タイトル: | 公表特許公報(A)_TH2媒介炎症症状治療のためのTSLPワクチン |
出願番号: | 2009538366 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 39/00,A61P 37/08,A61P 17/02,A61P 11/06,C12N 15/09 |
ヘルマン、ラース JP 2010510986 公表特許公報(A) 20100408 2009538366 20071126 TH2媒介炎症症状治療のためのTSLPワクチン セラヴァック ファーマスウティカルズ エイ ビー 509138280 THERAVAC PHARMACEUTICALS AB 浜本 忠 100073818 佐藤 嘉明 100096448 ヘルマン、ラース SE 0602550-6 20061128 A61K 39/00 20060101AFI20100312BHJP A61P 37/08 20060101ALI20100312BHJP A61P 17/02 20060101ALI20100312BHJP A61P 11/06 20060101ALI20100312BHJP C12N 15/09 20060101ALN20100312BHJP JPA61K39/00 HA61P37/08A61P17/02A61P11/06C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW SE2007001037 20071126 WO2008066444 20080605 12 20090518 4B024 4C085 4B024AA01 4B024BA56 4B024CA04 4C085AA03 4C085BB17 4C085DD23 4C085DD62 4C085EE01 4C085EE06 本発明は、サイトカインTSLP(胸腺ストローマリンフォポイエチン)をターゲットとすることによる、TH2媒介炎症症状の緩和方法、あるいは該炎症の誘発抑制方法に関する。本発明は、概して哺乳動物に用いられるワクチンに関するものであるが、本発明の好ましい実施態様は、ヒト、犬、猫、または馬に用いられるワクチンに関する。以下において、ヒト、猫、馬、あるいは犬用ワクチンに言及しながら本発明について概括的に説明する。 過去数10年間において、免疫系機能不全によって生ずる数種疾患が現代医療における主要な課題となっている。このような疾患の一つとしてアレルギー疾患がある。ヒトにおけるアレルギーは過去20〜30年間においては殆ど流行病的であり、中でも著しい疾患はアトピーあるいは免疫グロブリン(IgE)媒介アレルギーである。アレルギーは、犬、猫、馬などの多くの飼育動物にとっても同様に重大な疾患である。しかしながら、これら飼育動物に関し、IgEの関与に関する報告はあまり為されていない。ヒトの場合における一般的なアトピー性アレルギーとしては、毛皮アレルギー、枯草熱、ホコリダニアレルギー、昆虫毒アレルギー、外因性喘息、及び多種に亘る食品アレルギーがある。さらに、飼育動物の多くは同種のアレルゲンを原因としてアレルギーを起こしている。全人類人口のほぼ30%がアレルギーを患っていると推定されている。 アレルギー疾患は免疫系の機能不全によって発症される。種々病原体に対する正常な免疫反応を調節する数種のサイトカインは、アレルギー疾患の過程においても直接関与していると考えられる。サイトカイン、あるいはヒトの免疫系の調節に重要な働きをもつ成長及び分化因子は、疾患介入の潜在的ターゲットとされるものである。 動物薬分野における特に困難な問題の一つとして犬の重篤なアトピー性皮膚炎がある。獣医を訪ねる飼い主のほぼ50%は主としてこのようなアトピー性皮膚炎を原因とする皮膚病を抱えた者である。他方ヒトの場合、医療的に特に困難とされる病状は重篤な喘息である。極めて重篤なケースにおいては、既存のいかなる治療法によっても十分な臨床効果は得られない。犬の場合、重篤なアトピー性皮膚炎に罹患した状況においては、多くの犬は殺されざるを得ない。ここに一つのまだ対処されていない医学的な大きなニーズがある。 本発明者らは、数年間に亘って、ヒト及び飼育動物におけるIgE媒介アレルギーに対して可能な治療方法、及びIgEに対するワクチン接種(注射)について研究してきた(文献1〜5参照)。しかしながら、犬のようにIgEレベルが例外的に高い場合には、この治療方法には明らかな限界があった(文献6参照)。このような限界は主として高濃度の循環性IgEによって引き起こされる強い耐薬性作用によるものである。さらに、大量のターゲット分子が除去されなければならない場合には、良好な臨床効果を得ることは困難である。それゆえ、犬の場合においては、IgEに対するワクチン接種によって我々の目標を達成することはほぼ不可能であることが分かった(文献6)。そこで新たな革新的方法の開発が必要とされる。本発明では、上記問題に対する一つの可能な解決策、すなわちヒトの免疫性を調節する重要なサイトカインの一種である胸腺ストローマリンフォポイエチン(TSLP)に対するワクチン接種(注射)を提供する。 TSLP(胸腺ストローマリンフォポイエチン)はアレルギー炎症のマスタースイッチとなることが説明されている(文献7)。TSLPは、ヒトにおいて、主として上皮細胞及びマスト細胞によって生成されるIL−7様サイトカインである。このサイトカインはmDCを刺激し、投薬処理を受けたことのないCD4+細胞のTH2型エフェクター細胞への分化を促進する[文献7参照]。これらTH2細胞によってアレルギー助長サイトカインIL−4、IL−5、IL−13及びTNF−αが生成されるが、IL−10及びIFN−γは生成されない(文献8)。最近では、TSLPによって活性化されたDCがTH2感作だけでなく、アレルギー疾患におけるTH2中枢記憶細胞の維持及び分極化にも重要な役割を果たしていることが見出されている(文献9)。アトピー性皮膚炎の病変部分中の角化細胞によって高レベルのTSLPが発現されること、及びこの角化細胞がアトピー性皮膚炎進行中における主要サイトカインであることが示されている(文献8)。皮膚中に過剰のTSLPを発現するように遺伝子操作されたマウスもアトピー性皮膚炎を発症し、このマウスでは循環型TH2細胞の劇的な増加と血清IgEの上昇が起こる(文献10)。しかしながら、TSLPは末梢組織だけではなく、ヒト胸腺中のハッサル小体によっても発現される。この場合において、TSLPは胸腺DCの命令に関与して高親和性自己反応型T細胞をCD4+CD25+FoxP3+調節T細胞へと変換させる。そのレセプターに関し、異種二量体TSLPレセプターは骨髄樹状細胞(mDC)のみによって排他的に発現されるようである。 TSLPはTH2媒介炎症症状の主要調節因子の一つであるとみられ、そのため治療介入にとって極めて重要なターゲットとなる可能性がある(文献11)。以下に、TSLPをターゲットとすることにより過剰なTH2媒介炎症症状を緩和することを目的としたワクチン接種方法(注射)について説明する。このワクチン接種方法は、ヒトにおける重篤な喘息の治療と、犬のアトピー性皮膚炎の治療において新たな重要ステップとなり得るものである。 これまでに、ヒトTSLPの活性をブロックするモノクローナル抗体及び水溶性レセプターの利用について記載した特許出願が為されている。これらTSLPをターゲットとする治療方法は、患者の余命の全期間に亘って2〜4週間ごとに高度に精製された組換え型タンパク質を注射することに依存するものである。本願記載のワクチンの場合、組換え型タンパク質の注射に対する依存度が従来技術よりもかなり少なっている点、おそらくモノクローナルあるいは水溶性レセプターを用いた治療に必要とされる量に比べて10,000倍程度まで少なくなっている点において大幅に改善されている。このワクチンは殆どの場合1年間に1〜4回投与を受けるだけで良いが、それに対して上述したモノクローナルあるいは水溶性レセプターの場合はもっと頻繁に投与を受ける必要がある。ヒト以外の霊長類のシーケンスを用いることによりヒトにおいて生ずるワクチン免疫力が増大する可能性もある。ワクチン以外の治療方法を行う場合には、注射された組換え型タンパク質の効果を大きく減ずるタンパク質に対する免疫反応が引き出されないように、変化の加えられていないTSLP(ヒトタンパク質)が用いられるべきである。Hellman L. 「新アレルギーワクチン処理後におけるアレルゲン感受性の低下」, Eur J Immunol 1994; 24(2): 415-20.Hellman L. 「IgEに対するワクチンは可能か?」, Adv Exp Med Biol 1996; 409: 337-42.Hellman L, Carlsson M. 「アレルギーワクチン、開発のレビュー」、Clin Immunotherapeutics 1996; 6(2): 130-42.Hellman L. 「アレルギーに対するワクチン」、In: Perlmann P, Wigzell H編、Handbook of Experimental Pharmacology, Vol 133, Vaccines. 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