タイトル: | 公開特許公報(A)_EBNA1機能阻害剤 |
出願番号: | 2010153916 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07D 403/14,A61K 31/4178,A61P 43/00,A61P 31/22,A61P 35/00,C07K 5/078 |
野口 耕司 杉本 芳一 杉山 弘 板東 俊和 蓑島 維文 JP 2011213704 公開特許公報(A) 20111027 2010153916 20100706 EBNA1機能阻害剤 学校法人慶應義塾 899000079 国立大学法人京都大学 504132272 一色国際特許業務法人 110000176 野口 耕司 杉本 芳一 杉山 弘 板東 俊和 蓑島 維文 JP 2010064777 20100319 C07D 403/14 20060101AFI20110930BHJP A61K 31/4178 20060101ALI20110930BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110930BHJP A61P 31/22 20060101ALI20110930BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110930BHJP C07K 5/078 20060101ALI20110930BHJP JPC07D403/14A61K31/4178A61P43/00 111A61P31/22A61P35/00C07K5/078 4 3 OL 20 4C063 4C086 4H045 4C063AA05 4C063BB09 4C063CC25 4C063DD04 4C063EE01 4C086AA01 4C086AA03 4C086BC38 4C086GA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA13 4C086MA16 4C086MA23 4C086MA28 4C086MA31 4C086MA35 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA43 4C086MA52 4C086MA57 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZB26 4C086ZB33 4C086ZC02 4H045AA10 4H045BA11 4H045DA83 4H045EA29 4H045FA20 本発明は、EBNA1蛋白質の機能阻害剤として有用な化合物及びその用途に関する。 これまでの抗ヘルペスウイルス薬であるアシクロビルやガンシクロビルは、ヘルペスウイルス (HHV-1, -2, -3)の溶解感染時におけるウイルス増殖機構を標的としている。従って、既存の抗ヘルペス薬は一時的に治療できても、その薬は潜伏感染状態のヘルペスウイルスを排除できないため、ヘルペスウイルスがヒトの体内に残り続け、いわゆる再帰感染によるヘルペス感染疾患が何度も起こることになる。 EBV(Epstein-Barr virus:ヒトヘルペスウイルス-4)は、感染形式として潜伏感染と溶解感染の2種類の様式をとる。潜伏感染状態では、EBVゲノムは環状プラスミドDNA(エピゾーム)になり感染細胞のゲノムに組み込まれないまま安定に維持され、溶解感染状態では線状EBVゲノムが複製されウイルス粒子中に取り込まれて放出されて増殖する。 EBV潜伏感染時に、全ての感染細胞において発現する遺伝子として、EBVゲノムDNAのOriP領域に結合するEBNA1 (Epstein-Barr virus nuclear antigen 1) 蛋白質をコードする遺伝子が知られている(非特許文献1参照)。EBNA1蛋白質は、潜伏状態でのEBVのエピゾームの複製、維持、さらにはウイルス遺伝子群の転写発現に極めて重要な役割を持つ蛋白質であり、EBNA1の機能が損なわれると、EBVのエピゾーム状態のゲノムDNAは感染細胞内に維持できなくなり、EBVによるBリンパ球の不死化能も損なわれる。 ところで、ウイルス疾患に対する治療薬、予防薬の観点からはワクチン開発が一般的だが、EBVに関しては、ほとんどのヒトが乳幼児に感染してEBVに対する免疫を獲得すること、EBVは免疫機構を逃れるように潜伏感染することなどから、EBVワクチンの効果が期待できないと考えられている。 既存の抗ウイルス薬としては、生物製剤であるインターフェロン、ウイルス由来のDNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼを標的とする核酸系や非核酸系阻害剤、抗HIV薬でも知られる逆転写阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、細胞侵入阻害剤、抗インフルエンザ薬で知られるノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、特許文献1参照)などが知られている。しかしながら、いずれもウイルスの増殖を選択的に阻害する、溶解感染時のウイルス増殖機構に働くものである。 一方、EBVによる腫瘍は、潜伏感染に関連があるとされているが,潜伏感染時に重要な機能を有するEBNA1蛋白質を標的とした阻害剤は、ドミナントネガティヴ変異体(例えば、非特許文献2参照)以外、学術的にもほとんど報告されていない。国際公開第98/07685号パンフレットFrappier, L., and O’Donnell, M. (1991) J. Biol. Chem. 266, 7819-7826.Kennedy, G., Komano, J and Sugden.B. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 14269. 本発明は、EBウイルスが起因となる疾患の治療または予防に有用な、EBNA1の機能を阻害する化合物及びその用途を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と称する。)が、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAとの結合を阻害する作用、すなわち、EBNA1蛋白質のDNA結合能を阻害する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物などである。 本発明に係る医薬組成物は、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する。 本発明に係るEBNA1機能阻害剤は、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する。 本発明に係る抗EBウイルス(Epstein-Barr virus)薬は、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する。 また、本発明は、EBNA1機能阻害剤又は抗EBウイルス薬を製造するための、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用である。 さらに、本発明は、EBNA1の機能を阻害するための、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。 本発明は、EBウイルス感染症を予防又は治療するための、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。 また、本発明に係る方法は、EBNA1の機能を阻害する方法であって、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をEBNA1に作用させる工程を含む。 本発明は、EBウイルス感染症の治療又は予防のための方法であって、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を投与する工程を含む。 上記EBNA1機能阻害剤は、例えば、EBNA1のDNA結合阻害剤などである。上記EBNA1の機能は、例えば、EBNA1のDNA結合能などである。本発明において「作用させる」とは、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を、添加又は投与することによりEBNA1の機能を阻害する作用を発揮させることをいい、EBNA1を対象としてもよいし、EBNA1を産生する培養細胞又は個体内の細胞を対象としてもよい。前記個体は、例えば、ヒトであってもよいし、それ以外の哺乳動物であってもよい。また、本発明において抗EBウイルス薬とは、EBNA1蛋白質の機能を分子標的として、EBウイルスが起因となる疾患の治療または予防が可能な薬剤をいう。前記疾患は、例えば、EBウイルス潜伏感染哺乳動物において免疫が低下した際に発症する疾患などである。前記EBウイルス感染症としては、例えば、免疫が低下した際にEBウイルス潜伏感染哺乳動物において発症する疾患などである。 本発明によれば、EBウイルスが起因となる疾患の治療または予防に有用な、EBNA1の機能を阻害する化合物及びその用途を提供することができる。本発明の一実施例において、EBV陽性細胞株DaudiにおけるEBウイルスのOriP領域の4ヵ所のEBNA1結合予想部分における化合物(1)の結合部位を模式的に示した図である。図中の、サイト3における塩基配列に付された太線は、化合物(1)が結合すると予想した部分を、サイト1及び4における塩基配列に付された太線は、化合物(1)、(2)及び(3)が結合すると予想した部分をそれぞれ示す。本発明の一実施例において、Daudi又はEBV陽性細胞株B95-8におけるEBウイルスゲノムDNAのDS領域における、化合物(1)の作用部位を模式的に示した図である。図中の、サイト3における塩基配列に付された太線は、化合物(1)が結合すると予想した部分を、サイト1及び4における塩基配列に付された太線は、化合物(1)、(2)及び(3)が結合すると予想した部分をそれぞれ示す。本発明の一実施例において、EBNA1蛋白質とB95-8におけるEBウイルスゲノムDNAとの結合に対する化合物(1)〜(7)の阻害作用をELISAにより調べた結果を示す図である。本発明の一実施例において、EBNA1蛋白質とB95-8におけるEBウイルスゲノムDNAとの結合に対する化合物(1)〜(7)の阻害作用をEMSAにより調べた結果を示す図である。本発明の一実施例において、化合物(1)が、EBNA1蛋白質とEBV産生株Daudi又はB95-8のEBウイルスゲノムDNAとの結合を阻害するEMSAの結果を示す図である。本発明の一実施例において、Daudiとその他の一般的な細胞におけるEBウイルスゲノムDNAに結合する化合物(1)とEBNA1蛋白質が、EBウイルスゲノムDNAにおけるサイト3の一部の塩基配列を置換した変異体には結合しないことを示す図である。図6中の*印におけるバンドは、非特異的なシグナルを示す。本発明の一実施例において、各種細胞に対する化合物(1)の毒性を調べた結果を示す図である。本発明の一実施例において、EBV感染不死化細胞であるB95-8細胞に対する化合物(1)、(4)、及び(6)の増殖阻害活性を調べた結果を示す図である。 以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施例において特に説明がない場合には、市販の試薬キットや測定装置はそれらに添付のプロトコールを用いる。 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。==本発明に係る化合物の薬理作用== EBVは、一般に唾液などを介して口腔咽頭領域におけるBリンパ球に主に感染するが、口腔粘膜上皮細胞にも感染することが知られている。EBVの潜伏感染は、ヒトのBリンパ球を不死化細胞へとトランスフォームする能力が報告され広く認知されている。また、EBV関連のヒトがんにおいて、バーキットリンパ腫、胃がん、上咽頭がん、NK/T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍でEBVががんの悪性化に関わっており、学術的にも臨床的にもEBVはヒトのがんウイルスとして認識されている。 初感染においては、免疫の未熟な乳幼児では無症状あるいは軽い風邪症状で終わることが多いが、学童期や思春期以降のヒトの一部では、疲労、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れなどが特徴の免疫性反応である伝染性単核球症を発症する。初感染の後にはEBVに対する免疫が獲得されるため、ウイルス抗原を発現しないような潜伏感染状態となり、EBVの再活性化によってウイルス増殖が頻繁に起こると考えられている。特にHIV感染や臓器移植、マラリア感染などにより免疫状態が異常をきたした場合においては、EBV関連リンパ増殖症などが起こること知られている。またBリンパ球ではなくTリンパ球にEBVが感染する疾患として、発熱、肝腫、脾腫を伴う慢性型リンパ増殖性疾患の慢性活動性EBウイルス感染症や、初感染でおこると思われていて骨髄、リンパ節、肝臓などで血球貪食像が見られるEBウイルス関連血球貪食症候群が知られている。 上述のように化合物(1)はEBNA1蛋白質の機能を阻害する作用を有することから、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物は、EBNA1蛋白質の機能阻害剤、抗EBウイルス薬などとして有用であり、EBNA1機能阻害方法、EBウイルス感染症を治療したり又は予防したりする方法などに有用である。また、化合物(1)若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物は、EBVによるB細胞不死化の抑制、潜伏感染状態におけるEBウイルスゲノム自体の感染細胞からの脱落、長期間のEBV潜伏感染によるEBV関連悪性腫瘍の発生頻度の低下、いわゆる免疫機構で排除できないEBVによる発がんの予防、潜伏感染細胞からのウイルス増殖の抑制、ウイルス増殖の結果としての再帰感染によるEBV感染症の抑制などに有用であり、特に、免疫機構で排除できない感染細胞や腫瘍細胞で有効に作用する。なお、上記EBNA1蛋白質の機能は、例えば、EBNA1蛋白質のDNA結合能などである。本発明の抗EBウイルス薬が有用な疾患やEBウイルス感染症としては、例えば、バーキットリンパ腫、胃がん、上咽頭がん、NK/T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍又はその悪性化;伝染性単核球症;HIV感染、臓器移植、マラリア感染などによる免疫状態の異常によって起こるEBV関連リンパ増殖症(例えば、移植後リンパ増殖性疾患やエイズ関連リンパ腫など);慢性型リンパ増殖性疾患(例えば、慢性活動性EBウイルス感染症など);EBウイルス関連血球貪食症候群などを挙げることができる。==本発明に係る薬剤== 一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する薬剤は、EBNA1蛋白質の機能阻害剤、抗EBV薬などとして利用できる。上記薬剤は、ヒト、ヒト以外(例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等)の哺乳動物に医薬品として投与してもよいし、試薬として実験に用いてもよい。上記薬剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、液剤、散布剤、スプレー剤、塗布剤、噴霧剤などの剤形にしてもよい。また、これらの薬剤は、固形、液状、ゲル状、粉末状、ゼリー状、油状、ペースト状、泡状、クリーム状などの形状にしてもよい。なお、これらの薬剤を哺乳類動物に投与する場合には、製剤化して、経口投与してもよいし、腹腔内や静脈内への注射や点滴、あるいは、口腔咽頭領域へのスプレーや塗布により非経口投与してもよい。本発明に係る薬剤の製剤化は、従来使用されている製剤添加物を用いて、常法で行うことができる。前記製剤添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤、基剤、湿潤剤、保存剤などの既存の添加物を用いることができる。 上記薬剤を、バーキットリンパ腫、胃がん、上咽頭がん、NK/T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍の治療又は予防、それら悪性腫瘍の悪性化を予防又は抑制のために投与する場合には、抗がん剤を上記薬剤に加えてもよいし、別途投与してもよい。また、抗がん剤と併用されるステロイド薬、シクロフォスファミドなどのアルキル化薬、シタラビンやメトトレキセートなどの代謝拮抗薬、抗CD20抗体であるリツキシマブなどの抗がん剤を、上記薬剤に加えてもよいし、上記薬剤と併用して投与してもよい。また、上記薬剤を、EBウイルス関連血球貪食症候群の治療又は予防のために投与する場合には、ステロイドとしてのプレドニゾロン、抗がん剤エトポシド、免疫抑制剤シクロスポリンなどを上記薬剤に加えてもよいし、別途投与してもよい。 本発明に係る化合物(1)は後述の方法によって製造することができ、化合物(1)で表される化合物の塩、又は化合物(1)若しくはその塩の水和物又は溶媒和物は、常法に従って製造することができる。化合物(1)の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、その他の金属塩(アルミニウム塩など)、無機塩(塩酸塩、アンモニウム塩、アミン類など)、有機塩(グルコサミン塩など)等を挙げることができる。なお、上述の薬剤に化合物(1)の塩を用いる場合には、安全性の面から薬理学的に許容される塩を用いることが好ましい。 以下、本発明を実施例及び図を用いてより具体的に説明する。なお、以下の実施例において特に明記しない限り、市販の試薬は特級グレードのものを使用した。<実施例1>化合物(1)〜(7)の合成 図1及び図2に示すように、EBVゲノムDNAのOriP領域、特にdyad symmetry (DS)と呼ばれる領域においてEBNA1が相互作用すると予測された塩基配列、5’-GATAGCATATGCTT-3’(配列番号1)、 5’-GGTAACATGTGCTA-3’(配列番号2)、5’-GATAGTATATGCTA-3’(配列番号3)、5’-GGAAGCATATGCTA-3’(配列番号4)、5’-GGTAACATATGCTA-3’(配列番号5)の一部又は全部と、これらに対する相補鎖、5’-AAGCATATGCTATC-3’(配列番号6)、5’-TAGCACATGTTACC-3’(配列番号7)、5’-TAGCATATACTATC-3’(配列番号8)、5’-TAGCATATGCTTCC-3’(配列番号9)、5’-TAGCATATGTTACC-3’(配列番号10)とを含む二重らせん領域に結合でき、その副溝内においてγ−アミノ酪酸単位の部位で折りたたまれてU字型のコンフォメーションをとることができ、C−G塩基対に対してはPy(N−メチルピロール単位)/Im(N−メチルイミダゾール単位)対が、G−C塩基対に対してはIm/Py対が、A−T塩基対及びT−A塩基対に対してはいずれもPy/Py対がそれぞれ対応するピロールイミダゾールポリアミド[化合物(1)〜(3)]を合成した。また、化合物(1)の一部のアミノ酸を別のアミノ酸に改変したピロールイミダゾールポリアミド[化合物(4)〜(6)]も合成した。さらに、化合物(1)にアミノ酸を付加したピロールイミダゾールポリアミド[化合物(7)]も合成した。化合物(1)〜(7)の合成は下記のFmoc固相ペプチド合成法に基づき、多種品目同時固相法自動ペプチド合成装置PSSM-8システム(Shimadzu)を用いて行った。1−1:レジンの膨潤 Fmoc-beta-Ala-Wang Resin (Novabiochem, 0.66mmol/g) 80 mg (0.053 mmol) を反応容器 (Shimadzu) に入れ、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド;和光純薬、脱水、ペプチド合成用) 2 mLを加えて20分間静置し、レジンを膨潤させた。これを合成装置に取り付け、DMFをろ過して除いた。1−2:Fmoc基の脱保護 レジンに20% ピペリジン溶液(ピペリジン(和光純薬) : DMF = 2 : 8)を0.5 mL加え4分間撹拌した。試薬をろ過して除き、再度20% ピペリジン溶液を0.5 mL加え4分間撹拌した。試薬をろ過して除き、DMF(0.5 mL x 5回)で洗浄した。1−3:カップリング レジンにFmocでアミノ基を保護した各アミノ酸(4-Fmocアミノ-N-メチルピロール-2-カルボン酸(和光純薬)、4-Fmocアミノ-N-メチルイミダゾール-2-カルボン酸(和光純薬)、Boc-D-Dab(Fmoc)-OH:N-alpha-Boc-N-gamma-Fmoc-D-2,4-ジアミノ酪酸(peptide international)、N-beta-Z-N-gamma-Fmoc-R-3,4-ジアミノ酪酸(senn chemicals)、Fmoc-gamma-Abu-OH(novabiochem)、Fmoc-beta-アラニン-OH(novabiochem)等)とHCTU(novabiochem)のNMP(1-メチル-2-ピロリドン;和光純薬、脱水、ペプチド合成用)溶液を0.982 mL(各0.212 mmol)、DIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン;和光純薬)溶液を0.365 mL(0.212 mmol)加えた。45分間撹拌した。試薬をろ過して除き、DMF(0.5 mL x 5回)で洗浄した。1−4:合成 上記1−2の脱保護及び1−3のカップリングを繰り返しアミノ酸の伸長を行った。最終のアミノ酸のカップリングが終わり、脱保護が行われた段階まで自動ペプチド合成装置を作動させた後にレジンに20% 無水酢酸溶液(無水酢酸(和光純薬) : DMF = 2 : 8)を1 mL加え20分間撹拌した。試薬をろ過して除き、合成装置から反応容器を取り出し、DMF(0.5 mL x 5回)、メタノール(0.5 mL x 5回;和光純薬)で洗浄した。その後減圧下でレジンを乾燥させた。1−5:レジンからの切り出しと粗精製 乾燥させたレジンを1.5 mLの容器に移し、0.5 mLのN, N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンを加えた。55℃に設定した湯浴中で8時間以上静置させた。ろ過してレジンを除き、少量のDCM(ジクロロメタン;佐々木化学)で洗浄した。得られた黄色のろ液を濃縮した。濃縮したろ液にDCMとエーテルを加えることにより析出した沈殿物を回収し乾燥させ淡黄色の粉体を得た。 なお、化合物(1)〜(4)及び(7)においては、得られた粉体に20% TFA(トリフルオロ酢酸)溶液(TFA(和光純薬) : DCM = 50 : 50)を1 mL加え室温で60分間静置させた。その後、溶液を濃縮し、ジエチルエーテル(和光純薬)を加えて析出した沈殿物を回収した。 化合物(5)においては、得られた粉体に90% TFMSA(トリフルオロメタンスルホン酸)溶液(TFMSA(ナカライテスク) : TFA = 90 : 10)を1 mL加え室温で5分間静置させた。その後、溶液を濃縮し、ジエチルエーテルを加えて析出した沈殿物を回収した。 粗精製した化合物(1)〜(7)は、高速液体クロマトグラフィー装置(送液部分; PU-2089, 検出器部分; UV-2075, JASCO)で分析及び精製を行った。固定相は逆相カラム、chemcobond 5-ODS-H column(ケムコ)を用い、254 nmを検出波長とした。移動相の溶媒は0.1%酢酸水溶液/アセトニトリル混合溶液(酢酸:ナカライテスク,アセトニトリル:関東化学)を用いた。また、化合物(1)〜(7)の合成確認は高性能四重極質量分析装置API165E(Applied Biosystems)によって質量を測定することにより行った。化合物(1):C56H73N23O11;計算値1244.6、実測値1244.8;灰褐色粉体として25.8 mg (21 μmol)を得た。化合物(2):C60H75N23O11;計算値1294.6、実測値1294.8;灰褐色粉体として22.0 mg (17 μmol)を得た。化合物(3):C60H75N23O11;計算値1294.6、実測値1294.8;灰褐色粉体として11.7 mg (9.0 μmol)を得た。化合物(4):C56H73N23O11;計算値1244.6、実測値1244.6;灰褐色粉体として20.0 mg (16 μmol)を得た。化合物(5):C56H73N23O11;計算値1244.6、実測値1244.6;灰褐色粉体として11.4 mg (9.2 μmol)を得た。化合物(6):C56H72N22O11;計算値1229.6、実測値1229.6;淡黄色粉体として17.2 mg (14 μmol)を得た。化合物(7):C65H84N26O13;計算値1437.7、実測値1437.4;黄褐色粉体として16.0 mg (11 μmol)を得た。<実施例2>各化合物による、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAの結合阻害実験(1) EBNA1蛋白質における461−607番目のアミノ酸配列からなるペプチドが、ウイルスゲノムDNAと結合することが報告されている(J. Mol. Biol. (1998), v284, p.1273-1278)。そこで、上記ペプチドを含むGST-EBNA1(459-607)と、OriPにおけるDS領域を含むフラグメントとを作製し、化合物(1)〜(7)がEBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAとの結合を阻害できるかどうかを調べた。2−1:PCR法によるBiotin-OriP DNA fragmentの調製 DNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN社製)を用いてB95-8細胞 (American Type Culture Collection) からウイルスゲノムDNAを抽出した。このDNAを鋳型として、5’末端にビオチンが結合したOriP Fw(8841)プライマー(5’-CGAAGGAGAATGAAGAAGCAGGCGAAG-3’:配列番号11)、OriP Rev(9143)プライマー(5’-CCCCTTGTTAACCCTAAACGGGTAGCATATGC-3’:配列番号12)、及びKODplus DNA polymerase(TOYOBO社製)を用い、GeneAmp PCR System 2700(Applied Biosystems社製)によりPCRを行い、Biotin-OriP DNA fragmentを得た。2−2:GST-EBNA1の作成 2−1で抽出したDNAを鋳型として、5-EBNA1(G458)プライマー(5’-CCATGGGCAGGCGCAAAAAAGGAGGGTGGTTTGGAAAG-3’:配列番号13)、3-FLAG-EBNA1(P607)プライマー(5’-GTTATCCATCGAGCTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCGGCAGGCAAATCTACTCCATCGTC-3’:配列番号14)、及びLA Taq DNA polymerase(TAKARA BIO社製)を用い、GeneAmp PCR System 2700によりPCRを行い、DNA断片(約450 bp)を得た。このDNA断片をTOPO TA cloning kit (Invitrogen社製)を用いてpCR2.1 plasmidにライゲーションした後、コンピテント大腸菌DH5alpha (Invitrogen社製)に導入した。EBNA1(459-607)が挿入されたpCR2.1プラスミドを持つ大腸菌からアルカリ抽出法によりプラスミドを抽出し、NcoIとEcoRIによりFLAGタグが付加されたEBNA1(459-607)をコードするDNA断片を切り出し、発現ベクターpET42c (Novagen社製)のNcoI-EcoRI部位に挿入し、コンピテント大腸菌Rosetta2TM(DE3)pLysS株(Novagen社製)に導入した。 組換えプラスミドを導入した大腸菌を30℃でTerrific Broth培地により培養した後、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside、Merck-Calbiochem社製)を最終濃度1 mMになるように添加し、さらに6時間培養してGST-EBNA1の発現を誘導した。大腸菌を回収し、溶解液(20 mM Tris-Cl pH8, 500 mM NaCl, 5 mM EDTA, 0.5% NP-40, 0.01% SDS, 1 mM DTT, 0.5 mM AEBSF, 1% aprotinin)で懸濁し、超音波処理(BRANSON社製SONIFIER450)により大腸菌を破壊した後、上清を回収した。上清にGlutathione Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare社製)を加え、GST-EBNA1(459-607)が吸着したGlutathione Sepharose 4 Fast Flow粒子をペレットに回収した。これを上記溶解液で洗浄した後、溶出液(20 mM Glutathione (SIGMA-ALDRICH社製), 50 mM Tris-Cl pH8.5, 400 mM NaCl)に懸濁し、上清をGST-EBNA1(459-607)蛋白質溶液として回収した。2−3:OriP-GST-EBNA1のELISA assay Avidin-96 well plate(Nunc社製)の各ウェルに200 μLのブロック緩衝液 [1% BSA (bovine serum albumin Fraction V: SIGMA-ALDRICH社製), 0.1 mg/ml salmon sperm DNA (SIGM-ALDRICH社製), 1xPBS (日水製薬、PBS(-)粉末)]を入れ、4℃で一晩静置した。PBS溶液で置換洗浄した後、各ウェルに、Biotin-OriP DNA(最終濃度40 nM)及び化合物(1)〜(7)(最終濃度0.5-32 μM)を含む1% BSA-PBS溶液を注入した。室温10分静置した後、GST-EBNA1蛋白質を最終濃度 20 nMになるように加え、室温で1時間反応を行った。反応後、ウェルから反応液を除去し、PBS溶液で3回洗浄した後、1 μg/ml Anti-FLAG M2 antibody-Peroxidase conjugated(SIGMA-ALDRICH社製)を含む1% BSA-PBSを各ウェルに入れて室温1時間、EBNA1に付加したFLAGタグと反応させた。Anti-FLAG M2 antibody-Peroxidase conjugated液を除去後、各ウェルをPBS溶液で3回洗浄し、50 μLの反応液 [0.4 mg/ml OPD (o-phenylendiamine ; 和光純薬工業社製), 0.0003% 過酸化水素, 0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液 (pH 5;和光純薬工業社製)]を入れて発色反応を室温で5−10分間行った。50 μLの停止液(2% HCl水溶液)を入れた後、波長450 nmの発色を吸光度計で測定した。その結果を図3に示す。 図3に示すように、化合物(1)>(7)>=(6)>(5)>(4)>(1)>=(2)の順でEBNA1蛋白質のDNA結合能に対する阻害効果が高かった。<実施例3>各化合物による、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAの結合阻害実験(2) 次に、化合物(1)〜(7)がEBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAとの結合を阻害できるかどうかをEMSA(electrophoretic mobility shift assay)により調べた。 1.5mLプラスチックチューブ内で、最終的に20 μL容量になるように、最終濃度20 mM Tris-Cl pH 7.5, 150 mM NaCl, 2.5% glycerol, 5 mM MgCl2, 1 μg poly d(I-C)(GE Healthcare社製), 50 fmole Biotin-OriP DNA fragment(プローブとして使用), 0-3 μM化合物(1)〜(7)などを混和し、室温で5分間静置した。その後、GST-FLAG-EBNA1蛋白質を40 fmole加えて混和し、さらに室温で10分間静置した。ローディング液(TAKARA Bio社製;6xLoading buffer)を1x濃度になるように加え、等量ずつ4% acrylamide gel [1.6 mLの30% アクリルアミド/ビス (29:1) ミックス(Bio-Rad社製)、1.2 mLの5x TBE緩衝液(445 mM Tris-Borate, 10 mM EDTA)、100 μLの10%過硫酸アンモニウム水溶液(Bio-Rad社製)、9.2 mLの蒸留水、8 μLのTEMED(Bio-Rad社製)]にアプライし、電気泳動した。泳動後、ナイロンメンブレン(GE healthcare社製 Hybond-N+)にサンプルを電気的に転写し、Chemiluminescent Nucelic Acid Detecition Module(PIERCE社製)を用いて、ナイロンメンブレンに転写されたBiotin-DNA probeを検出し、X線フィルムに記録した。その結果を図4に示す。 図4に示すように、化合物(1)は、化合物(2)〜(7)に比べ、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAの複合体形成を最も顕著に阻害した。また、化合物(6)も、複合体形成の阻害活性を有していた。なお、これらの化合物のレーンで、複合体より分子量の大きいシグナルが検出されているが、これは、複合体における化合物結合の中間状態によるsupershiftによるシグナルであり、化合物が複合体に結合していることを示している。 以上のことから、化合物(1)がEBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAとの結合阻害剤として最も有用であると考えた。<実施例4>化合物(1)による、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAの結合阻害実験 次に、化合物(1)が、B95-8以外の一般的な細胞におけるEBウイルスゲノムDNAとEBNA-1との結合を阻害できるかどうかを実施例3と同様の方法により調べた。なお、プローブとしては、Daudi細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより)からウイルスゲノムDNAを抽出した後、実施例2の2−1に記載の方法と同様に作製したBiotin-OriP DNA fragmentを用いた。その結果を図5に示す。 図5に示すように、化合物(1)は、B95-8におけるEBウイルスゲノムDNAとEBNA-1との結合だけでなく、DaudiにおけるEBウイルスゲノムDNAとEBNA-1との結合を濃度依存的に阻害した。なお、ここでも、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAの複合体と化合物の結合によりsupershiftによるシグナルが検出され、化合物(1)が、複合体に結合していることが示される。<実施例5> 次に、化合物(1)とEBNA1が、一般的な細胞におけるEBウイルスゲノムDNAのサイト3に結合しているかどうかを調べるため、Daudi由来のEBウイルスゲノムDNAのサイト3の一部の塩基配列を置換した変異体を用いて化合物(1)とEBNA1が結合するかどうかを実施例3に記載の方法に準じて確認した。なお、野生型プローブとしては、以下のSite3 FwプローブとSite3 Revプローブとの2本鎖DNAプローブを用い、変異型プローブとしては、以下のMutant Site3 FwプローブとMutant Site3 Revプローブとの2本鎖DNAプローブを用いた。その結果を図6に示す。 図6に示すように、化合物(1)とEBNA1は、変異体と反応しないことから、化合物(1)とEBNA1はサイト3と結合することが示された。5’末端にビオチンが結合したSite3 Fwプローブ(5’-TGGGTAACATGTGCTATTGA-3’:配列番号15)Site3 Revプローブ(5’-TCAATAGCACATGTTACCCA-3’:配列番号16)5’末端にビオチンが結合したMutant Site3 Fwプローブ(5’-TGGGTAACATGAGTTTTTGA-3’:配列番号17)Mutant site3 Revプローブ(5’-TCAAAAACTCATGTTACCCA-3’:配列番号18)<実施例6>化合物(1)の細胞毒性試験(MTT assay) 細胞を10,000個/ウェルでまき、化合物(1)を最終濃度64, 32, 16, 8, 4, 2, 1, 0.5, 0.25, 0.125, 0 μMになるように加え、37℃で5%CO2の条件で5日間培養した。生存細胞を測定するため、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド;和光純薬工業社製)をPBSで溶解した溶液を最終濃度250 μg/mlになるように加えて合計150μL/ウェルにし、さらに4時間培養した。生存細胞から生成沈殿したホルマザンを溶解するために、70μLの20% SDS-0.001 M HClを加えて37℃で1晩静置した。吸光度計を用いて発色を波長570 nmで測定した。化合物(1)が0 μMのウェルの吸光度計の値を100%生存として各化合物濃度の生存割合を算出した。なお、細胞としては、EBV陰性細胞である、ヒト慢性骨髄性白血病由来K562、ヒトBリンパ腫由来DG75、及びバーキットリンパ腫由来RamosRA1と、EBV陽性細胞であるバーキットリンパ腫由来Raji、Daudi、及びNamalwaを用いた。これらの細胞は、全てヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手した。また、これらの細胞は、7% FBS (fetal bovine serum)と50 μg/ml カナマイシンを含むRPMI1640 (SIGM-ALDRICH社製)の培養液を用いて培養した。 図7に示すように、化合物(1)は、各種細胞に対して、少なくとも64μMの濃度まで毒性を示さなかった。<実施例7>各化合物のEBV感染細胞に対する増殖阻害試験(crystal violet assay) 実施例6で用いたEBV陽性細胞とは異なるタイプであり、EBVの潜伏感染型がタイプIIIで、細胞不死化に寄与する種々のウイルス遺伝子を発現するB95-8細胞を1,000個/ウェルで播種し、化合物(1)、(4)、及び(6)を最終濃度100, 50, 25, 12.5, 6.25, 0 μMになるように加え、37℃で5%CO2の条件で5日間培養した。生存細胞を測定するため、最終濃度4%のホルマリン(和光純薬工業社製)でウェル中の生存細胞を固定した後、培養上清を除去し、0.4% crystal violet(和光純薬社製)を100μL/ウェル加え、さらに30分間細胞を染色した。脱色後、crystal violetで染色された生存細胞を吸光度計を用いて波長590 nmで測定した。化合物が0 μMのウェルの吸光度計の値を100%生存として各化合物濃度の生存割合を算出した。なお、B95-8細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。また、これらの細胞は、7% FBS (fetal bovine serum)と50 μg/ml カナマイシンを含むRPMI1640 (SIGM-ALDRICH社製)の培養液を用いて培養した。 図8に示すように、化合物(1)及び(6)は、EBV感染B95-8細胞の増殖阻害作用を有しており、化合物(1)は、EBV陰性細胞で毒性を示さない64μMで、B95-8細胞の細胞増殖率を50%以下に低下させる増殖阻害活性を示し、化合物(6)も、化合物(1)に匹敵するB95-8細胞増殖阻害活性を示す。 B95-8細胞は、EBV感染で不死化しているが、非がん細胞株であり、その増殖はウイルス遺伝子群の発現に依存している。従って、B95-8細胞は、EBV感染症を引き起こすEBV潜伏感染状態の細胞に相当する細胞株であり、この細胞の増殖阻害作用を有する化合物(1)及び(6)は、EBV関連リンパ増殖症(例えば、移植後リンパ増殖性疾患やエイズ関連リンパ腫など)などの上述のEBウイルス感染症の治療、予防又は抑制に有用である。 下式(1)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。 請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。 請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有するEBNA1蛋白質のDNA結合阻害剤。 請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する抗EBウイルス薬。 【課題】EBウイルスが起因となる疾患の治療または予防に有用な、EBNA1の機能を阻害する化合物及びその用途を提供すること。【解決手段】下式(1)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物は、EBNA1蛋白質とウイルスゲノムDNAとの結合を阻害する作用、すなわち、EBNA1蛋白質のDNA結合能を阻害する作用を有することから、EBNA1蛋白質の機能阻害剤として有用である。【化1】【選択図】図3配列表