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タイトル:特許公報(B2)_Fc受容体遺伝子導入NK細胞を用いた抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法
出願番号:2009534209
年次:2013
IPC分類:C12Q 1/02,G01N 33/53,G01N 33/536,C12N 5/10,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

杉村 夏彦 三嶋 雄二 畠 清彦 JP 5282040 特許公報(B2) 20130531 2009534209 20080509 Fc受容体遺伝子導入NK細胞を用いた抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法 オリンパス株式会社 000000376 公益財団法人がん研究会 000173588 棚井 澄雄 100106909 志賀 正武 100064908 鈴木 三義 100094400 高柴 忠夫 100086379 増井 裕士 100129403 杉村 夏彦 三嶋 雄二 畠 清彦 JP 2007254099 20070928 20130904 C12Q 1/02 20060101AFI20130815BHJP G01N 33/53 20060101ALI20130815BHJP G01N 33/536 20060101ALI20130815BHJP C12N 5/10 20060101ALN20130815BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130815BHJP JPC12Q1/02G01N33/53 YG01N33/536 DC12N5/00 102C12N15/00 A C12Q 1/00−1/70 G01N 33/48−33/98 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN) WPI 米国特許出願公開第2006/0292156(US,A1) 特開2004−147565(JP,A) 特開2007−053926(JP,A) 特表2006−526390(JP,A) 特表2005−500836(JP,A) 三嶋雄二他,Establishment of reproducible ADCC assay system.,第66回日本癌学会学術総会記事,2007年 8月25日,第340頁 P−750 Journal of Immunological Method, 2001, Vol.252, pp.83-92 Suck G. et al.,KHYG-1, a model for the study of enhanced natural killer cell cytotoxicity.,Experimental Hematology,2005年,33(10),p.1160-1171 三嶋雄二,抗体医薬の補体依存性,抗体依存性殺細胞効果,Pharma Medica,2007年 3月10日,25(3),p.9-13 Liao F. et al.,Cross-linking of FcγRIIIA on natural killer cells results in tyrosine phosphorylation of PLC-γ1 an,The Journal of Immunology,1993年,150(7),p.2668-2674 5 JP2008058670 20080509 WO2009041113 20090402 11 20110301 伊藤 佑一 本発明は、Fc受容体遺伝子を導入したNK細胞、その作製方法、及びこれを用いた抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法に関する。 抗体には、高い結合活性、結合特異性、及び血中での安定性が備わっている。そのため、これらの特徴を生かしてヒトの各種疾患の診断・予防・治療へ応用することが可能である。中でも遺伝子組み替え技術を利用したキメラ抗体やヒト化抗体の中には、目覚しい治療効果があがっているものもあり、これらの抗体を利用する抗体医薬の研究・開発が近年注目されている。 抗体医薬の作用機序としては、シグナリングによる増殖抑制やアポトーシス誘導、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)等が挙げられる。この中のADCCとは、抗体が結合した標的細胞(癌細胞等)に対して、当該抗体を介してエフェクタ細胞(NK細胞、単球等)が作用し、標的細胞を貪食やパーフォリンやグランザイムBなどで攻撃することによって、当該標的細胞を破壊する現象である。このADCCを利用したアッセイにおいて使われるエフェクタ細胞は、通常、健常人ボランティア又は被験者から採取したものである(非特許文献1等)。 上述のようにADCCアッセイ用のエフェクタ細胞は、健常人ボランティア又は被験者からの末梢血採血により入手することができる。しかしながらこの場合、末梢血を採取した後に単核球フラクションを分離するために比重遠心を行い、更にそのフラクションからエフェクタ細胞のみを選別するために、エフェクタ細胞表面に発現している特定の表面抗原に対する抗体を固定した磁気ビーズを利用した分離を行う等の、煩雑で時間の要する精製工程を経る必要がある。 このように入手に手間のかかるエフェクタ細胞はそもそも、その活性において提供者毎に大きく異なっており、たとえ同一人から採取したものであっても、採取時期によりその活性に差異が存在していることも多い。また、提供者からの採血量そのものに限界があるため、分離されるエフェクタ細胞の量も、当然に少量となるという本質的な問題が存在している。 斯かる事情に鑑みて、本願発明は、ADCCアッセイに用いることが可能な均質なエフェクタ細胞を大量に調製し、これを当該アッセイに使用することを目的とし、下記のような構成をとる。即ち、本発明の抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法は、(a)標的細胞に、これを認識するヒト抗体、ヒト化抗体、及びヒトキメラ抗体からなる群より選択される抗体を接触する工程;(b)細胞表面にヒトFc受容体を発現したNK細胞由来細胞株を、前記抗体に接触する工程;(c)前記標的細胞に細胞傷害が生じているか否かを検出する工程;を含み、前記抗体が蛍光標識されており、前記工程(c)を、標的細胞またはエフェクタ細胞の少なくとも一方を蛍光標識して、蛍光顕微鏡を用いた観察において両細胞を識別して観察・カウントすることにより行う。 前記アッセイ方法においては、前記Fc受容体が、Fc−γ受容体であることが好ましく、Fc−γIIIa(CD16)によりコードされるものであり、その158番目のアミノ酸残基がバリンであるか(158V)、又はフェニルアラニンである(158F)ことがより好ましい。 また、前記アッセイ方法においては、前記NK細胞由来細胞株が、KHYG−1であることが好ましい。 また、前記アッセイ方法においては、前記工程(a)における前記標的細胞、及び前記抗体が、Bリンパ腫患者のリンパ腫組織由来の細胞及びリツキシマブ(CD20キメラモノクローナル抗体);乳がん患者のHer2陽性細胞及びトラスツマブ;又はEGFR陽性細胞及びセツキシマブであることが好ましい。 本発明は上記構成をとるため、下記の効果を発揮することができる。即ち、・健常人ボランティアや被験者からの末梢血の採血に依存することなく、アッセイに用いることが可能なエフェクタ細胞を大量に調製することが可能である;・細胞株の培養物を用いてアッセイを行うことができるため、煩雑で時間のかかるエフェクタ細胞精製工程を経る必要がない;・株化した細胞を大量に調製することができるため、エフェクタ細胞の活性を均一とすることができ、アッセイを安定して行うことが可能である。この図は、実施例1の結果を示すものである。 本発明の細胞株は、細胞表面にヒトFc受容体を発現した、NK細胞由来細胞株であるが、具体的には当該Fc受容体はFc-γ受容体である。当該Fc-γ受容体は、具体的にはFc-γIIIa(CD16)によりコードされるものであり、その158番目のアミノ酸残基がバリンであるか(158V)、又はフェニルアラニンである(158F)。より具体的には当該細胞株は、本発明のFc受容体発現-NK細胞由来細胞株の作製方法により、KHYG-1を使って作製される細胞株である。 以下、本発明の、Fc受容体発現-NK細胞由来細胞株の作製方法について説明する。 本発明のFc受容体発現-NK細胞由来細胞株は、 (i)ヒトFc受容体をコードする遺伝子を組み込んだ組換えベクタを調製する工程; (ii)上記工程(i)により調製した組換えベクタでNK細胞由来細胞株を形質転換する工程;及び (iii)形質転換済細胞株を培養し、細胞表面におけるFc受容体の発現の有無に基づき、Fc受容体を発現した細胞株を選択・分離する工程;を含む方法により作製することができる。 まず、工程(i)においては、ヒトFc受容体をコードする遺伝子を組換えベクタに組み込んだものを調製する。ここでヒトFc受容体としてはそのcDNA配列がデータベース(例:NCBI(National Center for Biotechnology Information))に報告されているものを用いることができ、具体的にはヒトFc-γ受容体を挙げることができる。このヒトFc-γ受容体には、異なるADCC活性と関連付けられた多型が存在しており(非特許文献3)、これらをそれぞれコードする遺伝子を利用することができる。この多型は、Fc-γ受容体の158番目のアミノ酸残基がバリンである158Vと、フェニルアラニンである158Fとからなる。 例えばヒト末梢血から分離した単球フラクションより抽出したmRNAをもとに、市販の逆転写酵素を利用してcDNAを調製しておき、Fc受容体についての既知のcDNA配列情報に基づきプライマを設計し、これらをPCRにかけて全長ヒトFc受容体遺伝子をコードするDNAの調製を行う。工程(i)のこの部分については、市販のRT-PCRキット等を使って行うことができる。尚、ヒトFc-γ受容体の多型のそれぞれについてのDNAを調製する方法については、下記の調製例に記載する。 工程(i)における組換えベクタとしては、当該技術分野において知られるものを使用することができる。当該ベクタはゲノムに確実にインジェクションでき、細胞内においてヒトFc受容体遺伝子を安定して発現することができるよう、細胞のゲノムに組み込まれるタイプのものを使用することが好ましい。好ましくは組換えレトロウイルスベクタを挙げることができる。以下においては組換えレトロウイルスベクタを利用する場合に則して説明する。なお、本発明の実施にあたっては、組換え(ウイルス)ベクタの代わりに、エレクトロポレーションやリポフェクションなどの他の形質転換方法による遺伝子の直接的導入方法を採用することも可能である。 上述のように調製したヒトFc受容体遺伝子のDNAを、組換えウイルスベクタに導入する。ウイルスベクタへの遺伝子導入に当たっては、まず、ウイルスベクタ作製用のプラスミドベクタ(例:Takara社製、pDON-AI)に当該遺伝子を導入したものを調製する。より具体的には、当該プラスミドベクタの導入部位と共通する制限酵素認識配列を、Fc受容体遺伝子のコード領域の上流と下流をそれぞれ認識するプライマに入れておき、当該制限酵素でそれぞれ消化したFc受容体遺伝子とプラスミドベクタを連結してからこれを増幅させ、ついで、この増幅したプラスミドベクタを市販のレトロウイルスパッケージングキット等(例:Takara社製、Retrovirus Packaging Kit)とともに利用することにより、遺伝子が発現するよう構成された組換えレトロウイルスを調製することができる。 次に、上記工程(i)により調製したウイルスベクタをNK細胞由来細胞株にインフェクションする、工程(ii)を行う。継代培養が可能な細胞株として樹立されているNK細胞には種々のものがあるが、例えば細胞傷害活性が高いことが非特許文献2に報告され、入手が可能であるKHYG-1株を利用することができる。このKHTG-1株は、NK細胞由来の細胞株であり、培養により大量に調製することが可能であるが、ADCCに必要なヒトFc受容体の発現が停止してしまっている。そこで本発明の方法により、ADCCアッセイに利用可能な細胞株を作製する。本発明で使用するNK細胞由来細胞株としては上記のKHYG-1が好ましいが、これ以外のNK細胞由来細胞株も使用することができる。具体的には、NK−92、YT等を挙げることができる。 本発明においては、このような細胞株以外にも、ADCC能とFc受容体とを持つ、ヒト由来のNK細胞、単核球、マクロファージを人工的に不死化し、これを株化したものも用いることができる。また、これらの細胞について細胞腫が入手できる場合には、それを利用することも可能である。 次に、インフェクション済細胞株を培養し、細胞表面におけるFc受容体の発現の有無に基づき、Fc受容体を発現した細胞株を選択・分離する工程(iii)を行う。インフェクション済細胞株の培養は、選択したNK細胞由来細胞株の増殖、維持に適した培養液で行う。また、Fc受容体の発現の有無に基づく細胞株の選択・分離は、例えば当該Fc受容体を認識する抗Fc受容体抗体を固定化した磁気ビーズを使った方法により行うことができる。 また、例えば、限界希釈法やメチルセルロースによる検鏡下で細胞株のクローニングを行なったものを更に培養して、これをエフェクタ細胞として用いることも可能である。 上記のように調製した本発明のFc受容体発現-NK細胞由来細胞株は、抗体依存性細胞傷害のアッセイに有効に利用することができる。即ち本発明の抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法は、(a)標的細胞に、これを認識するヒト抗体、ヒト化抗体、及びヒトキメラ抗体からなる群より選択される抗体を接触する工程;(b)上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の細胞株を、前記抗体に接触する工程;(c)前記標的細胞に細胞傷害が生じているか否かを検出する工程;を含むものである。 本アッセイ方法において使用する標的細胞としては、抗体医薬による治療を行おうとしている患者に由来する細胞、具体的には、患者の患部から外科的方法により採取したものや、白血化した細胞を対象とする場合には末梢血からの採血により採取したものを挙げることができる。これに併せて、適宜、陽性対照及び/又は陰性対照となる細胞を準備することが望ましい。 本アッセイにおいて使用する標的細胞の具体例としては、CD20陽性細胞、B細胞性リンパ腫、より具体的には前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ細胞性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾片縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫瘍、節外製濾胞辺縁帯B細胞リンパ腫、節製濾胞辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫などの疾患を有する患者より採取したリンパ腫組織由来の細胞を挙げることができる。 本アッセイの工程(a)において使用することが可能な抗体は、標的細胞表面の抗原を認識することが可能な抗体であり、抗体医薬として患者に投与することを予定しているものが好ましい。具体例としては、B細胞性リンパ腫に対するリツキシマブや、イブリツモマブ、乳がんHer2陽性細胞に対するトラスツマブ、EGFR陽性細胞に対するセツキシマブ等が挙げられる。 工程(a)においては、標的細胞に上記抗体を接触して両者を結合させる。この段階で結合がうまく生じない場合には、接触する条件を変更することが考えられるが、それでも結合が生じない場合、当該抗体は当該標的細胞を採取した患者の治療に向かないことを示唆する。したがって、本発明のアッセイ方法は、抗体医薬の治療有効性評価に効果的に用いることが可能である。 次に、本発明のFc受容体発現-NK細胞由来細胞株の何れかを、上記工程(a)を終了した抗体-標的細胞の組み合わせに接触させる工程(b)を行う。工程(a)において標的細胞と抗体との結合が生じている場合、当該細胞株はその表面に発現しているFc受容体を介して当該抗体に結合する。そしてこの結合に依存して、ADCCが生じて細胞傷害が発生する。工程(b)にかける時間は、ADCCが十分に発生する時間とするため、通常は、1〜48時間の範囲とすることができる。より好ましくは2〜12時間である。 工程(b)において十分な時間培養した後、ADCCが発生したか否かを検出する工程(c)を行う。この工程において使用することができる手法としては、当該技術分野で知られるものであって、ADCCアッセイに使用することが可能なものを挙げることができる。具体的には、顕微鏡観察法、乳糖脱水素酵素(LDH)法、フローサイトメトリー法、比色法、蛍光法、Cr法等の、生細胞と死細胞とを有意に識別する手法である。 顕微鏡観察法を採用する場合、死細胞が標的細胞であるかエフェクタ細胞であるかを区別するため、標的細胞若しくはエフェクタ細胞のいずれか、又は両方を標識してそれぞれを蛍光顕微鏡等を用いた観察において識別できるように処理しておくことが望ましい。具体的にはNK細胞マーカとしてよく利用されている抗CD56抗体を利用してエフェクタ細胞を標識し、標的細胞がCD56陰性であることを前提とすること等が望ましい。 他には、PKH(シグマ社製)、DiO C6(インビトロジェン社製)、Carboxyfluorescein Diacetate Succinimidyl ester(CFDA)(インビトロジェン社製)など、細胞膜染色蛍光試薬によって標的細胞若しくはエフェクタ細胞、又はその両方を接触させる前に染色しておく方法も可能である。更には標的細胞に特有の表面抗原を染色するか、又は標的細胞に接触させる抗体そのものを蛍光標識しておいて使用する方法も可能である。 このように標識(染色)を行うことで、観察・カウントされる生細胞、死細胞の数から、エフェクタ細胞の数を差し引くことが容易になり、アッセイ結果の正確性を向上させることが可能である。 工程(c)においてフローサイトメトリー法を採用する場合、上記顕微鏡観察法の欄に記載したように、標的細胞若しくはエフェクタ細胞のいずれか、又は両方を標識しておき、これをフローサイトメータ(FCM)にかけて測定することができる。また、工程(c)においてLDH法を採用する場合、例えばPromega社製のCytoTox−ONE(登録商標)を用いて検出を行うことが可能である。 本発明のアッセイ方法は、特に抗体医薬の投与を予定している疾患、例えば癌、腫瘍に当該医薬が十分に効果を発揮するか否かを確認することを目的とした場合などに有効に用いることができる。本方法において使用できる標的細胞と抗体との組合せは、このような目的に添ったものであれば特に限定されないが、標的細胞としてはCD20陽性細胞、B細胞性リンパ腫、より具体的には前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ細胞性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾片縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫瘍、節外製濾胞辺縁帯B細胞リンパ腫、節製濾胞辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫などの疾患を有する患者より採取したリンパ腫組織由来の細胞を挙げることができる。一方の抗体は、これらの腫瘍に特異的に発現している抗原を認識することができる抗体を挙げることができる。 組合せの具体例としては、B細胞性リンパ腫に対するリツキシマブや、イブリツモマブ、乳がんに対するトラスツマブ(抗Her2抗体医薬)、EGFR陽性細胞(適応は大腸がん)に対するセツキシマブ等が挙げられる。 以下においては、Fc-γ受容体遺伝子を発現するウイルスベクタの作製、及びこれを利用したFc-γ受容体遺伝子発現-NK細胞由来細胞株の調製について、具体的な調製例、実施例を挙げて説明する。(調製例)Fc-γ受容体多型遺伝子のクローニング 健常人ボランティアから末梢血を採血し、ヒストパックを用いて末梢血から単球を分離した。市販のRNA抽出キット(キアゲン社製RNAeasy micro等)を使用して単球からRNAを抽出した。市販の逆転写酵素(Takara社製M-MLV RTase)を使用して、前記抽出済みのRNAからcDNAを合成した。逆転写反応の際のプライマとしては、ランダム6merを利用した。 Fc-γ受容体の多型(158V及び158F)をそれぞれ独立にクローニングするため、当該受容体遺伝子の多型部分を挟んだ5’側領域と、3’側領域とをそれぞれ別個に第1のPCRで増幅し、各増幅物の混合物を、当該多型部分でアニーリングしたものを鋳型として第2のPCR増幅を行った。第1のPCRにおいては、配列番号1乃至6のプライマを使用した。第2のPCRは、アニーリングした多型部分をプライマとして機能させた。配列番号1はFc-γ受容体遺伝子のフォワードプライマであって、その5’末端側にBamHI認識配列を持つものである。配列番号2はFc受容体遺伝子のリバースプライマであって、その5’末端にNotI認識配列を持つものである。配列番号3は158Fの多型部分をフォワードプライマである。配列番号4は158Fのリバースプライマである。配列番号5は158Vのフォワードプライマである。配列番号6は158Vのリバースプライマである。 配列番号1と配列番号4のプライマの組合せ、及び配列番号2と配列番号3のプライマの組み合わせにより、158Fの5’領域と3’領域とを第1のPCRで増幅した。配列番号1と配列番号6のプライマの組合せ、及び配列番号2と配列番号5のプライマの組合せにより158Vの5’領域と3’領域とを第1のPCRで増幅した。増幅産物をそれぞれゲル電気泳動により分離し、ゲルの切り出しによりDNAを抽出、精製した。 ついで、158Fの5’領域の増幅産物と、3’領域の増幅産物とを混合してアニーリングし、第2のPCRを行い、877bpのFc-γ(158F)を調製した。一方、158Vの5’領域の増幅産物と、3’領域の増幅産物とを混合してアニーリングし、第2のPCRを行い、877bpのFc-γ(158V)も調製した。そしてこの調製物をゲル電気泳動により分離し、ゲルの切り出しによりFc-γ受容体をコードする二つの多型DNA片を調製した。 調製した多型DNA片のそれぞれを、BamHIで消化した。当該DNA片の3’末端は、制限酵素消化を行うことなく、平滑末端とした。適宜制限酵素処理したこのDNA片のそれぞれを、BamHI、及びHpnIで処理したベクタ、pDON-AI(Takara社製)に連結した。このベクタをコンピテント大腸菌にトランスフェクションし、アンピシリンを含有したプレートでベクタを含有した大腸菌株を培養した。 この大腸菌から、Fc-γ受容体遺伝子を導入したpDON-AIを、市販のレトロウイルスパッケージングキット(Takara社製 Retrovirus Packaging Kit)を使用して組換えレトロウイルス構築に用いた。具体的にはキット内に提供される、gag及びpolをコードするプラスミド、並びにenvをコードするプラスミドと共に、G3T−hi細胞へコ・トランスフェクションし、当該細胞を培養して組換えウイルス粒子を産生させた。 (乳酸脱水素酵素法を利用したADCCアッセイ) 方法: 標的細胞にはバーキットリンパ腫(CD20陽性リンパ腫)細胞株であるRaji細胞を、抗体にはリツキシマブ(抗CD20マウス-ヒトキメラ抗体)を、エフェクタ細胞としてはFc-γ受容体IIIa遺伝子(158V及び158F)を導入したKHYG-1細胞株を利用して実験を行った。 Raji細胞は、10%FCS及び20ng/mlのIL-2を含有するRPMI培地で培養し、1.25×106細胞/mlの濃度で96穴プレートの1ウェル当たり40μlで使用した。エフェクタ細胞も同様の条件で培養及び使用を行った。リツキシマブ(中外製薬社製リツキサン、10mg/ml)は、10%FCS及び20ng/mlのIL-2を含有するRPMI培地で5×濃度で調製し(最終濃度は、0ng/ml又は1μg/ml)、96穴プレートの1ウェル当たり20μlで使用した。エフェクタ細胞:標的細胞の比率を0:1〜1:1の間で4段階とし、エフェクタ細胞の作用時間を4時間とし、37℃、5%CO2インキュベータ内で静置した。測定は、Promega社製キット、CytoTox-ONE(登録商標)を使い、キットに付属の説明書に添って行った。測定結果を図1に示す。図1中Mockは、Fc-γ受容体を導入していないNK細胞腫由来細胞株KHYG-1を利用したときの結果を表す。FcγRIIIa(158V)及びFcγRIIIa(158F)は、それぞれFc−γ受容体の多型(158V及び158F)をそれぞれ発現させたKHYG-1細胞株を利用したときの結果を表す。 乳酸脱水素酵素法は細胞の生死に由来する物質の細胞膜透過性を利用した方法であるが、同様の方法としてヨウ化プロピディウム等核酸染色色素による蛍光測定、トリパンブルー等による比色方法などがある。両者とも生細胞の細胞膜は透過できないため染色されないが、細胞死が誘導された後には細胞膜の透過性が高くなり、色素が容易に細胞内に浸透する。前者では、核酸が赤く蛍光を発し、後者では細胞質が青色に染色されることによって定量的に死細胞を計測することができる。 結果: 図1より明らかなとおり、158Vの方が、158FよりもADCC活性が高く、158Vを用いた場合のエフェクタ細胞:標的細胞 の比率は、0.1:1以上の場合にADCCによる効果において有意な差異が生じた。 方法及び結果: 標的細胞を1×105細胞/mlの濃度で12穴プレートを用いて培養し、ADCCの測定方法をフローサイトメトリーにより行うこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。フローサイトメトリーを使用する場合、標的細胞をカウントしているのか、エフェクタ細胞をカウントしているのかがそのままでは不明である。このため、標的細胞とエフェクタ細胞を分けてカウントできるように、エフェクタ細胞に対して、NK細胞表面に発現しているCD56を抗CD56抗体で染色した。染色は、標的細胞とエフェクタ細胞との混合培養後に細胞を遠心分離により回収し、PBSにより適宜洗浄し、氷上でFITC標識抗CD56抗体(BD Bioscience社製 カタログ#340410)に接触させ、5μg/mlのヨウ化プロピディウムを加えて15分間、インキュベートして行った。その後フローサイトメトリーで、生きている標的細胞と、死んでいる標的細胞と、エフェクタ細胞をカウントし、死んでいる標的細胞の数を標的細胞の全カウント数(生細胞+死細胞)で割って、ADCC活性を示す数値を算出した。結果は、実施例1と同様の傾向を示すものであった(図示せず)。 方法: ADCCの測定方法を顕微鏡観察法により行い、NK細胞の染色の代わりにリツキシマブをAlexa Fluor488で標識すること以外は実施例1及び2と同様にして実験を行った。 市販のリツキシマブは、濃度が薄く、また界面活性剤を含んでいるため、標識化前に、透析又は限外ろ過による濃縮精製を行った。透析には、Pierce社製製品番号66810のSlide-A-Lyzer Dialysis Cassette (Extra Strength) 10,000 MWCO 3-12ml Capacityを使用した。限外ろ過を行う場合には、リツキシマブをMicrocon YM-30(Millipore社製 #42409)に分注し、キットに添付されているプロトコールに従い25℃の条件下14,000gで12分間遠心し、リツキシマブを濃縮・精製して2mg/ml以上の濃度とした。 上記のように濃縮精製を行ったリツキシマブ1mgを、Molecular Probes Alexa Fluor 488 Protein Labeling Kit (Invitrogen社製 #A10237)の添付プロトコールに従い、Alexa Fluor 488(A488)で標識した。 ADCCの測定は、レーザー共焦点顕微鏡FV1000(オリンパス社製)にステージインキュベータ(オリンパス社製 MI-IBC)を設置し、当該ステージ上で37℃、5%CO2で培養できる環境を作成して行った。ステージインキュベータ上にグラスボトムディッシュ(松浪硝子工業社製 D110300)など)設置し、必要に応じてシリコン製のマイクロウェルを設置して培養を行った。 結果は、実施例1及び2と同様の傾向を示すものであった(図示せず)。 本発明によれば、表面にFc受容体を発現し、継代培養が可能なNK細胞由来の細胞株が得られるので、ADCCアッセイにおいて用いることができるエフェクタ細胞を、ボランティアや被験者の負担を増大することなく行うことが可能である。 (a)標的細胞に、これを認識するヒト抗体、ヒト化抗体、及びヒトキメラ抗体からなる群より選択される抗体を接触する工程;(b)細胞表面にヒトFc受容体を発現したNK細胞由来細胞株を、前記抗体に接触する工程;(c)前記標的細胞に細胞傷害が生じているか否かを検出する工程;を含み、前記抗体が蛍光標識されており、前記工程(c)を、標的細胞またはエフェクタ細胞の少なくとも一方を蛍光標識して、蛍光顕微鏡を用いた観察において両細胞を識別して観察・カウントすることにより行う、抗体依存性細胞傷害のアッセイ方法。 前記Fc受容体が、Fc−γ受容体である、請求項1に記載のアッセイ方法。 前記Fc−γ受容体が、Fc−γIIIa(CD16)によりコードされるものであり、その158番目のアミノ酸残基がバリンであるか(158V)、又はフェニルアラニンである(158F)、請求項2に記載のアッセイ方法。 前記NK細胞由来細胞株が、KHYG−1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアッセイ方法。 前記工程(a)における前記標的細胞、及び前記抗体が、Bリンパ腫患者のリンパ腫組織由来の細胞及びリツキシマブ(CD20キメラモノクローナル抗体);乳がん患者のHer2陽性細胞及びトラスツマブ;又はEGFR陽性細胞及びセツキシマブである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアッセイ方法。配列表


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