タイトル: | 公開特許公報(A)_梅酒及びその製造方法 |
出願番号: | 2010100393 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12G 3/04 |
長尾 公明 西畑 徹平 JP 2011229419 公開特許公報(A) 20111117 2010100393 20100423 梅酒及びその製造方法 マンズワイン株式会社 390032193 栗原 浩之 100101236 村中 克年 100128532 長尾 公明 西畑 徹平 C12G 3/04 20060101AFI20111021BHJP JPC12G3/04 5 OL 11 4B015 4B015AG09 4B015LH04 4B015LP02 本発明は、清澄で濃厚感がある梅酒及びその製造方法に関する。 従来の梅酒は、焼酎に氷砂糖を加えた液に青梅を浸漬して、数ヶ月程度貯蔵し、前記の液と青梅の浸透圧の差により梅の成分を溶出させ、その後、梅を取り出し、半年から一年程度熟成することにより製造される。 さらに、製造期間の短縮化や、香味の向上を目的として、種々の梅酒の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。 特許文献1には、酵素を含む液体を梅に含ませ、その梅を糖類及びアルコール含有液に浸漬する梅酒の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、健康に有用な成分を多く含む梅酒が短期間で製造される。また、特許文献2には、梅を凍結して破砕し、破砕物をアルコールに浸漬する梅酒の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、フレッシュな香味を有する梅酒が製造される。 しかしながら、特許文献1及び特許文献2に係る梅酒は、梅、糖類及びアルコールからなる本来的な梅酒とは異なるものであり、また、充分な濃厚感(コクやとろみ)がある梅酒ではなかった。さらに、昨今では、すりつぶした梅を梅酒に添加して濃厚感を向上させたものがあるが、濁った梅酒となってしまう。特開2008−228578号公報特開2007−195435号公報 本発明は、このような事情に鑑み、清澄で濃厚感がある梅酒及びその製造方法を提供することを目的とする。 上記課題を解決する本発明の第1の態様は、アルコール、糖類及び梅から製造された原料梅酒に、梅から抽出した梅抽出物が添加されたことを特徴とする梅酒にある。 かかる第1の態様では、ペクチンの含有量が高く、また梅に含まれる各種成分が加わるため、濃厚感が向上し、風味に優れた梅酒が得られる。また、本態様の梅酒は、梅酒に梅抽出物を添加したものであり、食品添加物としてのペクチンなどの特別な添加物を添加していない本来の梅酒である。さらに、下梅をすりつぶして添加した梅酒とは異なり、本発明の梅酒は清澄で濃厚な味を呈するものである。 本発明の第2の態様は、アルコール、糖類及び梅から原料梅酒を製造する第1の工程と、梅からエキスを抽出して梅抽出物とし、前記原料梅酒に前記梅抽出物を添加する第2の工程とを具備することを特徴とする梅酒の製造方法にある。 かかる第2の態様では、ペクチンの含有量が高く、また梅に含まれる各種成分が加わるため、濃厚感が向上し、風味に優れた梅酒を製造することができる。また、食品添加物としてのペクチンなどの特別な添加物を添加せずに、本来の梅酒を製造することができる。さらに、下梅をすりつぶして添加した梅酒とは異なり、清澄で濃厚な味を呈する梅酒を製造することができる。 本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する梅酒の製造方法において、前記第2の工程では、梅を蒸煮して、当該梅からエキスを抽出して梅抽出物とすることを特徴とする梅酒の製造方法にある。 かかる第3の態様では、梅を蒸煮することにより、エキスが溶出しやすくなり、濃厚感がより一層増した梅酒を製造することができる。 本発明の第4の態様は、第2の態様に記載する梅酒の製造方法において、前記第2の工程では、梅を蒸煮して、当該梅を前記原料梅酒に入れ、当該原料梅酒から遠心分離により上清を分離することを特徴とする梅酒の製造方法にある。 かかる第4の態様では、より一層、濃厚な梅酒を製造することができる。また、蒸煮した梅から水などの原料梅酒以外の溶媒でエキスを抽出する工程を省略できるため、製造工程を簡略化することができる。 本発明の第5の態様は、第2〜第4の何れか一つの態様に記載する梅酒の製造方法において、前記梅は、梅酒を製造する際に使用された下梅であることを特徴とする梅酒の製造方法にある。 かかる第5の態様では、一般的な梅酒の成分が染みこんだ下梅から当該成分が加わって、より一層、濃厚で風味のある梅酒を製造することができる。 本発明によれば、梅抽出物を原料梅酒に添加したことで、清澄で濃厚感に優れた梅酒及びその製造方法が提供される。梅酒に含まれるペクチンの量を示す写真である。 本実施形態に係る梅酒は、アルコール、糖類及び梅から製造された原料梅酒に、梅から抽出した梅抽出物が添加されたものである。 原料梅酒とは、梅、糖類及びアルコールから製造された一般的な梅酒である。この一般的な梅酒を、梅抽出物を含有する本発明の梅酒と区別するために原料梅酒と称する。 原料梅酒に用いられる梅としては、特に品種の限定はないが、例えば、豊後、白加賀、南高、鶯宿、養老、曙、古城などを使用することができる。 糖類としては、一般には、氷砂糖が用いられるが、特にこれに限定されない。食品製造の分野で用いられる糖類であればよく、例えば、単糖類(ブドウ糖、果糖)、二糖類(ショ糖、乳糖)、少糖類(オリゴ糖)、多糖類を用いることができる。 アルコールは、飲用アルコール(エチルアルコール)をいい、純粋なアルコール及びアルコール含有液を含む。アルコール含有液は、例えば、焼酎、清酒、みりん、ジン、ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ワインなどを一種、又は複数を併用することができる。梅の風味を充分に引き出すために、無味無臭の焼酎(ホワイトリカー)を用いることが好ましい。 梅抽出物とは、梅から抽出溶媒で抽出したエキスである。抽出溶媒としては、水、又は水溶性有機溶剤を含む水系抽出溶媒を用いることが出来る。水系抽出溶媒とは、水溶性有機溶剤と水とからなる溶媒である。水溶性有機溶剤としては、水と互いに溶解する溶剤、例えば、エタノールを用いることができる。 梅抽出物を得るための原料としての梅は、特に品種の限定はなく、原料梅酒の梅と同様に、豊後、白加賀、南高、鶯宿、養老、曙、古城などを使用することができる。また、一般的な梅酒を製造するために用いられる未熟な青梅であってもよいし、一般的な梅酒を製造した後に取り除かれた下梅であってもよい。 梅抽出物は、例えば、梅を蒸煮して、当該梅から抽出溶媒でエキスを抽出することで得ることができる。 梅を蒸煮することで、梅肉の細胞壁を構成するペクチンが水溶性に変質し、水溶性ペクチンが増加する。このため、蒸煮した梅は、梅抽出物の一成分である水溶性ペクチンを多く含む状態となり、抽出溶媒により得られた梅抽出物は、ペクチン濃度が濃いものとなる。ペクチンは増粘作用を有するので、梅抽出物は、梅酒の濃厚感をより一層高める効果を奏する。 さらに、下梅から梅抽出物を抽出した場合、下梅に染みこんだ梅酒の成分が溶出し、梅抽出物にはその成分が含まれる。この成分は、種々の有機酸や還元糖、非還元糖等であるが、これらは蒸煮では分解したり流出したりせず、安定に保持される。このため、梅抽出物にはこれらの有機酸や還元糖が豊富に含まれたものとなり、梅抽出物は、梅酒の風味をより一層向上させる効果を奏する。 抽出溶媒として水を用いる場合、例えば、蒸煮した梅に抽出溶媒としての水を加え、梅の果肉部をミキサーで軽く粉砕し、遠心分離により上清を分離して梅抽出物を得ることができる。 梅抽出物の他の抽出方法としては、熱水による方法がある。例えば、熱水(抽出溶媒)に梅を浸漬してエキスを抽出し、その後、液中にてミキサーで梅の果肉部を粉砕し、遠心分離して上清を分離することで梅抽出物を得ることができる。 熱水による梅抽出物も、ペクチン濃度が濃いものとなる。また、下梅から熱水により梅抽出物を得る場合においても、下梅に含まれていた種々の有機酸や還元糖等が溶出し、梅抽出物にはその成分が含まれる。このため、熱水による梅抽出物についても、梅酒の濃厚感や風味を一層向上させる効果を奏する。 なお、蒸煮により得られた梅抽出物と、熱水により得られた梅抽出物とでは、蒸煮により得られた抽出物の方が、ペクチン、有機酸、還元糖、非還元糖等の各種成分の濃度が高い。これは、熱水で梅抽出物を得る場合では、梅が完全に水中に沈んだ状態を維持できる程度の量の水が必要であり、その状態で抽出処理を行わなければならないため、各種成分が薄まるからである。 上述のようにして得られた梅抽出物を原料梅酒に添加して梅酒とする。梅抽出物を原料梅酒に添加する量は特に限定されないが、添加量を多くすることでとろみ感が増大し、味も濃厚となる。 また、梅抽出物を原料梅酒に添加する方法としては、蒸煮した梅を直接原料梅酒に入れることにより行ってもよい。蒸煮した梅は、梅抽出物と梅肉とが分離した状態となり、これを原料梅酒に投入し梅肉を除去すると梅抽出物のみが添加されたこととなる。具体的には、蒸煮した梅を原料梅酒に入れたのち、当該原料梅酒から遠心分離により上清を分離して本発明に係る梅酒とすることができる。この場合においても、梅酒には、蒸煮した梅に含まれたペクチンなどの各種成分が豊富に含まれる。遠心分離により梅肉等の固形分が分離されても、梅抽出物の一成分であるペクチンにより濃厚感が得られるので、清澄でありながらも濃厚感がある梅酒となる。なお、原料梅酒に入れた梅はミキサーで軽く粉砕しておくことが好ましい。 本発明に係る梅酒は、上述のようにして得られた梅抽出物を原料梅酒に添加したものであるので、ペクチンの含有量が高く、濃厚感が向上したものとなる。また、下梅から得た梅抽出物を原料梅酒に添加した梅酒は、下梅に染みこんだ一般的な梅酒の各種成分が原料梅酒に加わるので、より一層、風味に優れたものとなる。 また、本発明の梅酒は、梅酒に梅抽出物を添加したものであり、食品添加物としてのペクチンなどの特別な添加物を添加していない本来の梅酒である。 さらに、下梅をすりつぶして添加した梅酒とは異なり、本発明の梅酒は清澄で濃厚な味を呈するものである。すなわち、本発明に係る梅酒は、濃厚感を向上させるために蒸煮処理も熱水処理も施していない梅をすりつぶして原料梅酒に添加して製造した梅酒と比較して、清澄性を有しながらもペクチン濃度が高く、濃厚感があるという特徴がある。蒸煮処理も熱水処理も施していない梅では水溶性ペクチンが少なく、また、その梅をすりつぶして添加した梅酒は、すりつぶされた梅果肉で濁るからである。 以下、本発明の梅酒の製造方法について説明する。 まず、一般的な梅酒を製造する。基本的に常法に準ずるが、具体的には以下のようにして製造することができる。すなわち、梅を水で洗浄後水分をふき取るか、あるいは洗浄せずその表面を予め拭き清めるかした後、梅をエタノール含有水溶液(例えば、ホワイトリカー、焼酎又はブランデー等)に浸漬し、さらに氷砂糖等の糖類を加えて、3ヶ月〜1年漬け込み熟成させる。その後、梅を分離除去することにより原料梅酒が完成する。 次に、青梅又は下梅から梅抽出物を抽出する。蒸煮により梅抽出物を得る場合は、まず、蒸し器などを用いて、梅を蒸気で加熱する。所定の時間蒸煮した後、梅に水を加えミキサーで軽く果肉部を粉砕し、パルプ分を含めた容量が所定量となるように水で調整し、遠心分離により上清を分離して梅抽出物を得る。 また、熱水により梅抽出物を得る場合は、熱水に梅を浸漬し、その後、液中にてミキサーで梅を粉砕し、遠心分離して上清を分離することで梅抽出物を得ることができる。 蒸煮処理においては、蒸煮された梅に任意の量の水を加えて梅抽出物とするため、成分の濃度調整を行いやすい。一方、熱水処理においては、梅が完全に水中に沈んだ状態を維持できる程度の量の水が必要であり、その状態で抽出処理を行わなければならないため、成分濃度が薄くなりがちであり、所望の成分濃度の梅抽出物を得ることは、蒸煮処理に比べて若干難しい。 次に、このようにして得られた梅抽出物を原料梅酒に添加する。添加する量は特に限定はないが、所望の濃厚感が得られる程度の量を添加すればよい。 また、蒸煮した梅を原料梅酒に入れることで梅抽出物を添加する場合は、蒸煮した梅を原料梅酒に加え、ミキサーで軽く梅の果肉部を粉砕し、遠心分離により上清を分離することで梅酒が得られる。この場合においては、蒸煮した梅から水でエキスを抽出して梅抽出物を得る工程を省略できるため、製造工程を簡略化することができる。 以上に説明した梅酒の製造方法によれば、梅から得られた梅抽出物を原料梅酒に添加することで、ペクチンの含有量が高く、濃厚感が向上した梅酒を製造することができる。さらに、下梅から抽出した梅抽出物を原料梅酒に添加することにより、ペクチンや有機酸や還元糖などの各種成分が加わって、より一層、風味に優れた梅酒を製造することができる。 また、食品添加物としてのペクチンなどの特別な添加物を添加せずに、本来の梅酒を製造することができる。 さらに、下梅の果肉部をすりつぶして添加した梅酒とは異なり、清澄で濃厚な味を呈する梅酒を製造することができる。 以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。[梅抽出物の製造試験例] 条件を変化させて蒸煮した梅から抽出した梅抽出物の成分について分析した。 300gの下梅(白加賀)を所定の温度(65℃、75℃、80℃、90℃、100℃)で30分間蒸煮し、蒸煮した梅に500mlの蒸留水を添加し、液中で当該梅を破砕処理し、破砕後、ガーゼで濾過して固形物を分離し、さらに遠心分離して微細固形物を分別して梅抽出物を得た。表1に、梅抽出物の成分を蒸煮の条件ごとに示す。 表1に示すように、蒸煮の温度が高いほど還元糖、総窒素及びペクチン量が増大する傾向にあり、成分濃度が濃い梅抽出物が得られることが分かる。この結果から、蒸煮の温度は、高温(例えば、65℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃)であることが好ましく、また時間は短時間(例えば、30分〜60分)であることが好ましい。[実施例1] 蒸煮抽出法梅酒 実施例1は、蒸煮処理した下梅からエキスを抽出し、当該エキスを原料梅酒に添加して製造した梅酒(蒸煮抽出法梅酒)である。具体的には、次のように製造した。 氷砂糖500gを加えたホワイトリカー1.8L(アルコール濃度35%)に、2008年産の豊後梅1,000gを6ヶ月浸漬し、その後下梅を取り出して2ヶ月熟成して、一般的な原料梅酒を製造した。 また、その原料梅酒の製造に使用した下梅200gをステンレス製のザルに入れ、ザルを沸騰した水が入った鍋に収容して蓋をし、沸騰水の蒸気で蒸した。なお、下梅は沸騰水に浸からないように収めるようにした。60分間、その状態で蒸煮した。このときの鍋内の蒸気温度は90℃とした。 60分後、下梅を取り出し、その下梅に抽出溶媒としての水を加え、梅の果肉部をミキサーで軽く粉砕し、遠心分離により上清を分離してエキスを抽出した。そのエキスに水を加えて350mLにし、さらに原料梅酒400mLを加えて蒸煮抽出法梅酒を得た。[実施例2] 熱水抽出法梅酒 実施例2は、熱水処理した下梅からエキスを抽出し、当該エキスを原料梅酒に添加して製造した梅酒(熱水抽出法梅酒)である。具体的には、次のように製造した。 実施例1で用いたものと同じ下梅200gを400mLの水と共に容器に入れ、当該容器を電熱線の上で加熱して水が僅かに沸騰する程度に調整した。水が90℃を超えてから60分間、エキスの抽出をした。その後、下梅の果肉部をミキサーで軽く粉砕し、パルプ成分等を含めて容量を600mLに調整した後、遠心分離により上清を分離してエキス350mLを得た。このエキス350mLと実施例1と用いたものと同じ原料梅酒400mLをブレンドし、熱水抽出法梅酒を得た。[比較例1] 比較例1は、実施例1及び実施例2の原料梅酒と同一のものである。[比較例2] 比較例2は、梅の果肉が多量に含まれたにごりタイプの梅酒である。青梅を蒸した後、青梅の果肉部をミキサーで粉砕し、ピューレ状となったものを比較例1、実施例1及び実施例2で用いた原料梅酒と同一のものに添加した。[試験例1] 梅酒の成分分析 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2の各梅酒について、各種成分分析を行った。その結果を表2に示す。 表2に示すエキスの具体的な成分は、右二列に記載のクエン酸(成分中の各種の酸をクエン酸に換算したもの)や還元糖の他、非還元性の糖、例えばショ糖などである。また、実施例1、実施例2に係るエキスの成分としては、ペクチンが含まれている。なお、比較例1のエキスは、原料梅酒の製造時に添加した糖や梅から抽出した酸に由来するものであり、試験例2で詳述するがペクチンは含まれていない。比較例2のエキスは、比較例1のエキスの他、すりつぶして添加されたピューレ状の梅果肉の糖や酸に由来するものである。また、実施例1については、成分濃度が非常に濃いため、pH、クエン酸以外は、2倍に希釈して測定し、得られた測定値を2倍にしたものを表2に示してある。 表2に示すように、実施例1は、比較例1のエキス、クエン酸及び還元糖の濃度と略同等である。これは、後述する試験例2〜5において、各成分の濃度が同等であっても濃厚感や清澄性に優れることを示すべく、比較例1の各成分の濃度と同等になるように下梅から得られたエキスの濃度に水を加えて調整したためである。勿論、エキスに加える水量や原料梅酒の量を調整することで比較例1よりも高濃度のエキス等が含まれた梅酒を製造することは可能である。 実施例2は、成分分析の結果、エキスの濃度等が実施例1,比較例1,2よりも低くなっている。これは、熱水を使用してエキスを抽出する際には、少なくとも下梅が充分に浸る程度の水量が必要となるので、エキスの濃度を濃くすることが難しいためである。ただし、後述する官能評価としては、本分析の結果以上に濃厚感が得られている。ちなみに、実施例2に係るエキスは、糖やアルコールを加えて調整することが可能であるので、成分分析上においても比較例1以上に濃厚な梅酒を製造することが可能である。 なお、比重は、密度比重計(DA−505;京都電子工業社製)で測定した。また、アルコール度数は、ガスクロマトグラフ(GC−14A;島津製作所製社製)で測定した。エキスは、比重とアルコール度を用いる換算法で求めた。pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計(HM−30S;東亜電波工業社製)で測定した。クエン酸は、N/3−NaOHによる中和滴定法で測定した。還元糖は、LANE−EYNONの銅法で測定した。[試験例2] 梅酒のペクチン量の測定 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2の各梅酒に含まれるペクチン量を測定した。具体的には、99%アルコール40mLに実施例1、2、比較例1、2に係る梅酒40mLを加え攪拌し、不溶化し、ゲル状になった部分の量を計測した。その結果を表3及び図1に示す。 表3及び図1に示すように、比較例1においてはペクチンが含まれていないのに対して、実施例1、実施例2及び比較例2は、高濃度のペクチンが含まれていることが分かる。さらに、実施例1は実施例2よりもペクチンの濃度が高い。なお、比較例2のペクチンは、ピューレ状の果肉から原料梅酒に溶出したものである。[試験例3] 梅酒の濁度の測定 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2の各梅酒について濁度を測定した。その結果を表4に示す。 表4に示すように、実施例1、実施例2及び比較例1の濁度は、にごりタイプの梅酒である比較例2との差に比べると大きく異ならず、蒸煮抽出法梅酒及び熱水抽出法梅酒は、従来梅酒と同様に、清澄であることが分かる。 なお、濁度は、ポータラボ濁度計(2100P型;HACH COMPANY社製)で測定した。[試験例4] 梅酒の粘度の測定 実施例1並びに実施例2及び比較例1並びに比較例2について粘度(奬液比粘度RSV)の分析を行った。分析は検体を20℃の恒温水槽中にて、粘度計キャノンフェンスケSO#150の一定量を検体が流れ落ちる時間(T1秒)を測定し、同条件で水(イオン交換水)が流れ落ちる時間(T2秒)を測定し、検体の流れ落ちた時間(T1)を水の流れ落ちた時間(T2)で除し水との比粘度とした。その結果を表5に示す。 この結果、実施例1は、比較例1に対してエキスの濃度が略同等であるにも関わらず、明らかに粘度が高いことがわかった。これは、実施例1に係るエキス中にはペクチンが含まれ、比較例1に係るエキスにはペクチンが含まれないからである。また、果肉成分をすりつぶして添加した比較例2の梅酒と比べても粘度が高く濃厚感の強い梅酒を作ることができることが分かった。また、実施例2については、成分濃度が薄まりがちな熱水処理によるエキスが添加されているにも関わらず、実施例2に係るエキス中にペクチンが含まれているため、比較例1と略同等の比粘度であった。[試験例5] 梅酒の官能試験結果 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2について官能試験を行った。官能訓練を充分に積んだパネリスト10人により評価した。評価項目については、濃厚感、清澄性、香りとし、各項目について5段階評価(5:非常によい、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い)した。結果の平均値を表6に示す。 表6に示すように、比較例1の梅酒と比較すると、実施例1及び実施例2は濃厚感が強く感じられ、良好な香りを有することが分かった。また、実施例1及び実施例2の梅酒は、比較例2の梅酒と比較して清澄性に富むものであることが分かった。特に、実施例1の梅酒は、梅果肉成分を含んだにごりタイプの梅酒である比較例2と比較しても、極めて優れた濃厚感、清澄性、香りを有することが分かった。このように実施例1及び実施例2に係る梅酒は、清澄で、濃厚感があり、香り高い梅酒であると評価された。 以上の試験例1〜5から、実施例1は、比較例1と略同等の成分であるにも関わらず、比較例1及び比較例2よりもペクチンを豊富に含み、粘度が高く、濃厚感がありながら清澄であることが示された。また、実施例2は、成分濃度は比較例1及び比較例2よりも低いにも関わらず、比較例1よりも、ペクチンを豊富に含み、濃厚感がありながら清澄であることが示された。 アルコール、糖類及び梅から製造された原料梅酒に、梅から抽出した梅抽出物が添加されたことを特徴とする梅酒。 アルコール、糖類及び梅から原料梅酒を製造する第1の工程と、 梅からエキスを抽出して梅抽出物とし、前記原料梅酒に前記梅抽出物を添加する第2の工程とを具備することを特徴とする梅酒の製造方法。 請求項2に記載する梅酒の製造方法において、 前記第2の工程では、梅を蒸煮して、当該梅からエキスを抽出して梅抽出物とすることを特徴とする梅酒の製造方法。 請求項2に記載する梅酒の製造方法において、 前記第2の工程では、梅を蒸煮して、当該梅を前記原料梅酒に入れ、当該原料梅酒から遠心分離により上清を分離することを特徴とする梅酒の製造方法。 請求項2〜請求項4の何れか一項に記載する梅酒の製造方法において、 前記梅は、梅酒を製造する際に使用された下梅であることを特徴とする梅酒の製造方法。 【課題】清澄で濃厚感がある梅酒及びその製造方法を提供する。【解決手段】アルコール、糖類及び梅から製造された原料梅酒に、梅から抽出した梅抽出物を添加する。また、下梅から抽出した梅抽出物を用いることが好ましい。さらに、下梅を蒸煮処理し、その下梅から抽出した梅抽出物を用いることが好ましい。【選択図】 なし