生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ポリガラクツロナーゼ
出願番号:2010161751
年次:2012
IPC分類:C12N 9/24,C12N 1/20,C12P 19/00


特許情報キャッシュ

小川 晃範 長見 篤 佐伯 勝久 JP 2012019757 公開特許公報(A) 20120202 2010161751 20100716 ポリガラクツロナーゼ 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 小川 晃範 長見 篤 佐伯 勝久 C12N 9/24 20060101AFI20120106BHJP C12N 1/20 20060101ALI20120106BHJP C12P 19/00 20060101ALI20120106BHJP JPC12N9/24C12N1/20 AC12P19/00 9 OL 12 4B050 4B064 4B065 4B050CC01 4B050DD02 4B050FF12C 4B050LL05 4B064AF02 4B064AF03 4B064AF04 4B064CA02 4B064CA21 4B064CB07 4B064CD19 4B064CE10 4B064DA16 4B065AA01X 4B065AC14 4B065CA20 4B065CA21 4B065CA31 本発明はエンド型分解様式を示すポリガラクツロナーゼ及びその利用に関する。 ポリガラクツロナーゼは、一般にペクチナーゼとも呼ばれ、ポリガラクツロン酸(「ペクチン酸」とも称する)やペクチンを分解する加水分解酵素である。斯かるポリガラクツロナーゼは、その最適反応pHを酸性−弱酸性に有していることから、主に食品工業用酵素として用いられているが、衣料用洗剤酵素としての利用も試みられている(特許文献1〜3)。 食品工業においては、一般的に作用pHの低い領域で効率良く働くポリガラクツロナーゼが必要とされるが、衣料用洗浄剤、繊維処理等に使用される場合には、酵素が中性からアルカリ性領域で作用すること、界面活性剤、キレート剤等に対し安定であることが必要とされる。 一方、ペクチン又はペクチン酸にポリガラクツロナーゼを作用させ生成されるオリゴガラクツロン酸には、大腸菌などに対する静菌作用や植物の対微生物防御反応を誘導する作用があるとされ、オリゴガラクツロン酸の製造方法が検討されている(特許文献4)。 ポリガラクツロナーゼには、作用様式がエキソ型のものとエンド型のものがあるが、メチルエステル化等の修飾を受けた基質に対する反応性が良い点から、洗剤酵素として使用する場合、エンド型のものが好ましい。エンド型のものはカビや植物由来のものが多く、細菌由来のものはあまり報告されていないが、例えば、最適反応pHを10付近に有するエンド型の酵素として、好アルカリバチルスP−4−N株が生産するアルカリポリガラクツロナーゼ(特許文献5)が知られている。しかしながら、当該酵素は、反応にカルシウムイオンが必須でありキレート剤耐性の低い酵素であった。 一方、近年では中性付近に最適反応pHを示し、耐界面活性剤、耐キレート剤性能に優れ、中性からアルカリ性領域でも作用するポリガラクツロナーゼについても報告されている(特許文献6〜11)。しかしながら、これらのポリガラクツロナーゼはいずれもエキソ型であることから、メチルエステル化等の修飾を受けた基質に対する反応性は著しく低下する。 そこで、耐界面活性剤、耐キレート剤等の性質を有し、中性からアルカリ性領域でも作用するエンド型のポリガラクツロナーゼが望まれていた。特開昭60−226599号公報特許第2033580号公報国際公開第98/06809号パンフレット特開平6−205687号公報特公昭48−6557号公報特許第4139537号公報特許第4139538号公報特許第4382951号公報特許第4382952号公報特許第4382953号公報特許第4395243号公報 本発明は、エンド型分解様式を示し、中性からアルカリ性領域において作用し、界面活性剤、キレート剤に対して安定であるポリガラクツロナーゼ及びその製造法、並びに当該酵素を用いたモノ及びオリゴガラクツロン酸の製造法を提供することに関する。 本発明者らは、土壌中の微生物が産生する酵素のスクリーニングを行ったところ、界面活性剤、キレート剤に耐性で且つ中性からアルカリ性領域において作用する、エンド型のポリガラクツロナーゼを見出した。 すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]に係るものである。[1]下記の酵素学的性質を有するポリガラクツロナーゼ。 (1)作用:ポリガラクツロン酸に作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエンド的に加水分解し、オリゴガラクツロン酸を生成する。 (2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液) (3)最適反応温度:約40〜50℃(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0) (4)分子量:約52000(ゲル濾過法)[2]エピリソニモナス属細菌由来である[1]のポリガラクツロナーゼ。[3]エピリソニモナス属細菌がエピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である[2]のポリガラクツロナーゼ。[4]更に、下記(5)〜(7)から選択される1以上の酵素学的性質を有する[1]〜[3]のポリガラクツロナーゼ。 (5)pH安定性:pH3.5〜7.0(30℃、30分間処理) (6)耐熱性:約50℃まで安定(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理) (7)金属イオンの影響:キレート剤の添加によって阻害されないが、カルシウム、鉄、マグネシウム、ストロンチウム及びアルミニウムによって活性化される。[5][1]のポリガラクツロナーゼを産生するエピリソニモナス属細菌。[6]エピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である[5]の細菌。[7]エピリソニモナス属細菌を培養し、培養物からポリガラクツロナーゼを採取することを特徴とする[1]のポリガラクツロナーゼの製造法。[8]エピリソニモナス属細菌がエピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である[7]のポリガラクツロナーゼの製造法。[9]ポリガラクツロン酸又はペクチンに、[1]〜[4]のポリガラクツロナーゼを作用させることを特徴とするモノ及びオリゴガラクツロン酸の製造法。 本発明のポリガラクツロナーゼは、ポリガラクツロン酸及びペクチンに対しエンド的に作用し、最適反応pHをpH7付近に有し、キレート剤存在下のアルカリ性領域においても活性を維持すること、またプロトペクチナーゼ活性を示すことから衣料用洗剤酵素、繊維処理用酵素として有用である。また、本発明のポリガラクツロナーゼを用いることによりモノ及びオリゴポリガラクツロン酸を生産することができる。本発明のポリガラクツロナーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。本発明のポリガラクツロナーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。本発明のポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。本発明のポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。 本発明のポリガラクツロナーゼは、下記の(1)〜(4)の酵素学的性質を有する。(1)作用: ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)に作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエンド的に加水分解し、オリゴガラクツロン酸を生成する。 また、ペクチンに対しては、エステル化度30%のペクチンでは約160%、エステル化度60%のペクチンに対しては約60%の反応速度でこれを分解する。(2)最適反応pH: pH7.0のトリス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示し、また、pH5.5〜8.0の広範囲で最大活性の50%以上の活性を示す(図1)。従って、最適反応pHは、6.0〜7.5、すなわちpH7付近(トリス−塩酸緩衝液)である。(3)最適反応温度: トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中で酵素反応を行った場合、約40〜50℃、すなわち40℃付近に最適反応温度を示す。また、25℃〜55℃の範囲で最大活性の50%以上の活性を示す。 また、塩化カルシウムを反応系に添加すると最適反応温度は変わらないが、40〜50℃での相対活性が増加する(図2)。(4)分子量: ゲル濾過法(塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化したTSK−GEL G2000SWXLを用い、1mL/minの流速で溶出)により測定した推定分子量は、50000〜54000、すなわち約52000である。 また、本発明のポリガラクツロナーゼは、更に詳細には、以下の(5)〜(7)の性質を有する。(5)pH安定性: 各緩衝液(pH2〜8.5)中、30℃、30分間恒温した後の残存活性は、マックルベイン氏緩衝液(pH6.5)中での残存活性を100%とした場合、pH3.5〜7.0の範囲で70%以上である(図3)。すなわち、pH安定性は、pH3.5〜7.0(30℃、30分間処理)である。(6)耐熱性: トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中、0℃〜80℃の各温度で15分間恒温した場合、約50℃まで安定である(図4)。 また、各温度において塩化カルシウムを添加しても酵素の安定性には影響を与えない。(7)金属イオンの影響: キレート剤(例えばEDTA)の添加によって阻害されず、カルシウム、鉄、マグネシウム、ストロンチウム及びアルミニウムによって活性化される(表1、表3)。(8)界面活性剤の影響 陽イオン界面活性剤(0.2%(w/v))の存在下においても安定である(表2)。 例えば、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル0.2%含有液中で166%以上の活性を保持する。 以上のとおり、本発明のポリガラクツロナーゼは、中性からアルカリ領域においてもポリガラクツロナーゼ活性、すなわちポリガラクツロン酸の加水分解活性を有する。当該ポリガラクツロナーゼ活性は、エンド型であり、ポリガラクツロン酸よりオリゴガラクツロン酸を生成する。 さらに、本発明のポリガラクツロナーゼは中性からアルカリ領域おいて、不溶性天然ペクチンであるプロトペクチンに作用することから、不溶性ペクチンを基質としたペクチン分解物の製造、植物性繊維上のプロトペクチンに付着した汚れや、ケチャップ、ジャム等の不溶性ペクチン含量の高い食物の食べこぼしや染み汚れの除去に有効である。 本発明のポリガラクツロナーゼは、ポリガラクツロナーゼ生産菌を培養し、培養物から採取することにより製造される。 本発明のポリガラクツロナーゼを生産する菌としては、エピリソニモナス属に属する細菌、例えばエピリソニモナス KSM−P810株を挙げることができる。当該エピリソニモナス KSM−P810株は次の菌学的性質を有する。A 形態学的性質(a)細胞の形、大きさ:桿菌(0.8〜0.9×1.5〜3.0μm)(b)運動性:無し(c)グラム染色:陰性(d)肉汁寒天培地上での生育:黄色、全縁のコロニーを形成B 生理学的性質(a)硝酸塩の還元:−(b)インドール生成:+(c)デンプン加水分解:−(d)ゼラチン加水分解:−(e)エスクリン加水分解:+(f)クエン酸の利用:−(g)ウレアーゼ:−(h)オキシダーゼ:+(i)カタラーゼ:+(j)生育温度範囲:4〜30℃(k)嫌気条件下での生育:生育せず(l)OFテスト:−(m)グルコースからのガス産生:−(n)資化性:グルコース、マルトースの資化は認められたが、L-アラビノース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチル-D-グルコサミン、グルコン酸カリウム、n-カプリン酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウムおよび酢酸フェニルの資化は認められなかった。 エピリソニモナス KSM−P810は、16SrDNA塩基配列の相同性検索の結果から、Epilithonimonas tenaxに対して相同率98.4%の最も高い相同性を示したことから、本菌株はエピリソニモナス属に近縁な菌種であると考えられた。しかし、その生理学的性質は既知のエピリソニモナス属の株とは一致しないため、新規なエピリソニモナス属細菌として本菌株を、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター 中央第6)へ、平成22年2月23日付で、エピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)として寄託した。 エピリソニモナス KSM−P810株等のポリガラクツロナーゼ生産菌を用いて本発明のポリガラクツロナーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養あるいは通気攪拌培養すれば良い。培地のpHは、7〜9に調整するのが好ましい。 かくして得られた培養物中からのポリガラクツロナーゼの採取及び精製は、一般の方法に準じて行うことができる。即ち、培養物から遠心分離または濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から硫酸アンモニウム沈殿、溶剤沈殿、限外濾過、各種クロマトグラフィー、凍結乾燥、噴霧乾燥等の常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液または乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。 エピリソニモナス KSM−P810株由来のポリガラクツロナーゼの詳細な酵素学的性質を実施例4に記載した。 本発明のポリガラクツロナーゼを用いてペクチン又はポリガラクツロン酸を原料として、モノ及びオリゴガラクツロン酸を製造することができる。 ここで、オリゴガラクツロン酸としては、ガラクツロン酸が2〜8個結合したものが挙げられる。 本発明のポリガラクツロナーゼと原料との酵素反応は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、例えばペクチン又はポリガラクツロン酸を水又は緩衝液に溶解又は懸濁させ、これにポリガラクツロナーゼを作用させることや、ポリガラクツロナーゼを不溶性固定化担体に結合させて、これにペクチン又はポリガラクツロン酸を流下させること等により行うことができる。 ここで、用いられる緩衝液としては、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、トリスアミノメタン、ビス−トリス、グリシン、水酸化ナトリウム等を組み合わせた緩衝液が好ましい。例えば、トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、マックルベイン氏緩衝液(pH7.0)等が挙げられる。 ポリガラクツロナーゼの使用量は、効果を損なわない限り限定されないが、例えば、原料であるペクチン又はポリガラクツロン酸に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜8.0質量%である。 反応の条件は、ポリガラクツロナーゼの至適温度、至適pHにおいて反応させるのが好ましく、例えば、25〜60℃、好ましくは35〜50℃の温度範囲、pH5.5〜8.0、好ましくはpH6.0〜7.5のpH範囲で反応させることができる。 反応時間は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、6〜72時間が好ましく、18〜48時間がより好ましい。 斯くして得られたモノ及びオリゴガラクツロン酸は、そのまま使用することもできるが、必要に応じて、更にイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等により脱塩、分離、精製することができる。 尚、原料であるペクチン又はペクチン酸は、植物由来のものであれば種類は問わず、植物体からの抽出等により調製できる、或いは調製されたものを購入することもできる。実施例1 ポリガラクツロナーゼ生産菌のスクリーニング 日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを、下記組成の寒天平板培地に塗布した。30℃の培養器で3〜5日間静置培養した。菌の生育後、0.2%(w/v)ポリガラクツロン酸、0.1%リン酸1水素カリウム、1%塩化ナトリウム、50mMEDTA、50mMトリス−塩酸塩緩衝液(pH8.0)0.8%寒天からなる軟寒天を重層し、室温で一夜恒温した。重層した軟寒天上に1%セチルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を注ぎ、室温で1時間放置後、生育した菌の周辺にペクチンの分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返し、ポリガラクツロン酸分解酵素の生産能を検定した。このようにして得られた多くの菌株は、主にペクチン酸リアーゼを生産したが、その中でポリガラクツロナーゼ生産菌としてエピリソニモナス KSM−P810株を得た。当該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターへエピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)として寄託した。実施例2 エピリソニモナス KSM−P810株によるポリガラクツロナーゼの生産 上述のスクリーニングにより得られたエピリソニモナス KSM−P810株の培養は、500mL容坂口フラスコに50mLの培地を加え、30℃、2日間好気的に行った。培地組成は、0.5%(w/v)ペクチン、2.0%ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1.0%魚肉エキス、0.15%リン酸一水素二カリウム、0.02%硫酸マグネシウム7水塩、0.005%硫酸マンガン5水塩であった。培養液中に生産されるポリガラクツロナーゼ活性は、5mM EDTAを添加しペクチン酸リアーゼ活性を完全に失活させて測定を行った。この測定法により、培養液あたり0.1〜0.2U/Lの生産量を得た。実施例3 ポリガラクツロナーゼの精製 エピリソニモナス KSM−P810株の培養液を遠心分離(8000×g、30分間、4℃)し上清液(約3L)を得た。上清400mLずつに対して、氷上で超音波破砕(SEIKO I&E SONICS&MATERIALS,BIOMC7500 ULTRASONIC PROCESSOR,MODE:PULSED,%DUTY CYCLE:50,OUTPUT CONTROL:6,時間:15分×1回)を行った。破砕液を遠心分離(8000×g、30分間、4℃)で回収し、ポリエチレンイミン溶液を終濃度が0.04%となるように攪拌しながら添加し、再び遠心分離(8000×g、30分間、4℃)を行った。得られた上清に対し、フェニルメタンスルホニルフルオリド溶液を終濃度1mMとなるように、塩化カルシウム溶液を終濃度50mMとなるように添加・攪拌後、再び遠心分離(8000×g、30分間、4℃)を行った。得られた上清は限外濾過用モジュール(ACP1010:旭化成)により濃縮、脱塩を行った。得られた濃縮液(455mL)は1mMジチオスレイトールを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化しておいたSuperQトヨパール650Mカラム(5×7cm:東ソー)に供した。約300mLの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させた。非吸着部分にポリガラクツロナーゼ活性が溶出された。得られた非吸着画分は限外濾過用モジュール(ACP1010:旭化成)により濃縮(72mL)を行った。そのうち20mLを用いて、P6−DG脱塩カラム(2.5cm×30cm:バイオラッド)を用いて5mMリン酸緩衝液(pH6.8)に置換を行い、同緩衝液にて平衡化したヒドロキシアパタイトCHT−IIカラム(1.5cm×13.5cm:バイオラッド)に添着させた。平衡化緩衝液にて洗浄した後、5から500mMリン酸緩衝液(pH6.8)を用い吸着タンパク質を濃度勾配法にて溶出させた。エンド型ポリガラクツロナーゼ活性は約100mMのリン酸緩衝液濃度付近に溶出され、その画分を集め、限外濾過により濃縮し、予め10mMトリス−塩酸緩衝液で平行化しておいたP10−DGカラム(バイオラッド)により緩衝液置換を行った。(4mL、37.1U、690μgタンパク質)。実施例4 酵素学的性質の測定 実施例3の精製操作により得られたポリガラクツロナーゼ画分について、各種酵素学的性質を測定した。 なお、ポリガラクツロナーゼ活性の測定は、以下のように行った。〔標準酵素活性測定法〕 試験管に0.2mLの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、0.2mLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482、水酸化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整)、0.5mLの脱イオン水を添加し、40℃で5分間恒温した。これに0.1mLの適当に希釈した酵素液(希釈は脱イオン水により行った)を加え30分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬を添加し、沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷した後、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmol のD−ガラクツロン酸相当の還元糖を生成する量とした。(1)基質特異性 ポリガラクツロン酸の代わりにエステル化度の異なるペクチン(30、60、90%)を基質とし、標準活性測定法により反応速度を調べた。エステル化度30%のペクチン(シグマ;lot118K0974)では約160%、エステル化度60%のペクチン(シグマ;lot069K0976)に対しては約60%の反応速度で分解したが、エステル化度90%のペクチン(シグマ;lot18K1650)に対しては、本条件下で分解活性は認められなかった。次に基質として15cmのしつけ糸(金鈴印)1本(約12mg)を基質に用い40℃で1時間の反応を行った後、上清を液体クロマトグラフィーで分析を行った。その結果、反応生成物としてモノ・ジ・トリガラクツロン酸が検出されたことから本酵素は、木綿繊維中に含まれるプロトペクチンに作用できるプロトペクチナーゼ活性を有すると考えられた。(2)基質の分解様式 100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、0.2%ポリガラクツロン酸、5mM EDTAからなる反応液に0.05Uの酵素を添加し、全量を0.1mLとした。40℃、60分間反応させた液を液体クロマトグラフィーで分析を行った。その結果、反応生成物としてジ・トリガラクツロン酸及び、それ以上の溶出時間帯にもピークが検出され、本酵素はエンド型のポリガラクツロナーゼであった。(3)ポリガラクツロナーゼ活性の最適反応pH 酢酸緩衝液(pH4.5〜5.5)、トリス−塩酸緩衝液(pH6.0〜8.0)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.0〜10.0)、MOPS緩衝液(pH6.0〜8.0)の各緩衝液(100mM)を用いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH7.0のトリス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示し、また、pH5.5〜8.0の広範囲で最大活性の50%以上の活性を示した(図1)。(4)最適反応温度 100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中、20℃〜80℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた結果、本酵素は40℃付近に最適反応温度を示し、25℃〜55℃の範囲で最大活性の50%以上の活性を示した。また、1mMの塩化カルシウムを反応系に添加すると最適反応温度は変わらないが、40〜50℃での相対活性が増加した(図2)。(5)安定pH範囲 マックルベイン氏緩衝液(pH2〜8)、酢酸緩衝液(pH4〜5)、トリス−塩酸緩衝液(pH6.5〜8.5)の各緩衝液(50mM)中に本酵素を加え、30℃、30分間恒温した後、残存活性を測定した結果、本酵素はマックルベイン氏緩衝液(pH6.5)中での残存活性を100%とした場合、pH3.5〜7.0の範囲で70%以上の残存活性を示した(図3)。(6)耐熱性 50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中に本酵素を添加し、0℃〜80℃の各温度で15分間恒温した後の残存活性を測定した。本酵素は、この条件下において40℃まで非常に安定であり、60℃以上で急激に失活した(図4)。尚、各温度において1mMの塩化カルシウムを添加しても酵素の安定性には影響を与えなかった。(7)分子量 ゲル濾過法:300mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化したTSK−GEL G2000SWXL(7.8×30mm)に本酵素を載せ、1mL/minの流速で溶出を行った。標準タンパク質としてチログロブリン(670000)、γ−グロブリン(158000)、卵白アルブミン(44000)、ミオグロビン(17000)、ビタミンB12(1350)を用い、それぞれの溶出液量と分子量から検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約52000と推定された。(9)各種化合物の影響 本酵素の活性に及ぼす各種化合物の影響は、各化合物を所定濃度になるよう反応系へ添加し、活性測定を行うことにより調べた結果、本酵素は、ジエチルピロカーボネート(1.0mM)で約44%、N−エチルマレイミド(1mM)で約20%阻害されたが、その他の修飾剤やキレート剤には耐性を示した(表1)。(10)界面活性剤の影響 各種界面活性剤を0.2%(w/v)になるように添加した反応系において、酵素の反応性を調べた結果、陰イオン界面活性剤の存在下では著しく活性が阻害されたが、陽イオン界面活性剤の存在下において、本酵素は、対象に比べ130〜170%以上の活性を発現した(表2)。(11)金属イオンの影響 各種金属化合物を標準活性測定条件に1mM添加し、酵素活性に与える影響を調べた。その結果、本酵素は塩化カルシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化アルミニウムにより、対照に比べて117〜153%と活性化された。一方、塩化ニッケルで約40%、塩化マンガンと塩化コバルトで約60%、塩化亜鉛で80%の阻害を受けた(表3)。 下記の酵素学的性質を有するポリガラクツロナーゼ。 (1)作用:ポリガラクツロン酸に作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエンド的に加水分解し、オリゴガラクツロン酸を生成する。 (2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液) (3)最適反応温度:約40〜50℃(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0) (4)分子量:約52000(ゲル濾過法) エピリソニモナス属細菌由来である請求項1記載のポリガラクツロナーゼ。 エピリソニモナス属細菌がエピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である請求項2記載のポリガラクツロナーゼ。 更に、下記(5)〜(7)から選択される1以上の酵素学的性質を有する請求項1〜3の何れか1項記載のポリガラクツロナーゼ。 (5)pH安定性:pH3.5〜7.0(30℃、30分間処理) (6)耐熱性:約50℃まで安定(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理) (7)金属イオンの影響:キレート剤の添加によって阻害されないが、カルシウム、鉄、マグネシウム、ストロンチウム及びアルミニウムによって活性化される。 請求項1記載のポリガラクツロナーゼを産生するエピリソニモナス属細菌。 エピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である請求項5記載の細菌。 エピリソニモナス属細菌を培養し、培養物からポリガラクツロナーゼを採取することを特徴とする請求項1記載のポリガラクツロナーゼの製造法。 エピリソニモナス属細菌がエピリソニモナス KSM−P810(Epilithonimonas sp. KSM−P810;FERM P-21933)である請求項7記載のポリガラクツロナーゼの製造法。 ポリガラクツロン酸又はペクチンに、請求項1〜4の何れか1項記載のポリガラクツロナーゼを作用させることを特徴とするモノ及びオリゴガラクツロン酸の製造法。 【課題】エンド型分解様式を示し、中性からアルカリ性領域において作用し、界面活性剤、キレート剤に対して安定であるポリガラクツロナーゼ及びその製造法、並びに当該酵素を用いたモノ及びオリゴガラクツロン酸の製造法の提供。【解決手段】下記の酵素学的性質を有するポリガラクツロナーゼ。 (1)作用:ポリガラクツロン酸に作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエンド的に加水分解し、オリゴガラクツロン酸を生成する。 (2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液) (3)最適反応温度:約40〜50℃(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0) (4)分子量:約52000(ゲル濾過法)【選択図】なし


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