生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_筋強直性ジストロフィー治療薬
出願番号:2010062054
年次:2012
IPC分類:A61K 31/14,A61P 43/00,A61P 21/00,A61K 31/4706,A61K 31/472,A61K 31/473,A61K 31/7024,A61K 31/132,A61K 31/56,A61K 31/36,A61K 31/192,A61K 31/222,A61K 31/58,A61K 31/136,A61K 31/4178,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

大野 欽司 松浦 徹 JP WO2011007866 20110120 JP2010062054 20100716 筋強直性ジストロフィー治療薬 国立大学法人名古屋大学 504139662 萩野 幹治 100114362 大野 欽司 松浦 徹 JP 2009167809 20090716 A61K 31/14 20060101AFI20121130BHJP A61P 43/00 20060101ALI20121130BHJP A61P 21/00 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/4706 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/472 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/473 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/7024 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/132 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/56 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/36 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/192 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/222 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/58 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/136 20060101ALI20121130BHJP A61K 31/4178 20060101ALI20121130BHJP C12N 15/09 20060101ALN20121130BHJP JPA61K31/14A61P43/00 111A61P21/00A61K31/4706A61K31/472A61K31/473A61K31/7024A61K31/132A61K31/56A61K31/36A61K31/192A61K31/222A61K31/58A61K31/136A61K31/4178C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20121227 2011522867 29 4B024 4C086 4C206 4B024AA01 4B024BA63 4B024CA01 4B024CA12 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B024HA17 4B024HA20 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC27 4C086BC28 4C086BC30 4C086BC62 4C086CB22 4C086DA13 4C086DA25 4C086EA03 4C086EA19 4C086GA02 4C086GA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA94 4C086ZC41 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA21 4C206FA18 4C206FA31 4C206FA41 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA94 4C206ZC41 本発明は筋強直性ジストロフィー治療薬及びその用途に関する。本出願は、2009年7月16日に出願された日本国特許出願第2009−167809号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。 筋強直性ジストロフィーは骨格筋、眼球、心臓、内分泌系に影響する常染色体優性多臓器障害であり、その症状は筋萎縮、筋力低下、ミオトニア、白内障、インスリン抵抗性、性腺機能低下、心伝導系障害、前部禿頭、知能障害等、多岐に亘る(非特許文献1)。筋強直性ジストロフィーにはDMPK遺伝子の3'UTR(3'側非翻訳領域)のCUG繰り返し配列の異常延長による一型(DM1)(非特許文献2〜4)とZNF9遺伝子イントロン1のCCUG繰り返し配列の異常延長による二型(DM2)(非特許文献5)がある。いずれも異常延長した繰り返し配列にスプライシング因子MBNL1(Muscleblind)が結合し核内封入体を作る一方で、拮抗するスプライシング因子CUGBP(CUG-binding protein)の過剰発現を誘発し、MBNL1/CUGBP結合部位を有するクロライドチャンネル遺伝子(CLCN1)、インスリンレセプター遺伝子(INSR)、心臓トロポニンT遺伝子(TNNT2)、ミオチュブラリン関連タンパク遺伝子(MTMR1)等のスプライシング異常を惹起する(図1、非特許文献6、7)。筋強直性ジストロフィーの各種徴候に対する対症療法は存在するが、このスプライシング病態を補正する治療法は従来知られていない。Harper, P.S. and Monckton, D.G. 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Mol Cell, 28, 68-78. 従来、薬剤スクリーニングは既存の或いは新たに合成した多種多様な低分子化合物を用いて行われてきた。しかし、薬効を示すとして同定された化合物の多くは予期せぬ副作用やヒトに対する薬効不足のため製品化には至らず、結果として新薬一製品当たり約10年間の開発期間と約1000億円の開発費が必要といわれる。筋強直性ジストロフィーのような稀少疾患(日本の患者数は最大13,000人と推定されている)はマーケット規模が小さいため、新薬開発へのインセンティブは低い。実際、筋強直性ジストロフィーにおける特徴的な病態(即ちスプライシング病態)に有効な治療薬は開発されていない。本発明はこのような背景の下、筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング病態を補正できる治療薬及びその用途を提供することを課題とする。 本発明者らは、筋強直性ジストロフィーにおいてスプライシング異常を認めるインスリンレセプター遺伝子(INSR)に注目した。筋強直性ジストロフィーにおいてはINSR遺伝子のエクソン11のスキッピングにより胎児型インスリンレセプターが作られることが糖尿病の原因と考えられている。そこで、INSRミニジーンを作製し、3'UTRに960回CUG繰り返し配列を持つDMPK遺伝子とともにHEK293細胞に導入し、スプライシング異常を再現することにした。このようにして構築した独自のスクリーニング系を利用し、スプライシング異常を補正できる化合物の探索を試みた。その際、既認可薬は用量・用法・副作用が知られており、培養細胞・モデル動物を使った研究成果の安価で迅速な臨床応用が可能である点に着目し、既認可薬1040種を含む薬剤パネル(図4〜20)の中から有効な化合物を選別することにした。スクリーニングの結果、ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)の8種類の薬剤にスプライシング異常を補正する効果があることを同定した。これらの化合物は、患者繊維芽細胞由来筋管細胞においても正常なスプライシングを誘導した。ところで、筋強直性ジストロフィーにおいてスプライシング異常を認めるものとして、インスリンレセプター遺伝子の他、クロライドチャンネル遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、ミオチュブラリン関連タンパク遺伝子など、数多くの遺伝子が報告されている。スプライシング機構の普遍性や筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング異常のメカニズムの共通性に鑑みれば、上記8種類の化合物はインスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常を再現したスクリーニング系によって見出されたものではあるものの、筋強直性ジストロフィーにおける他の遺伝子のスプライシング異常に対しても有効であることが強く示唆される。一方、別の薬剤パネル(960種)を対象に心臓トロポニンT遺伝子のミニジーンを利用したスクリーニング(心臓トロポニンT遺伝子のスプライシング異常を再現したもの)を実施した結果、複数の薬剤(上記スクリーニング系で選抜された化合物の一部を含む)の有効性が示唆された。 更に検討した結果、一型筋強直性ジストロフィー(DM1)患者由来の細胞を用いた実験によって、キナクリンがインスリン受容体遺伝子のスプライシング異常を補正することが示された。即ち、キナクリンの有効性が別の実験によって裏付けられた。 一方、選抜された薬剤の作用及び有効性を調べた。その結果、CUG繰り返し配列とMBNL1タンパク質RNA結合ドメインの結合をストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、塩酸アポモルヒン(Apomorphine Hydrochloride)、ジギトキシン(Digitoxin)、キナクリン(Quinacrine)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)、タンニン酸、アクリソルシン(Acrisorcin)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)が阻害することが判明した。この知見は、これらの化合物がスプライシング異常の補正に特に有効であることを示唆する。また、キナクリンについてはその有効性を更に裏付ける。以下に列挙する本発明は上記成果に基づく。 [1]ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、筋強直性ジストロフィー治療薬。 [2]前記有効成分は、スプライシング異常を補正する活性を示す、[1]に記載の筋強直性ジストロフィー治療薬。 [3]前記有効成分は、インスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常を補正する活性を示す、[1]に記載の筋強直性ジストロフィー治療薬。 [4]ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩を治療上有効量、筋強直性ジストロフィー患者に投与するステップを含む、筋強直性ジストロフィーの治療法。 [5]筋強直性ジストロフィー治療薬を製造するための、ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。筋強直性ジストロフィーのスプライシング病態の概念図。ヒトは22,000種類という他の生物種とほぼ同数の限られた遺伝子しか持たないが、組織特異的・発達段階特異的な選択的スプライシングを行うことにより他の生物種よりも多様な10万種類以上のmRNAを作り、必要な時に必要な組織で必要な分子の発現を行っている。スプライシングトランス因子が組織特異的・発達段階特異的に発現することにより、この選択的スプライシングを実現している。MBNL1(Muscleblind)は選択的スプライシングを制御するスプライシングトランス因子であり、筋強直性ジストロフィーにおいて機能低下をすることが知られている。この遺伝子を欠損したショウジョウバエにおいて、筋肉と視力の欠損が認められることからmuscleblindという名前がつけられた。一方、CUGBP1(CUG-binding protein)はMBNL1と同様にCUG繰り返し配列に結合をするスプライシングトランス因子として同定をされたが、実際は、UGもしくはUGU繰り返し配列に結合をし、MBNL1と競合的に働くことが判明している。胎児ではCUGBP1が主に働き成長とともにMBNL1が主に働くことが知られている。筋強直性ジストロフィーにおいてはMBNL1が低下し、CUGBP1が活性化されるため、胎児型の選択的スプライシングがおきる。INSR遺伝子のスプライシング異常を再現したスクリーンニング方法の概略。INSRミニジーンと960回CUG繰り返し配列を持つプラスミドをHEK293細胞に導入し、10μMの試験化合物(既認可薬)の存在下に培養し、RT-PCRでスクリーニングした。スプライシング異常を補正する効果を示した化合物についての患者繊維芽細胞由来筋管細胞を用いたRT-PCRの結果。960回CUG繰り返し配列を持つプラスミドを導入したHEK293細胞を用いたスクリーニングで同定された8種類の化合物は、患者繊維芽細胞由来筋管細胞においても正常なスプライシングを誘導した。スクリーニングに供した試験化合物(既認可薬)の一覧。図4の続き。図5の続き。図6の続き。図7の続き。図8の続き。図9の続き。図10の続き。図11の続き。図12の続き。図13の続き。図14の続き。図15の続き。図16の続き。図17の続き。図18の続き。図19の続き。一型筋強直性ジストロフィー(DM1)患者由来の細胞を用いた実験の結果。RT-PCR産物を電気泳動に供し、正常なスプライシング及び異常なスプライシング(エクソン11のスキッピング)を検出した。上段はゲルのイメージ、中段は検出結果をまとめたグラフ。*はP<0.05。下段はインスリン受容体遺伝子(INSR)全体の発現量の変化を示すグラフ。ゲルシフトアッセイの結果。上段はSYBR Goldによる染色像(RNAの染色)。下段はクマシーブリリアントブルーによる染色像(タンパク質の染色)。 本発明の第1の局面は筋強直性ジストロフィーの治療薬(説明の便宜上、以下では「本発明の医薬」と呼ぶ)に関する。筋強直性ジストロフィーの治療薬とは、筋強直性ジストロフィーの治療を目的として処方される医薬である。本発明の医薬は、ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分とする。これらの化合物は、筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング異常を再現したスクリーニング系及び/又はバクテリアに発現させたMBNL1タンパク質RNA結合ドメインを用いた結合アッセイ(ゲルシフトアッセイ)を利用して見出された化合物であり、筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング異常を補正する活性を示す。従って、本発明の医薬はスプライシング異常の補正によってその治療効果を発揮する。このように本発明の医薬は筋強直性ジストロフィーのメカニズムを考慮した合理的な治療戦略を採用するものであり、従来の対症療法に比較し、より特異的且つ高い治療効果を発揮し得る。尚、上記化合物群の内、ストロファンチジン、セラストール、フェニル酪酸、硫酸サンギナリン、クレソピリン、塩酸アポモルヒン、ジギトキシン、キナクリン、ペルボサイド、ラナトシドC、ミトキサントロン塩酸塩、タンニン酸、アクリソルシン及びオルメサルタン・メドキソミルは、CUG繰り返し配列とMBNL1タンパク質RNA結合ドメインとの結合を阻害する活性を示すものであり、その有効性は特に高いといえる。 上記18種類の化合物はいずれも臨床応用の実績がある化合物であり容易に入手可能である。例えば、ゲンチアナバイオレットは抗菌薬ピオクタニンとして、プリマキンは抗マラリヤ薬プリマキンとして、アポモルヒンは抗パーキンソン病薬塩酸アポモルフィンとして、キナクリンは抗マラリヤ薬・クロイツフェルトヤコブ病治療薬アタブリンとして、タンニン酸は下痢止めタンニン酸アルブミンとして、アミナクリンは抗菌薬バクトネクスとして、アクリソルシンは抗菌薬アクリゾールとして、チロロンは経口インターフェロン誘導物質チロロンとして購入することができる。 ここで「スプライシング異常」とは、mRNA前駆体からイントロンを切り除きエクソンを連結させる過程であるスプライシングが正常に行われない状態をいう。筋強直性ジストロフィーにおける既報のスプライシング異常を以下の表1に示す。 HUGO遺伝子命名法委員(HUGO Gene Nomenclature Committee)による遺伝子シンボルを示す。括弧内は、参考文献で使用される遺伝子シンボルである。また、括弧内に示したエクソン番号はNCBI Build 36.3のアノテーションである。各遺伝子の遺伝子名及び表中の参考文献を以下に示す。 ATP2A1:ATPase, Ca++ transporting, cardiac muscle, fast twitch 1、ATP2A2:ATPase Ca++ transporting cardiac muscle slow twitch 2、ATP5G2:ATP synthase, H+ transporting, mitochondrial F0 complex, subunit C2 (subunit 9)、CAPN3:calpain 3、CLCN1:chloride channel 1(クロライドチャンネル遺伝子)、DMD:dystrophin、DTNA:dystrobrevin, alpha、FHOD1:formin homology 2 domain containing 1、GFPT1:glutamine-fructose-6-phosphate transaminase 1、INSR:insulin receptor(インスリンレセプター遺伝子)、KCNAB1:potassium voltage-gated channel, shaker-related subfamily, beta member 1、LDB3:LIM domain binding 3、MBNL1:muscleblind-like 1、MBNL2:muscleblind-like 2、MTMR1:myotubularin related protein 1(ミオチュブラリン関連タンパク遺伝子)、MXRA7:matrix-remodelling associated 7、NEDD4L:neural precursor cell expressed, developmentally down-regulated 4-like、NRAP:nebulin-related anchoring protein、PPHLN1:periphilin 1、PDLIM3:PDZ and LIM domain 3、RYR1:ryanodine receptor 1、SOS1:son of sevenless homolog 1、TNNT2:troponin T type 2(心臓トロポニンT遺伝子)、TNNT3:troponin T type 3、TTN:titin 参考文献1:Lin, X., Miller, J.W., Mankodi,A., Kanadia, R.N., Yuan, Y., Moxley, R.T., Swanson, M.S. and Thornton, C.A. 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Science, 302, 1978-1980. 本発明の医薬は上掲のスプライシング異常の少なくとも一つを補正することができる。本明細書において「スプライシング異常を補正する」とは、スプライシング異常の発生を部分的又は完全に阻害ないし抑制し、異常スプライシング産物の生成を減少させることをいう。スプライシング異常が補正されると、異常スプライシング産物の生成が減少する結果、通常は正常スプライシング産物の生成が増加する。一方、本明細書では、本発明の医薬によって補正されるスプライシング異常のことを「標的スプライシング異常」と呼ぶ。一態様では、標的スプライシング異常の中にインスリンレセプター遺伝子(INSR)のスプライシング異常が含まれる。この態様の場合、本発明の医薬の適用によってインスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常に起因するインスリン抵抗性の惹起を抑制ないし阻害でき、その結果、インスリン抵抗性が発症又は症状ないし病態の進展・憎悪等の原因となる疾病(糖尿病・耐糖能異常)に対して治療効果を発揮する。 本発明の医薬の有効成分として、上記18種類の化合物(ゲンチアナバイオレット、プリマキン、アポモルヒン、キナクリン、タンニン酸、アミナクリン、アクリソルシン、チロロン、ストロファンチジン、セラストール、フェニル酪酸、硫酸サンギナリン、クレソピリン、ジギトキシン、ペルボサイド、ラナトシドC、ミトキサントロン塩酸塩及びオルメサルタン・メドキソミル)の薬理学的に許容される塩を用いても良い。「薬理学的に許容される塩」とは例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、又はアミノ酸付加塩である。酸付加塩の例としては塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩が挙げられる。金属塩の例としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としてはアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としてはモルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としてはグリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩が挙げられる。 本発明の医薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。 製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤である。本発明の医薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。本発明の医薬には、期待される治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。 本発明の他の局面では本発明の医薬を使用した、筋強直性ジストロフィーの治療方法が提供される。本発明の治療方法は、本発明の医薬を筋強直性ジストロフィー患者に投与するステップを含む。投与経路は特に限定されず例えば経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜などを挙げることができる。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。尚、投与が容易である点から経口投与によることが好ましい。 本発明の医薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約0.1mg〜約1000mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の病状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。<インスリンレセプター(INSR)遺伝子のスプライシング異常を補正する化合物の探索>1.材料と方法(1)INSRミニジーンと960回CUG繰り返し配列を持つDMPK遺伝子の作製(図2) エクソン10、11及び12を有するINSRミニジーン(IR-N)はウェブスター博士(Dr. Nicholas J. Webster、カリフォルニア大学、サンディエゴ、カリフォルニア州)より提供された(引用文献1)。当該コンストラクトは3つのエクソンに加え、各エクソン間のイントロンを保有する。変異DMPK cDNA(DT960)はクーパー博士(Dr. Thomas Cooper、ベイラー医科大学、ヒューストン、テキサス州)より供与された。DT960はエクソン15(引用文献2)の3'非翻訳領域に960回CTG繰り返し配列を有する(引用文献3)。DT960の配列を配列表の配列番号1に示す。(2)既認可薬1040種のオフラベル薬効のスクリーニング(図2) 10%ウシ胎仔血清(シグマ−アルドリッチ)を添加したダルベッコ変法イーグル培地でHEK293細胞を培養した。75cm2フラスコで約50%コンフルエントになったときに24μlのFuGENE6トランスフェクション試薬(ロッシュ)を用いて6μgのIR-Nと6μgのDT960をトランスフェクトした。トランスフェクション16時間後にトランスフェクション試薬を除去し、各ウェルにそれぞれ試験化合物(10μM)と2% DMSOを含む96ウェルプレート(NINDS-2コレクション(図4〜20)、マイクロソース・ディスカバリー・システムズ(MicroSource Discovery Systems))に細胞を播種した。各試験化合物は100% DMSOに溶解した後、培地で希釈して培養液中のDMSO濃度を2%に調整した。 24時間後にCells to cDNAキット(Ambion)を用いて全RNAを抽出した。続いて各試験化合物の効果を調べるためにSuperScript III One-Step RT-PCR System with Platinum TaqDNA Polymerase(Invitrogen)を用いてRT-PCRを行った。プライマーにはpSG5-F (5'-taatacgactcactatagggc-3':配列番号2)とpSG5-R(5'-gctgcaataaacaagttctgc-3':配列番号3)を使用した(引用文献3)。これらのプライマーはIR-Nプラスミド上に結合するため、HEK293細胞の内因性INSRを増幅しない。(3)患者由来細胞による効果の検証 DM1患者から繊維芽細胞を採取し、MyoD遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを感染させた。筋管細胞に分化したことを確認した後、選抜した薬剤の効果の検証に用いた。実験操作は上記(2)に準じた。2.結果 スプライシング異常を補正する効果を示す試験化合物では、正常なスプライシングが生ずる。RT-PCRの結果、ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)の存在下で培養した場合、正常なスプライシングが生じたことを示すバンドを認めた。これらの化合物は、筋管細胞へと誘導したDM1患者由来の細胞において正常なスプライシングを誘導した(図3)。3.考察 8種の化合物にスプライシング異常を補正する効果があることを同定した。即ち、筋強直性ジストロフィーの治療薬として有用といえる8種類の化合物を見出すことに成功した。筋強直性ジストロフィーにおいてスプライシング異常を認めるものとして、インスリンレセプター遺伝子の他、クロライドチャンネル遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、ミオチュブラリン関連タンパク遺伝子など、数多くの遺伝子が報告されている。スプライシング機構の普遍性や筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング異常のメカニズムの共通性に鑑みれば、筋強直性ジストロフィーにおける他の遺伝子のスプライシング異常に対しても当該化合物が有効であると強く示唆される。尚、GenPlusコレクション(960種)に含まれる既認可薬を対象として、心臓トロポニンT遺伝子のミニジーンを利用したスクリーニング(使用する遺伝子以外については上記スクリーニング系と同様の条件とした)を実施した結果、複数の薬剤(アポモルヒン、キナクリン、タンニン酸及びアクリソルシンを含む)の有効性が示唆された(データ示さず)。<一型筋強直性ジストロフィー(DM1)患者由来の細胞を用いた検討>1.材料と方法(参考文献:Savkur et al. Nat Genet 2001; 29:40-7) 10%FBS含有DMEM培地を用いて、DM1患者由来のSV40不死化線維芽細胞(CTGリピート数:3530)を24ウェルプレートで培養した。70%コンフルエントになったときに最終濃度0〜50μMの試験化合物を添加し、培養を継続した。24時間後にRNAを抽出し、RT-PCRを施行した。RT-PCR産物を電気泳動に供した。2.結果・考察 図21に示すように、筋強直性ジストロフィー1型患者由来の不死化繊維芽細胞におけるインスリン受容体(INSR)のスプライシング異常をキナクリンは濃度依存性に補正した(上段及び中段)。TATA-BP(TBP)とINSRの比較では、キナクリンはINSR遺伝子全体の発現量を変化させなかった。以上の通り、スプライシング異常の補正にキナクリンが有効であることが示された。<異常延長CUG繰り返し配列とMBNL1タンパク質RNA結合ドメインとの結合に対する阻害効果の検討(ゲルシフトアッセイ)>1.材料と方法(1)MBNL1の調製 GST-MBNL1 (aa.1-248, Zn fingerドメインのみ)を発現する大腸菌(BL21DE3 RP;stratagene社)を培養して増殖させた後、全コロニーを回収した。回収した菌体をアンピシリン含有LB培地又はTB培地(1リットル中にBacto-tryptone 12.0 g、Bacto-yeast extract 24.0 g、グリセロール 4.0 ml及びをTB塩溶液(0.17 M KH2PO4, 0.72 M K2HPO4混合溶液) 100 mlを含む)に添加し、培養した。IPTGを添加した更に培養した後、集菌した。菌体1gに対して5ml程度の破砕バッファー(100mM Tris-HCl pH8, 10%グリセロール, 400mM NaCl, PMSF, 5mM β-ME, 20μM ZnCl2, 20mM imidazole)を添加して攪拌した。続いて、リゾチーム(0.1g/菌体1g)を添加して攪拌した後、-80℃で冷凍した。破砕バッファーを追加してソニケーションした後、遠心処理に供し、上清を回収した。ろ過により不純物を除いたサンプルをNiカラム、次いでGSTカラムに供し、精製した。溶出させたタンパク質からGSTタグを切断し、以降の実験に用いた。(2)ゲルシフトアッセイ 上記の方法で調整したMBNL1(2mg/ml, 0.071mM) 1μl、RNA CUG×6 (ファスマック(グライナー)), 0.5mM) 1μl、及び反応バッファー(50mM Tris, pH 8, 150mM NaCl, 2mM DTT, 20μM ZnCl2, 20mM MgCl2) 5μlを混和した後、室温で1時間放置した。DMSOに溶解した試験化合物(0.4mM)を1μl添加した後、室温で2時間放置した。続いて、50%グリセロールを2μl添加し、電気泳動に供した。ゲルはATTO eパジェル(E=R520L 5-20% グラージェント・ネイティブ・ゲル)を使用し、泳動バッファーは1XTGバッファー(1.5g Tris/500mL, 7.2g グリシン/500mL)を使用し、泳動条件は20mA、70〜75分とした。泳動後のゲルをSYBR Gold(インビトロジェン社)染色及びクマシーブルー染色に供した。SYBR Gold染色ではBNL1-RNA複合体が検出される。2.結果・考察 図22に示すように、ストロファンチジン(Strophanthidin、参考文献:J Soc Chem Ind 53: 956 (1934))、セラストール(Celastrol、CAS番号:34157-83-0、参考文献:J Chem Soc 1963: 2884; 1972: 330; J Org Chem 30: 1729 (1965))、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid、CAS番号:1821-12-1, 1716-12-7)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate、CAS番号:5578-73-4、参考文献:J Heterocyclic Chem 9: 1453 (1972))、クレソピリン(Cresopyrine、CAS番号:4386-39-4)、塩酸アポモルヒン(Apomorphine Hydrochloride、CAS番号:41372-20-7, 314-19-2 [anhydrous], 58-00-4 [apomorphine])、ジギトキシン(Digitoxin、CAS番号:71-63-6、参考文献:Chem Rev 17: 187 (1935))、キナクリン(Quinacrine、CAS番号:6151-30-0, 69-05-6 [anhydrous], 83-89-6 [quinacrine])、ペルボサイド(Peruvoside、CAS番号:1182-87-2)、ラナトシドC(Lanatoside C、CAS番号:17575-22-3、参考文献:Helv Chim Acta 35: 1318 (1952))、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride、CAS番号:70476-82-3, 65271-80-9 [mitoxantrone])、タンニン酸、アクリソルシン(Acrisorcin、CAS番号:7527-91-5)、オルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil、CAS番号:144689-63-4)は、CUG繰り返し配列とMBNL1タンパク質RNA結合ドメインの結合を阻害した。この結果は、これらの化合物が、異常延長CUG繰り返し配列によるMBNL1の捕捉を防止することによってスプライシング異常を正常化し得ることを示唆する。(引用文献) 1. Kosaki, A., Nelson, J. and Webster, N.J. (1998) Identification of intron and exon sequences involved in alternative splicing of insulin receptor pre-mRNA. J Biol Chem, 273, 10331-10337. 2. Philips, A.V., Timchenko, L.T. and Cooper, T.A. (1998) Disruption of splicing regulated by a CUG-binding protein in myotonic dystrophy. Science, 280, 737-741. 3. Ho, T.H., Savkur, R.S., Poulos, M.G., Mancini, M.A., Swanson, M.S. and Cooper, T.A. (2005) Colocalization of muscleblind with RNA foci is separable from mis-regulation of alternative splicing in myotonic dystrophy. J Cell Sci, 118, 2923-2933. 本発明は筋強直性ジストロフィー治療薬を提供する。本発明の筋強直性ジストロフィー治療薬はスプライシング異常を補正することによってその治療効果を発揮する。本発明の治療薬の適用が図られる病態はインスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常よる病態(糖尿病・耐糖能異常)に限られず、例えばクロライドチャンネル遺伝子のスプライシング異常よる病態(ミオトニア)、心臓トロポニンT遺伝子のスプライシング異常よる病態(心不全・心伝導障害)、ミオチュブラリン関連タンパク遺伝子のスプライシング異常よる病態(筋力低下・筋萎縮)への適用も想定される。 この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。 本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。 配列番号1:人工配列の説明:DT960(エクソン15に950リピートを有するDMPKミニジーン) 配列番号2〜3:人工配列の説明:プライマー ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、筋強直性ジストロフィー治療薬。 前記有効成分は、スプライシング異常を補正する活性を示す、請求項1に記載の筋強直性ジストロフィー治療薬。 前記有効成分は、インスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常を補正する活性を示す、請求項1に記載の筋強直性ジストロフィー治療薬。 ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩を治療上有効量、筋強直性ジストロフィー患者に投与するステップを含む、筋強直性ジストロフィーの治療法。 筋強直性ジストロフィー治療薬を製造するための、ゲンチアナバイオレット(Gentian violet)、プリマキン(Primaquine)、アポモルヒン(Apomorphine)、キナクリン(Quinacrine)、タンニン酸(Tannic acid)、アミナクリン(Aminacrine)、アクリソルシン(Acrisorcin)、チロロン(Tilorone)、ストロファンチジン(Strophanthidin)、セラストール(Celastrol)、フェニル酪酸(Phenylbutyric Acid)、硫酸サンギナリン(Sanguinarine Sulfate)、クレソピリン(Cresopyrine)、ジギトキシン(Digitoxin)、ペルボサイド(Peruvoside)、ラナトシドC(Lanatoside C)、ミトキサントロン塩酸塩(Mitoxanthrone Hydrochloride)及びオルメサルタン・メドキソミル(Olmesartan Medoxomil)からなる群より選択される一以上の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。 筋強直性ジストロフィーにおけるスプライシング病態を補正できる治療薬及びその用途を提供することを課題とする。インスリンレセプター遺伝子のスプライシング異常を再現したスクリーニング系によって薬効を認めた化合物(ゲンチアンバイオレットプリマミン、アポモルヒネ、キナクリン、タンニン酸、アミナクリン、アクリソルシン、チロロン、ストロファンチジン、セラストール、フェニル酪酸、硫酸サンギナリン、クレソピリン、ジギトキシン、ペルボサイド、ラナトシドC、ミトキサントロン塩酸塩及びオルメサルタン・メドキソミル)又はその薬学的に許容される塩を有効成分とした筋強直性ジストロフィー治療薬が提供される。配列表


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