タイトル: | 特許公報(B2)_新規アジュバント |
出願番号: | 2009539133 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 39/39,A61P 37/08,A61K 47/46,A61K 47/02,A61K 39/35,A61K 39/36,A61K 39/00 |
津久井 利広 石井 健 審良 静男 チョバン ジェヴァイア JP 5292303 特許公報(B2) 20130614 2009539133 20081031 新規アジュバント 日本全薬工業株式会社 591281220 国立大学法人大阪大学 504176911 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 津久井 利広 石井 健 審良 静男 チョバン ジェヴァイア JP 2007285737 20071102 20130918 A61K 39/39 20060101AFI20130829BHJP A61P 37/08 20060101ALI20130829BHJP A61K 47/46 20060101ALI20130829BHJP A61K 47/02 20060101ALI20130829BHJP A61K 39/35 20060101ALI20130829BHJP A61K 39/36 20060101ALI20130829BHJP A61K 39/00 20060101ALI20130829BHJP JPA61K39/39A61P37/08A61K47/46A61K47/02A61K39/35A61K39/36A61K39/00 H A61K 39/39 A61K 39/00 A61K 39/35 A61K 39/36 A61K 47/02 A61K 47/46 A61P 37/08 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 国際公開第2007/147255(WO,A1) 米国特許第05849307(US,A) 国際公開第2006/061965(WO,A1) Cevayir COBAN et al,Purified Malaria Pigment (Hemozoin) Enhances Dendritic Cell Maturation and Modulates the Isotype of,Infect. Immun.,2002年,70,p.3939-3943 7 JP2008069919 20081031 WO2009057763 20090507 19 20110929 松浦 安紀子 本発明は、アレルゲンワクチン、感染症ワクチン、粘膜ワクチン又は腫瘍ワクチンと併用するワクチンアジュバント組成物に関する。 ヘモゾイン(Hemozoin)は、Plasmodium原虫の食胞に存在するヘム分子の解毒産物である疎水性ヘムポリマーであり、Plamodium原虫が宿主ヘモグロビンを消化することによりできる。CpG DNAと同様にToll-like receptor 9(TR9)のリガンドとして作用する。Toll-like receptor 9は、Plasmodiumを含む種々の病原体に対する自然免疫応答に関与していることが報告されている。すなわち、Toll-like receptor 9がリガンドを認識すると、MyD88依存的に免疫系が活性化される。 塩化ヘミンから合成されたヘモゾインはβヘマチンと呼ばれる(非特許文献1を参照)。 ヘモゾインが in vitroでマウスの脾臓細胞や樹状細胞を活性化することが報告されている(特許文献1を参照)。また、ヘモゾインがマウスにおいてリボヌクレアーゼAの抗体産生に対するアジュバント効果を有することが報告されている(特許文献2を参照)。 さらに、βヘマチンがDNAワクチンのアジュバントとしての効果を有することが報告され(非特許文献2を参照)、また、βヘマチンがTLR9のDNA分子(いわゆるCpGモチーフと呼ばれる非メチル化DNA鎖)以外のリガンドとして機能することが報告されている(非特許文献3を参照)。 しかしながら、ヘモゾインやβヘマチンがin vivoでアレルゲンワクチンや細菌やウイルスの感染症のワクチンの効果を高めるワクチンアジュバントとして用い得ることは示されていなかった。国際公開第WO2006/061965号パンフレット米国特許第5849307号公報Slater et al.,Proc.Natl.Acad,Sci.U.S.A.88:325-329,1991Infect Immun. 2002 Jul;70(7):3939-43J Exp Med. 2005 Jan 3;201(1):19-25 本発明は、アレルゲンワクチン、感染症ワクチン、粘膜ワクチン又は腫瘍ワクチンと併用するワクチンアジュバント組成物の提供を目的とする。 本発明者らは、in vivoで動物に対するワクチンの効果を高めるワクチンアジュバント組成物について鋭意検討を行った。本発明者はアレルゲンワクチン、細菌若しくはウイルス感染症ワクチン、粘膜ワクチン又は腫瘍ワクチンとヘモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物を併用して、動物に接種することにより、ワクチンの効果が高まることを見出し本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] ヘモゾイン又はβヘマチンを含む、アレルゲンワクチンと併用するワクチンアジュバント組成物。[2] 5μM〜2mMのヘモゾイン又はβヘマチンを含む、[1]のワクチンアジュバント組成物。[3] 粘膜ワクチンアジュバントである、[1]又は[2]のワクチンアジュバント組成物。[4] [1]〜[3]のいずれかのワクチンアジュバント組成物及びアレルゲンワクチンを含むワクチン組成物。[5] 粘膜ワクチンである、[4]のワクチン組成物。[6] アレルゲンが、花粉アレルゲン又はダニアレルゲンである、[4]又は[5]のワクチン組成物。[7] ヘモゾイン又はβヘマチンを含む感染症ワクチンと併用するワクチンアジュバント組成物。[8] 5μM〜2mMのヘモゾイン又はβヘマチンを含む、[7]のワクチンアジュバント組成物。[9] 粘膜ワクチンアジュバントである、[7]又は[8]のワクチンアジュバント組成物。[10] [7]〜[9]のいずれかのワクチンアジュバント組成物及び感染症ワクチンを含むワクチン組成物。[11] 粘膜ワクチンである、[10]のワクチン組成物。[12] 感染症が、細菌又はウイルスによる感染症である、[10]又は[11]のワクチン組成物。[13] ヘモゾイン又はβヘマチンを含む腫瘍ワクチンと併用するワクチンアジュバント組成物。[14] 5μM〜2mMのヘモゾイン又はβヘマチンを含む、[13]のワクチンアジュバント組成物。[15] 粘膜ワクチンアジュバントである、[13]又は[14]のワクチンアジュバント組成物。[16] [13]〜[15]のいずれかのワクチンアジュバント組成物及び腫瘍ワクチンを含むワクチン組成物。[17] 粘膜ワクチンである、[16]のワクチン組成物。[18] ヘモゾイン又はβヘマチンを含む樹状細胞活性化剤。[19] 5μM〜2mMのヘモゾイン又はβヘマチンを含む、[18]の樹状細胞活性化剤。[20] ヘモゾイン又はβヘマチン並びにアラムアジュバントを含む、ワクチンアジュバント組成物。[21] Th1免疫反応を誘導する、[20]のワクチンアジュバント組成物。[22] 粘膜ワクチンアジュバントである、[20]又は[21]のワクチンアジュバント組成物。[23] [20]〜[22]のいずれかのワクチンアジュバント組成物とワクチンとを含むワクチン組成物。[24] 粘膜ワクチンである、[23]のワクチン組成物。 本発明のへモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物をアレルゲンワクチンや細菌、ウイルス、リケッチア、寄生虫等の病原体の感染症のワクチンと併用することにより、in vivoにおいて、病原体に対する抗体価がアジュバントを併用しない場合に比べ上昇し、効果的にアレルギー疾患や感染症を予防又は治療することができる。また、本発明のへモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物を粘膜ワクチンと併用することにより、粘膜における粘膜IgA抗体産生を誘導し、効果的に感染症を予防又は治療することができる。さらに、本発明のへモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物を腫瘍ワクチンと併用することにより、腫瘍の縮小が認められ、効果的に腫瘍を予防又は治療することができる。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2007-285737号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物をマウスに投与した場合の(2回投与)、マウス血清中のIgG2a抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物をマウスに投与した場合の(2回投与)、マウス血清中のIgG1抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物をマウスに投与した場合の(3回投与)、マウス血清中のIgG2a抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物をマウスに投与した場合の(3回投与)、マウス血清中のIgG1抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物をイヌに投与した場合の、イヌ血清中のIgG2抗体価の経時的変化を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物をイヌに投与した場合の、イヌ血清中のIgG1抗体価の経時的変化を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物をイヌに投与した場合の、イヌ血清中のIgG2抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物をイヌに投与した場合の、イヌ血清中のIgG1抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物をイヌに投与した場合の、イヌ血清中のIgG2抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチン及びアラムアジュバントを含むワクチン組成物の細菌感染症に対するアジュバント効果を確認する試験のスケジュールを示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導された細菌特異的IgG2a抗体の抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導された細菌特異的IgG1抗体の抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導された細菌特異的IgG2a抗体の抗体価を示す図である(その2)。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導された細菌特異的IgG1抗体の抗体価を示す図である(その2)。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導されたウイルス特異的トータルIgG抗体の抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導されたウイルス特異的IgG1抗体の抗体価を示す図である。アジュバントとしてβヘマチンを含むワクチン組成物により誘導されたウイルス特異的IgG2a抗体の抗体価を示す図である。種々の投与量のβヘマチンによる単球の活性化作用を示す図である。βヘマチンとCpGの単球活性化作用の比較を示す図である。βヘマチンの抗腫瘍ワクチンアジュバントとしての効果を示す図である。βヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果(血清中IgG1)を示す図である。βヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果(血清中IgG2a)を示す図である。βヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果(気管支洗浄液中IgA)を示す図である。βヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果(腸管洗浄液中粘膜IgA)を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 へモゾインは、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染赤血球から例えば、Infect.Immun.70:3939-3943,2002、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:11865-11870,1996、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:325-329等の記載に従って精製することができる。すなわち、マラリア原虫感染赤血球をサポニンで溶解し、感染したマラリア原虫を超音波処理し、2% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)で7、8回洗浄する。次いで、得られた沈殿を2mg/mLのプロテイナーゼKと共に37℃で一晩インキュベートする。沈殿を2% SDSで3回洗浄し、6M尿素で室温で3時間インキュベートする。その後、沈殿を2% SDSで洗浄し、蒸留水で3〜5回洗浄し、蒸留水に懸濁させる。 βヘマチンは、合成ヘモゾインであり、例えば、Proc.Natl.Acad,Sci.U.S.A.93:11865-11870, 1996、Proc.Natl.Acad,Sci.U.S.A.88:325-329,1991、J.Immunol.172:3101-3110等の記載に従って合成することができる。 上記のようにして調製したヘモゾイン又はβヘマチンは、20mM水酸化ナトリウム、2% SDS中で2時間室温にて処理しヘムポリマーを脱重合し、400nmの吸光度を測定することにより定量することができる。定量は、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:11865-11870,1996に記載の方法に従って行うことができる。 本発明は、上記のヘモゾイン又はβヘマチンの免疫応答を刺激するのに有効な量を含むワクチンアジュバント組成物である。ワクチンアジュバントとは、ワクチンと併用した場合に、ワクチンの効果を高め、生体においてワクチンとして用いる免疫原に対する抗体の生産を上昇させる物質をいう。また、本発明は、該ワクチンアジュバント組成物並びに免疫応答を刺激するのに有効な量のアレルゲンを含むアレルゲンワクチン又は細菌、ウイルス、リケッチア若しくは寄生虫等の病原体の抗原を含む感染症ワクチンを含むワクチン組成物である。本発明のワクチンアジュバント組成物は、粘膜ワクチンのアジュバントとしても好適に用いることができる。粘膜ワクチンのアジュバントは、粘膜免疫システムを誘導する粘膜ワクチンの効果を高め、粘膜での細菌やウイルスの感染防御システムを誘導し、増強することができる。粘膜免疫システムの誘導の結果、粘膜においてIgA産生が誘導される。 ワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物中のヘモゾイン又はβヘマチンの量は5μM〜3mM、好ましくは7.5μM〜2mM、さらに好ましくは10μM〜2mM、さらに好ましくは10μM〜1,000μM、さらに好ましくは50μM〜500μMである。 本発明のワクチンアジュバント組成物には、ヘモゾイン又はβヘマチンの他にフロイントの完全アジュバント、結核菌体などの微生物死菌体、アラム(Alum)アジュバント等の他の免疫賦活物質を添加してもよい。 アレルゲンワクチンとは、生体にアレルゲンを投与することにより、アレルゲンに対するIgG抗体を生産させてアレルギーの原因となるIgEの作用をブロックし、あるいは生体内でアレルゲンに特異的な1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)を増加させ、アレルギー症状に関与する2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)を減少させるためのワクチンをいい、減感作によりアレルギー症状を抑制し得る。アレルゲンワクチンは、種々のアレルギーの原因となるアレルゲンからなる。本発明のワクチンアジュバント組成物と併用するアレルゲンとしては、限定されないが食物アレルゲン、ハウスダストアレルゲン、スギ花粉等の花粉アレルゲン、動物の体毛等のアレルゲンなどが挙げられる。具体的には、花粉アレルゲンとして、スギ花粉アレルゲン(Cry j 1、Cry j 2)、ブタクサアレルゲン(Amba1、Amba2、Amba5、Ambt5、Ambp5)、カモガヤアレルゲン(Dacg2)等が挙げられ、食物アレルゲンとして、カゼイン、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、オボムコイド、オボアルブミン、コンアルブミン等が挙げられ、ハウスダストアレルゲンとして、ダニ類アレルゲン(Derf1、Derf2、Zen1、Derp1、Derp2)等が挙げられる。この中でも、Cry j 1などのスギ花粉アレルゲンやZen1、Derf1、Derf2等のダニアレルゲンが望ましい。 感染症用のワクチンとしては、不活性化された完全ワクチン、サブユニットワクチン、トキソイド等が挙げられる。これらのワクチンは、細菌、ウイルス、リケッチア、寄生虫等の病原体に対して動物に免疫を生じさせる。 感染症用ワクチンとしては、ヒトを対象とする場合、例えば、A型、B型インフルエンザ等のインフルエンザ、ポリオウイルス、日本脳炎、結核菌、ヒトパピローマウイルス、マラリア原虫、SARS、ヒトに感染し得うるトリインフルエンザ、腸チフス、パラチフス、ペスト、百日咳、発疹チフス等の感染症用ワクチンが挙げられる。また、非ヒト動物を対象とする場合、例えば、ウマインフルエンザウイルス、ウマヘルペスウイルス、ウマ脳髄膜炎ウイルス、口蹄疫ウイルス、狂犬病、ネコ汎白血球減少症、ネコ鼻気管炎、感染性ウシ鼻気管炎、3型パラインフルエンザ、ウシのウイルス性下痢、ウシアデノウイルス、ブタパルボウイルス、イヌアデノウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌパルボウイルス、イヌパラインフルエンザ、トリインフルエンザ、ブルセラ症、ビブリオ症、レプトスピラ症、クロストリジウム感染症、サルモネラ症等の感染症用ワクチンが挙げられる。この中でも、大腸菌(牛乳房炎)、黄色ブドウ球菌(牛乳房炎)、マイコプラズマ(豚肺炎)、PRRSウイルス(豚肺炎)、犬狂犬病ウイルス等の感染症用ワクチンが望ましい。 さらに、本発明のヘモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物は、腫瘍ワクチンのアジュバントとしても用いることができる。特定の腫瘍特異的抗原を腫瘍ワクチンとして投与するときにアジュバントとして用いればよい。腫瘍の種類は限定されず、あらゆる腫瘍ワクチンのアジュバントとして用いることができる。 本発明においては、ヘモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物を単独で用いてもよい。この場合、ワクチンアジュバント組成物と上記ワクチンを別々に動物に投与すればよい。また、ワクチンアジュバント組成物とワクチンを混合して用いてもよく、この場合、ヘモゾイン又はβヘマチンを含むワクチン組成物として用いることができる。 本発明のワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物の投与対象となる動物は限定されず、免疫系を有するあらゆる動物が限定され、ほ乳類、鳥類等を含む。ほ乳類としては、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス等が挙げられる。鳥類としてはニワトリ、アヒル、ガチョウ等が挙げられる。特に本発明のワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物は、ヒトのアレルギーワクチン及び感染症ワクチン、イヌ、ネコ等のペット動物のアレルギーワクチン及び感染症ワクチン、並びにウシ、ブタ、ニワトリ等の産業動物の感染症ワクチンとして有用である。 ワクチン組成物中の抗原量は、対象とする感染症の種類、投与する動物種等により変えることができるが、1回数十ng〜数mgである。 本発明のワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物は、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液、又はエマルションの形態であってもよい。さらに、塩、緩衝剤等の医薬的に許容できる希釈剤、助剤、担体等を含んでいてもよい。ワクチン組成物は、経口、経鼻、経粘膜、筋肉内若しくは皮下、鼻腔内、気管内、皮膚、経皮又は皮内の各経路によって接種できる。また、本発明のワクチンアジュバント組成物又はワクチン組成物は飲料水や餌に含ませた状態で動物に摂取させてもよい。本発明は、本発明のワクチンアジュバント組成物又はワクチン組成物を含む飲料水及び餌も包含する。 本発明のワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物は、単回投与でもよいし、2日から8週間間隔で数回にわたって投与してもよい。この際、上記濃度のヘモゾイン又はβヘマチンを含むワクチンアジュバント組成物又はワクチン組成物を1回0.1mL〜2mL、好ましくは0.5mL〜1.5mL投与すればよい。また、アラムアジュバント等の他の免疫賦活物質は、1回の投与で100μg〜10mg、好ましくは0.5〜5mg添加すればよい。 本発明のワクチンアジュバント組成物をワクチンとともに動物に投与し、又は本発明のワクチン組成物を動物に投与することにより、Th1免疫反応を誘導しTh1細胞が増加し、アレルギー特異抗体であるIgEの産生が低下し、感染症において防御抗体として作用するIgG2抗体又はIgG2a抗体の産生が上昇する。この結果、動物においてアレルギー症状を抑え、さらにアレルギー症を治療することができる。また、感染症を予防又は治療することができる。また、本発明のワクチン組成物を動物に投与することにより、Toll-like receptor 9(TLR9)を発現する単球や樹状細胞等の免疫細胞が活性化される。この結果、細胞性免疫により感染症を予防又は治療することができる。さらに、本発明のワクチン組成物を動物に投与することにより、腫瘍を予防又は治療することができる。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例1 マウスにおけるβヘマチンのダニアレルゲンワクチンに対するアジュバント効果 βヘマチンを以下の方法で作製した。 原料Hemin(Fuluka社;オランダ)0.45gを1M NaOH(関東化学社)水溶液45mLに溶解し1M HCl(関東化学社)水溶液0.45mLを添加した。溶液を60℃に加温した後に、60℃下にて酢酸(和光純薬)を滴下し、pHを4.8に調整した。室温で1晩又は37℃2時間静置後、遠心(10,000rpm、4℃、10min)し、重曹緩衝液(pH9.1;和光純薬)/2%SDS(和光純薬)にて4回遠心洗浄した後に、精製水にて同様に上清が薄茶透明となるまで洗浄した。その後、精製水に超音波(シャープ社製PCT-204)を用いて分散させ使用した。 また、合成されたβヘマチンはβヘマチンサンプルを0.1M NaOH/SDS溶液に溶解した後に、400nmの吸光を測定し、OD値により、1.0 OD(400nm)=10nmol/mLのheme量として算出し、以降の試験に用いた。 ワクチン接種動物として5週齢雌のBALB/cマウスを用いた。 ワクチンとしてコナヒョウヒダニのアレルゲンDerf2を用いた。Derf2は以下の方法によりカイコ-組換えバキュロウイルス系にて組換えDerf2として作製した。コナヒョウヒダニアレルゲンDerf2のcDNAをPCRにて増幅し、プラスミドベクターpBM030に連結し、得られた組換えプラスミドをE.coli TOP10株(インビトロジェン社製)に形質転換した。この形質転換株をアンピシリン100μg/mlを含有するLB培地で37℃にて8時間培養した後、QIAGEN Midi kit(キアゲン社製)によって組換えプラスミドDNAを精製した。作製・精製した組換えpBM030プラスミドDNA2μgとバキュロウイルスDNA(1 cut BmNPV DNA,日本農産工業社製)20ngを混合し、定法により、Derf2 cDNAがゲノムに組み込まれた組換えバキュロウイルスを作出、単離した。次に、5×104から5×107 PFU/mlに調製した組換えバキュロウイルス株をカイコ5齢幼虫に接種し、カイコ体液中に組換えDerf2を発現させた。回収したカイコ体液を、pH4.0の50mM酢酸緩衝液で10倍に希釈し、4℃、3,000rpm、10分間の遠心分離により上清画分を回収した。これを、陽イオン交換カラム(TOYOPEARL SP-550C、TOSOH社製)、陰イオン交換カラム(Q Sepharose Fast Flow、GEヘルスケア社製)を用いることで精製し、ELISA法にて定量することで以下の検討に用いた。 1μg又は2μgの組換えDerf2にアジュバントとしてβヘマチンを、300μl中1mMとなるように調整し、アラムアジュバントを100μg混合した。PBSで300μLになるように調整し、それぞれを上記マウス4頭ずつに腹腔投与により接種した。この際、βヘマチンを混合せずに組換えDerf2及びアラムアジュバントを混合したものを対照として接種した。接種は1週間隔で3回行った。 トータル15頭のマウスの群分けは以下のとおりである。a Derf2 2μg+βヘマチン 1mM+アラムアジュバント100μgb Derf2 1μg+βヘマチン 1mM+アラムアジュバント100μgc Derf2 2μg+アラムアジュバント100μgd Derf2 1μg+アラムアジュバント100μg 2及び3回目のワクチン接種から1週間後にマウスから採血し、血清を分離し、Derf2特異的IgG1及びIgG2aの測定をELISAにて行った。 図1A及びBに2回目の接種から1週間後に採血した血清中の抗体価を示す。図1AがIgG2aの測定結果であり、図2BがIgG1の測定結果である。また、図2A及びBに3回目の接種から1週間後に採血した血清中の抗体価を示す。図2AがIgG2aの測定結果であり、図2BがIgG1の測定結果である。 図に示すように、βヘマチンを添加した場合にIgG2a抗体価、IgG1抗体価ともにβヘマチンを添加しない場合に比較してより上昇した。実施例2 イヌにおけるβヘマチンのダニアレルゲンワクチンに対するアジュバント効果 ワクチン接種動物として約5ヶ月齢のビーグル犬を用いた。 ワクチンとしてコナヒョウヒダニのアレルゲンDerf2を用いた。カイコを用いて組換えDerf2を作製し、100μgの組換えDerf2にアジュバントとしてβヘマチンをワクチン接種量1mL中に7.5又は15μMとなるよう混合した。さらに、ワクチンにアラムアジュバントを混合したものと混合しないものを作製し、計6種類のワクチンを作製した。それぞれを上記ビーグル犬4頭ずつに皮下投与により1mL接種した。この際、アラムアジュバントのみを混合した組換えDerf2及びβヘマチンもアラムアジュバントも混合しない組換えDerf2のみを対照として接種した。接種は2週間おきに2回行った。 トータル24頭のビーグル犬の群分けは以下のとおりである。a Derf2 100μg+βヘマチン15μM+アラムアジュバント 0.5mgb Derf2 100μg+βヘマチン7.5μM+アラムアジュバント 0.5mgc Derf2 100μg+アラムアジュバント 0.5mgd Derf2 100μg+βヘマチン15μMe Derf2 100μg+βヘマチン7.5μMf Derf2 100μg ワクチン投与前並びに最初のワクチン接種から7日、14日、21日及び28日後にビーグル犬から採血し、血清を分離し、Derf2特異的IgG1及びIgG2の測定をELISAにて行った。 図3に各群の経時的な抗体量の変化を示す。図3AがIgG2の測定の結果を示し、図3BがIgG1の測定の結果を示す。図4は、最初のワクチン接種から28日後(2回目のワクチン接種から14日後)に採取した血清中の各群の抗体量を示す。図4AがIgG2の測定の結果を示し、図4BがIgG1の測定の結果を示す。図に示すように、IgG2、IgG1ともにβヘマチンを接種した場合に、アジュバントを用いない場合よりも抗体価の経時的な上昇が大きかった。また、IgG2はβヘマチンとアラムアジュバントを組合せて用いた場合に、最大の上昇が認められた。実施例3 イヌにおけるβヘマチンのダニアレルゲンワクチンに対するアジュバント効果(その2) ワクチン接種動物として約5ヶ月齢のビーグル犬を用いた。 ワクチンとしてコナヒョウヒダニのアレルゲンDerf2を用いた。カイコを用いて組換えDerf2を作製し、100μgの組換えDerf2にアジュバントとしてβヘマチンをワクチン接種量1mL中に1mM又は2mMとなるよう混合した。さらに、ワクチンに1mgのアラムアジュバントを混合し、2種類のワクチンを作製した。それぞれを上記ビーグル犬4頭ずつに皮下投与により1mL接種した。この際、アラムアジュバントのみを混合した組換えDerf2を対照として接種した。接種は2週間おきに2回行った。 トータル12頭のビーグル犬の群分けは以下のとおりである。a Derf2 100μg+βヘマチン2mM+アラムアジュバント1mgb Derf2 100μg+βヘマチン1mM+アラムアジュバント1mgc Derf2 100μg+アラムアジュバント1mg ワクチン投与前並びに最初のワクチン接種から3週間及び4週間後にビーグル犬から採血し、血清を分離し、Derf2特異的IgG2の測定をELISAにて行った。 図5に結果を示す。図5において、1〜6は以下の結果を示す。1 Derf2 100μg+βへマチン2mM+アラムアジュバント1mg 投与3週間後採血2 Derf2 100μg+βへマチン1mM+アラムアジュバント1mg 投与3週間後採血3 Derf2 100μg+アラムアジュバント1mg 投与3週間後採血4 Derf2 100μg+βへマチン2mM+アラムアジュバント1mg 投与4週間後採血5 Derf2 100μg+βへマチン1mM+アラムアジュバント1mg 投与4週間後採血6 Derf2 100μg+アラムアジュバント1mg 投与4週間後採血 図5に示すように、βヘマチンを添加した場合にIgG2抗体価は著しく上昇した。また、投与4週間後に採血した血清においては、βヘマチン投与量が多い方がIgG2抗体価が上昇した。いずれのイヌ個体においてもIgG1抗体価の上昇は認められなかった。実施例4 βヘマチンの細菌感染症に対するアジュバント効果 牛乳房炎ワクチンのアジュバントにβヘマチンを用いた場合の抗体誘導能をマウスを用いて評価した。1 ワクチン抗原として用いた菌株 Escherichia coli J5株をワクチン抗原として用いた。2 Escherichia coli 不活化抗原の調製 保存菌液をTryptic Soy Broth(BD Difco製)1Lに加え、37℃で6時間振盪培養した。遠心分離(10,000rpm ,10min)後、菌体を0.4%ホルマリン加PBS 100mLに懸濁し、25℃で一昼夜攪拌して不活化した。不活化菌液を遠心分離し、菌体をPBS 100mLに再懸濁後、同じく遠心分離した。この菌体洗浄操作を計3回行い、得られた菌体をPBS 50mLに懸濁したものを抗原液原液とした。尚、培養後の菌液についてはTryptic Soy Brothを用いて10倍階段希釈後、各希釈液をTryptic Soy Agar(BD Difco製)へ塗抹し、菌数を求めた。3 試験群の設定及び供試頭数 マウス35頭を7頭ずつ以下の試験群(5群)に区分した。 βヘマチン100μM投与群 7頭 βヘマチン40μM投与群 7頭 βヘマチン20μM投与群 7頭 βヘマチン無投与群 7頭 非接種群 7頭4 供試動物 5週齢のマウス(ddy、 ♀)35頭を用いた。 5 ワクチン調製 PBSで109 CFU/mLに調製した不活化菌液に、ワクチン接種量0.5mL中に100、40又は20μMとなるようにヘマチンを調整し、水酸化アルミニウムゲル(アラム)40μgを加えた。βヘマチン添加ワクチンを作製し、PBSで109 CFU/mLに調製した不活化菌液に水酸化アルミニウムゲルのみ40μgを加え、βヘマチン無添加ワクチンを作製した。6 マウス試験 マウスは導入後1週間予備飼育後、調製したワクチンを2週間間隔で0.5mLずつ皮下投与した。導入後1週間毎に、尾静脈より採血し、また2回目ワクチン投与後2週間目に全採血し、得られた血清を用いてELISA法により抗体価を測定した。 試験スケジュールを図6に示す。7 ELISA抗体価測定法 Escherichia coli J5株の抗血清をイムノプレートに固相化し、0.1%ゼラチン加PBS(希釈液)でブロッキング後、E.coli J5株不活化抗原液をさせたものを抗原吸着プレートとした。被検血清を希釈液で100倍に希釈したものを原液として、さらに2倍階段希釈した。これら希釈血清0.05mLを抗原吸着プレートに加え、4℃で一晩反応させた。0.05%Tween20加PBS(洗浄液)で5回洗浄後、各ウエルに標識抗体(ペルオキシターゼ標識抗マウスIgG1及びIgG2a抗体をブロッキング液で希釈したもの)を0.1mLずつ加え、37℃で1時間反応させた。洗浄液で5回洗浄後基質液(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)二アンモニウム塩45mgを1mLの水に溶解し、この0.15mLと5%過酸化水素水0.05mLを基質緩衝液(A液(クエン酸一水和物21.0gを水に溶解し、全量を1,000mLとしたもの)とB液(クエン酸三ナトリウム二水和物29.4gを水に溶解し、全量を1,000mLとしたもの)を混合し、pH4.0に調整)10mLに加えたものを各ウエルあたり0.1mLずつ加え、37℃で20分間反応させた。その後、0.32%フッ化ナトリウム溶液を各ウエルに0.05mLずつ加えて反応を停止させ、波長415nmの吸光度を測定した。血清対照の平均吸光度値の2倍をカットオフ値とし、これ以上の吸光度値を示した血清の最高希釈倍数の逆数を抗体価とした。 図7にβヘマチンを20、40及び100μM投与したマウス並びにβヘマチンを投与しなかったマウスの経時的なE.coli特異的IgG2a抗体価を示し、図8に経時的なE.coli特異的IgG1抗体価を示す。さらに、図9にはβヘマチンを20μM投与した場合と投与しなかった場合のE.coli特異的IgG2a抗体価を示し、図10に経時的なE.coli特異的IgG1抗体価を示す。 図に示すように、βヘマチン添加によるTh1誘導は、濃度依存的ではなく、20μM添加時が最も高いことが判明した。実施例5 βヘマチンのウイルス感染症に対するアジュバント効果 豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus/PRRSV)の野外株(不活化)を用い、βヘマチンの感染症に対するアジュバント効果についてマウスを用いた検討した。株の選定 日本全薬工業株式会社で分離・保存したPRRSV JFS04-07株、05-01株、05-02株及び05-03株をそれぞれMARC145細胞(PRRSV感受性アカゲサル腎臓由来細胞)に接種し、CPEの出現を観察した。約1週間後にCPEが認められたPRRSV JFS04-07株を本実施例に使用した。それぞれの株について、PCR法でPRRSV遺伝子の検出を行ったところ、PRRSV JFS04-07株以外の3株については遺伝子の増幅が見られなかった。免疫抗原作製 175Tフラスコ16本に播種したMARC145細胞にPRRSV JFS04-07株を接種し、CPE確認後凍結・融解を3回行い、5,000rpm,30分間遠心分離して約800mLの培養上清を回収した。30%スクロースをクッションとして、この培養上清を35,000rpm,4時間遠心した。遠心後、得られたペレットを6mLのPBSで懸濁した。 懸濁液についてタイトレーション及びタンパク定量(Coomassie Protein Assay Reagent Kit使用)を行った結果、感染価は106.30TCID50/mL、タンパク量は約1,000μg/mLであった。 懸濁液に最終濃度0.1%となるようにβ-プロピオラクトンを添加、攪拌し、37℃で一晩反応させて不活化した。これを免疫抗原として使用した。マウス試験 βヘマチン(10μM)添加群、βヘマチン(5μM)添加群、βヘマチン無添加群及び対照群の計4群を以下のように設定した。対照群は1頭とし、それ以外の群は各7頭とした。βヘマチンは接種量200μL中に10μM又は5μMとなるように調製し、水酸化アルミニウムゲル(Alum)80μgを加えた。(i) 不活化PRRSV+βヘマチン(10μM)+Alum投与群(βヘマチン添加群)(ii) 不活化PRRSV+βヘマチン(5μM)+Alum投与群(βヘマチン添加群)(iii) 不活化PRRSV+Alum投与群(βヘマチン無添加群)(iv) 対照群(無投与) 試験には、生後5週齢のBALB/c(♀)マウスを使用した(生後4週齢で導入し、1週間馴致)。免疫は2週間隔で2回、マウス1匹あたり200μLずつ腹腔内に投与した。2回目の免疫からさらに2週間後、心臓から全採血し、血清を採取した。採取した血清はエッペンドルフチューブに入れ、-20℃で保管した。ELISA用抗原作製 175Tフラスコ24本に播種したMARC145細胞にPRRSV JFS04-07株を接種し、CPE確認後凍結・融解を3回行い、5,000rpm,30分間遠心分離して約1,200mLの培養上清を回収した。30%スクロースをクッションとして、この培養上清を35,000rpm,4時間の条件下で遠心した。遠心後、ペレットを7mLのPBSで懸濁した。 懸濁液についてタイトレーション及びタンパク定量(Coomassie Protein Assay Reagent Kit使用)を行った結果、感染価は105.80TCID50/mL、タンパク量は約1,200μg/mLであった。 懸濁液に最終濃度0.1%となるようにβ-プロピオラクトンを添加、攪拌し、37℃、一晩反応させて不活化した。これをELISA用抗原として使用した。抗体価測定(ELISA) 採取したマウス血清と作製したELISA用抗原を用い、Box TitrationによるELISA系の構築を行った。これにより、固相化には1.2μg/mLのELISA用抗原を用いることとした。マウス血清は8,000倍から2倍階段希釈し、2次抗体にはHRP標識抗マウスtotal IgG抗体、抗マウスIgG1抗体及び抗マウスIgG2a抗体を用いた。2次抗体反応後TMB試薬で発色し、発色反応停止後、450nm/570nmのOD値を測定した。 2次抗体としてHRP標識抗マウスtotal IgG、抗マウスIgG1及び抗マウスIgG2aを反応させ、それぞれのIgGサブクラスについて検出した。得られたOD値から、(対照群のOD値の平均)×2をカットオフ値とし、これ以上の値を抗体価とした。 結果は以下のとおりであった。 Total IgGについては、βヘマチン10μM添加群がβヘマチン無添加群よりも幾何平均値で512,000高い抗体価を示した(図11)。 IgG1については、βヘマチン10μM添加群がβヘマチン無添加群よりも幾何平均値で約470,000高い抗体価を示した(図12)。 IgG2aについては、βヘマチン10μM添加群がβヘマチン無添加群よりも幾何平均値で約90,000高い抗体価を示した(図13)。 本試験の結果から、βヘマチン10μM添加群の方がβヘマチン無添加群より抗体の上昇が認められることが示唆された。 特に注目すべきは、IgG2aの抗体価上昇である。βヘマチンは、CpGモチーフと同様TLR9を介してTh1型の免疫機構に作用することが知られていることから、今回の結果からもβヘマチンがマウス体内で有効に作用したと考えられる。実施例6 βヘマチンの免疫学的作用の評価リンパ球混合反応によるβヘマチンの樹状細胞に対する活性化作用についての検討 同種異系マウスC3H由来T細胞は活性化したRAW-Blue cells(単球系セルラインであるBalb/c由来細胞)上に発現するMHC分子を非自己の抗原と認識して増殖性を示す。そこで、各条件下でRAW-Blue cellsを培養後、(C3H)由来T細胞と混合培養し、T細胞の増殖活性を測定することでβヘマチンによるRAW-Blue cellsに対する活性化能を評価した。方法i)24 wellプレートに5×105 cells / well (0.5 mL/ well)でRAW-Blue cellsを播き,以下に示す各条件で48時間刺激・培養した。培養条件βヘマチン添加群;0, 6.25, 12.5, 25, 50μL(/ well)CpG添加群;0, 6.25, 12.5, 25, 50μg /mL(/well)未添加群ii)刺激培養後,RAW-Blue cellsを回収しマイトマイシンC処理した。iii)C3Hマウスから脾細胞を採取し、ナイロンファイバーカラムを用いてT細胞を分離した。iv)T細胞 1×105 cellsに対して、各条件で培養したRAW-Blue cellsをそれぞれ一定の細胞比になるよう調製した。v)96wellプレートで混合培養した。vi)5日後、CellTiter96を用いてT細胞の増殖性を測定した。結果 図14にβヘマチンの投与量に対するT細胞の増殖を示す。また、図15にβヘマチンとCpGのT細胞増殖に対する効果を示す。図14及び図15の結果は、リンパ球混合反応により、単球由来の細胞株であるRAW-Blue cellsがβヘマチンによって活性化されたことを示唆する。実施例7 βヘマチンの抗腫瘍ワクチンアジュバントとしての効果の評価 ICRマウスにsarcorma180(S180)を皮下接種した胆癌マウスモデルを使用し、βヘマチンを接種した。免疫終了後、脾細胞のS180(抗原)に対する細胞障害活性及び脾細胞の抗原特異的な増殖性について測定した。方法 以下の各群(3匹/群)のワクチンを週1回、計3回腹腔内投与した。群1:ワクチン未投与(コントロール)群2:S180のlysate+Alum(βヘマチン-)群3:S180のlysate+βヘマチン(0.1mMを0.5mL)+Alum(βヘマチン+) この際、Alumは40mg/mLの濃度で使用した。 S180のlysateは凍結融解を3回繰り返し、ソニケーションしたサンプルをワクチン接種量10μL中106cellsとなるよう調製した。 免疫終了後、培養3日目に増殖性、5日目にS180に対する細胞障害活性について測定した。増殖性の測定方法:96wellプレートに、採取したマウスの脾細胞をS180の存在下で培養した。3日間培養後、細胞の増殖性をcelltiter96を用いて吸光度にて測定した。細胞障害性の測定方法:96wellプレートに、採取したマウスの脾細胞をS180の存在下で培養した。S180抗原で再刺激後、cytotoxを用いて吸光度を測定した。結果 いずれのワクチン群についても皮下接種したS180に対する縮小効果、細胞障害活性の有意な上昇は認められなかったがβヘマチン含有ワクチン投与群のリンパ球(脾細胞)では、抗原に対する高い増殖性を示す傾向が認められた(図16)。実施例8 βヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果の評価マウスを用いたβヘマチンの粘膜アジュバントとしての効果の確認(血清中IgG1及びIgG2a並びに気管支及び腸管洗浄液中IgAの測定)方法 自社分離Staphylococcus aureus No.39株をホルマリンで不活化した全菌体を抗原とし、生後5週齢のbalb/cマウス(♀)に投与した。抗原量は1×109 CFUとした。ワクチン投与量は10μLとした。βヘマチンは、ワクチン投与量10μLに対して20μM、100μM及び500μMに調整したものを用いた。 マウスを以下の(a)〜(d)の投与群に分けた(3匹/群)。 (a)抗原 (SA)+Alum (b)SA+Alum+βヘマチン(20μM) (c)SA+Alum+βヘマチン(100μM) (d)SA+Alum+βヘマチン(500μM) この際、Alumは40mg/mLの濃度で使用した。 免疫は経鼻投与により3回行った。サンプルとして3回目免疫の1週間後に血清、気管支洗浄液及び腸管洗浄液を回収した。血清中のSA特異的IgG1及びIgG2並びに気管支洗浄液中及び腸管洗浄液中のIgA(BALF IgA)をELISAで測定した。 気管支洗浄液は以下の方法で回収した。1.露出させた気管に外筒付きの注射針を挿入し、内筒を引き抜き外筒のみを気管内に残した。2.糸で気管ごと縛り固定した後、シリンジを取り付けた。3.PBS600μLで気管支内を2〜3回洗浄。約500μLのBALFを回収した。 ELISAは以下の方法で行った。 マイクロタイタープレートに抗原(50μg/well)を固相化し、block-aceを用いてブロッキング(37℃で1.5時間)した。マイクロタイタープレートのウェルに段階希釈したサンプルを添加し反応させた後、HRP標識2次抗体を添加し反応させて(anti-IgG1は×400,anti-IgG2aは×50,anti-IgAは×10で使用)発色させた。 図17に3回目免疫1週間後の血清IgG1濃度を、図18に3回目免疫1週間後の血清IgG2a濃度を、図19中に免疫1週間後の気管支洗浄液中IgA(BALF IgA)濃度を、図20に免疫1週間後の腸管洗浄液中IgA(intestinal IgA)濃度を示す。 図に示すように、βヘマチン投与群において、血清中IgG1並びに気管支及び腸管中IgAの誘導が認められた。 本発明のワクチンアジュバント組成物及びワクチン組成物は、医学、獣医学の分野でヒトを含む動物のアレルギー疾患及び感染症の予防、治療に用いることができる。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 ヘモゾイン若しくはβヘマチン並びにアラムアジュバントを含む、アレルゲンワクチンと併用する、IgG2抗体又はIgG2a抗体の産生を上昇させる、ワクチンアジュバント組成物。 Th1免疫反応を誘導する、請求項1記載のワクチンアジュバント組成物。 5μM〜2mMのヘモゾイン又はβヘマチンを含む、請求項1又は2に記載のワクチンアジュバント組成物。 粘膜ワクチンアジュバントである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワクチンアジュバント組成物。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチンアジュバント組成物及びアレルゲンワクチンを含むワクチン組成物。 粘膜ワクチンである、請求項5記載のワクチン組成物。 アレルゲンが、花粉アレルゲン又はダニアレルゲンである、請求項5又は6に記載のワクチン組成物。