タイトル: | 公開特許公報(A)_イオン液体の製造方法 |
出願番号: | 2010054671 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07D 233/58,H01M 10/0568,C07C 59/50,H01G 9/035 |
荻野 弘幸 大石 孝洋 JP 2011184421 公開特許公報(A) 20110922 2010054671 20100311 イオン液体の製造方法 株式会社カネカ 000000941 荻野 弘幸 大石 孝洋 C07D 233/58 20060101AFI20110826BHJP H01M 10/0568 20100101ALI20110826BHJP C07C 59/50 20060101ALI20110826BHJP H01G 9/035 20060101ALI20110826BHJP JPC07D233/58H01M10/00 113C07C59/50H01G9/02 311 6 OL 13 4H006 5H029 4H006AA02 4H006AB91 4H006BJ50 4H006BN10 4H006BS10 5H029AJ12 5H029AJ14 5H029AM06 5H029AM07 5H029AM09 5H029CJ12 5H029HJ02 本発明は、イオン液体の製造方法に関わるものである。 イオン液体は、高いイオン伝導性、難燃性、不揮発性、高い熱安定性といった優れた機能を有していることから、キャパシタ、燃料電池、色素増感太陽電池などの電解質やリチウムイオン二次電池などの二次電池用電解液といったエレクトロニクス用途から、リサイクル可能な反応溶媒といったグリーンマテリルアル用途まで幅広く用いられている。最近は特に、電解コンデンサ、二次電池用電解液、色素増感太陽電池などの電気化学デバイス用途に好適に適用されており、その応用研究がさかんになるにつれ、イオン液体に対してハロゲン濃度、水分などの項目で高いスペックが要求されるようになってきている。中でも、ハロゲン濃度に関しては非常に厳しいスペックが要求されている。 イオン液体には、疎水性イオン液体と親水性イオン液体の2種類が存在する。疎水性イオン液体は、コストはかかるものの、水洗を繰り返し行うことでイオン液体中のハロゲン濃度を限りなく低くすることができ、電気化学デバイス用途のスペックを満たすことができる。 一方、親水性イオン液体は水に可溶であるため、水洗による精製を行うことができない。そのため、ハロゲン化物が混入してしまうと、それを除去することは非常に困難である。 そこで、ハロゲン化物が入りえない合成法として、酸エステル法、炭酸エステル法および酸塩基中和法が一般的に行われている。 酸エステル法は、有機酸エステルを三級アミンに直接反応させ、オニウム塩化すると同時に対アニオンを供給する方法であり(非特許文献1)、原料にハロゲン化物を用いないためハロゲンフリーのイオン液体を合成することができる。しかし、反応が100%進行しないと原料が不純物としてイオン液体中に残存することになってしまう問題点がある。特に、弱酸であるカルボン酸のエステルを用いた場合に反応が100%進行しないことが多く、高純度のイオン液体を得るという観点からすると有用な合成法とはいえない。 炭酸エステル法は、中間体としてアルキル炭酸塩を経由し四級アンモニウム塩を得る方法であり、四級化反応と中和脱炭酸反応の2工程からなる。第1工程は、例えば、三級アミンを炭酸ジメチルによってメチル化し、メチル炭酸アンモニウム塩を得る工程であり、第2工程は、メチル炭酸アンモニウム塩に各種の有機酸を作用させてCO2の発生を伴いながらアニオン交換反応を進行させる工程であり、理論的にハロゲンフリーのイオン液体を合成することが可能である(特許文献1)。しかし、この合成法の第1工程において、四級化反応を進行させるために高温、高圧が必要であり、反応を行うための設備を整えるのに高額なコストがかかること、それに伴う光熱費もかさんでしまう問題がある。また、本法は酸エステル法の延長であると考えることができ、第1工程で反応が進行しきらないと不純物が混入してしまうことになる。上記のメチル炭酸アンモニウム塩のメタノール溶液が「CBILS(Carbonated Based Ionic Liquids Synthesis)」という名称でシグマアルドリッチから販売されている。CBILSは炭酸エステル法を容易に行える点で有用な合成ツールであるが、非常に高額な試薬であるため、製造コストを考慮すると大量生産には不向きである。 酸塩基中和法は、オニウムカチオンとなっている塩基を酸で中和する方法であり、例えば、アルキルイミダゾリウム臭化物塩を水性溶媒に溶解させた後、アニオン交換樹脂に通すことによってアルキルイミダゾリウムヒドロキシド塩に変換し、これと特定のアミノ酸とを反応させることでイオン液体を製造する方法が開示されている(特許文献2)。最近では、アニオン交換樹脂を用いて、特許文献2よりも反応工程数を減らした、特定構造のイオン液体合成法が開示されている(特許文献3)、この合成法はOH型強塩基性アニオン交換樹脂におけるアニオン交換順位において、OH-よりも順位の高いアニオンのみ適用できる方法である。つまり、OH-よりも順位の低い、例えば、カルボキシレートアニオンなどには適用できないため、汎用性の高い合成法であるとは言えない。特開平10−17554号公報特許第4261223号特開2006−199646号公報大野弘幸等、他27名、「イオン性液体 −開発の最前線と未来−」 本発明の目的は、製造コストを低減するとともに低ハロゲン濃度を実現したイオン液体の製造方法を提供することである。 本発明者らは、アニオン交換樹脂を使用する方法を検討していたところ、OH型強塩基性アニオン交換樹脂におけるアニオン交換順位において、OH-よりも順位の低い、例えば、カルボキシレートアニオンなどには適用できない問題に突き当たった。また、検討を重ねていた過程において、イオン液体にハロゲンが混入し、電気化学デバイス用途に適用できるものが得られない問題にも突き当たった。そこで、本発明者らは検討を重ねてきたこれまでの知見から、アニオン交換樹脂に着目した。一般的なOH型強塩基性アニオン交換樹脂は、あらかじめアニオン交換樹脂の末端がOH-に置き換えられた(活性化された)ものである。しかし、100%完全にOH型に活性化されているわけではなく、樹脂末端に一部Cl-が残存した状態であるために、このような樹脂を使用してイオン液体を合成する場合、%オーダーでClが混入してくることを発見した。そこで、さらに検討を重ねた結果、樹脂内のハロゲン含有量が10.0mg/L以下のアニオン交換樹脂を用いると、従来の合成法と比較して、製造コストの抑制が可能となり、電気化学デバイス電解質のスペックを満たすハロゲン濃度が50ppm以下のイオン液体を容易に大量生産ができることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、ハロゲン含有量が10.0mg/Lのアニオン交換樹脂を用いる、ハロゲン含有量が50ppm以下であるイオン液体の製造方法である。 本発明の製造方法は、アニオン交換樹脂の使用量が、使用するイオン液体を構成するカチオン化合物に対してmol比で1.0〜10.0倍量であることが好ましい。 本発明の製造方法は、アニオン交換樹脂を、イオン液体を構成するカチオン化合物と接触させてカチオンのヒドロキシド塩を合成する工程を含むことが好ましい。 本発明の製造方法は、カチオンのヒドロキシド塩とイオン液体を構成するアニオンの酸とを反応させる工程を含むことが好ましい。 本発明の製造方法は、イオン液体を構成するアニオンの酸が、下記一般式(1);(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、保護又は無保護の水酸基、保護又は無保護のアミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C20のアリール基、C4〜C20のヘテロアリール基、C7〜C20のアラルキル基、またはC4〜C20のヘテロアラルキル基を表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基およびヘテロアラルキル基は置換基を有していてもよいし、直鎖または分岐もしくは環を形成していてもよい。)で表される酸であることが好ましい。 本発明の製造方法は、イオン液体を構成するカチオン化合物が、アンモニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピラジニウム、ピリミジニウム、トリアゾニウム、トリアジニウム、トリアジン、キノリニウム、イソキノリニウム、インドリニウム、キノキサリニウム、ピペラジニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウム、モルフォリニウム、ピペラジン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の塩であることが好ましい。 本発明のイオン液体の製造方法は製造コストを抑制でき、低ハロゲン濃度のイオン液体を容易かつ大量に製造できる。 以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。 本発明の製造方法は、イオン液体全般に適用可能であるが、酸エステル法や特許文献3に記載の方法において反応性が低いとされる一般式(2)に示されるアニオン成分を有するイオン液体に好適である。 イオン液体は、常温溶融塩ともいわれる、イオンのみから構成されているにも関わらず常温で液体であるものを指す。例えば、イミダゾリウムなどのカチオンと適当なアニオンの組み合わせから構成される。一般的に、イオン液体はイオンのみから形成され100%イオン化していると考えられている。 上記一般式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、保護又は無保護の水酸基、保護又は無保護のアミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C20のアリール基、C4〜C20のヘテロアリール基、C7〜C20のアラルキル基、またはC4〜C20のヘテロアラルキル基を表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基およびヘテロアラルキル基は置換基を有していてもよいし、直鎖または分岐もしくは環を形成していてもよい。 「置換基を有していてもよい」とは、他の原子あるいは置換基によって置換されていてもよいことを示す。「置換基」とは、反応に悪影響を与えない限り特に限定されるものではなく、具体的には、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子などが挙げられる。 水酸基の保護基としては、一般的な保護基を使用でき、例えば「PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION」(17ページ WILEY−INTERSCIENCE)記載のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのエーテル系保護基や、アセチル基などのエステル系保護基を挙げることができる。 アミノ基の保護基としては、一般的な保護基を使用でき、例えば「PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION」(494ページ WILEY−INTERSCIENCE)記載のものが挙げられる。具体的には、ベンジル基、トリチル基、ホルミル基、アセチル基、テトラフルオロアセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセトキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。導入及び脱保護の容易さの観点から、ベンジル基、トリチル基、ホルミル基、アセチル基、テトラフルオロアセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセトキシ基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、またはt−ブトキシカルボニル基が好ましい。 C1〜C20のアルキル基としては、例えばメチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基のような、これらのアルキル基の水素原子が任意の数だけフッ素原子で置換されたものも挙げられる。 C2〜C20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、スチリル基、イソプロペニル基、シクロプロペニル基、ブテニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。 C2〜C20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、フェニルエチニル基、シクロプロピルエチニル基、ブチニル基、ペンチニル基、シクロブチルエチニル基、ヘキシニル基などが挙げられる。 C6〜C20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、テルフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基などが挙げられる。 C4〜C20のヘテロアリール基としては、例えば、ピロリニル基、ピリジル基、キノリル基、イミダゾリル基、フリル基、インドリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、2−フェニルチアゾリル、2−アニシルチアゾリル基などが挙げられる。 C7〜C20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ブロモベンジル基、サリチル基、α−ヒドロキシベンジル基、フェネチル基、α−ヒドロキシフェネチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、3,5−ジフルオロベンジル基、トリチル基などが挙げられる。 C4〜C20のヘテロアラルキル基としては、ピリジルメチル基、ジフルオロピリジルメチル基、キノリルメチル基、インドリルメチル基、フルフリル基、チエニルメチル基などが挙げられる。 一般式(2)で表されるアニオン成分はカチオン成分と対になってイオン液体を形成する。 カチオン成分としては、アンモニウムイオンおよびその誘導体、イミダゾリウムイオンおよびその誘導体、ピリジニウムイオンおよびその誘導体、ピロリジニウムイオンおよびその誘導体、ピロリニウムイオンおよびその誘導体、ピラジニウムイオンおよびその誘導体、ピリミジニウムイオンおよびその誘導体、トリアゾニウムイオンおよびその誘導体、トリアジニウムイオンおよびその誘導体、トリアジンイオンおよびその誘導体、キノリニウムイオンおよびその誘導体、イソキノリニウムイオンおよびその誘導体、インドリニウムイオンおよびその誘導体、キノキサリニウムイオンおよびその誘導体、ピペラジニウムイオンおよびその誘導体、オキサゾリニウムイオンおよびその誘導体、チアゾリニウムイオンおよびその誘導体、モルフォリニウムイオンおよびその誘導体、ピペラジンイオンおよびその誘導体が挙げられる。入手容易さの観点から、アンモニウムイオンおよびその誘導体、イミダゾリウムイオンおよびその誘導体、ピリジニウムイオンおよびその誘導体、ピロリジニウムイオンおよびその誘導体が好ましい。 本発明における製造法は、樹脂中のハロゲン濃度が10.0mg/L以下であるアニオン交換樹脂を用いることを特徴とする。樹脂内のハロゲン濃度が10.0mg/L以下であれば、電気化学デバイス用途電解質のスペックを満たすイオン液体を合成することができる。樹脂中のハロゲン濃度は、5.0mg/L以下が好ましく、1.0mg/L以下がより好ましい。樹脂内のハロゲン濃度が10.0mg/L以下であるアニオン交換樹脂としては、例えば、オルライトDS−2、ESG4002(OH)などが挙げられる。 上記の樹脂中ハロゲン濃度測定法は、以下に概略を示すが、詳細は実施例で記載する。 アニオン交換樹脂を充填したカラムを作製した後、使用したアニオン交換樹脂使用量の1/5倍量に相当する1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの量は、アニオン交換樹脂使用量とアニオン交換樹脂固有のイオン交換容量の積の値(アニオン交換樹脂の処理能力(mol))を基準にして、その値の1/5としている。つまり、アニオン交換樹脂の処理能力(mol)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドのmol比が5:1になるようにする)に純水を加えて水溶液を調整する。そして、この水溶液をクロマトカラム管に通液して1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドを得る。得られた化合物をイオンクロマトで分析することで、化合物中に含まれているハロゲン濃度を求める。このハロゲン濃度を樹脂に含まれていた塩化物イオンの全量とみなし、樹脂1L当たりに含まれている塩化物イオン量(mg)に換算した値を、樹脂中のハロゲン濃度とする。 一般的に、アニオン交換樹脂中の塩化物イオンの量は、樹脂の官能基末端に残存している塩化物イオンのイオン交換容量によって表され、樹脂全体にどれくらい塩化物イオンが含有されているかは、樹脂の官能基末端に残存している塩化物イオンのイオン交換容量のアニオン交換樹脂の総交換容量に対する割合(%)(以下、RCl(%)と称することがある)で算出される。この算出法は一般的な方法であり、例えば、オルガノ株式会社「イオン交換樹脂 その技術と応用 基礎編」に記載のイオン交換容量測定法が挙げられる。 本発明において使用できる、入手可能なアニオン交換樹脂としては、RCl(%)が1%以下であるアニオン交換樹脂が好適で、0.5%以下であるものがより好ましく、0.1%以下であるものがさらに好ましい。入手可能な、RCl(%)が1%以下のアニオン交換樹脂としては、例えば、オルライトDS−2、ESG4002(OH)が挙げられ、本発明のアニオン交換樹脂として、好ましく使うことができる。 本発明の製法では、上記アニオン交換樹脂を、イオン液体を構成するカチオン化合物と接触させて、カチオンのヒドロキシド塩を合成すること(以下、「工程(A)」と称することがある。)が好ましい。具体的には、イオン液体を構成するカチオン化合物と、アニオン交換樹脂の末端に結合しているOH-とがイオン交換反応し、カチオンのヒドロキシド塩が生成される。 イオン液体を構成するカチオン化合物としては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピラジニウム、ピリミジニウム、トリアゾニウム、トリアジニウム、トリアジン、キノリニウム、イソキノリニウム、インドリニウム、キノキサリニウム、ピペラジニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウム、モルフォリニウム、ピペラジンおよびこれらの誘導体の塩を使用でき、これらとハロゲン、アルキル硫酸、硫酸、または硝酸との塩であることが好ましい。試薬の入手の容易さ、アニオン交換樹脂との交換率を鑑みるとハロゲン化物、硫酸塩が好ましく、臭化物塩、ヨウ化物塩であることがさらに好ましい。 イオン液体を構成するカチオン化合物におけるカチオンは、好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオンが挙げられ、アンモニウムカチオンとしては、例えば、一般式(3)で表されるカチオンが、イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、一般式(4)で表されるカチオンが、ピリジニウムカチオンとしては、例えば、一般式(5)で表されるカチオンが、ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、一般式(6)で表されるカチオンが、ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、一般式(7)で表されるカチオンが、などが挙げられる。 上記一般式(3)〜(7)において、R3〜R14は、それぞれ独立に水素原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C20のアリール基、C4〜C20のヘテロアリール基、C7〜C20のアラルキル基、またはC4〜C20のヘテロアラルキル基を表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基およびヘテロアラルキル基は置換基を有していてもよいし、直鎖または分岐もしくは環を形成していてもよい。 イオン液体を構成するカチオン化合物は、上記カチオンと、ハロゲン化物、硫酸、アルキル硫酸および硝酸との塩からなるが、入手容易さの観点およびアニオン交換樹脂との交換率を鑑みると、アンモニウム臭化物塩、アンモニウムヨウ化物塩、イミダゾリウム臭化物塩、イミダゾリウムヨウ化物塩、ピリジニウム臭化物塩、ピリジニウムヨウ化物塩、ピロリジニウム臭化物塩、ピロリジニウムヨウ化物塩が好ましい。 イオン液体を構成するカチオン化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の製法において、アニオン交換樹脂は固定相として用いられることが好ましい。大量合成が可能となるとともに、低ハロゲン含有量のカチオンのヒドロキシド塩を合成でき、最終製品のイオン液体のハロゲン濃度を低減することができる。具体的には、イオン液体を構成するカチオン化合物を、アニオン交換樹脂を固定相としたカラムに通液し、アニオン交換樹脂と接触させることが挙げられる。通液は、イオン液体を構成するカチオン化合物を溶媒に溶解させてから行うが、使用できる溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、純水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などの有機溶媒を用いることができる。アルコール類としては、アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。中でも、用いる溶媒は、イオン液体を構成するカチオン化合物の溶解性およびアニオン交換樹脂の溶媒に対する安定性を考慮すると、純水、メタノール、エタノール、アセトンであることが好まく、純水であることがさらに好ましい。 イオン液体を構成するカチオン化合物の溶解性、溶媒のコストを考えると純水を用いることが好ましい。イオン液体を構成するカチオン化合物を通液させる際は、一般的に反応温度が高い方がアニオン交換樹脂とのアニオン交換速度が増大するのでよいが、使用する溶媒の沸点や樹脂の耐熱温度を考慮すると0〜60℃が好ましく、15〜45℃であることがさらに好ましい。 アニオン交換樹脂の使用量は下記工程(A)で使用するイオン液体を構成するカチオン化合物に対してmol比で1.0〜10.0倍量であることが好ましく、1.2〜5.0倍量であることがより好ましい。使用量を多くすると工程(A)におけるイオン交換反応を100%進行させることができるが、その分樹脂に含まれているハロゲンが余分に混入してくる場合がある。一方、アニオン交換樹脂の使用量が少なすぎると樹脂由来のハロゲンを減らすことができるものの、工程(A)のイオン交換反応が進行しきらなかった場合、イオン液体を構成するカチオン化合物由来のハロゲンが混入してくる傾向がある。以上のことからアニオン交換樹脂の使用量は1.0〜10.0倍量であることが好ましい。 工程(A)で得られたカチオンのヒドロキシド塩を、イオン液体を構成するアニオンの酸と反応させること(以下、「工程(B)」と称することがある。)が好ましい。 工程(A)で得られるカチオンのヒドロキシド塩は、工程(A)で使用する溶媒に溶解している状態で得られる。カチオンのヒドロキシド塩は濃縮すると分解するおそれがあるため、溶液のまま、工程(B)に使うことが好ましい。 イオン液体を構成するアニオンの酸と、カチオンのヒドロキシド塩との反応は中和反応であるため、イオン液体を構成するアニオンの酸はそのまま用いてもよいが、過度な発熱による副反応の進行といった要因を排除するため溶媒に溶解させて用いたほうがよい。 前述のように、工程(B)では工程(A)で調整したカチオンのヒドロキシド塩にイオン液体を構成するアニオンの酸を作用させて中和反応させるため、イオン液体を構成するアニオンの酸としては、アレニウスの定義で解釈される一般的な酸であればよく、例えば、硫酸、アルキル硫酸、硝酸、カルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。中でも、この中和反応では、酸エステル法や特許文献3に記載の方法において反応性が低いとされるカルボン酸が適用可能である利点がある。例えば、一般式(1)に示される酸を用いることができる。 上記式中のR1およびR2は、上述の一般式(2)におけるR1およびR2と同様である。 イオン液体を構成するアニオンの酸は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 反応温度は、工程(B)が中和反応であることを考えると−78〜50℃であることが好ましく、−30〜25℃であることがさらに好ましい。 本発明のイオン液体の製造方法によれば、ハロゲン濃度が50ppm以下のイオン液体を所望とおりに製造できる。本発明の製造方法は、従来の手法と比較して製造コストを抑制することが可能になり、特殊な精製を行なわなくとも電気化学デバイス用途電解質のスペックを満たすイオン液体を容易に得ることが可能となる。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 (1H NMRの測定) 核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)の測定はVARIAN製Gemini300(300 MHz for 1H)を用い、重クロロホルム溶液で測定した。化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、測定値をδ値(ppm)で表記した。シグナルの分裂様式には次の略号を使用し、s=singlet、d=doublet、t=triplet、q=quartet、m=multipletと表記した。 (ハロゲン分析方法) ハロゲン分析方法は、ダイアインスツルメンツ製QF−02を用いて燃焼管燃焼法にて前処理を行った後、ダイオネクス製ICS−2000(カラムはIonPac AG18、AS18(4mmφ×250mm))を用いてイオンクロマトグラフ測定を行い、下限値5ppmに定めて測定した。 (実施例1) クロマトカラム管にオルライトDS−2(商品名、オルガノ社製)(50mL)を充填させてカラムを作製した後、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(3.0g、14.0mmol)に純水(60mL)を加えて水溶液を調整した。ここで、イオン交換容量1.40mEq/mLのオルライトDS−2を50mL使用しているので、ここで用いたオルライトDS−2は1.40×50=70mmol相当の処理能力があることになる。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの量は、この70mmolの1/5にあたる14mmolとした。 このようにして調整した水溶液をクロマトカラム管にSV3.5で通液させた後、さらに純水(60mL)を通液させて1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液を得た。得られた水溶液の一部をサンプリングし、濃縮して得られた残渣のハロゲン分析を行ったところ、Cl:17ppm、Br:NDであった。NDは検出限界以下(5ppm以下)を表す。なお、使用した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドはCl:NDであった。(ND=Non Detect)。 マンデル酸(2.1g、14.0mmol)に純水(60mL)を加え、均一溶液にした後、これに得られた1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液をゆっくり滴下し、0℃で12時間攪拌した。なお、マンデル酸のハロゲン分析を行ったところ、Cl:25ppm、Br:NDであった。反応溶液をそのまま濃縮して減圧加熱乾燥することで、薄黄色の油状物を4.02g得た(収率99%)。 得られた油状物につき、ハロゲン分析を行ったところ、Cl:22ppm、Br:NDであった。なお、使用したマンデル酸はCl:25ppmであった。 また、1H NMRで分析したところ、次式のイオン液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムマンデレート(以下、[BMIm][Mandelate]と略す)であることが確認された。1H NMR(CDCl3、300MHz)δ0.93(t、3H)、1.29−1.34(m、2H)、1.74−1.79(m、2H)、3.84(s、3H)、4.10(t、2H)、4.92(s、1H)、7.04(s、1H)、7.14−7.26(m、1H)、7.23−7.26(m、3H)、7.54(d、2H)、10.74(s、1H) なお、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドのハロゲン分析結果(17ppm)からオルライトDS−2のハロゲン濃度を算出したところ0.74mg/Lであった。 (実施例2) 実施例1において、アニオン交換樹脂としてESG4002(OH)(商品名、オルガノ社製)を使用し、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの使用量を2.7g(12.5mmol)に、マンデル酸の使用量を1.9g(12.5mmol)にしたこと以外は実施例1と同じ方法でイオン液体を合成した。 ここでの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの使用量は以下のようにして決定した。イオン交換容量1.25mEq/mLのESG4002(OH)を50mL使用しているので、ここで用いたESG4002(OH)は1.25×50=62.5mmol相当の処理能力があることになる。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの量は、この62.5mmolの1/5にあたる12.5mmolとした。 得られた1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液のハロゲン分析結果はCl:16ppm、Br:NDであり、得られたイオン液体[BMIm][Mandelate]は収率99%(3.59g)、Cl:23ppm、Br:NDであった。 なお、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドのハロゲン分析結果(16ppm)からESG4002(OH)のハロゲン濃度を算出したところ0.62mg/Lであった。 (比較例1) アニオン交換樹脂にIRA400(OH)AG(商品名、オルガノ社製)を使用したこと以外は実施例1と同じ方法でイオン液体を合成した。IRA400(OH)AGのイオン交換容量は1.40mEq/mL、使用量は50mLであるので、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの使用量は14.0mmolである。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液のハロゲン分析結果はCl:3900ppm、Br:NDであり、得られたイオン液体[BMIm][Mandelate]は収率98%(3.98g)、Cl:2300ppm、Br:NDであった。 なお、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドのハロゲン分析結果(3900ppm)からIRA400(OH)AGのハロゲン濃度を算出したところ170mg/Lであった。 ハロゲン含有量が10.0mg/Lのアニオン交換樹脂を用いる、ハロゲン含有量が50ppm以下であるイオン液体の製造方法。 前記アニオン交換樹脂の使用量が、使用するイオン液体を構成するカチオン化合物に対してmol比で1.0〜10.0倍量である、請求項1記載のイオン液体の製造方法。 前記アニオン交換樹脂を、イオン液体を構成するカチオン化合物と接触させてカチオンのヒドロキシド塩を合成する、請求項1〜2のいずれかに記載のイオン液体の製造方法。 前記カチオンのヒドロキシド塩とイオン液体を構成するアニオンの酸とを反応させる、請求項3に記載のイオン液体の製造方法。 イオン液体を構成するアニオンの酸が、下記一般式(1);(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、保護又は無保護の水酸基、保護又は無保護のアミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C20のアリール基、C4〜C20のヘテロアリール基、C7〜C20のアラルキル基、またはC4〜C20のヘテロアラルキル基を表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基およびヘテロアラルキル基は置換基を有していてもよいし、直鎖または分岐もしくは環を形成していてもよい。)で表される酸である、請求項1〜4のいずれかに記載のイオン液体の製造方法。 イオン液体を構成するカチオン化合物が、アンモニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピラジニウム、ピリミジニウム、トリアゾニウム、トリアジニウム、トリアジン、キノリニウム、イソキノリニウム、インドリニウム、キノキサリニウム、ピペラジニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウム、モルフォリニウム、ピペラジン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の塩である、請求項1〜5のいずれかに記載のイオン液体の製造方法。 【課題】イオン伝導性、難燃性、不揮発性、熱安定性などの機能を有するイオン液体は、エレクトロニクスからグリーンマテリルアルまで幅広い用途で用いられ、最近は高いスペックが要求される。中でも、ハロゲン濃度に関しては厳しいスペックが要求されているため、製造コストを低減するとともに低ハロゲン濃度を実現したイオン液体の製造方法を提供する。【解決手段】電気化学デバイス電解質のスペックを満たす、ハロゲン濃度が50ppm以下のイオン液体の製造方法として、樹脂内のハロゲン含有量が10.0mg/L以下のアニオン交換樹脂を用いるイオン液体の製造方法。【選択図】なし