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タイトル:再公表特許(A1)_黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法、黄色ブドウ球菌抗原の抽出用試薬および黄色ブドウ球菌の判定方法
出願番号:2010073186
年次:2013
IPC分類:C07K 14/31,C07K 1/14,G01N 33/569,G01N 37/00


特許情報キャッシュ

志賀 一樹 JP WO2011081075 20110707 JP2010073186 20101222 黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法、黄色ブドウ球菌抗原の抽出用試薬および黄色ブドウ球菌の判定方法 キッコーマン株式会社 000004477 特許業務法人 津国 110001508 津国 肇 100078662 柳橋 泰雄 100131808 伊藤 佐保子 100119079 小澤 圭子 100135873 鈴木 音哉 100141357 田中 聖 100146422 岡崎 祐一 100147533 三宅 俊男 100116528 角野 ゆり子 100173772 志賀 一樹 JP 2009296642 20091228 C07K 14/31 20060101AFI20130412BHJP C07K 1/14 20060101ALI20130412BHJP G01N 33/569 20060101ALI20130412BHJP G01N 37/00 20060101ALI20130412BHJP JPC07K14/31C07K1/14G01N33/569 EG01N37/00 102 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130509 2011547602 27 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年および21年度、独立行政法人 科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願) 4H045 4H045AA20 4H045AA30 4H045CA11 4H045DA86 4H045EA52 4H045GA01 本発明は、黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法、黄色ブドウ球菌抗原の抽出用試薬、および黄色ブドウ球菌の判定方法に関する。 本出願は、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、21年度、および22年度独立行政法人 科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)である。 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、S.aureus)は、ヒトや動物に種々の疾患を惹起する病原性細菌の一種である。黄色ブドウ球菌が食物を汚染し、そこで増殖すると、菌体外毒素(エンテロトキシン)が産生される。エンテロトキシンを含有する食物を摂取すると、2〜6時間後に急性胃腸炎の症状が現れ、その後、嘔吐、腹痛、下痢を起こす。重症の場合には微熱を伴い、血圧の低下、胸内苦悶、意識混濁、脈拍数の減少などの著明な中毒症状を起こし、緊急入院を必要とする場合もある。 黄色ブドウ球菌の一種であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSAとも呼ぶ)は、大きな社会問題となっている病院内感染症の原因菌である。近年では、メチシリン以外にも、ペニシリン系及びセフェム系抗生物質のβラクタム剤を含む、その他多くの抗生物質にも抵抗性を示す各種の多剤耐性MRSAが見られている。MRSAは、そのような多剤耐性を有するために、感染時の治療が困難である。一方、黄色ブドウ球菌には、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(以下、MSSAとも呼ぶ)も含まれる。 最近ではMRSAに有効な治療法も開発されてはいるが、その一方で副作用の問題、あるいは新たな耐性菌出現の予防の観点から、MRSAに感染した患者に対する治療法を、多剤耐性を有さないMSSAに感染した患者に対しても画一的に用いることは好ましくないとされている。すなわち、MRSAを早期に発見し、MRSA感染者あるいはMRSA汚染箇所に対して適切な処置を行うことが重要であると共に、黄色ブドウ球菌が検出された際には、その菌がMRSAなのか、あるいは多剤耐性を有さず、MRSAとは異なる対応を行うべきであるMSSAなのかを確実に区別して、それぞれに適切な処置を行うことが極めて重要である。 従来、黄色ブドウ球菌がMRSAなのか、あるいはMSSAなのかを判定するためには、希釈法、ディスク感受性試験等を用いて実際の薬剤に対する抵抗性を培養によって調べる方法が行われている。しかし、これらの方法は、培養時間に長時間を要し、培養中の各種因子(接種菌濃度、培養温度、培地組成、使用する薬剤等)、および操作者の熟練程度等により結果のばらつきがあるという問題を有している。 一方、MRSAに特有のタンパク質として、ペニシリン結合タンパク(PBP1、PBP2、PBP3及びPBP4)の新たな代替酵素である「PBP2’」を持っているか否かをMRSA/MSSA判別のポイントとして、このPBP2’を、非放射性試験(例えば、非特許文献1、2参照)、あるいはPBP2’に対する抗体を用いた放射免疫測定法および酵素免疫測定法(例えば、特許文献1、非特許文献3参照)等により検出する方法が提案されている。しかし、これらの方法は、抗原を含む細胞膜画分を超遠心分離法によって調製するという煩雑な操作を必要とし、一般の検査施設で実施するには困難を伴う。また、これらの方法では、尿素を変性剤として用いて抗原の抽出を行うため、その後の免疫測定において、尿素が反応系に残ることにより、測定時間に数時間を要することからも、日常の検査に用いるには不便である。 さらに、多剤耐性黄色ブドウ球菌の産生するPBP2’をコードする遺伝子であるmecAをPCR法によって遺伝子工学的に検出し、試験菌株における該遺伝子の保有状況を指標としてMRSAの鑑別を行う方法も知られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、mecAの保有状況は必ずしも黄色ブドウ球菌の多剤耐性を反映しているとは限らず、mecA遺伝子を保有しているにもかかわらず多剤耐性を獲得していない黄色ブドウ球菌も存在することが知られている。 一方、細胞膜画分の超遠心分離等の煩雑な操作なしにMRSAからPBP2’抗原を抽出する方法として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アミンの水溶液等で抽出する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。特開平5−339289号公報特許第3638731号公報D.M.O’Haraら、FEBS Lett. Vol. 212, No. 2, p237−241,(1987)J.L.Gerberdingら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy Vol. 35, No.12,2574−2579,(1991)K.Sekiguchiら、Microbiol. Immunol. Vol. 39, p545−550,(1995)生方ら、J. Clin. Microbiol., Vol. 30, p.1728−1733,(1992)Gerber、Journal of Clin.Micro.,pp.187−189,(1983) 上述の通り、黄色ブドウ球菌の検出は、単にMRSAのみを検出すれば十分とは言い切れず、まず、黄色ブドウ球菌が検出されるかどうか、その上でそれがMRSAなのか、あるいは多剤耐性を有さないMSSAなのかを区別して適切な処置を行うことが重要であるという実情がある。しかし、これを考慮すると、上記の方法によってPBP2’のみを抽出し、これを何らかの手段により検出するという着想に基づく検出方法には、確実性の点で改善の余地がある。 具体的には、PBP2’のみを抽出し検出する方法の場合、検出対象である菌(検体)の抽出物中にPBP2’が検出された場合には、その検体がMRSAであると判断できる。しかし、PBP2’が検出されなかった場合には、その結果のみから検体がMSSAであると判断することはできない。なぜならPBP2’が検出されない理由としては、検体がMSSAであったという場合以外にも、検体が黄色ブドウ球菌ではなかった、あるいは、黄色ブドウ球菌(MRSAまたはMSSA)ではあったが試験に供する検体量が少なすぎた、もしくは、何らかの操作を誤った等の不適切な検出条件で試験が行われた等、複数の理由が想定されるためである。 検体がMSSAであることを確認するためには、PBP2’およびPBP2を抽出して検出する操作を行い、その上でPBP2’は検出されず、PBP2のみが検出されるということを確認する必要がある。また、PBP2’が検出されず、かつ、PBP2も検出されないという検体については、再測定や測定手順の見直し、菌種の確認等を含めたさらなる対処が必要になる場合もあると考えられる。PBP2’のみの検出に着目した方法ではこのような点に対応することが困難である。 微生物から抗原を抽出する公知の方法の例としては、例えば、ストレプトコッカス属の微生物から亜硝酸を用いて抗原を抽出する「ミクロ亜硝酸抽出法」(例えば、非特許文献5参照)が知られている。しかし、発明者が確認したところ、この抽出法は、黄色ブドウ球菌からの抗原抽出、例えばPBP2’および/またはPBP2を抽出する目的には適さないことがわかった。 すなわち、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出でき、両者を測定可能な形で抽出液中に保持可能な抽出方法、ならびに、抽出されたPBP2’およびPBP2を検出し、その結果に基づいて、前記判定対象とする黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性であるか、またはメチシリン感受性であるかを簡便に、かつ、より確実に判定できる判定方法が望まれている。 本発明の目的は、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出でき、両者を測定可能な形で抽出液中に保持可能な抽出方法、ならびにそのための抽出試薬を提供することにある。さらに、そのような抽出方法および抽出試薬を用いて得られた抽出物中の抗原を検出し、その結果に基づいて被検体がMRSAであるかMSSAであるかをより確実に判定できる黄色ブドウ球菌の判定方法を提供することにある。 発明者は、鋭意研究の結果、特定の酸を含有する酸性の水溶液を用いて黄色ブドウ球菌から両抗原を抽出でき、両抗原が抽出液中に保持されること、さらに、抽出物中の両抗原を免疫測定法によりそれぞれ検出することによって上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明によれば、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出することを特徴とする、黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法が提供される。かかる方法によれば、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出することができる。また、抽出物中にPBP2’およびPBP2を安定に保持することができる。 また、本発明によれば、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程と、黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体を用いた免疫測定法によって、抽出された黄色ブドウ球菌抗原を検出する工程と、その検出結果に基づいて、前記被検体中の黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であるか、またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌であるかを判定する工程とを含む、黄色ブドウ球菌の判定方法が提供される。かかる方法によれば、得られた抽出物中の抗原の検出結果に基づいて、被検体がMRSAであるかMSSAであるかを、より確実に判定することができる。 また、本発明によれば、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含み、pHが5.0以下である、黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬が提供される。かかる試薬によれば、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出することができ、また、抽出物中にPBP2’およびPBP2を安定に保持することができる。 さらに、本発明によれば、上記の黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬を含む、黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キットが提供される。かかるキットによれば、得られた抽出物中の抗原の検出結果に基づいて、被検体がMRSAであるかMSSAであるかを、より確実に判定することができる。 本発明によれば、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出することができ、また、抽出物中にPBP2’およびPBP2を安定に保持することができる。また、本発明によれば、得られた抽出物中の抗原の検出結果に基づいて、被検体がMRSAであるかMSSAであるかを、より確実に判定することができる。図1は、作製した抗体アレイの設計図である。図2は、得られたMSSAおよびMRSAの抗体アレイの測定画像である。[用語の説明] 本明細書で使用される場合、「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」とは、ヒトや動物の皮膚、消化管(腸)常在菌(腸内細菌)であるブドウ球菌の一つをいう。ヒトの膿瘍等の様々な表皮感染症や食中毒、また肺炎、髄膜炎、敗血症等致死的となるような感染症の起因菌でもある。 本明細書で使用される場合、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)」とは、抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌を意味するが、メチシリン以外にも、ペニシリン系及びセフェム系抗生物質のβラクタム剤を含む、その他多くの抗生物質にも抵抗性を示す各種の多剤耐性MRSAを包含する。一方、本明細書で使用される「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus: MSSA)」とは、メチシリンに対する感受性のある黄色ブドウ球菌をいう。 本明細書で使用される場合、「PBP2’(ペニシリン結合タンパク質2’)」とは、ペプチドグリカン合成酵素を意味し、黄色ブドウ球菌が本来持っている4種の細胞壁合成酵素であるペニシリン結合タンパク質:PBP1、PBP2、PBP3及びPBP4とは異なる架橋酵素であり、MRSAに特有のタンパク質である。すなわち、MRSAはPBP2’を有するが、MSSAはPBP2’を有さない。なお、MRSAおよびMSSAともに、4種のペニシリン結合タンパク質:PBP1、PBP2、PBP3及びPBP4を有する。 本明細書で使用される場合、「黄色ブドウ球菌抗原」は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原の両者を包含する意味で使用され、具体的には、黄色ブドウ球菌が本来持っている4種のペニシリン結合タンパク質:PBP1、PBP2、PBP3及びPBP4に加え、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に特有のタンパク質PBP2’を含み、好ましくは、PBP2およびPBP2’である。本明細書で使用される場合、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原」とは、ペニシリン結合タンパク質2’(PBP2’)をいう。本明細書で使用される場合、「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原」とは、PBP2’以外の黄色ブドウ球菌抗原を意味し、好ましくは、PBP2である。 以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。[実施形態1:黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法] 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法は、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出することを特徴とする、黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法である。(抽出試薬中の酸) 本実施形態に係る抽出方法に用いることができる抽出試薬は、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含む。これらの酸を用いることにより、本発明の目的を好適に達成することができる。(抽出試薬のpH) 本実施形態に係る抽出方法に用いることができる抽出試薬は、5.0以下のpHを有する。抽出試薬のpHは5.0以下であれば特に限定はないが、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。また、本発明における抽出試薬は、抽出時のpHが5.0以下となるように調整されていることが好ましい。例えば、MRSAの菌体浮遊液等を試料とする場合には、当該菌体浮遊液と本発明の抽出試薬とを混合した際のpHが5.0以下であることが好ましい。また、抽出試薬中の上記酸の濃度としては、0.05M〜0.5Mが好ましい。(抽出試薬中の界面活性剤) 本実施形態に係る抽出方法に用いることができる抽出試薬中には各種の界面活性剤を任意に加えても良い。これにより、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2をより効率的に抽出することができる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤から選択される任意のものを用いることができる。 例えば、陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩型およびスルホン酸塩型(例えば、アルキルベンゼンカルボキシレート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホネート、スルホスクシネートエステル塩等)、硫酸エステル塩型(例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩またはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等)およびリン酸エステル塩型(例えば、アルキルホスフェートエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスフェートエステル塩、または、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルホスフェートエステル塩等)が挙げられる。これらは、市販のものを用いることができ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの場合、エマール(登録商標)20C(花王社製)等の商品名で、また、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムの場合、エマール(登録商標)NC−35(花王社製)の商品名で市販されている。 陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩型(例えば、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸、塩トリメチルアミン塩酸塩)、第4級アンモニウム塩型(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルピリジニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライド、テトラヘキシルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなど)等が挙げられる。これらは、市販のものを用いることができ、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの場合、コータミン(登録商標)86W(花王社製)等の商品名で、また、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドの場合、コータミン(登録商標)24P(花王社製)等の商品名で販売されている。 非イオン性界面活性剤としては、エーテル型(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル等)、エステル型(ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、エステルエーテル型(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール)、アルカノールアミド型(ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド)、アルキルグリコシド型(オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド)、グルカミド型(オクタノイル−N−メチル−グルカミド、ノナノイル−N−メチル−グルカミド、デカノイル−N−メチル−グルカミド)が挙げられる。これらは、市販のものを用いることができ、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートとしては、tween20等の商品名で、また、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとしては、Triton(商標)X−100等の商品名で、また、オクタノイル−N−メチル−グルカミドとしては、MEGA−8等の商品名で販売されている。好適な界面活性剤の例として、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル類(例えば、TritonX−100等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル類(例えば、NP40等)、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類(例えば、Tween80等)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル類(例えば、Brij(登録商標)58等)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル類(例えば、Brij(登録商標)721等)、オクチルグルコシド等が挙げられる。他にも、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(レオドールTW−0120:花王社製)、イソトリデシルアルコールエトキシレート9モル付加体(レオコールTD−90、ライオン(株)製)、高級アルキル基(例えば、炭素数12〜14のアルキル基等)にポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドを付加した化合物(レオコールSC70、ライオン(株)製)が好ましい例として挙げられる。 両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン型(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン)、CHAPS(3−〔3−コラミドプロピル〕ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホン酸),CHAPSO(3−〔コラミドプロピル〕ジメチルアンモニオ)−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)等のスルホン酸型、アミンオキシド型(ラウリルジメチルアミンN‐オキシド、オレイルジメチルアミンN‐オキシド)等が挙げられる。これらは、市販のものを用いることができ、例えば、アルキルベタイン型の場合、アンヒトール(登録商標)24B(花王社製)等の商品名で、また、アミンオキシド型の場合、アンヒトール(登録商標)20N(花王社製)等の商品名で市販されている。 上記の各種界面活性剤のうちで、エマール(登録商標)NC35、MEGA−8、TritonX−100、tween20、レオコールSC70、レオコールTD90、レオドールTW−0120、Brij(登録商標)721、コータミン(登録商標)86W、コータミン(登録商標)24P、CHAPS、CHAPSO、アンヒトール(登録商標)20N、アンヒトール(登録商標)24B等は、好適な界面活性剤の一例である。これにより、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2をより効率的に抽出することができる。 本発明の抽出試薬中に含まれる界面活性剤の濃度は、通常、0.01%(w/w)以上、好ましくは0.01〜5%(w/w)、より好ましくは、0.05〜5.0%(w/w)、さらに好ましくは、0.05〜1.0%(w/w)、よりさらに好ましくは、0.1〜1.0%(w/w)である。界面活性剤の濃度を0.01%(w/w)以上にすることにより、抽出効率が十分となる。また、界面活性剤の濃度を5.0%(w/w)以下にすることにより、濃度をそれ以上高めても抽出効率のさらなる改善がみられにくいことから経済的であり、また、界面活性剤がその後の各種測定系に悪影響を及ぼさないため、界面活性剤の除去や希釈等に操作が煩雑になるという問題を生じ得ず、好ましい。 界面活性剤は、本発明の目的とする効果を損なわない限り、複数種類を併用しても、単独で用いても構わない。 本発明の抽出試薬は、本発明の目的とする効果を損なわない限り、上記成分の他に保存料、緩衝剤などを含んでもよい。(黄色ブドウ球菌抗原の抽出条件) 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法は、上記抽出試薬を用いて、被検体中の黄色ブドウ球菌から、黄色ブドウ球菌抗原を抽出する。本発明の抽出方法の抽出条件は、黄色ブドウ球菌抗原の抽出が好適に進行する条件であれば、特に限定されず、抗原が良好に抽出されるのに適した温度、および抽出時間等が設定される。抗原の抽出温度は、室温以上、具体的には、25〜100℃が好ましい。これにより、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2をより効率的に抽出することができる。抗原の抽出時間は、1分間〜60分間程度が好ましいが、場合によりこれより長くても差し支えない。 抽出温度が高いほど、抽出に要する時間は短くてよく、例えば、100℃で抽出を行う場合は、抽出時間は概ね1分間〜3分間程度でよく、95℃で抽出を行う場合は、抽出時間は概ね5分間〜10分間、25〜37℃程度で抽出を行う場合には、抽出時間は60分間程度が好ましい。 本実施形態に係る抽出方法によれば、MRSAおよびMSSAの両者から抗原を高効率で抽出することができる。さらに、抽出された両抗原が、いずれも抽出液中で分解を受けにくく、抽出物中にPBP2’およびPBP2を安定に保持することができる点において優位である。[実施形態2:黄色ブドウ球菌の判定方法] 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌の判定方法は、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程と、黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体を用いた免疫測定法によって、抽出された黄色ブドウ球菌抗原を検出する工程と、その検出結果に基づいて、前記被検体中の黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であるか、またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌であるかを判定する工程とを含む、黄色ブドウ球菌の判定方法である。かかる方法によれば、MRSAに特有の抗原であるPBP2’と、MRSAおよびMSSAに共通に存在するPBP2の両者を、いずれも効率よく抽出できるとともに、抽出物中に両者を安定に保持することができるので、この両者を次段階の免疫測定系において検出することができ、検出対象の菌(被検体)がMRSAであるのか、又はMSSAであるのかを確実に判定することが可能になる。(黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程) 本実施形態における黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程は、基本的には上記実施形態1に係る黄色ブドウ球菌抗原を抽出する方法と同様の構成および作用効果を有するため、実施形態1と同様の内容については、適宜説明を省略する。(抽出された抗原の抽出試薬中での安定性) 本実施形態における抽出試薬を用いて黄色ブドウ球菌から黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程は、MRSAおよびMSSAの両者から抗原を高効率で抽出することができるとともに、抽出された両抗原が、いずれも抽出液中で分解を受けにくいことを特徴とする。抽出は、次段階の免疫測定法等による黄色ブドウ球菌抗原の検出のために行うものであるから、抽出された抗原が抽出液中で直ちに分解してしまうようなことがあっては検出に支障をきたし、その後のMRSA/MSSA判定を正確に行えなくなる。本実施形態における抽出工程によれば、抽出された抗原が抽出試薬中で分解を受けずに安定して存在することができるため、優位である。 抽出された黄色ブドウ球菌抗原を免疫測定法に供する際には、本発明の抽出試薬を用いて抽出された黄色ブドウ球菌の抽出液を、必要に応じ、適当な緩衝剤又は塩基、好ましくはリン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウムまたは水酸化ナトリウム等を用いて中和し、免疫測定系にとって好適なpH条件、具体的にはpH6.0〜8.0に調整することが好ましい。 また、本発明の抽出試薬を用いて黄色ブドウ球菌の抗原を抽出した後に、細胞残屑や粒状物、またはその他の不溶物を任意の方法を用いて除去することも好ましい。それらの除去は、例えば、遠心分離、フィルターろ過等により行うことができる。(抽出された黄色ブドウ球菌抗原の検出) 次に、本実施形態においては、黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体を用いた免疫測定法によって、抽出された黄色ブドウ球菌抗原を検出する。本実施形態における「抗体」とは、特定のペプチドや多糖類、低分子化合物などの様々な分子を認識し、結合・架橋形成する「抗体」と総称されるタンパク質のことをいい、その改変体、修飾体も含む。マウス、ウサギ、ヒツジ由来のものなど様々なものが知られており、また特定のモノクローナル抗体を培養細胞で生産することや、遺伝子組み替え技術を用いて大腸菌や真核生物細胞で生産させることも可能であり、そのような組替え体も含む。また、上記の各種抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。また、抗体がモノクローナル抗体の場合、グロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどが挙げられる。また、モノクローナル抗体は、ヒト化抗体でもよい。 黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体としては、抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体を用いることができ、これらはそれぞれ、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体がより好ましい。抗PBP2抗体は、PBP2を特異的に認識する。抗PBP2’抗体は、PBP2’を特異的に認識する。抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体は、当該分野で公知の方法に従い作製することができ、例えば、特許第3638731号公報に記載の方法に準じて作製することができる。また、市販の抗体を入手することもできる。 免疫測定方法としては、各種公知の免疫測定法を用いることができ、例えば、通常の免疫測定法、例えば、ラテックス凝集法、比濁法、放射免疫測定法(例えば、RIA法、RIMA法)、酵素免疫測定法(例えば、ELISA法、EIA法)、ゲル内沈降反応、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、蛍光抗体法(例えば、FIA法、IFMA法)、イムノクロマトグラフィー法、抗体アレイ等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの免疫測定方法自体はこの分野において周知であり、当業者が容易に行うことができる。一般的な技術手段の詳細については、公知の総説、成書などを参照することができる。 また、本実施形態における免疫測定法において、抗体を検出するために、シグナルを発生させることができる標識物質と抗体自体を結合させた標識抗体を用いてもよい。その際は、直接結合させたもの以外にも、抗体と標識物質とをアビジン−ビオチン又はストレプトアビジン−ビオチン系、又は二次抗体により結合させたものを用いることも可能であり、本発明の技術的範囲に含まれる。ここで用いる二次抗体としては、一次抗体と結合できる抗体を使用することができる。 標識として酵素を使用する場合には、例えば、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸脱水素酵素、アセチルコリンエステラーゼ、ルシフェラーゼ、マロン酸エステルデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等を標識として使用することができる。これらの酵素で標識する方法としては、酵素の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し、生成したアルデヒド基に抗体又はレクチンのアミノ酸を結合させる方法や、酵素にマレイミド基あるいはピリジルスルフィド基等を導入し、抗体又はレクチンのFab’フラグメントに存在するチオール基と結合させる方法等を挙げることができる。 標識として酵素を使用する場合、試験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、例えば2,2’−アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)などを用いることができる。 標識として蛍光色素を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)などの蛍光色素で抗体を標識することができる。抗体と蛍光色素との結合は常法によって行うことができる。 標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属および着色ラテックスなどを標識として使用できる。コロイド金属の代表例としては、金ゾル、銀ゾル、セレンゾル、テルルゾル又は白金ゾルなどのそれぞれの分散粒子である金属コロイド粒子を挙げることができる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜60nm程度が好ましい。また、着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの着色料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスが挙げられる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラテックスを用いてもよい。着色ラテックスの大きさは、直径数十nm〜数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は市販品をそのまま使用することができるが、さらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することも可能である。 抗体と呈色標識物質との結合は常法によって行うことができる。例えば、呈色標識物質が金ゾルの分散粒子である金コロイド粒子の場合には、通常は、抗体と金ゾルとを室温下で混合することにより両者を物理的に結合することが可能である。 なお、標識としては、上記以外にも放射性同位体標識(例えば、125I、131I、3H、14C等)等を使用することも可能であり、本発明の範囲内に含まれる。(ELISA) 本実施形態における免疫測定法として、酵素免疫測定法(ELISA)を使用することができる。「酵素免疫測定法」(ELISA)とは、酵素標識した抗体を用いて、抗体に対する抗原を定量的に検出する方法であり、定量性、簡便性、確実性(再現性)に優れ、臨床検査などで広く用いられている。酵素免疫測定法は広くよく知られた技術であり、一般的な技術手段の詳細については、公知の総説、成書などを参照することができる。酵素免疫測定法としては、幾つかの方法が知られており、中でもサンドイッチELISAと称される、抗体を固定化したプレートに抗原を結合させ、結合した抗原をまた別の抗体で検出するという方法が最も広く用いられている。 サンドイッチELISA法の固相用担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ類、天然又は修飾されたセルロース類、ポリアクリルアミド類、斑糲岩(gabbros)、及び磁鉄鉱(magnetite)が挙げられる。固相用担体の材料は、抗体が結合できる限り、如何なる可能な構造上の輪郭を有してよい。例えば、ビーズのような球形、又は試験管あるいはマイクロタイタープレートのウェルの内部表面のような円筒形であってよい。また、上記表面は、平坦、例えばシート、膜、試験ストリップ、チップ、スライド等でもあってよい。好ましい担体は、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースでコートされたスライド、96−ウェルマイクロタイタープレート、及びポリスチレン又はカルボキシルビーズである。当業者は、多数の他の担体が抗体又は抗原を結合するのに適していることを理解し、または日常の実験により確かめることができる。 上記の酵素免疫測定法(ELISA)は、標識として酵素を用いたELISAのみに限られず、放射性同位体を標識として用いたラジオイムノアッセイ(RIA)や蛍光物質を標識として用いた蛍光イムノアッセイ(FIA)などの改変法も含む。これら個々の免疫化学的測定法を適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされず、公知の総説、成書などを参照することができる。 本実施形態における免疫測定法として、ELISA法、中でもサンドイッチELISA法を使用することができる。(イムノクロマトグラフィー法) 本実施形態における免疫測定法として、イムノクロマトグラフィー法を使用することができる。イムノクロマトグラフィー法とは、毛細管現象により検体がメンブレン上を移動する際、検体中の抗原と標識抗体及び捕捉抗体の三者により免疫複合体が形成され、その標識物の集積を目視で確認できる測定方法である。特別な装置を必要とせず、また、洗浄操作が必要ないので、簡便に測定することができる。イムノクロマトグラフィー法は広くよく知られた技術であり、一般的な技術手段の詳細については、公知の総説、成書などを参照することができる。 イムノクロマトグラフィー法は、大きく分けて補足試薬部と標識試薬部位を用いる。補足試薬部位では、抗原を補足するための抗体が固定される。補足試薬部位に使われる固相用担体としては、毛管現象を示す微細多孔性物質からなる不活性のものであって、使用される第一試薬、標識試薬、被検出物質などと反応しないものであれば、特にその素材が限定されるものではない。具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ニトロセルロース又は酢酸セルロース等のセルロース誘導体等で構成される繊維状又は不織繊維状マトリクス、膜、濾紙、ガラス繊維濾紙、布、綿等が挙げられる。好ましくはセルロース誘導体やナイロンの膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等であり、より好ましくはニトロセルロース膜、混合ニトロセルロースエステル(ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合物)膜、ナイロン膜、濾紙である。 抗体を固相するための濃度は、0.1μg/ml〜10mg/mlの濃度が好ましく、10μg/ml〜1mg/mlの濃度がより好ましい。 標識試薬部位には、抗原を検出するために標識された抗体が含まれる。標識は、上述の標識手段を適宜用いることができる。 イムノクロマトグラフは、これら2つの部位と検体を供給するためのガラスフィルター、吸収用のろ紙などを合わせる事で構築される。使用される媒体の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び結果の観察の点において適切であればよい。操作をより簡便にするためには、判定部位が表面に形成されているクロマトグラフ媒体の裏面に、プラスチックなどよりなる支持体を設けることもできる。この支持体の性状は特に制限されるものではないが、目視判定によって測定結果の観察を行う場合には、支持体は、標識物質によりもたらされる色彩と類似しない色彩を有するものであることが好ましく、通常、無色又は白色であることが好ましい。(抗体アレイ) 本実施形態における免疫測定法として、抗体アレイを使用することができる。抗体アレイとは、抗体を支持体に多数固定化し、それに対する反応(低分子化合物や他のタンパク質の結合など)を検出する方法である。かかる抗体アレイを用いることにより、本発明のPBP2及びPBP2’抗原を含む複数の抗原やタンパク質について同時に評価を行うことが可能となり、迅速な検出が可能となる。 抗体アレイの支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜)、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、ゲル、金属(例えば、金薄膜)、セラミクスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。ナイロン、ニトロセルロースおよびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの膜が、本発明のアレイにおける支持体としての使用に適している。 抗体アレイによる抗原の検出は、使用する抗体アレイの形態によっても異なるが、例えば、試料から抽出された抗原を標識し、次いでこれを抗体アレイ上の各抗体に反応させることにより行なうこともできるし、あるいは、固相化された抗体と標識抗体を用いてサンドイッチアッセイにより行うこともできる。標識は、上述の標識手段を適宜用いることができる。 抗体アレイは、当該分野で周知の方法によって、抗体を支持体上に固定することにより作製することができる。抗体を支持体上に固定する方法としては、例えば、共有結合により固定する方法、非共有相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子結合)により固定する方法、静電的結合により固定する方法が挙げられるが、実験の再現性を考慮すれば共有結合により固定する方法が好ましい。また、支持体がガラス、プラスチック、金薄膜などの場合は、支持体表面上の官能基に、抗体に含まれるアミノ酸の官能基を反応・結合させることにより、抗体を支持体上に固定することもできる。 本実施形態における抗体アレイは、タンパク質または核酸アレイを製造するために使用される任意の方法を用いて作製することができる。例えば、スプリットピンまたはインクジェットプリンタを備えるロボットのプリンタであるマイクロスポッタを使用して、抗体をアレイ上にスポットできる。スポットされる抗体濃度としては、0.1μg/ml〜10mg/mlの濃度が好ましく、10μg/ml〜1mg/mlの濃度がより好ましい。スポットの大きさは、半径0.01mm以上10mm以下が望ましく、半径0.05mm以上2mm以下が望ましい。抗体アレイの製造方法としては、例えば、特表2010−533842に記載されている。 抗体アレイでの検出は、例えば基質と反応し発光する酵素を標識物質として使用した場合、例えばCCD(Charge Coupled Devices)カメラ等で全てのアレイ領域を画像撮影し、発光量を輝度値として測光すればよい。このような抗体アレイの測定装置として、ルミノ・イメージアナライザーLAS300(FUJIFILM社製)が挙げられる。 抗原抗体反応および検出工程における反応条件、反応に用いる試薬成分等は、本発明の目的を果たせる範囲で最適化すればよい。本発明のPBP2及びPBP2’抗原の両抗原の検出は、別個に行ってもよく、順次行ってもよく、また、同時に行っても良い。例えば、イムノクロマトグラフィー法や抗体アレイのような、複数の抗体を同時に使用し、それぞれの抗原の存在を同時検出できるような検出系を選択すれば、検出操作が一層簡便となり、効率良い検出・判定が可能となる。(抽出物を用いたMRSA/MSSAの判定) 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌の判定方法は、上記の抽出工程、検出工程の後、その検出結果に基づいて、前記被検体中の黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であるか、またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌であるかを判定することを特徴とする。 上記のような各種抗原検出方法を用いてPBP2’およびPBP2を検出する工程を行った結果、抽出物中にPBP2’が検出された検体は、「MRSA」であると判断される。また、PBP2が検出されたがPBP2’は検出されなかった検体は「MSSA」である、と判断される。 一方、PBP2’が検出されず、かつ、PBP2も検出されなかった検体については、その菌が黄色ブドウ球菌ではないか、あるいは、黄色ブドウ球菌(MRSAまたはMSSA)ではあったが検体量が少なすぎた、もしくは、何らかの操作を誤った等の不適切な検出条件で試験が行われたことが示唆される。本発明の方法は、このような場合に直ちに再測定や測定手順の見直しを行うことができるという点でも、PBP2’のみを検出する方法よりも確実性に優れている。[実施形態3:黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬] 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬は、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含み、pHが5.0以下である、黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬である。かかる試薬によれば、黄色ブドウ球菌からPBP2’およびPBP2を同時に効率的に抽出することができる。 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬は、基本的には、実施形態1において具体的に説明した抽出試薬と同様の構成および作用効果を有する。よって、実施形態1と同様の内容については、適宜説明を省略する。本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬は、上述の各成分を組み合わせて調製することができる。また、本実施形態に係る黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬は、所望により、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含む。 本発明の抽出試薬は、本発明の目的とする効果を損なわない限り、上記成分の他に保存料、緩衝剤などを含んでもよい。また、本発明の抽出試薬は、構成成分の全てを混合した状態で1つの容器に収納しても、あるいは二成分以上に分けて複数容器に収容し、使用時に混合調製してもよい。[実施形態4:黄色ブドウ球菌抗原を検出するための免疫測定キット] 本実施形態に係る黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キットは、上記の黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬を含む、黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キットである。かかるキットによれば、得られた抽出物中の抗原の検出結果に基づいて、試験菌株がMRSAであるかMSSAであるかを、より確実に判定することができる。本実施形態に係る黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キットは、必要に応じて、上記の抽出試薬を収容した容器と、抗原の検出手段と、測定方法の説明書と、必要に応じ被検物質(抗原)の標準品等とを含むことができる。例えば、抗原の検出手段として抗原の免疫測定手段を含む黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キットは、本実施形態に係る免疫測定キットの好ましい一例である。 以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、以下記載される記述は本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」および「部」は、重量%および重量部をいう。(実施例1) ブドウ球菌抗原抽出試薬の調製とMRSAからの黄色ブドウ球菌抗原の抽出1. MRSA検体の調製 3.7gのBrain Heart Broth (Merck社カタログ番号110493)を100mlの水に溶かし、121℃、20分間、オートクレーブ殺菌して培地とした。この培地にMRSAの臨床分離株を殖菌し、37℃で48時間培養を行った。培養終了後、遠心分離により菌体を回収し、10mlの20mMリン酸緩衝液(pH7.2)に溶解した。次いで、溶解したMRSA菌体液(50μl)をマイクロチューブに分注し、遠心分離により上清を取り除いた。2. 黄色ブドウ球菌抗原抽出試薬を用いたMRSAからの抗原抽出 0.1M HClからなるブドウ球菌抗原抽出試薬、ならびに0.1M HClおよび2.0%(w/w)各種界面活性剤からなるブドウ球菌抗原抽出試薬(いずれもpH5.0以下)を調製した。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤であるエマールNC35(花王社製)、非イオン性界面活性剤であるMEGA−8(同仁化学社製)、TritonX−100(和光純薬工業社製)、Tween20(和光純薬工業社製)、Brij721(SIGMA社製)、陽イオン性界面活性剤であるコータミン86W(花王社製)、両イオン性界面活性剤であるCHAPS(同仁化学社製)、アンヒトール20N(花王社製)を用いた。 前記1.に記載の上清除去後のMRSA菌体に、上述の各種抽出試薬及び、対照として0.1M 水酸化ナトリウム溶液、または0.1M 亜硝酸溶液(200μl)をそれぞれ加えて懸濁した。この菌懸濁液を沸騰水中で2分間煮沸して抽出を行った。抽出工程後の菌懸濁液を氷上で冷却後、0.1M NaOH(200μl)と100mMリン酸緩衝液(pH8.0、20μl)を菌懸濁液に添加し、pH6.0〜8.0に中和した。その後、1,500×gで5分間遠心分離し、上清を得て、続く免疫抗体測定法のための検体を得た。3. 抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体の作製および固相化 PBP2及びPBP2’を特異的に検出する抗体(抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体)は、公知の方法に従い作製した(例えば、特許第3638731号公報記載の方法に準ずる)。得られたモノクローナル抗体の中から、公知の選抜方法により、サンドイッチELISA法で好適に使用可能な「固相用抗体」と、「標識用抗体」との組み合わせを見出した。なお、標識用抗体には、公知の方法(例えば、P.TIJSSEN:エンザイムイムノアッセイ,東京化学同人,216−241記載の方法に準ずる)を用いた化学修飾により、ビオチンを結合させた。 上述の「固相用」の抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体を、0.1M PBS(pH7.5)を用いて2μg/mlの濃度となるよう希釈し、1ウェルあたり50μlをプレートへ分注して、25℃で1時間反応を行うことにより抗体を固相化した。その後、0.05%のTween20、150mMの塩化ナトリウムを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.2)(TBS−T)を1ウェル当り200μlずつ、3回用いて、洗浄を行った。次いで、2%のBSAをTBS緩衝液(pH7.0)を1ウェル当り200μl加えて1時間反応させ、ブロッキングを行った。その後、TBS−Tにて3回洗浄を行った。4. 固相化抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体を用いた免疫測定 抗体を固相化したマイクロプレートに、希釈液(1%BSA TBS−Tween 0.1%)にて10倍希釈した検体を、1ウェルあたり50ulずつプレートへ分注し、25℃で1時間、抗原抗体反応を行わせた。その後、TBS−T(Tween20濃度は0.1%)にて、1ウェル当り200ulずつ、3回洗浄を行った。次いで、ビオチンが結合した標識用抗PBP2抗体および抗PBP2’抗体を、希釈液(1%BSA TBS−Tween 0.1%)にて1.0ug/mlになるように希釈し、1ウェル当り50ulずつプレートへ分注し、25℃で1時間、抗原抗体反応を行わせた。 TBS−T(Tween20濃度は0.1%)にて、1ウェル当り200ulずつ、3回洗浄した後、希釈液(1%BSA TBS−Tween 0.1%)にて1ug/mlとなるよう調製したストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼ(Thermo社カタログ番号21126)を、1ウェルあたり50ulずつプレートへ分注し、25℃で30分反応させた。 TBS−T(Tween20濃度は0.1%)にて、1ウェル当り200μlずつ、3回洗浄した後、o−フェニレンジアミン1mg/ml、過酸化水素0.5μl/mlを加えた25mMクエン酸緩衝液(pH5.0)を、1ウェル当り100μlずつ加えて10分間発色反応を行わせた後、純水で90倍に希釈した濃硫酸溶液を1ウェル当り30ul加えて、反応を停止した。マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製SPECTRAmax)を用いて、波長490nmの吸光度を測定した。結果を表1に示す。(結果と考察) PBP2’、PBP2それぞれに対する抗体を用いて測定した結果に関し、検体の代わりに希釈液(TBS−T)を入れたものを用いて測定した吸光度をブランクとして差し引いた後の値を表中に示す。表1に示す通り、塩酸を含む抽出試薬、または塩酸および界面活性剤を含む抽出試薬を用いて抽出を行った検体においては、PBP2’およびPBP2両方の測定値がブランクに比べて明確に高く、PBP2’およびPBP2の両方を検出できた。また、界面活性剤の種類により、抽出効率には差がみられることも確認され、コータミン86W、アンヒトール20N、Brij721などを塩酸と組み合わせて用いた場合には、特に高い吸光度が得られた。なお、塩酸以外の他の酸(酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸)を使用した場合も、同様の結果が得られた。 一方、水酸化ナトリウムを使用した塩基性の抽出試薬を使用した場合には、PBP2’については検出できたが、PBP2を測定した場合の吸光度は0となり、検出する事ができなかった。塩基性条件下においては、水酸化ナトリウムによってPBP2が良好に抽出されないか、抽出されてもその後抽出液中でPBP2が分解されてしまい、測定値として検出できていない可能性が示唆される。さらに、亜硝酸を使用した方法では、PBP2、PBP2’共に検出できなかった。この原因は明確ではないが、非特許文献5に開示されているような亜硝酸を用いた抗原抽出法は、糖鎖など、炭水化物性の抗原を抽出する目的に使用されているものであり、PBP2、PBP2’などのタンパク性の抗原を抽出する目的に対しては効果がなかったと推測される。(実施例2) ウェスタンブロット法によるMRSAの検出 実施例1記載の方法に準じ、MRSAの臨床分離株から抗原を抽出し、シェーガーらの方法に準じて電気泳動した。このとき、標品として精製抗原も同時に泳動した。泳動後、トービンらの方法(Towbin et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 76,p.4350−4354(1979))の方法に準じて、泳動された抽出抗原をPVDF膜上に固定化した。次いで、PVDF膜上の蛋白非固定化部分を、2%BSAを含むTBS緩衝液によりブロッキングした。 ブロッキング後のPVDF膜に、1%BSA TBS−Tween 0.1%で1,000倍に希釈したPBP2’またはPBP2に対するポリクローナル抗体を滴下し、室温に1時間放置した。その後、TBS−T(Tween20濃度は0.1%)にてこのPVDF膜を洗浄し、未反応のポリクローナル抗体を除去した。続いて0.1%BSA(TBS−Tween 0.1%)で5,000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(市販品)を滴下して室温で30分間放置した。その後、再びTBS−T(Tween20濃度0.1%)でPVDF膜を洗浄し、続いて、精製水でPVDF膜を洗浄した。発光検出キットECL−PLUS(GE社製カタログ番号RPN2132)を4ml滴下して、発光検出装置LAS−3000(富士フィルム社製)を使用し、6分間積算してバンドを検出した。バンドは、PBP2の場合81kDa付近、PBP2’の場合78kDa付近に検出される。(結果と考察) 表2に結果を示す。バンドが確認できたものを+、出来なかったものを−と示した。表2に示す通り、本抽出方法がPBP2、PBP2’の両方を同時に抽出できる事が示された。 また、実施例1の結果と同様に、水酸化ナトリウムを使用した塩基性の抽出試薬を使用した場合には、PBP2’のバンドは検出できたが、PBP2のバンドは確認できなかった。さらに、亜硝酸を使用した方法では、PBP2、PBP2’共に検出できなかった。(実施例3) 本発明の黄色ブドウ球菌の判定方法を用いた、MRSAおよびMSSAの判別 本発明の黄色ブドウ球菌の判定方法を用いてMRSA、MSSAの判別が行えることを確認する目的で、予めMRSAまたはMSSAであることが確認されている臨床分離株3株ずつを用いて、MRSAとMSSAの判別試験を行った。実施例1と同様の方法に従い、それぞれ菌を培養し、回収した菌体を本抽出試薬である0.1M HCl+2.0%tween20溶液200μl(pH5.0以下)に懸濁した。菌懸濁液を沸騰水中で2分間煮沸し、氷上で冷却後、この菌懸濁液に0.1M NaOH(200μl)と100mMリン酸緩衝液(pH8.0、20μl)を添加し、pH6.0〜8.0に中和した。その後、1,500×gで5分間遠心し、上清を検体とし、実施例1の4.に記載の免疫測定法に供した。(結果と考察) 表3に結果を示す。結果の表示は、ブランクと比べて明確に吸光度が高くなった検体を+、吸光度が上がらなかった検体を−として示す。表3の通り、MRSA株は3株とも、PBP2、PBP2’の両方を保持しており、実際に両方の抗原が検出され、MRSAであることが確認できた。一方、MSSA株はPBP2’を持たず、PBP2のみが検出された。 これらの結果から、本抽出方法がMRSAとMSSAの判別に有効である事が示された。(実施例4) 抗体アレイ法によるMRSA、MSSAの判別 本発明の黄色ブドウ球菌の判定方法を用いてMRSA、MSSAの判別が行えることを確認する目的で、予めMRSAまたはMSSAであることが確認されている臨床分離株MRSA、MSSAそれぞれ各29株を用いて、抗体アレイ法によるMRSAの判別試験を行った。実施例1と同様の方法に従い、それぞれ菌を培養し、回収した菌体を本抽出試薬である0.1M HCl+2.0%アンヒトール20N溶液200μl(pH5.0以下)に懸濁した。菌懸濁液を沸騰水中で2分間煮沸し、氷上で冷却後、この菌懸濁液に0.1M NaOH(200μl)と100mMリン酸緩衝液(pH8.0、20μl)を添加し、pH6.0〜8.0に中和した。その後、1,500×gで5分間遠心し、上清を検体とした。 抗体アレイの作製 図1に示したレイアウトの抗体アレイを作製した。アレイ用のスライドはPATH Slide(GENTEL BIOSCIENCES社)を使用し、実施例1で使用した固相用の抗PBP2抗体、抗PBP2’抗体を各0.5 mg/mlの濃度でマイクロインジェクトスポッターを使用してスライドにスポットした。また、ポジティブコントロールとして、ビオチン化BSAを1.0μg/mlの濃度でスポットした。作製したスライドは6時間室温で放置したのち、使用する前まで4℃で保存した。 スライドインキュベーションチャンバー16ウェル(GEヘルスケア社 No. 10486046)とチップクリップ(GEヘルスケア社 No. 10486081)を使用しアレイの周囲を囲みブロックで分けた。各ウェルに2%のBSAを含むTBS緩衝液(pH8.0)を1ウェル当り100μl加えて1時間反応させ、ブロッキングを行った。次に各ウェルにTBS−Tを100μl入れて洗浄を行い、これを3回繰り返した。次に、菌株から抽出したサンプルを、1ウェルあたり50μlずつウェルへ分注し、25℃で1時間、抗原抗体反応を行わせた。その後、TBS−T(Tween20濃度は0.1%)にて、1ウェル当り100μlずつ、3回洗浄を行った。次いで、ビオチンが結合した標識用PBP2抗体、PBP2’抗体を、希釈液(1%BSA TBS−Tween 0.1%)にて各10.0μg/mlになるように濃度を調整した混合液を1ウェル当り50μlずつ分注し、25℃で1時間、抗原抗体反応を行わせた。 TBS−Tにて、1ウェル当り100μlずつ、3回洗浄を行った後、InteliteAB(キッコーマン社製)のビオチン化ルシフェラーゼ−ストレプトアビジン複合体を1ウェル当り50μlずつへ分注し30分反応させた。その後、TBS−Tにて、1ウェル当り100μlずつ、3回洗浄を行い、さらにTBSで1ウェル当り100μlずつ、1回洗浄を行った。 抗体アレイの測定は、発光検出装置であるルミノ・イメージアナライザーLAS300(FUJIFILM社製)を使用した。ルシフェリンとATPとマグネシウムイオンが含まれたInteliteABのルシフェラーゼ発光基質液を各ウェルに100μlずつ添加し発光させ、5分間発光を測定した。(結果と考察) 図2に得られたMSSAとMRSAの抗体アレイ測定画像をそれぞれ1株ずつ示す。図は発光が検出された部分を黒色で表している。MSSAを測定した場合、抗PBP2抗体をスポットした部分は発光しており、PBP2の検出を示している。一方、抗PBP2’抗体をスポットした部分は発光せず、PBP2’が検体中にないことを示している。したがって、この検体がMSSAであると判別できた。また、MRSAを測定した場合、PBP2、PBP2’抗体をスポットした部分が両方発光しており、PBP2、PBP2’が検体中に含まれている事を示している。よってこの検体がMRSAであると判別できた。 表4にMRSA、MSSA各29株を抗体アレイで測定した時の判別結果を示す。結果の表示は、検査数に対して、各抗原が検出された検体の数を記した。抗原の検出は、固相した抗体の位置にブランクと比べて10倍以上の高い発光量が測定された場合を検出されたと判定した。表4の通り、MRSA株は29株とも、PBP2、PBP2’両方の抗原が同時に検出され、MRSAであることが確認できた。一方、MSSA株はPBP2’を持たず、PBP2のみが検出された。 これらの結果から、本発明による判定方法がMRSAとMSSAの判別に有効である事が示された。 (実施例5) イムノクロマトグラフィー法によるMRSA、MSSAの判別 本発明の試験方法を用いてMRSA、MSSAの判別が行えることを確認する目的で、予めMRSAまたはMSSAであることが確認されている臨床分離株MRSA29株、MSSA29株を用いて、イムノクロマトグラフィー法によるMRSAの判別試験を行った。イムノクロマトグラフィーテストストリップは下記のように常法に従って作製した。 実施例1で使用した標識用の抗PBP2抗体、抗PBP2’抗体をそれぞれ金コロイドで標識し、ポリスチレン不織布に噴霧した。これを標識試薬部位とする。一方、実施例1で使用した固相用の抗PBP2抗体、固相用の抗PBP2’抗体をそれぞれ同一のニトロセルロースメンブレンに2本のテストラインになるように塗布し、充分に乾燥させた。対照用試薬としてAnti−Mouse IgGを同様にニトロセルロースメンブレンに塗布し、充分に乾燥した。これを補足試薬部位とした。 上記で作製した部位2つと、検体を供給するためのガラスフィルター、吸収用のろ紙を合わせて、イムノクロマトグラフィーテストストリップとした。 実施例4と同様に、MRSA29株、MSSA29株から抗原を抽出し、これを測定サンプルとした。測定サンプル100μlを作製したイムノクロマトグラフィーテストストリップの検体供給部位に投入し、15分後、補足試薬部のテストラインを目視で確認した。(結果と考察) MSSAはPBP2検出用テストラインだけに呈色が確認された。一方、MRSAは、PBP2検出用テストライン、PBP2’検出用テストライン両方にラインが確認できた。表5に測定した検査数と検出数を示す。これらの結果から、本発明による判定方法がMRSAとMSSAの判別に有効である事が示された。 以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。 以上のように、本発明によれば、MRSAを早期に発見し、MRSA感染者あるいはMRSA汚染箇所に対して適切な処置を行うことが可能となり、また、黄色ブドウ球菌が検出された際には、その菌がMRSAなのか、MRSAとは異なる対応を行うべきであるMSSAなのかを確実に区別して、それぞれに適切な処置を行うことが可能となり、黄色ブドウ球菌の検査・診断、特に日常的な検査・診断に非常に有用である。 塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出することを特徴とする、黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法。 前記抽出試薬が、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含む、請求項1記載の黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法。 前記界面活性剤が、エマールNC35、MEGA−8、TritonX−100、tween20、レオコールSC70、レオコールTD90、レオドールTW−0120、Brij721、コータミン86W、コータミン24P、CHAPS、CHAPSO、アンヒトール20Nおよびアンヒトール24Bから選択される1以上である、請求項2記載の黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法。 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原が、ペニシリン結合タンパク2’であり、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原が、ペニシリン結合タンパク2である、請求項1〜3記載の黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法。 抗原の抽出を25〜100℃で行う、請求項1〜4記載の黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法。 塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出する工程と、黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体を用いた免疫測定法によって、抽出された黄色ブドウ球菌抗原を検出する工程と、その検出結果に基づいて、前記被検体中の黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であるか、またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌であるかを判定する工程とを含む、黄色ブドウ球菌の判定方法。 前記免疫測定法が、ラテックス凝集法、比濁法、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、ゲル内沈降反応、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法および抗体アレイからなる群より選択される、請求項6に記載の黄色ブドウ球菌の判定方法。 塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含み、pHが5.0以下である、黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬。 陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含む、請求項8に記載の黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬。 請求項8または9記載の黄色ブドウ球菌抗原を抽出するための試薬を含む、黄色ブドウ球菌を検出するための免疫測定キット。 本発明は、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸および硝酸から選択される1以上の酸を含むpH5.0以下の抽出試薬を用いて被検体中の黄色ブドウ球菌からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌抗原および/またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌抗原を含む黄色ブドウ球菌抗原を抽出することを特徴とする、黄色ブドウ球菌抗原の抽出方法を提供する。本発明はまた、黄色ブドウ球菌の判定方法を提供する。


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