生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_リドカインテープ剤
出願番号:2009539972
年次:2014
IPC分類:A61K 31/167,A61K 9/70,A61K 47/32,A61K 47/12,A61K 47/22,A61K 47/46,A61K 47/34,A61K 47/14,A61K 47/10,A61P 29/00


特許情報キャッシュ

石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 JP 5392495 特許公報(B2) 20131025 2009539972 20081110 リドカインテープ剤 株式会社 メドレックス 302005628 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 松谷 道子 100106518 橋本 諭志 100146259 石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 JP 2007292663 20071111 20140122 A61K 31/167 20060101AFI20131226BHJP A61K 9/70 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/32 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/12 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/22 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/46 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/34 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/14 20060101ALI20131226BHJP A61K 47/10 20060101ALI20131226BHJP A61P 29/00 20060101ALI20131226BHJP JPA61K31/167A61K9/70 401A61K47/32A61K47/12A61K47/22A61K47/46A61K47/34A61K47/14A61K47/10A61P29/00 A61K 31/167 A61K 9/70 A61K 47/10 A61K 47/12 A61K 47/14 A61K 47/22 A61K 47/32 A61K 47/34 A61K 47/46 A61P 29/00 CAplus/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平07−215850(JP,A) 特開平11−049670(JP,A) 特開平10−316590(JP,A) 特表2007−503428(JP,A) 特開平06−040947(JP,A) 5 JP2008003242 20081110 WO2009060629 20090514 18 20110801 関 景輔 本発明は、リドカインの乳酸塩を主な有効成分とする、経皮吸収製剤に関するものである。 局所麻酔薬であるリドカインに関しては、従来から様々な外用製剤が検討されてきており、近年では貼付剤として開発が進み、リドカインに関していくつかの貼付剤が上市されてきた。また、リドカインの麻酔作用を発現させたり、皮膚の深部の疼痛を改善するためにリドカインの皮膚浸透性を高めるための試みが検討されており、その一つの手段として、リドカインの高濃度化貼付剤が検討されている。 例えば、特許文献1には静脈留置針穿刺時の疼痛緩和を目的として、20重量%のリドカインを含有するテープ製剤が開示されている。また、特許文献2には30重量%近くのリドカインを含有する製剤が開示されている。しかしながら、リドカイン含量が20重量%近くの高濃度になれば、リドカインの結晶が膏体中に析出するようになる。リドカインの結晶が析出すれば、粘着剤中に未溶解の薬物が分散することになるため、皮膚等に貼付されても十分な量の薬物が体内に吸収されず、麻酔効果の発現が遅くなる。更に、テープ剤を剥離する際に薬物が皮膚等に残存するという問題が起きる。また、薬物の結晶が粘着剤中に析出しているので外観が悪くなるだけでなく、粘着力も低下するという問題が起きていた。特開2002−193795号公報特開平7−215850号公報 本発明の目的は、高濃度のリドカインが膏体中に存在しても、リドカインの結晶が析出することなく、膏体中に均一に相溶又は分散した状態で存在するリドカイン含有の経皮吸収テープ剤を提供することにある。即ち、リドカインの結晶が析出しないことから、皮膚に対する粘着力が劣化することのないリドカイン経皮吸収テープ剤の提供が可能になる。 本発明者らは鋭意検討の結果、リドカインの乳酸塩(等モル塩)がイオン液体(常温溶融塩)になることを見出し、このリドカインのイオン液体をテープ剤化することによって、リドカインが高濃度のテープ剤を作成しても、テープ剤の膏体中でリドカインの結晶が析出することがなく、また、リドカインのイオン液体であることによって、そうでない場合よりも、皮膚透過性が高くなることを見出した。更に、経皮吸収促進剤として、炭酸プロピレンやN−メチル−2−ピロリドンを使用すると、リドカイン乳酸塩のイオン液体の経皮吸収性と組織内浸透性がより向上することが示された。本発明者らは、これらの知見により本発明を完成した。 即ち、本発明の要旨は以下の通りである。[1]リドカインの乳酸塩を含有することを特徴とするテープ剤であって、(1)リドカインを10〜40w/w%を含有し、(2)リドカインの0.6〜1.2倍モル量の乳酸と、(3)炭酸プロピレン及び/又はN−メチル−2−ピロリドン、を含有することからなる、リドカイン含有の非水系テープ剤。[2]界面活性剤が添加されている、上記[1]に記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[3]界面活性剤が一つ以上の非イオン性界面活性剤からなり、そのHLB値が6〜12の範囲にあるものであることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[4]テープ剤の粘着層組成としてエラストマーと粘着付与剤の含量が、20〜45w/w%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[5]テープ剤の粘着層組成としてエラストマーと粘着付与剤の含量が、20〜40w/w%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[6]テープ剤のエラストマーがスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体であり、粘着付与剤が脂環族系炭化水素樹脂である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[7]有機酸が更に添加されている、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[8]リドカインと乳酸が等モル量含有されることを特徴とする、上記[1]〜[7]のいずかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[9]リドカインを15〜30w/w%を含有することからなる、上記[1]〜[8]のいずかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[10]非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ひまし油と親油型ステアリン酸グリセリンである、上記[1]〜[9]のいずかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。[11]リドカインと乳酸との等モル塩。[12]上記[11]記載のイオン液体をリドカイン換算で10〜40w/w%を含有することを特徴とする、非水系テープ剤。[13]ポリオキシエチレン硬化ひまし油とステアリン酸グリセリンの非イオン性界面活性剤が添加されている、上記[12]に記載の非水系テープ剤。 本発明のリドカイン高濃度テープ剤は、リドカイン乳酸塩のイオン液体を使用するため、高濃度にしてもリドカインの結晶が析出することがない。このイオン液体の特徴から、過剰のリドカインを始めとして多くの他の試剤が該イオン液体に相溶解し、結晶が析出することがない。しかも、乳酸は、酢酸などと異なり、低揮発性であるため、テープ剤化しても脂肪酸特有の嫌な臭気がしないと言う利点を有する。 リドカイン乳酸塩を使用することにより、20%前後の高濃度リドカインテープ剤であっても、リドカインの膏体中での結晶析出がなく、粘着力の劣化が抑制されている。しかも、リドカイン乳酸塩となっていることから、本発明のテープ剤はリドカイン単独のテープ剤と対比して経皮吸収性が強いだけでなく、組織内浸透性も強く、皮膚の深部にまで到達することができる製剤となっている。これまでの経皮吸収製剤と比較しても、本発明の製剤は経皮吸収性と組織内浸透性に関してバランスの取れたテープ剤となっている。従って、本発明のテープ剤は、皮膚深部の神経疼痛、頚肩腕症候群、三叉神経由来の偏頭痛等の治療に有効に活用できるものとなっている。リドカイン乳酸塩(等モル)のIR吸収スペクトル図である。実施例3における組織内浸透性の評価試験の結果を示した図である。実施例4における組織内浸透性の評価試験の結果を示した図である。実施例5における界面活性剤の組合せによる経皮吸収性の評価試験結果を示した図である。実施例7における組織内浸透性の評価試験の結果を示した図である。試験例1におけるテープ剤の経皮吸収性評価試験の結果を示した図である。試験例2におけるテープ剤の肉組織への拡散性評価試験の結果を示した図である。試験No.269のテープ剤(結晶の析出無し)の外形写真である。参考例(D275)のテープ剤(結晶析出)の外形写真である。−本発明の第一の態様− 本発明の第一の態様とは、リドカイン乳酸塩を有効成分とするリドカイン含有の非水系テープ剤に関するものである。 本発明で言う「粘着層」とは、テープ剤の中で膏体と呼ばれる、薬効成分以外の組成物に関するものであり、主にエラストマーと粘着付与剤、軟化剤、充填剤、抗酸化剤等からなるものである。 上記「エラストマー」としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック(以下SISという)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエンゴム−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ブチルゴム、シリコンゴム等の合成ゴム、例えばポリアクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸メチルエステル等のアクリル酸系樹脂、天然ゴムなどを挙げることができる。好ましいものとしては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテン、ポリイソプレン、ブチルゴム、天然ゴム等のゴム系重合体をベースとするものが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記樹脂フィルムは単独で使用されてもよく、二種以上が積層されて使用されてもよい。 本発明で言う「粘着付与剤」とは、脂環族炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、ポリスチレン系樹脂、ロジン、水添ロジン、ポリブテン等を言う。好ましいものとしては、脂環族炭化水素樹脂やポリテルペン樹脂、ポリブテンを挙げることができる。 上記軟化剤としては、例えばプロセスオイル、ポリブテン等の石油系軟化剤、例えばヒマシ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、精製ラノリン、流動パラフィン、ゲル状炭化水素等を挙げることができる。 上記抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(以下BHTという)、4,4−ジオキシジフェニル、EDTA−2Na等を挙げることができる。 更に上記粘着剤には、必要に応じて、経皮吸収助剤、界面活性剤(非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤)、アルコール類、有機酸類が添加されてもよい。 上記エラストマーと粘着付与剤が粘着剤組成の骨格を形成することになるので、リドカイン乳酸塩の製剤(リドカイン換算で10〜40w/w%)を作製するためには、これらの含量合計が20〜45w/w%になることが好ましい。より好ましくは20〜40w/w%の範囲を挙げることができる。 また、上記粘着剤が柔軟になり過ぎる場合は充填剤が添加されてもよい。このような充填剤としては、例えば、カオリン、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸塩、珪酸、アルミニウム水和物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。 上記経皮吸収促進剤としては、例えば、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、ミリスチン酸ミリスチル、イソクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸レチノール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、カプロン酸メチル、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル等の脂肪酸一価アルコールエステル、例えば、モノオレイン酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、デカオレイン酸デカグリセリン等の脂肪酸多価アルコールエステル、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、パルミチン酸アスコルビル等の脂肪酸環状多価アルコールエステル、例えば、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、没食子酸n−プロピル、アジピン酸ジイソプロピル、炭酸プロピレン、例えばN−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン誘導体などから選ばれる少なくとも1種以上のものを選択して使用することができる。 好ましい経皮吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、炭酸プロピレン、N−メチル−2−ピロリドンから選択される1種以上のものを使用することができる。更に好ましくは、炭酸プロピレン、N−メチル−2−ピロリドンを挙げることができる。 防腐剤として、例えば安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ドデシル等から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。 上記アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等の脂肪族アルコール、例えばサリチル酸グリコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールを挙げることができる。好ましいものとしては、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等を挙げることができる。 上記有機酸としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、コハク酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、レブリン酸、デカン酸、乳酸、酢酸等の脂肪酸が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。 上記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができ、非イオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレート、グリセリンモノステアレート、デカグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリンポリリシノレート、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4,2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7,5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オイレルアミン、ポリオキシ(5)オレイルアミン、ポリオキシ(5)オレイン酸アミド、ポリオキシエチレン(2)モノラウレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)等が挙げられる。 上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(6)オイレルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。 上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。上記以外のものとして、ラウロイルジエタノールアミドも使用可能である。 本発明で好ましい界面活性剤としてはHLB値が6〜12の範囲のものが挙げられる。より好ましいものとしては、一種以上の非イオン性界面活性剤からなり、HLB値が6〜12の範囲のものである。更に好ましい非イオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリドとポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)からなる、HLB値が6〜12の範囲のものを挙げることができる。 本発明のテープ剤を調製する方法としては、粘着テープと同様な方法が採用可能であり、例えば、溶剤塗工法、ホットメルト塗工法が挙げられる。上記溶剤塗工法としては、リドカイン乳酸塩等を含有する膏体組成物を調製し、これを直接支持体上に塗工、乾燥する方法が挙げられる。また、上記膏体組成物を一旦剥離紙上に塗工、乾燥した後、剥離して支持体に転写密着させる方法も使用可能である。 ホットメルト塗工法としては、上記膏体組成物を加熱溶融し、これを直接支持体上に塗工、乾燥する方法が挙げられる。また、ホットメルト塗工法では、上記膏体組成物を加熱溶融して一旦剥離紙上に塗工、乾燥した後、剥離して支持体に転写密着させる方法も使用可能である。 上記剥離紙は粘着剤層の保護を目的として使用され、例えば、ポリエチレンコート上質紙、ポリオレフィンコートグラシン紙、ポリエチレンテレフタレート(以下PETという)フィルム、ポリプロピレンフィルムなどの片面をシリコン処理したものが使用可能である。上記局所麻酔用経皮吸収テープの形状は、シート状、帯状、円形、楕円形、菱形等自由に選択できる。 −本発明の第二の態様− 本発明の第二の態様は、リドカインと乳酸の等モル塩に関するものである。 本発明のリドカインと乳酸の等モル塩は無色の粘稠液体(イオン液体)であり、リドカインを始めとして他の試剤を該イオン液体に溶解させることができる。 リドカインはpKa7.9、乳酸はpKa3.86であり、pKaの差が4以上であるため、平衡は塩に傾き、IR的には、ほとんど遊離の乳酸が検出できない状態である。 本発明のリドカインと乳酸の等モル塩を含有する非水系テープ剤とは、乳酸以外の脂肪酸を含有しないことを意味する。なお、本発明の目的を達するために、必要に応じて、経皮吸収助剤、界面活性剤(非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤)、アルコール類、抗酸化剤等が添加されてもよい。 以下、実施例および試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。(実施例1)リドカイン乳酸塩(等モル)の合成 リドカイン15.0g(64.0mM)と乳酸(モレキュラシーブ乾燥)5.8g(64.4mM)を秤取し、混合して約80℃に加温する。得られた無色粘稠溶液を採取し岩塩板に塗布し、IRスペクトル(neat)を取った。以下の表1のように、カルボキシル基が消失し、カルボキシルイオンの吸収が現れた。図1にリドカインの乳酸塩のIR吸収スペクトルを示すと共に、表1に乳酸のカルボキシル基の吸収位置の変化を示す。[注記] リドカイン乳酸塩(等モル)の−COO−の特性吸収は幅広いので、吸収帯の中央値を記載した。 なお、上記リドカイン乳酸塩の粘稠溶液(イオン液体)を室温下に数ヶ月放置したが、結晶析出はしなかった。(実施例2)リドカイン乳酸塩を含有するテープ剤の作製 リドカインの乳酸塩を含有するテープ剤を以下の表2の組成(w/w%)で作製した。即ち、SIS、テルペン樹脂をトルエンに溶解し、ポリブテン、BHT、流動パラフィン、プラスチベース、界面活性剤、溶媒等を加え、加熱混合した。溶解確認後、リドカイン、乳酸を添加し、均一な膏体を得た。得られた膏体を塗工しテープ剤を作成した。 経皮吸収性は、フランツセルを用いて試験例1の方法で測定し、試験開始から6時間後の経皮吸収性(μg/cm2)を評価した。これらの結果を併せて表2に記載した。 上記表2の20%のリドカイン高濃度テープ剤を室温下、数ヶ月保存しても、膏体中にリドカインの結晶析出は見られなかった。また、経皮吸収性もリドカインの含量に依存し、用量相関が認められた。(実施例3)テープ剤における溶媒の影響a)経皮吸収性に対する影響: 以下の表3の組成(w/w%)で秤取したSIS、テルペン樹脂をトルエンに溶解し、ポリブテン、BHT,MGS、流動パラフィン、溶媒等を加え、加熱混合した。リドカイン、乳酸(90.2%含量)を添加し、均一な膏体を得た。得られた膏体を塗工し、トルエンを蒸発させテープ剤を作成した。 テープ剤の経皮吸収性は、試験例1に準じてフランツセルを用いて測定し、試験開始から6時間後の経皮吸収性(μg/cm2)を評価した。これらの結果を併せて表3に記載した。 上記の表3の結果によれば、基剤に添加する溶媒としては、炭酸プロピレンが優れた効果を示している。次いで、1,3−ブタンジオールが良好な溶媒であることが示された。b)組織内浸透性に対する影響: 上記各リドカインテープ剤の組織内浸透性を評価するため、約2cm角に切った赤身の牛肉に試剤のテープ剤を貼付し、4℃で24時間静置した。肉片を試剤貼付面から2mmごとに切り出し、貼付面から0〜2mm、2〜4mm、4〜6mmの3つの画分に分けた。各々の画分ごとに、肉片をすり潰し、メタノールにてリドカインを抽出した。メタノール中のリドカイン濃度を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。 この結果を図2に示す。この結果によれば、炭酸プロピレンやN−メチル−2−ピロリドンを基剤に添加すれば、リドカイン乳酸塩は優れた組織内浸透性を示すことが明らかとなった。(実施例4)テープ剤における炭酸プロピレン混合溶媒系の影響(1)20%リドカイン乳酸塩含有の非水系テープ剤 実施例3a)に記載の方法に準じて、以下の表4の組成(w/w%)で試剤を秤取し、テープ剤を作製した。 経皮吸収性は試験例1に準じて評価した。その結果を併せて表4に記載した。[注記] BG:1,3−ブタンジオール MIP:ミリスチン酸イソプロピル NMP:N−メチル−2−ピロリドン 上記表4の結果によれば、炭酸プロピレンをベースにして各種の溶媒(経皮促進剤)と組合わせることにより、経皮吸収性を向上させることができることを見出した。即ち、炭酸プロピレンと共に、ミリスチン酸イソプロピルや1,3-ブタンジオールを加えて混合溶媒とすれば、更に経皮吸収性が向上することが示された。(2)15%リドカイン乳酸塩含有の非水系テープ剤a)経皮吸収性に対する影響: 実施例3a)と同様にして、溶媒組成の異なるリドカイン乳酸塩のテープ剤を以下の表5の組成(w/w%)で作製した。経皮吸収性は、試験例1と同様にして測定した。更に、組織内浸透性を実施例3b)に記載の方法で測定した。 以下の表5に経皮吸収性の結果を併せて示す。なお、組織内浸透性の結果は図3に示した。 上記表5の結果からは、経皮吸収性の点では炭酸プロピレンを溶媒として添加したものがよく、図3で示される組織内浸透性の点では、炭酸プロピレンと1,3−ブタンジオールの混合溶媒を添加した方がより優れた浸透性を与えることが分かった。 以上のように、溶媒はリドカイン乳酸塩の溶媒和や基剤の脂溶性を調整するだけでなく、経皮促進剤として働き、更に、組織内浸透性にも寄与することが分かった。 従って、リドカイン乳酸塩に関して適切な経皮吸収性と良好な組織内浸透性をバランス良く持ったテープ剤を作製するためには、炭酸プロピレンや1,3−ブタンジオールを中心として各種の溶媒を選択し、量比を選択することによって、実施可能であることが示された。(実施例5)テープ剤における界面活性剤の添加効果a)界面活性剤の種類: 添加する界面活性剤の有無あるいはその種類による経皮吸収性への影響を評価した。前項(1)a)に準じて、以下の表6の組成(w/w%)の30%リドカイン乳酸塩のテープ剤を作製した。経皮吸収性は、試験例1に準じてリドダーム基準で各テープ剤の経皮吸収性を評価した。その結果を、以下の表6に併せて示す。[注記]・MGS:ステアリン酸モノグリセリド・HCO−60:ポリオキシエチレンヒマシ油 ・基準物質としてリドダーム(登録商標:Endo社、リドカイン含量5%)を用いた。リドダームのフランツセルでの経皮吸収性を1として、相対値で経皮吸収性を表示した。 上記表6の結果、試験No.D262とD270とを比較し、あるいは、試験No.D271とD270とを比較から、界面活性剤が存在するとリドカインの経皮吸収性は向上することが示された。 更に、界面活性剤として、MGSを使用した場合には、界面活性剤がない場合と比較して、経皮吸収性が約2倍向上することが示された。b)界面活性剤の組み合わせ: 界面活性剤を組み合わせてHLB値を調節し、リドカイン乳酸塩に関して好適なHLB値の範囲を検討した。実施例3a)に準じて、以下の表7の組成(w/w%)のテープ剤を作製した。試験例1に準じてフランツセルにより各テープ剤の経皮吸収性を評価した。その結果を、以下の表7に併せて示す。[注記]・MGS:ステアリン酸モノグリセリド・HCO−60:ポリオキシエチレンヒマシ油 上記表7の結果を図4に示したが、非イオン性界面活性剤は、HLB値が8前後の付近で、ベル型の極大を取るような経皮吸収性が認められた。 この図4より、界面活性剤のHLB値が6〜12の範囲であれば、より優れた経皮吸収性を示すことが明らかとなった。(実施例6)リドカインの高濃度製剤におけるリドカインの結晶析出性 リドカインの含量を40%にまで増加させ、乳酸の含量を等モルから0.65倍モル量まで低減させた。どの含量になればリドカインの結晶析出が起きるかを検討した。実施例3a)に準じて、以下の表8の組成(w/w%)のテープ剤を作製した。結晶の析出性、経皮吸収性を評価した。なお、経皮吸収性は、基準物質としてリドダーム(登録商標:Endo社、リドカイン含量5%)を用いて、フランツセルでの経皮吸収性を1として、相対値で各サンプルの経皮吸収性を表示した。その結果を以下の表8に併せて示す。[注記]・MGS:ステアリン酸モノグリセリド 上記表8の結果によれば、リドカインの含量が40%になっても、リドカインの結晶析出は見られなかった。これらは、リドカインの乳酸塩(イオン液体)の物性に基づく寄与が大であると考えられる。即ち、リドカイン乳酸塩がイオン液体であるが故に、リドカインが高濃度になっても結晶として析出することが見られなかった。更に、リドカインが乳酸に対してかなり過剰になっても、リドカイン乳酸塩のイオン液体にリドカインが溶解し、結晶化が抑制されている。 また、40%の高濃度製剤になっても、テープ剤の皮膚に対する粘着性はあまり変化せず、良好であった。リドカインが高濃度になって結晶が析出すると粘着性が低下する。本発明製剤ではそれが抑制されているため、粘着性に対する影響が抑制されている。(実施例7)組織内浸透性に対するリドカイン乳酸塩の効果 公知文献(WO01/07018の要約)によると、塩基性薬物の酸付加塩の経皮吸収促進剤として酢酸ナトリウムが好適であると記載されている。本公知文献の実施例3には、15%の塩酸オキシブチニンを有効成分とするテープ剤の記載があり、試験例1では実施例3のテープ剤処方が最も皮膚透過性に優れていると記載されている。即ち、本公知文献では、系中に酢酸オキシブチニンが生成し、この化合物が優れた皮膚透過性を与えていると考えられる。 そこで、この塩酸オキシブチニンを塩酸リドカインに置き換えた処方のテープ剤(酢酸リドカイン塩のテープ剤)を作製し、本発明製剤(リドカイン乳酸塩のテープ剤)と比較した。 なお、15%のリドカイン塩酸塩では、リドカインとして13%の製剤処方ということになる。そこで、以下の表9の組成(w/w%)で前述のテープ剤を作製した。 経皮吸収性と組織内浸透性を実施例3に準じて評価し、その結果を表9と図5に示す。 上記表9から示されるように、本発明製剤の経皮吸収性は、先行文献製剤F252−2と対比し、約1.5倍優れていることが示された。 また、図5の結果から示されるように、本発明製剤の組織内浸透性は、先行文献製剤F252−2と対比し、4〜6mmの深部組織において約4倍優れていることが示された。 以上のように、本発明のテープ剤は、先行文献製剤と比較し経皮吸収性と組織内浸透性の両方が共に良好で、バランスが取れたものであることが分かった。(実施例8)テープ剤におけるその他の添加物の影響 リドカインや乳酸等の組成を固定し、経皮吸収性に対する他の添加物の添加効果を評価した。そのため、実施例3に準じて、以下の表10の組成(w/w%)のテープ剤を作製した。結晶の析出性、経皮吸収性を評価し、以下の表10に併せて示した。なお、経皮吸収性は、ペンレスを基準にして、相対評価で表記した。[注記]・MGS:ステアリン酸モノグリセリド・基準物質としてペンレス(登録商標:祐徳、リドカイン含量10%)を用いた。ペンレスを用いてフランツセルを使用して測定された経皮吸収性を1として、相対値で各テープ剤の経皮吸収性を表示する。 上記表10に示されるように、乳酸の有無は、経皮吸収性に大きく影響することが示されている。参考例(D275)と試験No.D295に示されるように、乳酸があることで約2倍の経皮吸収性の向上が見られた。(試験例1)フランツセルによる経皮吸収性の評価試験 5週齢のウイスター系ラットを用いた。試験前日にバリカン、シェーバーを用いて腹部を除毛しておき、エーテルにて安楽死後、腹部皮膚を摘出した。その腹部皮膚を縦型拡散セル(有効拡散面積:1cm2)に挟み、角質層側に各実施例のテープ剤を同じサイズに切って貼付する。また、真皮層側に生理的食塩水を適用した。実験温度は32℃とし、実験開始後2,4そして6時間目に生理的食塩水を300μLサンプリングし、皮膚を透過して溶出したリドカインの濃度をHPLCにより測定し、各時間におけるリドカインの累積透過量を測定した。参考例(D275)と試験No.269の結果を図6に示した。(試験例2)肉片を用いた拡散性の評価試験 約2cm角に切った赤身の牛肉に試剤のテープ剤を貼付し、4℃で24時間静置した。肉片を試剤貼付面から2mmごとに切り出し、貼付面から0〜2mm・2〜4mm・4〜6mmの3つの画分に分けた。各々の画分ごとに、肉片をすり潰し、メタノールにてリドカインを抽出した。メタノール中のリドカイン濃度を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。参考例(D275)と試験No.269の結果を図7に示した。(試験例3)ボールタック試験 JISZ0237粘着テープ・粘着シート試験方法(14 傾斜式ボールタック試験法)に従い、実施例5のD262(リドカイン乳酸塩)と実施例8のD275(乳酸なし)のテープ剤を使用して評価試験を行った。傾斜30度の滑り台にテープ剤の粘着面を上にして設置する。該粘着面の]表面に4号球を設置し、球が60秒以上停止した場合を○とし、球が転がり落ちる場合には×とした。3回の実験を行ったが、いずれもD262(リドカイン乳酸塩)の場合には、60秒以上、球が停止していたが、D275(乳酸なし)の場合には、60秒未満の停止時間しか得られなかった。 本発明のリドカインテープ剤は、リドカインの乳酸塩を有効成分として含み、更に溶媒として炭酸プロピレンやN−メチル−ピロリドンを使用して、各種の溶媒と組合せ、界面活性剤が添加されている、非水系のテープ剤である。この製剤処方により、リドカインが高濃度の製剤処方となっても、結晶析出することがなく、しかも、経皮吸収性と組織内浸透性に優れた、バランスの取れた製剤となっている。このように本発明のリドカインテープ剤は、皮膚深部の神経疼痛、頚肩腕症候群、三叉神経由来の偏頭痛等の治療に有効に活用できるものとなっている。 リドカインの乳酸等モル塩を含有することを特徴とするテープ剤であって、(1)リドカインを15〜30w/w%含有し、(2)炭酸プロピレン、(3)HLB値が6〜12の範囲にある非イオン性界面活性剤と、(4)テープ剤の粘着層組成としてエラストマーと粘着付与剤の含量が、20〜45w/w%を含有することからなる、リドカイン含有の非水系テープ剤。 有機酸が更に添加されている、請求項1に記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ひまし油とステアリン酸グリセリンである、請求項1または2に記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。 1,3−ブタンジオールが更に添加されている、請求項1〜3のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。 テープ剤のエラストマーがスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である、請求項1〜4のいずれかに記載のリドカイン含有の非水系テープ剤。


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