タイトル: | 再公表特許(A1)_神経スフェロイドネットワークの構築方法 |
出願番号: | 2010063803 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 5/0793,A61L 27/00,A61K 35/30,A61K 35/12,A61P 25/00 |
竹内 昌治 根岸 みどり 津田 行子 JP WO2011052281 20110505 JP2010063803 20100816 神経スフェロイドネットワークの構築方法 国立大学法人 東京大学 504137912 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 竹内 昌治 根岸 みどり 津田 行子 JP 2009249621 20091030 C12N 5/0793 20100101AFI20130215BHJP A61L 27/00 20060101ALI20130215BHJP A61K 35/30 20060101ALI20130215BHJP A61K 35/12 20060101ALI20130215BHJP A61P 25/00 20060101ALI20130215BHJP JPC12N5/00 202SA61L27/00 ZA61K35/30A61K35/12A61P25/00 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130314 2011538291 26 特許法第30条第1項適用申請有り 4B065 4C081 4C087 4B065AA90X 4B065BB40 4B065BC50 4B065CA44 4C081AB18 4C081BA12 4C081BA17 4C081CD34 4C081CD35 4C081DA04 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB45 4C087BB64 4C087CA04 4C087NA14 4C087ZA01 本発明は培養神経細胞を用いて神経細胞のネットワークを構築する方法に関する。 近年、細胞パターニングに関する研究が様々の組織由来の細胞で盛んに行われおり、例えばバイオチップ表面に細胞をマイクロパターニングする方法などが提案されている(表面科学, 25, pp.290-295, 2004)。神経細胞を用いて細胞一つ一つをパターニングすることにより神経ネットワークを構築する試みもなされている(電気学会論文誌C, 127, pp.1575-1580, 2007)。しかしながら、神経細胞については細胞生存率が低く、回路形成効率が低いことから少数の神経細胞を用いた2次元のパターニングへの応用にとどまっており(J. Neurosci., Methods, 117, pp.123-131, 2002; J. Neurosci. Methods, 160, pp.317-326, 2007)、細胞パターニング技術を応用して実用的な神経ネットワーク形成を行うためにはさらなる改良が必要である。そのような方法の一例として、オンチップ多電極アレイ上に段階的に複雑化させた海馬神経回路網の構築方法(Sensors and Actuators B: Chemical, 99, 156-162, 2004)やビーズ上に神経細胞を張り付けて並べる工程を含む3次元神経回路の形成方法(Nat. Methods, 5, pp.735-740, 2008)などが報告されている。 一方、スフェロイドは細胞の凝集塊であり、平面状に広がる通常の培養細胞よりも生体組織に近い3次元構造を有することから、再生医療などの分野において注目されている。多数の細胞の三次元的凝集状態を作って培養を行うスフェロイド培養系は、細胞極性および細胞間相互作用の維持という観点から、生体外における優れた実質細胞培養系として様々な報告がなされている。例えば、膵細胞、骨芽細胞、肝細胞などの細胞のスフェロイドが報告されており(例えばPancreas, 25, pp.71-77, 2002; Biochem. Biophys. Res. Comm., 322, pp.684-692, 2004; Biochem. Biophys. Res. Comm., 161, pp.385-391, 1989)、いずれも単層培養系とは異なった生物学的応答を示すことが報告されている。また、膵細胞から均一な大きさのスフェロイドを調製する方法(Proc. of MEMS, pp.423-426, 2009)、スフェロイドをパターニングにより適宜配列することにより、より大きな組織を作成する方法も報告されている(Biomaterials, 30, pp.2164-2174, 2009)。 神経細胞のスフェロイドについては、例えば、胎生14日目のマウス大脳皮質組織から調製した神経幹細胞が神経幹細胞のサイズよりも小さな孔径(3μm)のハニカムフィルム上ではスフェロイドを形成することが報告されており、孔径5μm以上のハニカムフィルム上では神経幹細胞が神経細胞に分化すること、ハニカムフィルムの孔径によって神経細胞から出る突起数と突起分枝数が制御されること、及び特に孔径10μmでは神経突起がハニカムの幹に沿って伸展することも報告されている(化学工業, 57, pp.27-35, 2006)。しかしながら、従来、神経細胞のスフェロイドを用いて神経ネットワークを構築する方法は報告されていない。電気学会論文誌C, 127, pp.1575-1580, 2007J. Neurosci., Methods, 117, pp.123-131, 2002J. Neurosci. Methods, 160, pp.317-326, 2007Sensors and Actuators B: Chemical, 99, 156-162, 2004Nat. Methods, 5, pp.735-740, 2008Pancreas, 25, pp.71-77, 2002Biochem. Biophys. Res. Comm., 322, pp.684-692, 2004Biochem. Biophys. Res. Comm., 161, pp.385-391, 1989Proc. of MEMS, pp.423-426, 2009Biomaterials, 30, pp.2164-2174, 2009 本発明の課題は培養神経細胞を用いて神経細胞のネットワークを構築する方法を提供することにある。 より具体的には、神経細胞のスフェロイドを用いて巨大な神経ネットワークを簡便に構築する方法を提供することが本発明の課題である。 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、神経細胞を含む複数のスフェロイドを近接又は接触させて培養することにより、それぞれのスフェロイドに含まれる神経細胞から軸索が伸長してスフェロイド間に神経ネットワークが効率的に構築されることを見出した。また、2次元配列した多数のウェルを有するマイクロチャンバーの各ウェル内で上記のスフェロイドを培養することにより、スフェロイド間に神経ネットワークが構築され、巨大なパターン化された神経スフェロイドネットワークを含む培養物を容易に調製できること、及びこの培養物を脳表面に転写して移植することにより、上記の神経スフェロイドネットワークを脳に生着させて神経機能を発揮させることができることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。 すなわち、本発明により、神経細胞を含むスフェロイド2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークの構築方法であって、近接して配置された2個以上の該スフェロイドを培養する工程を含む方法が提供される。 上記の方法の好ましい態様によれば、スフェロイドがグリア細胞を含む上記の方法;スフェロイドが神経幹細胞を含む上記の方法;複数のウェルを有するチャンバーを用いて各ウェルに1個ずつのスフェロイドを培養する上記の方法;ウェルの口径、深さ、及び隣接するウェル間の距離の比が約1:1:1〜1:1:3の範囲である上記の方法;ウェルの口径が50〜300μmである上記の方法;チャンバーとしてポリジメチルシロキサン製チャンバーを用いる上記の方法が提供される。 本発明の別の観点からは、神経細胞を含むスフェロイド2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークが提供される。この発明の好ましい態様として、スフェロイドがグリア細胞を含む上記のネットワーク;及びスフェロイドが神経幹細胞を含む上記のネットワークが提供される。さらに、2種以上の神経スフェロイドネットワークを含むネットワーク複合体も本発明により提供される。 また、該神経スフェロイドネットワークを含む培養物、好ましくはチャンバー内に該神経スフェロイドネットワークを含む培養物、さらに好ましくはポリジメチルシロキサン製チャンバー内に該神経スフェロイドネットワークを含む培養物が本発明により提供される。 さらに別の観点からは、本発明により、上記の神経スフェロイドネットワークを組織に移植する方法であって、該神経スフェロイドネットワークをヒトを含む動物の組織、好ましくは神経組織、より好ましくは中枢神経系組織、特に好ましくは脳神経組織に貼付する工程を含む方法が提供される。上記の方法の好ましい態様として、チャンバー内に形成された該神経スフェロイドネットワークを動物の組織、好ましくは神経組織、より好ましくは中枢神経系組織、特に好ましくは脳神経組織に貼付した後、該チャンバーを剥離する工程を含む方法が提供される。 本発明の方法により、神経細胞を含むスフェロイドを用いて神経ネットワークを簡便に構築することができる。例えば、神経細胞を含むスフェロイドを多数のウェルを有するチャンバーを用いて培養することにより巨大な神経スフェロイドネットワークを構築することが可能になる。また、このようにして得られた神経スフェロイドネットワークは例えば脳神経組織などに転写することができ、この手法を例えば神経再生療法として利用することが可能である。複数のウェルを有するチャンバーを用いてウェル内にスフェロイドを形成する工程を模式的に示した図である。複数のウェルを有するチャンバーを用いてウェル内に形成したスフェロイド(大脳皮質細胞由来、培養1日目)の位相差写真である。碁盤目状に多数のウェル(ウェル口径: 50/100/150μm、ウェル深さ: 50/100/150μm、ウェル間距離: 100/200/300μm)を有する3種類のチャンバーをポリジメチルシロキサンを用いて製造する方法の模式図((a)〜(e))、並びに得られたSU-8モールド((c-2)の右下図)及びPDMSチャンバー((e-2)の右図)の電子顕微鏡写真である。本発明の方法の好ましい態様を模式的に示した図である。2種以上の神経スフェロイドネットワークを組み合わせた神経スフェロイドネットワーク複合体を構築する方法を模式的に示した図である。神経スフェロイドネットワークを脳神経組織に転写する方法を模式的に示した図である。この方法では、PDMSチャンバーに形成された神経スフェロイドネットワークをチャンバーごと例えば大脳、小脳、嗅球などに貼り付け、その後にPDMSチャンバーを剥離することにより神経スフェロイドネットワークを脳組織表面に移植することができる。PDMSチャンバー内に形成された神経スフェロイド(培養2日目)をチャンバーから回収し、位相差顕微鏡下で観察した写真である。図中の数字はウェルの直径を示し、non-coat dishはコーティングしていない培養皿上での培養の様子を示す。PDMSチャンバー内で形成されたスフェロイドの大きさの分布を示した図である。縦軸はスフェロイドの個数、横軸はPDMSチャンバーのウェルから取り出したスフェロイドの位相差顕微鏡写真を撮影して計測したスフェロイドの面積を示す。口径100μmのウェルで形成したスフェロイドの細胞染色の結果を示す。(a)の緑色は生細胞、赤色は死細胞を示し、(b)の上図は神経細胞のマーカー蛋白MAP2の免疫細胞化学染色像(緑;MAP2)、下図はMAP2(緑)とグリア細胞のマーカー蛋白GFAP(赤)とHoechst(核染色;青)による免疫細胞化学染色像を示す。近接したスフェロイドを培養することにより14日目にスフェロイド間に神経突起の連結が形成され神経スフェロイドネットワークが構築されることを示した図である。(b)はMAP2の免疫細胞化学染色像(緑: MAP2, 青: Hoechstによる核染色)、(c)培養14日でPDMSチャンバーより取り出した神経スフェロイドネットワークの位相差顕微鏡画像、(d)PDMSチャンバーより引き剥がした神経スフェロイドネットワークを24時間培養した後の位相差顕微鏡写真(上図)、Live/Dead assay蛍光取得画像(下図、緑: 生細胞、赤: 死細胞)、(e) PDMSチャンバーより取り出した神経スフェロイドネットワークを折りたたんで免疫細胞染色した画像を示す(緑;MAP2, 赤;GFAP, 青;核染色)。PDMSチャンバーで培養を14日行って構築した神経スフェロイドネットワークをガラス基板に転写した結果を示した図である。ガラス基板上に転写された神経スフェロイドネットワークの免疫染色結果を示した図である。(b)図5に示す方法に従って2種類の神経スフェロイドネットワークをそれぞれcell tracker green(1st)及びcell tracker orange(2nd)でラベルし、ガラス基板に転写した蛍光写真像(1次神経スフェロイドネットワーク(1st): 緑、2次神経スフェロイドネットワーク(2nd): 赤)、(c)転写された神経スフェロイドネットワークの免疫細胞化学染色像。図中、Hoechstは核染色(青)、MAP2は神経細胞のマーカー蛋白MAP2の免疫細胞化学染色像(緑)、Neurofillamentは神経細胞の軸索のマーカー(赤)を示す。ガラス基板に転写された神経スフェロイドネットワークをCa2+イメージングした結果を示した図である。ラット大脳皮質細胞からスフェロイドを形成させ、14日の培養後に得た神経スフェロイドネットワークをラット胎児の右脳表面に転写した結果を示した図である。ラット大脳皮質組織表面に神経スフェロイドネットワークを転写して、転写されたネットワークの機能を解析した結果を示した図である。(A)及び(B)は転写(移植)の様子を示し、(C)及び(D)は転写された神経スフェロイドネットワークの様子を示す((D)は(C)の拡大写真である)。(E)はラット大脳皮質組織表面に転写された神経スフェロイドネットワークのCa2+イメージングを示し、(F)は神経スフェロイドネットワーク(E)において番号付けされた領域のCa2+ 変化を示すグラフである。(G)は大脳皮質組織正面に転写された神経スフェロイドネットワークから神経突起が進展し、大脳組織内の神経細胞とシナプスを形成する過程を表した模式図であり、(H)は大脳組織表面に転写された神経スフェロイドネットワーク(PHA-Lで神経細胞をラベルしたもの)を示す。矢印は転写された神経スフェロイドネットワークを示す。(I)は神経スフェロイドネットワークの神経細胞からPHA-Lがシナプスを介して大脳組織中の神経細胞に移行して神経細胞がラベルされた様子を示す(矢印は大脳組織中でPHA-Lにより標識された神経細胞を示す)。多層神経スフェロイドネットワークの作製及び大脳皮質組織表面への転写を示した図である。図中、Aは多層神経スフェロイドネットワーク作製の概略図であり、BはPDMSチャンバー上に作成された多層神経スフェロイドネットワークの状態を示した写真であり、Cは多層神経スフェロイドネットワークをPDMSチャンバーより引き剥がした状態を示し、Dはラット大脳皮質組織表面に転写された多層神経スフェロイドネットワークを示す。 本発明の方法は、神経細胞を含むスフェロイドの2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークの構築方法であって、近接して配置された2個以上の該スフェロイドを培養する工程を含むことを特徴としている。本発明の好ましい態様によれば、スフェロイドがグリア細胞を含み、及び/又はスフェロイドが神経幹細胞を含んでいる。 本明細書において「スフェロイド」とは細胞が凝集して形成される細胞塊を意味する。スフェロイドの形状は特に限定されないが、一般的には球形、ラグビーボール形状、卵形などの形状であることが好ましい。もっとも、スフェロイドは立方体や直方体、円柱や円錐三角錐などの形状であってもよく、神経スフェロイドネットワーク構築の目的に合わせて適宜のスフェロイド形状を選択することが可能である。 スフェロイドの大きさも特に限定されないが、例えば略球形のスフェロイドを用いる場合には、直径が30〜500μm、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは50〜200μm程度のスフェロイドを用いることができる。スフェロイドの大きさは、例えば、スフェロイドの位相差顕微鏡写真を撮影してスフェロイドの面積から推定することができる。 スフェロイドには神経細胞が含まれるが、それ以外にもグリア細胞や神経幹細胞のほか、分化万能性を有する胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを含んでいてもよい。ES細胞やiPS細胞のスフェロイドを用いて分化誘導することにより神経細胞を含むスフェロイドを調製することもできる。スフェロイドに含まれる神経細胞の個数はスフェロイドの大きさに応じて適宜決定されるが、例えば、直径が50μm程度の略球形のスフェロイドの場合には10個以下である。 スフェロイドはグリア細胞を含むことができる。グリア細胞の個数は特に限定されないが、直径が50μm程度の略球形のスフェロイドの場合にはスフェロイド1個あたり2〜50個程である。例えば、神経細胞とグリア細胞とを含むスフェロイドについては、神経細胞とグリア細胞の比率は特に限定されないが、神経細胞に対して2〜100倍程度、好ましくは1〜50倍程度の個数のグリア細胞を含むことができ、1個以上の神経細胞及びグリア細胞を含むことが好ましい。さらに好ましいのは、約100〜150μm程度の直径のスフェロイド1個あたり神経細胞を10〜数百個程度、グリア細胞を10〜1,000個程度含む場合である。 スフェロイドの形成には、例えば、胎齢14〜20日の胎児の脳組織の任意の領域、例えば大脳、海馬、小脳、嗅球などの領域から細胞を採取してスフェロイド形成に適した条件で培養すればよい。スフェロイドを形成するための神経細胞としては、初代培養神経細胞を用いることが好ましい。大脳皮質から採取した細胞には、神経細胞として興奮性神経細胞又は抑制性神経細胞が含まれるが、それらのいずれか又は両方を用いることができる。また、大脳皮質から採取した細胞にはグリア細胞のほか、未分化の神経幹細胞が含まれる場合もある。大脳皮質からの細胞は、一般的には、例えば胎齢14〜20日程度の胎児脳から採取することができるが、スフェロイドの形成に用いる細胞の由来はこの特定の態様に限定されることはない。また、神経細胞との共培養が可能な細胞として感覚系の細胞(嗅神経細胞や鋤鼻神経細胞など)や、その他の組織の細胞(膵臓細胞、肝臓細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、筋線維芽細胞、心筋細胞など)などを挙げることができ、これらの細胞を神経細胞と組み合わせてスフェロイドを形成してもよい。 神経細胞のスフェロイドについては、未分化の神経幹細胞を含む場合にはニューロスフェア(neurosphere)と呼ばれる場合もある。一般的にはニューロスフェアは胎齢12〜14日程度の胎児脳から細胞を採取して主として未分化の神経幹細胞を含む細胞塊を意味しているが、すでに分化した神経細胞を含むものであれば本明細書のスフェロイドに包含されることは言うまでもない。スフェロイドの形成は、大脳皮質細胞以外の細胞を用いて行うこともできる。例えば、小脳皮質由来の細胞を用いてスフェロイドを形成させてもよい。 本発明の方法に従って、近接して配置された2個以上の上記スフェロイドを培養することにより、各スフェロイドから神経突起が伸長し、各スフェロイドが神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークを構築することができる。本明細書においてスフェロイドの配置について用いられる「近接」の用語は、スフェロイド同士が適宜の距離を置いて配置されている場合のほか、2個以上のスフェロイドが接触している場合も包含する。また、本明細書において用いられる「神経突起」の用語は樹状突起及び軸索を包含する。 2個以上のスフェロイドを近接して配置するにあたり、スフェロイドの大きさ及び形状はそれぞれ異なっていてもよいが、好ましくは同一形状で、かつ均一の大きさのスフェロイドを配置することが好ましい。このような観点から、同一の大きさのウェルを複数個有するチャンバーを用いて、各ウェルに1個ずつのスフェロイドを形成させることが好ましいが、ウェル中には2個以上のスフェロイドを入れることができ、この場合、2個以上のスフェロイドは同一種類であってもよく、又は異なる2種類以上のスフェロイドであってもよい。例えば、1つのウェル内に異なる脳組織由来の2種以上のスフェロイド、例えば大脳由来のスフェロイド及び海馬由来のスフェロイドを入れることができ、あるいは神経細胞由来のスフェロイドと他の組織から採取した細胞由来のスフェロイドを1つのウェル内に入れることもできる。 スフェロイドをウェル内に形成させる方法は、例えばMEMS, pp.423-426, 2009に開示されており、この刊行物の全ての開示を参照により本明細書の開示として含める。 以下、本発明の方法を上記の好ましい態様について具体的に説明するが、本発明の方法は上記のチャンバーを用いる方法に限定されることはない。 チャンバーにおけるウェルの大きさは特に限定されないが、例えば、ウェルの口径は50〜400μm程度、好ましくは100〜150μm程度であり、ウェルの口径とほぼ同程度の深さのウェルであることが好ましい。複数のウェルの配置パターンも特に限定されないが、隣接するウェル間の距離が1OO〜600μm程度であることが好ましい。特に好ましい態様では、ウェルの口径が100〜150μm程度であり、ウェルの深さがウェル口径と実質的に同じであり、かつ隣接するウェル間の距離がウェル口径の約2倍である。 例えば、ウェルの口径、ウェルの深さ、及び隣接するウェル間の距離の比が約1:1:1〜1:1:3の範囲であることが好ましく、約1:1:2であることが特に好ましい。ウェルの口径と深さを概ね一致させるとウェル内で略球形のスフェロイドが効率的に形成され、隣接するウェル間の距離をウェル口径の2倍程度とすることにより、1つのスフェロイドから他のスフェロイドへの神経突起の伸長が効率的に行われる。ウェルの口径が深さよりも大きいとスフェロイドがウェルから盛り上がり、スフェロイドが効率的に形成されない場合がある。また、ウェルの口径が深さよりも小さいとスフェロイドがウェルの底に沈み、神経ネットワークが効率的に形成されない場合がある。隣接するウェル間の距離がウェル口径と同程度の場合には、スフェロイド間に形成される神経突起が盛り上がる場合があり、隣接するウェル間の距離がウェル口径の3倍を超えると神経突起による連結形成の効率が低下する場合がある。 複数のウェルを有するチャンバーを用いてウェル内にスフェロイドを形成する工程を図1に模式的に示した。本発明の一態様として神経細胞及びグリア細胞を含む大脳皮質細胞を採取してチャンバーに播種すると細胞がウェルの中に沈降し(工程1))、接触している細胞同士がウェル内で接着を始め(工程2))、20〜60分後にウェル内に沈降しなかった細胞を培地交換などの手段で洗い流し、培養を24時間継続するとウェル内にスフェロイドが形成される(工程3))。このようにして大脳皮質細胞から得られたスフェロイド(培養1日目)の位相差写真を図2に示す。細胞同士が接着してスフェロイドを形成している様子が確認できる。大脳皮質細胞の培養は、例えば日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 124, pp.11-17, 2004やDevelopmental Brain Res., 152, pp.99-108, 2004などに記載された方法に従って行うことができるが、必要に応じて培地や温度条件などを適宜変更してもよい。 本発明の方法に用いるチャンバーは特に限定されず、複数のウェルを任意のパターンで配置したチャンバーを用いることができるが、スフェロイドの形成効率、及び得られた神経スフェロイドネットワークを剥離する際の効率などの観点から、例えばポリジメチルシロキサン製チャンバーを用いることが好ましい。ウェルの配置パターンも特に限定されず、典型的には碁盤目状のパターン、正三角形や正六角形の集合体パターンであるハニカムパターンなどの規則的パターンのほか、不規則なパターンなど、任意のパターンによる配置が可能である。また、異なる大きさのウェルを配置することもできる。 一例として、ポリジメチルシロキサンにより碁盤目状に多数のウェル(各ウェルは同じ大きさ及び形状を有する:ウェル口径: 50/100/150μm、ウェル深さ: 50/100/150μm、ウェル間距離: 100/200/300μm)を有する3種類のチャンバーを製造する方法の模式図を図3に示す。シリコンウエハー上にSU-8 100 (Microchem)をスピンコートし(工程(a))、マスクを置いて紫外線照射し(工程(b))、SU-8の現像及び洗浄を行い鋳型となるパターン(SU-8モールド)を形成する(工程(c))。その後にポリジメチルシロキサン(PDMS)を流し込んで固化させ、SU-8モールドからPDMSチャンバーを回収する(工程(e))。(c-2)の写真はSU-8モールドであり(ウェル口径: 100μm、ウェル深さ: 100μm、ウェル間距離: 200μmのモールドを示す)、(e-2)は得られたPDMSチャンバー(ウェル口径: 100μm)を示す。 本発明の方法を行うにあたり、一般的には各ウェル内に同一種類の大脳皮質細胞由来のスフェロイドを形成させることが好ましいが、必要に応じて、1つ又は2つ以上のウェルに異なる神経細胞を含むスフェロイドを形成させることもできる。例えば、大脳皮質細胞由来のスフェロイドと小脳皮質細胞由来のスフェロイドとを異なるウェルで形成させてもよい。あるいは、1つ又は複数のウェルに大脳皮質細胞由来のスフェロイドを形成させ、他のウェルにはES細胞又はiPS細胞のスフェロイドを形成させることも可能である。 上記のチャンバーの各ウェルに1個ずつのスフェロイドを形成させて培養を継続することにより、各スフェロイドから神経突起が伸長し、スフェロイド間が神経突起により連結された神経スフェロイドネットワークが形成される。培養は一般的には1〜2週間程度行えばよく、各スフェロイド間には概ね10本以上、好ましくは20本以上程度の神経突起による連結が形成される。このように多数の神経突起による連結を有することから、本発明の方法により得られる神経スフェロイドネットワークは物理的な刺激や荷重などによりネットワーク損傷を起こしにくいという特徴がある。得られた神経スフェロイドネットワークは、チップの先端やスパーテルなどを用いてチャンバーから容易に剥がすことができ、このようにして得られた神経スフェロイドネットワークを必要に応じて折りたたむこともできる。本発明の方法の好ましい態様に従う一例を図4に模式図として示した。このようにして、本発明の方法により3次元的な神経スフェロイドネットワークを構築することも可能である。 上記の方法により2種以上の神経スフェロイドネットワークを組み合わせたネットワークを構築することもできる。図5に模式図を示した。スフェロイドの培養により神経スフェロイドネットワーク(1次神経スフェロイドネットワーク)が形成されたPDMSチャンバーをポリエチレンイミンでコートされたガラス基板に接着し(工程(1))、37℃で24時間培養した後(工程(2))、神経スフェロイドネットワークをPDMSチャンバーから剥離してガラス基板に転写された神経スフェロイドネットワークを調製し(工程(3))、別の神経スフェロイドネットワーク(2次神経スフェロイドネットワーク)が形成されているPDMSチャンバーをガラス基板上に転写された1次神経スフェロイドネットワークに重なるように接着し(工程(4))、2次神経スフェロイドネットワーク側のPDMSチャンバーを剥離することにより(工程(5))、2種類の神経スフェロイドネットワークを含むネットワーク複合体を構築することができる。また、図16(A)に模式図を示すように、2つの神経スフェロイドネットワークを上下に組み合わせて多層のネットワーク複合体を作製することも可能である。この手法を用いて3種以上の神経ネットワークの複合体を構築できること、及びこの方法が3次元的な神経スフェロイドネットワークを構築する方法として有用であることが容易に理解されよう。 上記の方法により得られた神経スフェロイドネットワークはスフェロイドが神経突起により物理的に連結しているばかりでなく、各スフェロイドが機能的に連関した神経ネットワークであり、1つのスフェロイドに含まれる神経細胞は他のスフェロイドに含まれる神経細胞と生理学的に同期している。スフェロイド同士の生理学的な同期の様子は、例えばカルシウムイオンの取り込みなどを動的にイメージングすることにより確認することができ、その一例を実施例の例3に示した。 この神経スフェロイドネットワークを例えばヒトを含む哺乳類動物の組織に貼付することにより、該神経スフェロイドネットワークを組織に移植することができる。転写の対象となる組織は特に限定されないが、例えば神経組織や筋肉組織などを挙げることができる。神経組織としては、例えば、中枢神経系組織、好ましくは脳神経組織に転写することができる。この方法は、チャンバーから神経スフェロイドネットワークをピンセットなどで剥離して対象組織表面に貼り付けることにより行なってもよいが、好ましくはチャンバーに形成された神経スフェロイドネットワークをチャンバーごと対象組織表面に貼り付け、その後にチャンバーを剥離して神経スフェロイドネットワークを対象組織表面に移植する方法を採用することができる。その方法の模式図を図6に示した。 本発明の方法により得られた神経スフェロイドネットワークを移植することにより、例えば、脳梗塞、脳出血、脳挫傷などにより損傷を受けた脳組織において神経回路を復活させることが可能になる。また、例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患やパーキンソン病などの神経疾患においても、本発明の方法により得られた神経スフェロイドネットワークを移植することにより、機能が低下ないし停止した神経回路を補完してこれらの疾患を治療することが可能になる。さらに、本発明の方法により得られた神経スフェロイドネットワークを移植することにより、先天的に神経回路が欠損している疾患、例えば先天的な色覚異常などの疾患において遺伝的に欠損している神経回路を補完する神経回路を構築することもできる。これらの方法は、従来提案されている神経賦活方法、例えば神経細胞、グリア細胞、及び神経幹細胞を注入する方法(Lancet, 373, pp.2055-2066, 2009)や温度感受性表面にパターン化された細胞シートを移植する方法(Advanced Materials, 21, pp.1-6, 2009)などに代えて、あるいはそれらとともに用いることができる。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。例1 図3に示す方法に従ってポリジメチルシロキサンにより碁盤目状に同一の大きさのウェル(ウェル口径: 50/100/150μm、ウェル深さ: 50/100/150μm、ウェル間距離: 100/200/300μm)を有する3種類のチャンバーを製造した。このチャンバーを用いて図1に示す方法に従って大脳皮質細胞を播種し、20〜60分後に培地を交換してウェル外の細胞を洗い落とし、その後に24時間培養を継続してスフェロイドを形成させた。培養条件は日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 124, pp.11-17, 2004に記載された方法に従い、培地としてDMEM/F12培地に10%FBS、B27(GIBCO)を添加した培地を使用し、5% CO2条件下に37℃で培養を行ない、2〜3日毎に培地を交換した。 図7にはPDMSチャンバー内に形成されたスフェロイド(培養2日目)の位相差顕微鏡写真を示す。図中の数字はウェルの直径を示し、non-coat dishはコーティングしていない培養皿上での培養の様子を示す。コーティングされていない培養皿では細胞が接着できずに不均一な細胞塊となるが、チャンバーのウェル内では球状のスフェロイドが形成されていた。図8にはPDMSチャンバー内で形成されたスフェロイドの大きさの分布を示す。縦軸はスフェロイドの個数、横軸はPDMSチャンバーのウェルから取り出したスフェロイドの位相差顕微鏡写真を撮影して計測したスフェロイドの面積を示す。図9には口径100μmのウェルで形成したスフェロイドの細胞染色(生死判定キット: Live/dead assay)の結果を示す。緑色は生細胞、赤色は死細胞を示す。図中、(b)の上図は神経細胞のマーカー蛋白MAP2(microtubule-associated protein 2)の免疫細胞化学染色像(緑;MAP2)を示し、下図は神経細胞のマーカー蛋白MAP2(緑)とグリア細胞のマーカー蛋白GFAP(glial marker protein)(赤)とHoechst(核染色;青)による免疫細胞化学染色像を示す。 培養5日頃にはスフェロイドから神経突起(軸割や樹状突起など)が伸長し14日では隣接したスフェロイドから伸長した神経突起が連結した神経スフェロイドネットワークが形成された(図10)。培養5日目にはウェル外に出てきている細胞は主としてグリア細胞であり、大部分の神経細胞はウェル内から外に出ていなかった。例2 例1の方法に従ってPDMSチャンバーで培養を14日行って構築した神経スフェロイドネットワークをガラス基板に接着して24時間培養した後にPDMSチャンバーを剥離することにより、ガラス基板に神経スフェロイドネットワークを転写することができた(図11)。ガラス基板に転写された神経スフェロイドネットワークは培地交換やピペッティング操作を行っても剥離することはなかった。ガラス基板に転写された神経スフェロイドネットワークの免疫染色を行ったところ、スフェロイド1つ1つの形がはっきりわかり、転写されたスフェロイドはPDMSチャンバー内での位置を確保していることが確認できた(図12(a))。 図5に示す方法に従って2種類の神経スフェロイドネットワークをガラス基板に転写し、転写された2種類の神経スフェロイドネットワークの蛍光写真を撮影した(図12(b))。1次神経スフェロイドネットワーク(1st、緑)、2次神経スフェロイドネットワーク(2nd、赤)をcell trackerでラベルした。この結果、ガラス基板上に2種類の神経スフェロイドネットワーク複合体が形成されたことが確認できた。例3 例2の方法によりガラス基板に1種類の神経スフェロイドネットワークを転写し、Ca2+イメージングを行った。各スフェロイドの自発的Ca2+振動(spontaneous Ca2+ oscillations)は同期しており(図13)、スフェロイドにより形成された神経スフェロイドネットワークが機能的にも連結して全体として神経機能を有していることが明らかとなった。さらに巨大な神経スフェロイドネットワークでは距離が離れているスフェロイド間において自発的Ca2+振動には時間差が認められた。これは距離が離れるにつれてネットワーク間の伝達速度により同期に遅延が生じたことを意味している。例4 例1の方法に従ってPDMSチャンバー(ウェル口径: 100μm、ウェル深さ: 100μm、ウェル同士の距離: 200μm)を用いてラット大脳皮質細胞からスフェロイドを形成させ、14日の培養後に神経スフェロイドネットワークを得た。図6に示す概念図の工程3(transfer on the rat brain)に従ってラット胎児(19日齢)の大脳(右脳)表面に神経スフェロイドネットワークが直接接触・密着するようにPDMSチャンバーごと貼り付けた。培地を添加してそのまま培養を継続し、24時間後にPDMSチャンバーを剥がし取った。転写された神経スフェロイドネットワークをCell tracker redでラベルして蛍光写真を撮影したところ、24時間後でもスフェロイド及び神経突起(樹状突起及び軸索)による連結は変形又は破壊されておらず、転写した神経スフェロイドネットワークがそのままの形状で大脳表面に生着していることが確認された(図14、転写24時間後及び拡大図)。神経スフェロイドネットワークの転写から48時間後には転写した神経スフェロイドネットワークからグリア細胞が大脳組織へ移動し、神経スフェロイド内部の神経細胞の樹状突起及び軸索もラット胎児脳にむけて伸長していることが確認された(図14、転写48時間後)。例5 例4の方法によりラット大脳皮質組織表面に神経スフェロイドネットワークを転写して、転写されたネットワークの機能を解析した。図15(A)及び(B)に転写(移植)の様子を示し、(C)及び(D)には転写された神経スフェロイドネットワークの様子を示す((D)は(C)の拡大写真である)。ラット大脳皮質組織表面に転写された神経スフェロイドネットワーク(転写後に培養を8日間継続した後)のCa2+イメージング(疑似カラー画像)を(E)に示し、神経スフェロイドネットワーク(E)において番号付けされた領域のCa2+ 変化のグラフを(F)に示した。転写後8日目においても神経細胞の自発的な細胞内Ca2+ 変化が観察され、神経活動が継続していることが示された。 図15(G)は大脳皮質組織表面に転写された神経スフェロイドネットワークから神経突起が進展し、大脳組織内の神経細胞とシナプスを形成する過程を表した模式図であり、(H)は大脳組織表面に転写された神経スフェロイドネットワーク(順行性輸送物質PHA-Lで神経細胞をラベルしたもの)を示す。矢印が転写された神経スフェロイドネットワークである。神経スフェロイドネットワークの神経細胞から順行性輸送物質PHA-Lがシナプスを介して大脳組織中の神経細胞に移行して神経細胞がラベルされたことから、大脳組織表面に転写された神経スフェロイドネットワーク内部の神経細胞は大脳組織の神経細胞とシナプス結合していることが証明された(図(I)、矢印は大脳組織中でPHA-Lにより標識された神経細胞を示す)。例6 例1の方法に従ってPDMSチャンバー(ウェル口径: 100μm、ウェル深さ: 100μm、ウェル同士の距離: 200μm)を用いてラット大脳皮質細胞からスフェロイドを形成させ、14日培養して神経スフェロイドネットワーク(1st NSN)を得た。この神経スフェロイドネットワーク(1st NSN)を同様にして得たもう一つの神経スフェロイドネットワーク(2nd NSN)と上下に組み合わせて密着させ(図16A(i))、24時間培養を継続した。その後、1st NSNのPDMSチャンバーを除去し(図16A(iii))、露出した1st NSN部分をラット大脳皮質組織表面に例4の方法に従って貼り付け、24時間後にPDMSチャンバーを剥がし取って多層神経スフェロイドネットワークを大脳皮質組織表面に転写した。図16中、(C)は多層神経スフェロイドネットワークをPDMSチャンバーより引き剥がした状態を示し、(D)はラット大脳皮質組織表面に転写された多層神経スフェロイドネットワークを示す。神経細胞を含むスフェロイド2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークの構築方法であって、近接して配置された2個以上の該スフェロイドを培養する工程を含む方法。スフェロイドがグリア細胞及び/又は神経幹細胞を含む請求項1に記載の方法。ウェルの口径、深さ、及び隣接するウェル間の距離の比が約1:1:1〜1:1:3の範囲であるである請求項2に記載の方法。ウェルの口径が50〜400μmである請求項2又は3に記載の方法。チャンバーとしてポリジメチルシロキサン製チャンバーを用いる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の方法。神経細胞を含むスフェロイド2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワーク。2種以上の神経スフェロイドネットワークを含むネットワーク複合体である請求項6に記載の神経スフェロイドネットワーク。神経移植に用いるための請求項6又は7に記載の神経スフェロイドネットワーク。 神経細胞を含むスフェロイド2個以上が各スフェロイドから伸長した神経突起で連結された神経スフェロイドネットワークの構築方法であって、近接して配置された2個以上の該スフェロイドを培養する工程を含む方法。