生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ジオールのモノアリール化体の製造方法
出願番号:2010099631
年次:2011
IPC分類:C07C 43/253,C07C 41/24,C07C 43/23,C07B 61/00


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尾野村 治 栗山 正巳 山崎 則次 伊藤 雅章 JP 2011231018 公開特許公報(A) 20111117 2010099631 20100423 ジオールのモノアリール化体の製造方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 後藤 幸久 100101362 尾野村 治 栗山 正巳 山崎 則次 伊藤 雅章 C07C 43/253 20060101AFI20111021BHJP C07C 41/24 20060101ALI20111021BHJP C07C 43/23 20060101ALI20111021BHJP C07B 61/00 20060101ALN20111021BHJP JPC07C43/253C07C41/24C07C43/23 CC07B61/00 300 4 OL 17 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC43 4H006BA02 4H006BA04 4H006BA05 4H006BA30 4H006BA32 4H006BA36 4H006BA37 4H006BA45 4H006BA46 4H006BA47 4H006GN03 4H006GP03 4H006GP05 4H006GP10 4H006GP11 4H039CA61 4H039CD10 4H039CD20 4H039CE10 本発明は、ジオールのモノアリール化体を簡便且つ選択的に製造する方法に関する。 有機合成において、分子中の特定の官能基のみを選択的に活性化して反応させることは分子を自由に合成する上で大変重要である。例えば、糖類、イノシトール、グリセリン等のポリオールは脂質やタンパク質などと並び生命科学において重要な役割を担う化合物群である。しかし、これらの化合物は識別が困難な多数の水酸基を有するため、特定の水酸基のみを選択的に修飾することが困難である。なかでも、メソ−1,2−ジオールやC2対称−1,2−ジオールには反応性の等しい2つの水酸基があり、その一方の水酸基のみを選択的に修飾することは非常に困難であることが知られている。 1,2−ジオールの水酸基のうち一方を選択的に修飾する方法としては、特許文献1に亜臨界又は超臨界条件下、金属酸化物触媒の存在下でアルコールとアルカンジオールとを反応させてアルカンジオールモノアルキルエーテルを製造する方法が記載されている。しかし、過酷な反応条件を要するため、作業性に劣る点が問題であった。 また、特許文献2には、ポリオールをモノアリル化する方法として、保護基を使用して修飾を施す水酸基以外の水酸基を保護した状態でハロゲン化アリルを反応させてモノアリル化する方法が記載されている。しかしながら、保護基で保護し、反応後はその保護基を外すという作業を必要とするため手間がかかることが問題であった。 すなわち、保護基の着脱の手間を要することなく簡便に、ジオールの2つの水酸基の一方に選択的にアリール基を導入して、高収率で対応するモノアリール化体を得る方法については、全く知られていないのが現状である。特開2004−196783号公報特開2006−520812号公報 従って、本発明の目的は、簡便且つ選択的にジオールのモノアリール化体を製造することができる方法を提供することにある。 本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下でジオールにアリール化剤を反応させると、アリール化剤と銅触媒とが結合して中間体を形成し、該中間体がジオールとキレート環を形成することによりジオールの一方の水酸基のみが活性化されてモノアリール化されることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。 すなわち、本発明はジオールに、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下、アリール化剤を反応させて、ジオールのモノアリール化体を得ることを特徴とするジオールのモノアリール化体の製造方法を提供する。 配位子としては、フェナントロリン誘導体が好ましい。 塩基としては、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。 アリール化剤としては、メタ位又はパラ位に置換基を有していてもよいハロゲン化ベンゼンが好ましい。 本発明に係るジオールのモノアリール化体の製造方法によれば、アリール化剤が、配位子と錯体を形成したCu(0)と相互作用することで形成された中間体が、ジオールに作用してアリール化を行うため、高い反応選択性を有し、優れた収率でジオールのモノアリール化体を得ることができる。また、ジオールの2つの水酸基のうちアリール化しない一方の水酸基を保護基で保護した状態で反応させ、反応後に脱保護するという煩雑な工程を省くことができるため、簡便な工程でモノアリール化体を合成することができる。さらにまた、アリール基は保護基として有用であるだけでなく、それ自体が骨格構造となり得るため、非常に利用価値が高い。従って、本発明に係るジオールのモノアリール化体の製造方法は有機合成において非常に汎用性が高く、特に、メソ−ジオールやC2対称−ジオールのモノアリール化法として有用であり、生体機能分子の合成に大きく寄与することができる。 本発明に係るジオールのモノアリール化体の製造方法は、ジオールに、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下、アリール化剤を反応させて、ジオールのモノアリール化体を得ることを特徴とする。 [銅触媒] 本発明のジオールのモノアリール化体の製造方法において、ジオールのモノアリール化反応は銅触媒の存在下で行われる。本発明における銅触媒としては、例えば、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、フッ化銅(I)、フッ化銅(II)等の1価又は2価のハロゲン化銅;酸化銅(I)、酸化銅(II)、硫酸銅(I)、硫酸銅(II)、炭酸銅(I)、炭酸銅(II)、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、硝酸銅(I)、硝酸銅(II)、メタンスルホン酸銅(I)、メタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、シアン化銅(I)、シアン化銅(II)等の1価又は2価のプロトン酸の銅塩等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。 本発明における銅触媒としては、なかでも、優れた収率で目的化合物を得ることができる点で、酢酸銅(I)、シアン化銅(I)が好ましく、特に、扱いやすく作業性に優れる点で酢酸銅(I)が好ましい。 銅触媒の使用量としては、例えば、原料として用いるジオールに対して、0.1〜10モル%、好ましくは1.0〜7.0モル%程度である。銅触媒の使用量が少なすぎると、モノアリール化反応を促進することが困難となり、目的化合物の収率が低下する傾向がある。一方、銅触媒の使用量が多すぎると経済的に不利となる。 [配位子] 本発明における配位子としては、前記銅触媒と配位結合して錯体を形成することができる配位子であればよく、例えば、下記式(L1)、(L2)で表される化合物等ジケトン(β−ジケトン等)、ケトエステル(β−ケトエステル等);グリシン、下記式(L3)で表されるN,N−ジメチルグリシン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、下記式(L4)で表される1,2−ビス(ジメチルアミノ)エタン等のアミン化合物;ピリジン、下記式(L5)で表される2,2’−ビピリジン、下記式(L6)で表されるフェナントロリン、下記式(L7)〜(L9)で表されるフェナントロリン誘導体、下記式(L10)〜(L16)で表される含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)前駆体などの含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。 本発明における配位子としては、なかでも、優れた収率で目的化合物を得ることができる点で、上記式(L6)で表されるフェナントロリン、上記式(L7)〜(L9)で表されるフェナントロリン誘導体、上記式(L10)〜(L16)で表される含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)前駆体などの含窒素複素環式化合物等を使用することが好ましく、特に上記式(L8)で表されるフェナントロリン誘導体を使用することが好ましい。 配位子の使用量としては、例えば、原料として用いるジオールに対して、0.1〜20.0モル%、好ましくは1.0〜14.0モル%程度である。配位子の使用量が上記範囲を上回ると、経済的に不利となる傾向があり、一方、配位子の使用量が上記範囲を下回ると、目的化合物の収率が低下する傾向がある。 [塩基] 塩基としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−s−ブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジメチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、1−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン等の有機塩基(アミン、含窒素芳香族複素環化合物);ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。 本発明においては、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等、特に炭酸セシウム)が入手容易であり、その上、これら炭酸塩は反応溶媒に対して溶解度が低く、且つ適度な塩基性を有しているため、モノアリール化反応の促進作用に優れる点で好ましい。 塩基の使用量としては、例えば、原料として用いるジオール1モルに対して、0.5〜5.0モル、好ましくは0.8〜3.0モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モル程度である。 [ジオール] 本発明におけるジオールとしては、炭化水素の2つの炭素原子に1つずつヒドロキシ基が置換している構造を有する化合物であればよく、例えば、1,2−ジオール、1,3−ジオール、1,4−ジオール等を挙げることができる。 前記1,2−ジオールは、下記式(1)(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。R1、R2は互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成していてもよい)で表される。 R1、R2における有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、炭化水素基及び/又は複素環式基を含有する基が挙げられる。 前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基が結合した基が含まれる。 脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。 脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。 芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。 脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。 好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。 上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。 前記R1、R2における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。 前記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。また、複素環を構成する窒素原子は保護基で保護されていてもよい。 前記R1とR2としては、1又は2以上の炭化水素基及び/又は複素環式基と、1又は2以上の連結基とで構成されていてもよい。連結基としては、例えば、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、これらが2以上結合した基などが挙げられる。 R1とR2としては、同一又は異なって、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基等の脂肪族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、4−メチルフェニル基、ベンジル基等の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基が好ましい。また、特に、本発明は、他の方法では選択的なモノアリール化が困難なR1とR2が同一の基を示す場合[特に、式(1)で表される化合物がメソ体である場合]に有用である。 R1、R2は互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成していてもよく、例えば、芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度である。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの、置換基を有していてもよく、またベンゼン環等の芳香族性環が縮合していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの、置換基を有していてもよく、またベンゼン環等の芳香族性環が縮合していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族性環(縮合環を含む)等が挙げられる。また、環は複素環であってもよく、複素環としては上記R1、R2における複素環式基を構成する複素環の例と同様の例を挙げることができる。環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。 R1、R2が互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成している場合、該環としては、なかでも、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、テトラヒドロナフタレン環等のシクロアルカン環;シクロヘキセン等のシクロアルケン環;ピロリジン等のヘテロ原子として窒素原子を含む非芳香族性複素環;フラン環等のヘテロ原子として酸素原子を含む非芳香族性複素環等が好ましく、特に、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、テトラヒドロナフタレン環等のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等のシクロアルケン環、フラン環、ピロリジン環等の非芳香族性複素環が、反応が進みやすい点で好ましい。 式(1)で表される1,2−ジオールの具体的な例としては、2,3−ブタンジオール、3,4−ヘキサンジオール、5,6−デカンジオール、1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、1,2−ビス(4−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1,2−ビス(メトキシカルボニル)−1,2−エタンジオール、1,2−シクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、シクロヘキセン−4,5−ジオール、1,2−シクロヘプタンジオール、1,2−シクロオクタンジオール、2,3−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、N−ベンゾイル−3,4−ジヒドロキシピロリジン等を挙げることができる。 本発明における式(1)で表される1,2−ジオールとしては、なかでも、メソ−1,2−シクロペンタンジオール、メソ−1,2−シクロヘキサンジオール、メソ−1,2−シクロヘプタンジオール、メソ−1,2−シクロオクタンジオール、メソ−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール等の分子内に対称面を有するメソ体や、dl−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、dl−1,2−ビス(4−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、dl−1,2−シクロヘキサンジオールのようなC2対称−1,2−ジオールが好ましい。 前記1,3−ジオール、1,4−ジオールとしては、上記1,2−ジオールの例に対応する化合物を挙げることができる。本発明における1,3−ジオールとしては、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のC2対称−1,3−ジオールが好ましい。また、本発明における1,4−ジオールとしては、1,4−ブタンジオール等のC2対称−1,3−ジオールが好ましい。 [アリール化剤] 本発明のアリール化剤としては、下記式(2)(式中、環Zはベンゼン環又はナフタレン環を示し、Xはハロゲン原子を示す。環ZはX以外に置換基を有していてもよい)で表すことができる。 前記Xはハロゲン原子を示し、ヨウ素、臭素、フッ素、塩素原子である。 環Zはベンゼン環又はナフタレン環であり、なかでも、より立体障害が小さく反応性に優れる点でベンゼン環が好ましい。 環Zが有していてもよい置換基としては、例えば、置換又は無置換アルキル基(メチル基、トリフルオロメチル基)、ハロゲン原子(Xと同じハロゲン原子であってもよく、異なっていてもよい)、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。環ZがX以外に置換基を有する場合、その置換基は前記Xのメタ位、又はパラ位に結合することが、反応性に優れる点で好ましい。 本発明におけるアリール化剤としては、なかでも、環Zがベンゼン環であり、Xがヨウ素原子であることが好ましい。また、特に、環ZがX以外に置換基を有さないものが、極めて反応性に優れる点で好ましい。 [溶媒] 本発明の反応は溶媒中で実施することが好ましい。反応溶媒としては、反応に関与しないものが好ましく、例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、酢酸エチル等の高極性溶媒;ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジイソプロピルエーテル等の中極性溶媒;トルエン、n−ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の低極性溶媒等が挙げられる。 本発明においては、なかでもトルエン、ジオキサン(特に、乾燥後、蒸留操作を行ったトルエン)が基質の溶解性に優れ、反応収率を向上させることができる点で好ましい。 [反応] 本発明に係るジオールのモノアリール化体の製造方法によれば、ジオールに、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下、アリール化剤を反応させて、ジオールのモノアリール化体を得ることができる。例えば、ジオールとして下記式(1)で表される1,2−ジオールを使用して、該ジオールに下記式(2)で表されるアリール化剤を反応させると、下記式(3)で表されるジオールのモノアリール化体が得られる。(式中、R1、R2、X、Zは前記に同じ) 本発明のジオールのモノアリール化反応に於いては、例えば、以下に示される触媒サイクルで進行する反応機構が考えられる。尚、ジオールとして1,2−ジオールを使用した例により説明するが、その他のジオールを使用した場合も同様である。(式中、R1、R2、X、Zは前記に同じ) すなわち、1.Cu(0)と式(2)で表されるアリール化剤が相互に作用することにより、中間体Aを形成する。2.中間体Aと式(1)で表される1,2−ジオールが反応して中間体Bを形成する。3.塩基により脱プロトン化して、式(3)で表されるモノアリール化体を形成すると同時に、Cu(0)を再生する。 本発明のジオールのモノアリール化反応において、その反応温度としては、通常0℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、50℃〜110℃程度、なかでも80℃〜110℃程度が好ましい。また、反応は常圧下で行うことができる。反応時間としては、基質の反応性にもよるが、通常1〜50時間程度である。反応終了後は、溶媒の減圧留去、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等により、目的とするモノアリール化体を単離することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 実施例1 反応容器にシス−1,2−シクロオクタンジオール(1.0mmol、144.2mg)、Cs2CO3(1.5mmol、489.0mg)、Cu(I)(OAc)(0.05mmol、6.1mg)、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン(0.10mmol、23.6mg)を加えて、アルゴン置換を行った後、ベンゾフェノンケチルラジカルを用いる還流操作によって乾燥後、蒸留したトルエン(蒸留トルエン)(1.0ml)に溶解させ、ヨウ化ベンゼン(1.5mmol、0.17ml)を加え100℃で12時間撹拌しながら反応を行った。 反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を乾燥後、減圧蒸留した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:10)で精製して、2−フェノキシシクロオクタノール(0.91mmol、収率:91%)を得た。 IR(CDCl3):3450, 2930, 1600, 1500, 1240cm-1.1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ1.52-1.86(m,10H), 1.92(m,1H), 2.09-2.18(m,1H), 2.52(d,J=3.4Hz,1H), 4.06-4.09(m,1H), 4.46-4.48(m,1H), 6.90(d,J=7.8Hz,2H), 6.96(t,J=7.3Hz,1H), 7.29(t,J=7.3Hz,2H), 13C NMR(400MHz,CDCl3) δ21.7, 25.1, 25.3, 26.1, 26.9, 29.2, 71.7, 79.5, 115.9, 121.0, 129.5, 157.2. HRMS(FAB)calcd for C14H20O2:220.1463, found:220.1457. 実施例2〜14、比較例1 銅触媒としてCu(I)(OAc)の代わりに下記表1に記載の化合物(0.05mmol)を使用した(比較例1では、銅触媒を使用しなかった)以外は実施例1と同様にして、2−フェノキシシクロオクタノールを得た。 実施例15〜29、比較例2 配位子として3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリンの代わりに下記表2に記載の配位子(0.10mmol)を使用した(比較例2では、配位子を使用しなかった)以外は実施例2と同様にして、2−フェノキシシクロオクタノールを得た。 実施例30、31、比較例3 塩基としてCs2CO3の代わりに下記表3に記載の化合物(1.5mmol)を使用した(比較例3では、塩基を使用しなかった)以外は実施例1と同様にして、2−フェノキシシクロオクタノールを得た。 実施例32〜37 溶媒としてベンゾフェノンケチルラジカルを用いる還流操作によって乾燥後、蒸留したトルエン(蒸留トルエン)の代わりに下記表4に記載の溶媒(1.0ml)を使用した以外は実施例1と同様にして、2−フェノキシシクロオクタノールを得た。 実施例38〜46 アリール化剤としてヨウ化ベンゼンの代わりに下記表4に記載の化合物(1.5mmol)を使用した以外は実施例1と同様にして、対応するモノアリール化体を得た。 実施例47〜56 ジオールとしてシス−1,2−シクロオクタンジオールの代わりに下記表5に記載の化合物(1.0mmol)を使用した以外は実施例1と同様にして、対応するモノアリール化体を得た。 実施例57 シクロオクタノール(1.0mmol、128.2mg)を添加した以外は実施例1と同様にし、2−フェノキシシクロオクタノール(転化率:76%、収率:56%)を得た。フェニルシクロオクチルエーテルは、痕跡量しか得られなかった(転化率:22%)。 ジオールに、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下、アリール化剤を反応させて、ジオールのモノアリール化体を得ることを特徴とするジオールのモノアリール化体の製造方法。 配位子がフェナントロリン誘導体である請求項1に記載のジオールのモノアリール化体の製造方法。 塩基がアルカリ金属炭酸塩である請求項1又は2に記載のジオールのモノアリール化体の製造方法。 アリール化剤がメタ位又はパラ位に置換基を有していてもよいハロゲン化ベンゼンである請求項1〜3の何れかの項に記載のジオールのモノアリール化体の製造方法。 【課題】簡便且つ選択的にジオールのモノアリール化体を得る方法を提供する。【解決手段】本発明のジオールのモノアリール化体の製造方法は、ジオールに、銅触媒、配位子、及び塩基の存在下、アリール化剤を反応させて、ジオールのモノアリール化体を得ることを特徴とする。前記配位子としては、フェナントロリン誘導体が好ましく、前記塩基としては、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。また、前記アリール化剤としては、メタ位又はパラ位に置換基を有していてもよいハロゲン化ベンゼンが好ましい。【選択図】なし


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