生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_グリコールの製造方法
出願番号:2010017573
年次:2011
IPC分類:C07C 29/132,C07C 31/20,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

冨重 圭一 佐藤 嘉弘 石原 健一 JP 2011157276 公開特許公報(A) 20110818 2010017573 20100129 グリコールの製造方法 国立大学法人 筑波大学 504171134 大島 正孝 100080609 白石 泰三 100109287 帝人株式会社 000003001 大島 正孝 100080609 冨重 圭一 佐藤 嘉弘 石原 健一 C07C 29/132 20060101AFI20110722BHJP C07C 31/20 20060101ALI20110722BHJP C07B 61/00 20060101ALN20110722BHJP JPC07C29/132C07C31/20 AC07C31/20 ZC07B61/00 300 7 OL 11 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC26 4H006BA21 4H006BA55 4H006BA61 4H006BA81 4H006BB31 4H006BC10 4H006BC37 4H006BE20 4H006FE11 4H006FG24 4H006FG26 4H039CA99 4H039CE40 本発明は、グリコールの製造方法、特に、前処理として還元処理を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いた反応により、グリセリンからグリコールを製造する方法に関する。 地球上の入手可能な化学資源は限界があることが知られており、近年、化石資源の枯渇懸念といった資源問題、さらには、二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化への懸念から、化学原料をバイオマス資源から変換する方法に対して注目が集まっている。 グリセリンは、植物油からエステル交換によりBDF(バイオディーゼルフューエル)を製造する際に副生し、近年のBDF需要拡大に伴い、副生物であるグリセリンは供給過剰が予想される。 一方、グリコールは、溶媒、ポリエステル原料として極めて重要な物質であり、そのため、グリセリンからグリコールを製造する方法を確立することは、その産業的な意義は大きいと考えられる。 グリセリンからの触媒を用いた有用化学物質製造の例としては、脱水反応によるアクロレインの製造(例えば、特許文献1参照。)、プラチナやルテニウム触媒、ラネーニッケル触媒などを用いた水素化分解によるプロパンジオールなどの製造(例えば、特許文献2、3、非特許文献1、2参照。)が知られている。これら文献に示されている方法よりも、安価な触媒を用いて効率的にグリコールを製造する方法が望まれる。特開2008−137950号公報特開2008−143798号公報特開2008−266234号公報INDUSTRIAL & ENGINEERING CHEMISTRY RESEARCH, 44(2005),p.8535−8537Journal of Catalysis, 251(2007),p.281−294 本発明の目的は、安価な触媒を用いて触媒金属のモル数を基準として効率的にグリコールを製造する方法を提供することにある。 本発明者らは上記従来技術に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、還元処理した後に表面酸化処理した、ニッケルを含有する固体触媒の存在下で、グリセリンを水素化分解することを特徴とするグリコールの製造方法である。 本発明によれば、グリセリンからグリコールを製造する方法において、還元処理を行なった後、表面酸化処理を行った、ニッケルを含む固体触媒を用いることで、少ないニッケル含有量で効率的にグリコールを製造することができる。 本発明を実施形態に基づき以下に説明する。本実施形態のグリセリンからのグリコール製造方法は、前処理として還元処理を行なった後、表面酸化処理を行った、ニッケルを含む固体触媒を用いることを特徴とする。(グリセリン) 本発明においてグリセリンは、特に限定されず、精製グリセリン、および粗製グリセリンのいずれであっても良い。また、このグリセリンは、エチレン、プロピレンなどから化学合成されたグリセリンであっても良いし、バイオディーゼルの製造における植物油等のエステル交換反応で生じるような天然資源由来のグリセリンであっても良い。(固体触媒) ニッケルを含む固体触媒は、触媒活性、再現性、ハンドリング性、保存安定性、易リサイクル性等の観点から、ニッケルが担体に担持された形態であることが好ましい。 ニッケルの前駆体としては、ニッケル金属、ラネーニッケル、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、蟻酸ニッケル、水酸化ニッケル、蓚酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルなどが挙げられる。好ましくは硝酸ニッケルである。 ニッケルの担持量は特に限定されないが、効率的にグリセリンからグリコールを製造する観点から、固体触媒の全重量に対してニッケル金属として、1〜10重量%が好ましく、4〜6重量%がより好ましい。 ニッケルを担持する担体としては、特に限定されないが、無機物担体および有機物担体のいずれであっても良い。無機物担体として、無機酸化物、無機水酸化物、活性炭などが挙げられる。有機物担体として、イオン交換樹脂などが挙げられる。 より具体的には、無機酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、酸化スズなどから選択される一種または二種以上の無機酸化物またはその複合物が挙げられる。無機酸化物の複合物としては、マグネシウムアルミネートなどの複合酸化物やβゼオライト(Na)などのゼオライトが挙げられる。無機水酸化物としては、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化アルミナ、水酸化マグネシア、水酸化亜鉛、水酸化スズなどが挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナ)、アルミの水酸化物(ギブサイト、バイヤーライト、ベーマイト、ダイアスポア)などが挙げられる。より好ましくはシリカまたはアルミナである。 固体触媒は、ニッケルを、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種に担持したものであることが好ましい。(固体触媒の製造) 固体触媒を製造する方法は特に限定されないが、担体にニッケル含有液を含浸させた後、乾燥し、次に焼成すれば良い。なお、触媒製造におけるニッケル含有液の量が多量である場合には、前記含浸および乾燥を繰り返し行うIncipient wetness法や、蒸発乾固法により触媒を製造しても良い。また、固体触媒の製造過程における担体を含浸するときの温度および乾燥するときの温度は、特に限定されるものではない。焼成の温度は、特に限定されないが、300〜700℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。また、焼成時の雰囲気も、大気雰囲気、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガス雰囲気等、特に限定されないが、当該焼成時の雰囲気として好ましいのは、大気雰囲気である。(還元処理) 焼成処理後、固体触媒に還元処理を行なう。還元処理は、水素および一酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種のガスを固体触媒に接触させて行なうことが好ましい。還元性ガスとして水素が好ましい。還元処理の温度は特に限定されないが、400〜850℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。還元処理の処理時間は特に限定されないが、30分間〜2時間が好ましく、40〜90分がより好ましい。(表面酸化処理) 還元処理後、固体触媒に表面酸化処理を行なう。表面酸化処理は、窒素、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不活性ガスで希釈した酸素を固体触媒に接触させ行なうことが好ましい。表面酸化処理の方法として好ましいのは、ヘリウムで希釈した酸素を触媒に流通させる方法である。また、酸素の濃度としては特に限定されないが、0.1〜3%が好ましく、1.8〜2.5%がより好ましい。表面酸化処理の温度は特に限定されないが、0〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。上記表面酸化処理の処理時間は特に限定されないが、5分間〜3時間が好ましく、30分〜2時間がより好ましい。(水素化分解) グリセリンの水素化分解は、グリセリンと水素を固体触媒の存在下で接触させる方法であれば、液状グリセリンと水素ガスと固体触媒からなる三相系反応、グリセリンガスと水素ガスと固体触媒からなる二相系反応のいずれであっても良い。メタンやメタノールなどの過剰分解生成物の生成量が少ない三相系反応が好ましい。反応形式としては、回分形式、半回分形式、連続流通形式等を任意に選択した形式により実施することができる。また、所定量のグリセリンから得られるグリコールの量を増加させたい場合には、グリコール製造反応実行後の未反応グリセリンを分離回収して、さらにグリセリンを反応させるリサイクルプロセスを採用しても良い。このリサイクルプロセスは、例えば、生成物中のエチレングリコールの選択率が高いグリコールの製造方法で、所定量の使用グリセリンに対するエチレングリコール生成量を高めたい場合に好適である。 本発明のグリセリンの水素化分解によるグリコールの製造の反応スキームは下記により示される。この反応により、グリコールとして、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールが製造される。 水素化分解反応の温度は、160〜200℃が好ましく、180〜190℃がより好ましい。反応温度が低すぎると触媒自体の活性が低くなり、一方、反応温度が高すぎると触媒自体の活性が高まるが、メタンやメタノールなどグリセリンの過剰分解生成物の選択率が高くなって、グリコールを収率良く製造することができないためである。また、グリコール製造反応において、水素圧は、好ましくは4〜10MPa、より好ましくは5〜9MPaである。また、グリセリン溶液のグリセリン濃度は20重量%以下であると良く、2〜10重量%が好ましい。なお、グリコール製造反応において、水素圧が高いほどグリコールの選択率および収率が高くなり、グリセリン濃度が低いほどグリコールの選択率および収率が高まる一般的な傾向がある。 製造されたグリコールは、蒸留等の適宜な分離手段により、その成分となっているエチレングリコール等に分離することができる。製造されたグリコールは既に公知となっている通り、そのまま溶媒として、もしくはグリコール化合物誘導体の製造原料やポリエステル原料として使用することができる。従って、上記グリコール化合物の製造方法は、この化合物誘導体の製造工程やポリエステル製造工程中に取り入れることが当然可能である。 以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。 生成物の分析は、水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフ(GC)で行った。GCには島津製作所社製「GC−2014」を使用し、溶液分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製キャピラリーカラム「TC−WAX」(カラム内径0.25mm、長さ60m)、気体分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製パックドカラム「Porapak−N」(長さ2m)を使用した。 以下の実施例、比較例で示す「Ni 1モル当たりのグリコール生成量」とは、ニッケルの触媒活性を示す指標で、触媒中に含まれるニッケル1モルに対して生成したグリコールのモル数を示し、下記式(1)に基づいて算出した値である。「収率」とは、グリコールの収率を意味し、下記式(2)に基づいて算出した値である。「転化率」とは、グリセリンの転化率を意味し、下記式(3)に基づいて算出した値である。「選択率」は、グリセリンが転化することによって生じた各化合物の生成率を意味し、下記式(4)に基づいて算出した値である。[触媒調製例1](前駆体溶液調製工程) Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬工業社製)1.2386gを蒸留水10mLに溶解し、軽く撹拌して溶液を均一にし、前駆体溶液を調製した。(担持工程) 調製した前駆体溶液を、担体となるγ−Al2O3(住友化学社製KHO−24)4.7500gに、スポイトを用いて担体が満遍なく濡れる程度まで滴下し、ガラス棒を用いて撹拌した後、80℃程度の熱をかけて水分を飛ばし、乾燥させた。前駆体溶液がなくなるまで同様の操作を行った。その後、前駆体溶液を含浸した固体を110℃の恒温乾燥機で一晩乾燥させた。(焼成工程) 乾燥後の固体を、マッフル炉で空気中500℃、3時間焼成し、Ni(5)/γ−Al2O3触媒を得た(金属元素記号の直後の括弧内の数字は、触媒全体重量中に占める担持したニッケルの重量%を示した。)。(前処理工程) 石英ガラス製の反応管に、焼成した触媒を2g程度詰め、水素を30cc/minの流速で流しながら、500℃で1時間水素還元処理を行った。還元処理終了後、室温まで冷却し、30cc/minの流速で窒素を10分間流して反応管内をパージした。その後、ヘリウムで希釈した2.0%酸素を30cc/minの流速で1時間流し、20℃で表面酸化処理を行った。[実施例1] 触媒調製例1の通りに調製したNi(5)/γ−Al2O3触媒1g、および5重量%グリセリン水溶液20mL(グリセリン量5g:和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で24時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析した。結果を表1および表2に示す。[実施例2] 触媒調製例1において、ニッケル担持量が1重量%になるようにNi(NO3)2・6H2Oの量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(1)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(1)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[実施例3] 触媒調製例1において、ニッケル担持量が10重量%になるようにNi(NO3)2・6H2Oの量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(1)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(10)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[実施例4] 触媒調製例1において、担体をγ−Al2O3からSiO2(富士シリシア社製G−6)に代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(5)/SiO2触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(5)/SiO2触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[比較例1] 担体として用いたγ−Al2O3にニッケルを担持せず、触媒調製例1に示したように、焼成、前処理を行った。そして、実施例1の触媒をこのγ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行ったが、グリセリンは反応していなかった。結果を表1および表2に示す。[比較例2] 触媒調製例1において、前処理工程を含まないこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製を行い、前処理なしのNi(5)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒を前処理なしのNi(5)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行ったが、グリセリンは反応していなかった。結果を表1および表2に示す。[比較例3] ラネーニッケル触媒(シグマアルドリッチ社製Raney 2800 nickel、ニッケル含有量約89重量%)5gをるつぼにいれ、80℃で一晩乾燥させた。そして、実施例1の触媒を乾燥したラネーニッケル触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。 表1、2に示すとおり、前処理として還元処理を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いることで、ニッケルのモル数を基準として、効率的にグリセリンからグリコールを製造できることが確認された。 本発明によれば、グリセリンからグリコールを製造する方法において、前処理として還元処理工程を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いることで、少ないニッケル含有量で効率的にグリコールを製造することができ、その工業的な意義は大きい。還元処理した後に表面酸化処理した、ニッケルを含有する固体触媒の存在下で、グリセリンを水素化分解することを特徴とするグリコールの製造方法。還元処理は、水素および一酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種のガスを固体触媒に接触させて行なう請求項1記載の製造方法。表面酸化処理は、窒素、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不活性ガスで希釈した酸素を固体触媒に接触させて行なう請求項1または2に記載の製造方法。ニッケル金属の含有量が固体触媒の全重量に対して1〜10重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。固体触媒は、ニッケルを、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種に担持したものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。水素化分解を、液状グリセリン、水素ガスおよび固体触媒を共存させて行なう請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。水素化分解の温度が160〜200℃である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。 【課題】本発明の目的は、グリセリンから安価な触媒を用いて効率的にグリコールを製造する方法の提供することにある。【解決手段】本発明は、還元処理した後に表面酸化処理した、ニッケルを含有する固体触媒の存在下で、グリセリンを水素化分解することを特徴とするグリコールの製造方法である。【選択図】なし


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特許公報(B2)_グリコールの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グリコールの製造方法
出願番号:2010017573
年次:2014
IPC分類:C07C 29/132,C07C 31/20,C07B 61/00


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冨重 圭一 佐藤 嘉弘 石原 健一 JP 5599193 特許公報(B2) 20140822 2010017573 20100129 グリコールの製造方法 国立大学法人 筑波大学 504171134 大島 正孝 100080609 白石 泰三 100109287 帝人株式会社 000003001 大島 正孝 100080609 冨重 圭一 佐藤 嘉弘 石原 健一 20141001 C07C 29/132 20060101AFI20140911BHJP C07C 31/20 20060101ALI20140911BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140911BHJP JPC07C29/132C07C31/20 AC07C31/20 ZC07B61/00 300 C07C 29/132 C07C 31/20 C07C 29/60 米国特許出願公開第2005/0244312(US,A1) 国際公開第01/066499(WO,A1) 特開昭60−179144(JP,A) A.Perosa, P.Tundo,Selective Hydrogenolysis of Glycerol with Raney Nickel,Ind. Eng. Chem. Res.,2005年,44,8535-8537 5 2011157276 20110818 10 20130122 水島 英一郎 本発明は、グリコールの製造方法、特に、前処理として還元処理を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いた反応により、グリセリンからグリコールを製造する方法に関する。 地球上の入手可能な化学資源は限界があることが知られており、近年、化石資源の枯渇懸念といった資源問題、さらには、二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化への懸念から、化学原料をバイオマス資源から変換する方法に対して注目が集まっている。 グリセリンは、植物油からエステル交換によりBDF(バイオディーゼルフューエル)を製造する際に副生し、近年のBDF需要拡大に伴い、副生物であるグリセリンは供給過剰が予想される。 一方、グリコールは、溶媒、ポリエステル原料として極めて重要な物質であり、そのため、グリセリンからグリコールを製造する方法を確立することは、その産業的な意義は大きいと考えられる。 グリセリンからの触媒を用いた有用化学物質製造の例としては、脱水反応によるアクロレインの製造(例えば、特許文献1参照。)、プラチナやルテニウム触媒、ラネーニッケル触媒などを用いた水素化分解によるプロパンジオールなどの製造(例えば、特許文献2、3、非特許文献1、2参照。)が知られている。これら文献に示されている方法よりも、安価な触媒を用いて効率的にグリコールを製造する方法が望まれる。特開2008−137950号公報特開2008−143798号公報特開2008−266234号公報INDUSTRIAL & ENGINEERING CHEMISTRY RESEARCH, 44(2005),p.8535−8537Journal of Catalysis, 251(2007),p.281−294 本発明の目的は、安価な触媒を用いて触媒金属のモル数を基準として効率的にグリコールを製造する方法を提供することにある。 本発明者らは上記従来技術に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、還元処理した後に表面酸化処理した、ニッケル金属を含有し、ニッケル金属の含有量が固体触媒の全重量に対して4〜6重量%であり、前記ニッケル金属がアルミナに担持されたものである固体触媒の存在下で、グリセリンを水素化分解することを特徴とするグリコールの製造方法である。 本発明によれば、グリセリンからグリコールを製造する方法において、還元処理を行なった後、表面酸化処理を行った、ニッケル金属を含有し、ニッケル金属の含有量が固体触媒の全重量に対して4〜6重量%であり、前記ニッケル金属がアルミナに担持されたものである固体触媒を用いることで、少ないニッケル含有量で効率的にグリコールを製造することができる。 本発明を実施形態に基づき以下に説明する。本実施形態のグリセリンからのグリコール製造方法は、前処理として還元処理を行なった後、表面酸化処理を行った、ニッケルを含む固体触媒を用いることを特徴とする。(グリセリン) 本発明においてグリセリンは、特に限定されず、精製グリセリン、および粗製グリセリンのいずれであっても良い。また、このグリセリンは、エチレン、プロピレンなどから化学合成されたグリセリンであっても良いし、バイオディーゼルの製造における植物油等のエステル交換反応で生じるような天然資源由来のグリセリンであっても良い。(固体触媒) ニッケルを含む固体触媒は、触媒活性、再現性、ハンドリング性、保存安定性、易リサイクル性等の観点から、ニッケルが担体に担持された形態であることが好ましい。 ニッケルの前駆体としては、ニッケル金属、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、蟻酸ニッケル、水酸化ニッケル、蓚酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルなどが挙げられる。好ましくは硝酸ニッケルである。 ニッケルの担持量は、効率的にグリセリンからグリコールを製造する観点から、固体触媒の全重量に対してニッケル金属として、4〜6重量%である。 ニッケルを担持する担体は、アルミナである。(固体触媒の製造) 固体触媒を製造する方法は特に限定されないが、担体にニッケル含有液を含浸させた後、乾燥し、次に焼成すれば良い。なお、触媒製造におけるニッケル含有液の量が多量である場合には、前記含浸および乾燥を繰り返し行うIncipient wetness法や、蒸発乾固法により触媒を製造しても良い。また、固体触媒の製造過程における担体を含浸するときの温度および乾燥するときの温度は、特に限定されるものではない。焼成の温度は、特に限定されないが、300〜700℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。また、焼成時の雰囲気も、大気雰囲気、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガス雰囲気等、特に限定されないが、当該焼成時の雰囲気として好ましいのは、大気雰囲気である。(還元処理) 焼成処理後、固体触媒に還元処理を行なう。還元処理は、水素および一酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種のガスを固体触媒に接触させて行なうことが好ましい。還元性ガスとして水素が好ましい。還元処理の温度は特に限定されないが、400〜850℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。還元処理の処理時間は特に限定されないが、30分間〜2時間が好ましく、40〜90分がより好ましい。(表面酸化処理) 還元処理後、固体触媒に表面酸化処理を行なう。表面酸化処理は、窒素、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不活性ガスで希釈した酸素を固体触媒に接触させ行なうことが好ましい。表面酸化処理の方法として好ましいのは、ヘリウムで希釈した酸素を触媒に流通させる方法である。また、酸素の濃度としては特に限定されないが、0.1〜3%が好ましく、1.8〜2.5%がより好ましい。表面酸化処理の温度は特に限定されないが、0〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。上記表面酸化処理の処理時間は特に限定されないが、5分間〜3時間が好ましく、30分〜2時間がより好ましい。(水素化分解) グリセリンの水素化分解は、グリセリンと水素を固体触媒の存在下で接触させる方法であれば、液状グリセリンと水素ガスと固体触媒からなる三相系反応、グリセリンガスと水素ガスと固体触媒からなる二相系反応のいずれであっても良い。メタンやメタノールなどの過剰分解生成物の生成量が少ない三相系反応が好ましい。反応形式としては、回分形式、半回分形式、連続流通形式等を任意に選択した形式により実施することができる。また、所定量のグリセリンから得られるグリコールの量を増加させたい場合には、グリコール製造反応実行後の未反応グリセリンを分離回収して、さらにグリセリンを反応させるリサイクルプロセスを採用しても良い。このリサイクルプロセスは、例えば、生成物中のエチレングリコールの選択率が高いグリコールの製造方法で、所定量の使用グリセリンに対するエチレングリコール生成量を高めたい場合に好適である。 本発明のグリセリンの水素化分解によるグリコールの製造の反応スキームは下記により示される。この反応により、グリコールとして、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールが製造される。 水素化分解反応の温度は、160〜200℃が好ましく、180〜190℃がより好ましい。反応温度が低すぎると触媒自体の活性が低くなり、一方、反応温度が高すぎると触媒自体の活性が高まるが、メタンやメタノールなどグリセリンの過剰分解生成物の選択率が高くなって、グリコールを収率良く製造することができないためである。また、グリコール製造反応において、水素圧は、好ましくは4〜10MPa、より好ましくは5〜9MPaである。また、グリセリン溶液のグリセリン濃度は20重量%以下であると良く、2〜10重量%が好ましい。なお、グリコール製造反応において、水素圧が高いほどグリコールの選択率および収率が高くなり、グリセリン濃度が低いほどグリコールの選択率および収率が高まる一般的な傾向がある。 製造されたグリコールは、蒸留等の適宜な分離手段により、その成分となっているエチレングリコール等に分離することができる。製造されたグリコールは既に公知となっている通り、そのまま溶媒として、もしくはグリコール化合物誘導体の製造原料やポリエステル原料として使用することができる。従って、上記グリコール化合物の製造方法は、この化合物誘導体の製造工程やポリエステル製造工程中に取り入れることが当然可能である。 以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。 生成物の分析は、水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフ(GC)で行った。GCには島津製作所社製「GC−2014」を使用し、溶液分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製キャピラリーカラム「TC−WAX」(カラム内径0.25mm、長さ60m)、気体分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製パックドカラム「Porapak−N」(長さ2m)を使用した。 以下の実施例、比較例で示す「Ni 1モル当たりのグリコール生成量」とは、ニッケルの触媒活性を示す指標で、触媒中に含まれるニッケル1モルに対して生成したグリコールのモル数を示し、下記式(1)に基づいて算出した値である。「収率」とは、グリコールの収率を意味し、下記式(2)に基づいて算出した値である。「転化率」とは、グリセリンの転化率を意味し、下記式(3)に基づいて算出した値である。「選択率」は、グリセリンが転化することによって生じた各化合物の生成率を意味し、下記式(4)に基づいて算出した値である。[触媒調製例1](前駆体溶液調製工程) Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬工業社製)1.2386gを蒸留水10mLに溶解し、軽く撹拌して溶液を均一にし、前駆体溶液を調製した。(担持工程) 調製した前駆体溶液を、担体となるγ−Al2O3(住友化学社製KHO−24)4.7500gに、スポイトを用いて担体が満遍なく濡れる程度まで滴下し、ガラス棒を用いて撹拌した後、80℃程度の熱をかけて水分を飛ばし、乾燥させた。前駆体溶液がなくなるまで同様の操作を行った。その後、前駆体溶液を含浸した固体を110℃の恒温乾燥機で一晩乾燥させた。(焼成工程) 乾燥後の固体を、マッフル炉で空気中500℃、3時間焼成し、Ni(5)/γ−Al2O3触媒を得た(金属元素記号の直後の括弧内の数字は、触媒全体重量中に占める担持したニッケルの重量%を示した。)。(前処理工程) 石英ガラス製の反応管に、焼成した触媒を2g程度詰め、水素を30cc/minの流速で流しながら、500℃で1時間水素還元処理を行った。還元処理終了後、室温まで冷却し、30cc/minの流速で窒素を10分間流して反応管内をパージした。その後、ヘリウムで希釈した2.0%酸素を30cc/minの流速で1時間流し、20℃で表面酸化処理を行った。[実施例1] 触媒調製例1の通りに調製したNi(5)/γ−Al2O3触媒1g、および5重量%グリセリン水溶液20mL(グリセリン量5g:和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で24時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析した。結果を表1および表2に示す。[参考例2] 触媒調製例1において、ニッケル担持量が1重量%になるようにNi(NO3)2・6H2Oの量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(1)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(1)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[参考例3] 触媒調製例1において、ニッケル担持量が10重量%になるようにNi(NO3)2・6H2Oの量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(1)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(10)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[参考例4] 触媒調製例1において、担体をγ−Al2O3からSiO2(富士シリシア社製G−6)に代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製・前処理を行い、Ni(5)/SiO2触媒を得た。そして、実施例1の触媒をNi(5)/SiO2触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。[比較例1] 担体として用いたγ−Al2O3にニッケルを担持せず、触媒調製例1に示したように、焼成、前処理を行った。そして、実施例1の触媒をこのγ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行ったが、グリセリンは反応していなかった。結果を表1および表2に示す。[比較例2] 触媒調製例1において、前処理工程を含まないこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製を行い、前処理なしのNi(5)/γ−Al2O3触媒を得た。そして、実施例1の触媒を前処理なしのNi(5)/γ−Al2O3触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行ったが、グリセリンは反応していなかった。結果を表1および表2に示す。[比較例3] ラネーニッケル触媒(シグマアルドリッチ社製Raney 2800 nickel、ニッケル含有量約89重量%)5gをるつぼにいれ、80℃で一晩乾燥させた。そして、実施例1の触媒を乾燥したラネーニッケル触媒に代えたこと以外は実施例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行った。結果を表1および表2に示す。 表1、2に示すとおり、前処理として還元処理を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いることで、ニッケルのモル数を基準として、効率的にグリセリンからグリコールを製造できることが確認された。 本発明によれば、グリセリンからグリコールを製造する方法において、前処理として還元処理工程を行い、その後、表面酸化処理を行ったニッケルを含む固体触媒を用いることで、少ないニッケル含有量で効率的にグリコールを製造することができ、その工業的な意義は大きい。還元処理した後に表面酸化処理した、ニッケル金属を含有し、ニッケル金属の含有量が固体触媒の全重量に対して4〜6重量%であり、前記ニッケル金属がアルミナに担持されたものである固体触媒の存在下で、グリセリンを水素化分解することを特徴とするグリコールの製造方法。還元処理は、水素および一酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種のガスを固体触媒に接触させて行なう請求項1記載の製造方法。表面酸化処理は、窒素、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不活性ガスで希釈した酸素を固体触媒に接触させて行なう請求項1または2に記載の製造方法。水素化分解を、液状グリセリン、水素ガスおよび固体触媒を共存させて行なう請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。水素化分解の温度が160〜200℃である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。


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