タイトル: | 公開特許公報(A)_プロポフォール含有水中油型エマルション組成物 |
出願番号: | 2010150324 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/05,A61K 9/107,A61K 47/02,A61K 47/24,A61K 47/44,A61K 47/14 |
泉 泰之 永田 幸三 JP 2012006898 公開特許公報(A) 20120112 2010150324 20100630 プロポフォール含有水中油型エマルション組成物 富士フイルム株式会社 306037311 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 福田 浩志 100099025 泉 泰之 永田 幸三 JP 2010117634 20100521 A61K 31/05 20060101AFI20111209BHJP A61K 9/107 20060101ALI20111209BHJP A61K 47/02 20060101ALI20111209BHJP A61K 47/24 20060101ALI20111209BHJP A61K 47/44 20060101ALI20111209BHJP A61K 47/14 20060101ALI20111209BHJP JPA61K31/05A61K9/107A61K47/02A61K47/24A61K47/44A61K47/14 13 OL 13 4C076 4C206 4C076AA17 4C076BB13 4C076CC01 4C076DD21A 4C076DD46E 4C076DD46W 4C076DD63F 4C076EE53E 4C076FF56 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA17 4C206MA03 4C206MA05 4C206MA42 4C206MA86 4C206NA08 4C206ZA04 4C206ZA05 本発明は、プロポフォール含有水中油型エマルション組成物に関する。 プロポフォール(化学名2,6−ジイソプロピルフェノール)は、水にほとんど溶けない油溶性薬物であるため、脂肪乳剤として、静注用全身麻酔剤および近年は静注用鎮静剤として使用されている。この脂肪乳剤は速やかな麻酔導入、速やかな覚醒、覚醒後の吐き気、嘔吐等の不快感が少ない等の特徴を有し、外科手術に広く使用されており、近年は集中治療室等において鎮静目的にも使用されている。しかしながらプロポフォール脂肪乳剤には、静注時高い頻度で強い血管痛が発現する副作用が多く報告されている(非特許文献1)。この血管痛を緩和するため、4℃に冷却して静注する、塩酸リドカイン又はメシル酸ナフアモスタットと混注する、投与数分前にフェンタニルなどの麻薬を静注するなどを含む各種方法が知られている。しかしながらこれら方法は単独で用いても十分な効果はなく、煩雑で簡便性に欠ける。 血管痛を緩和するその他の方法としては、溶媒を変更する方法が報告されている。 具体的には、脂肪乳剤の油相に用いる油性成分を、従来のダイズ油から、ダイズ油と中鎖脂肪酸トリグリセリドとの質量比50対50の混合物とすることにより、注射時の疼痛が軽減されたとの報告がある(非特許文献2)。 油性成分としてダイズ油と中鎖脂肪酸トリグリセリドとの質量比50対50の混合物を用いた製剤として、1%プロポフォール注「マルイシ」、2%プロポフォール注「マルイシ」(以上、丸石製薬社)、Propofol Lipuro 1%、Propofol Lipuro 2%(以上、B. Braun Melsungen社)が市販されている。 一方、血管痛を緩和するために特許文献1では、リドカイン等の局所麻酔剤を用時混合するためのプロポフォール製剤が開示されており、このプロポフォール製剤に、安定化剤として特定のリン脂質、リン脂質誘導体または脂肪酸を利用することを提案している。 また、特許文献2には、血管痛を軽減させるため、プロポフォール、油性成分及び乳化剤をそれぞれ所定の配合量で含み、乳化粒子の平均粒径が180nm以下のプロポフォール含有脂肪乳剤が開示されており、このプロポフォール含有脂肪乳剤は、乳化安定化剤等を含まずに優れた乳化安定性を有すると記載されている。国際公開2004/052354号パンフレット国際公開2006/112276号パンフレットBritish Journal of Anaethsia,1991, Vol.67, pp.281−284Anesth Analg 1997, Vol.85, pp.1399-1403 しかしながら、ダイズ油と中鎖脂肪酸トリグリセリドとの質量比50対50の混合物とした場合や、各成分の配合量を調整すると共に乳化粒子を180nm以下とした場合でも、血管痛の低減としては充分でない。また、局所麻酔剤を配合することは、プロポフォール製剤自身による血管痛の緩和を達成するものではなく、更には局所麻酔剤の配合によって製剤の安定性を損う。 従って本発明は、注射時の血管痛が充分に低減されたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することを目的とする。 本発明は以下のとおりである。 [1] プロポフォールと、脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下である中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む油性成分と、水と、界面活性剤と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [2] 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸鎖の平均炭素数が8.8以下である[1]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [3] 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸鎖の平均炭素数が8.2以下である[1]または[2]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [4] 前記油性成分中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が45質量%以上である[1]〜[3]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [5] 前記油性成分中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が45質量%〜55質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [6] 前記油性成分が、長鎖脂肪酸トリグリセリドを含む[1]〜[5]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [7] 前記長鎖脂肪酸トリグリセリドが、ダイズ油である[6]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [8] 前記界面活性剤が、リン脂質を含む[1]〜[7]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [9] 前記界面活性剤の含有量が、組成物全体の容積に対して0.4質量%〜10質量%である[1]〜[8]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [10] 前記リン脂質が、レシチンである[8]または[9]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [11] 更に、安定化剤を含む[1]〜[10]のいずれかに記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [12] 前記安定化剤が、脂肪酸及び脂肪酸塩からなる群より選択された少なくとも一種である[11]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 [13] 前記安定化剤の含有量が組成物全体の容積に対して0.01質量%〜0.1質量%である[11]または[12]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 本発明によれば、注射時の血管痛が充分に低減されたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することができる。 本発明のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物は、プロポフォールと、脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下である中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む油性成分と、水と、界面活性剤と、を含む。 本発明によれば、脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下の中鎖脂肪酸トリグリセリドを油性成分中に30質量%以上含むことによって、注射時の血管痛を充分に低減可能なプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することができる。なお、本発明においてプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を、単に「エマルション組成物」又は「組成物」ということがある。 本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。 また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。 本明細書において、例えば本発明のエマルション組成物を構成する各成分の配合量(濃度)について用いられる「w/v%」は、各成分質量(g)/全組成物の容積100mLを意味する。組成物の全容積に対する質量で表現する場合も、特に断らない限り、同様に、全組成物の容積100mLに対する各成分質量(g)を意味する。 また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。 以下、本発明について説明する。 プロポフォール(propofol)は、2,6−ジイソプロピルフェノール (2,6-diisopropylphenol)の一般名であり、例えば特開2002−179562号公報にも記載されているとおり、医薬品分野で全身麻酔薬、鎮静薬などとして利用できることの知られている化合物である。該化合物の水に対する溶解性は、その有効投与量との関連においてかなり低い。本発明のエマルション組成物において、該プロポフォールは、一般には、全エマルション組成物に対して0.1〜5w/v%の量で存在する。 本発明のエマルション組成物は、油性成分として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む。 本発明において、中鎖脂肪酸トリグリセリドとは、含有するトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖の平均炭素数が12以下の油脂を意味する。 本発明において、中鎖脂肪酸トリグリセリドとして、脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下の脂肪酸トリグリセリドを使用する。中鎖脂肪酸トリグリセリドにおける脂肪酸の平均炭素数とは、中鎖脂肪酸トリグリセリドに含まれるトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖(本明細書中では「構成脂肪酸」ということがある)の炭素数(例えば、カプリル酸であれば8、カプリン酸であれば10)を構成脂肪酸の組成比によって加重平均したものである。 血管痛緩和の観点から中鎖脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸鎖の平均炭素数は、8.8以下であることが好ましく、8.6以下であることがより好ましく、8.2以下であることが更により好ましく、8.0以下であることが最も好ましい。 本発明に使用する中鎖脂肪酸トリグリセリドは、構成脂肪酸鎖の平均炭素数が上述した範囲内であれば、構成脂肪酸に特に制限はなく、例えば炭素数が6以上12以下の脂肪酸を挙げることができ、これらの脂肪酸は飽和又は不飽和であってもよい。好ましくは、主として炭素数6以上12以下の飽和脂肪酸のトリグリセリドで構成されたものである。また、天然植物油由来のものであってもよく、合成脂肪酸のトリグリセリドであってもよい。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、構成脂肪酸鎖の平均炭素数が上述した範囲内であれば、1種単独で用いられてもよく、構成脂肪酸鎖の平均炭素数が異なる2種以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物であってもよい。2種以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを混合する場合には、中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物の全体として、構成脂肪酸の平均炭素数が上述した範囲内になればよい。 本発明に使用可能な中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、「医薬品添加物規格2003(薬事日報社)」の「中鎖脂肪酸トリグリセリド」の規格に適合するものを挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリドの市販品としては、商品名:「ココナード」(COCONARD TM 、花王社)、「ODO TM 」(日清製油社)、「ミグリオール」(Myglyol TM 、SASOL社)、「パナセート」(Panasate TM 、日本油脂社)などを例示できる。例えば上述のココナードのうち、ココナードRK及びココナードMTなどが、また、上述のミグリオールのうち、ミグリオール810などが、それぞれ、脂肪酸の平均炭素数が9.9以下の中鎖脂肪酸トリグリセリドに該当する。 本発明における中鎖脂肪酸トリグリセリドは、油性成分の全質量に対して30質量%以上である。中鎖脂肪酸トリグリセリドが30質量%未満では、血管痛緩和効果が充分とは言えず、本発明の効果を得ることができない。血管痛緩和効果の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセリドの油性成分中の割合は、45質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。 2種以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを混合する場合には、混合後の合計量が油性成分中の30質量%以上であればよい。 また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、含水率が高く、加水分解を生じやすい場合があるため、本エマルション組成物における油性成分は、長鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、ダイズ油)などの他の油性成分と混合物であることが好ましい。このような混合物の場合、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、エマルション組成物の安定性の観点から80質量%以下であることが好ましく、45質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。 本エマルション組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリド以外の油性成分を、薬学的に許容可能な油性成分であれば特に制限はなく、含むことができる。本発明のおける油性成分としては、例えば、植物油(即ち天然のトリグリセリド)、化学合成トリグリセリド、動物油などの長鎖脂肪酸トリグリセリド;鉱油;合成油;精油;エステル油など、もしくはこれらの混合物が挙げられる。ただし、本発明における油性成分には、プロポフォール、後述する界面活性剤及び脂肪酸等は含まれない。 他の油性成分としては、注射剤への使用実績の観点から長鎖脂肪酸トリグリセリドであることが好ましい。本明細書において長鎖脂肪酸トリグリセリドとは、含有するトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖の平均炭素数が12より大きい油脂を意味する。脂肪酸鎖を構成する脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。長鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、天然のトリグリセリドに相当する植物油と、化学合成トリグリセリドとを挙げることができる。 植物油の具体例としては、例えばダイズ油、綿実油、菜種油、胡麻油、サフラワー油、コーン油、落花生油、オリーブ油、ヤシ油、シソ油、ヒマシ油などを挙げることができる。中でも、注射剤への使用実績の観点からダイズ油が好ましい。 ダイズ油(大豆油)とは、マメ科ダイズ属の植物の種子から得た植物油であり、公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることができる。例えば日本薬局方に記載の「ダイズ油」の規格に適合するものを使用できる。ダイズ油の市販品としては、「日本薬局方 ダイズ油」(カネダ社)、「大豆油YM」(日清オイリオ社)、SR-SOYBEAN-LQ-(JP) (クローダジャパン社)などを例示できる。 化学合成トリグリセリドとしては、例えば2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセロールを例示できる。 長鎖脂肪酸トリグリセリドは、本エマルション組成物に含まれる場合、油性成分の全質量に対して70質量%未満とすることができ、20質量%〜65質量%であることが好ましく、エマルション組成物の安定性の観点から、具体的には油性成分の全質量の55質量%以下、特に45質量%よりも多く55質量%以下であることが特に好ましい。 これらの油性成分は、1種を単独で利用することもでき、2種以上を併用することもできる。なお、2種以上を併用する場合は、併用される各成分は、植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、動物油、鉱油などの同一群から選択される必要はなく、異なる群から選択することが可能である。 油性成分は、エマルション組成物の全容積に対して2〜30w/v%であることが好ましく、5〜25w/v%であることがより好ましい。2w/v%以上であれば、エマルション組成物中に十分な濃度の薬剤を含有することができ、30w/v%以下であれば、エマルション組成物の安定性を損なうことがなく、それぞれ好ましい。 本発明のエマルション組成物は、プロポフォールを含むエマルション組成物を構成するために界面活性剤を含む。 本発明においては、エマルション組成物の安定性の観点から界面活性剤としてリン脂質を含むことができる。 界面活性剤としてはリン脂質を挙げることができ、リン脂質としては、天然のリン脂質であるレシチンを挙げることができる。レシチンとしては、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、大豆レシチン、大豆ホスファチジルコリン、それらを水素添加した水添卵黄レシチン、水添卵黄ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添大豆ホスファチジルコリンなどを挙げることができる。 また、界面活性剤は化学合成したリン脂質でもよい。該化学合成したリン脂質には、ホスファチジルコリン(ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンなど)、ホスファチジルグリセロール(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロールなど)、ホスファチジルエタノールアミン(ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなど)などが含まれる。 また他の界面活性剤としては、医薬として許容可能な非イオン性界面活性剤及び医薬として許容可能なイオン性界面活性剤を挙げることができる。このような他の界面活性剤としては、例えば、ポロキサマー及びプルロニック系の界面活性剤、polycamines(テトロニック系の界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリビニルピロリドン、デスオキシコール酸類、ゼラチン類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、アルブミン類、ポリオキシエチレンヒドロキシステアレート(例えば、Solutol HS 15、BASFジャパン社)などを例示することができる。 これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して利用することができる。 本発明における界面活性剤としては、生体適合性の観点からリン脂質を含むことが好ましく、中でも、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、大豆レシチンおよび大豆ホスファチジルコリンがより好ましく、特に卵黄レシチンが好ましい。 界面活性剤は、エマルション組成物を形成できる範囲であればその含有量に特に制限はないが、エマルション組成物の全容積に対して0.4〜10w/v%であることが好ましく、0.5〜7w/v%であることがより好ましく、0.6〜2w/v%が特に好ましい。0.4w/v%以上であれば、エマルション組成物の安定性が充分であり、10w/v%以下であれば、投与対象への投与時の影響をほとんど考慮する必要がない 本発明のエマルション組成物は、当業界で公知の方法(乳化分散方法)によって調製することができる。 例えば、水相と油粗を混合して粗乳化後、得られる粗乳化液を適当な高圧乳化機などを利用して乳化(精乳化)する方法によることができる。粗乳化は、より詳しくは、例えば特殊機化工業社製T.K.ホモミキサーなどのホモミキサーを用いて、通常5000回転/分以上で5分間以上を要して実施できる。また、超音波ホモジナイザーを用いることもできる。精乳化は、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどを用いて実施できる。高圧ホモジナイザーを用いる場合、一般には約200kg/cm2以上の圧力条件下に、1〜50回程度、好ましくは1〜20回程度通過させることにより実施することができる。これらの混合乳化操作は、常温下に実施してもよく、若干の加温操作(通常40〜80℃程度)を採用して実施してもよい。 本発明では、所望により、上述した界面活性剤とは別に、乳化安定性を改善するための安定化剤を更に添加してもよい。このような安定化剤としては、脂肪酸及びその塩を挙げることができ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 本発明で好ましく用いられる脂肪酸としては、脂肪酸の炭素数が12以上18以下の脂肪酸を例示することができ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸等が挙げられるまた、脂肪酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等の金属塩や、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン等の塩基性アミノ酸塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。塩の種類は、用いられる脂肪酸の種類等により適宜選択されるが、溶解性及び分散液の安定性の観点から、ナトリウムなどの金属塩が好ましい。 これらの安定化剤の中でも、注射剤への使用実績の観点から、オレイン酸、又はオレイン酸ナトリウムであることが好ましく、オレイン酸ナトリウムであることが更に好ましい。 安定化剤のエマルション組成物における含有量には特に制限はないが、エマルション組成物の安定性の観点から、エマルション組成物の容積に対して0.01w/v%〜0.1w/v%であることが好ましく、0.02w/v%〜0.09w/v%であることがより好ましい。 本発明のエマルション組成物には、更に、特に必要ではないが、所望により、この種のエマルション組成物中に添加配合できることの知られている各種の添加剤の適当量を更に添加配合することもできる。該添加剤としては、例えば酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤、等張化剤などを挙げることができる。 酸化防止剤の具体例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム(抗菌剤としても作用する)、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムなどを例示することができる。抗菌剤としては、例えばカプリル酸ナトリウム、安息香酸メチル、メタ重亜硫酸ナトリウム(酸化防止剤としても作用する)、エデト酸ナトリウムなどが挙げられる。 pH調整剤としては、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、水酸化ナトリウムなどを使用できる。 等張化剤としてはグリセリン;ブドウ糖、果糖、マルトースなどの糖類;ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール類;塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどの塩類などを使用できる。 これらの内、油溶性材料は、エマルション組成物を構成する油性成分などに予め混合して利用することができる。水溶性材料は、注射用水に混合するか、または得られる乳化液の水相中に添加配合することができる。これらの添加配合量は、当業者にとり自明であり、従来知られているそれらの添加配合量と特に異ならない。 本エマルション組成物は、必要に応じてpHを調整した後、常法に従って、濾過、滅菌して製品とすることができる。濾過方法としては、例えばメンブランフィルターを用いた公知の方法を適用すればよく、また滅菌方法としては、例えば高圧蒸気滅菌(例えば、121℃、12分)、熱水浸漬滅菌及びシャワー滅菌などの公知の方法を適用すればよい。 本エマルション組成物のpHは、通常、pH5.0〜9.0、好ましくはpH6.0〜8.0とすることができる。 本エマルション組成物の注射時における血管痛緩和効果は、例えば、水相中のプロポフォール濃度により評価することができる。 即ち、水相中に存在する遊離プロポフォール濃度と血管痛の発生率に相関があることが知られており、ダイズ油と中鎖脂肪酸トリグリセリドとの質量比50対50の混合物を油相として用いた脂肪乳剤で血管痛が減少する要因は、水相中に存在する遊離プロポフォール濃度の低下であると考えられることが報告されている。(Propofol Archives No.6, http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/masuika/propo1/index.php)。 以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。(実施例で使用した原料) プロポフォール: 「2,6−ジイソプロピルフェノール」(和光純薬工業社) 日本薬局方ダイズ油: 「日本薬局方 ダイズ油」(カネダ社) 日本薬局方濃グリセリン: 「日本薬局方濃グリセリン」(坂本薬品工業社) オレイン酸ナトリウム: 「オレイン酸ナトリウム」(和光純薬工業社) 精製卵黄レシチン: 「卵黄レシチンPL100−M」(キユーピー社)(脂肪酸組成の測定) 中鎖脂肪酸トリグリセリドであるココナードRK、ココナードML(以上、花王社)、ミグリオール810(Sasol社)につき、下記の方法で脂肪酸組成を測定した。 試料を0.030g採取し、0.5mol/Lの水酸化ナトリウムのメタノール溶液1.5mLを添加し、100℃で9分間加熱してけん化を行った。三ふっ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液2.0mLを添加して100℃で7分間加熱し、メチルエステル化を行った。 ヘキサン3mLおよび飽和食塩水5mLを添加し、ヘキサン層を採取し、ガスクロマトグラフ法[機種:GC−1700(島津製作所社、検出器:FID、カラム:DB−23(J&W SCIENTIFIC社)φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm、温度:試料注入口 250℃、検出器 250℃、カラム 50℃(1分保持)→10℃/分昇温→170℃→1.2℃/分昇温→210℃、試料導入系:スプリットレス、ガス流量:ヘリウム(キャリヤーガス)1.5mL/分、ヘリウム(メイクアップガス)80kPa、ガス圧力:水素60kPa、空気50kPa]にて測定を行った。得られた結果を表1に示す。[実施例1〜4、比較例1〜2](プロポフォール含有エマルション組成物の作製) 表2に記載の各成分を表中の含有量となるように用いて、以下の手順でプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を作製した。 各中鎖脂肪酸トリグリセリドとダイズ油を混合し、プロポフォールを添加し、40℃で攪拌して溶解して、油相を作製した。グリセリンを水に溶解し、水相を作製した。油相に精製卵黄レシチンを添加して混合した後、水相を添加し、超音波ホモジナイザー(US−600T、日本精機製作所社)で4分間超音波を照射し、粗乳化した。これを高圧乳化機(スターバースト ミニラボ機、スギノマシン社)を用いて245MPaの条件で1回通過させた。これを、オートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて高圧蒸気滅菌し、エマルション組成物を作製した。[エマルション組成物の評価] 上記の実施例1〜4及び比較例1〜2と、比較例3として市販品(1%プロポフォール注「マルイシ」、丸石製薬社)について、水相プロポフォール濃度を測定した。測定方法は、以下の2種類を使用した。なお、測定方法Aでは、各エマルション組成物について、オレイン酸ナトリウムを含有しないものに代えて行った。結果をそれぞれ表3に示す。表3において「N.T.」は未確認を意味する。 なお、上記市販品の組成(1mL中)は、以下のとおりである。 プロポフォール 10mg ダイズ油 50mg 中鎖脂肪酸トリグリセリド 50mg 精製卵黄レシチン 12mg 濃グリセリン 25mg オレイン酸ナトリウム 0.3mg(測定方法A) エマルション組成物中の油相中および水相中のプロポフォール濃度は、プロポフォールの油相と水相における分配係数によって決まると考えられる。そのため、プロポフォールを溶解させた油相と水相とを接触させて長時間静置した後、水相濃度を測定することにより、油相の組成と水相中プロポフォール濃度の関係を調べることができる。 測定は以下のように行った。油相と水相を接触させた状態で、振とう試験機(SHAKER SRR-2、アズワン社)を用いて毎分100往復で1時間振とうした後、23℃で16時間静置した。その後、水相を採取し、高速液体クロマトグラフィー[カラム:TSK−gel ODS−100Z(東ソー社)、溶離液A:0.1質量%酢酸水溶液、溶離液B:0.1質量%酢酸含有メタノール、流量:溶離液A0.25mL/分、溶離液B0.75mL/分、カラム温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:270nm、注入量:10μL]にてプロポフォール濃度の測定を行った。結果を表3に示した。(測定方法B) 透析デバイス(RED Device、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて、各測定対象のエマルション組成物(試料)0.5mLとグリセリン水溶液(各測定対象のエマルション組成物のグリセリン濃度と同一のグリセリン濃度)0.3mLとを透析膜をはさんで接触させた。この状態で、毎分50往復の条件で25℃にて4時間振とうした後、グリセリン水溶液を回収して高速液体クロマトグラフィー[カラム:TSK−gel ODS−100Z(東ソー社)、溶離液A:0.1質量%酢酸水溶液、溶離液B:0.1質量%酢酸含有メタノール、流量:溶離液A0.25mL/分、溶離液B0.75mL/分、カラム温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:270nm、注入量:10μL]にてプロポフォール濃度を測定した。結果を表3に示した。 水相プロポフォール濃度は、表3に示されるように測定方法Aと測定方法Bとでは測定値は異なるものの、傾向は一致した。 実施例1〜4のエマルション組成物では、平均炭素数が9.9以下の脂肪酸鎖を有する中鎖脂肪酸トリグリセリドを油性成分中30質量%以上含むので、平均炭素数が10.0以上の脂肪酸鎖を有する中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する比較例1及び、中鎖脂肪酸トリグリセリドの油性成分中の割合が25質量%の比較例2と比較して、水相プロポフォール濃度を低減できた。また、実施例1〜4のエマルション組成物の水相プロポフォール濃度は、比較例3の水相プロポフォール濃度よりも低かった。 中鎖脂肪酸トリグリセリドの油性成分中の質量比が50%の試料について測定方法Aで測定した水相プロポフォール濃度と、測定方法Bで測定した水相プロポフォール濃度とを比較すると、測定方法Aの値が測定方法Bの値の87〜91%となり、平均89%となった。このことから比較例3の測定方法Aに相当する値を推測すると、11.6程度となる。 このように、実施例1〜4に示されるように、中鎖脂肪酸トリグリセリド中の脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下であり、このような中鎖脂肪酸トリグリセリドを油性成分中30質量%以上含有するエマルション組成物は、水相プロポフォール濃度を低減することができる。 従って本発明によれば、プロポフォール含有水中油型エマルション組成物の血管痛を従来技術と比較して緩和することができる。 プロポフォールと、 脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下である中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む油性成分と、 水と、 界面活性剤と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸鎖の平均炭素数が8.8以下である請求項1に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸鎖の平均炭素数が8.2以下である請求項1または請求項2に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記油性成分中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が45質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記油性成分中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が45質量%〜55質量%である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記油性成分が、長鎖脂肪酸トリグリセリドを含む請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記長鎖脂肪酸トリグリセリドが、ダイズ油である請求項6に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記界面活性剤が、リン脂質を含む請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記界面活性剤の含有量が、組成物全体の容積に対して0.4質量%〜10質量%である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記リン脂質が、レシチンである請求項8または請求項9に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 更に、安定化剤を含む請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記安定化剤が、脂肪酸及び脂肪酸塩からなる群より選択された少なくとも一種である請求項11に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 前記安定化剤の含有量が組成物全体の容積に対して0.01質量%〜0.1質量%である請求項11または請求項12に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。 【課題】注射時の血管痛が充分に低減されたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供する。【解決手段】プロポフォールと、脂肪酸鎖の平均炭素数が9.9以下である中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む油性成分と、水と、界面活性剤と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。【選択図】なし