タイトル: | 再公表特許(A1)_プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドおよびその利用 |
出願番号: | 2010057028 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07K 7/00,C07K 19/00,C12N 15/09,C07K 16/44,C12N 5/10,C07K 1/14,G01N 33/53,G01N 33/577,G01N 33/569,C12P 21/08,C07K 1/22 |
高木 淳一 JP WO2010123013 20101028 JP2010057028 20100421 プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドおよびその利用 国立大学法人大阪大学 504176911 岩谷 龍 100077012 高木 淳一 JP 2009103925 20090422 C07K 7/00 20060101AFI20120928BHJP C07K 19/00 20060101ALI20120928BHJP C12N 15/09 20060101ALI20120928BHJP C07K 16/44 20060101ALI20120928BHJP C12N 5/10 20060101ALI20120928BHJP C07K 1/14 20060101ALI20120928BHJP G01N 33/53 20060101ALI20120928BHJP G01N 33/577 20060101ALI20120928BHJP G01N 33/569 20060101ALI20120928BHJP C12P 21/08 20060101ALN20120928BHJP C07K 1/22 20060101ALN20120928BHJP JPC07K7/00C07K19/00C12N15/00 AC07K16/44C12N5/00 102C07K1/14G01N33/53 DG01N33/577 BG01N33/569 LC12P21/08C07K1/22 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20121025 2011510331 33 (出願人による申告)平成20年度、文部科学省、科学技術試験研究委託費による委託研究「新規タグ技術を中心とした膜蛋白質・細胞外蛋白質の高品質生産と精製システムの開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4B024 4B064 4B065 4H045 4B024AA20 4B024BA41 4B024BA80 4B024CA04 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA03 4B024GA11 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA19 4B064CA20 4B064CC24 4B064CE13 4B064DA20 4B065AA92X 4B065AA92Y 4B065AA93X 4B065AB01 4B065AB05 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA24 4B065CA25 4B065CA60 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA16 4H045DA76 4H045EA60 4H045FA33 4H045FA74 4H045GA25 4H045GA26 本発明は、プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドおよびその利用に関し、詳細には、プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチド、当該タグペプチドをコードするポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、当該タグペプチドに対する抗体、並びに当該抗体を用いるタンパク質の精製方法に関するものである。 ライフサイエンス分野において、遺伝子組換え技術を用いたタンパク質の生産は、基礎研究、応用研究および製品開発のすべての分野で広く行われている。そして、大腸菌や動物細胞によって発現させた組換えタンパク質の検出や精製のために、目的タンパク質の末端に数残基のペプチドからなるタグを付加することが通常行われている。しかし、そのタグは目的タンパク質の生物活性や結晶構造等に影響を及ぼすと考えられるため、最終的には切り離さなければならない。そのために特異的なプロテアーゼ認識配列をタグと目的タンパク質との間に挿入しておく必要がある。 例えば、非特許文献1には、ヒスチジンタグとMBP(マルトース結合タンパク質)タグとを組み合わせ、さらにタバコエッチウイルス(Tobacco etch virus、以下「TEV」という)プロテアーゼ認識配列を付加した複合タグが記載されている。また、非特許文献2には、プロテインAとカルモジュリン結合ペプチド(CBP)とTEVプロテアーゼ認識配列とを組み合わせた複合タグが記載されている。しかしながら、いずれの文献に記載のTEVプロテアーゼ認識配列も、付加されたタグを切り離すために用いられているに過ぎず、TEVプロテアーゼ認識配列自身が検出や精製のためのタグとして使用されているものではない。もし、プロテアーゼ認識配列そのものを検出や精製のためのタグとして使うことができれば、コンストラクトのデザインを飛躍的に単純化させることができるものと考えられる。David S. Waugh, Making the most of affinity tags. TRENDS in Biotechnology Vol.23 No.6 June 316-320 (2005)Oscar Puig, et al.,The Tandem Affinity Purification (TAP) Method: A General Procedure of Protein Complex Purification. METHODS 24, 218-229 (2001) 本発明は、プロテアーゼ認識配列そのものが検出や精製のために利用可能なタグペプチドを提供し、当該タグペプチドおよび当該タグペプチドに対する抗体を利用した組換えタンパク質の精製方法を提供することを目的とする。さらに、当該タグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなり、2種類の抗体が同時に結合可能なタグペプチドを提供することを目的とする。 本発明は、上記課題を解決するために、以下の発明を包含する。[1]プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドであって、該プロテアーゼ認識配列と該タグペプチドに対する抗体のエピトープとが重複していることを特徴とするタグペプチド。[2]プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドであって、該プロテアーゼ認識配列と該タグペプチドに対する抗体のエピトープとが重複しており、該プロテアーゼ認識配列が、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列であることを特徴とするタグペプチド。[3]以下のアミノ酸配列(1)を有することを特徴とする前記[1]または[2]に記載のタグペプチド。(1)RX1X2LYX3QGKDG(配列番号1)(X1、X2およびX3は、同一または異なって任意のアミノ酸残基を表す。)[4]アミノ酸配列(1)が、以下のアミノ酸配列(2)である前記[3]に記載のタグペプチド。(2)RENLYFQGKDG(配列番号2)[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなることを特徴とするタグペプチド。[6]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のタグペプチドに対する抗体と、第2のタグペプチドに対する抗体が、同時に結合できることを特徴とする前記[5]に記載のタグペプチド。[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載のタグペプチドをコードするポリヌクレオチド。[8]前記[7]に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。[9]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のタグペプチドに対する抗体。[10]ラット−マウス ハイブリドーマ2H5(FERM BP−11245)により産生されるモノクローナル抗体である前記[8]に記載の抗体。[11]ラット−マウス ハイブリドーマ2H5(FERM BP−11245)。[12]下記(i)〜(iii)の工程を含む、タンパク質の精製方法。(i)前記[1]〜[4]のいずれかに記載のタグペプチドと目的のタンパク質との融合タンパク質を含む試料に、前記[9]もしくは[10]に記載の抗体を作用させて融合タンパク質と抗体との結合物を形成させる工程(ii)前記(i)の工程で得られた結合物に溶離物質を作用させて融合タンパク質を抗体から遊離させる工程(iii)前記(ii)の工程で得られた融合タンパク質からタグペプチドを切断する工程[13]タンパク質を発現、精製、検出、もしくは定量するためのキットであって、前記[8]に記載の組換えベクター、または、前記[9]もしくは[10]に記載の抗体を含むキット。 本発明によれば、プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドおよび当該タグペプチドに対する抗体を提供することができる。当該タグペプチドおよび当該タグペプチドに対する抗体を利用することにより、当該タグペプチドが融合した目的タンパク質を容易な操作で高純度に精製することができ、さらに容易にタグを切り離すことができる。 また、本発明によれば、プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなるタグペプチドを提供する。当該タグペプチドには、当該タグペプチドに対する2種類の抗体が同時に結合することができるので、目的タンパク質に対する抗体が容易に入手できない場合でも、サンドイッチELISA等を利用することが可能となり、微量タンパク質を検出することができる。したがって、本発明によれば、未熟練者であってもクローニングされた遺伝子から発現される不安定かつ微量な組換えタンパク質を容易に精製または検出することができる。さらに、複数の試料における目的タンパク質の含量を高精度で比較することができる。タグペプチドとプロテアーゼ認識配列と目的タンパク質との融合タンパク質を示す模式図である。本発明のプロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと目的タンパク質との融合タンパク質を示す模式図である。2種類のタグペプチドを利用したサンドイッチELISA法を示す模式図である。本発明のプロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなるタグペプチドを利用したンドイッチELISA法を示す模式図である。ヒトフィブロネクチンの第9−第10Fn3ドメイン部分のN末端に種々のTEV配列を付加したタグペプチド融合タンパク質を示した図である。モノクローナル抗体2H5のエピトープを解析した結果を示す図である。TEVプロテアーゼによる認識と切断に必須のアミノ酸を解析した結果を示す図である。2H5抗体のeTEVペプチドに対する親和性を、ビアコアによる表面プラズモン共鳴解析により解析した結果を示す図である。2H5抗体を用いたウェスタンブロッティングによって、eTEVタグ融合タンパク質を検出した結果、および、抗FLAG抗体M2を用いたウェスタンブロッティングによって、FLAGペプチド融合タンパク質を検出した結果を示す図である。eTEV−NP1を発現するHEK293T細胞の培養上清から2H5抗体固定化セファロースを用いてeTEV−NP1を精製した結果を示す図である。eTEV−EGFPを発現するHEK293T細胞の培養上清から2H5抗体固定化セファロースを用いてeTEV−EGFPを精製した結果を示す図である。hGH−eTEV−sema6Cを発現するHEK293T細胞の培養上清から2H5抗体固定化セファロースを用いてhGH−eTEV−sema6Cを精製した結果を示す図である。sema3A−eTEVを発現するHEK293T細胞の培養上清から2H5抗体固定化セファロースを用いてsema3A−eTEVを精製した結果を示す図である。GFPUVのタグペプチド融合タンパク質のアミノ酸配列を示す図である。2H5抗体固定化セファロースを用いて精製したeTEV−GFPUVをSDSゲル電気泳動により分析した結果を示す図である。2H5抗体固定化セファロースに結合したeTEV−GFPUVの溶出条件(競合的ペプチド濃度)を検討した結果を示す図である。2H5抗体固定化セファロースに結合したeTEV−GFPUVの溶出条件(緩衝液の種類)を検討した結果を示す図である。ターゲットタグとeTEVタグとを結合したダブルタグのアミノ酸配列を示す図である。ダブルタグ融合タンパク質をサンドイッチELISAにより測定した結果を示す図である。ダブルタグ融合タンパク質用発現ベクターpCD−NW3の構造を示す図である。オータキシン高発現株の一次スクリーニング結果を示す図である。オータキシン高発現株の二次スクリーニング結果を示す図である。CRISPa高発現株のスクリーニング結果を示す図である。セマフォリン3A高発現株の一次スクリーニング結果を示す図である。セマフォリン3A高発現株の二次スクリーニング結果を示す図である。〔タグペプチド〕 本発明のタグペプチドは、当該タグペプチドに対する抗体のエピトープとプロテアーゼ認識配列とを含み、かつ、当該エピトープと当該プロテアーゼ認識配列とが重複しているものであればよい。エピトープとプロテアーゼ認識配列とが重複している状態とは、タグペプチドからエピトープの範囲を除いたときにプロテアーゼが当該ペプチドを認識(切断)できなくなる状態、または、タグペプチドからプロテアーゼ認識配列を除いたときに当該タグペプチドに対する抗体が当該ペプチドを認識(特異的結合)できなくなる状態を意味する。より好ましくは、タグペプチドからエピトープの範囲を除いたときにプロテアーゼが当該ペプチドを認識(切断)できなくなり、かつ、タグペプチドからプロテアーゼ認識配列を除いたときに当該タグペプチドに対する抗体が当該ペプチドを認識(特異的結合)できなくなる状態である。 したがって、本発明のタグペプチドが付加された目的タンパク質をプロテアーゼで切断することにより、当該タグペプチドに対する抗体による目的タンパク質の認識をできなくすることが可能となり、目的タンパク質を抗体固定化担体等に結合しない状態にすることができる。また、プロテアーゼ処理によりタグペプチドが切断されたか否かを抗体との結合の有無で確認することができる。これは、タグペプチドの切断による分子量変化がわかりにくい場合に、特に有利である。 本発明のタグペプチドにおいて、当該タグペプチドに対する抗体のエピトープとプロテアーゼ認識配列とは、上記の状態に該当する限り、少なくとも1アミノ酸以上重複していればよいが、特に好ましくは、エピトープの範囲内にプロテアーゼ認識配列が含まれる形態、プロテアーゼ認識配列内にエピトープの範囲が含まれる形態、または、エピトープの範囲とプロテアーゼ認識配列とが一致する形態である。 タグペプチドを融合した目的タンパク質において、タグペプチドが目的タンパク質の生物活性や結晶構造等に何らかの影響を及ぼすことは否定できないので、タグペプチドを利用して目的タンパク質を精製した後は、タグペプチドを切り離す必要がある。図1(a)に示すように、従来はタグペプチド(図1(a)中「tag」)とは別にプロテアーゼ認識配列(図1(a)中「TEV」)を挿入する必要があった。しかし、図1(b)に示すように、本発明のタグペプチド(図1(b)中「eTEV」)にはプロテアーゼ認識配列が含まれているので、別途プロテアーゼ認識配列を挿入する必要がない。これにより、コンストラクトのデザインを飛躍的に単純化させることができ、コンストラクト作製の時間およびコストを大幅に減少させることができる。また、タグ配列部分が長すぎることによって蛋白質の機能に予想外の悪影響を及ぼす可能性を低減させる効果がある。 タグペプチドの切断に使用するプロテアーゼとしては、タグペプチドを融合した目的タンパク質を非特異的に切断することのないプロテアーゼであれば、特に限定されない。すなわち、本発明のタグペプチドは、プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドであって、該プロテアーゼ認識配列を認識し、切断するプロテアーゼは、該タグペプチドを融合した目的タンパク質を非特異的に切断しないことを特徴とすることが好ましい。具体的には、例えば、TEVプロテアーゼ、ヒトライノウイルス(HRV)プロテアーゼ、エンテロキナーゼ(EK)、トロンビン(Tb)、第Xa因子(Xa)などが挙げられる。使用するプロテアーゼに応じて、プロテアーゼ認識配列が決定される。なお、一般に非特異的な切断を特徴とするプロテアーゼ(例えば、トリプシンのような1アミノ酸のみを認識するプロテアーゼ)であっても、目的タンパク質内に当該プロテアーゼの認識配列を持たず、タグペプチドのみに当該プロテアーゼの認識配列が含まれる場合には、本発明のタグペプチドのプロテアーゼ認識配列として使用することが可能である。 本発明のタグペプチドとしては、以下のアミノ酸配列(1)を有することが好ましい。アミノ酸配列(1):RX1X2LYX3QGKDG(配列番号1)(X1、X2およびX3は、同一または異なって任意のアミノ酸残基を表す。)アミノ酸配列(1)は、後述する2H5抗体のエピトープとして必須の1位のR、4位のL、5位のY、8位のG、9位のK、10位のD、11位のGを含み、かつ、TEVプロテアーゼの認識配列であるENLYFQG(配列番号3)のうち、基質として重要なL、Y、Qを含む配列となっている。上記アミノ酸配列(1)において、X1は特に限定されないが、例えばグルタミン酸(E)が好ましい。X2は特に限定されないが、例えばアスパラギン(N)が好ましい。X3は特に限定されないが、例えばフェニルアラニン(F)が好ましい。 本発明のタグペプチドとして特に好ましくは、以下のアミノ酸配列(2)を有するタグペプチドである。アミノ酸配列(2):RENLYFQGKDG(配列番号2)アミノ酸配列(2)は上記アミノ酸配列(1)においてX1にグルタミン酸(E)を、X2にアスパラギン(N)を、X3にフェニルアラニン(F)を選択したものである。以下、アミノ酸配列(2)を「eTEV配列」と、eTEV配列からなるペプチドを「eTEVペプチド」と、eTEVペプチドからなるタグペプチドを「eTEVタグ」と、それぞれ称する。なお、「eTEVペプチド」および「eTEVタグ」には、N末端に開始コドンに由来するメチオニンが付加された12アミノ酸からなるペプチド(MRENLYFQGKDG(配列番号4))が含まれるものとする。 本発明のタグペプチドの他の実施形態として、上記プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなるタグペプチドが挙げられる。第2のタグペプチドは特に限定されず、公知のタグペプチドから適宜選択して用いることができる。好ましくは、特異的抗体により認識されるタグペプチドである。具体的には、例えば、FLAGタグ、MYCタグ、HAタグ、V5タグなどが挙げられる。また、本発明者が開発したYPGQ(配列番号5)を3〜5回繰りかえしたアミノ酸配列を有するタグペプチド等も第2のタグペプチドとして好適に用いることができる。プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなるタグペプチドは、2種類の抗体のエピトープが含まれ、2種類の抗体が同時にタグペプチドに結合可能であり、かつ、一方の抗体エピトープとプロテアーゼ認識配列とが重複している点に特徴がある。プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと第2のタグペプチドとは、直接結合していてもよく、また任意のスペーサー配列が挿入されていてもよい。以下、当該タグペプチドを「ダブルタグ」と称する。 図2(a)に示すように、通常2種類の抗体を用いてサンドイッチELISAにより目的タンパク質を検出または定量しようとすれば、2種類のタグペプチド(図2(a)中「tagA」および「tagB」)を用い、それぞれについてプロテアーゼ認識配列(図2(a)中「TEV」および「EK」)を挿入して、例えば目的タンパク質のN末端とC末端に結合させたタグペプチド融合タンパク質のコンストラクトを作製する必要があった。しかし、ダブルタグを用いると、1つのタグペプチドでサンドイッチELISAとタグペプチドの切断、除去が可能となる。したがって、コンストラクトのデザインを飛躍的に単純化させることができ、コンストラクト作製の時間およびコストを大幅に減少させることができる。また、NもしくはC末端に機能的に重要な構造があり、タグ付加ができないようなケースでも、どちらか一方にダブルタグを付加することで目的を達成することができる。 本発明のタグペプチドは、遺伝子工学的に任意のタンパク質と結合させてタグペプチドと任意のタンパク質との融合タンパク質とすることができる。この場合、タグペプチドをタンパク質のN末端およびC末端のいずれに結合していてもよい。このようなタグペプチドがそのN末端およびC末端に結合したタグペプチド融合タンパク質は、本発明のタグペプチドと特異的に結合する抗体を用いて1段階で高純度に精製することができる。さらに、精製後のタグペプチド融合タンパク質からタグペプチドを容易に切断し、除去することができる。また、上記抗体を用いてタグペプチド融合タンパク質を検出、定量等することができる。 本発明のタグペプチドは、任意の物質に化学的に結合させることができる。本発明のタグペプチドが化学結合した物質は、本発明のタグペプチドと特異的に結合する抗体を用いて簡便かつ高純度に精製することができ、また検出、定量等することができる。本発明のタグペプチドを化学的に結合させる相手の物質は限定されないが、例えば、タンパク質、核酸、糖類、有機高分子、金属などが挙げられる。 本発明のタグペプチドと、任意のタンパク質との融合タンパク質の製造方法の概略は、以下のとおりである。 まず、本発明のタグペプチドをコードするポリヌクレオチドを、公知の方法により合成する。ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNAが挙げられるが、DNAが好ましい。ポリヌクレオチドがDNAの場合には、DNA合成機によりDNAを合成することができる。また、DNAは、いくつかの部分に分けて合成した後、それらを連結してもよい。タグペプチドのDNA配列は、遺伝子暗号の縮重により多くの種類がありうるが、DNAから発現されるペプチドが本発明のタグペプチドのアミノ酸配列を有することになる限り、特に限定されない。eTEVタグをコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号6で示される塩基配列からなるDNAが挙げられる。またダブルタグをコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号7で示される塩基配列からなるDNAが挙げられる。 合成したタグペプチドをコードするDNAの3’末端または5’末端に、目的とするタンパク質をコードするDNAを連結する。あるいは、目的とするタンパク質のDNAをPCR等の手法によって得る際に、DNAの3’末端または5’末端のプライマーにタグペプチドをコードするDNAを使用すると、タグペプチドをコードするDNAが目的タンパク質の遺伝子に連結された遺伝子を、PCR産物として得ることができる。 得られたタグペプチドおよびタンパク質をコードするDNAを含んだDNAを発現ベクターに適宜挿入する。ベクターとしては、公知の発現ベクター(細菌由来、酵母由来、ウイルス由来など)を好適に用いることができ、特に限定されない。発現ベクターに含まれるプロモーターは、発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればよい。発現ベクターにはこれ以外に、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製オリジンなどを含有しているものを用いることができる。このように得られた発現ベクターを宿主細胞に導入する。宿主細胞としては特に限定されず、大腸菌、酵母等の微生物;動物細胞等を用いることができる。好ましい宿主細胞は、動物細胞である。発現ベクターを宿主細胞に導入する方法は、公知の形質転換の中から宿主細胞に応じて適宜選択して用いればよい。得られた組換え微生物または細胞を適当な培地で培養し、タグペプチドが結合した融合タンパク質を発現させる。タグペプチドが結合した融合タンパク質は、組換え微生物もしくは細胞中、または培養液中から、後述する抗体を用いて一段階で精製され得る。 上記タグペプチド融合タンパク質の製造方法において説明した本発明のタグペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび当該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターも本発明に含まれる。なお、本発明の組換えベクターはタグペプチドと目的のタンパク質との融合タンパク質(タグペプチド融合タンパク質)を発現可能な組み換えベクターに限定されず、本発明のタグペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むものであればよい。〔抗体〕 本発明は、上記本発明のタグペプチドに対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のプロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドを認識し、特異的に相互作用する抗体であれば特に限定されない。本発明の抗体は、本発明のタグペプチド(プロテアーゼ認識配列を含むペプチド断片)を抗原として、公知の方法に従ってマウス、ウサギ等の哺乳動物を免疫することにより得ることができる。本発明の抗体の具体例として、TEVプロテアーゼの認識配列を含む11アミノ酸からなるペプチド(RENLYFQGKDC(配列番号8))を抗原として、マウス、ウサギ等の哺乳動物を免疫することにより得られる抗体が挙げられる。また、ラット−マウス ハイブリドーマ2H5(受託番号FERM BP−11245として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に国際寄託済み。受託日:2008年10月31日)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。さらに、当該モノクローナル抗体の抗原認識領域をプロテアーゼ等で切り出し、Fv、FabやF(ab’)2として用いることもできる。また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて組換え型のモノクローナル抗体を産生させることもできる。なお、本発明の抗体を産生するラット−マウス ハイブリドーマ2H5(FERM BP−11245)も、本発明に含まれる。〔タンパク質の精製方法〕 本発明は、上記本発明の抗体を用いたタンパク質の精製方法を提供する。本発明のタンパク質の精製方法は、以下の(i)〜(iii)の工程を含む方法であればよい。本発明の抗体は、本発明のプロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドと特異的に相互作用することから、該抗体を用いると、本発明のタグペプチドと任意のタンパク質との融合タンパク質を一段階で高純度に精製することができ、さらに容易にタグを切り離すことができる。(i)本発明のタグペプチドと目的のタンパク質との融合タンパク質を含む試料に、本発明の抗体を作用させて融合タンパク質と抗体との結合物を形成させる工程(ii)前記(i)の工程で得られた結合物に溶離物質を作用させて融合タンパク質を抗体から遊離させる工程(iii)前記(i)の工程で得られた融合タンパク質からタグペプチドを切断する工程 (i)の工程において、試料は、本発明のタグペプチドと目的のタンパク質との融合タンパク質を含むものであれば特に限定されない。例えば、当該融合タンパク質を発現する形質転換細胞の培養上清、細胞溶解液等が挙げられる。融合タンパク質が封入体等の不溶性画分として得られる場合には、タンパク質の可溶化および折りたたみ(巻き戻し)を適宜行ってもよい。試料は、遠心分離等により固形成分を除去したものであることが好ましく、必要に応じてpHを中性(7〜8)に合わせることが好ましい。また、試料中の目的タンパク質の濃度は0.2μg/mL以上であることが好ましい。 (i)の工程では、本発明の抗体を担体に固定化した固定化抗体を用いることが好ましい。抗体を固定する担体としては、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されず、公知の担体を用いることができる。例えば、セファロース(GEヘルスケア社)、アフィゲル(BIO−RAD社)等が好適である。抗体を担体に固定化する方法は、担体の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、セファロースを用いる場合には、抗体をカップリングバッファーで透析し、次いでCNBr活性化セファロース(GEヘルスケア)と抗体とを室温で約1〜2時間混合することにより、セファロース固定化抗体を作製することができる。 本発明のタンパク質の精製方法においては、上記固定化抗体をカラムに充填して使用するカラム法、試料と混合して懸濁状態で結合させるバッチ法をともに利用できる。前者の場合には、固定化抗体をカラムに充填し、カラムに試料を流して本発明の抗体をタグペプチドに作用させる。これにより、タグペプチドと抗体とが結合し、タグペプチド融合タンパク質と抗体との結合物が形成される。後者の場合は、試料溶液10mLあたり100μL程度の固定化抗体を加えて穏やかに混和し、融合タンパク質と抗体との結合物を形成させてからカラムに充填する。 次いで(ii)の工程において、前記(i)の工程で得られた結合物に溶離物質を作用させてタグペプチド融合タンパク質を抗体から遊離させる。すなわち、結合物に溶離物質を作用させることにより抗体とタグペプチドとを解離させ、タグペプチドを介して固定化抗体に結合したタグペプチド融合タンパク質を、抗体から遊離させる。溶離物質としては、本発明のタグペプチドと本発明の抗体との結合を解離させる作用を有する物質であればよい。このような物質として、ポリオールなどの親水性の有機溶媒、本発明のタグペプチド等が挙げられる。 タグペプチド融合タンパク質と抗体との結合物に溶離物質を作用させる方法としては、溶離物質を水または適当な緩衝液と混合して溶離液とし、該溶離液をカラムに流す方法が好ましい。この場合、溶離液中の溶離物質により抗体から遊離したタグペプチド融合タンパク質は、溶離液とともにカラムから溶出する。水または緩衝液は、タンパク質の種類に応じて選択すればよい。 溶離液中の溶離物質の含有量は、目的とするタグペプチド融合タンパク質、溶離物質の種類等により適宜変更するのが好ましい。例えば、溶離物質として親水性の有機溶媒を用いる場合には、水または緩衝液と親水性の有機溶媒との合計体積を100として、親水性の有機溶媒を約30%(v/v)以上で混合することが好ましく、約40%(v/v)以上で混合することがより好ましい。水または緩衝液と親水性の有機溶媒とを体積比(水または緩衝液:親水性の有機溶媒)を約70:30〜30:70とすることが好ましい。このとき緩衝液には高濃度の塩、たとえば2MのNaClが含まれることが望ましい。 タグペプチドを溶離物質とする場合には、水または緩衝液中にタグペプチド濃度が約0.01〜2mg/mLとなるように溶離液を調製することが好ましい。より好ましくは約0.03〜1mg/mLである。溶離物質とするタグペプチドとしては、本発明のタグペプチドであれば限定されない。本発明のタグペプチドは、公知のペプチド合成法によって製造することができる。 タグペプチド融合タンパク質を精製した後の固定化抗体は、溶離物質を含む溶離液で十分洗浄することにより、繰り返し使用することが可能である。 次いで(iii)の工程において、前記(ii)の工程で得られたタグペプチド融合タンパク質からタグペプチドを切断する。すなわち、本発明のタグペプチドに含まれるプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを適当な条件で作用させることにより、タグペプチドが結合していない目的タンパク質を得ることができる。 本発明のタンパク質の精製方法においては、タグペプチドと抗体とが特異的に相互作用し、該相互作用は、タグペプチド、親水性の有機溶媒等の溶離物質により容易に解離することから、タグペプチド融合タンパク質を一段階で高純度に精製することができる。また、溶離物質に親水性の有機溶媒等を用いることから、タグペプチド融合タンパク質および抗体を変性させることなく精製することができる。さらに、タグペプチド融合タンパク質からタグペプチドを切断し、除去することができる。したがって、本発明によれば、X線結晶構造解析のための高品質かつタグペプチドが除去された組換えタンパク質を、簡便に十分量得ることが期待できる。〔タンパク質の検出または定量方法〕 本発明のタグペプチドおよび本発明の抗体を用いることにより、目的タンパク質の検出または定量を行うことができる。特に、ダブルタグを用いることにより、目的タンパク質に対する抗体が容易に入手できない場合でも、サンドイッチELISAを実施することが可能となり、極微量の目的タンパク質を検出することができる。さらに、複数の試料における目的タンパク質の含量を高精度で比較することができる。ダブルタグと目的タンパク質との融合タンパク質(以下、「ダブルタグ融合タンパク質」という)を、サンドイッチELISAを用いて検出または定量する場合、本発明のプロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドに対する抗体(本発明の抗体)と第2のタグペプチドに対する抗体との2種類の抗体を用い、いずれの抗体をキャプチャー抗体に用いてもよく、他方の抗体を検出抗体とする。試料は、ダブルタグ融合タンパク質を含むものであれば特に限定されない。例えば、ダブルタグ融合タンパク質を発現する形質転換細胞の培養上清、細胞溶解液等が挙げられる。 サンドイッチELISAを用いてダブルタグ融合タンパク質を検出または定量する手順の概略を以下に示す。1)予め検出抗体を何らかの手段により修飾または標識しておく。修飾または標識手段は特に限定されず、例えば、ビオチン化、ペルオキシダーゼ等の酵素標識、フルオレセインなどの蛍光色素標識、125Iなどの放射性同位元素による標識などが挙げられる。2)キャプチャー抗体をマイクロタイタープレートに固相化する。3)固相化したキャプチャー抗体上に、ダブルタグ融合タンパク質を含む試料を流し、ダブルタグ融合タンパク質をキャプチャー抗体に捕獲させる。4)次いで、捕獲されたダブルタグ融合タンパク質に、検出抗体を作用させてダブルタグ融合タンパク質と検出抗体との結合物を形成させる。検出抗体を酵素標識して用いた場合には、次に6)の操作を行う。5)検出抗体をビオチン化して用いた場合には、形成された結合物に酵素標識したストレプトアビジンを作用させ、抗体中のビオチンとストレプトアビジンとを結合させる。6)酵素の発色または発光基質(例えば、ペルオキシダーゼであればABTS)を加える。酵素により基質が分解されて発色反応産物が得られるため、試料の吸光度を測定することによりダブルタグ融合タンパク質と検出抗体との結合物を検出することができる。また、吸光度は試料中のダブルタグ融合タンパク質量に定量的に相関することから、ダブルタグ融合タンパク質と抗体との結合物を定量することができる。さらに、この場合に発色基質とともに基質増感剤を併用することにより、検出感度を上げることが可能である。 ウェスタンブロッティングにより目的タンパク質を検出することができる。この場合、タグペプチドはダブルタグでもよいし、第2のタグペプチドを有しないタグペプチドでもよい。以下に、ウェスタンブロッティングの手順の概略を示す。1)本発明のタグペプチドと目的タンパク質との融合タンパク質を含む試料をSDS電気泳動に供し、タグペプチド融合タンパク質を分離して、ニトロセルロース膜またはPDVF膜に転写する。2)膜上の融合タンパク質に、本発明の抗体を作用させて結合物を形成させる。本発明の抗体を酵素標識して用いた場合には、次に4)の操作を行う。3)本発明の抗体を酵素で標識していない場合には、2)で加えた抗体と特異的に反応する抗体(酵素標識抗体:二次抗体)をさらに作用させる。4)酵素の基質(通常、発色または発光基質)を加え、酵素反応の生成物を検出する。 本発明のタグペプチドおよび本発明の抗体は、蛍光抗体法、免疫沈降法等や、検出試薬の開発、細胞イメージング、センサー開発等にも応用可能である。〔キット〕 本発明は、タンパク質の発現、精製、検出または定量のためのキットを提供する。本発明のキットは、本発明の組換えベクターまたは本発明の抗体を含むものであればよい。本発明のキットを用いることにより、タンパク質の発現、精製、検出または定量を簡便に行うことができる。発現用キットには本発明の組換えベクターが必須に含まれ、精製、検出または定量用キットには、本発明の抗体が必須に含まれる。本発明の組換えベクターおよび本発明の抗体の両方を含むキットとすることが好ましい。 発現用キットに含まれる組換えベクターは、キットのユーザーが目的のタンパク質をコードするDNAを組み込むことにより本発明のタグペプチドと目的のタンパク質が結合したタグペプチド融合タンパク質の発現ベクターを作製できる形態で提供されることが好ましい。ユーザーは、作製した発現ベクターを適当な宿主細胞に導入して宿主細胞を培養することにより、所望のタグペプチド融合タンパク質を簡便に発現させることができる。精製用キットには、本発明の抗体が適当な担体に固定化された状態で含まれることが好ましい。また、タグペプチドを切断するためのプロテアーゼが含まれていることが好ましい。発現用キットと精製用キットと組み合わせて、発現および精製用キットとすることが、より好ましい。 検出または定量用キットには、本発明の抗体およびダブルタグを構成する第2のタグペプチドに対する抗体が含まれることが好ましい。また、本発明の抗体および第2のタグペプチドに対する抗体のいずれか一方は、適当な標識(酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)や修飾(ビオチン化等)がされた状態で含まれることが好ましい。さらに、キットには、二次抗体、反応用緩衝液、基質、使用説明書等の構成を含んでいてもよい。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例1:モノクローナル抗体作製〕 抗eTEVペプチド抗体は定法により以下のように作製した。(1−1)ペプチドの合成、免疫 TEVプロテアーゼの認識配列(ENLYFQG(配列番号3))を含んでさらにその両側に荷電性アミノ酸を加えた11アミノ酸からなるペプチド(RENLYFQGKDC(配列番号8))をFmoc固相法により合成した。逆層HPLCにより精製したeTEVペプチドを、C末端のCys残基を介してキャリアータンパク質であるkeyhole limpet hemocyanin (KLH)に結合させ、これを免疫原とした。このeTEVペプチド−KLH複合体を、アジュバントとともにラット(SD、雌、8週齢)の両足の裏に皮内投与(片足100μLで計200μL/匹)することで免疫した。免疫2週間後にELISA法にて抗体価を測定したところ、高い抗体価が得られた。このラットより摘出した腸骨リンパ細胞を融合に供した。(1−2)細胞融合、ハイブリドーマ樹立 上記ラットリンパ細胞とマウスミエローマ細胞(SP2/0株)とをポリエチレングリコール法にて融合した後、HAT選択培地にて培養した。コロニーを生じたウェルの上清をELISA法にてスクリーニングし、陽性の強かったものを二次スクリーニングにまわした。二次スクリーニングでは、抗原として後述する融合蛋白質(TEV−Fn)を使用した。その結果、反応性の高い一つのクローンを得た。当該クローンを限界希釈法によりクローニングし、最終的に抗eTEV抗体産生ハイブリドーマ2H5(受託番号FERM BP−11245として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に国際寄託済み。受託日:2008年10月31日)を樹立した。(1−3)抗体の精製、セファロース固定化抗体の調製(1)抗体の精製 1−2で樹立したハイブリドーマ2H5を、10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640培地にて培養した。この培養上清からプロテインGセファロースを用いて2H5抗体を精製した。精製抗体のアイソタイプはIgG2a、軽鎖はκであった。(2)セファロース固定化抗体の調製 精製IgG(約20mg)をカップリングバッファー(0.1M NaHCO3、0.3M NaCl、pH8.3)に透析した。次いで、1mM塩酸で洗ったCNBr−activated Sepharose 4B(GEヘルスケア)と室温で1時間混合することにより、セファロース固定化抗体を作製した。未反応の活性基を0.1M Trisによってブロックし、0.1M Gly−HCl、pH 2.2で非特異的に結合した抗体を除去した。未結合の抗体の定量結果から、セファロースレジン1mLあたり約2mgの2H5抗体を固定化することができたことがわかった。〔実施例2:タグ配列融合タンパク質の作製〕(2−1)大腸菌発現用コンストラクトによるタグ配列融合タンパク質の作製 ヒトフィブロネクチンの第9−第10Fn3ドメイン部分の185残基を発現するコンストラクトを用い、そのN末端に、図3に示す種々のTEV由来の配列(eTEV配列を含む)を付加したタグ配列融合タンパク質を作製した。インサートはextension PCRで作製し、発現ベクターpET11c(Novagen)のNdeI−BamHIサイトに挿入した。また、Ala変異体のコンストラクトはQuickChange Mutagenesis kit(Stratagen)を用いて作製した。得られたコンストラクトを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換し、定法に従って発現誘導を行った。融合蛋白質は大腸菌可溶化物から陰イオン交換クロマトグラフィー(TEV−Fn)もしくはNi−NTAアガロースクロマトグラフィー(His−eTEV−Fnなど)によって精製した。(2−2)動物細胞発現用コンストラクトによるタグ配列融合タンパク質の作製 ほ乳類細胞での発現用ベクターは、pCDNA3.1(Invitrogen)、あるいはヒト成長因子(hGH)融合発現ベクター(pSGHV0、D.Leahy教授より供与)を用いた。各種標的タンパク質のDNA断片とeTEV配列をコードする塩基配列とをextension PCRで融合し、上記ベクターのクローニングサイトへ挿入した。作製したプラスミドをヒト線維芽細胞株HEK293Tにトランスフェクションし、得られた培養上清をプルダウン実験等に供した。〔実施例3:モノクローナル抗体2H5の性状解析〕(3−1)エピトープの解析 モノクローナル抗体2H5(以下「2H5抗体」という)によって認識される必要最小のペプチド配列を、上記(2−1)で作製した各種のeTEV−Fn融合タンパク質を用いたELISA法で調べた。プロトコールは以下のとおりである。(1) 10μg/mLに希釈したHis−eTEV−Fn融合タンパク質(野生型または各Ala変異体)溶液50μLを96wellプレートに加えて静置(4℃、16時間)した。(2) アスピレーターで吸引し、5% スキムミルクin Tris−buffered saline(TBS、20mM Tris−HCl、150mM NaCl pH7.5)を200μL/well加えて室温で1時間静置した。(3) 0.01−30μg/mLの2H5抗体を50μL加えて室温で1時間静置した。(4) 200μL/wellのTBSで3回洗浄した。(5) ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(1/1000希釈)を50μL加えて室温で30分間静置した。(6) 200μL/wellのTBSで4回洗浄した。(7) ペルオキシダーゼ発色基質(ABTS)を100μL/wellで加え、室温で5〜10分静置後、各well中の溶液の405nmの吸光度を測定した。 2H5抗体は11残基の合成ペプチド(RENLYFQGKDC(配列番号8))に対して作られたものであるが(実施例1参照)、C末端のCys残基はKLHとの反応に使われているので、抗原認識に重要な残基は、原理的にはC末端のCys残基を除く10残基の内部にあるはずである。しかしながら最初に作成したスクリーニング用融合タンパク質TEV−Fn(上記10残基の両端にMetおよびGlyが存在、図3参照)に対する結合が非常に強かったため、念のためこの両末端のアミノ酸(Met0とGly11)のAla変異体も作成し、解析に加えた。その結果を図4に示した。図4からわかるように、Ala変異体は2H5抗体との反応性において3つのグループに分かれた。第一のグループは、その反応性が野生型のeTEVペプチドと全く変わらないもの(M0、E2、N3、F6およびQ7)であった。第二のグループは、反応性はあるものの野生型に比べて100倍以上低下しているもの(R1およびG11)であった。第3のグループはほぼ完全に反応性が失われているもの(L4、Y5、G8、K9およびD10)であった。この結果は、2H5抗体が抗原ペプチドを11残基(RENLYFQGKDG(配列番号2))という極めて長い領域にわたって認識して結合することを示すものであった。通常、抗ペプチド抗体が認識するのは数残基とされているところ、2H5抗体は、抗ペプチド抗体として極めて特殊な抗原結合部位を有していることが示唆された。(3−2)2H5抗体の抗原認識部位とTEVプロテアーゼによる認識特異性との関係 eTEVペプチドはTEVプロテアーゼによって認識、切断される。2H5抗体のエピトープ決定のために作成した一連のAla変異体を用いて、TEVプロテアーゼによる認識に必須なアミノ酸残基の同定を行った。具体的には、His−eTEV−Fn融合タンパク質(野生型またはAla変異体)を400μg/mLの濃度でTBSに溶解し、そこに1/10量のTEVプロテアーゼを添加し、20℃で16時間反応させた。SDSを加えて反応を停止し、反応液の全量を15%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、クマシーブリリアントブルーで染色した。切断前の基質タンパク質は分子量24kDaの移動度を示し、TEVプロテアーゼで切断されると20kDaの位置へとシフトすることに基づき、切断を評価した。 結果を図5に示した。図5から明らかなように、TEVプロテアーゼの基質となるためには4、5および7番目のアミノ酸(すなわちLeu、Tyr、Gln)が重要であり、その他の残基はAlaでも差し支えないことがわかった。この結果は、すでにDoughertyら(EMBO J., 7, 1281-1287, 1988)によって報告されている認識特異性とほぼ一致するものであったが、2番目のGluをAlaに変えても切断に大きな変化がないこと、4番目のLeu残基はAlaのような小さなアミノ酸側鎖は許容されないことなど、Doughertyらの報告にない新しい知見が得られた。重要なことは、Gln7がTEVプロテアーゼによる認識に重要であるのに対して2H5抗体による認識には不要であることであり、これは7番目の残基を変えることによりプロテアーゼと抗体のデュアル認識モードからシングル認識モードへとペプチドの性質を変えることが可能であることを示している。(3−3)結合親和性 2H5抗体のeTEVペプチドに対する結合親和性を調べるため、ビアコアによる表面プラズモン共鳴解析を行った。2H5抗体をCM5センサーチップ上に固定化し、31、62、125、250、500、1000μMの各濃度のeTEV−Fn融合タンパク質を流してそのセンサーグラムを記録した(図6参照)。図6に示された濃度依存性からBIAevaluation 3.0プログラムを用いて親和性を測定したところ、40nMという見かけ上の解離平衡定数が得られ、2H5抗体のeTEVペプチドへの親和性は比較的高いことがわかった。(3−4)ウェスタンブロッティングへの応用 eTEV−Fn融合タンパク質を0.63−10ng/レーンでSDS電気泳動に供し、PDVF膜に転写後、1μg/mLの2H5抗体と反応させ、続いてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgGとケミルミネッセンス基質によって検出した。比較のために、FLAGペプチド融合タンパク質を同じ量電気泳動に供して、抗FLAG抗体M2(シグマ・アルドリッチ社)で検出した。結果を図7に示した。図7から明らかなように、2H5抗体は約2ng(0.08pmol)以上のeTEVペプチド融合タンパク質をウェスタンブロッティングで検出でき、その感度は市販のFLAG/M2システムに匹敵することがわかった。〔実施例4:2H5抗体固定化セファロースを用いたタグ配列融合タンパク質のプルダウン〕 eTEVタグを組み換えタンパク質の精製に使うためには、発現細胞の培養上清や、大腸菌の可溶化物といった混合物から目的タンパク質を特異的に捕捉できなければならない。これを様々なコンストラクトで調べるために、プルダウン実験を行った。(実験方法) 様々なeTEVタグ付加コンストラクトをHEK293T細胞に一過性に発現させ、その培養上清1mLに対して20μLの2H5抗体を固定化したセファロース(以下「2H5セファロース」という)または2H5抗体を固定化していないセファロース(対照)を加えて4℃、1時間反応させた。遠心により2H5セファロースを沈降させ、TBSにて2回洗浄後、SDSサンプルバッファーで溶出し、そのままSDSゲル電気泳動で分析した。ただし、目的タンパク質の分子量に応じて異なるアクリルアミド濃度のゲルを使用した。泳動したゲルはクマシーブリリアントブルーもしくは銀染色によってタンパク質を可視化した。使用したeTEVタグ付加コンストラクトは以下の通りである。(1)eTEV−NP1:eTEVタグをN末端に持ち、マウスのニューロピリン1のa1a2ドメイン(251残基)からなるコンストラクト(2)eTEV−EGFP:eTEVタグをN末端に持ち、enhanced GFP(241残基)からなるコンストラクト(3)hGH−eTEV−sema6C:N末端にヒト成長ホルモン(hGH)、中央にeTEVタグ、C末端側にラットセマフォリン6C(sema6C)をもつコンストラクト(4)sema3A−eTEV:マウスセマフォリン3A(sema3A)のC末端側にeTEVタグを持つコンストラクト (1)eTEV−NP1の結果を図8に、(2)eTEV−EGFPの結果を図9に、(3)hGH−eTEV−sema6Cの結果を図10に、(4)sema3A−eTEVの結果を図11にそれぞれ示した。図8〜11中、Mは分子量マーカーを、2H5は2H5セファロースを添加した試料を、Cont.は対照を添加した試料を表わす。矢印は目的タンパク質のバンドを表わす。図8〜11から明らかなように、調べた全てのコンストラクトにおいてタグ付加タンパク質が2H5セファロースに特異的に結合することがわかった。特筆すべきは、eTEVタグが目的遺伝子のN末端(eTEV−NP1、eTEV−EGFP)、中央(hGH−eTEV−sema6C)、C末端(sema3A−eTEV)のどこに付加されていても、プルダウンに支障が無いことである。このことは、2H5がeTEV配列を認識する際には、その前後の構造にはほとんど影響を受けない事を示唆している。〔実施例5:eTEVタグ融合タンパク質の2H5セファロースによる精製〕(5−1)精製効率の検討 2H5セファロースを用いて、緑色蛍光タンパク質の一種であるGFPUVのeTEVタグ融合タンパク質(以下「eTEV−GFPUV」ともいう)の一段階精製を行った。GFPUVはUVランプなどで蛍光観察しやすいように励起波長を短波長側にシフトさせたGFPの変異体である。N末端にP4×3タグ、続いてeTEV配列、その後に238アミノ酸からなるGFPUV、さらにヒスチジンタグを付加した融合タンパク質(図12参照、配列番号9)をコードする融合遺伝子のコンストラクトを大腸菌用発現ベクターpET11bに組み込んだ。 上記発現ベクターで大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、定法に従って発現誘導を行った。この可溶性画分1mLを4℃で2H5セファロース(0.5mL bed volume)に通し、結合させた。未結合のタンパク質をTBSで洗浄後、100μg/mLのeTEVペプチドを含むTBSで溶出した。1フラクションあたりのサイズは0.5mLとした。大腸菌破砕物の可溶性画分、並びに洗浄および溶出フラクションの各サンプルをSDSゲル電気泳動に供した。 結果を図13に示した。図13中oriは大腸菌破砕物の可溶性画分を示す。レーン1〜5は洗浄フラクションのサンプル、6〜10は溶出フラクションのサンプルを示す。図13からわかるように、GFPUVは大腸菌破砕物の可溶性画分に30kDa付近のバンドとして確認された(図13の矢印)。そして、2H5セファロースによるアフィニティクロマトグラフィーによって、GFPUVは1段階で完全に精製することが可能であった。各フラクションの蛍光(Ex490nm/Em520nm)測定によって収率を計算すると、発現していたGFPUVの約93%が溶出画分に回収されていたことが明らかとなった。(5−2)溶出条件の検討 2H5セファロースからeTEV−GFPUVを溶出する際の緩衝液の条件について検討した。まず、競合的な溶出を行うためのペプチドの濃度条件を検討した。上記(5−1)と同様に、eTEV−GFPUV発現大腸菌の可溶性画分を2H5セファロースに通し、未結合のタンパク質をTBSで洗浄後、0〜1000μg/mLの各濃度eTEVペプチドを含むTBSで溶出した。 結果を図14に示した。図14中、Mは分子量マーカーを、oriは大腸菌破砕物の可溶性画分を示す。図14から明らかなように、eTEVペプチド30μg/mLという低濃度で2H5セファロースからeTEV−GFPUVを完全に溶離することができた。通常、抗ペプチド抗体レジンからの競合的な溶出には100〜500μg/mLのペプチド溶液が用いられることから考えると、2H5抗体を用いたeTEVタグタンパク質の精製システムは極めて安価に構築できることが示唆された。 次に、水溶性の有機溶媒やカオトロピックイオンを含む緩衝液を用い、それぞれの溶出能を調べた。結果を図15に示した。使用した緩衝液は以下のとおりである。レーン1:0.1mg/mLのeTEVペプチドを含むTBSレーン2:40%プロピレングリコール+2M NaClレーン3:40%プロピレングリコール+2M NaIレーン4:2M NaIレーン5:0.1M Gly−HCl, pH3.0 図15から明らかなように、40%プロピレングリコール+2M NaClという条件で2H5セファロースからeTEV−GFPUVの溶出が見られ(レーン2)、その効率は0.1mg/mLのeTEVペプチドを含むTBSによる溶出(レーン1)の50%程度であった。カオトロピックイオンであるヨウ化物イオンを含む2Mのヨウ化ナトリウムでは溶出は非常にわずかであった(レーン4)。pH3.0の酸性条件では100%近い溶出が見られたが(レーン5)、この条件では2H5セファロースからの抗体の解離が見られ(図15中の※印で示したバンド)、抗体カラムの繰り返し使用という点で問題があることがわかった。 以上の結果から、精製の際に2H5セファロースからの目的のeTEVタグ融合タンパク質を溶出するためには30μg/mL以上のeTEVペプチド溶液を用い、レジンの再生のためには40%プロピレングリコールと2M NaClを含む中性緩衝液を用いればよいことがわかった。完全なレジンの再生は、上の緩衝液をカラムの100倍量程度流すことで得られることを確認した。〔実施例5:他のタグと組み合わせたダブルタグシステムの構築〕 eTEVタグを他のペプチドタグとつなげて一続きの「ダブルタグ」とすることで、組み換えタンパク質の精製やサンドイッチELISAなどが簡易化できる。そこで、このことを確認するために、図16に示したターゲットタグとeTEVタグとを結合した33アミノ酸のタグ配列(配列番号10、以下「Wタグ」という)をデザインし、これを融合したタンパク質の発現を行った。WタグはGFPUVもしくはFnのN末端に融合し、これらを大腸菌にて発現・精製したのち、以下の要領でサンドイッチELISAを行った。 すなわち、抗ターゲットタグ抗体であるP20.1抗体(マウスIgG)10μg/mLをマイクロタイタープレートに固相化し、ブロッキング後、精製したWタグ融合GFPUV(W−GFPUV)あるいはWタグ融合Fn(W−Fn)を0.003〜3μg/mLの濃度に希釈してウェルに加え、4℃で一晩キャプチャーした。洗浄後、ビオチン化2H5抗体(5μg/mL)を室温で30分反応させ、3回洗浄後にペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Zymed)を加えてさらに室温で15分静置し、ペルオキシダーゼ基質(ABTS)を加えて405nmの吸光度を測定した。 結果を図17に示した。図17から明らかなように、Wタグを付加した2種類のタンパク質は2種類の抗体を用いたサンドイッチELISAにおいて、ともに良好な濃度依存的シグナルを与え、1μg/mL以下の濃度でその定量が可能であることがわかった。このことは、隣接したタグ配列に対する2つの抗体が同時に結合できることを示している。ただし、W−GFPUVとW−FnとでサンドイッチELISAの濃度依存性に3倍程度の差があることから、P20.1抗体あるいは2H5抗体のタグ配列への結合に対して、融合パートナーとなるタンパク質の性質や構造が影響を与えうることが示唆された。 上記のWタグ融合タンパク質においては、P20.1抗体あるいは2H5抗体を用いたアフィニティー精製、およびTEVプロテアーゼによる切断という点についてもシングルタグの時と同様に可能であることが確認でき、Wタグが望み通りの一人二役を果たすことができると結論した。〔実施例7:Wタグを用いた安定発現細胞の迅速スクリーニング〕 Wタグ融合タンパク質の発現ベクターを構築し、HEK392T細胞またはHEK293SGnT1−細胞にトランスフェクションして、目的タンパク質高発現株のスクリーニングを行った。発現ベクターには、pCD−NW3を使用した(図18参照)。培地には、1mg/mLのG418を添加した10%牛胎児血清含有ダルベッコMEM培地を使用した。スクリーニングは、実施例6と同様のサンドイッチELISAを用いて行った。具体的には、P20.1抗体10μg/mLをマイクロタイタープレートに固相化し、ブロッキング後、培養上清をウェルに加え、4℃で一晩キャプチャーした。洗浄後、ビオチン化2H5抗体(5μg/mL)を室温で30分反応させ、3回洗浄後にペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Zymed)を加えてさらに室温で15分静置し、ペルオキシダーゼ基質(ABTS)を加えて405nmの吸光度を測定した。(7−1)オータキシン(Autotaxin、癌細胞転移促進因子)発現細胞 オータキシンのN末端にWタグが融合した発現ベクターを構築し、HEK293SGnT1−細胞にトランスフェクションした。20日間培養してG418耐性細胞を選択し、得られたクローンを一次スクリーニングに供した。一次スクリーニングの結果を図19(a)に示した。発現量の高い3クローン(5G3、5H11、3C11)を選択し、二次スクリーニングに供した。二次スクリーニングでは、各クローンにつき、10倍希釈した培養上清、3倍希釈した培養上清および希釈していない培養上清を試料とした。二次スクリーニングの結果を図19(b)に示した。二次スクリーニングの結果から、クローン5G3をオータキシン高発現株として選択した。(7−2)CRISPa(Cysteine-rich secretory protein a、蛇毒由来血管透過性亢進因子)発現細胞 CRISPaのN末端にWタグが融合した発現ベクターを構築し、HEK392T細胞にトランスフェクションした。12日間培養してG418耐性細胞を選択し、得られたクローンをスクリーニングに供した。スクリーニングの結果を図20に示した。スクリーニングの結果から、クローン#17をCRISPa高発現株として選択した。(7−3)セマフォリン3A(Semaphorin 3A、神経ニューロンガイダンス因子)発現細胞 セマフォリン3AのN末端にWタグが融合した発現ベクターを構築し、HEK392T細胞にトランスフェクションした。14日間培養してG418耐性細胞を選択し、得られたクローンを一次スクリーニングに供した。一次スクリーニングの結果を図21(a)に示した。発現量の高い3クローン(1A2、1B3、2F3)を選択し、二次スクリーニングに供した。二次スクリーニングでは、各クローンにつき、10倍希釈した培養上清、3倍希釈した培養上清および希釈していない培養上清を試料とした。二次スクリーニングの結果を図21(b)に示した。二次スクリーニングの結果から、クローン2F3をセマフォリン3A高発現株として選択した。 以上のように、目的タンパク質の抗体が容易に入手できない場合でも、Wタグを用いることにより、目的タンパク質の発現量を高精度で検出、比較することができ、目的タンパク質の高発現株を簡便に選択できることが示された。 なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。 本発明は、組換えタンパク質を、容易な操作で高純度に、しかも安価に精製できるシステムに使用できるものであり、組換えタンパク質を利用する産業、例えば医薬品産業、研究試薬産業、食品産業等に有用である。ハイブリドーマ 2H5 FERM BP−11245 プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドであって、該プロテアーゼ認識配列と該タグペプチドに対する抗体のエピトープとが重複していることを特徴とするタグペプチド。 プロテアーゼ認識配列を有するタグペプチドであって、該プロテアーゼ認識配列と該タグペプチドに対する抗体のエピトープとが重複しており、該プロテアーゼ認識配列が、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列であることを特徴とするタグペプチド。 以下のアミノ酸配列(1)を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタグペプチド。(1)RX1X2LYX3QGKDG(配列番号1)(X1、X2およびX3は、同一または異なって任意のアミノ酸残基を表す。) アミノ酸配列(1)が、以下のアミノ酸配列(2)である請求項3に記載のタグペプチド。(2)RENLYFQGKDG(配列番号2) 請求項1〜4のいずれかに記載のタグペプチドと第2のタグペプチドとを組み合わせてなることを特徴とするタグペプチド。 請求項1〜4のいずれかに記載のタグペプチドに対する抗体と、第2のタグペプチドに対する抗体が、同時に結合できることを特徴とする請求項5に記載のタグペプチド。 請求項1〜6のいずれかに記載のタグペプチドをコードするポリヌクレオチド。 請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。 請求項1〜4のいずれかに記載のタグペプチドに対する抗体。 ラット−マウス ハイブリドーマ2H5(FERM BP−11245)により産生されるモノクローナル抗体である請求項8に記載の抗体。 ラット−マウス ハイブリドーマ2H5(FERM BP−11245)。 下記(i)〜(iii)の工程を含む、タンパク質の精製方法。(i)請求項1〜4のいずれかに記載のタグペプチドと目的のタンパク質との融合タンパク質を含む試料に、請求項9または10に記載の抗体を作用させて融合タンパク質と抗体との結合物を形成させる工程(ii)前記(i)の工程で得られた結合物に溶離物質を作用させて融合タンパク質を抗体から遊離させる工程(iii)前記(ii)の工程で得られた融合タンパク質からタグペプチドを切断する工程 タンパク質を発現、精製、検出、もしくは定量するためのキットであって、請求項8に記載の組換えベクター、または、請求項9もしくは10に記載の抗体を含むキット。 プロテアーゼ認識配列とタグペプチドに対する抗体のエピトープとが重複していることにより、プロテアーゼ認識配列そのものが検出や精製のために利用可能なタグペプチドを提供するとともに、当該タグペプチドおよび当該タグペプチドに対する抗体を利用した組換えタンパク質の精製方法を提供する。このようなタグペプチドとして、プロテアーゼ認識配列が、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列であることが好ましく、例えば、アミノ酸配列(1)RX1X2LYX3QGKDG(X1、X2およびX3は、同一または異なって任意のアミノ酸残基を表す。)を有するタグペプチドが挙げられる。配列表