タイトル: | 特許公報(B2)_ネコタンパク尿診断薬 |
出願番号: | 2009524365 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 33/68,G01N 33/48,G01N 33/52 |
山下 哲郎 鈴田 靖幸 JP 5346289 特許公報(B2) 20130823 2009524365 20070720 ネコタンパク尿診断薬 国立大学法人岩手大学 504165591 日本全薬工業株式会社 591281220 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 山下 哲郎 鈴田 靖幸 20131120 G01N 33/68 20060101AFI20131031BHJP G01N 33/48 20060101ALI20131031BHJP G01N 33/52 20060101ALI20131031BHJP JPG01N33/68G01N33/48 AG01N33/52 B G01N 33/68 G01N 33/48 G01N 33/52 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2003−250575(JP,A) 米国特許第05558834(US,A) 米国特許出願公開第2006/0270051(US,A1) Res Vet Sci,2007年 2月,Vol.82, No.1, Page.76-79 Biosci Biotechnol Biochem,2007年,Vol.71, No.3, Page.811-816 Journal of immunology,1977年,Vol.118, No.1, Page.264-269 Anal Biochem,1993年,Vol.209, No.2, Page.258-266 J Biochem,1980年,Vol.87, No.2, Page.535-540 Comp Biochem Physiol B,2006年,Vol.145, No.3-4, Page.270-277 Chemistry & biology,2006年,Vol.13, No.10, Page.1071-1079 Biochem J,2003年,Vol.370, No.1, Page.101-110 12 JP2007064724 20070720 WO2009013839 20090129 22 20100716 三木 隆 本発明は獣医臨床におけるネコの尿検査に関し、ネコのタンパク尿を検出し、ネコの腎機能障害を診断する方法およびネコの腎機能障害の診断薬に関する。 ペットとして飼育されているネコは、高齢になると腎臓病に非常に罹りやすく、その死因の上位を占めており、ネコの腎臓病の早期診断が獣医小動物臨床の現場で重要な課題となっている。人の場合は、尿中に排泄されるタンパク質量を測定することが腎臓病の初期診断に用いられている。タンパク尿は、腎臓の異常を早期に知らせてくれる診断マーカーとして利用されている。しかしネコにおいては、健常時にも腎臓由来のタンパク質コーキシン(Cauxin)が尿中に高濃度存在しているため、市販の尿試験紙では生理的なタンパク尿(Cauxin尿)と病的なタンパク尿との識別を行うことができない。尿中コーキシンを測定することにより、ネコの腎疾患を検出する方法が報告されているが、特別の試薬を必要とする(特許文献1参照)。そのため一般に尿検査に用いられているタンパク質測定用の試験紙を用いることはできず、簡便な検査法の開発が要望されている。また、尿中コーキシン量には大きな性差があり、この点でもコーキシンの検出により腎疾患を検出するのは困難であった。特開2003−250575号公報 本発明は、尿検査に一般に用いられているタンパク質測定用試験紙を用いてコーキシンの影響を受けることなくネコの尿タンパクを検出し、ネコの腎臓病を診断する方法および診断薬の提供を目的とする。 健常なネコの尿中に分泌されているコーキシンは、分子量約70kdの糖タンパク質である。本発明者は、糖タンパク質と特異的に結合する植物種子由来のタンパク質であるレクチンとネコ尿タンパク質との結合性を解析し、レンズ豆由来レクチンとコーキシンが特異的に結合し、他の尿タンパク質との結合があまり見られないことを見出した。そこで、レンチルレクチンを結合させたゲル(レンチルレクチンセファロース)をネコ尿サンプルに加え、けん濁した後、上清液のタンパク質の分析を行った。その結果、コーキシンのみがゲルに吸着し、その他の尿タンパク質は上清液に回収された。この方法を利用することにより、ネコの尿からコーキシンのみを特異的に除去することが可能となり、腎機能の障害に由来する尿タンパク質の検出が容易になることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明の態様は以下の通りである。[1] ネコ尿からコーキシンを除去し、コーキシン除去ネコ尿検体中のタンパク質を検出することを含む、ネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[2] ネコ尿をコーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体と接触させることにより、ネコ尿からコーキシンを除去する[1]のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[3] コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を用いてネコ尿からコーキシンを除去する、[2]のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[4] コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を充填したカラムを用いてネコ尿からコーキシンを除去する[3]のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[5] レクチンがレンズマメレクチンである[2]〜[4]のいずれかのネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[6] コーキシン除去ネコ尿中のタンパク質の検出が、尿タンパク検出用の尿試験紙を用いて行われる[1]〜[5]のいずれかのネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[7] コーキシンに特異的に結合するレクチンがレンズマメレクチンである[2]〜[6]のいずれかのネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[8] コーキシンに特異的に結合するレクチンを結合させた担体がSepharose(登録商標)またはTOYOPEARL(登録商標)である[3]〜[7]のいずれかのネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。[9] [1]〜[8]のいずれかのネコの尿タンパクの検出方法により、ネコの尿タンパクを検出し、ネコが腎機能障害を有しているかどうか判定することを含む、ネコの腎機能障害の診断方法。[10] コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体および尿タンパク検出用尿試験紙を含む、ネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。[11] コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を充填したカラムおよび尿タンパク検出用尿試験紙を含む、[10]のネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。[12] コーキシンに特異的に結合するレクチンがレンズマメレクチンである[10]または[11]のネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。[13] コーキシンに特異的に結合するレクチンを結合させた担体がSepharose(登録商標)またはTOYOPEARL(登録商標)である[10]〜[12]のいずれかのネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。[14] [11]〜[13]のいずれかのネコの尿タンパク検出試薬を含むネコの腎機能障害診断薬。 図1は、ネコのタンパク尿診断キットの概略を示す図である。 図2は、レクチンブロットによる各種レクチンとコーキシンとの反応を示す図である。 図3は、LCA−コーキシンによる尿サンプルからコーキシンの除去の結果を示す図である。 図4は、ブルーチップを利用した担体カラムの作製法および使用法を示す図である。 図5は、担体カラムを通過させた尿サンプルのSDS−PAGEの結果を示す図である。 図6Aは、担体カラム(LCA−Sepharoseカラム)を通過させた尿サンプル中のタンパク質量を示す図である。 図6Bは、コントロールとして用いたSepharoseCL−6Bカラムを通過させた尿サンプル中のタンパク質量を示す図である。 図7は、トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEの結果を示す図である。 図8Aは、トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEゲルを用いてブラッドフォード定量法によりコーキシン量を定量した結果を示す図である。 図8Bは、トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEゲルを用いてデンシトメトリー定量法によりコーキシン量を定量した結果を示す図である。 図9は、架橋トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEの結果を示す図である。 図10Aは、架橋トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEゲルを用いてブラッドフォード定量法によりコーキシン量を定量した結果を示す図である。 図10Bは、架橋トヨパール担体を用いてコーキシンを除去した尿サンプルのSDS−PAGEゲルを用いてデンシトメトリー定量法によりコーキシン量を定量した結果を示す図である。 図11は、コーキシンを除去処理した尿検体および処理しない尿検体を用いて、尿試験紙(プレテスト、和光純薬)を用いて尿中タンパク量を測定した結果を示す図である。 図12は、血清を加えたネコ尿を架橋トヨパール担体に添加し通過した尿のSDS−PAGEの結果を示す図である。 図13は、血清を加えたネコ尿を架橋トヨパール担体に添加し通過した尿のBradford法による定量の結果を示す図である。 図14は、腎臓病に罹患したネコの尿を架橋トヨパール担体に添加し通過した尿のSDS−PAGEの結果を示す図である。 図15は、腎臓病に罹患したネコの尿を架橋トヨパール担体に添加し通過した尿のSDS−PAGEの結果を示す図である。 図16は、腎臓病に罹患したネコの尿を架橋トヨパール担体に添加し通過した尿のSDS−PAGEの結果を示す図である。 本発明の方法においては、ネコ尿からコーキシンを除去し、ネコ尿中の残ったタンパク質を測定することにより、ネコの腎機能障害を診断する。 本発明におけるネコとは、ネコ科に属する動物をいい、イエネコ、ピューマ、ヤマネコ等のネコ亜科に属する動物、ヒョウ、ライオン、トラ、ジャガー等のヒョウ亜科に属する動物、チータ等のチータ亜科に属する動物を含む。 ネコ尿からのコーキシンの除去は、コーキシンに特異的に結合する物質を用いて行うことができる。ここで、コーキシンに特異的に結合する物質とは、ネコ尿中に含まれるコーキシンには結合するが、ネコ尿中に存在するコーキシン以外のタンパク質、特にネコが腎機能障害に罹患した場合に、高濃度で尿中に存在するタンパク質には結合しない物質をいう。ネコ尿中に存在するコーキシン以外のタンパク質としては、アルブミン、グロブリン、β2ミクログロブリン等が挙げられる。コーキシンに特異的に結合する物質として、レクチン、抗コーキシン抗体が挙げられる。コーキシンに特異的に結合するレクチンとして、コンカナバリンA(Con A)、レンズマメレクチン(LCA)、ピーナツレクチン(PNA)、ヒマレクチン(RCA)、インゲンマメレクチン(PHA)、コムギ胚芽レクチン(WGA)、エンドウマメレクチン(PSA)、ソラマメレクチン(VFA)等が挙げられる。この中でも、コーキシンとの結合親和性の高い、レンズマメレクチン(LCA)が好ましい。また、その他にコーキシンの基質またはそのアナログ等のコーキシンに特異的に結合する化合物を挙げることができる。 抗コーキシン抗体は、ネコ尿からコーキシンを精製し動物に免疫することにより、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として容易に入手することができる。 除去は、ネコ尿をコーキシンに特異的に結合する物質と接触させ、コーキシンとコーキシンに特異的に結合する物質との複合体を除去すればよい。例えば、コーキシンに特異的に結合する物質を適当な担体に結合させ、該結合担体をカラムにつめ、ネコ尿を該カラムに通過させ、通過した尿を回収することにより、コーキシンを除去したネコ尿を得ることができる。また、コーキシンに特異的に結合する物質を結合させた担体をネコ尿に添加し、一定時間反応させた後に、遠心分離または濾過により、担体とコーキシンの複合体を除去してもよい。さらに、尿中にコーキシンに特異的に結合する物質を遊離の状態で添加し、一定時間反応させた後に、コーキシンとコーキシンに特異的に結合する物質の複合体を遠心分離により除去してもよい。コーキシンに特異的に結合する物質を結合させる担体としては、Sepharose(登録商標)、Sephadex(登録商標)、Cellulofine(登録商標)、アフィニティークロマトグラフィー用(AFCタイプ)TOYOPERAL(登録商標)等のセルロース、アガロース、デキストラン、シリカ、ビニルポリマー、合成ポリマー等の樹脂を用いることができ、公知の方法で結合させることができる。例えば、TOYOPEARL AF−Tresyl−650、TOYOPEARL AF−Carboxy−650、TOYOPEARL AF−Formyl−650、TOYOPEARL AF−Amino−650、TOYOPEARL AF−Epoxy−650、(東ソー社)を用いることができる。また各種レクチンを結合させた担体は市販されており、これらの市販のレクチン結合担体を用いてもよい。市販のものとして、例えばLCA−Sepharose(Amersham社)、レンズマメレクチン−アガロース(生化学工業社)等が挙げられる。レクチンを利用してレクチンに結合するタンパク質を分離する方法はレクチンカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーとして知られ、用いるレクチンの決定、レクチンと担体との結合、カラムの作製、レクチンカラムとタンパク質との結合条件の決定等は、例えば、「新生化学実験講座 3 糖質I 糖蛋白質(上)p.3−p.29 東京化学同人 1990年5月21日発行」の記載に従って行うことができる。 また、コーキシンに特異的に結合する物質を結合させた担体を含むカラムを用いる場合、少量のネコ尿を用いた場合でも尿タンパク質の検出が可能なように、ミニカラムを用いるのが望ましい。ミニカラムの容量は、例えば100μl〜2000μlである。例えば、ポリプロピレン等の樹脂でできた市販のマイクロピペット用チップ(ブルーチップまたはイエローチップ)の先端に脱脂綿、濾紙等を詰めさらにコーキシンに特異的に結合する物質を結合させた担体を詰め、コーキシン除去用ミニカラムを作製し、該ミニカラムにネコ尿を添加して通過した尿を回収することにより、コーキシンを除去したネコ尿を得ることができる。この際、カラムの平衡化、カラムに吸着したタンパク質の溶出には、トリスバッファー、リン酸バッファー等の緩衝液を用いればよい。 この際、ネコ尿とコーキシンに特異的に結合する物質の量比に限定はないが、ネコ尿中のコーキシンがすべて除去される量比で接触させればよい。コーキシンは健常ネコの尿中において、約0.9mg/ml、腎機能障害に罹患したネコの尿中において、約0.1mg/ml以下存在しており、本発明の方法においては、健常ネコの尿中に存在するコーキシンを90%以上、好ましくは95%以上除去するように処理する。 ネコの腎機能障害の検出のためにはコーキシンを除去したネコ尿中のタンパク質を測定すればよい。腎機能障害のマーカーとなり得るタンパク質として、例えばアルブミン、リゾチーム、ハプトグロビン等が挙げられる。 尿中タンパク質の測定は、尿タンパク質測定用の試験紙を用いて行うことができる。 尿タンパク質測定用の試験紙は、公知の市販のものを用いればよい。市販の試験紙としては和光純薬工業のプレテスト等がある。該試験紙はブロムフェノールブルー、テトラブロモフェノールブルー等のpH指示薬とクエン酸緩衝液等のpH緩衝液を染み込ませてある試験紙であり、pH指示薬のタンパク誤差によりタンパク質を検出する。 また、ブラッドフォード法、BCAタンパク質定量法、スルホサリチル酸法等により行うことができる。 ネコの場合、コーキシンを除去した尿中タンパク質濃度により、腎疾患に罹患しているか否かを診断することができる。ネコ尿中タンパク質濃度が、約100〜数百μg/ml、好ましくは約100〜約200μg/ml以上の場合、腎疾患に罹患している可能性が高い。最終的には、獣医師の総合的な判断により、腎疾患に罹患しているか否かが診断される。 本発明の方法により、ネコ尿中の腎機能障害に由来するタンパク質を検出することができ、ネコの腎機能障害を診断することができる。 また、本発明はコーキシンと特異的に結合する物質を結合させた担体もしくは該担体を充填したカラム、ならびに尿タンパク検出用試験紙を含む腎機能障害由来のネコ尿タンパクを検出する試薬またはキットを含む。さらに、該試薬を含むネコの腎機能障害診断薬または診断キットを含む。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 レクチンは糖タンパク質の糖鎖を認識して特異的に結合する活性を持つタンパク質である。コーキシンの糖鎖に対する各種レクチンの結合活性を調べた結果、レンズマメレクチン(lens culinaris lectin:以下LCAと略す)の親和性が高く、尿中のコーキシンに特異的に結合していることが明らかになった(図2)。 LCAを結合させた親和性担体であるLCA−Sepharose(Amersham)にネコ尿を加えることにより尿中のコーキシンを除去する実験を行った。100μlのLCA−Sepharoseに尿サンプルを50μl加え、転倒混和し、氷上で5分間置いた後、遠心し、上清を回収した。コントロールとして、LCAを結合していないSepharose担体を用いて、同様の実験を行った。各サンプルを非還元条件下でSDS−PAGEを行い、CBB染色し、タンパク質を検出した(図3)。 その結果、コーキシン以外の尿タンパク質(アルブミン)の量はほとんど変化しないが、コーキシンはLCA−Sepharose担体に特異的に吸着し、サンプル中から除去されることが明らかになった。 マイクロピペット用ブルーチップ利用したレクチン担体と尿との反応 図4のようにブルーチップに200μlのLCA−セファロースを充填しTBSで平衡化した後、尿300μlをアプライしカラムを通過した尿を一滴(約50μl)ずつ回収した。回収した尿は10μlを非還元条件下でSDS−PAGEに供した後ゲルをCBB染色し(図5)、ブラッドフォード法でタンパク質の定量を行った(図6)。 コントロールでは、3〜4滴目の段階で平衡化バッファーが全て尿と置き換わっている。200μlのLCAセファロースを詰めたチップには、3滴目の画分において90%以上のタンパク質が吸着していることが明らかになった。このようなミニカラムに尿を添加し、数滴後のサンプルを回収することによりコーキシンがほとんど除去された画分を得ることが可能になると考えられる。 トヨパール担体を用いたコーキシンの除去 LCAを結合させるアフィニティー担体としてTOYOPEARL AF−Tresyl 650M(TOHSOH、以下トヨパールと略す)を用いて実施例2と同様の実験を行った。トヨパールを0.1g(約400μl)計量し、LCAを15mg/ml(担体)になるように0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)2mlに溶解したものを加え、4℃で一晩転倒混和して反応させた。その後5倍量の1M NaClで担体を洗浄し、0.1M Tris−HCl+0.5M NaClにて室温で1時間ブロッキングした。回収した尿サンプルをSDS−PAGEに供し、CBB染色したゲルのイメージ画像(図7)より、画像解析プログラム(BIO−RAD、Molecular Analyst)を用いてコーキシンのバンドの定量を行った(図8Aおよび図8B)。図8Aがブラッドフォード定量法による結果、図8Bがデンシトメトリー定量法による結果を示す。その結果、コントロールの担体(LCAを加えずにブロッキング処理だけ行ったもの)と比較して、2滴目から8滴目にかけて、90〜95%のコーキシンが除去された尿サンプルが得られた。また、担体通過後の尿の全タンパク質濃度を色素結合法(BIO−RAD Quick Start Bradford Dye Reagent)によって測定したところ、タンパク質濃度がカラム通過前の25〜30%まで低下していた。この操作により一般的な尿試験紙(プレテスト:和光純薬)において判定が2段階変化する。この結果から、LCAカラムを用いる手法はネコ尿中のコーキシンの除去に有効であると考えられる。 同様の実験を2回行った。2回目の実験において、上記担体200μlを、先端を5mmカットし先端に脱脂綿を詰めたブルーチップに充填しTBS(Tris−Buffered Saline)で平衡化した。このカラムに尿500μlをアプライし、カラムを通過した尿を2滴(約60μl)ずつ8画分回収した。回収した画分はそれぞれBradford法でタンパク質の定量を行い、10μlを非還元条件下でSDS−PAGE(12%アクリルアミドゲル)に供した後ゲルをCBB染色した。脱染後、コーキシンのバンドをデンシトメトリーで定量した。コントロールとして、レクチンを加えずに0.2M Tris−HCl(pH7.4)で反応基をブロックした担体を同じチップに同量充填したものを用いた。 図9にSDS−PAGEの結果、図10AにBradfordアッセイの結果、図10Bにデンシトメトリーを用いた定量の結果を示す。Bradford法によるタンパク質定量では、TBSが全て尿と置き換わった5画分目において、Totalタンパク質の約88%、デンシトメトリーによるコーキシンのバンドの定量では約96%のコーキシンが担体に吸着されており、ネコ尿から除去できることが確認できた。 上記の方法によりコーキシンを除去処理した尿検体および処理しない尿検体を用いて、尿試験紙(プレテスト、和光純薬)を用いて尿中タンパク量を測定した。結果を図11に示す。図11に示すようにコーキシンを除去した尿検体では、発色の程度は低下していた。 上記のTOYOPEARL AF−Tresyl 650Mの代わりにTOYOPEARL AF−Formyl 650Mを用いて同様の検討を行ったところ、同様の結果が得られた。 血清タンパク質の影響 実施例3で調製したカラムを用いて、コーキシン除去における血清タンパク質の影響を解析した。健常なオス猫の尿490μlに猫の血清を10μl加えたものを担体カラムに添加し、上述の方法で、カラムを通過した尿のタンパク質の分析を行った。図12に各画分のSDS−PAGEの結果を、図13に各画分のBradford法により測定したタンパク質濃度を示す。図に示すように、高濃度の血清タンパク質が存在していても、コーキシンのみが選択的にカラムに吸着されることが判明した。 腎臓病に罹患したネコの尿を用いた測定 ほとんどコーキシンを尿中に出していない3頭の腎臓病の猫の尿500μlを用いて実施例3および4と同様の実験を行い、第5から第6溶出画分までの各画分のSDS−PAGEにより、タンパク質の溶出パターンをコントロールと比較した。図14〜図16にそれぞれのネコの尿のSDS−PAGEの結果を示す。図に示すように、3頭の尿で、それぞれ尿タンパク質のパターンは異なっているが、腎臓病の猫の尿中に見られるコーキシン以外のタンパク質のLCAカラムへの結合はほとんど見られないことが分かった。 通常の尿検査に使われているタンパク試験紙を用いたネコの尿検査では、健常尿に大量に存在するコーキシンと腎疾患(腎機能障害)由来の尿タンパク質の区別が困難であるが、本技術を用いた測定法では、後者のタンパク質のみを選択的に検出することが可能である。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 ネコ尿からコーキシンを除去し、コーキシン除去ネコ尿検体中のタンパク質を検出することを含む、ネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 ネコ尿をコーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体と接触させることにより、ネコ尿からコーキシンを除去する請求項1記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を用いてネコ尿からコーキシンを除去する、請求項2記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を充填したカラムを用いてネコ尿からコーキシンを除去する請求項3記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 レクチンがレンズマメレクチンである請求項2〜4のいずれか1項に記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 コーキシン除去ネコ尿中のタンパク質の検出が、尿タンパク検出用の尿試験紙を用いて行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 コーキシンに特異的に結合するレクチンがレンズマメレクチンである請求項2〜6のいずれか1項に記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパクの検出方法。 請求項1〜7のいずれか1項に記載のネコの尿タンパクの検出方法により、ネコの尿タンパクを検出し、ネコが腎機能障害を有しているかどうか判定することを含む、ネコの腎機能障害の診断方法。 コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体および尿タンパク検出用尿試験紙を含む、ネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。 コーキシンに特異的に結合するレクチンまたは抗コーキシン抗体を結合させた担体を充填したカラムおよび尿タンパク検出用尿試験紙を含む、請求項9記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。 コーキシンに特異的に結合するレクチンがレンズマメレクチンである請求項9または10に記載のネコの腎機能障害由来の尿タンパク検出試薬。 請求項10または11に記載のネコの尿タンパク検出試薬を含むネコの腎機能障害診断薬。