生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_硬化則を利用するシミュレーション方法
出願番号:2010069475
年次:2011
IPC分類:G01N 3/32,G01N 3/00


特許情報キャッシュ

和田 賢介 八木 雄二 渥美 貴司 中川 郁朗 大野 信忠 JP 2011203042 公開特許公報(A) 20111013 2010069475 20100325 硬化則を利用するシミュレーション方法 株式会社豊田中央研究所 000003609 トヨタ自動車株式会社 000003207 国立大学法人名古屋大学 504139662 特許業務法人快友国際特許事務所 110000110 和田 賢介 八木 雄二 渥美 貴司 中川 郁朗 大野 信忠 G01N 3/32 20060101AFI20110916BHJP G01N 3/00 20060101ALI20110916BHJP JPG01N3/32 EG01N3/00 Z 6 4 OL 13 2G061 2G061AA01 2G061AA02 2G061AB05 2G061AC03 2G061AC04 2G061BA03 2G061CA16 2G061CB01 2G061DA11 2G061EC02 本発明は、硬化則を利用するシミュレーション方法に関する。本発明は特に、Cu、Al、Cu合金及びAl合金のいずれか1つからなる金属層と、絶縁セラミックスからなる絶縁層が積層された積層基板において、金属層が飽和したときに、積層基板に生じる挙動を予測するシミュレーション方法に関する。 Cu、Al、Cu合金及びAl合金のいずれか1つからなる金属層と、絶縁セラミックスからなる絶縁層が積層された積層基板において、積層基板に生じる挙動を精度良く予測することは、装置の設計において重要である。例えば、半導体装置で用いられる上記積層基板は、低温と高温の冷熱サイクルに曝される。このため、冷熱サイクルを繰返したときに上記した積層基板に生じる挙動を予測することは、信頼性の高い半導体装置を提供するために必要である。従来は、積層基板に生じる挙動を予測するために、等方硬化則、移動硬化則、又はそれらを複合した硬化則等を利用している。例えば、特許文献1には、等方硬化則と移動硬化則を複合した硬化則を利用するシミュレーション方法が開示されている。特開2003−270060号公報 特許文献1のシミュレーション方法では、金属層の引張試験の結果から、金属層の応力―ひずみ曲線を予測する。しかしながら、特許文献1のシミュレーション方法では、金属層が繰り返し変形(引張と圧縮)したときに硬化する現象を考慮していない。例えば、Cu、Al、Cu合金及びAl合金等の金属層を繰り返し変形させると、金属層が硬化し、金属層の応力が増加する。繰り返し変形を続けると、金属層の応力は飽和する。特許文献1のシミュレーション方法は、この硬化現象を考慮していないので、積層基板に生じる挙動を高精度に予測をすることができない。 従来のシミュレーション方法では、金属層の繰り返し変形を考慮した上で、積層基板に生じる挙動を高精度に予測することを実現するものではない。本明細書は、積層基板の金属層に生じる事象を高精度に予測する技術を提供することを目的とする。 本明細書に開示するシミュレーション方法は、金属層が飽和したときの応力−ひずみの関係を反映した曲線に基づいて硬化則に導入する材料定数を作成することを特徴とする。なお、本明細書に開示するシミュレーション方法では、シミュレーション対象は、Cu、Al、Cu合金及びAl合金のいずれか1つからなる金属層と、絶縁セラミックスからなる絶縁層が積層された積層基板である。「応力−ひずみの関係を反映した曲線」は、硬化則の材料定数を特定するために必要な曲線に対して、上記金属層が飽和したときの応力−ひずみ曲線に係る関数を反映させたものである。ここで、上記金属層が飽和したときの応力−ひずみ曲線は、金属層を所定のひずみ振幅で繰り返し変形させ、飽和時の応力―ひずみ曲線を実測して得ることができる。あるいは、既に知られている飽和時の応力―ひずみ曲線を利用してもよい。上記シミュレーション方法によると、金属層が飽和したときの特性が反映されるので、金属層に生じる挙動を高精度に予測することができる。その結果、積層基板に生じる挙動を高精度に予測することができる。 前記応力−ひずみの関係を反映した曲線は、単軸増加曲線であることが好ましい。この単軸増加曲線は、例えば、以下の2方法で得ることができる。1つの方法では、単軸増加曲線は、複数のひずみにおける飽和ヒステリシス曲線の最大応力値から得ることを特徴とする。このようにして得られた単軸増加曲線は、金属層に生じる挙動を高精度に予測可能なことが本願明細書で実証されている。 他の1つの方法では、単軸増加曲線は、金属層が飽和したときの飽和ヒステリシス曲線の引張過程又は圧縮過程の曲線から得ることを特徴とする。このようにして得られた単軸増加曲線も、金属層に生じる挙動を高精度に予測可能なことが本願明細書で実証されている。 本明細書に開示するシミュレーション方法の硬化則は、移動硬化則であることが好ましい。金属層に生じる挙動をより高精度に予測可能である。 本明細書が開示する技術では、移動硬化式が、Ohno−Wangモデルであることが好ましい。なお、Ohno−Wangモデルの具体的な内容は、「“KINEMATIC HARDENING RULES WITH CPITICAL STATE OF DYNAMIC RECOVERY, PART I: FORMULATION AND BASIC FEATURES FOR RATCHETTING BEHAVIOR”International Journal of Plasticity, Vol. 9, pp.375-390, 1993」に記載されている。 本明細書で開示されるシミュレーション方法によると、金属層の繰り返し変形が考慮されているので、積層基板に生じる挙動を高精度な予測を実現することができる。金属層と、その金属層を変形させる方向を説明する図を示す。応力―ひずみ曲線の実測値を示す。伸縮試験のサイクル数と応力の関係を表すグラフを示す。実施例のシミュレーション方法を説明するフローチャートを示す。実施例1の単軸増加曲線の作成方法を説明する図を示す。材料定数を作成する方法を説明する図を示す。実施例1の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.1%)。実施例1の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.2%)。実施例1の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.35%)。実施例1の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.5%)。実施例2の単軸増加曲線の作成方法を説明する図を示す。実施例2の単軸増加曲線の作成方法を説明する図を示す。実施例2の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.1%)。実施例2の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.2%)。実施例2の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.35%)。実施例2の材料定数を利用した、応力―ひすみ曲線のシミュレーション結果を示す(ひずみ振幅:±0.5%)。積層基板の断面図を示す。金属層の厚みが0.05mmのときの、積層基板の熱膨張率のシミュレーション結果を示す。金属層の厚みが0.30mmのときの、積層基板の熱膨張率のシミュレーション結果を示す。 以下に説明する実施例の特徴についていくつか記載する。(第1特徴)実施例1では、金属層が飽和したときの飽和ヒステリシス曲線の引張過程の曲線から、単軸増加曲線を作成する。(第2特徴)実施例2では、複数のひずみ振幅で金属層を変形させ、夫々の飽和ヒステリシス曲線の最大応力値を通過する曲線に基づいて単軸増加曲線を作成する。(第3特徴)実施例1と2では、金属層の飽和時の応力―ひずみ曲線をシミュレーションする。(第4特徴)実施例3では、積層基板に冷熱サイクルが加えられた後の積層基板の熱膨張係数をシミュレーションする。(第5特徴)材料定数は、金属層の単軸増加曲線における塑性変形領域に基づいて算出する。 本実施例では、銅(Cu)片(金属層の一例)を繰り返し振幅させたときの、その銅片の飽和時の応力―ひずみ曲線をシミュレーションする。本実施例のシミュレーション方法を利用すれば、金属層を繰り返し冷却・加熱(以下、冷熱サイクル試験という)したときの金属層の応力―ひずみ曲線をシミュレーションすることができる。なお、本実施例では金属層として銅片を利用する例について説明するが、アルミニウム(Al)、銅合金又はアルミニウム合金を利用した金属層についても同様にシミュレーションすることができる。 図1から図6を参照し、本実施例のシミュレーション方法を説明する。図1は、銅片2を示す。図2は、銅片2を図1のx軸方向に繰り返し引張・圧縮(以下、引張・圧縮試験という)させたときの応力の変化を示す。グラフの横軸はひずみ(%)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。図3は、引張・圧縮試験中の、応力の最大値と最小値を示す。グラフの横軸は引張・圧縮試験のサイクル数を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。図4は、本実施例のシミュレーション方法のフローチャートを示す。図5は単軸増加曲線を作成する方法を説明する図を示し、図6は材料定数を算出する方法を説明する図を示す。図5と図6では、グラフの横軸はひずみ(%)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。 まず、図1に示すように、銅片2をx方向に繰り返し引張・圧縮する。銅片2は、ひずみ振幅±0.5%で繰り返し変形させる(実測データ入手工程:図4のS2工程)。図2の曲線12は引張・圧縮1〜3回目までの結果を示し、曲線14は銅片2の応力が飽和したときの結果を示す。すなわち、曲線14は、銅片2の飽和ヒステリシス曲線を示している。図2に示すように、銅片2の応力は除々に大きくなっている。図3に示すように、引張・圧縮試験のサイクル数が増加するに従って、銅片2の応力の最大値16が増加し、最小値18が減少する。これは、銅片2を繰り返し引張・圧縮することにより、銅片2が硬化していることを示している。飽和時の応力の最大値は、1サイクル目の応力の最大値のおよそ3倍である。なお、銅片2の硬化は、およそ630サイクルで飽和している。なお、金属層(銅片2)の飽和ヒステリシス曲線14が既知の場合、実測データ入手工程を省略してもよい、 単軸増加曲線を作成する方法を示す。図5の曲線14は、図2に示す飽和時の応力―ひずみ曲線14に相当する。曲線14は、ヒステリシス曲線であり、銅片2の応力が増加する範囲14aと減少する範囲14bを有する。範囲14aは、銅片2に引張応力が作用しているときの曲線に相当する。また、範囲14bは、銅片2に圧縮応力が作用しているときの曲線に相当する。点14cは、銅片2に加えられる力が圧縮から引張に変わるときを示している。すなわち、点14cは、銅片2の応力の最小値を示している。本実施例では、単軸増加曲線は、曲線14aを使用して作成する(図4のS4工程)。 図6の曲線22は、図5の曲線14aの相似曲線である、単軸増加曲線を示す。曲線22は、曲線14の点14cを原点とする曲線14aに相当する。ただし、曲線22は、曲線14aのサイズを2分の1に縮小したものである。すなわち、曲線22は、曲線14aのひずみの大きさを2分の1にするとともに、応力の大きさも2分の1に縮小した曲線である。曲線14aは、銅片2の応力の最小値から最大値を結ぶ曲線であり、銅片2を単軸方向に引張っているときの応力―ひずみ曲線である。そのため、曲線22は、単軸引張曲線ということもできる。図6の直線24は、曲線22に接するとともに原点を通過する直線である。原点から直線24と曲線22が接するまでの範囲は、銅片2が弾性変形する領域である。直線24により、曲線22を弾性変形領域26と塑性変形領域28に分割することができる。材料定数は、曲線22の塑性変形領域28の応力―ひずみ関数から算出(材料定数作成工程:S6)する。なお塑性変形領域28における応力―塑性ひずみ関数は、式1で表すことができる。[数1] εp=ε−σ/E (式1) 上記式1において、εpは塑性ひずみを表し、εはひずみを表し、σは応力を表し、Eはヤング率を表す。また、ヤング率Eは、直線24から算出することができる。材料定数は、上記式1から塑性ひずみと応力のテーブル表を作成してもよいし、上記式1をそのまま利用してもよい。 次に、得られた材料定数を、Ohno−Wangモデル(移動硬化則の一例)を材料構成式とするシミュレーションソフトに入力する(図4のS8工程)。このときに、銅片2に加える荷重や、温度条件、熱膨張係数、ポアソン比等もシミュレーションソフトに入力する。本実施例では、シミュレーションソフトとして、ABAQUS(Dassault Systemes Simulia Corp. 製品)を使用した。その後、必要に応じて銅片2の応力―ひずみ曲線をグラフ等に表示する(図4のS10工程)。 図7から図10は、本実施例のシミュレーション結果を示す。なお、シミュレーション結果に併せて、銅片2の飽和時の応力―ひずみ曲線の実測データも示す。図7は、ひずみ振幅±0.1%で銅片2を変形させたときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線40はシミュレーション結果を示し、曲線41は実測データを示す。図8は、ひずみ振幅±0.2%で銅片2を変形させたときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線42はシミュレーション結果を示し、曲線43は実測データを示す。図9は、ひずみ振幅±0.35%で銅片2を変形させたときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線44はシミュレーション結果を示し、曲線45は実測データを示す。図10は、ひずみ振幅±0.5%で銅片2を変形させたときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線46はシミュレーション結果を示し、曲線47は実測データを示す。図7から図10に示す夫々のグラフでは、横軸はひずみ(%)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。 図7から図10に示すように、本実施例のシミュレーション結果は、銅片2のひずみ振幅の大きさに係わらす、実測データとほぼ同じ結果を示している。これは、銅片2を繰返し変形させ、飽和時の応力―ひずみ曲線に基づいて、材料定数を作成しているからである。上記したように、従来の移動硬化則は、金属層が繰り返し変形すことにより金属層にかかる応力が増加することを考慮しない。しかしながら、図3に示すように、銅片2の飽和時の応力の最大値は、1サイクル目の応力の最大値のおよそ3倍である。飽和時の応力―ひずみ曲線に基づいて材料定数を作成しなければ、金属層の飽和時の応力―ひずみ曲線を精度よくシミュレーションすることができない。そのため、本実施例のシミュレーション方法は、従来の移動硬化則を利用するシミュレーション方法にくらべ、精度の高いシミュレーションを行うことができる。また、図7から図10の実測データに示すように、ひずみ振幅が大きくなると、飽和応力も大きくなる。従来の等方硬化則は、ひずみ振幅の大きさに係わらず飽和応力が同じになる。それに対して、本実施例のシミュレーション方法によると、ひずみ振幅が大きくなると、飽和応力も大きくなる。本実施例のシミュレーション方法は、従来の等方硬化則を利用するシミュレーション方法にくらべても、精度の高いシミュレーションを行うことができる。 図11と図12を参照し、本実施例のシミュレーション方法を説明する。本実施例は、実測データ入手工程(図4のS2工程)と単軸増加曲線作成工程(図4のS4工程)が、実施例1と異なる。本実施例では、図11示すように、複数のひずみ振幅について応力―ひずみ曲線を実測する(S2工程)。グラフの横軸はひずみ(%)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。曲線30はひずみ振幅±0.1%の飽和応力曲線を示し、曲線32はひずみ振幅±0.2%の飽和応力曲線を示し、曲線34はひずみ振幅±0.35%の飽和応力曲線を示し、曲線36はひずみ振幅±0.5%の応力飽和曲線を示す。符号30a,32a,34a及び36aは夫々、曲線30,曲線32,曲線34及び曲線3の応力の最大値を示す。単軸増加曲線作成工程では、図12に示すように、原点0と最大値30a,32a,34a及び36aを通過する曲線38を作成する。その後の工程は、実施例1と同じなので省略する。 図13から図16は、本実施例のシミュレーション結果を示す。なお、シミュレーション結果に併せて、飽和時の応力―ひずみ曲線の実測データも示す。図13は、ひずみ振幅±0.1%のときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線50は実測データを示し、曲線51はシミュレーション結果を示す。図14は、ひずみ振幅±0.2%のときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線52は実測データを示し、曲線53はシミュレーション結果を示す。図15は、ひずみ振幅±0.35%のときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線54は実測データを示し、曲線55はシミュレーション結果を示す。図16は、ひずみ振幅±0.5%のときの応力―ひずみ曲線を示す。曲線56は実測データを示し、曲線57はシミュレーション結果を示す。図13から図16に示す夫々のグラフでは、横軸はひずみ(%)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。 本実施例のシミュレーション結果でも、銅片2のひずみ振幅の大きさに係わらず、実測データとほぼ同じ結果を示している。本実施例の方法で材料定数を作成しても、従来のシミュレーション方法に比べ、精度の高いシミュレーションすることができる。 なお、上記実施例1,2では、材料構成式として移動硬化則の1つであるOhno−Wangモデルを採用した。しかしながら、上記実施例で得られた材料定数を、Ohno−Wangモデル以外の移動硬化則に適用することもできる。あるいは、上記実施例で得られた材料定数を、等方硬化則に適用することもできる。上記実施例では、金属層の飽和時の応力―ひずみ曲線の実測データに基づいて材料定数を作成しているので、従来の移動硬化則あるいは従来の等方硬化則を利用するシミュレーション方法よりも、精度の高いシミュレーションをすることができる。 本実施例では、図17に示す積層基板80を−40℃まで冷却し、200℃まで加熱する繰り返しを1サイクルとする冷却・加熱試験(以下、冷熱サイクル試験という)を3000サイクル行い、その後、積層基板80を−40℃から200℃まで加熱したときの熱膨張係数をシミュレーションした。積層基板80は、金属層(Cu)82と絶縁セラミックス層(Si3N4)84を備えており、絶縁セラミックス層84の両面に、金属層82が接合されている。金属層82は、冷熱されると収縮し、加熱されると伸長する。すなわち、冷熱サイクル試験をすると、金属層82に圧縮・引張の力が繰り返し作用する。そのため、金属層82の飽和時の応力―ひずみ曲線をシミュレーションできれば、金属層82が絶縁セラミックス層84に加える応力を計算することができる。その結果、金属層82の硬化が飽和しているときの積層基板80の熱膨張係数をシミュレーションすることができる。本実施例では、金属層82の厚みT82として、0.05mm,0.30mmの2条件についてシミュレーションした。なお、金属層82の厚みT82が0.05mmの場合、200℃と−40℃で冷却・加熱することにより、金属層82に最大で±0.25%のひずみ振幅が加えられる。また、金属層82の厚みT82が0.30mmの場合、金属層82に最大で±0.29%のひずみ振幅が加えられる。いずれのひずみ振幅の場合も、冷熱サイクル試験を3000サイクル実施することにより、金属層82の応力が飽和する。 図18と図19に、温度と熱膨張率のシミュレーション結果を示す。本実施例では、実施例1又は実施例2で説明した方法により材料定数を算出し、その材料定数を硬化則の材料構成式に導入し、温度と熱膨張率をシミュレーションした。図18は金属層82の厚みT82が0.05mmの結果を示し、図19は金属層82の厚みT82が0.30mmの結果を示す。図18の曲線60は実測データを示し、曲線62群は本実施例の方法によるシミュレーション結果を示し、曲線64は従来の方法によるシミュレーション結果を示す。また、図19の曲線70は実測データを示し、曲線72群は本実施例の方法によるシミュレーション結果を示し、曲線74群は従来の方法によるシミュレーション結果を示す。曲線62群,72群及び74群の詳細については後述する。なお、グラフの横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱膨張率(%)を示す。また、熱膨張率は、温度が21℃のときの積層基板80を長さLとし、各温度における積層基板80の伸び量を長さdLとしたときに、dL/Lで表すことができる。 図18の曲線62群は、実施例1の方法で材料定数を取得し(以下算出法1という)、等方硬化則でシミュレーションした曲線と、実施例2の方法で材料定数を取得し(以下算出法2という)、等方硬化則と移動硬化則でシミュレーションした曲線を示している。曲線64は、従来の等方硬化則でシミュレーションした曲線を示している。すなわち、曲線64のシミュレーションでは、実施例1又は実施例2の方法で取得した材料定数を導入していない。図19の曲線72群は、算出法1で材料定数を取得し、等方硬化則と移動硬化則でシミュレーションした曲線と、算出法2で材料定数を取得し、等方硬化則と移動硬化則でシミュレーションした曲線を示している。曲線74群は、従来の等方硬化則と従来の移動硬化則でシミュレーションした曲線を示している。 図18と図19に示すように、本実施例のシミュレーション方法によると、従来のシミュレーション方法よりも実測データに近い結果を得られることが確認された。特に、金属層82の厚みが厚いときに、すなわち、金属層82のひずみ振幅が大きいときに、その効果が顕著に現れている。なお、図18では図示を省略しているが、算出法1で材料定数を取得し、移動硬化則でシミュレーションすると、従来の移動硬化則でシミュレーションした結果よりも、実測値に近い結果が得られる。 図18と図19に示す曲線を利用し、積層基板80の熱膨張係数を計算した。計算結果を表1に示す。 表1に示すように、材料定数を算出法1又は算出法2で取得すると、従来法で材料定数を取得するよりも、実測値に近い熱膨張係数をシミュレーションすることができる。特に、材料構成式として移動硬化則(Ohno−Wangモデル)を使用すると、その傾向が顕著である。金属層82の厚みT82が0.30mmの場合、算出法1又は算出法2で取得した材料定数を使用して移動硬化則でシミュレーションした結果は、実測値との差が1.0ppm/℃以内である。また、算出法1又は算出法2で取得した材料定数を使用して等方硬化則でシミュレーションした結果は、実測値との差が1.4ppm/℃以内である。それに対して、従来法で取得した材料定数を使用すると、移動硬化則でシミュレーションしても、等方硬化則でシミュレーションしても、実測値との差が1.8ppm/℃以上である。よって、本実施例のシミュレーション方法は、従来のシミュレーション方法よりも、複合材料の熱膨張係数を精度よくシミュレーションできることが確認された。なお、算出法2で取得した材料定数を使用したシミュレーション結果は、算出法1で取得した材料定数を使用したシミュレーション結果よりも、より実測値に近い結果を示した。 以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。2,82:金属層22、38:単軸増加曲線80:積層基板84:絶縁層(絶縁セラミックス層) Cu、Al、Cu合金及びAl合金のいずれか1つからなる金属層と、絶縁セラミックスからなる絶縁層が積層された積層基板の挙動を硬化則を利用して予測するシミュレーション方法であり、 前記金属層が飽和したときの応力−ひずみの関係を反映した曲線に基づいて硬化則に導入する材料定数を作成することを特徴とするシミュレーション方法。 前記応力−ひずみの関係を反映した曲線は、単軸増加曲線であることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。 前記単軸増加曲線は、複数のひずみにおける飽和ヒステリシス曲線の最大応力値から得られることを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション方法。 前記単軸増加曲線は、前記金属層が飽和したときの飽和ヒステリシス曲線の引張過程又は圧縮過程の曲線から得られることを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション方法。 前記硬化則は、移動硬化則であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシミュレーション方法。 前記移動硬化則は、Ohno−Wangモデルであることを特徴とする請求項5に記載のシミュレーション方法。 【課題】Cu、Al、Cu合金及びAl合金のいずれか1つからなる金属層と、絶縁セラミックスからなる絶縁層が積層された積層基板の挙動を精度よくシミュレーションする技術を提供する。【解決手段】本シミュレーション方法は、金属層を所定の振幅で繰り返し変形させ、飽和時の応力−ひずみ曲線を示す実測データを入手する工程と、その実測データに基づいて単軸増加曲線を作成する工程と、作成された単軸増加曲線に基づいて硬化則に導入される材料定数を作成する工程とを備える。【選択図】 図4


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