように導電材12が接合されたものである。導電材12には、リード線用の銅箔13が取り付けられている。 図1(A)は、ACM型腐食センサ100をセンサ側から見た模式図であり、図1(B)は、ACM型腐食センサ100の断面を示す模式図である。 ACM型腐食センサ100は、市販品を購入することで容易に入手可能であるが、以下のようにして製造してもよい。 絶縁材11を鉄製基板10上に接合するには、例えば、エポキシ樹脂系絶縁ペーストをIC用精密スクリーン印刷機を用いて鉄製基板10に印刷(塗布)し、硬化させればよい。このようなエポキシ樹脂系絶縁ペーストとしては、例えばグレース・ジャパン社製、アミコンME-990J #BN(樹脂:エポキシ系、フィラー:BN)などが好適である。 導電材12を絶縁材11上に接合するには、例えば、導電ペーストを前記したIC用精密スクリーン印刷機を用いて絶縁材11上に印刷(塗布)し、硬化させればよい。このような導電ペーストとしては、例えばグレース・ジャパン社製、アミコンC‐990J #585(樹脂:エポキシ系、フィラー:Ag)などが好適である。 ACM型腐食センサ100としては、乾燥状態で両極間の抵抗が10MΩ以上のものが実用上好ましい。出力の測定範囲は少なくとも0.1nAから1mAまであることが好ましい。また、その分解能は0.1nAから10μAまでの範囲では少なくとも0.1nA、また、1μAから1mAまでの範囲では少なくとも1μAあることが好ましい。〔潤滑油の塗布方法〕 前述のACM型腐食センサ100に対して防錆油等の潤滑油を塗布するには、任意の方法が採用できる。例えば、刷毛塗りあるいはスプレーによる噴霧でもよい。 潤滑油の塗布厚みは、電流値の測定精度の観点、および潤滑油の劣化度合いの判定精度の観点より0.3mm以上3mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2mm以下であることがより好ましい。〔潤滑油の劣化試験〕 潤滑油を塗布した後のACM型腐食センサ100を、適当な環境下に所定時間載置すればよい。すなわち、実際に潤滑油を使用する環境下、あるいはそれに近い環境下に該センサを載置すればよい。潤滑油の具体的な劣化度評価方法については、実施例にて詳述する。 上述したACM型腐食センサ100を用いることで、薄膜状で使用される潤滑油の劣化度を簡便に評価することができる。特に防錆剤の劣化度評価方法として好適である。 なお、大気腐食センサとしては、必ずしもACM型腐食センサには限られない。潤滑油をセンサ部に塗布可能な大気腐食センサであれば、本発明の劣化度評価方法に適用可能である。 次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。〔試料油の調製〕 以下に示す3種類の試料油を調製した。なお、腐食要因物質が蓄積した状態を想定して各試料油の防錆効果を評価するため、予め各試料油には、0.5質量%濃度のNaCl水溶液を、試料油基準で0.1質量%混入させた。具体的な処方を表1に示す。<試料油1> 基油:鉱油(パラフィン系鉱油(40℃動粘度3.65mm2/s))、添加剤:酸化防止剤(ジフェニルアミン(日本チバガイギー株式会社製 イルガノックス L57))、ポリオールエステル(ペンタエリスリトールテトラオレート(日油株式会社製 ユニスターH481R))<試料油2> 基油:鉱油(パラフィン系鉱油(40℃動粘度3.65mm2/s))、添加剤:酸化防止剤(ジフェニルアミン(日本チバガイギー株式会社製 イルガノックス L57))、Caスルホネート(アルキルベンゼン系)<試料油3(市販防錆油 ダフニースーパーコートTW(出光興産株式会社製))>〔ACM型腐食センサ〕 JIS G 3141のSPCC−SD鋼板を基板として、Fe/Ag対ACM型腐食センサを所定台数作製した。該センサの電気抵抗は10MΩ以上である。測定可能範囲は0.1nAから1mAまでであり、有効出力は1nAから1mAまでである。〔評価方法〕 各試料油を各ACM型腐食センサに0.1gづつ塗布した。塗布厚みを表1に示す。 次に、試料油を塗布した該センサを実験室内に暴露して10分間隔で電流値を測定し、併せて1日毎に該センサ表面の錆びの有無と程度(面積率)を目視観察した。また、比較のため、試料油を塗布せず、上述のNaCl水溶液のみを該センサに塗布したもの(Blank)についても併せて評価した。〔評価結果〕(各ACM型腐食センサ上の錆外観) 試験中の室内の温度と相対湿度の推移を図2に示す。試験期間(2010年6月から8月まで)における実験室内の温度は22℃から31℃までの範囲であり、相対湿度は41%RHから96%RHまでの範囲であった。 試験中の該センサの錆び面積率を図3に示す。Blankでは、1日経過時に既に錆び始めており、10日目で60%、21日目で該センサ全面に錆びを生じた。 試料油1(ポリオールエステル添加油)を塗布した該センサでは、9日目から錆び始め、17日目で40%、57日目で50%に錆びを生じた。一方、試料油2(Caスルホネ−ト添加油)および試料油3(市販防錆油)を塗布した該センサでは、63日経過後も錆びが認められなかった。(各ACM型腐食センサの出力電流値) Blankと試料油1について該センサの出力電流値の推移を図4(A)と図4(B)にそれぞれ示す。 Blankの電流値は、暴露直後に0.48μAから1μAまで変動し、3日目には最大7.16μAを示した。その後徐々に減少し、38日目以降では0から0.01μA程の電流値を示した。電流値が試験経過とともに減少する傾向がみられたのは、腐食要因物質とともに混入させた水分が徐々にセンサ表面から排除されたためと考えられる。 試料油1を塗布した該センサの電流値をみると、8日目までは電流値が検出されず9日目に0.25μAの電流値を示した。その後は、Blankと同様に徐々に減少する傾向が見られた、Blankと比較すると試験期間中常に小さい電流値を示した。 なお、試料油2、試料油3を塗布した該センサについては、試験期間中に一度も電流値が検出されなかった。 図4の電流値の推移を、図3の錆び面積率の推移と比較すると、錆びが目視で確認された時点から電流値が検出され始めていることがわかる。該センサに錆びの発生が認められなかった試料油2と試料油3については前記したように試験中に電流値が検出されていない。 以上の結果から、ACM型腐食センサ(大気腐食センサ)による出力電流値は、目視による錆びの程度と非常に良い相関があることがわかる。それ故、大気腐食センサは、防錆油の錆止め性の自動・簡易評価用として好適であることが理解できる。10 鉄製基板11 絶縁材12 導電材13 銅箔100 ACM型腐食センサ(大気腐食センサ) 潤滑油の劣化度評価方法であって、 大気腐食センサを用いる ことを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。 請求項1に記載の潤滑油の劣化度評価方法において、 前記大気腐食センサがACM型腐食センサである ことを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。 請求項1または請求項2に記載の潤滑油の劣化度評価方法において、 前記潤滑油が防錆油である ことを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潤滑油の劣化度評価方法において、 前記大気腐食センサに対して前記潤滑油の塗布厚みが0.1μm以上3μm以下である ことを特徴とする潤滑油の劣化度評価方法。 【課題】薄膜状態の潤滑油の劣化度を簡便に評価する方法を提供する。【解決手段】大気腐食センサを用いて薄膜状に塗布された潤滑油の劣化度を評価する。大気腐食センサは、例えばACM(Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食センサであって、その表面に塗布された潤滑油が劣化すると微弱な電流が流れ、劣化度を簡便に推定できる。従って、防錆油のような薄膜状に塗布される潤滑油の劣化度の評価方法として優れている。【選択図】なし