生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_トリテルペンアルコールの製造方法
出願番号:2010184676
年次:2012
IPC分類:C07J 53/00,A61K 31/56,A61P 3/06,A61P 3/10


特許情報キャッシュ

橋爪 浩二郎 築野 卓夫 加藤 浩司 森田 尚宏 JP 2012041304 公開特許公報(A) 20120301 2010184676 20100820 トリテルペンアルコールの製造方法 花王株式会社 000000918 築野食品工業株式会社 591066362 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 橋爪 浩二郎 築野 卓夫 加藤 浩司 森田 尚宏 C07J 53/00 20060101AFI20120203BHJP A61K 31/56 20060101ALN20120203BHJP A61P 3/06 20060101ALN20120203BHJP A61P 3/10 20060101ALN20120203BHJP JPC07J53/00A61K31/56A61P3/06A61P3/10 5 OL 9 4C086 4C091 4C086AA04 4C086DA11 4C086GA17 4C086ZC33 4C086ZC35 4C091AA03 4C091BB01 4C091CC01 4C091DD01 4C091EE04 4C091FF06 4C091GG01 4C091HH01 4C091JJ01 4C091KK01 4C091LL03 4C091LL06 4C091MM03 4C091NN01 4C091PA02 4C091PA05 4C091PB05 4C091QQ05 4C091RR13 本発明は、トリテルペンアルコールの製造方法に関する。 トリテルペンアルコールは、米糠、オリーブ種子、トウモロコシ種子、アロエ等に分布する成分で、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール、シクロアルタノール又はシクロブラノールといった一連の化合物の総称である。また、トリテルペンアルコールは、γ−オリザノールを構成するアルコール部分の主要な成分でもある。 なかでもシクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノールは、γ−オリザノールの生理作用に類似していると云われ、血中コレステロール低下作用、中性脂肪吸収抑制作用、抗糖尿病作用等が報告されている。 トリテルペンアルコールは、米糠油等の製造過程で生じる脱酸フーツを原料に抽出、再結晶等して得られるオリザノールの加水分解物から製造することができる。このような方法として、例えば、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、アセトン及びベンゼンで抽出し、さらにメタノールより再結晶し精製する方法(特許文献1)、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、氷水中で析出させる方法(特許文献2)等が報告されている。 一方、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、ヘキサンと混合し、ヘキサン溶解物を除去した後、希硫酸により水溶液を酸性にしてフェルラ酸を製造する方法(特許文献3)が報告されている。特公昭55−2440号公報特開2006−273764号公報特開平05−331101号公報 しかし、特許文献1で使用するベンゼン、メタノールは食品に使用できない溶媒である。しかも、再結晶による精製は、溶媒置換操作に手間がかかるだけでなく、収率が悪く、さらに得られる製品中のトリテルペンアルコール含量が低下する場合があることが判明した。 また、特許文献2のように、加水分解物から直接再結晶したのでは、フェルラ酸や遊離脂肪酸、アルカリ等が残留してしまい純度の高いトリテルペンアルコールを得ることは難しい。 従って、本発明は、高純度のトリテルペンアルコールを高収率で得ることができる方法を提供することに関する。 本発明者は、粗オリザノールからトリテルペンアルコールを抽出する方法について鋭意検討を行った結果、γ−オリザノールをアルカリ加水分解し、ヘキサン等の低極性有機溶媒でトリテルペンアルコールを抽出した後、水中でトリテルペンアルコールを加熱溶融させ、次いで冷却することで、トリテルペンアルコールを高純度にかつ収率よく製造できることを見出した。さらに、従来の再結晶による精製によって得られるトリテルペンアルコール結晶は取り扱いが困難であったところ、上記方法によれば顆粒状の形態でトリテルペンアルコールが得られることを見出した。 すなわち、本発明は、次の工程(A)〜(C):(A)γ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程、(B)アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程、(C)得られたトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程、を順次行う、トリテルペンアルコールの製造方法を提供するものである。 本発明の方法によれば、簡便な操作で、収率よく高純度のトリテルペンアルコールを製造することができる。また、得られるトリテルペンアルコールは、顆粒状であり取扱性に優れている。さらに、製造工程中、人体に有害な溶剤等を用いないため食品にも安全に使用できる。 本発明の工程(A)はγ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程である。 γ−オリザノールは、トリテルペンアルコールや各種植物ステロールのフェルラ酸エステルの総称で、米糠油、米胚芽油、トウモロコシ油、その他の穀類の糠油等の製造過程で生じる脱酸フーツ(脱酸工程で分離されるアルカリ油さい)に多く含まれる。γ−オリザノールは、前記油からの粗精製物、精製物のいずれも用いることができるが、脱酸フーツ、特に米糠油由来の脱酸フーツから低級アルコールで抽出後、中和、再結晶して得られるオリザノールの粗結晶を用いるのが、操作性とコストの両立の点から好ましい。オリザノールの粗結晶中、γ−オリザノールを50〜99質量%(以下、単に%とする)、特に80〜95%含有するのが好ましい。なお、γ−オリザノール粗結晶には、トリグリセリド、遊離脂肪酸等が含まれていてもよい。 γ−オリザノールは市販品を使用することもできる。 アルカリ加水分解は、常法に従って行うことができる。アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等が挙げられ、なかでも、取り扱い性の点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。 アルカリの使用量は、γ−オリザノールのけん化価に対して1当量〜20当量、特に5当量〜10当量が好ましい。なお、γ−オリザノールのけん化価は、例えば基準油脂分析法2.3.2記載の方法に従って測定できる。 溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、水;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。 反応温度は、特に限定されないが、20〜120℃、特に50〜100℃が好ましい。反応時間は、1〜50時間、特に5〜20時間が好ましい。 次に、アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程(B)を行う。 ここで用いられる低極性有機溶媒としては、トリテルペンアルコールを抽出できるものであれば特に制限されないが、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、水との混合系で使用してもよい。なかでも、飲食品への使用の点、トリテルペンアルコールの溶解性の点から、ヘプタン、ヘキサンが好ましく、特にヘキサンが好ましい。 低極性有機溶媒の使用量は、使用する溶媒により適宜設定することができるが、γ−オリザノールの仕込み量に対して1〜100重量倍量、特に5〜20重量倍量が好ましい。 アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合した際の混合液の温度は、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。このときの混合時間は、充分な抽出効果を得るため、1〜120分であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましい。 次いで、混合液を溶媒層と水層に分離させ、水層を除去するのが好ましい。水層には、フェルラ酸塩や過剰のアルカリ等が含まれており、これにより除去できる。一方、溶媒層には、トリテルペンアルコールが抽出される。 溶媒層と水層を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。静置分離は、10〜60分行い、溶媒層を分取することが好ましい。静置分離の温度は特に規定されないが、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。また、遠心分離は、分離の状態により適宜条件を調整することができる。 水層を除去した後の溶媒層は、アルカリを完全に除去する点から複数回(例えば2〜3回)洗浄するのが好ましい。洗浄方法としては、例えば、溶媒層に水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を混合し、上記と同様に行って水層の除去を繰り返すことが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類が挙げられ、なかでも、飲食品への使用の点から、エタノールが好ましい。 次に、工程(C)を行う。工程(C)は、トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程である。 水は、低極性有機溶媒除去後の操作性の点から、γ−オリザノールの仕込み量に対して5〜100重量倍量、好ましくは5〜20重量倍量加えるが好ましい。水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水が例示される。 低極性有機溶媒の除去は、溶媒の種類や組成等により異なるが、例えば、30〜150℃、好ましくは40〜90℃で蒸発することによって行なうことが好ましい。圧力は減圧下でも常圧でもよい。この際、低極性有機溶媒の留去量が工程(B)の際に使用される溶媒量と同程度になるまで行うのが好ましい。 低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させる。このときの熱水の温度はトリテルペンアルコールの融点以上であれば特に限定されないが、85〜100℃、特に90〜100℃であるのが好ましい。溶融しているトリテルペンアルコールを分散させ、凝集を抑制する点から、攪拌速度200−450r/min、好ましくは250−400r/minで攪拌しながら行うのが好ましい。なお、溶融、分散は、目視などで確認することができる。 トリテルペンアルコールを溶融させた後、20〜84℃、好ましくは40〜60℃に冷却する。これによって、水中でトリテルペンアルコールが顆粒状に固化し、溶液を濾過等することで顆粒状の形態でトリテルペンアルコールが得られる。 本発明においては、工程(C)の前に、トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に吸着剤を接触させる吸着処理を行ってもよい。これによりトリテルペンアルコール最終製品の着色を軽減することができる。 ここで用いられる吸着剤としては、多孔質吸着剤が好ましく、例えば、活性炭、二酸化ケイ素、及び固体酸吸着剤が挙げられる。固体酸吸着剤としては酸性白土、活性白土、活性アルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を用いることができる。なかでも、脱色効果の点や副反応の抑制の点から活性炭が好ましい。 吸着剤として活性炭を用いる場合、その使用量は、γ−オリザノールの仕込み量に対して0.1−10%が好ましく、特に1−5%が好ましい。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒と吸着剤の接触温度は、良好な脱色性能を得るため、20−100℃が好ましく、特に20−40℃が好ましい。また、接触時間は、同様の点から、3〜90分、特に15〜90分が好ましい。圧力は、減圧下でも常圧でもよい。 工程(C)により得られたトリテルペンアルコールの顆粒状物は、さらに水分を留去した濃縮物又は乾燥した固形物、粉末等のように高濃度化するのが好ましい。濃縮又は乾燥による高濃度化方法としては、例えば、減圧濃縮、噴霧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。 かくして得られる本発明のトリテルペンアルコールは、フェルラ酸や遊離脂肪酸、アルカリ等が除去されているため純度が高く、また、取扱性に優れるため幅広い用途展開が可能である。例えば、本発明のトリテルペンアルコールを様々な飲料や食品に配合して使用することができる。〔トリテルペンアルコールの分析方法〕 サンプル約25mgをとり、クロロホルムで10mLにメスアップした。これをGCに1μL注入し分析した。GC分析の条件は下記のとおりである。なお、シクロアルテノール、24−メチレン−シクロアルタノールの定量値は、各成分精製品(花王にて調製)を用いて検量線を作成し、絶対定量法により求めた。 カラム:キャピラリーGCカラム DB−1(J&W)、30mx0.25mm、膜厚0.25μm キャリアガス:He、2.30mL/min インジェクター:Split(40:1)、T=300℃ ディテクター:FID、T=300℃ オーブン温度:150℃で1.5分間保持、15℃/分で250℃まで昇温、5℃/分で320℃まで昇温、3分間保持実施例1 γ―オリザノール(築野食品工業(株)製、純度:89.2%、けん化価:103)50gをとり、2N水酸化カリウム−90v/v%エタノール水溶液250mLを加え、窒素雰囲気下に、還流条件で6時間攪拌した。 加水分解反応が完結していることを確認した後、55℃まで放冷し、生成したトリテルペンアルコールを抽出するべく、n−ヘキサン500mL及び水200mLを加えた。55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。ヘキサン層については、60v/v%エタノール水250mLを加え、再度、55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。さらにもう一度ヘキサン層に60v/v%エタノール水250mLを加え、再度、55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。本操作により、水層のpHは7まで低下しており、反応に使用したアルカリは、水洗によってヘキサン層から十分に除去できたと判断した。 残ったヘキサン層に水400mLを加え、常圧下に加熱(70−80℃)し、ヘキサンを留去した。ヘキサンの留出量が500mL程度になったところで、残ったトリテルペンアルコール懸濁水の温度をさらに上昇し(90−100℃)、攪拌速度300−400r/minでトリテルペンアルコールを溶融・分散した。トリテルペンアルコールの溶融・分散が確認できたところで加熱をやめ、50℃まで放冷した。このとき、溶融していたトリテルペンアルコールは、水中で分散したまま顆粒状に固化した。 得られた顆粒状のトリテルペンアルコールを濾過にて採取し、水100mLで洗浄した後、減圧乾燥(50℃、15時間)することによって、粉末状のトリテルペンアルコール30g(収率94%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。実施例2 実施例1と同様の操作により、γ―オリザノールの加水分解反応と、生成したトリテルペンアルコールのヘキサン抽出、水洗を行なった。 得られたヘキサン層に、活性炭(カルボラフィン「日本エンバイロケミカルズ」)1gを加え、室温下に30分間攪拌した。 濾過により活性炭を除去した後、残ったヘキサン溶液に対して水400mLを加え、実施例1同様の操作を行い、粉末状のトリテルペンアルコール30g(収率94%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。比較例1 実施例1と同様の操作により、γ―オリザノールの加水分解反応と、生成したトリテルペンアルコールのヘキサン抽出、水洗を行なった。 得られたヘキサン層からヘキサンを減圧にて留去し、トリテルペンアルコールの乾固物34gを得た。本トリテルペンアルコール乾固物に85v/v%エタノール水340mLを加え、70℃に加熱し、完全に溶解した。その後、30分かけて室温まで冷却した後、25℃で2時間再結晶を行なった。析出した結晶は濾過にて採取し、本結晶をさらに85v/v%エタノール水60mLで洗浄した後、減圧乾燥(50℃、15時間)することによって、やや粘性のあるワックス状のトリテルペンアルコール25g(収率78%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。 表1から明らかなように、本発明の方法によれば高純度のトリテルペンアルコールを回収率94%と高収率で得ることができた(実施例1及び2)。これに対し、ヘキサン抽出後、晶析精製を行った場合は、トリテルペンアルコールの収率が低い上に、トリテルペンアルコール中のシクロアルテノール含量が少なく純度も低かった(比較例1)。 次の工程(A)〜(C):(A)γ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程、(B)アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程、(C)得られたトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程、を順次行う、トリテルペンアルコールの製造方法。 低極性有機溶媒がヘキサンである請求項1記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に加える水の量が、γ−オリザノールの仕込み量に対して5〜100重量倍量である請求項1又は2記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加える前に、吸着剤を接触させる吸着処理を行う請求項1〜3のいずれか1項記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコールを顆粒状の形態で得る請求項1〜4のいずれか1項記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 【課題】高純度のトリテルペンアルコールを高収率で得ることができる方法の提供。【解決手段】次の工程(A)〜(C):(A)γ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程、(B)アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程、(C)得られたトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程、を順次行う、トリテルペンアルコールの製造方法。【選択図】なし


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特許公報(B2)_トリテルペンアルコールの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_トリテルペンアルコールの製造方法
出願番号:2010184676
年次:2014
IPC分類:C07J 53/00,A61K 31/56,A61P 3/06,A61P 3/10


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橋爪 浩二郎 築野 卓夫 加藤 浩司 森田 尚宏 JP 5627335 特許公報(B2) 20141010 2010184676 20100820 トリテルペンアルコールの製造方法 花王株式会社 000000918 築野食品工業株式会社 591066362 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 橋爪 浩二郎 築野 卓夫 加藤 浩司 森田 尚宏 20141119 C07J 53/00 20060101AFI20141030BHJP A61K 31/56 20060101ALN20141030BHJP A61P 3/06 20060101ALN20141030BHJP A61P 3/10 20060101ALN20141030BHJP JPC07J53/00A61K31/56A61P3/06A61P3/10 C07J 53/00 CAplus/REGISTRY(STN) 特開2001−224309(JP,A) 特開2010−090206(JP,A) 国際公開第2010/058795(WO,A1) 特開2004−175679(JP,A) 特開昭51−056442(JP,A) 特開2006−273764(JP,A) 5 2012041304 20120301 9 20130618 早乙女 智美 本発明は、トリテルペンアルコールの製造方法に関する。 トリテルペンアルコールは、米糠、オリーブ種子、トウモロコシ種子、アロエ等に分布する成分で、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール、シクロアルタノール又はシクロブラノールといった一連の化合物の総称である。また、トリテルペンアルコールは、γ−オリザノールを構成するアルコール部分の主要な成分でもある。 なかでもシクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノールは、γ−オリザノールの生理作用に類似していると云われ、血中コレステロール低下作用、中性脂肪吸収抑制作用、抗糖尿病作用等が報告されている。 トリテルペンアルコールは、米糠油等の製造過程で生じる脱酸フーツを原料に抽出、再結晶等して得られるオリザノールの加水分解物から製造することができる。このような方法として、例えば、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、アセトン及びベンゼンで抽出し、さらにメタノールより再結晶し精製する方法(特許文献1)、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、氷水中で析出させる方法(特許文献2)等が報告されている。 一方、粗オリザノールをアルカリ加水分解した後、ヘキサンと混合し、ヘキサン溶解物を除去した後、希硫酸により水溶液を酸性にしてフェルラ酸を製造する方法(特許文献3)が報告されている。特公昭55−2440号公報特開2006−273764号公報特開平05−331101号公報 しかし、特許文献1で使用するベンゼン、メタノールは食品に使用できない溶媒である。しかも、再結晶による精製は、溶媒置換操作に手間がかかるだけでなく、収率が悪く、さらに得られる製品中のトリテルペンアルコール含量が低下する場合があることが判明した。 また、特許文献2のように、加水分解物から直接再結晶したのでは、フェルラ酸や遊離脂肪酸、アルカリ等が残留してしまい純度の高いトリテルペンアルコールを得ることは難しい。 従って、本発明は、高純度のトリテルペンアルコールを高収率で得ることができる方法を提供することに関する。 本発明者は、粗オリザノールからトリテルペンアルコールを抽出する方法について鋭意検討を行った結果、γ−オリザノールをアルカリ加水分解し、ヘキサン等の低極性有機溶媒でトリテルペンアルコールを抽出した後、水中でトリテルペンアルコールを加熱溶融させ、次いで冷却することで、トリテルペンアルコールを高純度にかつ収率よく製造できることを見出した。さらに、従来の再結晶による精製によって得られるトリテルペンアルコール結晶は取り扱いが困難であったところ、上記方法によれば顆粒状の形態でトリテルペンアルコールが得られることを見出した。 すなわち、本発明は、次の工程(A)〜(C):(A)γ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程、(B)アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程、(C)得られたトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程、を順次行う、トリテルペンアルコールの製造方法を提供するものである。 本発明の方法によれば、簡便な操作で、収率よく高純度のトリテルペンアルコールを製造することができる。また、得られるトリテルペンアルコールは、顆粒状であり取扱性に優れている。さらに、製造工程中、人体に有害な溶剤等を用いないため食品にも安全に使用できる。 本発明の工程(A)はγ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程である。 γ−オリザノールは、トリテルペンアルコールや各種植物ステロールのフェルラ酸エステルの総称で、米糠油、米胚芽油、トウモロコシ油、その他の穀類の糠油等の製造過程で生じる脱酸フーツ(脱酸工程で分離されるアルカリ油さい)に多く含まれる。γ−オリザノールは、前記油からの粗精製物、精製物のいずれも用いることができるが、脱酸フーツ、特に米糠油由来の脱酸フーツから低級アルコールで抽出後、中和、再結晶して得られるオリザノールの粗結晶を用いるのが、操作性とコストの両立の点から好ましい。オリザノールの粗結晶中、γ−オリザノールを50〜99質量%(以下、単に%とする)、特に80〜95%含有するのが好ましい。なお、γ−オリザノール粗結晶には、トリグリセリド、遊離脂肪酸等が含まれていてもよい。 γ−オリザノールは市販品を使用することもできる。 アルカリ加水分解は、常法に従って行うことができる。アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等が挙げられ、なかでも、取り扱い性の点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。 アルカリの使用量は、γ−オリザノールのけん化価に対して1当量〜20当量、特に5当量〜10当量が好ましい。なお、γ−オリザノールのけん化価は、例えば基準油脂分析法2.3.2記載の方法に従って測定できる。 溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、水;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。 反応温度は、特に限定されないが、20〜120℃、特に50〜100℃が好ましい。反応時間は、1〜50時間、特に5〜20時間が好ましい。 次に、アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程(B)を行う。 ここで用いられる低極性有機溶媒としては、トリテルペンアルコールを抽出できるものであれば特に制限されないが、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、水との混合系で使用してもよい。なかでも、飲食品への使用の点、トリテルペンアルコールの溶解性の点から、ヘプタン、ヘキサンが好ましく、特にヘキサンが好ましい。 低極性有機溶媒の使用量は、使用する溶媒により適宜設定することができるが、γ−オリザノールの仕込み量に対して1〜100重量倍量、特に5〜20重量倍量が好ましい。 アルカリ加水分解物と低極性有機溶媒を混合した際の混合液の温度は、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。このときの混合時間は、充分な抽出効果を得るため、1〜120分であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましい。 次いで、混合液を溶媒層と水層に分離させ、水層を除去するのが好ましい。水層には、フェルラ酸塩や過剰のアルカリ等が含まれており、これにより除去できる。一方、溶媒層には、トリテルペンアルコールが抽出される。 溶媒層と水層を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。静置分離は、10〜60分行い、溶媒層を分取することが好ましい。静置分離の温度は特に規定されないが、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。また、遠心分離は、分離の状態により適宜条件を調整することができる。 水層を除去した後の溶媒層は、アルカリを完全に除去する点から複数回(例えば2〜3回)洗浄するのが好ましい。洗浄方法としては、例えば、溶媒層に水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を混合し、上記と同様に行って水層の除去を繰り返すことが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類が挙げられ、なかでも、飲食品への使用の点から、エタノールが好ましい。 次に、工程(C)を行う。工程(C)は、トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程である。 水は、低極性有機溶媒除去後の操作性の点から、γ−オリザノールの仕込み量に対して5〜100重量倍量、好ましくは5〜20重量倍量加えるが好ましい。水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水が例示される。 低極性有機溶媒の除去は、溶媒の種類や組成等により異なるが、例えば、30〜150℃、好ましくは40〜90℃で蒸発することによって行なうことが好ましい。圧力は減圧下でも常圧でもよい。この際、低極性有機溶媒の留去量が工程(B)の際に使用される溶媒量と同程度になるまで行うのが好ましい。 低極性有機溶媒を除去した後、熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させる。このときの熱水の温度はトリテルペンアルコールの融点以上であれば特に限定されないが、85〜100℃、特に90〜100℃であるのが好ましい。溶融しているトリテルペンアルコールを分散させ、凝集を抑制する点から、攪拌速度200−450r/min、好ましくは250−400r/minで攪拌しながら行うのが好ましい。なお、溶融、分散は、目視などで確認することができる。 トリテルペンアルコールを溶融させた後、20〜84℃、好ましくは40〜60℃に冷却する。これによって、水中でトリテルペンアルコールが顆粒状に固化し、溶液を濾過等することで顆粒状の形態でトリテルペンアルコールが得られる。 本発明においては、工程(C)の前に、トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に吸着剤を接触させる吸着処理を行ってもよい。これによりトリテルペンアルコール最終製品の着色を軽減することができる。 ここで用いられる吸着剤としては、多孔質吸着剤が好ましく、例えば、活性炭、二酸化ケイ素、及び固体酸吸着剤が挙げられる。固体酸吸着剤としては酸性白土、活性白土、活性アルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を用いることができる。なかでも、脱色効果の点や副反応の抑制の点から活性炭が好ましい。 吸着剤として活性炭を用いる場合、その使用量は、γ−オリザノールの仕込み量に対して0.1−10%が好ましく、特に1−5%が好ましい。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒と吸着剤の接触温度は、良好な脱色性能を得るため、20−100℃が好ましく、特に20−40℃が好ましい。また、接触時間は、同様の点から、3〜90分、特に15〜90分が好ましい。圧力は、減圧下でも常圧でもよい。 工程(C)により得られたトリテルペンアルコールの顆粒状物は、さらに水分を留去した濃縮物又は乾燥した固形物、粉末等のように高濃度化するのが好ましい。濃縮又は乾燥による高濃度化方法としては、例えば、減圧濃縮、噴霧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。 かくして得られる本発明のトリテルペンアルコールは、フェルラ酸や遊離脂肪酸、アルカリ等が除去されているため純度が高く、また、取扱性に優れるため幅広い用途展開が可能である。例えば、本発明のトリテルペンアルコールを様々な飲料や食品に配合して使用することができる。〔トリテルペンアルコールの分析方法〕 サンプル約25mgをとり、クロロホルムで10mLにメスアップした。これをGCに1μL注入し分析した。GC分析の条件は下記のとおりである。なお、シクロアルテノール、24−メチレン−シクロアルタノールの定量値は、各成分精製品(花王にて調製)を用いて検量線を作成し、絶対定量法により求めた。 カラム:キャピラリーGCカラム DB−1(J&W)、30mx0.25mm、膜厚0.25μm キャリアガス:He、2.30mL/min インジェクター:Split(40:1)、T=300℃ ディテクター:FID、T=300℃ オーブン温度:150℃で1.5分間保持、15℃/分で250℃まで昇温、5℃/分で320℃まで昇温、3分間保持実施例1 γ―オリザノール(築野食品工業(株)製、純度:89.2%、けん化価:103)50gをとり、2N水酸化カリウム−90v/v%エタノール水溶液250mLを加え、窒素雰囲気下に、還流条件で6時間攪拌した。 加水分解反応が完結していることを確認した後、55℃まで放冷し、生成したトリテルペンアルコールを抽出するべく、n−ヘキサン500mL及び水200mLを加えた。55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。ヘキサン層については、60v/v%エタノール水250mLを加え、再度、55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。さらにもう一度ヘキサン層に60v/v%エタノール水250mLを加え、再度、55℃を保持しながら20分攪拌した後、静置分層(20分間)を行い、分離した水層を除去した。本操作により、水層のpHは7まで低下しており、反応に使用したアルカリは、水洗によってヘキサン層から十分に除去できたと判断した。 残ったヘキサン層に水400mLを加え、常圧下に加熱(70−80℃)し、ヘキサンを留去した。ヘキサンの留出量が500mL程度になったところで、残ったトリテルペンアルコール懸濁水の温度をさらに上昇し(90−100℃)、攪拌速度300−400r/minでトリテルペンアルコールを溶融・分散した。トリテルペンアルコールの溶融・分散が確認できたところで加熱をやめ、50℃まで放冷した。このとき、溶融していたトリテルペンアルコールは、水中で分散したまま顆粒状に固化した。 得られた顆粒状のトリテルペンアルコールを濾過にて採取し、水100mLで洗浄した後、減圧乾燥(50℃、15時間)することによって、粉末状のトリテルペンアルコール30g(収率94%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。実施例2 実施例1と同様の操作により、γ―オリザノールの加水分解反応と、生成したトリテルペンアルコールのヘキサン抽出、水洗を行なった。 得られたヘキサン層に、活性炭(カルボラフィン「日本エンバイロケミカルズ」)1gを加え、室温下に30分間攪拌した。 濾過により活性炭を除去した後、残ったヘキサン溶液に対して水400mLを加え、実施例1同様の操作を行い、粉末状のトリテルペンアルコール30g(収率94%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。比較例1 実施例1と同様の操作により、γ―オリザノールの加水分解反応と、生成したトリテルペンアルコールのヘキサン抽出、水洗を行なった。 得られたヘキサン層からヘキサンを減圧にて留去し、トリテルペンアルコールの乾固物34gを得た。本トリテルペンアルコール乾固物に85v/v%エタノール水340mLを加え、70℃に加熱し、完全に溶解した。その後、30分かけて室温まで冷却した後、25℃で2時間再結晶を行なった。析出した結晶は濾過にて採取し、本結晶をさらに85v/v%エタノール水60mLで洗浄した後、減圧乾燥(50℃、15時間)することによって、やや粘性のあるワックス状のトリテルペンアルコール25g(収率78%)を得た。本品のキャピラリーガスクロマトグラフィーによる成分分析結果を表1に示す。 表1から明らかなように、本発明の方法によれば高純度のトリテルペンアルコールを回収率94%と高収率で得ることができた(実施例1及び2)。これに対し、ヘキサン抽出後、晶析精製を行った場合は、トリテルペンアルコールの収率が低い上に、トリテルペンアルコール中のシクロアルテノール含量が少なく純度も低かった(比較例1)。 次の工程(A)〜(C):(A)γ−オリザノールをアルカリ加水分解する工程、(B)アルカリ加水分解物と、炭化水素類及びエーテル類から選ばれる単独又は2種以上の低極性有機溶媒を混合し、トリテルペンアルコールを抽出してトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒を得る工程、(C)得られたトリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加え、低極性有機溶媒を除去した後、85〜100℃の熱水中でトリテルペンアルコールを溶融させ、次いで冷却する工程、を順次行う、トリテルペンアルコールの製造方法。 低極性有機溶媒がヘキサンである請求項1記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に加える水の量が、γ−オリザノールの仕込み量に対して5〜100重量倍量である請求項1又は2記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコール含有低極性有機溶媒に水を加える前に、吸着剤を接触させる吸着処理を行う請求項1〜3のいずれか1項記載のトリテルペンアルコールの製造方法。 トリテルペンアルコールを顆粒状の形態で得る請求項1〜4のいずれか1項記載のトリテルペンアルコールの製造方法。


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