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タイトル:公開特許公報(A)_低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いた湿式造粒打錠法
出願番号:2010013384
年次:2010
IPC分類:A61K 47/38,A61K 9/20,A61K 47/10,A61K 47/26


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丸山 直亮 JP 2010189384 公開特許公報(A) 20100902 2010013384 20100125 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いた湿式造粒打錠法 信越化学工業株式会社 000002060 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 丸山 直亮 JP 2009014082 20090126 A61K 47/38 20060101AFI20100806BHJP A61K 9/20 20060101ALI20100806BHJP A61K 47/10 20060101ALI20100806BHJP A61K 47/26 20060101ALI20100806BHJP JPA61K47/38A61K9/20A61K47/10A61K47/26 3 OL 13 4C076 4C076AA36 4C076BB01 4C076DD38 4C076DD41C 4C076EE32 4C076EE32B 4C076FF05 4C076FF06 4C076FF33 4C076FF36 4C076GG13 4C076GG14 本発明は、医薬品又は食品分野等において製剤を製造する際に崩壊性又は結合性を付与するために添加する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた錠剤の製造方法に関するものであり、特に湿式造粒打錠法に関するものである。 医薬品又は食品分野等の固形製剤において、主薬のみで作製された製剤では、薬物を投与しても十分な崩壊性が得られず、薬効が十分に発揮されない場合や結合性が劣るため、錠剤や顆粒剤とした際にその形状を保つことができない等の問題がある。このような場合に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチ等の崩壊剤を添加することにより崩壊性を改善することができる。また、結合性を改良するためには結晶セルロースを添加したり、水溶性の結合剤を添加することにより改善することができる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、上記の崩壊性と結合性を合わせ持つユニークな添加剤として知られている。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、非イオン性であるため、イオン性の薬物等との反応による変質が起きにくい等の利点を有する。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを医薬品の添加剤として使用しうることは、特許文献1及び特許文献2に記載されている。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法については、特許文献3に記載されているように、アルカリセルロースとプロピレンオキサイドを反応させることによって得ることができる。 医薬品又は食品分野等における剤形としては錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられるが、簡便性、服用性の観点から錠剤が最も汎用されている。 錠剤の製造方法としては、薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤、滑沢剤等を乾式混合後、打錠する乾式直接打錠法や薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤等を水や水溶性結合剤溶液を用いて造粒した後、乾燥して得られた粉体と滑沢剤とを混合後、打錠する湿式造粒打錠法等が挙げられる。 湿式造粒打錠法においては、通常、薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤等の粉体を流動層又は高速撹拌造粒機等に仕込み、水やエタノール等を用いて造粒を行う方法が一般的である。しかし、所定の錠剤硬度を有する錠剤が得られない場合やキャッピング、ラミネーティング、スティキング等の打錠障害が発生する場合、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性結合剤の水溶液を噴霧又は添加して造粒を行うことにより高い錠剤硬度を得ることができることが知られている。しかし、得られた錠剤は水溶性結合剤を使用するため崩壊性が低下する問題があった。 また、近年、高齢者や小児等嚥下能力が低い患者が水無しで簡単に服用できる口腔内速崩壊錠の開発が望まれている。このような製剤技術に関する公知文献としては以下のものが挙げられる。 特許文献4には、薬物を加湿状態で成形し、その後乾燥する方法が開示され、基材としては糖、糖アルコール、水溶性高分子が例示されている。特許文献5には、薬効成分と糖類を含む口腔内速崩壊錠の製法が開示されている。これらの技術は非常に煩雑であり、特殊な設備を必要とし、得られた錠剤は錠剤の強度が低く輸送時に摩損や割れが起きやすい等の問題があった。 低置換度セルロースエーテルを用いた口腔内速崩壊錠に関する公知文献としては以下のものが挙げられる。 特許文献6には、微結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをある比率で含有する口腔内速崩壊錠について開示されている。この特許は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと微結晶セルロースの混合物に関するものであるが、添加剤の添加量を多く必要で崩壊性も十分に満足するものでは無かった。 特許文献7には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基置換量が7.0〜9.9質量%のものがこの用途に使用されることが記載されている。同様に、特許文献8には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基置換量が5.0〜7.0質量%のものが、この用途に使用されることが記載されている。ヒドロキシプロポキシル基置換量が低くなるに従って、原料のパルプ由来の繊維状形態が強くなり口腔内で崩壊した場合、紙を食した場合のような不快な食感が強くなるものであった。 特許文献9に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと糖アルコールからなる口腔内速崩壊錠について記載があるが、この方法では高い錠剤硬度を有する錠剤が得られなかった。 特許文献10に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに糖又は糖アルコールを含浸させた後乾燥して得られた乾式直打用基材について記載があるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて造粒したものではない。 特許文献11にメタ珪酸アルミン酸塩でコーティングした糖類について記載があるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて造粒したものではない。 特許文献12にデルタ型のマンニトールに水に溶解又は膨潤する結合剤としてα化デンプン等が挙げられているが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースについての記載はない。特公昭48−38858号公報特公昭57−53100号公報特許第3408398号特開平9−48726号公報特開平5−271054号公報特開平9−71532号公報特開平11−43429号公報特開2000−103731号公報特開2001−328948号公報特開2002−104956号公報特開2002−308760号公報特開2006−282551号公報 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、湿式造粒打錠法において比較的少ない低置換度ヒドロキシプロピルセルロース添加量においても高い錠剤硬度を有し、かつ、崩壊性に優れた錠剤を製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて得られた造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ崩壊性に優れた錠剤を得ることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。 本発明は、湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて得られた造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ、崩壊性に優れた錠剤の製造方法を提供する。 すなわち、本発明は、ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を錠剤形成用組成物に噴霧しながら造粒を行う造粒工程と、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る打錠工程とを少なくとも含んでなる錠剤の製造方法を提供する。 湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を噴霧することにより表面改質された造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ崩壊性に優れた錠剤を得ることができることができる。本発明により、口腔内においても優れた崩壊性と錠剤製造時、輸送時に必要十分な強度を有するため、医薬品、食品分野等における種々の薬物の経口投与する場合、優れた服用性を有する錠剤を製造できる。実施例1の電子顕微鏡写真を示す。比較例1の電子顕微鏡写真を示す。 本発明で使用できる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水不溶性のポリマーで吸水して膨潤する特性を有する。基本骨格はセルロースであり、そこに少量のヒドロキシプロポキシ基が導入されている。そのヒドロキシプロポキシ基置換度としては日本薬局方公定書に記載されているように5〜16質量%であり、本発明においてもこの範囲が好ましい。ヒドロキシプロポキシ基置換度が5質量%未満だと吸水後の膨潤性が低く目的の崩壊性を示さない恐れがある。また、結合性も低下する恐れがある。16質量%を超えると膨潤性は高くなり、結合性も向上するが、水溶性が強くなり、目的の崩壊性を示さず、成型された錠剤の崩壊時間が長くなる恐れがある。ヒドロキシプロポキシ基の置換度の測定方法は、日本薬局方に基づく。 本発明に使用できる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、好ましくは5〜100μm程度であり、さらに好ましくは10〜60μm程度である。5μm未満では吸水膨潤性が低下して、崩壊性が低下する恐れがある。また、100μmを超えると比表面積の低下により、結合性が低下する恐れがある。なお、平均粒子径は、体積粒子径であり、レーザー回折法を用いた粉体粒子径測定方法による。例えば、HELOS&RODOS(日本レーザー社製)を用いて測定できる。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製剤中の含有量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。1質量%未満では目的の錠剤硬度及び崩壊性を有する錠剤を得ることができない恐れがある。また、20質量%を超えると成形性、崩壊性に顕著な向上がみられず、錠剤径が大きくなる恐れがある。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液の濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%である。1質量%未満では所定の添加量まで噴霧するまで長時間を要し、生産性が低下する恐れがある。また、15質量%を超えると分散液の粘度が高くなりすぎ、送液できなくなる恐れがある。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液の調製方法は、非常に簡便で所定量の水に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを入れるか、その逆に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに水を投入しても良い。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは水不溶性であるため、分散は速やかに完了し、数分間、通常の攪拌機で混合するだけで良い。水溶性のヒドロキシプロピルセルロースでは水中にそのまま投入すると塊状にゲル化するが、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは容易に分散液を調製できる。造粒時の送液中は沈降防止のため緩く撹拌することが好ましい。 本発明における湿式造粒には、噴霧と乾燥を同時に行うことができ、均一な被覆層を形成し易い流動層造粒装置が好ましい。撹拌造粒装置では乾燥装置がないため、所定の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を添加する場合、過度の水量により、造粒物が塊状となる恐れがある。 錠剤形成用組成物は、好ましくは薬物と、糖又は糖アルコールとの粉体を少なくとも含む。 流動層造粒では、錠剤形成用組成物、例えば薬物と、糖又は糖アルコール等の粉体を仕込み、通常行われる方法により造粒が可能で、結合液として水溶性結合剤の水溶液を用いる代わりに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を噴霧すれば良く、特殊な装置を必要としない。 造粒物の平均粒子径は、造粒条件により異なるが、100〜500μmが好ましい。100μm未満では流動性が低く、打錠機への付着が起きる恐れがある。500μmを超えると臼への充填性が低下し、錠剤重量バラツキが大きくなる恐れがある。造粒物の平均粒子径は、日本薬局方の一般試験法に記載の篩い分け法により測定できる。 得られた造粒物は、噴霧と乾燥を同時に行うことができる流動層造粒装置を用いて乾燥を行った場合にはさらに乾燥する必要はないが、乾燥を行なわかった場合や乾燥を行うことができない造粒装置を使用した場合は、公知の方法、例えば、流動層乾燥機、棚段乾燥機等を用いて例えば40〜80℃で乾燥することができる。 得られた造粒物に滑沢剤を混合し、通常のロータリー式連続打錠機により打錠できる。錠剤の大きさは自由に選択できるが、錠剤径としては6〜12mm程度、錠剤重量としては一錠あたり70〜700mgが好ましい。錠剤径が6mmより小さい場合、取り扱いづらく、12mmを超えると服用し難い恐れがある。 打錠時の打錠圧は10〜100mPaが好ましい。10mPa未満では目的の錠剤硬度が得られない恐れがあり、100mPaを超えるとキャッピング等の打錠障害が発生する恐れがある。 本発明に用いられる薬物としては、特に限定されず、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質及び化学療法剤、代謝系薬物、ビタミン系薬物等が挙げられる。 中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン等が挙げられる。 循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ビンドロール、カプトプリル、硝酸イゾソルビト等が挙げられる。 呼吸器系薬物としては、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェネシン等が挙げられる。 消化器系薬物としては、2一[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ペンヅイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンツイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンヅイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸等が挙げられる。 抗生物質及び化学療法剤としては、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール等が挙げられる。 代謝系薬物としては、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリベンクラミド、塩化カリウム等が挙げられる。 ビタミン系薬物としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC等が挙げられる。 賦形剤としては、崩壊性に優れるエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖等の糖又は糖アルコールを使用することが好ましい。その含有量は全製剤中10〜95質量%がこの好ましく、より好ましくは20〜80質量%である。 更に、本発明の錠剤を製造するにあたり、固形製剤に一般的に使用される添加剤を通常の添加量用いても良い。このような添加剤としては崩壊剤、結合剤、増量剤、滑沢剤、矯味成分、香料等が挙げられる。 崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、クロスポビドン等が例示される。結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が例示される。 増量剤としては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が例示される。 矯味成分としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。 香料剤としては、メントール、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。 本発明によれば、水不溶性の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を被造粒物表面に噴霧被覆し、表面改質的なことを行うことにより、比較的に少ない添加量で打錠障害を抑制して高い錠剤硬度と速崩壊性の両立が可能となる。高い錠剤硬度と速崩壊性の両立が可能となる理由としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を被造粒物に噴霧被覆することにより、造粒物表面が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆され、圧縮成型時には低置換度ヒドロキシプロピルセルロース同士の接触点の増加により、より強固な水素結合を形成し結合性が向上すると考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、上記方法で成型された圧縮成型物は速やかに崩壊するためと考えられる。 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。実施例1 D−マンニトール285gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜30℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:12g/min、スプレーエアー圧:150kPaで低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)の7質量%濃度の水分散液214gを噴霧し造粒を行った。造粒物の電顕写真を図1に示した。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 D−マンニトール 95質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量% ) ステアリン酸マグネシウム 1質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤の評価結果(錠剤硬度、日本薬局方摩損度試験における摩損度、日本薬局方崩壊試験における崩壊時間(試験液:水))を表1に示す。錠剤硬度は、錠剤の直径方向に一定速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度により測定できる。荷重速度により錠剤硬度が変化する場合があるため、1mm/秒の速度で測定を行った。実施例2 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:11質量%、平均粒子径:33μm)を用いた以外は実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例1 実施例1と同じ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いて、水分散液ではなく水を用いて造粒を行った。 D−マンニトール285g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)15gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜30℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:12g/min、スプレーエアー圧:150kPaで精製水200gを噴霧し造粒を行った。造粒物の電顕写真を図2に示した。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 D−マンニトール 95質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%) ステアリン酸マグネシウム 1質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例2 実施例2と同じ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いて、水分散液ではなく水を用いて造粒を行った。すなわち、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:11質量%、平均粒子径:33μm)を用いた以外は比較例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例3 実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液214gに換えて、ヒドロキシプロピルセルロースHPC−L(ヒドロキシプロポキシ基置換度:62質量%)の7質量%濃度の水溶液214gを使用した以外は実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例4 実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液214gに換えて、微結晶セルロースCeolusPH−101の7質量%濃度の水分散液214gを用いた以外は、実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いて造粒を行った実施例1、2では錠剤硬度が高く、摩損性の低い、優れた崩壊性を示した。比較例1、2では実施例と比較して錠剤硬度が低く、摩損性が高かった。 この理由としては図1の電顕写真に見られるように水分散液を用いた実施例1ではD−マンニトールの結晶表面を低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆されることにより、圧縮成型時に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース同士の接触点の増加により、強固な水素結合を形成し結合性が向上したものと考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、錠剤は速やかに崩壊したものと考えられる。一方、図2の電子顕微鏡にみられるように水分散液を用いない場合、D−マンニトールの結晶表面が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆されず、成形性が低下したものと考えられる。 比較例3は実施例と比較して高い錠剤硬度を示したが、崩壊時間が長い錠剤となった。これはヒドロキシプロポキシ基置換度の高いことにより、結合性は向上したが、ヒドロキシプロピルセルロースが水溶性で、崩壊時にヒドロキシプロピルセルロースの水和ゲル層を形成し、錠剤内への導水性が低下したため、崩壊時間が延長したものと考えられる。 比較例4では微結晶セルロースの水分散を用いて造粒を行ったが、実施例と比較して錠剤硬度が低く、摩損性も高く、崩壊時間も長い錠剤であった。実施例3 アセトアミノフェン120g、200メッシュ乳糖150gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜28℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:15g/min、スプレーエアー圧:150kPaで低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)の7質量%濃度の水分散液428gを噴霧し造粒を行った。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 アセトアミノフェン 40質量部 乳糖 50質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%) ステアリン酸マグネシウム 0.5質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、1.25t予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤の評価結果(錠剤硬度、日本薬局方摩損度試験における摩損度、日本薬局方崩壊試験における崩壊時間(試験液:水)、及び摩損度試験後のキャッピング発生率)を表2に示す。錠剤硬度は、実施例1と同様にして測定した。キャッピングは、粉体を圧縮して、錠剤を排出する際または排出後に、錠剤が帽子状に剥離する現象であり、日本薬局方記載の摩損度試験法実施後にキャッピングが発生している錠剤数を測定し、キャッピング発生率を、以下の式で算出した。 キャッピング発生率=(キャッピング発生錠数/試験錠剤数)×100比較例5 実施例3の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液428gに換えて、微結晶セルロースCeolusPH−101の7質量%濃度の水分散液428gを使用した以外は実施例3と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例3と同様に評価した結果を表2に示す。 実施例3では低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、錠剤硬度が高く、摩損度が低く、崩壊時間が短く、キャッピング等の打錠障害がない錠剤が得られた。一方、比較例5においては錠剤硬度が低く、摩損性が高く、崩壊時間が長く、高い打錠圧の場合キャッピングが発生した。 ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を錠剤形成用組成物に噴霧しながら造粒を行う造粒工程と、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る打錠工程とを少なくとも含んでなる錠剤の製造方法。 上記造粒工程が、流動層造粒装置を用いて行われる請求項1に記載の錠剤の製造方法。 上記錠剤形成用組成物が、薬物と、糖又は糖アルコールとの粉体を少なくとも含む請求項1又は2記載の錠剤の製造方法。 【課題】比較的少ない低置換度ヒドロキシプロピルセルロース添加量においても高い錠剤硬度を有し、かつ、崩壊性に優れた錠剤を製造する方法を提供する。【解決手段】ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を錠剤形成用組成物に噴霧しながら造粒を行う造粒工程と、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る打錠工程とを少なくとも含んでなる錠剤の製造方法を提供する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いた湿式造粒打錠法

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タイトル:特許公報(B2)_低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いた湿式造粒打錠法
出願番号:2010013384
年次:2015
IPC分類:A61K 47/38,A61K 9/20,A61K 47/10,A61K 47/26


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丸山 直亮 JP 5753661 特許公報(B2) 20150529 2010013384 20100125 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いた湿式造粒打錠法 信越化学工業株式会社 000002060 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 丸山 直亮 JP 2009014082 20090126 20150722 A61K 47/38 20060101AFI20150702BHJP A61K 9/20 20060101ALI20150702BHJP A61K 47/10 20060101ALI20150702BHJP A61K 47/26 20060101ALI20150702BHJP JPA61K47/38A61K9/20A61K47/10A61K47/26 A61K9/00-9/72, 31/00-31/80, 47/00-47/48 特開平2−174931(JP,A) 国際公開第2008/081891(WO,A1) 特開2000−281564(JP,A) 特許第5053865(JP,B2) 特開平7−242568(JP,A) 国際公開第2009/022670(WO,A1) 3 2010189384 20100902 12 20111222 2013023561 20131202 星野 紹英 小川 慶子 新居田 知生 本発明は、医薬品又は食品分野等において製剤を製造する際に崩壊性又は結合性を付与するために添加する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた錠剤の製造方法に関するものであり、特に湿式造粒打錠法に関するものである。 医薬品又は食品分野等の固形製剤において、主薬のみで作製された製剤では、薬物を投与しても十分な崩壊性が得られず、薬効が十分に発揮されない場合や結合性が劣るため、錠剤や顆粒剤とした際にその形状を保つことができない等の問題がある。このような場合に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチ等の崩壊剤を添加することにより崩壊性を改善することができる。また、結合性を改良するためには結晶セルロースを添加したり、水溶性の結合剤を添加することにより改善することができる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、上記の崩壊性と結合性を合わせ持つユニークな添加剤として知られている。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、非イオン性であるため、イオン性の薬物等との反応による変質が起きにくい等の利点を有する。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを医薬品の添加剤として使用しうることは、特許文献1及び特許文献2に記載されている。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法については、特許文献3に記載されているように、アルカリセルロースとプロピレンオキサイドを反応させることによって得ることができる。 医薬品又は食品分野等における剤形としては錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられるが、簡便性、服用性の観点から錠剤が最も汎用されている。 錠剤の製造方法としては、薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤、滑沢剤等を乾式混合後、打錠する乾式直接打錠法や薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤等を水や水溶性結合剤溶液を用いて造粒した後、乾燥して得られた粉体と滑沢剤とを混合後、打錠する湿式造粒打錠法等が挙げられる。 湿式造粒打錠法においては、通常、薬物とその他の結合剤、崩壊剤、増量剤等の粉体を流動層又は高速撹拌造粒機等に仕込み、水やエタノール等を用いて造粒を行う方法が一般的である。しかし、所定の錠剤硬度を有する錠剤が得られない場合やキャッピング、ラミネーティング、スティキング等の打錠障害が発生する場合、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性結合剤の水溶液を噴霧又は添加して造粒を行うことにより高い錠剤硬度を得ることができることが知られている。しかし、得られた錠剤は水溶性結合剤を使用するため崩壊性が低下する問題があった。 また、近年、高齢者や小児等嚥下能力が低い患者が水無しで簡単に服用できる口腔内速崩壊錠の開発が望まれている。このような製剤技術に関する公知文献としては以下のものが挙げられる。 特許文献4には、薬物を加湿状態で成形し、その後乾燥する方法が開示され、基材としては糖、糖アルコール、水溶性高分子が例示されている。特許文献5には、薬効成分と糖類を含む口腔内速崩壊錠の製法が開示されている。これらの技術は非常に煩雑であり、特殊な設備を必要とし、得られた錠剤は錠剤の強度が低く輸送時に摩損や割れが起きやすい等の問題があった。 低置換度セルロースエーテルを用いた口腔内速崩壊錠に関する公知文献としては以下のものが挙げられる。 特許文献6には、微結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをある比率で含有する口腔内速崩壊錠について開示されている。この特許は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと微結晶セルロースの混合物に関するものであるが、添加剤の添加量を多く必要で崩壊性も十分に満足するものでは無かった。 特許文献7には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基置換量が7.0〜9.9質量%のものがこの用途に使用されることが記載されている。同様に、特許文献8には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基置換量が5.0〜7.0質量%のものが、この用途に使用されることが記載されている。ヒドロキシプロポキシル基置換量が低くなるに従って、原料のパルプ由来の繊維状形態が強くなり口腔内で崩壊した場合、紙を食した場合のような不快な食感が強くなるものであった。 特許文献9に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと糖アルコールからなる口腔内速崩壊錠について記載があるが、この方法では高い錠剤硬度を有する錠剤が得られなかった。 特許文献10に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに糖又は糖アルコールを含浸させた後乾燥して得られた乾式直打用基材について記載があるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて造粒したものではない。 特許文献11にメタ珪酸アルミン酸塩でコーティングした糖類について記載があるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて造粒したものではない。 特許文献12にデルタ型のマンニトールに水に溶解又は膨潤する結合剤としてα化デンプン等が挙げられているが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースについての記載はない。特公昭48−38858号公報特公昭57−53100号公報特許第3408398号特開平9−48726号公報特開平5−271054号公報特開平9−71532号公報特開平11−43429号公報特開2000−103731号公報特開2001−328948号公報特開2002−104956号公報特開2002−308760号公報特開2006−282551号公報 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、湿式造粒打錠法において比較的少ない低置換度ヒドロキシプロピルセルロース添加量においても高い錠剤硬度を有し、かつ、崩壊性に優れた錠剤を製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて得られた造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ崩壊性に優れた錠剤を得ることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。 本発明は、湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を用いて得られた造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ、崩壊性に優れた錠剤の製造方法を提供する。 すなわち、本発明は、ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を錠剤形成用組成物に噴霧しながら造粒を行う造粒工程と、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る打錠工程とを少なくとも含んでなる錠剤の製造方法を提供する。 湿式造粒打錠において低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を噴霧することにより表面改質された造粒物を打錠することにより、高い錠剤硬度を有し、かつ崩壊性に優れた錠剤を得ることができることができる。本発明により、口腔内においても優れた崩壊性と錠剤製造時、輸送時に必要十分な強度を有するため、医薬品、食品分野等における種々の薬物の経口投与する場合、優れた服用性を有する錠剤を製造できる。実施例1の電子顕微鏡写真を示す。比較例1の電子顕微鏡写真を示す。 本発明で使用できる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水不溶性のポリマーで吸水して膨潤する特性を有する。基本骨格はセルロースであり、そこに少量のヒドロキシプロポキシ基が導入されている。そのヒドロキシプロポキシ基置換度としては日本薬局方公定書に記載されているように5〜16質量%であり、本発明においてもこの範囲が好ましい。ヒドロキシプロポキシ基置換度が5質量%未満だと吸水後の膨潤性が低く目的の崩壊性を示さない恐れがある。また、結合性も低下する恐れがある。16質量%を超えると膨潤性は高くなり、結合性も向上するが、水溶性が強くなり、目的の崩壊性を示さず、成型された錠剤の崩壊時間が長くなる恐れがある。ヒドロキシプロポキシ基の置換度の測定方法は、日本薬局方に基づく。 本発明に使用できる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、好ましくは5〜100μm程度であり、さらに好ましくは10〜60μm程度である。5μm未満では吸水膨潤性が低下して、崩壊性が低下する恐れがある。また、100μmを超えると比表面積の低下により、結合性が低下する恐れがある。なお、平均粒子径は、体積粒子径であり、レーザー回折法を用いた粉体粒子径測定方法による。例えば、HELOS&RODOS(日本レーザー社製)を用いて測定できる。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製剤中の含有量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。1質量%未満では目的の錠剤硬度及び崩壊性を有する錠剤を得ることができない恐れがある。また、20質量%を超えると成形性、崩壊性に顕著な向上がみられず、錠剤径が大きくなる恐れがある。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液の濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%である。1質量%未満では所定の添加量まで噴霧するまで長時間を要し、生産性が低下する恐れがある。また、15質量%を超えると分散液の粘度が高くなりすぎ、送液できなくなる恐れがある。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液の調製方法は、非常に簡便で所定量の水に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを入れるか、その逆に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに水を投入しても良い。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは水不溶性であるため、分散は速やかに完了し、数分間、通常の攪拌機で混合するだけで良い。水溶性のヒドロキシプロピルセルロースでは水中にそのまま投入すると塊状にゲル化するが、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは容易に分散液を調製できる。造粒時の送液中は沈降防止のため緩く撹拌することが好ましい。 本発明における湿式造粒には、噴霧と乾燥を同時に行うことができ、均一な被覆層を形成し易い流動層造粒装置が好ましい。撹拌造粒装置では乾燥装置がないため、所定の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を添加する場合、過度の水量により、造粒物が塊状となる恐れがある。 錠剤形成用組成物は、好ましくは薬物と、糖又は糖アルコールとの粉体を少なくとも含む。 流動層造粒では、錠剤形成用組成物、例えば薬物と、糖又は糖アルコール等の粉体を仕込み、通常行われる方法により造粒が可能で、結合液として水溶性結合剤の水溶液を用いる代わりに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を噴霧すれば良く、特殊な装置を必要としない。 造粒物の平均粒子径は、造粒条件により異なるが、100〜500μmが好ましい。100μm未満では流動性が低く、打錠機への付着が起きる恐れがある。500μmを超えると臼への充填性が低下し、錠剤重量バラツキが大きくなる恐れがある。造粒物の平均粒子径は、日本薬局方の一般試験法に記載の篩い分け法により測定できる。 得られた造粒物は、噴霧と乾燥を同時に行うことができる流動層造粒装置を用いて乾燥を行った場合にはさらに乾燥する必要はないが、乾燥を行なわかった場合や乾燥を行うことができない造粒装置を使用した場合は、公知の方法、例えば、流動層乾燥機、棚段乾燥機等を用いて例えば40〜80℃で乾燥することができる。 得られた造粒物に滑沢剤を混合し、通常のロータリー式連続打錠機により打錠できる。錠剤の大きさは自由に選択できるが、錠剤径としては6〜12mm程度、錠剤重量としては一錠あたり70〜700mgが好ましい。錠剤径が6mmより小さい場合、取り扱いづらく、12mmを超えると服用し難い恐れがある。 打錠時の打錠圧は10〜100mPaが好ましい。10mPa未満では目的の錠剤硬度が得られない恐れがあり、100mPaを超えるとキャッピング等の打錠障害が発生する恐れがある。 本発明に用いられる薬物としては、特に限定されず、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質及び化学療法剤、代謝系薬物、ビタミン系薬物等が挙げられる。 中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン等が挙げられる。 循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ビンドロール、カプトプリル、硝酸イゾソルビト等が挙げられる。 呼吸器系薬物としては、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェネシン等が挙げられる。 消化器系薬物としては、2一[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ペンヅイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンツイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンヅイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸等が挙げられる。 抗生物質及び化学療法剤としては、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール等が挙げられる。 代謝系薬物としては、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリベンクラミド、塩化カリウム等が挙げられる。 ビタミン系薬物としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC等が挙げられる。 賦形剤としては、崩壊性に優れるエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖等の糖又は糖アルコールを使用することが好ましい。その含有量は全製剤中10〜95質量%がこの好ましく、より好ましくは20〜80質量%である。 更に、本発明の錠剤を製造するにあたり、固形製剤に一般的に使用される添加剤を通常の添加量用いても良い。このような添加剤としては崩壊剤、結合剤、増量剤、滑沢剤、矯味成分、香料等が挙げられる。 崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、クロスポビドン等が例示される。結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が例示される。 増量剤としては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が例示される。 矯味成分としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。 香料剤としては、メントール、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。 本発明によれば、水不溶性の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を被造粒物表面に噴霧被覆し、表面改質的なことを行うことにより、比較的に少ない添加量で打錠障害を抑制して高い錠剤硬度と速崩壊性の両立が可能となる。高い錠剤硬度と速崩壊性の両立が可能となる理由としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を被造粒物に噴霧被覆することにより、造粒物表面が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆され、圧縮成型時には低置換度ヒドロキシプロピルセルロース同士の接触点の増加により、より強固な水素結合を形成し結合性が向上すると考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、上記方法で成型された圧縮成型物は速やかに崩壊するためと考えられる。 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。実施例1 D−マンニトール285gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜30℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:12g/min、スプレーエアー圧:150kPaで低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)の7質量%濃度の水分散液214gを噴霧し造粒を行った。造粒物の電顕写真を図1に示した。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 D−マンニトール 95質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量% ) ステアリン酸マグネシウム 1質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤の評価結果(錠剤硬度、日本薬局方摩損度試験における摩損度、日本薬局方崩壊試験における崩壊時間(試験液:水))を表1に示す。錠剤硬度は、錠剤の直径方向に一定速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度により測定できる。荷重速度により錠剤硬度が変化する場合があるため、1mm/秒の速度で測定を行った。実施例2 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:11質量%、平均粒子径:33μm)を用いた以外は実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例1 実施例1と同じ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いて、水分散液ではなく水を用いて造粒を行った。 D−マンニトール285g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)15gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜30℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:12g/min、スプレーエアー圧:150kPaで精製水200gを噴霧し造粒を行った。造粒物の電顕写真を図2に示した。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 D−マンニトール 95質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%) ステアリン酸マグネシウム 1質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例2 実施例2と同じ低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いて、水分散液ではなく水を用いて造粒を行った。すなわち、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:11質量%、平均粒子径:33μm)を用いた以外は比較例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例3 実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液214gに換えて、ヒドロキシプロピルセルロースHPC−L(ヒドロキシプロポキシ基置換度:62質量%)の7質量%濃度の水溶液214gを使用した以外は実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。比較例4 実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液214gに換えて、微結晶セルロースCeolusPH−101の7質量%濃度の水分散液214gを用いた以外は、実施例1と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いて造粒を行った実施例1、2では錠剤硬度が高く、摩損性の低い、優れた崩壊性を示した。比較例1、2では実施例と比較して錠剤硬度が低く、摩損性が高かった。 この理由としては図1の電顕写真に見られるように水分散液を用いた実施例1ではD−マンニトールの結晶表面を低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆されることにより、圧縮成型時に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース同士の接触点の増加により、強固な水素結合を形成し結合性が向上したものと考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、錠剤は速やかに崩壊したものと考えられる。一方、図2の電子顕微鏡にみられるように水分散液を用いない場合、D−マンニトールの結晶表面が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで被覆されず、成形性が低下したものと考えられる。 比較例3は実施例と比較して高い錠剤硬度を示したが、崩壊時間が長い錠剤となった。これはヒドロキシプロポキシ基置換度の高いことにより、結合性は向上したが、ヒドロキシプロピルセルロースが水溶性で、崩壊時にヒドロキシプロピルセルロースの水和ゲル層を形成し、錠剤内への導水性が低下したため、崩壊時間が延長したものと考えられる。 比較例4では微結晶セルロースの水分散を用いて造粒を行ったが、実施例と比較して錠剤硬度が低く、摩損性も高く、崩壊時間も長い錠剤であった。実施例3 アセトアミノフェン120g、200メッシュ乳糖150gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度:60℃、排気温度:27〜28℃、流動エアー量:50m3/hr、スプレー速度:15g/min、スプレーエアー圧:150kPaで低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%、平均粒子径:35μm)の7質量%濃度の水分散液428gを噴霧し造粒を行った。 得られた顆粒に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを添加混合後、下記の条件で打錠を実施した。 組成 アセトアミノフェン 40質量部 乳糖 50質量部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10質量部 (ヒドロキシプロポキシ基置換度:14質量%) ステアリン酸マグネシウム 0.5質量部 打錠機 ロータリー打錠機(菊水製作所社製) 錠剤サイズ 直径:8mm、曲面半径:10mm、錠剤質量:200mg 打錠圧 本圧:0.5t、0.75t、1.0t、1.25t予圧:0.3t 打錠速度 20rpm 得られた錠剤の評価結果(錠剤硬度、日本薬局方摩損度試験における摩損度、日本薬局方崩壊試験における崩壊時間(試験液:水)、及び摩損度試験後のキャッピング発生率)を表2に示す。錠剤硬度は、実施例1と同様にして測定した。キャッピングは、粉体を圧縮して、錠剤を排出する際または排出後に、錠剤が帽子状に剥離する現象であり、日本薬局方記載の摩損度試験法実施後にキャッピングが発生している錠剤数を測定し、キャッピング発生率を、以下の式で算出した。 キャッピング発生率=(キャッピング発生錠数/試験錠剤数)×100比較例5 実施例3の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの7質量%濃度の水分散液428gに換えて、微結晶セルロースCeolusPH−101の7質量%濃度の水分散液428gを使用した以外は実施例3と同様にして錠剤を得た。 得られた錠剤を実施例3と同様に評価した結果を表2に示す。 実施例3では低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、錠剤硬度が高く、摩損度が低く、崩壊時間が短く、キャッピング等の打錠障害がない錠剤が得られた。一方、比較例5においては錠剤硬度が低く、摩損性が高く、崩壊時間が長く、高い打錠圧の場合キャッピングが発生した。 水溶性結合剤を用いない、ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液を錠剤形成用組成物粉体に噴霧しながら造粒を行う造粒工程と、得られた上記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで表面改質された造粒物を打錠して錠剤を得る打錠工程とを少なくとも含んでなる錠剤の製造方法。 上記造粒工程が、流動層造粒装置を用いて行われる請求項1に記載の錠剤の製造方法。 上記錠剤形成用組成物粉体が、薬物と、糖又は糖アルコールとの粉体を少なくとも含む請求項1又は2記載の錠剤の製造方法。


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