生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_がん発症リスク低減剤
出願番号:2010068545
年次:2013
IPC分類:A61K 35/74,A61K 36/48,A61P 35/00,A61P 15/00,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

戸井 雅和 大橋 靖雄 JP WO2011049154 20110428 JP2010068545 20101021 がん発症リスク低減剤 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 戸井 雅和 大橋 靖雄 JP 2009243251 20091022 A61K 35/74 20060101AFI20130215BHJP A61K 36/48 20060101ALI20130215BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130215BHJP A61P 15/00 20060101ALI20130215BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130215BHJP JPA61K35/74 AA61K35/78 JA61P35/00A61P15/00A61P43/00 121 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130314 2011537295 20 4C087 4C088 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC57 4C087MA02 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA81 4C087ZB26 4C087ZC75 4C088AB59 4C088AC04 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZB26 4C088ZC75 本発明は、継続して摂取することにより乳がんの発症リスクを低減することができる薬剤、食品に関する。 乳がんは、乳房組織に発生する癌であり、治癒を目指す治療手段は原則的に外科手術であり、他に化学療法や放射線療法が併用される。乳がんの発症数は近年急激に増加しており、日本の乳がん罹患率は女性のがん疾患の1位となっている。 乳がんの発症における最大のリスク因子は家族歴である。また、発症にはエストロゲンの長期及び過剰状態が反映されているとされ、具体的には妊娠・出産歴がない、第1子の後、母乳を与えない、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、ホルモン療法を受けている等が知られている。 大豆イソフラボンには、女性ホルモン様作用があり、発がんを抑制する作用があることが報告されている(非特許文献1〜3、特許文献1)。一方、ストレプトコッカス、ビフィドバクテリウム、ラクトバチルス属等の乳酸菌群には、膀胱癌再発抑制作用やアルギニン・ディミナーゼ活性を有すること等が知られている(特許文献2、3)。また、ラクトバチルス属微生物の死菌体が抗発癌作用を有することも知られている(特許文献4)。特開平9−238647号公報特許第3014148号公報特表2002−504324号公報特公平6−96538号公報K.D.R.Setchell,In Estrogens in the Environment,ed by J.A.Mclachlen,pp60−85,Elsevier Science Publishing Co.Inc.,New York,1985Oncogene,6,219,1991J.Steroid Biochem.Mol.Biol,43,557,1992 本発明の課題は、発生してしまった乳がんを治療するのではなく、乳がんの発症前に摂取することにより、乳がんの発症リスクを低減するための薬剤又は飲食品を提供することにある。 そこで本発明者は、乳酸菌の摂取と乳がんの発症リスクとの関係について検討したところ、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する組成物を摂取した女性の乳がんの発症率が、これを摂取していない女性の乳がんの発症率に比べて統計的に有意に減少していることを見出した。またラクトバチルス・カゼイと大豆由来成分とを摂取した女性の乳がんの発症率はさらに減少していることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物を含有する乳がん発症リスク低減剤を提供するものである。 また、本発明は、ラクトバチルス・カゼイの生菌及び大豆由来成分を含有する組成物を含む、乳がん発症リスク低減剤を提供するものである。 また、本発明は、乳がん発症前に、ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物、又はラクトバチルス・カゼイの生菌及び大豆由来成分を含有する組成物を摂取することを特徴とする乳がん発症リスク低減方法を提供するものである。 また、本発明は、乳がん発症リスク低減のための、ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物、又はラクトバチルス・カゼイの生菌及び大豆由来成分を含有する組成物を提供するものである。 また、本発明は、ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物、又はラクトバチルス・カゼイの生菌及び大豆由来成分を含有する組成物の、乳がん発症リスク低減剤製造のための使用を提供するものである。 本発明によれば、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する組成物を摂取することにより、乳がんの発症リスクを有意に低減させることができる。カゼイ又は大豆由来成分の摂取が乳がん発症のオッズ比に及ぼす影響を示すグラフである(グラフ中、Probiotic bevarageはカゼイを含む食品、Soy isoflavone Q1は大豆由来イソフラボンを摂取していない人(18.76mg/日未満)、Q2は低摂取群(18.76〜28.81mg/日)、Q3は中摂取群(28.81〜43.75mg/日)、Q4は高摂取群(43.75mg/日以上)を示す)。カゼイの摂取と大豆由来成分の摂取の交互作用(オッズ比)を示すグラフである(グラフ中、Probiotic bevarageはカゼイを含む食品、Soy isoflavone Q1は大豆由来イソフラボンを摂取していない人(18.76mg/日未満)、Q2は低摂取群(18.76〜28.81mg/日)、Q3は中摂取群(28.81〜43.75mg/日)、Q4は高摂取群(43.75mg/日以上)を示す)。 本発明の乳がん発症リスク低減剤の有効成分は、ラクトバチルス・カゼイの生菌、又はラクトバチルス・カゼイの生菌と大豆由来成分との組み合せである。 本発明に用いられる組成物中のラクトバチルス・カゼイの利用形態は特に制限されず、凍結乾燥、噴霧乾燥したものであってもよく、あるいは細菌を含む培養物、菌体処理物として利用することもでき、細菌が生菌の状態で存在するものであればいずれの形態であってもよい。ラクトバチルス・カゼイの菌株としては特に制限はないが、好ましい例としてラクトバチルス・カゼイ YIT 9018(FERM BP−665)、ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029(FERM BP−1366)、ラクトバチルス・カゼイ YIT 10003(FERM BP−7707)が挙げられ、特にラクトバチルス・カゼイ YIT 9029が好ましい。 本発明の組成物は、経口投与又は非経口投与のいずれでも使用できるが、経口投与が好ましい。投与に際しては、有効成分であるラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する組成物を経口投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。 医薬品製剤として入手可能な市販品を利用してもよく、ヤクルト本社が製造するラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する医薬品製剤を好適に利用することができる。その具体例としては「ヤクルトBL整腸薬」「ヤクルトBL整腸薬S錠」等が挙げられる。また、医療用医薬品としては「ビオラクチス散」がある。 本発明の組成物は、上記のような製剤とするだけでなく、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する飲食品として使用することもできる。ラクトバチルス・カゼイの生菌を飲食品に配合する場合は、そのまま、又は種々の栄養成分と共に含有せしめればよい。本発明の組成物は、乳がんの発症リスク低減に有用な保健用食品又は食品素材として利用でき、これらの飲食品又はその容器には前記の効果を有する旨の表示を付してもよい。具体的にラクトバチルス・カゼイの生菌を飲食品に配合する場合は、飲食品として使用可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して使用してもよい。 さらに飲食品としては、ラクトバチルス・カゼイを生菌の状態で含有する発酵乳飲食品、発酵豆乳、発酵果汁、発酵野菜汁等の発酵飲食品が好適に用いられ、特に発酵乳飲食品の利用が好ましい。発酵乳飲食品の製造は常法に従えばよく、例えば発酵乳を製造する場合には、殺菌した乳培地にラクトバチルス・カゼイを単独又は他の微生物と同時に接種培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得る。次に別途調製したシロップ溶液を添加混合し、ホモゲナイザー等で均質化し、さらにフレーバーを添加して最終製品に仕上げればよい。このようにして得られる発酵乳飲食品は、シロップ(甘味料)を含有しないプレーンタイプ、ソフトタイプ、フルーツフレーバータイプ、固形状、液状等のいずれの形態の製品とすることもできる。 かかる発酵乳飲食品にはシロップ等の甘味料、乳化剤、増粘(安定)剤、各種ビタミン等の任意成分を配合することができる。シロップとしては、グルコース、ショ糖、フルクトース、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖、蜂蜜、糖蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、発酵乳飲食品には、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の増粘(安定)剤を配合してもよい。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等のビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、クリーム、バター、サワークリーム等の乳脂肪、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類、ハーブエキス、黒糖エキス等を配合することも可能である。 発酵乳飲食品の製造には、ラクトバチルス・カゼイ以外の微生物を併用することも可能である。このような微生物としては例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifidum)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(B.animalis)、ビフィドバクテリウム・ズイス(B.suis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B.pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・グロボサム(B.globosum)等のビフィドバクテリウム属細菌、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)、ラクトバチルス・ゼアエ(L.zeae)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(L.salivalius)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)、ラクトバチルス・クリスパータス(L.crispatus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス(L.delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.デルブルッキィ(L.delbrueckii subsp.delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)等のエンテロコッカス属細菌、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルッキィ(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア(Candida kefyr)等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等に属する酵母が挙げられる。ラクトバチルス・カゼイと共に、ラクトバチルス・カゼイ以外のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌から選ばれる1種以上を併用して発酵乳飲食品を製造すると高い嗜好性が得られ、摂取が容易となるため好ましい。 また、発酵乳飲食品として入手可能な市販品を利用してもよく、ヤクルト本社が製造するラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する発酵乳飲食品を好適に利用することができる。その具体例としては「ヤクルト」、「ヤクルト300V」、「ヤクルトSHEs」、「ヤクルト400」等のヤクルト類、「ジョア」、「ソフール」、「ピュアラ」、「プレティオ」等が挙げられ、特にラクトバチルス・カゼイの生菌数を多く含有することからヤクルト類の利用が好ましい。 本発明の有効成分であるラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する組成物は、従来より食品として利用され、その安全性も確認されているものであることから、これを使用する場合の摂取量に厳格な制限はないが、その好適な摂取量はラクトバチルス・カゼイの生菌数として1日当たり105cfu〜1013cfuであり、特に108cfu〜1012cfuが好ましい。効果的に乳がんの発症リスクを低減できるという観点から、組成物の摂取頻度は多いことが好ましく、特に1週当たり4回以上摂取することが好ましい。また、組成物の摂取期間は長いことが好ましく、特に10年以上継続的に摂取することが好ましい。また、組成物摂取の年齢は、乳がん発症の20〜35年前にあたる20歳頃に1週当たり4回以上摂取することが好ましい。 本発明の組成物は、大豆由来成分を含むものであってもよい。ラクトバチルス・カゼイの生菌と共に大豆由来成分を摂取することで、さらに効果的に乳がんの発症リスクを低減させることができる。大豆由来成分は、大豆そのものや大豆加工品の形態で利用することができ、大豆加工品としては味噌、豆腐、高野豆腐、しみ豆腐、生揚げ、厚揚げ、あぶら揚げ、納豆、豆乳、醤油、テンペ、イソフラボン等の大豆由来成分を含有するサプリメント・健康食品等が挙げられる。 大豆由来成分の摂取時期は特に制限されず、ラクトバチルス・カゼイと同時に摂取してもよいし、ラクトバチルス・カゼイ摂取の前後で摂取してもよい。ラクトバチルス・カゼイと同時に摂取する場合の好適な例としては、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する発酵豆乳が挙げられる。大豆由来成分の摂取量は、後述の実施例に示すイソフラボン量として1日当たり18.76mg以上、さらに28.81mg以上、またさらに43.75mg以上が好ましい。 乳がんの発症前に本発明の組成物を摂取すれば、乳がんの発症リスクが低減し、乳がんの発症を予防することができる。また、乳がん発症後においても、手術や投薬、放射線治療等により乳がんを切除、縮小、消失させた後、本発明の組成物を摂取することで乳がんの再発リスクを低減させることができる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。実施例 乳がん発症患者、及び非発症患者に対して自記式質問票及び面接法により、ラクトバチルス・カゼイ含有組成物の習慣的摂取を調査した。また、同様に大豆イソフラボンの摂取も調査した。1.対象 ケース:40歳以上55歳以下の女性で、乳がん発症患者(術後1年以内)306例 コントロール:ケースと性別、年齢、地域をマッチングさせた乳がん非発症者662例(なお、コントロール1例は調整因子の欠損のため、解析から除外した。) 対象の背景を表1に示す。表中のデータは、n数(%)もしくは平均値(標準偏差)である。2.ラクトバチルス・カゼイ含有組成物 「ヤクルト」(ヤクルト本社製) 「ラクトバチルス・カゼイを含むジョア・ソフールなどのヨーグルト」 上記製品(ヤクルト、ジョア、ソフール)はいずれもラクトバチルス・カゼイ YIT 9029の生菌を含有している。3.大豆由来成分 大豆イソフラボンを含む食品として、以下の9つの食品について摂取頻度と1回当たりの摂取目安量の調査を行っている。 ・みそ汁 ・豆腐(みそ汁の具) ・豆腐(湯豆腐・冷奴など) ・高野豆腐、しみとうふ ・生揚げ、厚揚げ ・あぶらあげ ・なっとう ・豆乳 ・大豆イソフラボンの健康食品、サプリメント4.主要評価項目の解析(ラクトバチルス・カゼイ(以下カゼイ)の摂取と乳がん発症の関連性の検討) (i)カゼイ摂取量の定義 カゼイを含む食品・飲料(以下、「食品」)として、前記の2つについて摂取頻度と1回当たりの摂取目安量の調査を行っている。 これらの食品から、一般的に初経を迎えていると想定される小学校高学年以降で、カゼイによる曝露の有無(カゼイを摂取したことがあるかどうか)の2値変数を定義する。すなわち、カゼイの平均的摂取が週4回未満の場合を「曝露なし」、「小学校高学年(10〜12歳)の頃」、「20歳頃」、「15〜10年ほど前」において、シロタの平均的摂取が週4回以上の場合を「曝露あり」とする。 また、乳がん発症の有無とカゼイ摂取の用量反応関係について検討するため、「食べていない(飲んでいない)」、「月1〜3回」、「週1〜3回」、「週4回以上」の4カテゴリとした検討も行う。なお、以上のカゼイ摂取頻度のカテゴリ化の方法は、「小学校高学年(10〜12歳)の頃」、「20歳頃」、「15〜10年ほど前」における摂取頻度を、以下のようにスコア化し、分類する。<スコア化の方法>(1)各食品・各時期の摂取頻度について、原則としてカゼイの摂取頻度を1日1回、1ヶ月を28日(=7日/週×4週)で摂取することとして、カゼイの摂取日数を以下のようにスコア化する。なお、幅をもって尋ねている期間については、その期間の中央値となる期間を採用する。 毎日2回以上=56(=2回/日×28日/月) 毎日1回=28(=1回/日×28日/月) 週4〜6回=20(=1回/日×5日/週×4週/月) 週2〜3回=10(=1回/日×2.5日/週×4週/月) 週1回=4(=1回/日×1日/週×4週/月) 月2〜3回=2.5(=1回/日×2.5日/月) 月1回=1(=1回/日×1日/月) 飲んでいない=0(2)各時期・各食品の(1)のスコアを全て合計して{時期の数(3時期)×1ヶ月の週数(4週間)}で割った値、すなわち、1週間の平均的な摂取頻度(以下、「平均スコア」)を算出する。なお平均スコアは、小数点第1位で四捨五入する。(3)平均スコアから、「飲んでいない」、「週1回未満」、「週1〜3回」、「週4回以上」となるよう、カテゴリ化を行う。 (ii)解析方法 まずカゼイ摂取の有無と乳がん発症の有無についてオッズ比及びWald検定により推定した95%信頼区間を算出する。なお、帰無仮説の検定はMcNemar検定を用いる。 次に、地域と年齢のマッチング因子及び複数の調整因子を考慮した条件付ロジスティック回帰分析によりオッズ比及びWald検定により推定した95%信頼区間を算出する。調整因子は、連続データは初経年齢、摂取エネルギー量、運動量、出産数、20歳頃のBody Mass Index、カテゴリデータは、婚姻状況、最終学歴、喫煙の有無、女性ホルモン剤使用の有無、乳腺症罹患の有無、家族の乳がん罹患の有無、授乳経験の有無、出生時体重である。 また、マッチング因子は地域のみで、年齢は連続変数としてその他の複数の調整因子と同様に考慮した条件付きロジスティック回帰分析によりオッズ比及びWald検定により推定した95%信頼区間を算出する。 さらに、マッチング因子は地域のみで、年齢を40歳代・50歳代としてカテゴリ化してその他の複数の調整因子と同様に考慮した条件付きロジスティック回帰分析によりオッズ比及びWald検定により推定した95%信頼区間を算出する。 なお、以上の解析はマッチングを考慮した解析と考慮しない解析の2通りで行う。また、閉経の有無別の解析も行う。5.カゼイの摂取期間の長さと乳がん発症の関連性の検討 (i)カゼイの摂取期間の長さの定義 カゼイ摂取期間の長さを「摂取していない」、「5年未満」、「5年以上10年未満」、「10年以上」の4つに分類し、乳がん発症の有無とカゼイ摂取期間の長さについて用量反応関係の検討を行う。 (ii)解析方法 解析方法は、前記と同様に行う。6.大豆イソフラボンの摂取と乳がん発症の関連の検討 (i)大豆イソフラボン摂取量の定義 四分位点を基準に4カテゴリに分類し、乳がん発症の有無と大豆イソフラボン摂取量の用量反応関係について検討する。 (ii)大豆イソフラボン摂取量の計算方法 以下の計算方法を用いて大豆イソフラボン摂取量を計算する。<大豆イソフラボン・計算方法>・大豆製品の摂取量 (1)各食品の摂取頻度の選択肢のカテゴリに以下の数値を当てはめる。 月に1回未満=0 月に1〜3回=2/30 週に1〜2回=1.5/7 週に3〜4回=3.5/7 週に5〜6回=5.5/7 毎日1回=1 毎日2〜3回=2.5 毎日4〜6回=5 毎日7回以上=8 (2)目安量の選択肢のカテゴリに以下の数値を当てはめる。 目安量より少ない=1/2 目安量と同じ=1 目安量より多い=3/2 (3)大豆製品の摂取量の計算 豆腐(味噌汁の具)の摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*20 豆腐(湯豆腐・冷奴など)の摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*75 高野豆腐・しみとうふの摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*60 生揚げ・厚揚げの摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*60 あぶらあげの摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*2 なっとうの摂取量(g/day)=(1)の値*(2)の値*50・豆乳の摂取量 (4)豆乳の摂取頻度のカテゴリに以下の数値を当てはめる。 週に1回未満=0 週に1〜2回=1.5/7 週に3〜4回=3.5/7 週に5〜6回=5.5/7 毎日1杯=1 毎日2〜3杯=2.5 毎日4〜6杯=5 毎日7〜9杯=8 毎日10杯以上=11 (5)豆乳の摂取量の計算 豆乳の摂取量(g/day)=(4)の値*200・味噌汁の摂取量 (6)味噌汁の摂取頻度のカテゴリに以下の数値を当てはめる。 ほとんど飲まない=0 月に1〜3日=2/30 週に1〜2日=1.5/7 週に3〜4日=3.5/7 週に5〜6日=5.5/7 毎日飲む=1 (7)味噌汁を飲む量のカテゴリに以下の数値を当てはめる。 1杯未満=0.5 1杯=1 2杯=2 3杯=3 4杯=4 5杯=5 6杯=6 7〜9杯=8 10杯以上=11 (8)味噌汁の味付けのカテゴリに以下の数値を当てはめる。 かなりうすめ=0.5 ややうすめ=0.75 ふつう=1 ややこいめ=1.25 かなりこい=1.5 (9)味噌汁の摂取量の計算 味噌汁の摂取量(g/day)=(6)の値*(7)の値*(8)の値*150 (10)イソフラボン摂取量の計算 (3)、(5)、(9)の値を用いて ゲニステイン(mg/day) =豆腐(味噌汁の具)の摂取量(g/day)*(27mg/100g) +豆腐(湯豆腐・冷奴など)の摂取量(g/day)*(27/100) +高野豆腐・しみとうふの摂取量(g/day)*(9/100) +生揚げ・厚揚げの摂取量(g/day)*(26/100) +あぶらあげの摂取量(g/day)*(18/100) +なっとうの摂取量(g/day)*(61/100) +豆乳の摂取量(g/day)*(16/100) +味噌汁の摂取量(g/day)*(2/100) ダイゼイン(mg/day)= 豆腐(味噌汁の具)の摂取量(g/day)*(17/100) +豆腐(湯豆腐・冷奴など)の摂取量(g/day)*(17/100) +高野豆腐・しみとうふの摂取量(g/day)*(3/100) +生揚げ・厚揚げの摂取量(g/day)*(15/100) +あぶらあげの摂取量(g/day)*(8/100) +なっとうの摂取量(g/day)*(37/100) +豆乳の摂取量(g/day)*(8/100) +味噌汁の摂取量(g/day)*(2/100) イソフラボン(mg/day)=ゲニステイン(mg/day)+ダイゼイン(mg/day) (iii)解析方法 解析方法は、前記と同様に行う。7.カゼイとイソフラボンの交互作用の検討 カゼイ摂取と大豆イソフラボン摂取の交互作用についても検討を行う。交互作用の検討では、カゼイ2カテゴリ(週4回未満・週4回以上)と大豆イソフラボン4カテゴリ(四分位点)の8つの組み合わせで、カゼイ摂取週4回未満・大豆イソフラボン摂取していない群を基準カテゴリとして、各群のオッズ比を推定する。このとき使用する解析モデルは、前記と同様に行う。8.ヤクルトの摂取と乳がん発症の関連性の検討 (i)ヤクルト摂取量のカテゴリ化の定義 ヤクルトの摂取量は、主要評価項目の曝露因子である「カゼイ」と同じ方法で調査されている。そのため、ヤクルト摂取量のカテゴリ化の定義は、前記と同様とする。 (ii)解析方法 解析方法は、前記と同様に行う。9.結果 (i)カゼイを含む食品を週4回以上摂取することにより、摂取していない人と比べて乳がん発症のオッズ比は0.647(95%信頼区間(CI)0.420−0.997、p=0.0483)であった(図1)。とくに、20歳頃にカゼイを含む食品を週4回以上摂取することにより、摂取していない人と比べて乳がん発症のオッズ比は0.583(95%CI0.371−0.915、p=0.0190)であった。閉経別で解析すると、閉経前ではカゼイを含む食品を週4回以上摂取することにより、摂取していない人と比べて乳がん発症のオッズ比は0.779(95%CI0.460−1.321、p=0.3542)、閉経後ではカゼイを含む食品を週4回以上摂取することにより、摂取していない人と比べて乳がん発症のオッズ比は0.429(95%CI0.186−0.985、p=0.0461)であった。また、カゼイを含む食品を10年以上摂取している人は摂取していない人と比べて乳がん発症のオッズ比は0.815(95%CI0.539−1.234)であった。 カゼイを含む食品を週4回以上摂取、又は10年以上摂取することにより、乳がん発症を下げる傾向がみられた。 (ii)ヤクルトを週4回以上摂取することにより、摂取していない人と比べて乳がんの発症のオッズ比は0.742(95%CI0.397−1.389、p=0.3515)で、乳がん発症を下げる傾向がみられた。 (iii)大豆(大豆製品)摂取では、乳がん発症のオッズ比は摂取していない人(18.76mg/日未満)と比べて、低摂取群(18.76〜28.81mg/日)で0.763(95%CI0.517−1.126)、中摂取群(28.81〜43.75mg/日)で0.532(95%CI 0.352−0.805)、高摂取群(43.75mg/日以上)で0.476(95%CI0.311−0.727)で、乳がん発症を下げる傾向がみられた(直線性p=0.0002)(図1)。 大豆摂取が乳がん発症リスクを低下させることは他の調査でも報告されており、本調査の正確性を担保する結果であり、習慣的なヤクルトを含めたカゼイを含む食品の摂取が乳がん発症リスクを低下させるという結果の信頼性を高めるものである。 (iv)カゼイ摂取と大豆由来成分との組み合せは、カゼイを含む食品を週4回以上摂取することで乳がん発症のオッズ比が低下する傾向がみられ、特に、大豆由来成分の摂取が少ない人ではその傾向が顕著に表れ、カゼイを摂取することで、さらに乳がん発症リスクを低下させる傾向がみられた(図2)。 (v)以上は、マッチング因子は地域のみで、年齢を40歳代・50歳代としてカテゴリ化してその他の複数の調整因子と同様に考慮した条件付きロジスティック回帰分析による結果である。また、前記ラクトバチルス・カゼイの摂取と乳がん発症の関連性の検討についての(ii)解析方法に記載した複数のモデルで解析を行い、結果の頑健性を確認した。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物を含有する乳がん発症リスク低減剤。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する飲食品である請求項1記載の乳がん発症リスク低減剤。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する発酵乳飲食品である請求項1又は2記載の乳がん発症リスク低減剤。 乳がん発症前に摂取するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の乳がん発症リスク低減剤。 組成物を1週当たり4回以上摂取するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の乳がん発症リスク低減剤。 組成物を10年以上継続摂取するものである請求項1〜5のいずれか1項記載の乳がん発症リスク低減剤。 組成物がさらに大豆由来成分を含むものである請求項1〜6のいずれか1項記載の乳がん発症リスク低減剤。 乳がん発症リスク低減のための、ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する飲食品である請求項8記載の組成物。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する発酵乳飲食品である請求項8又は9記載の組成物。 乳がん発症前に摂取するものである請求項8〜10のいずれか1項記載の組成物。 組成物を1週当たり4回以上摂取するものである請求項8〜11のいずれか1項記載の組成物。 組成物を10年以上継続摂取するものである請求項8〜12のいずれか1項記載の組成物。 組成物がさらに大豆由来成分を含むものである請求項8〜13のいずれか1項記載の組成物。 乳がん発症前にラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物を摂取することを特徴とする乳がん発症リスク低減方法。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する飲食品である請求項15記載の方法。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物が、ラクトバチルス・カゼイの生菌を含有する発酵乳飲食品である請求項15記載の方法。 組成物を1週当たり4回以上摂取するものである請求項15記載の方法。 組成物を10年以上継続摂取するものである請求項15記載の方法。 組成物がさらに大豆由来成分を含むものである請求項15記載の方法。 乳がんの発症リスクを低減するための薬剤又は飲食品を提供する。 ラクトバチルス・カゼイの生菌含有組成物を含有する乳がん発症リスク低減剤。


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