タイトル: | 公開特許公報(A)_骨強化剤 |
出願番号: | 2010107626 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/01,A61P 19/00 |
麻見 直美 西野 輔翼 JP 2011236141 公開特許公報(A) 20111124 2010107626 20100507 骨強化剤 国立大学法人 筑波大学 504171134 学校法人立命館 593006630 辻田 幸史 100106611 清水 善廣 100087745 阿部 伸一 100098545 麻見 直美 西野 輔翼 A61K 31/01 20060101AFI20111028BHJP A61P 19/00 20060101ALI20111028BHJP JPA61K31/01A61P19/00 2 OL 6 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206BA02 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA96 本発明は、骨の強度を強化する骨強化剤に関する。 高齢化社会が進む中、骨の健康が注目されていることは周知の通りである。骨は加齢とともに強度が弱くなる。その程度が病的レベルにある場合、脊髄や大腿骨頸部などの骨折を容易に引き起こすことになり、骨粗鬆症として認識される。従って、高齢期における骨の強度の弱体化を抑制するための様々な研究が行われている。 下記の化学構造式で表されるリコピンは、トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツなどの野菜や果物に含まれるカロテノイドの一種で、生体内において抗酸化作用を有することなどが知られている。近年、リコピンの骨に対する作用に関する研究が行われており、例えば非特許文献1では、老年性骨粗鬆症モデルマウスに0.05%あるいは0.25%のリコピン添加食を摂取させると、骨密度の低下が抑制されることが報告されている。 このように、加齢に伴う骨の強度の弱体化を抑制することは、高齢期の生活の質(QOL)を維持するために重要であるが、その一方で、発育期や成長期などにおいて骨の強度を強化することも重要であり、その効果は高齢期における骨の強度の弱体化の抑制をもたらす。山根理学、稲熊隆博、石見桂子、老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)の骨密度に対するリコピン摂取の影響、第25回日本骨代謝学会学術集会:228(2007) そこで本発明は、骨の強度を強化する骨強化剤を提供することを目的とする。 本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、リコピンは、非特許文献1において報告されている骨密度の低下抑制作用を発揮する投与量よりも少ない投与量で、健常レベルの骨の強度を強化すること、その効果は運動負荷と組み合わせることで増強されることを知見した。 上記の知見に基づいてなされた本発明の骨強化剤は、請求項1記載の通り、リコピンを有効成分として骨の強度を強化するものであることを特徴とする。 また、請求項2記載の骨強化剤は、請求項1記載の骨強化剤において、運動負荷と組み合わせて投与されるものであることを特徴とする。 本発明によれば、骨の強度を強化する骨強化剤を提供することができる。 本発明の骨強化剤は、リコピンを有効成分として骨の強度を強化するものであることを特徴とする。本発明は、リコピンが、投与しないと骨の強度が弱体化する状態にある投与対象に対して骨の強度の弱体化を抑制するために必要とする投与量よりも少ない投与量で、健常レベルの骨の強度を投与しない場合よりも強化することを見出したことに基づいてなされたものであり、このリコピンの作用は、非特許文献1からは予測することができないものである。 本発明の骨強化剤の有効成分となるリコピンは、トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツなどのリコピンを含有する野菜や果物から単離精製されたものであってもよいし(精製の程度は特段限定されるものではなくリコピン含有組成物のようなものでもよい)、化学合成されたものであってもよい。リコピンは、自体公知の方法によって顆粒剤や錠剤やカプセル剤などに製剤化して服用したり、ドリンク剤の形態で飲用したりすることで、優れた骨強化作用を発揮する。投与対象へのリコピンの投与量は、例えば1mg/日〜10g/日の範囲において適宜決定することができる。また、リコピンは、種々の形態の食品(サプリメントを含む)に、骨強化作用を発揮するに足る有効量を添加し、骨強化食品などとして食してもよい。 本発明の骨強化剤は、運動負荷と組み合わせて投与されることで、その効果が増強される。運動負荷の方法や程度は特段限定されるものではなく、ウォーキングやジョギングなどからスポーツトレーニングや競技スポーツなどに至るまで、どのようなものであってもよい。 以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。実施例1:発育期の雄ラットに対するリコピンの骨強化作用 国立大学法人筑波大学動物実験委員会の倫理審査承認のもとに以下の実験を行った。(実験方法) 実験動物として6週齢のWistar系雄ラットを用い、以下の3群を設定した。(1)リコピン非添加のコントロール食を摂取させる群(C群:n=6)(2)リコピン添加食を摂取させる群(L群:n=7)(3)リコピン添加食を摂取させ、かつ、運動負荷として走行トレーニングを行う群(LE群:n=8) なお、リコピンは、綿実油に溶解したLyc−O−Mato6%(Lyco−Red Natural Products Industries Ltd.,Beer−Sheva,Israel)を飼料に混ぜ込み、最終濃度を50ppm(0.005%)に調節して投与した。すべてのラットは、各々、個別ケージ(15×25×19.5cm3)で飼育し、飼料および脱イオン蒸留水を自由摂取させ、10週間飼育した。飼育環境は、室温23±1℃、湿度50±5%、12時間ごとの明暗サイクル(明期は8:00〜20:00)とした。飼育期間中、LE群のラットに対しては、小動物用のトレッドミル(KN−73、夏目製作所、東京)を用いて週6回走行トレーニングを実施した。走行トレーニングは、1週間の慣れ期間を設け、ランニングスピードおよび走行時間を漸増的に上げ(10〜25m/分、10〜60分)、最終的に25m/分で60分/日の走行ができるように順応させた。順応後の走行トレーニングは、運動開始時および終了時に各16m/分で5分/日の軽運動を加えた上で、25m/分で60分/日で行い、1日に計70分の走行トレーニングとし、9週間実施した。コントロール食とリコピン添加食の詳細を表1に示す。(実験結果) 飼育期間経過後、各々のラットの、腰椎と脛骨の骨密度、大腿骨の骨重量と長さと破断特性を測定した。腰椎と脛骨の骨密度の測定は、解剖によって腰椎と脛骨を採取した後、周囲軟部組織を十分に除去してから二重エネルギーX線骨密度測定装置(DXA装置:Aloka DCS−600R)を用いて行った。腰椎は第3〜6腰椎を測定に使用した。大腿骨の骨重量と長さの測定は、解剖によって大腿骨を採取した後、周囲軟部組織を十分に除去してから行った。その後、大腿骨の破断特性の測定を行った。測定は、骨破断特性測定装置(DYN−1255:飯尾電気)を用い、支点間距離1cm、プランジャースピード100mm/分、フルスケール50kg、チャートスピード120cm/分の条件で大腿骨の骨幹部中央を破断し、破断強度(破断力および破断エネルギー)を求めることで行った。骨破断力は骨の強さを示し、骨が破断されたときの荷重(重力加速度)で表される(単位:dyn)。また、骨破断エネルギーは骨が破断されるまでの仕事量(1dynの力が加わったときにその方向に動いた仕事量)を示す(単位:erg)。データはすべてMean±SEで表した。結果を表2に示す。表2から明らかなように、発育期の雄ラットに0.005%のリコピン添加食を摂取させることで、骨の強度が強化され、その効果は走行トレーニングと組み合わせることで増強された。従って、この実験と非特許文献1から、リコピンは、投与しないと骨の強度が弱体化する状態にある投与対象に対して骨の強度の弱体化を抑制するために必要とする投与量の1/10の投与量で、健常レベルの骨の強度を投与しない場合よりも強化することがわかった。製剤例1:錠剤 リコピン5g、乳糖80g、ステアリン酸マグネシウム15g、合計100gを均一に混合し、常法に従って錠剤とした。製剤例2:顆粒剤 リコピン10g、澱粉35g、乳糖55g、合計100gを均一に混合し、常法に従って顆粒剤とした。製剤例3:ビスケット リコピン1g、薄力粉32g、全卵16g、バター16g、砂糖24g、水10g、ベーキングパウダー1g、合計100gを用い、常法に従ってビスケットとした。 本発明は、骨の強度を強化する骨強化剤を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。 リコピンを有効成分として骨の強度を強化する骨強化剤。 運動負荷と組み合わせて投与される請求項1記載の骨強化剤。 【課題】 骨の強度を強化する骨強化剤を提供すること。【解決手段】 本発明の骨強化剤は、リコピンを有効成分として骨の強度を強化するものであることを特徴とする。本発明の骨強化剤は、運動負荷と組み合わせて投与されることで、その効果が増強される。【選択図】 なし