タイトル: | 特許公報(B2)_高血圧症治療におけるリボフラビンの使用 |
出願番号: | 2009550246 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/525,A61K 45/00,A61P 9/12 |
ウォード,メアリー マクナルティ,エレーヌ ホリガン,ジェラルディン ストレイン,ショーン スコット,ジョン パービス,ジョン JP 5577100 特許公報(B2) 20140711 2009550246 20080222 高血圧症治療におけるリボフラビンの使用 ユニバーシティ オブ アルスター 505211710 ウェスタン ヘルス アンド ソーシャル ケアー トラスト 509238018 WESTERN HEALTH AND SOCIAL CARE TRUST ザ プロボースト,フェローズ アンド スカラーズ オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイディッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン 310000288 小川 護晃 100129425 ウォード,メアリー マクナルティ,エレーヌ ホリガン,ジェラルディン ストレイン,ショーン スコット,ジョン パービス,ジョン GB 0703514.0 20070223 20140820 A61K 31/525 20060101AFI20140731BHJP A61K 45/00 20060101ALI20140731BHJP A61P 9/12 20060101ALI20140731BHJP JPA61K31/525A61K45/00A61P9/12 A61K 31/ CA/REGISTRY(STN) 国際公開第80/002799(WO,A1) 米国特許出願公開第2007/0031394(US,A1) 国際公開第2000/019817(WO,A1) FROSST,P.,ET AL.,"A candidate genetic risk factor for vascular disease: a common mutation in methylenetetrahydrofolate reductase",NATURE GENETICS,1995年 5月,VOL.10,NO.1,PP.111-113 MCNULTY,H.,ET AL.,"Riboflavin Lowers Homocysteine in Individuals Homozygous for the MTHFR 677C → T Polymorphism",CIRCULATION,2006年 1月 3日,VOL.113,NO.1,PP.74-80 MUDA,P.,ET AL.,"Homocysteine and red blood cell glutathione as indices for middle-aged untreated essential hypertension patients",JOURNAL OF HYPERTENSION,2003年12月,VOL.21,NO.12,PP.2329-2333 HUSTAD,S.,ET AL.,"Riboflavin as a Determinant of Plasma Total Homocysteine: Effect Modification by the Methylenetetrahydrofolate Reductase C677T Polymorphism",CLINICAL CHEMISTRY,2000年 8月,VOL.46,NO.8,PART 1,PP.1065-1071 UELAND,P. M.,ET AL.,"Biological and clinical implications of the MTHFR C677T polymorphism",TRENDS IN PHARMACOLOGICAL SCIENCES,2001年 4月 1日,VOL.22,NO.4,PP.195-201 7 EP2008001437 20080222 WO2008101724 20080828 2010519235 20100603 15 20110207 井上 典之 本発明は遺伝子型特異的集団における高血圧症治療でのリボフラビンの使用に関する。 一般に高血圧と呼ばれる高血圧症とは、血圧が上昇し、ほとんどの場合慢性的に上昇している健康状態である。高血圧症は、原因を問わず、心臓病や心発作などの心血管疾患(CVD)の主な危険因子の1つである。 酵素5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)をコードする遺伝子に通常存在するC677Tの多型性についてホモ接合性の個体では、CVDのリスクの増大があることが見出されている。MTHFRは、5−メチルテトラヒドロ葉酸の形成に必要であり、同様にこの5−メチルテトラヒドロ葉酸がホモシステインをメチオニンに変換するのに必要である。MTHFRのC677T多型性(TT遺伝子型)にホモ接合性である個体は、心臓病および心発作に対して野性型遺伝子(CC遺伝子型)よりも有意に高いリスクを有するとみなされる。多型性(CT遺伝子型)にヘテロ接合性であるヒトはまた、心臓病および心発作のやや高いリスクを有する。種々の降圧薬(例えば、ACE阻害薬、β遮断薬および利尿薬)は、高血圧を有すると臨床的にみなされる患者の降圧に役立つが、これらの薬物は、望ましくない副作用をもたらす場合があり、被験者によっては、1種類以上の降圧薬を服用しているにもかかわらず依然として高血圧が続く場合もある。 今や驚くべきことに、リボフラビン(ビタミンB2)には、特にMTHFRのC677T多型性についてホモ接合性であるCVD患者に対して、有意な収縮期血圧・拡張期血圧低下効果があることが見出されている。 本発明の第一の態様によれば、MTHFRのC677T多型性にホモ接合性またはヘテロ接合性の被験者に対する血圧上昇を治療または予防する医薬品の製造におけるリボフラビンの使用が得られる。 本発明の第二の態様によれば、MTHFRのC677T多型性にホモ接合性またはヘテロ接合性の被験者における血圧上昇を治療または予防する医薬品であって、同時投与、別の投与または連続的投与される、薬学的に有効な量の降圧剤およびリボフラビンを含む医薬品が得られる。 適切な降圧剤としては、ACE阻害薬(例えば、キナプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、マレイン酸エナラプリル、トランドラプリル、ラミプリルおよびシラザプリル)、β遮断薬(例えば、アテノロール、テルタトロール、酒石酸メトプロロール、フマル酸ビソプロロール、ネビボロール、セリプロロール、およびピンドロール)、Ca++拮抗剤(例えば、ニフェジピン、ジルチアゼム、アムロジピン、ベラパミルおよびフェロピジン)、α遮断薬(例えば、メチルドパ、ドキサゾシン、クロニジンおよびプラゾシン)、アンジオテンシンII拮抗剤(例えば、イルベサルタン、カンデサルタン・シレキセチル、オルメサルタン・メドキソミル、バルサルタン、ロサルタン、テルミサルタンおよびエプロサルタン・メシレート)、α/β遮断薬(例えば、カルベジロールおよびラベタロール)ならびに利尿薬(例えば、ベンドロフルメチアジド、ピレタニド、クロルサリドンおよびヒドロクロロチアジド(HCTZ))が挙げられる。 本発明の利点としては以下が挙げられる。・リボフラビンを、任意の他の降圧剤の非存在下で血圧を低下させるために用いることができる。・他の降圧剤をリボフラビンと同時、別々または連続して投与する場合、必要な効果を得るために要する他の降圧剤の量を有利に減量することができ、即ち、より少ない薬剤用量で被験者の血圧上昇の治療または予防を果たすことができるため、従来の降圧剤の任意の望ましくない副作用を最小化することができる。 本発明の第三の態様によれば、MTHFRのC677T多型性についてホモ接合性またはヘテロ接合性の被験者における血圧上昇を治療または予防する方法であって、被験者に対してリボフラビンを投与することを含む方法が提供される。 本発明の医薬品または生成物は好ましくは、経口投与または非経口投与に適切な形態に構成される。適切な経口剤形としては、錠剤、カプセル(徐放性カプセルを含む。)、丸剤、散剤、顆粒剤などが挙げられる。非経口投与としては、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、膀胱内投与(例えば、膀胱に対する投与。)、皮内投与、局所投与または皮下投与が挙げられる。適切な非経口剤形としては、無菌の注射用水溶液または分散液、および無菌の注射用溶液または分散液の調製用の無菌の粉末が挙げられる。投与の好ましい経路は経口である。 リボフラビンは、経口投与または非経口投与に適切な薬学的に適合するまたは受容可能なキャリアと一緒に投与され得、このキャリアは用いられる特定の投与タイプに従って選択される。経口投与の場合には、リボフラビンは適切な経口剤形の調製のための1つ以上の固形の不活性成分とともに投与され得る。例えば、リボフラビンは、少なくとも1つの補形剤、例えば、充填剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶液凝結遅延剤、吸収促進剤、保潤剤、吸収剤または潤滑剤とともに投与されてもよい。非経口投与の場合には、リボフラビンは適切なキャリアまたは希釈剤、例えば、水、エタノール、生理食塩水、デキストロース(グルコース)溶液および関連の糖溶液、グリセロール、またはグリコール、例えば、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールとともに投与されてもよい。 いずれの場合も、リボフラビンの用量は、食事摂取基準値内であり、安全と考えられる最大値以下である。しかし、多くの他の栄養物とは異なり、リボフラビンについては公式の耐容上限値は確立されておらず、極めて高用量でさえ一般には安全とみなされており、500mg/日までの値が有害な影響なしに耐容されるということを示している証拠がある。これは、1.1〜1.8mg/日の範囲である成体の推奨リボフラビン食事値と比肩する。この医薬品または生成物は、被験者に対するリボフラビンの投与について約1.6mg/日の量で処方されることが最も好ましい。しかし、この医薬品または生成物は、被験者に対するリボフラビンの投与のために1.6mg/日を超えるかまたはそれ未満の任意の他の適切な用量で処方されてもよい。例えば、適切な用量は、約0.5mg/日〜50mg/日、好ましくは約0.75mg/日〜20mg/日、より好ましくは約1mg/日〜10mg/日、より好ましくは約1.2mg/日〜5mg/日、さらにより好ましくは約1.4mg/日〜約5mg/日であってもよい。 本発明は、個人用のオーダーメイド栄養物の領域にも用いられ得る。遺伝子−栄養物の相互作用に対する関心は増大してきており、遺伝子プロファイルへのアクセシビリティが増すのに伴い、個人用栄養物が市場に近年出現してきている。このアプローチは、栄養所要量は、年齢および性別のような一般的な要因だけでなく、被験者に特異的である遺伝子要因も考慮すべきであるという観点に基づく。例えば、被験者のMTHFR遺伝子型をチェックし、次に、特にその被験者がTTまたはCT遺伝子型を有することが見出される場合は、低用量リボフラビンを摂取する、というように進めることができる。 本発明はまた、薬の臨床試験、例えば、新規の降圧医薬品を試験する臨床試験のデザインにも用いられ得る。このような試験の首尾よい転帰および正確な解釈のために、低リボフラビン状態と組み合わせてMTHFRのC677T多型性についてTT遺伝子型を有するものが、層別化され、かつ種々の治療群に等しく無作為化されることが重要である。図1は、研究デザインのフロー図を示す。図2(i)は、健常対照群の間のMTHFR遺伝子型群によるホモシステイン濃度(μmol/L)を示す。図2(ii)は、健常対照群の間のMTHFR遺伝子型群による収縮期血圧(mmHg)を示す。図2(iii)は、健常対照群の間のMTHFR遺伝子型群による拡張期血圧(mmHg)を示す。図2(i)、(ii)および(iii)の値は、平均(標準誤差のバー)である。異なる文字は、MTHFR遺伝子型群間の統計学的に有意な相違を示し、ANOVAはチューキーの事後検定で、P<0.05が有意である。図2(i)〜(iii)では、「a」という文字は、他の「a」値と有意に異なることのない値を示し、文字「b」は他の「b」値と有意に異なることはないが、「a」の値とは異なる値を示す。図3(i)は、早発性CVD患者の間のMTHFR遺伝子型群によるホモシステイン濃度(μmol/L)を示す。図3(ii)は、早発性CVD患者の間のMTHFR遺伝子型群による収縮期血圧(mmHg)を示す。そして図3(iii)は、早発性CVD患者の間のMTHFR遺伝子型群による拡張期血圧(mmHg)を示す。図3(i)、(ii)および(iii)の値は、平均(標準誤差のバー)である。異なる文字は、MTHFR遺伝子型群の間の統計学的に有意な相違を示し、ANOVAはチューキーの事後検定で、P<0.05が有意である。図3(i)〜(iii)では、「a」という文字は、他の「a」値と有意に異なることのない値を示し、文字「b」は他の「b」値と有意に異なることはないが、「a」の値とは異なる値を示す。「ab」という文字は、「a」または「b」の値とは有意に異なることがない値を示す。(実施例1:CVD患者) 材料と方法 被験者の募集 The Research Ethical Committee of the University of Ulsterと、Altnagelvin Hospital Trust, Londonderry, Northern Irelandとの両方から倫理的承認を受けた。早発性のCVD患者、男性は55歳以下、女性は65歳以下(当時)を、Altnagelvin病院の心臓科から集めた。患者は以前の心筋梗塞(MI)またはECG変化により診断された狭心症によって選ばれた。見込みのある参加者(n=404)を口腔内スワブの試料に基づいてMTHFR遺伝子型についてスクリーニングした。TT遺伝子型を有する患者を特定した(n=54)。これらの患者は、年齢および性別を同様の数の患者で、CCまたはCTの遺伝子型でマッチングさせ、総数197例の患者に、現行の介入研究に参加するように依頼した(図1を参照)。全ての被験者についての除外基準は、肝疾患または腎疾患の既往、ビタミンBサプリメントの使用者、葉酸代謝を妨げることが公知の医薬を摂取している被験者、MIの後から血液採取の前までが少なくとも3か月の被験者とした。全ての志願者が書面でインフォームドコンセントを提出し、健康および医学的/ライフスタイルのアンケート(CVDの家族歴および喫煙習慣に関する質問を含む。)に答えた。 研究のデザイン この研究は、16週のプラセボ対照介入試験とした。患者を、各々の遺伝子型群内の血漿ホモシステインの最初のスクリーニングに基づいて層別化して、引き続き、図1に示すように、リボフラビン(1.6mg/日)またはプラセボのいずれかを投与されるように各々の層内で無作為化した。コンプライアンスを最大化することを企図して、患者には7日用丸剤ボックスで4週ごとにリボフラビンを与え、未使用の丸剤は戻すよう依頼してそれを記録した。非空腹時の血液試料を、スクリーニング時および介入後に、Altnagelvin病院、患者の職場、または患者の自宅のいずれかで採取した。 血圧および身体測定値 血圧測定値は、Omcron 705CP電気血圧モニター(Medisave,Dorset,UK)を用いて、15分あけて測定した2回の測定値の平均として記録した。体重(kg)および身長(m)を用いて、BMI(体重(kg)/身長2(m))を算出した。腹囲(cm)も測定した。全ての測定は、Secaの承認した装置(Brosch Direct,Ltd,Peterborough,UK)を用いて行った。 試料の採取 30mLの血液試料を1つ各々の患者から採取した。血漿および洗浄赤血球については9mLのEDTA試験管を1つ、赤血球溶解物の調製ならびにヘモグロビン(HB)および血中血球容積(PCV)の測定には4mLのEDTA試験管を1つ、血清抽出物用に8mLの血清分離試験管を1つ、脂質プロフィール分析用に5mLの血清分離試験管を1つ、および凝固スクリーニング用に4mLのクエン酸ナトリウムの試験管を1つである。9mLのEDTAを直ちにスズのホイルに包み、氷上に置いた。試料は、採取後2時間内に3000rpmで15分間、遠心分離した。血漿を取り出して、血漿ホモシステイン・PLP分析のために−80℃で保管した。そのバフィー層をMTHFR遺伝子型決定の確認のために取り出して、−20℃で保管した。残りの赤血球を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、その上清および残りのバフィー層は各洗浄後に廃棄した。この洗浄された赤血球を取り出して、EGRac分析(リボフラビン状態の機能的指標)のために−80℃で保管した。血清を取り出して血清葉酸分析のために−80℃で保管した。 生化学的分析 血漿ホモシステインを、Abbott Imxアナライザー(Leino A.,1999,「Fully automated measurement of total homocysteine in plasma and serum on the Abbott IMx analyzer」.Clin.Chem,45,569〜71)を用いるイムノアッセイによって測定した。血清葉酸および赤血球葉酸濃度を、凍結保存、マイクロタイタープレート方法を用いて微生物学的アッセイによって測定した(Molloyら、1997,「Microbiological assay for serum,plasma,and red cell folate using cryopreserved,microtiter plate method」.Methods Enzymol,281,43〜53)。血漿のPLPは、蛍光検出付き逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した(Batesら、1999,「Plasma pyridoxal phosphate and pyridoxic acid and their relationship to plasma homocysteine in a representative sample of British men and women aged 65 years and over」. British Journal of Nutrition,1,191−201)。MTHFRのC677T遺伝子型の特定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、続いてHinFl(Frosstら、1995,「A candidate genetic risk factor for vascular disease:A common mutation in methylenetetrahydrofolate reductase」.Nat Genetc,10,111−113)を用いて行った。リボフラビンの状態は、EGRac(機能的アッセイであって、これによってグルタチオン還元酵素の活性が追加のFADの有無の両方で測定される。)に基づいて測定した。次いでEGRacを、FAD刺激酵素活性対、非刺激酵素活性の比として算出し(Powersら、1983,「The relative effectiveness of iron and iron with riboflavin in correcting a microcytic anaemia in men and children in rural Gambia」. Hum Nutr Clin Nutr,37,413−425)、1.3以上の値が最適以下のリボフラビン状態を反映すると一般にはみなす。凝固スクリーニングを、ACI Instrumentation Laboratoriesによって測定した。HBおよびPCVを、Sysmex XE−2100(Sysmex,UK Ltd.Milton Keynes UK)アナライザーを用いて測定し、脂質プロフィールを、Abbott Architect CI 8200アナライザー(Abbott Laboratories,USA)を用いて測定した。全てのアッセイにおいて、試料を盲検で、二連で、かつ採取の1年内に分析した。精度管理(QC)は、貯留した洗浄済みの赤血球(EGRacについて)、ホモシステインおよびPLPについては血漿、および葉酸については血清が保管されたバッチの反復分析によって得た(広範な値をカバーする)。 統計学的分析 全ての統計学的分析は、社会科学についてのSPSS統計学的パッケージを用いて行った(バージョン11.0,SPSS UK Ltd.,Chersey,United Kingdom)。正規化のために、変数は、統計学的分析の前に必要に応じて対数変換した。チューキーの事後検定による一元ANOVAを用いて、遺伝子型群間のベースラインの特徴における相違を検討した。カイ二乗分析を用いてカテゴリーデータを評価した。二変数のピアソン相関係数を用いて相関分析を行った。各々の遺伝子型群内のリボフラビン介入の効果は、対応のあるt検定を用いて検討した。0.05未満のP値を有意とみなした。 結果 健常な個体におけるベースラインのデータ 図2を参照すると、血液のホモシステイン値に関して、MTHFRのC677T多型性(TT遺伝子型)についてホモ接合性の健常個体について観察された表現型は、CTまたはCCのいずれかの遺伝子型を有するものと比較して、血液ホモシステイン濃度の上昇であった。対応する血圧値に関して、TT遺伝子型を有する健常個体では、図2に示されるとおり、CTまたはCC遺伝子型のいずれにおける値に比較しても収縮期血圧または拡張期血圧の上昇はなかったことが見出された。 早発性CVD患者におけるベースラインのデータ 早発性のCVD患者は一般に、男性については55歳前に、女性については65歳前にCVDを発症する被験者として規定される。図3を参照すると、早発性のCVDを有し、TT遺伝子型を有する患者は、CCおよびCTの両方の患者に比較して血液ホモシステイン濃度の上昇があった。TT患者はまた、図3に示すとおり、CC患者に比較して、収縮期血圧および拡張期血圧の有意な増大があることも見出された。CT個体は、CCおよびTTの患者に比較して、中間値の拡張期血圧を有することが見出された(図3に示す。)。これらの結果は予想されないものである。なぜなら、健康なTT被験者は、他の遺伝子型群と比較して血圧の上昇を示さなかったためである。全ての患者は、下の表1に示すとおり、試料採取の時点で1つ以上の降圧薬を摂取していたが、この医薬品はTT遺伝子型群においては比較的効果が低いことが、図3から明らかである。 早発性CVD患者のMTHFR遺伝子型(TT、CTまたはCC)に従って分類されたこの早発性CVD患者のベースラインの特徴を、下表2に示す。表2を参照すると、TT患者は、CC患者に比較して、収縮期血圧および拡張期血圧の有意な増大があることが観察された。CT患者は、拡張期血圧について中間の値を有することが見出された。TT患者で見出された血圧の上昇値は、リボフラビン状態による影響を強く受けた。従って、TT遺伝子型と低リボフラビン状態の組み合わせを有する患者は、顕著に上昇した血圧を有することが予期せぬことに見出された。 早発性CVD患者の介入データ 下表3を参照すると、181例の早発性CVD患者を対象としたプラセボ・対照の介入研究では、TT遺伝子型を有する患者での収縮期血圧および拡張期血圧の両方の有意な低下が、低用量リボフラビン投与の16週後に達成された。示される血圧応答は、統計的・臨床的に有意である。リボフラビンに対する応答で観察される血圧低下の規模(収縮期血圧では11単位、および拡張期血圧では8単位の減少)により心疾患のリスクを29%まで、心発作のリスクを46%まで下げることが、メタ分析から見積もることができる。この結果、有意かつ臨床的に重要な血圧低下が、特にTT遺伝子型患者で、リボフラビンに応答して達成された。再度図3を参照すると、CC患者ではリボフラビン投与後に血圧(収縮期または拡張期)の有意な低下は観察されなかった。(実施例2:健常対照群) MTHFRのC677T遺伝子型に基づき、健常な個体におけるリボフラビンと血圧との間の関連を検討した。上記の実施例1に記載の手順に従って測定を行い、記録した。得られた結果として、MTHFR遺伝子型について年齢でマッチングさせたスクリーニング前の健常被験者のベースラインの特徴(n=124)を表4に示す。 実施例2(表4)で得られた結果から示すとおり、TT遺伝子型を有する個体は、CCまたはCT遺伝子型群と比較して、有意に高い収縮期血圧または拡張期血圧を示さなかった。また一方、このTT遺伝子型の代表的な表現型として有意に上昇した血漿ホモシステインおよび葉酸低状態へ向かう傾向を示したが、表4に示すとおり、葉酸状態の相違は、統計的有意差には達しなかった(P値は0.05未満ではなかったため。)。 健常個体での介入データ 81例の健常個体でのプラセボ対照介入研究を行った。健常個体でのMTHFR遺伝子型別の、リボフラビン介入(16週間にわたり1.6mg/日)に対する血圧応答を検討し、その結果を表5に示す。 P値を参照すると、表5の結果は、TT遺伝子型を有するこの健常なコホートではリボフラビンの有意な収縮期血圧低下効果も有意な拡張期血圧低下効果もなかったことを示す。従って、上の実施例1において考察したTT遺伝子型を有するCVD患者でのリボフラビンによる収縮期血圧の低下および拡張期血圧の低下は予想されないものであって、統計的かつ臨床的に有意である。 表5に示されるP値を再度参照すると、この統計学的分析によって、拡張期血圧がCC群ではリボフラビン治療で増大を示した1件を除いて、リボフラビンまたはプラセボに対する応答において遺伝子型を超えて血圧に有意な増大または低下がないことが示される。これは予想されなかったが、この結果は、偶然によるおよび比較的小さいサンプルサイズによると考えられる。CC群でのリボフラビンに対するこの応答を考慮しても、リボフラビンは、健康なCC個体で拡張期血圧を増大することが見出されたことに注意されたい。この結果、上の実施例1で考察されたTT遺伝子型を有するCVD患者におけるリボフラビンによる収縮期および拡張期血圧の低下は、特に予想されないものである。 MTHFRのC677T多型性についてホモ接合性の被験者における血圧上昇の治療または予防に使用する医薬品であって、薬学的に有効な量の降圧剤および0.5〜50mg/日のリボフラビンを含有する、医薬品。 MTHFRのC677T多型性についてヘテロ接合性の被験者における血圧上昇の治療または予防に使用する医薬品であって、0.5〜50mg/日のリボフラビンおよび薬学的に有効な量の降圧剤を含有する、医薬品。 前記降圧剤は、ACE阻害薬、β遮断薬、Ca++拮抗剤、α遮断薬、アンジオテンシンII拮抗剤、α/β遮断薬および利尿薬から選択される、請求項1または請求項2に記載の医薬品。 前記ACE阻害薬は、キナプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、マレイン酸エナラプリル、トランドラプリル、ラミプリルおよびシラザプリルから選択され、前記β遮断薬は、アテノロール、テルタトロール、酒石酸メトプロロール、フマル酸ビソプロロール、ネビボロール、セリプロロールおよびピンドロールから選択され、前記Ca++拮抗剤は、ニフェジピン、ジルチアゼム、アムロジピン、ベラパミルおよびフェロピジンから選択され、前記α遮断薬は、メチルドパ、ドキサゾシン、クロニジンおよびプラゾシンから選択され、前記アンジオテンシンII拮抗剤は、イルベサルタン、カンデサルタン・シレキセチル、オルメサルタン・メドキソミル、バルサルタン、ロサルタン、テルミサルタンおよびエプロサルタン・メシレートから選択され、前記α/β遮断薬は、カルベジロールおよびラベタロールから選択され、ならびに前記利尿薬は、ベンドロフルメチアジド、ピレタニド、クロルサリドンおよびヒドロクロロチアジド(HCTZ)から選択される、請求項3に記載の医薬品。 前記医薬品は、経口投与または非経口投与に適切な形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬品。 栄養成分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬品。 個人用栄養成分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬品。