タイトル: | 公開特許公報(A)_IgG4関連疾患診断用マーカー及びその利用 |
出願番号: | 2010194326 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12Q 1/68,G01N 33/68,G01N 33/53,C12N 15/09 |
梅原 久範 正木 康史 友杉 直久 石垣 靖人 JP 2012050369 公開特許公報(A) 20120315 2010194326 20100831 IgG4関連疾患診断用マーカー及びその利用 学校法人金沢医科大学 507189460 大野 聖二 230104019 森田 耕司 100106840 田中 玲子 100105991 松任谷 優子 100119183 北野 健 100114465 伊藤 奈月 100156915 梅原 久範 正木 康史 友杉 直久 石垣 靖人 C12Q 1/68 20060101AFI20120217BHJP G01N 33/68 20060101ALI20120217BHJP G01N 33/53 20060101ALI20120217BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120217BHJP JPC12Q1/68 AG01N33/68G01N33/53 DC12N15/00 A 10 OL 41 2G045 4B024 4B063 2G045AA25 2G045CA25 2G045DA14 2G045DA36 2G045FB02 2G045FB03 4B024AA11 4B024CA04 4B024CA09 4B024HA12 4B063QA19 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR32 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 4B063QX02 本発明は、IgG4関連疾患診断用マーカーとその利用に関する。より詳細には、IgG4関連疾患診断用マーカーとなりうる遺伝子群及びタンパク群、ならびに末梢血中における前記マーカーの発現を指標としたIgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患の診断方法に関する。 IgG4関連疾患は、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の腫瘤形成あるいは組織浸潤を特徴とする新たな疾患概念である。 発明者らは、従来、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、悪性リンパ腫、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症、炎症性偽腫瘍、キュツナー腫瘍、間質性腎炎、各臓器癌などと診断されてきた症例のなかに、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の組織浸潤又は腫瘤形成を特徴とする“疾患群”の存在を見出し、これを「IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群(IgG4+MOLPS)」と命名した(非特許文献1)。その後、後述する厚生労働省難治性疾患克服研究事業を通じて、「IgG4関連疾患(IgG4-related disease)」として病名統一がなされた。 IgG4関連疾患発見の端緒は、Hamanoらが硬化性膵炎における高IgG4血症について報告したことに始まる(非特許文献2)。本邦の自己免疫性膵炎の大半はIgG4関連疾患と考えられているが、自己免疫性膵炎は、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎涙腺炎などの多彩な膵外病変を伴うことから、KamisawaらはIgG4関連硬化性疾患(IgG4-related sclerosing disease)という概念を提唱している(非特許文献3)。 一方で、後腹膜及び縦隔の線維症(非特許文献4〜5)、肺や肝の炎症性偽腫瘍(非特許文献6) 、キュツナー腫瘍(非特許文献7)、間質性腎炎(非特許文献8)などでもIgG4陽性形質細胞浸潤が見られることが報告された。Yamamotoらは、ミクリッツ病における高IgG4血症やIgG4陽性形質細胞浸潤を確認し、全身性疾患としてSystemic IgG4 plasmacytic syndrome(SIPS)を提唱している(非特許文献9)。このように、IgG4関連疾患の解析は日本が先駆的な役割を果してきたが、様々な疾患名で報告されていることがIgG4関連疾患の統一的な解明を妨げている原因でもあった。 こうした中で、厚生労働省難治性疾患克服研究事業によるIgG4関連疾患診断確立のための研究班により、「IgG4関連疾患(IgG4-related disease)」として病名統一の合意が成された。 IgG4関連疾患は新たな疾患単位を形成することは明らかであるが、未だほとんどの臨床医に周知されていない。定点観測サンプリング法によれば、全国のIgG4関連疾患の患者数は26,000人と推測され、多くの患者のためにも各診療領域におけるIgG4関連疾患の啓蒙が重要である。 IgG4関連疾患は、(1)IgG4陽性形質細胞増殖を主体とした単一もしくは多臓器に及ぶリンパ増殖性病変、(2)血清IgG4の増加(135mg/dl以上)、(3)ステロイド治療が著効する、といった特徴を有する。それゆえ、他の多クローン性高ガンマグロブリン血症を呈するシェーグレン症候群やキャッスルマン病などとの鑑別が必要となる。 IgG4関連疾患は、適切な治療を行えば、本来コントロールの良好な疾患である。しかしながら、その認知度の低さゆえに、他の既存の疾患と混同されたり、原因不明疾患として取り扱われ、効果的な治療が行われないことも少なくない。 こうした状況のもと、早急にIgG4関連疾患の疾患概念の確立と診断基準の制定を行い、広く臨床医の注意を喚起することが望まれる。現時点では、個別の疾患について、眼瞼・唾液腺・耳下腺に腫瘤形成する「IgG4-ミクリッツ病診断基準」と自己免疫膵炎に関する「IgG4-自己免疫性膵炎診断基準」が制定されているにすぎず、「IgG4関連肺疾患診断基準」「IgG4関連腎炎診断基準」などの策定も推進する必要がある。しかしながら、IgG4関連疾患は全身の諸臓器に発生しうるという特徴があるため、単一の診療科による診断基準確定には無理があり、統一的な診断基準の策定が必要である。Masaki Y, et al: Proposal for a new clinical entity, IgG4-positive multi-organ lymphoproliferative syndrome: Analysis of 64 cases of IgG4-related disorders. Ann Rheum Dis 68:1310-1315, 2009.Hamano H, et al: High serum IgG4 concentrations in patients with sclerosing pancreatitis. N Engl J Med 344:732-738, 2001.Kamisawa T, et al: A new clinicopathological entity of IgG4-related autoimmune disease. J Gastroenterol 38: 982-984, 2003.Kamisawa T, et al: IgG4-related sclerosing disease incorporating sclerosing pancreatitis, cholangitis, sialadenitis and retroperitoneal fibrosis with lymphadenopathy. Pancreatology 6:132-137, 2006.Zen Y, et al: A case of retroperitoneal and mediastinal fibrosis exhibiting elevated levels of IgG4 in the absence of sclerosing pancreatitis (autoimmune pancreatitis). Human Pathol 37:239-243, 2006.Zen Y, et al: IgG4-positive plasma cells in inflammatory pseudotumor (plasma cell granuloma) of the lung. Human Pathology 36:710-717, 2005.Kitagawa S, et al: Abundant IgG4-positive plasma cell infiltration characterizes chronic sclerosing sialadenitis (Kuttner’s tumor). Am J Surg Pathol 29:783-791, 2005.Saeki T, et al: Lymphoplasmacytic infiltration of multiple organs with immunoreactivity for IgG4-related systemic disease. Intern Med 45:163-167, 2006.Yamamoto M, et al: The analysis of interleukin-6 in patients with systemic IgG4-related plasmacytic syndrome-expansion of SIPS to the territory of Castleman's disease. Rheumatology (Oxford) 48:860-862, 2009. 本発明の課題は、IgG4関連疾患の特徴的マーカーを同定し、IgG4関連疾患を類似する疾患と区別して簡便に診断する方法を提供すること、並びに、前記マーカーに基づきIgG4関連疾患の病因病態を解明し、IgG4関連疾患の疾患概念の確立と診断基準を制定することにある。 上記課題を解決するために、発明者らはIgG4関連疾患と診断された患者の血清及びDNAを収集し、DNAアレイ法を用いた疾患特異的遺伝子の網羅的検索と、プロテオミクスの手法を用いた疾患関連蛋白質の解析を行った。 そして、IgG4関連疾患治療前後及び患者と健常人間における遺伝子発現変動を解析し、疾患特異的遺伝子を特定した。また、IgG4関連疾患治療前後及び患者と健常人間における血清中蛋白質の発現変動を、プロテオミクス的手法により解析し、α1 アンチトリプシン、クラステリンなどの炎症性因子を疾患特異的蛋白質として同定した。 すなわち、本発明は、被験者から単離された検体における、表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する方法に関する。 1つの実施形態において、本発明は、遺伝子シンボル CLC、DEFA3、DEFA4、IL8RA、CXCR1、IL8RA,CXCR2、及びMS4A3からなる群より選ばれる少なくとも1以上の遺伝子、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群より選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、前記被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する。 別な実施形態において、本発明は、表1−(1)(A)及び(2)(A)記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量に基づき、前記被験者がIgG4関連疾患か否かを評価する。 また別な実施形態において、本発明は、表2記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量に基づき、前記被験者がIgG4関連疾患か否かを評価することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 さらに別な実施形態において、本発明は、表2に記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる蛋白質群から選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の病態を評価する。 本発明において、用いられる検体は特に限定されないが、たとえば末梢血を用いることができる。 遺伝子の発現量は、たとえば、マイクロアレイ、及びメンブレンフィルターから選ばれる固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、次世代シーケンス解析法ならびにクロスハイブリダイゼーション法から選ばれるいずれかの方法によって測定することができる。 蛋白質の発現量は、たとえば、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、質量分析法、プロテインチップ法、ビアコアを含む分子間相互作用解析法及びRIA法から選ばれるいずれかの方法によって測定することができる。 本発明は、IgG4関連疾患の診断用試薬又はキットも提供する。本発明の試薬又はキットは、たとえば、以下の1)〜4)のいずれか1又は2以上を含む:1)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を増幅するためのプライマー2)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブ3)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブを固定した固相化試料4)蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる蛋白質に特異的に結合する抗体、リガンド、又は受容体分子。 本発明はまた、IgG4関連疾患の診断システムも提供する。本発明のシステムは、たとえば、以下の1)〜5)の手段を有する:1)被験者から単離された検体における、表1と表2記載の遺伝子群、及び/又は蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる蛋白質群の発現量を入力する手段と、2)予め入力されたIgG4関連疾患患者および健常人の前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量に関するデータを記憶する手段と、3)前記被験者における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量と前記健常人における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量を比較解析する手段と、4)前記解析結果に基づき、当該被験者がIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する手段と、5)前記評価結果を出力する手段。 本発明によれば、患者から単離した検体(末梢血)を用いることにより、IgG4関連疾患を類似する疾患と区別して簡便に診断することができる。また、IgG4関連疾患患者の病態を簡便に評価することができ、治療の進度の確認や予後の予測に利用できる。 本発明は、検体(末梢血)中のRNA発現量や蛋白質発現量を一括定量することによってIgG4関連疾患に特有の所見を得ることでIgG4関連疾患を診断する方法を提供するものであって、IgG4関連疾患の診療に画期的な向上をもたらすものである。 本発明によれば、患者の特別な協力を必要とせず、通常の採血による2-5ccの血液をもとに解析が可能であり、非侵襲的、簡便かつ日常的にIgG4関連疾患の診断が可能になる。数多くのRNA発現量から生体機能を多面的に把握する本法は、従来の限られた因子を測定する方法に比べ、IgG4関連疾患のようにさまざまな診療科にわたる複雑な疾患の検査方法として原理的にも適切である。患者と健常人間で発現量に有意な差があった遺伝子群(t検定:p<0.05、かつFold change 1.5以上)のマイクロアレイデータ患者と健常人間で発現量に有意な差があった遺伝子群(t検定:p<0.05、かつFold change 2.0以上)のマイクロアレイデータ患者と健常人間で発現量に有意な差があった遺伝子群(t検定:p<0.05、かつFold change 3.0以上)のマイクロアレイデータ患者の治療前後で有意に変動していた遺伝子群(t検定:p<0.05、かつFold change 3.0以上)Charcot-Leyden crystal protein (CLC) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)Defensin, alpha 3 (DEFA3) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)Defensin, alpha 4 (DEFA4) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)Interleukin 8 receptor, alpha (IL8RA, CXCR1) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)Interleukin 8 receptor, beta (IL8RB, CXCR2) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)Membrane-spanning 4-domains, subfamily A, member 3 (MS4A3) の患者と健常人、患者の治療前後における発現変動(リアルタイムPCR)ウエスタンブロットによるClusteringの発現解析結果(レーン(1)及び(2):IgG4関連疾患患者1治療前、レーン(3):IgG4関連疾患患者1治療後、レーン(4):IgG4関連疾患患者2治療前、レーン(5):IgG4関連疾患患者2治療後、レーン(6):IgG4関連疾患患者3治療前、レーン(7):IgG4関連疾患患者3治療後、レーン(8):健常人1、レーン(9):健常人2、レーン(10):健常人3)ウエスタンブロットによるα1 antitrypsinの発現解析結果(レーン(1)及び(2):IgG4関連疾患患者1治療前、レーン(3):IgG4関連疾患患者1治療後、レーン(4):IgG4関連疾患患者2治療前、レーン(5):IgG4関連疾患患者2治療後、レーン(6):IgG4関連疾患患者3治療前、レーン(7):IgG4関連疾患患者3治療後、レーン(8):健常人1、レーン(9):健常人2、レーン(10):健常人3)ELISAによるClusteringの発現解析結果(左:IgG4関連疾患患者(7例)治療前、右:健常人(6例))ELISAによるα1 antitrypsinの発現解析結果(左:IgG4関連疾患患者(7例)治療前、右:健常人(6例))1.IgG4関連疾患 IgG4関連疾患は、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、悪性リンパ腫、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症、炎症性偽腫瘍、キュツナー腫瘍、間質性腎炎、各臓器癌などと診断されてきた症例に存在する共通の“疾患群”である。 IgG4関連疾患は、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の腫瘤形成あるいは組織浸潤を特徴とし、(1)IgG4陽性形質細胞増殖を主体とした単一もしくは多臓器に及ぶリンパ増殖性病変、(2)血清IgG4の増加(135mg/dl以上)、(3)ステロイド治療が著効する、といった共通の特徴を有する。 以下、IgG4関連疾患に含まれる各疾患について、その臨床的特徴を既存の症候群と相違を含めて詳述する。1)IgG4関連ミクリッツ病とシェーグレン症候群 当初、いわゆるミクリッツ病及びミクリッツ病の徴候は呈していなくても、血清IgG4高値(>135mg/dl)かつ特徴的な組織像を呈する58例をIgG4関連疾患と診断した。IgG4関連疾患を典型的シェーグレン症候群症例と比較解析した結果、以下に示すIgG4関連疾患の特徴が明らかになった。 (1) 眼乾燥、口腔乾燥や関節痛の自覚症状が少なく、自己免疫性膵炎、間質性腎炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の合併例が多く認められる。(2) IgG4関連疾患の殆どが抗SS-A抗体及び抗SS-B抗体が陰性で、RF及びANA陽性率も低率であることが確認されている。(3) IgG4関連疾患では血清IgG4のみならずIgEが有意にシェーグレン症候群より高値である。(4)シェーグレン症候群ではステロイド治療の効果は限定的であるが、IgG4関連疾患はステロイド投与が初期には著効する。以上の相違点と後述する病理像の違いより、侵される臓器は類似しているが、シェーグレン症候群とIgG4関連疾患は異なった疾患単位である。2)IgG4関連ミクリッツ病の病理像 IgG4関連ミクリッツ病もシェーグレン症候群も著明なリンパ球浸潤を認めるが、IgG4関連ミクリッツ病では、リンパ瀘胞を形成するほどリンパ球浸潤が華々しい反面、唾液腺導管へのリンパ球浸潤が少なく導管の構造が保たれている。すなわち、シェーグレン症候群のようにリンパ上皮性病変を形成しないことが、涙腺や唾液腺の腫脹が著明な割に、乾燥症状が少ない理由である可能性がある。最も重要な相違は、IgG4関連疾患ではIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤(IgG4陽性細胞/IgG陽性細胞が50%以上)が認められるが、シェーグレン症候群では殆ど認められないことである。多くの症例は多クローン性のB細胞増殖であり、免疫ブロブリンのκ鎖、λ鎖が同等に染色される。3)IgG4関連キュツナー(Kuttner)腫瘍 片側性の硬化性顎下腺炎であるキュツナー腫瘍もIgG4関連疾患であることが判明している。ミクリッツ病とキュツナー腫瘍の両者はIgG4関連疾患としての唾液腺炎であるという点で共通している。キュツナー腫瘍の組織は非常に強い線維性硬化性病変が存在し、その中にIgG4陽性形質細胞が認められる。一方、ミクリッツ病ではそれほど線維化は強くないことが多い。しかし、一般的に口唇小唾液腺生検で診断されるミクリッツ病では線維化が軽く評価されている傾向にあり、両者に厳密な境界を設けることは難しい。4)IgG4関連膵炎と自己免疫性膵炎 1961年のSarlesらによる自己免疫機序による慢性膵炎の報告、1978年のNakanoらによるシェーグレン症候群に合併し、ステロイドにより改善した腫瘤形成性膵炎の報告、1991年のKawaguchiらによる自己免疫性膵炎の特徴的な病理所見としてLymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP)の報告に続き、1995年にYoshidaらによって、高γグロブリン血症、各種自己抗体の存在、膵組織へのリンパ球浸潤、他の自己免疫性疾患の合併、良好なステロイド反応性等の特徴を持つ自己免疫性膵炎の疾患概念が提唱された。その後、2001年HamanoらによるIgG4上昇の発見があり(前掲)、厚生労働省難治性膵疾患調査研究班の精力的な研究により、自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患と考えられるようになった。 一方、欧米の自己免疫性膵炎の組織像は、idiopathic duct-centric chronic pancreatitis (IDCP)あるいはautoimmune pancreatitis with granulocytic epithelial lesion (GEL)と記載される、主に好中球浸潤による病態(IDCP/GEL型)である。IgG4関連膵炎(LPSP型)は高齢の男性に多く、様々な膵外病変を併発しやすいのに対して、好中球関連膵炎(IDCP/GEL型)は、性差が無く発症年齢も若く(40歳以下が多い)、炎症性腸疾患と関連がある等、両者は異なった病態である可能性が高い。自己免疫性の診断基準を巡っては世界的な議論が行われており、IgG4関連膵炎をType 1(LPSP型)、好中球関連をtype2(IDCP/GEL型)とする自己免疫性膵炎の基準が欧米より提案されたが、国際的なコンセンサスは得られていない。 最近、イタリアのグループが自己免疫性膵炎患者のプール血清から、Helicobacter pylori のplasminogen-binding protein (PBP)とubiquitin-protein ligase E3 component n-recognin 2 (UBR2)に類似のペプチドに反応する抗体を同定し、自己免疫性膵炎患者においてはH. pyloriに対する抗体陽性者が有意に高率であることを報告した。しかし、この報告にはIgG4高値症例(135mg/dl以上)は半数しか含まれておらず、IgG4関連膵炎と好中球関連膵炎の検体が混在した結果である可能性が高い。5)IgG4関連腎症 IgG4関連疾患の腎病変には、後腹膜線維症に伴う水腎症や腎盂・尿管腫瘍などの腎実質病変以外の場合も存在するが、腎実質病変の代表は間質性腎炎である(IgG4関連間質性腎炎)。IgG4関連間質性腎炎は、他の間質性腎炎に比べ、膵炎、唾液腺炎、リンパ節炎などの腎外性病変の合併が多く、IgG4関連疾患の中では低補体血症頻度が高い。画像上は、腎に腫瘤や多発結節など不均一な陰影を認めることが多く、他の間質性腎炎ではみられない所見である。病理学的には腎尿細管間質に多数のリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認め、IgG4免疫染色で多数のIgG4陽性形質細胞が確認される。糸球体には著変がないとの報告が多いが、膜性腎症をはじめ糸球体病変の合併も報告されている。ほとんどの症例でステロイド(predonisolone 0.6-1.0mg/kg/日)が著効し、腎機能の改善が認められる。6)IgG4関連肺疾患 肺のIgG4関連疾患と考えられる症例は、これまで炎症性偽腫瘍、間質性肺炎、器質化肺炎、lymphomatoid granulomatosisなどの診断名で報告されていたものが多い。それらを集計すると、男性優位(80.5%)で年齢の中央値は65歳であり、IgG4関連疾患の特徴と似かよっている。乾性咳や呼吸困難など初発時の呼吸器症状を認めたものは少数で、75%の症例は無症状で偶然に胸部異常陰影として発見されている。画像上は、炎症性偽腫瘍型と間質性肺炎型に大別される。炎症性偽腫瘍型は、結節性あるいは腫瘤性病変、浸潤影などと表現され、腫瘤周辺に放射状に伸びる網状陰影が特徴である。間質性肺炎型は、両下肺野に網状影、すりガラス状陰影、間質性線維化を認める例が多い。 炎症性偽腫瘍は、病理学的には形質細胞性肉芽腫で、形質細胞とリンパ球主体の細胞浸潤、不規則な線維化、リンパ瀘胞形成、結節辺縁の間質性肺炎像、閉塞性静脈炎動脈炎、好酸球浸潤が認められる(前掲)。間質性肺炎型では、形質細胞とリンパ球浸潤による肺胞隔壁の肥厚、びまん性線維化が認められ、従来、nonspecific interstitial pneumonia (NSIP)と分類されて来たパターンを取るものが多い。7)IgG4関連リンパ節症とキャッスルマン病 リンパ節病変を主体とするIgG4関連疾患の場合には、キャッスルマン病や特発性形質細胞性リンパ節症(IPL: idiopathic plasmacytic lymphadenopathy)との鑑別が問題となることがある。IgG4関連リンパ節症は好酸球の浸潤と血清IgEの上昇を伴い、IgG4陽性形質細胞の浸潤形態により、interfollicular plasmacytosis typeとintra-germinal center typeの2型に分類される。多中心性キャッスルマン病(multicentric Casteleman’s disease)の大きな違いは、IgG4関連リンパ節症に比べ、発症年齢が若いこと(43.3 vs 68.8 歳)、CRP高値であること(8.71 vs 0.29 mg/dl)、IL-6が高値であること(34.82 vs 8.45 pg/ml)である。 現時点では、IgG4関連疾患の診断のための大前提として、1)血清IgG4が135 mg/dl以上であること, 2)病理組織におけるIgG4陽性形質細胞がIgG陽性形質細胞の40%以上を占めること、という2点についての合意が得られている。 IgG4関連疾患は、多クローン性高ガンマグロブリン血症を呈するシェーグレン症候群やキャッスルマン病など類似した病態を呈する既存の疾患との鑑別が必要であり、また全身の諸臓器に発生しうるという特徴があるため、単一の診療科に限定されない、統一的な診断基準、診断方法の策定が望まれる。 本発明は、IgG4関連疾患の疾患特異的遺伝子(IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子)、及び疾患特異的蛋白質(IgG4関連疾患診断用マーカー蛋白質)を特定し、これらを指標としたIgG4関連疾患の簡便かつ統一的な診断方法を提供する。2.IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子 発明者らは、IgG4関連疾患患者末梢血リンパ球におけるmRNA量を、DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析することにより、病態関連遺伝子群の検索を行なった。具体的には、IgG4関連疾患患者(治療前後)と健常人から末梢血を採取し、その単核球から抽出したRNAを用いてDNAマイクロアレイ解析を行なった。そして、患者の治療前後において有意に発現が変動する遺伝子、及び患者と健常人間において有意に発現が異なる遺伝子群を抽出した。さらに抽出された各遺伝子について、リアルタイムPCRによるバリデーションを行った。 そして、患者と健常人間で統計的に有意な変動が見られ、かつ、患者の治療前後で1.5倍以上の発現量変化を認めた遺伝子群(表1:(1)FC 1.5以上2.0未満、(2)FC 2.0以上3.0未満、(3)FC 3.0以上)、患者と健常人間で3倍以上の発現量の違いを認めた遺伝子群(表2)を「IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子」として抽出した。 表1記載の遺伝子群のうち、表1(3)に示される遺伝子群は、患者と健常人間で3.0倍以上の発現量変化を認めた遺伝子群である。これらの遺伝子シンボルを以下に列挙する: 本発明にかかる「IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子」は、ヒトIgG4関連疾患に特異的な遺伝子であり、かつ、その病態を反映して発現が変化する遺伝子である。それゆえ、本発明にかかる「IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子」は、IgG4関連疾患の罹患の有無を評価するためのマーカーとして利用できる。また、IgG4関連疾患患者における病態の評価、例えば、治療の進度をモニターしたり、予後を予測するためのマーカーとして利用できる。 とくに、治療前後で発現が相違する表2に記載の遺伝子群は、病態評価のマーカーとして好ましい。 なお、本明細書中において、「遺伝子」という用語には、DNAのみならずそのmRNAやcDNAも含むものとする。また、全長遺伝子のみならずESTも含むものとする。 以下、本発明の「IgG4関連疾患診断用マーカー遺伝子」のうち有望なものについて説明する。(1)Charcot-Leyden crystal protein (CLC) CLCはβ-galactoside-binding lectin familyに属しており、ガレクチン-10とも呼ばれる。CLCは、長く好酸球、好塩基球におけるlysophospholipaseとして機能していると考えられていたが、最近はそれを否定する論文が報告されている。一方でCLCはガレクチンファミリーに属しており、ガレクチンはヒトでは15種類知られているが、その遺伝子をノックアウトした場合にみられる影響は、免疫、感染、炎症等に深く関係していることから、免疫系における機能が推定されている。 (2)Defensin, alpha 3 (DEFA3) 及びDefensin, alpha 4 (DEFA4) Defensinは哺乳類の代表的な抗菌ペプチドであり、その抗菌活性により自然免疫のエフェクター因子として機能している。ヒトではα-defensinとβ-defensinが存在するが、DEFA3がコードしているhuman neutrophil peptide-3(HNP-3)、DEFA4がコードしているHNP-4はα-defensinとして好中球のアズール顆粒中に大量に存在する。また単球において、HNP-1〜3はIL-8産生を誘導することが知られている。 (3)Interleukin-8受容体:Interleukin 8 receptor, alpha (IL8RA, CXCR1) 及びInterleukin 8 receptor, beta (IL8RB, CXCR2) CXCR-1及びCXCR-2が同定されている。ともに7回膜貫通三量体Gタンパク共役型受容体で、アミノ酸レベルで76%の相同性を示す。これらの受容体は好中球、好酸球、肥満細胞、CD8陽性T細胞、CD56陽性NK細胞及び単球の一部に発現している。 Interleukin-8は、IL-1やTNFといった炎症性サイトカインの刺激により、主に単球やマクロファージから産生されるケモカインである。CXCR-1、CXCR-2の両方にほぼ同様に作用し、主に好中球の遊走と活性化を促し、炎症反応を促進する。 (4)Membrane-spanning 4-domains, subfamily A, member 3 (MS4A3) この遺伝子はmembrane-spanning 4A(MS4A) gene familyに属する。MS4A3は造血系細胞において、好塩基球で最も優位に発現を認めるが、その他の顆粒球やB細胞、T細胞にも低いレベルで発現している。染色体の局在が、同じMS4A familyであるFcεRI抗原レセプターβ鎖(MS4A2)に近接しており、この染色体領域は有意にヒトアトピー表現型と関連していることが報告されている。MS4A3はアトピー喘息と強い関連を示し、アトピー遺伝子の候補であると考えられている。 3.IgG4関連疾患診断用マーカー蛋白質 発明者らは、IgG4関連疾患の治療前後及び健常人における血清中蛋白質を、プロテオミクス的手法により解析し、「IgG4関連疾患診断用マーカー蛋白質」として抽出した。 具体的にはフォームドコンセントを得たIgG4関連疾患の治療前・治療後、及び健常人の血清から調製したポリペプチドを2次元電気泳動(pH3-10)により展開し、治療前後で変動したスポットを切り出し、質量分析解析で蛋白質を同定した。その結果、IgG4関連疾患治療前の血清では、IgG1、IgG4、Igλ、Igκの増加、α1アンチトリプシン、アポリポプロテイン-L1、補体因子4(Complement 4)、C1q、血清アミロイドAタンパク質前駆体(Serum amyloid A protein precursor)などの炎症性因子の増加がみられ、健常人と比べても明らかに異なるパターンが得られた。さらに上記蛋白質についてウエスタンブロットによるバリデーションを行った。こうして、健常人と患者間、また患者の治療前後について有意に発現が変動するタンパク質群を「IgG4関連疾患診断用マーカータンパク質」として特定した。 本発明にかかる「IgG4関連疾患診断用マーカータンパク質」は、ヒトIgG4関連疾患に特異的な蛋白質であり、かつ、その病態を反映して発現が変化する蛋白質である。それゆえ、本発明にかかる「IgG4関連疾患診断用マーカー蛋白質」は、IgG4関連疾患の罹患の有無を評価するためのマーカーとして利用できる。また、IgG4関連疾患患者における病態の評価、例えば、治療の進度をモニターしたり、予後を予測するためのマーカーとして利用できる。 以下、本発明の「IgG4関連疾患診断用マーカー蛋白質」の有望な例について説明する。(1)クラステリン(CLUS:Clustering precursor) ヒトクラステリンは、ジスルフィド結合で強く結合した、75〜80kDaヘテロ二量体性糖蛋白質である。クラステリンは、上皮細胞や神経細胞等、多くの細胞や母乳、血漿、尿等、体液性物質から分泌される主要蛋白質である。このように、クラステリンは体内に広範囲で存在するため、膜組織の再生や、リン脂質の輸送等、多くの生理的機能を起因する物質と考えられています。さらに、細胞死をプログラムする機能を持つ細胞外シャペロンとしての役割も示唆されています。また、腎臓変性疾患、前立腺癌、卵巣癌、アルツハイマー病等の神経性疾患等、重度の疾患の発症に関与しているとの報告もある。(2)α1アンチトリプシン(ALTA:Alpha-1-antitrypsin precursor) 代表的な急性相反応物質の一つ。欠損すると若年性肺気腫を引き起こすことが知られている蛋白質である。 α1アンチトリプシンは394個のアミノ酸からなる分子量約51000の糖蛋白である。血清中の代表的なプロテアーゼインヒビターであり、トリプシンのみならず活性中心にセリンをもつ蛋白分解酵素(セリン・プロテアーゼ)一般を阻害する働きをもち、serin protease inhibitor superfamilyの原型蛋白と考えられている。トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、エラスターゼなど広範なセリン・プロテアーゼを阻害するが、主眼となる生理機能は好中球エラスターゼの阻害であり、1対1で結合して組織障害の拡大を防ぐ役割を担っている。 α1アンチトリプシンの高値を示す病態としては、急性・慢性感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、膠原病、肝疾患(急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝癌など)、アレルギー性疾患、外科手術後、妊娠が知られている。また、副腎皮質ステロイド、エストロゲン、経口避妊薬など薬剤投与によっても増加する。 α1アンチトリプシンの低値を示す病態としては、先天性のα1アンチトリプシン欠乏症または欠損症、後天性のネフローゼ症候群、新生児呼吸促迫症候群、栄養不良、蛋白喪出性胃腸症、劇症肝炎 などが知られている。(3)色素上皮由来因子(PEDF:Pigment epithelium-derived factor precursor) 網膜色素上皮より単離された分泌性蛋白。血管新生抑制、抗酸化作用、神経新生作用を有する。平滑筋細胞の増殖・遊走を抑制し、単球・T cell 活性化を抑制する。 (4)ダームシジン(DCD:Dermcidin precursor) 抗菌ペプチドのひとつ。侵入した病原体に対し、直接的な抗菌作用をもつ。特にE.coli、E.faecalis、S.aureus、C.albicansに対しより強い抗菌作用を持つ。汗に含まれる。 アトピー性皮膚炎患者では、表皮の分化異常のため、抗菌ペプチドの発現が低下し、炎症があっても抗菌ペプチドがうまく誘導されない。 (5)血清アミロイドA4蛋白(SAA4:Serum amyloid A-4 protein prcursor) SAAは血中では高比重リポ蛋白(HDL)の構成アポ蛋白として存在する。最も増大率の高い炎症蛋白質。SAAには4種類のアイソタイプ(SAA1,SAA2,SAA3,SAA4:ヒトではSAA3は非発現)があり、このうちSAA1,SAA2がIL-1,IL-6,TNFなどの炎症性サイトカインに応答する急性相反応物質で、アミロイド原性蛋白である。SAA4はHDLの構成蛋白で、炎症時には変動しない。SAAは主に肝臓で産生されるが、その他末梢血単球や血管内皮細胞から産生されているという報告もある。4.IgG4関連疾患の診断方法 本発明のマーカー遺伝子及び本発明のマーカー蛋白質の発現量は、IgG4関連疾患の罹患、病態や予後を反映する。従って、検体中の前記遺伝子又は蛋白質の発現量を測定することにより、IgG4関連疾患の罹患の有無や病態を評価し、IgG4関連疾患の診断に利用することができる。 なお、「検体」とは、被験者や臨床献体等から単離された、血液、体液、組織又は排泄物等の試料を意味するが、本発明では末梢血が好ましく、血清又は末梢血リンパ球画分がより好ましい。4.1 マーカー遺伝子を利用した診断方法 本発明のマーカー遺伝子を利用した診断方法は、例えば、以下の工程1)〜3)の工程により実施できる。1)被験者から単離された検体(例えば、末梢血)より、全RNAを抽出する;2)上記検体由来全RNAにおける、マーカー遺伝子の発現量を測定する;3)上記各マーカー遺伝子の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する。工程1) 工程1)における全RNAの抽出は、特に限定されず、例えば、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., (1987) Anal. Biochem., 162, 156-159)等を採用することができる。抽出された全RNAはさらに精製してmRNAとして使用することが好ましい。工程2) 工程2)におけるマーカー遺伝子発現量は、工程1で得られた全RNA(あるいはmRNA)中におけるマーカー遺伝子(mRNA)の発現量を、マイクロアレイ(遺伝子チップ、cDNAアレイ)等の固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、次世代シーケンス解析法(パイロシーケンス、Sequencing by Ligationなどを利用した高速シーケンス)ならびにクロスハイブリダイゼーション法など公知の方法を用いて測定することができる。 なお、本発明において、指標とするマーカー遺伝子の「発現量」は、その物理的な量に限定されず、これを間接的に示す活性やシグナル強度等も含む。工程3) 工程3)における評価は、特定のマーカー遺伝子について個別に評価して行うことも可能であるが、複数のマーカー遺伝子について、その発現量の相違を総合的に評価(発現プロファイル解析)して行うことが好ましい。例えば、健常人血清に対する検体中のマーカー遺伝子群の発現プロファイルが、IgG4関連疾患患者血清における発現プロファイルと類似している場合、当該患者はIgG4関連疾患に罹患している可能性が高いと予測される。また、個々の患者について、該マーカー遺伝子の発現変動を経時的に観察すれば、該患者の病態、予後を評価(予測)することができる。 さらに、データが蓄積され、各マーカー遺伝子において診断の目安となる所定の基準値(閾値)が決定されれば、その基準値との比較結果に基づいて当該被験者がIgG4関連疾患に罹患しているか否か、病態が回復に向かっているかどうか等を評価することができる。4.2 マーカー蛋白質を利用した診断方法 本発明のマーカー蛋白質を利用した診断方法は、例えば、以下の工程1)〜3)の工程により実施できる。1)単離された検体(例えば、末梢血)中のポリペプチドを固相化する;2)上記固相化ポリペプチドにおける、本発明の各マーカー蛋白質の発現量を該マーカー蛋白質に特異的に結合する抗体を用いて検出する;3)上記各マーカー蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する。 上記のような方法のほか、ビアコアのような分子間相互作用を利用した解析法を用いて、検体中のマーカー蛋白質を検出(測定)してもよい。工程1) 工程1)において、単離された検体(例えば、末梢血や血清)は、必要に応じて高速遠心を行うことにより不溶性の物質を除去した後、以下のようにELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料として調製する。 ELISA/RIA用試料は、例えば、回収した血清をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば、心筋組織細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合したものを用いる。ドット/スロットブロット用試料は、例えば、回収した心筋組織細胞抽出液そのもの、又は緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用する等して、直接メンブレンへ吸着させたものを用いる。 上記のようにして得られた試料中のポリペプチドを特異的に検出するため、該ポリペプチドを固相化する。ウエスタンブロット法、ドットブロット法又はスロットブロット法に用いられる固相としては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製等)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド-ECL(アマシャム・ファルマシア社製)等)、コットンメンブレン(例えば、ブロットアブソーベントフィルター(バイオラッド社製)等)又はポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製等)等が挙げられる。 電気泳動後のゲルからメンブレンにポリペプチドを移す、いわゆるブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。ドットブロット法やスロットブロット法のための器材は市販のもの(例えば、バイオ・ドット(バイオラッド)等)を用いることができる。 一方、ELISA/RIA法で検出・定量を行うためには、専用の96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料又はその希釈液(例えば、0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃〜室温で一晩、又は37℃で1〜3時間静置することにより、ウエル底面にポリペプチドを吸着させて固相化する。工程2) 工程2)において、マーカー蛋白質発現量は、抗原抗体反応を利用した免疫学的方法を用いて測定することができる。 免疫学的方法としては、例えば、免疫沈降法や、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、及びRIA法を含む固相免疫法あるいはこれらに改変を加えた公知の変法(サンドイッチELISA、US Patent No.4202875記載の方法、Meagerらの方法(Meager A., Clin Exp Immunol. 2003 Apr, 132(1), p128-36)等)を挙げることができる。すなわち、これらの方法に基づき、マーカー蛋白質と特異的に結合する抗体を用いてマーカー蛋白質発現量を測定する。 抗体は、必要に応じて標識してもよい。標識は、抗体を直接標識するか、又は該抗体を一次抗体とし、該一次抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で用いてもよい。前記標識の種類として好ましいものは、酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)又はビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(又は標識ストレプトアビジン)としては、予め標識された抗体(又はストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。 これら標識された酵素の活性を検出することにより、抗原の発現量が測定される。アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼで標識する場合、これら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。 発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法を利用すれば、目視で検出できる。ELISA法では、市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定し、定量することが好ましい。また上述の抗体作製に使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行い、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することも可能である。 一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては、X線フィルム又はイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができる。また、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。さらに、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製等)を用いて酵素活性を測定する。 なお、本発明において、指標とするマーカー蛋白質の「発現量」は、その物理的な量に限定されず、これを間接的に示す活性、力価(抗体価等)も含む。工程3) 工程3)における評価は、特定のマーカー蛋白質について個別に評価して行うことも可能であるが、複数のマーカー蛋白質について、その発現量の相違を総合的に評価して行うことが好ましい。例えば、健常人血清に対する検体中のマーカー蛋白質群の発現プロファイルが、IgG4関連疾患患者血清における発現プロファイルと類似している場合、当該患者はIgG4関連疾患に罹患している可能性が高いと予測される。また、個々の患者について、マーカー蛋白質の発現変動を経時的に観察すれば、当該患者の病態、予後を評価(予測)することができる。 さらに、データが蓄積され、各マーカー蛋白質において診断の目安となる所定の基準値(閾値)が決定されれば、その基準値との比較結果に基づいて当該被験者がIgG4関連疾患に罹患しているか否か、病態が回復に向かっているかどうか等を評価することができる。 以上、マーカー遺伝子とマーカー蛋白質を利用した診断方法をそれぞれ別個に説明したが、本発明の診断は、両者の結果を比較解析して行ってもよい。また、本発明の診断方法は、すでに公知となっている病理診断の結果を踏まえて評価することを除外するものではない。5.IgG4関連疾患の診断用試薬、キット 本発明はまた、IgG4関連疾患の診断用試薬又はキットを提供する。本発明のキットは、例えば、以下の1)〜4)の1又は2以上を含む:1)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を増幅するためのプライマー2)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブ3)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブを固定した固相化試料4)蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる蛋白質に特異的に結合する抗体、リガンド、又は受容体。1)マーカー遺伝子増幅用プライマー プライマーは、本発明のマーカー遺伝子を特異的に増幅するため、当該遺伝子の少なくとも一部に相補的な配列を有する5〜30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドである。本発明のマーカー遺伝子の配列情報は、公共のデータベースであるGenBankやUnigeneに公表されている。プライマーは各マーカー遺伝子の塩基配列に基づき、市販のプライマー設計ソフトを用いるなど、常法にしたがい容易に設計し、増幅させて調製することができる。このようなプライマーの例としては、後述する実施例記載のオリゴヌクレオチドプライマーを挙げることができる。 プライマーは、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、またビオチン、リン酸、アミン等により修飾されていてもよい。2)マーカー遺伝子検出用プローブ プローブは、マーカー遺伝子に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、20〜1500塩基長程度のものが好ましい。具体的には、ノーザンハイブリダイゼーション法であれば、20塩基長程度の1本鎖オリゴヌクレオチドか2本鎖DNAが好適に用いられる。また、マイクロアレイであれば、100〜1500塩基長程度の2本鎖DNA、又は20〜100塩基長程度の1本鎖オリゴヌクレオチドが好適に用いられる。Affimetrix社のGene Chipシステムの場合は、25塩基長程度の1本鎖オリゴがよい。これらは、特に遺伝子の3’非翻訳領域に存在する配列特異性が高い部分に特異的にハイブリダイズするプローブとして設計することが好ましい。 マーカー遺伝子検出用プローブは、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、ビオチン、リン酸、アミン等により修飾されていてもよい。また、ガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ等の適当な固定されていてもよい。3)固相化試料 固相化試料は、前記2)記載のプローブをガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ等の固相に固定することにより作製される。このような固相化試料としては、例えば、遺伝子チップ、cDNAアレイ、オリゴアレイ、メンブレンフィルター等を挙げることができる。4)抗体、リガンド、受容体 マーカー蛋白質に結合する抗体は、本発明のマーカー蛋白質のアミノ酸配列又はその部分配列(エピトープペプチド)にもとづき、常法にしたがって作製できる。 抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよいし、ビオチン等により適当に修飾されていてもよい。また、適当な支持体に固相化されていてもよいし、あるいは固相化可能なように別個に支持体がキットに含まれていてもよい。そのような支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド等の蛋白を付着可能な合成樹脂、ガラス、ニトロセルロース、セルロース、及びアガロース製の支持体、あるいはゲル型支持体を使用することができる。支持体の形態は特に限定されないが、極小球あるいはビーズ(例えば“ラテックス”ビーズ)などの微粒子、微量遠心チューブなどのチューブ(内壁)、マイクロタイタープレート(ウェル)等の形態で提供される。 マーカー蛋白質に結合するリガンド、受容体は、ビアコアなどの分子間相互作用を用いた解析法で用いられる特異的結合分子で、当該蛋白質について、公知の受容体あるいはリガンドが存在すれば、そのような分子を用いることができる。 本発明のキットは上記した構成要素のほか、必要に応じて、ハイブリダイゼーション、プローブの標識、ラベル体の検出等、本発明にかかる診断方法に必要な試薬、二次抗体等を適宜含んでいてもよい。6.IgG4関連疾患の診断プログラム、診断システム 本発明は、本発明のIgG4関連疾患の検査方法を実施するためのプログラムや当該プログラムを用いた診断システムも提供する。 本発明プログラムやシステムは、1)被験者から単離された検体における、表1と表2記載の遺伝子群、及び/又は蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる蛋白質群の発現量を入力する手段と、2)予め入力されたIgG4関連疾患患者および健常人の前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量に関するデータを記憶する手段と、3)前記被験者における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量と前記健常人における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量を比較解析する手段と、4)前記解析結果に基づき、当該被験者がIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する手段と、5)前記評価結果を出力する手段、を有する。 1つの実施形態では、前記3)において、前記被験者の前記マーカー遺伝子(前記マーカー蛋白質)の発現量と、健常人における当該遺伝子(蛋白質)の発現量との発現比を求め、前記発現比を記憶手段に予め記憶されているIgG4関連疾患患者および健常人の発現量と比較解析する。この比較解析は、当該分野で公知の機械学習のアルゴリズムを用いて実施できる。 本発明のプログラムは、前述した手段に加えて、前記被験者の前記マーカー遺伝子(前記マーカー蛋白質)の発現量を記憶し、必要に応じて、前記IgG4関連疾患患者および健常人のデータを更新する手段を有していることが好ましい。 本発明のシステムでは、IgG4関連疾患患者および健常者の発現データを臨床情報と合わせてデータベースとして蓄えておき、被験者の発現データをデータベースを参照して解析することで、被験者のIgG4関連疾患の状態を検査することが好ましい。IgG4関連疾患患者および健常者の発現データをコンピューターにあらかじめ学習させておき、被験者の発現データが患者と健常者のどちらの発現パターンに近いかをコンピューターに判断させ、それによって被験者の罹患の有無や病態を評価する。7.IgG4関連疾患の治療用組成物 IgG4関連疾患患者において健常人よりも発現が低下している本発明のマーカー遺伝子やマーカー蛋白質は、IgG4関連疾患の治療に利用できる可能性がある。 例えば、当該遺伝子の全オープンリーディングフレーム配列を、公知の方法に従い、IgG4関連疾患患者に導入・発現させることにより、該遺伝子の発現不足による病態を治療できる可能性がある。同様の効果は、当該遺伝子がコードする本発明のマーカー蛋白質をIgG4関連疾患患者に導入することによっても期待しうる。 また、IgG4関連疾患患者において健常人よりも発現が増加している本発明のマーカー遺伝子は、アンチセンス、リボザイム、siRNA等の方法により当該遺伝子の発現を抑制することにより、当該遺伝子の発現過剰による病態を治療できる可能性がある。同様の効果は、当該遺伝子がコードする本発明のマーカー蛋白質を特異的に認識・中和する抗体分子、該蛋白質のドミナントネガティブ体又は当該蛋白質の活性を特異的に阻害する物質等を、IgG4関連疾患患者に導入することによっても期待しうる。7.1 遺伝子導入によるIgG4関連疾患の治療 IgG4関連疾患患者において健常人よりも発現が低下しているマーカー遺伝子の全オープンリーディングフレーム配列を組換えベクター(gene transfer vector)に挿入し、心筋細胞で発現させることにより、IgG4関連疾患患者における当該遺伝子の発現低下を正常状態に回復できる可能性がある。7.2 蛋白質投与によるIgG4関連疾患の治療 IgG4関連疾患患者において健常人よりも発現が低下しているマーカー遺伝子がコードする蛋白質を患者に投与することにより、IgG4関連疾患の治療できる可能性がある。 マーカー蛋白質は、公知の方法に従って、薬学的に許容される担体あるいは希釈剤と混合され、薬学的に有用な組成物に製剤化することができる。前記薬学的組成物は、一又は複数の治療的に有効な量の前記ポリペプチドを含んでなる。適当な担体、及び希釈剤については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences等に記載されている。 前記蛋白質に関して、投与に適した剤型は特に限定はされないが、既に医薬として使用されている多くのヒト蛋白質を含む薬学的組成物と同様に注射剤として調製されることが好ましい。より具体的に言えば、ポリペプチドを、水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な溶媒に溶解することで注射剤とする。その際、ポリエチレングリコール、グルコース、各種アミノ酸、コラーゲン、アルブミン等を保護材として添加して調製可能である。また,リボソーム等の封入体にポリペプチドを包埋させて投与することも可能である。7.3 遺伝子の発現抑制によるIgG4関連疾患の治療 IgG4関連疾患患者において健常人よりも発現が増加しているマーカー遺伝子の翻訳を、アンチセンス核酸、リボザイム又はsiRNAを用いて阻止し、IgG4関連疾患患者における該遺伝子の発現上昇を正常状態に回復させることができる。8.IgG4関連疾患の治療又は予防剤としての効果を試験する方法 本発明のマーカー遺伝子を利用することにより、多数の被検物質から、IgG4関連疾患の治療又は予防剤としての可能性を有する物質を機能的に同定することができる。前記方法において、被験物質は(1)本発明のマーカー遺伝子の発現を亢進又は抑制させたときに現れる表現型の変化、あるいは、(2)ヒトIgG4関連疾患病態を反映した培養細胞又はモデル動物におけるマーカー遺伝子やマーカー蛋白質の発現量を指標として評価される。マーカー遺伝子やマーカー蛋白質は、元々細胞中に存在する内在性のものを利用してもよいし、人為的に導入した外来性のものを利用してもよい。以下、これらの試験方法について、具体的に説明する。8.1 レポーター遺伝子を指標とした方法 IgG4関連疾患関連遺伝子(IgG4関連疾患の病態依存的に発現が促進される遺伝子)のプロモーター支配下に、プロモーター活性の検出を可能にする遺伝子(以下「レポーター遺伝子」という)を組み込んだ発現プラスミドを作製する。次いで、(i)上記レポーター遺伝子発現プラスミドと、本発明のマーカー遺伝子を哺乳類細胞で発現可能にした組換えベクターを同時トランスフェクションした群、(ii)上記レポーター遺伝子発現プラスミドと、本発明のマーカー遺伝子を含まない上記組換えベクターを同時トランスフェクションした群、の2つの細胞群を作製する。IgG4関連疾患の治療又は予防剤としての可能性は、各群の細胞培養時に被検試料を添加し、上記各群のレポーター遺伝子の発現量に差異が現れるか否かによって評価することができる。例えば、本発明のマーカー遺伝子によってコードされるマーカー蛋白質の産生が促進されるような条件下で、レポーター遺伝子の発現を強く抑制する被験試料は、IgG4関連疾患の治療又は予防剤として有用な可能性が高い。 前記試験方法で用いられる動物細胞は、本発明のマーカー遺伝子を哺乳類細胞で発現可能にする組換えベクターをトランスフェクションした場合に、レポーター遺伝子の発現量が亢進するものでなければならない。また、(i)群における該レポーター遺伝子の発現量と(ii)群における発現量の差が大きいものほど好ましい。 レポーター遺伝子は、宿主細胞が本試験方法の一連の過程において産生し得る他のいかなる蛋白質とも特異的に区別可能な、レポーター蛋白質をコードするものであればよい。好ましくは、形質転換前の細胞がレポーター蛋白質と同一又は類似の蛋白質をコードする遺伝子を持たないようなものがよい。例えば、レポーター蛋白質が該細胞に対して毒性を有するようなものや、該細胞が感受性を有する抗生物質の耐性を付与するものであるような場合でも、レポーター遺伝子の発現の有無は細胞の生存率で判定することが可能である。しかしながら、本発明で用いられるレポーター遺伝子としてより好ましいものは、発現量を特異的かつ定量的に検出することができる(例えば、レポーター遺伝子にコードされる蛋白質に対する特異的抗体が取得されているような)構造遺伝子である。より好ましくは、外来の基質と特異的に反応することにより定量的測定が容易な代謝産物を生じるような酵素等をコードする遺伝子である。そのようなレポーター遺伝子としては、例えば、以下の蛋白質をコードする遺伝子を例示することができる。a)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ:b)ホタルルシフェラーゼ:c)β−ガラクトシダーゼ:d)分泌型アルカリホスファターゼ:e)緑色蛍光蛋白質(green-fluorescent protein): 以上のような、一過的な遺伝子導入法を利用した試験方法とは別に、レポーター遺伝子、及び本発明のマーカー遺伝子の発現ベクターで、宿主細胞を二重に形質転換した細胞を利用した試験方法も採択可能である。 上記したような細胞を培養すると、マーカー遺伝子の発現依存的にレポーター遺伝子の転写が促進される。したがって、レポーター遺伝子の発現が可能な条件下において、培地中に任意の被検物質を添加した場合と添加しない場合でのレポーター遺伝子の発現量変化をみれば、該被験物質のIgG4関連疾患の治療又は予防剤としての効果が評価できる。8.2 培養細胞における表現型の変化を指標とした方法 適当な細胞に、本発明のマーカー遺伝子を強制発現させるか、本発明のマーカー蛋白質を外部から作用させる。これによって現れる、IgG4関連疾患につながると考えられる表現型の変化を確認し、その変化を指標として、IgG4関連疾患の治療又は予防剤として有用な物質として評価することができる。なお、表現型の変化としては、例えば、IgG4関連疾患病態関連遺伝子の発現変動、細胞の形態変化、総蛋白質の変化等を挙げることができる。8.3 トランスジェニック動物における表現型の変化を指標とした方法 本発明のマーカー遺伝子を導入したトランスジェニック動物(例えば、マウス等)を作製し、高発現させることにより、ヒトIgG4関連疾患に類似した変化が現れれば、該動物を利用してIgG4関連疾患の治療や予防に有用な物質を探索することができる。あるいは、本発明のマーカー遺伝子に対するリボザイムやsiRNAを動物に導入して、ヒトIgG4関連疾患に類似した変化が惹起できれば、この動物を利用して、IgG4関連疾患の治療や予防に有用な物質を探索することができる。なお、本発明のマーカー遺伝子はヒト由来の遺伝子であるため、前記トランスジェニック動物の作製にあたっては、例えばマウスであれば、該遺伝子のマウスオーソログを取得してこれを導入することになる。 前記試験は、本発明のマーカー蛋白質やその抗体を直接動物に導入することによっても、実施することが期待できる。 なお、5.に記載した「IgG4関連疾患診断用試薬、キット」は、上記したIgG4関連疾患の治療又は予防効果試験用の試薬やキットとしても利用できる。 以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1:IgG4関連疾患患者末梢血リンパ球におけるトランスクリプトーム解析 IgG4関連疾患患者末梢血リンパ球におけるmRNA量を網羅的に解析し、病態関連遺伝子群の検索、及び疾患特異的なマーカーの検索を行なった。1.材料及び方法(1)試料の調製(RNAの抽出) IgG4関連疾患患者2人の治療前後と健常人4人の末梢血を採取し、末梢血単核球をLymphoprepを用いて分離した。分離した末梢血単核球をRneasy Plus Miniを用いてRNAを抽出した。(2)DNA microarray 抽出したRNAからAmbion WT Expression Kitを用いてcDNAを作製し、GeneChip WT Terminal Labeling and control kitを用いて断片化し、ラベルした。チップはAffymetrix社GeneChip Human Gene 1.0 ST Arrayを用い、データ取得はAffymetrix社GeneChip Operating Softwareにより行なった。(3)データ解析 DNAマイクロアレイデータの解析はAgilent社GeneSpring version 11.0を利用した。2.マイクロアレイ解析による遺伝子の抽出2.1 患者と健常人間で変動のあった遺伝子の抽出 患者2名における治療前後のデータ合計4セットと健常人4名分のデータを比較した。 まず、治療に関係なく患者と健常人間で発現の差が有意(t-検定p>0.05)で、かつ、1.5倍以上のFold Changeを満たす遺伝子群を候補遺伝子として抽出した(図1)。参考として、Fold Changeを2倍及び3倍まで拡大したグラフを図2及び3に示す。抽出された遺伝子群を表1にまとめて示す((A)FC 1.5以上2.0未満、(B)FC 2.0以上3.0未満、(C)FC 3.0以上)。2.2 治療前後で変動のあった遺伝子の抽出 患者2名における治療前後のデータ合計4セットと健常人4名分のデータを比較した。 治療の前後において、3.0倍以上のFold Changeが2名の患者で共通して観察された遺伝子群と、K-means clusteringで治療前の患者でのみ変動が観察された遺伝子群を合わせて候補遺伝子として抽出した(図4)。抽出された遺伝子群を表2にまとめて示す。3.リアルタイムPCRによるバリデーション 前項で抽出された遺伝子のうち、Charcot-Leyden crystal protein (CLC) 、Defensin, alpha 3 (DEFA3) 、Defensin, alpha 4 (DEFA4) 、Interleukin 8 receptor, alpha (IL8RA, CXCR1) 、Interleukin 8 receptor, beta (IL8RB, CXCR2)、Membrane-spanning 4-domains, subfamily A, member 3 (MS4A3) についてリアルタイムPCRにより発現変動をみた。 DNA microarrayに用いたIgG4関連疾患患者治療前後2人と健常人コントロール4人に加え、新たにIgG4関連疾患患者治療前後1人、治療前6人、健常人2人の末梢血単核球から、前項と同様の方法でRNAを抽出した。 RNAからSensiscript RT kit、Oligo dT primerを用いてcDNAを作製した。 リアルタイムPCRはTaqMan gene expression assay、THUNDERBIRD Probe qPCR Mixを用い、ABI PRISM 7700 Sequence Detector (Applied Biosystems)にて行なった。リファレンス遺伝子にはβ-actinを使用し、検量線を用いた相対定量で評価した。用いたプライマーの製品情報を以下に記載する。また、結果を図5〜10に示す。 リアルタイムPCRの結果はDNAマイクロアレイにより選抜された発現変動遺伝子の確認に成功した。一部は治療により発現が回復したが、残りは治療に反応して発現が回復することはなかった。プライマー情報(Applied Biosystems):TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00960994_m1 Category: Defense/immunity protein Gene Name: membrane-spanning 4-domains, subfamily A, member 3 (hematopoietic cell-specific) Gene Group: Immunoglobulin receptor family member Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00414018_m1 Category: Defense/immunity protein Gene Name: defensin, alpha 3, neutrophil-specific;defensin, alpha 1;defensin, alpha 1 Gene Group: Other defense and immunity protein Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00157252_m1 Category: Defense/immunity protein Gene Name: defensin, alpha 4, corticostatin Gene Group: Other defense and immunity protein Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00174146_m1 Category: Receptor Gene Name: interleukin 8 receptor, alpha Gene Group: G-protein coupled receptor Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00174304_m1 Category: Receptor Gene Name: interleukin 8 receptor, beta Gene Group: G-protein coupled receptor Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried Assay ID: Hs00171342_m1 Category: Molecular function unclassified Gene Name: Charcot-Leyden crystal protein Gene Group: Molecular function unclassified Qty/Pkg: 250 uL Part Number: 4331182実施例2:IgG4関連疾患の診断治療に関するタンパクの解析 IgG4関連疾患の診断治療のための疾患関連マーカー蛋白質を特定するため、「治療前」及び「治療後」の患者血清中蛋白質をプロテオミクス的手法により解析した。1.二次元電気泳動による蛋白質の発現解析 IgG4関連疾患の「治療前」及び「治療後」の血清中蛋白質を二次元電気泳動により展開した。2次元電気泳動した蛋白質は、銀染色により呈色させ、「治療前」及び「治療後」に変動したスポットをピックし、in gel消化法により処理した。in gel消化法により得られたペプチドを、質量分析装置で解析し、蛋白質を同定した。実験方法:1) 等電点電気泳動 患者血清 5.0 mlに10倍量の冷アセトンを加えて、1 hr、−20℃で静置した。12000 rpm、r=10 cmで4 minで遠心し、蛋白質を沈殿させた。アセトンの量は、対象物の液量の10倍程度を用いた。 デカンテーションでアセトンを除去し、スピードバックにより減圧乾燥した。タンパク沈殿物にlysis buffer (112.5μl)と 膨潤buffer (337.5μl)を加えて総量450μlとした。 ゲルは、Ph3-10 Immobiline Drystrip gel (24cm) (Gelife Science)を用い、前記した450μlの蛋白質溶液を加え、GE healthcareのプロトコールにしたがい等電点電気泳動を行った。2) SDS-PAGE(二次元目の電気泳動) 等電点電気泳動の終了後、ゲルを水洗し、10mg/mlのDTT添加平衡化Bufferに浸漬して、室温で30分静置し、ジスルフィド結合を開裂させた。ついで、25mg/mlのヨードアセトアミド添加平衡化バッファーに浸漬して、室温の暗所で30分静置し、ジスルフィド結合の開裂部分をカルバミド修飾した。ゲルをSDS-PAGE用のゲル(アクリルアミド濃度12.5 %)に装着し、分子量マーカーを封入したゲルとともにアガロースゲルで固め、GE healthcareのプロトコールにしたがい、電気泳動を行った (展開距離20 cm) 。電気泳動終了後、銀染色で呈色させた。3) 銀染色 電気泳動の終了後、Bio RadのDodeca kitを用いて銀染色を行った。銀染色の方法は、すべてBio Radのプロトコールに拠った。4) 変動蛋白質の選定 「治療前」と「治療後」のゲル画像を比較し、変動した蛋白質を選定した。変動したスポットの質量分析により解析した。結果: IgG4関連疾患治療前の血清では、IgG1、IgG4、Ig lambda、Ig kappaの増加、Alpha-1-antitrypsin precursor、Apolipoprotein-L1、Complement 4、C1q、Serum amyloid A protein precursorなどの炎症性因子の増加がみられた。また、健常人と比べても異なるパターンがみられた。 特に発現が有意に変動した蛋白質は、Alpha-1-antitrypsin precursor(ALTA)、Clusterin precursor(CLUS)、Dermcidin precursor(DCD)、Serum amyloid A-4 protein prcursor(SAA4)、Pigment epithelium-derived factor precursor(PEDF)であった。2.ウエスタンブロットによるバリデーション ウエスタンブロットにより、上記で特定された蛋白質のうち、Clusteringとα1 antitrypsinのバリデーションを行った。実験方法:1) SDS-PAGE:電気泳動により分子量の差で蛋白質を分離。 常法にしたがい均一ゲルを調製し、IgG4関連疾患患者血清試料タンパク量 4μgをPBSで溶解したものを載せた。2×SDS buffer 10μL を加え、95℃で5分間加熱後、氷冷した。その後、コールドルームで電気泳動を行った(ゲル1枚あたり30mA、250V、2時間)。 2) ブロッティング:分離された蛋白質をゲルからメンブレンへトランスファー メタノールで前処理したPVDF膜( Hyoid-P )・ろ紙をトランスファーバッファー( Tris-Glycin Buffer+メタノール+DW )で10分間、平衡化させた。セミドライ式ブロッティング装置を組み立て、メンブレン1枚あたり30mA、250V、2時間トランスファーさせた。3) ブロッキング:非特異的な吸着防止 ブロッティング済みメンブレンをブロッキングバッファー(5%スキムミルク+PBS-0.1%Tween)に浸し、室温で1時間振盪した。4) 1次抗体反応:目的蛋白質を特異的に検出 ハイブリバッグにメンブレンを移し、1000倍希釈した1次抗体を加え、overnightで振盪した後、PBS-0.1%Tweenで5分間、3回洗浄した。5) 2次抗体反応:HRP標識二次抗体 25000倍希釈したHorse-Radish Peroxidase標識2次抗体(anti Mouse IgG , HRP linked Whole Ab from sheep )を加え、1時間振盪した後、PBS-0.1%Tweenで5分間、5回洗浄した。6) 検出 洗浄済みのメンブレンの余分なバッファーを除去し、ECL plus ウエスタンブロッティングシステム試薬をかけ、5分間放置した。検出試薬を除去し、X線フイルムに感光させ、検出を行った。結果を図11〜14に示す。結果: Clustering(precursor)とα1 antitrypsin(precursor)は、いずれも患者(治療前)において健常人よりも有意に高い発現が確認された。 本発明によれば、被験者から単離した末梢血を用いて、IgG4関連疾患を簡便に鑑別診断できる。また、IgG4関連疾患患者の病態(治療の進度や予後)を簡便にモニターすることができ、治療の進度の確認や予後の予測に利用できる。被験者から単離された検体における、表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する方法。遺伝子シンボル CLC、DEFA3、DEFA4、IL8RA、CXCR1、IL8RA,CXCR2、及びMS4A3からなる群より選ばれる少なくとも1以上の遺伝子、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群より選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、前記被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価することを特徴とする、請求項1に記載の方法。表1−(1)(A)及び(2)(A)記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量に基づき、前記被験者がIgG4関連疾患か否かを評価することを特徴とする、請求項1に記載の方法。表2記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量に基づき、前記被験者がIgG4関連疾患か否かを評価することを特徴とする、請求項1に記載の方法。表2に記載の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の病態を評価することを特徴とする、請求項1に記載の方法。検体が末梢血である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 遺伝子の発現量が、マイクロアレイ、及びメンブレンフィルターから選ばれる固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、次世代シーケンス解析法ならびにクロスハイブリダイゼーション法から選ばれるいずれかの方法によって測定されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 蛋白質の発現量が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、質量分析法、プロテインチップ法、ビアコアを含む分子間相互作用解析法及びRIA法から選ばれるいずれかの方法によって測定されることを特徴とする、請求項1又は6に記載の方法。以下の1)〜4)のいずれか1又は2以上を含むIgG4関連疾患の診断用試薬又はキット:1)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を増幅するためのプライマー2)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブ3)表1及び表2に記載の遺伝子群から選ばれる遺伝子に特異的にハイブリダイズし、当該遺伝子を検出するためのプローブを固定した固相化試料4)蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる蛋白質に特異的に結合する抗体、リガンド、又は受容体分子。以下の1)〜5)の手段を有するIgG4関連疾患の診断システム:1)被験者から単離された検体における、表1と表2記載の遺伝子群、及び/又は蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる蛋白質群の発現量を入力する手段と、2)予め入力されたIgG4関連疾患患者および健常人の前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量に関するデータを記憶する手段と、3)前記被験者における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量と前記健常人における前記遺伝子群、及び/又は蛋白質群の発現量を比較解析する手段と、4)前記解析結果に基づき、当該被験者がIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する手段と、5)前記評価結果を出力する手段。 【課題】IgG4関連疾患の特徴的マーカーを同定し、IgG4関連疾患を類似する疾患と区別して簡便に診断する方法、並びに、前記マーカーに基づきIgG4関連疾患の病因病態を解明し、疾患概念の確立して、IgG4関連疾患の診断基準を提供する。【解決手段】被験者から単離された検体における、特定の遺伝子群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の発現量、あるいは蛋白質シンボルCLUS、ALTA、PEDF、DCD、及びSAA4からなる群から選ばれる少なくとも1以上の蛋白質の発現量に基づき、当該被験者のIgG4関連疾患の罹患あるいは病態を評価する方法。【選択図】なし