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タイトル:特許公報(B2)_新規ジウレタン化合物、その製造法およびそれを含有するアクリルゴム組成物
出願番号:2009520723
年次:2012
IPC分類:C07C 317/18,C07C 315/04,C07D 339/08,C08L 33/04,C08K 5/205,C08K 5/41


特許情報キャッシュ

伊藤 大輔 達 春美 小金 敬介 小野 秀幸 尾野上 康裕 JP 4883178 特許公報(B2) 20111216 2009520723 20090130 新規ジウレタン化合物、その製造法およびそれを含有するアクリルゴム組成物 ユニマテック株式会社 502145313 吉田 俊夫 100066005 吉田 和子 100114351 伊藤 大輔 達 春美 小金 敬介 小野 秀幸 尾野上 康裕 JP 2008019001 20080130 20120222 C07C 317/18 20060101AFI20120202BHJP C07C 315/04 20060101ALI20120202BHJP C07D 339/08 20060101ALI20120202BHJP C08L 33/04 20060101ALI20120202BHJP C08K 5/205 20060101ALI20120202BHJP C08K 5/41 20060101ALI20120202BHJP JPC07C317/18C07C315/04C07D339/08C08L33/04C08K5/205C08K5/41 C07C 317/18 C07C 315/04 C07C 269/02 C07C 269/04 C07C 271/12 C07D 339/08 C08K 5/205 C08K 5/41 C08L 33/04 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開昭53−135628(JP,A) 特開平11−255997(JP,A) 特表2001−512419(JP,A) 特開2004−177416(JP,A) 特開2004−269873(JP,A) 特開2005−017354(JP,A) 特開2006−282657(JP,A) 米国特許第3373156(US,A) Journal of Materials Chemistry,2004年,Vol.14, No.3,p.336-343 Angewandte Chemie. International Edition,2000年,Vol.39, No.19,p.3425-3428 Journal of Photopolymer Science and Technology,2000年,Vol.13, No.1,p.157-158 Journal of Photopolymer Science and Technology,1999年,Vol.12, No.2,p.315-316 Journal of Chromatography,1991年,Vol.540,p.199-206 12 JP2009051622 20090130 WO2009096545 20090806 14 20090527 福島 芳隆 本発明は、新規ジウレタン化合物、その製造法およびそれを含有するアクリルゴム組成物に関する。さらに詳しくは、架橋性基含有アクリルゴム用の新規加硫剤として用いられるジウレタン化合物、その製造法およびそれを含有するアクリルゴム組成物に関する。 カルボキシル基含有アクリルゴムは、アクリルゴムの中でも特に耐熱性、耐圧縮永久歪特性にすぐれ、かつ金属への非腐食性、環境への配慮などがなされた非ハロゲンアクリルゴムであるため、近年ホース、シール材用途等への需要が増えている。しかしながら、加硫速度に対してスコーチタイムが短く、すなわち加硫速度を速くすればスコーチタイムが短すぎ、加硫速度を遅くすればスコーチタイムは長くなるという傾向を有している。 より具体的には、加硫速度を満足し得る速さにまで高めた場合、スコーチタイムが短く、生地流れの悪化を招き、成形不良となる。加硫速度を遅くした場合には、成形時間が長くなり、コストの上昇につながる。このことは、加硫速度が速く、スコーチタイムが長いという理想からいうと、成形性に劣るということになる。 アクリルゴムの加硫成形方法としては、一般に型成形(射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等)と押出成形とが用いられており、現在は成形時の加硫速度とスコーチタイムとのバランスをとるために、下記2つの加硫系の流れがある。 (1) 脂肪族ジアミン(加硫剤)/グアニジン(加硫促進剤) (2) 芳香族ジアミン(加硫剤)/グアニジン(加硫促進剤) 主に加硫速度を優先する金型成形用途に用いられる脂肪族ジアミン加硫系は、主にスコーチタイム(t5:10分以上)を優先する押出成形用途の芳香族ジアミン加硫系よりも、加硫速度は速いがスコーチタイムが短く、一方脂肪族ジアミン加硫系よりもスコーチタイムが長い芳香族ジアミン加硫系(加硫剤としては4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、メチレンジアニリン等が用いられる)は、加硫速度が遅いといった欠点がみられる。このように、高速加硫を可能とし、かつ非スコーチを両立することができる加硫系は未だ見出されていない。 ここで、脂肪族ジアミン加硫系の加硫機構について考えてみるに、脂肪族ジアミンとしてはヘキサメチレンジアミンカーバメート(6-アミノヘキシルカルバミン酸)H3N+(CH2)6NHCOO-がカルボキシル基含有アクリルゴムや塩素基含有アクリルゴムの加硫に広く用いられており、その加硫反応はこの加硫剤化合物に熱が適用されることで、ヘキサメチレンジアミンのアミノ基の保護基が100℃付近から熱分解脱炭酸してヘキサメチレンジアミンとなり、アクリルゴム中の架橋性官能基であるカルボキシル基等と反応して、加硫反応が進行するという形をとっている。このため、スコーチタイムが短い(スコーチ安定性に劣る)という欠点を有する。また、ヘキサメチレンジアミンを炭酸塩としている理由の一つは、ヘキサメチレンジアミンは吸湿性が強くかつ気化し易いため、取扱いが困難であることによる。 なお、カルボキシル基含有アクリルゴムとしては、カルボキシル基含有エチレンアクリルゴム(デュポン社製品ベーマックG)、特定のカルボキシル基含有アクリルゴム(電気化学工業製品電化ER)等も含まれ、これらのカルボキシル基含有アクリルゴムについてもスコーチタイムが短いという問題がみられる。 なお、下記特許文献中には、加硫速度が速く、スコーチタイムも長くなるものもあるが、これらの場合には耐圧縮永久歪特性の低下を免れないものもある。特開平11−255997号公報特開平11−100478号公報特開平11−140264号公報WO 2005/103143特開2001−181464号公報特開2001−316554号公報特開2003−342437号公報特開2002−317091号公報特開2004−269873号公報再表2003−4563号公報 本発明の目的は、架橋性基含有アクリルゴム用の新規加硫剤として用いられるジウレタン化合物、その製造法、およびそれを加硫剤として含有し、スコーチ抑制による加硫速度の遅延を改善し、すなわち脂肪族ジアミンの有する良好な加硫速度および芳香族ジアミンの有する良好なスコーチ安定性を両立させ、しかも加硫物の加硫物性、特に耐圧縮永久歪特性をも満足せしめるアクリルゴム組成物を提供することにある。 本発明によって、一般式 R2(SO2)m(CH2)nOCONH-R1-NHCOO(CH2)n(SO2)mR2(ここで、R1はC1〜C20の直鎖状または分岐状の2価脂肪族アルキレン基、2価脂環式シクロアルキレン基または2価芳香族基であり、R2は式または式で表わされる基であり、nは0、1または2であり、mは0または1である)で表わされるジウレタン化合物が提供される。 かかるジウレタン化合物は、一般式 H2NR1NH2で表わされるジアミン化合物に一般式 ClCOO(CH2)n(SO2)mR2で表わされるクロロホーメート化合物を反応させることにより、あるいは一般式 OCNR1NCOで表わされるジイソシアネート化合物に一般式 R2(SO2)m(CH2)nOHで表わされる水酸基含有化合物を反応させることにより製造される。 このジウレタン化合物は、多価アミン架橋性基含有アクリルゴムに塩基性加硫促進剤と共に配合され、アクリルゴム組成物を形成させる。 本発明に係るアクリルゴム組成物は、新規化合物であるジウレタン化合物および塩基性加硫促進剤よりなる加硫系を配合したアクリルゴム組成物であって、カルボキシル基含有アクリルゴムの通常の加硫剤による加硫反応が熱分解によって反応が進行するのとは異なり、ジウレタン化合物と同時に添加した塩基性加硫促進剤による分解作用で加硫反応が進行する点に特徴があり、そのため新規な加硫剤としてジウレタン化合物を用いても、塩基性加硫促進剤を併用しなければ加硫は全然進行しない。 加硫剤として用いられるジウレタン化合物は、それ単独では180℃でも熱分解せず安定であるが、塩基性加硫促進剤の存在下で脱保護反応され、ヘキサメチレンジアミンが発生して加硫反応を進行させる。この結果、従来のジアミン加硫系では実現できなかった短時間射出成形などを可能とし、またスコーチの点で脂肪族ジアミン加硫系を使用できず、芳香族ジアミン加硫系を使用していた押出成形用途品の高速加硫(短時間加硫)、高温押出しが可能となる。なお、押出成形に要求されるスコーチタイムt5(125℃)は、10分以上でなければならないが、この点での要求も満足させる。 このため、スコーチの抑制による加硫速度の遅延を改善することができ、射出成形時などに問題となっていたこの問題を解決することで、成形条件の設定範囲を広げることを可能としている。また、加硫物性、特に耐圧縮永久歪特性の低下もみられない。その結果、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等の型成形のみならず、押出成形法にも有効に適用することができ、オイルシール、ガスケット、Oリング等の各種シール類、ホース、ダイヤフラム、ロール、防振ゴム、工業用ゴム部品等の加硫成形材料として有効に用いることができる。 新規加硫剤として用いられる、一般式 R2(SO2)m(CH2)nOCONHR1NHCOO(CH2)n(SO2)mR2で表わされるジウレタン化合物は、次のような反応によって合成することができる。 (1) H2NR1NH2+2ClCOO(CH2)n(SO2)mR2 (クロロホーメート化合物) (2) OCNR1NCO+2R2(SO2)m(CH2)nOH (水酸基含有化合物) ここで、R1はC1〜C20の直鎖状または分岐状構造の2価の脂肪族アルキレン基、2価の脂環式シクロアルキレン基または2価の芳香族基である。2価の脂肪族アルキレン基としては、例えば-(CH2)l- (l=2〜20)、-CH2C(CH3)2CH2-等が挙げられ、2価の脂環式シクロアルキレン基としては、例えば等が挙げられ、2価芳香族基としては例えば等が挙げられるが、好ましくはC4〜C10の直鎖状アルキレン基が用いられる。 またR2は、式または式で表わされる基である。 ジウレタン化合物を製造するための前記(1)の製造法にあっては、湯浴で溶融しておいたヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物、1,4-ジオキサンおよび中和剤としての炭酸ナトリウム水溶液の混合物を約0〜2℃に冷却し、そこにジアミン化合物に対して化学量論的には2倍以上モルとなるクロロホーメート化合物の1,4-ジオキサン溶液を反応器中の温度が5℃を超えないような滴下速度で滴下し、滴下終了後数時間程度室温条件下で攪拌した後、反応混合物に水を加え、析出した固体をろ別することにより、それの製造が行われる。 また、前記(2)の製造法にあっては、水酸基含有化合物およびジイソシアネート化合物を、トルエン、ジオキサン等の有機溶媒中で約75〜110℃で攪拌しながら反応させた後冷却し、不溶部をろ別することにより、それの製造が行われる。 得られたジウレタン化合物は、多価アミン架橋性基含有アクリルゴムに塩基性加硫促進剤と共に配合され、アクリルゴム組成物を形成させる。多価アミン架橋性基含有アクリルゴムとしては、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ基含有アクリルゴム、塩素基含有アクリルゴム等の多価アミンを加硫剤とするアクリルゴムが用いられるが、好ましくは脂肪族ジアミン加硫タイプカルボキシル基含有アクリルゴムが用いられる。 カルボキシル基含有アクリルゴムとしては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレートの少くとも1種類とカルボキシル基含有不飽和化合物とを共重合させたものが用いられる。 アルキルアクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートが用いられる。一般的に、アルキル基の鎖長が長くなると耐寒性の点では有利となるが、耐油性では不利となり、鎖長が短いとその逆の傾向がみられ、耐油性、耐寒性のバランス上からはエチルアクリレート、n-ブチルアクリレートが好んで用いられる。 また、アルコキシアルキルアクリレートとしては、例えばメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、n-ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート等が用いられ、好ましくは2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートが用いられる。アルコキシアルキルアクリレートとアルキルアクリレートとは、それぞれ単独でも用いられるが、好ましくは前者が60〜0重量%、また後者が40〜100重量%の割合で用いられ、アルコキシアルキルアクリレートを共重合させた場合には耐油性と耐寒性のバランスが良好となり、ただしこれよりも多い割合で共重合させると常態物性と耐熱性が低下する傾向がみられるようになる。 カルボキシル基含有不飽和化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等のモノアルキルエステル等が挙げられ、好ましくはマレイン酸モノn-ブチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸モノn-ブチルエステルが用いられる。これら以外にも、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸も用いられる。これらのカルボキシル基含有不飽和化合物は、カルボキシル基含有アクリルエラストマー中約0.5〜10重量%、好ましくは約1〜7重量%を占めるような共重合割合で用いられ、これよりも少ない共重合割合では加硫が不十分となって圧縮永久歪値が悪化し、一方これよりも共重合割合を多くするとスコーチし易くなる。なお、共重合反応は、重合転化率が90%以上となるように行われるので、仕込み各単量体重量比がほぼ生成共重合体の共重合組成重量比となる。 カルボキシル基含有アクリルエラストマー中には、さらに他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミド、酢酸ビニル、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エチレン、プロピレン、ピペリレン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン等を、約50重量%以下の割合で共重合させることができる。 さらに、必要に応じて、混練加工性や押出加工性などを改善する目的で、側鎖にグリコール残基を有する多官能性(メタ)アクリレートまたはオリゴマー、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、3-アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート等をさらに共重合して用いることもできる。 エポキシ基含有ゴムとしては、カルボキシル基含有アクリルゴム中のカルボキシル基含有不飽和化合物の代りに、エポキシ基含有不飽和化合物、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を、エポキシ基含有アクリルエラストマー中約0.5〜10重量%、好ましくは約1〜5重量%を占めるような共重合割合で共重合させたものが用いられる。 また、塩素基含有アクリルゴムとしては、カルボキシル基含有アクリルゴム中のカルボキシル基含有不飽和化合物の代りに、塩素基含有不飽和化合物、例えばクロロエチルビニルエーテル、クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート等を、塩素基含有アクリルゴム中約0.1〜15重量%、好ましくは約0.3〜5重量%を占めるような共重合割合で共重合させたものが用いられる。これらの塩素基含有不飽和化合物の内、ビニルクロロアセテート等を共重合させたものは、活性塩素基含有アクリルゴムを形成させる。 これらの多価アミン架橋性基含有アクリルエラストマー100重量部当り、加硫剤としてのジウレタン化合物が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で用いられる。この加硫剤の使用割合がこれよりも少ないと、加硫が不十分となり、引張強さ、圧縮永久歪などの点で十分な物性が得られない。一方、これよりも多い割合で用いられると、破断伸びの低下や圧縮永久歪の悪化を招くようになる。 ジウレタン化合物加硫剤には、塩基性加硫促進剤が併用される。塩基性加硫促進剤としては、グアニジン化合物あるいは1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン-5等が用いられる。また、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7とシリカとの混合物を用いることもでき、実際にはSafic Alcan社製品Vulcofac ACT55等が用いられる。 グアニジンとしては、グアニジンまたはその置換体、例えばアミノグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、n-ドデシルグアニジン、メチロールグアニジン、ジメチロールグアニジン、1-フェニルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、1-ベンジル-2,3-ジメチルグアニジン、シアノグアニジン等が用いられ、この他1,6-グアニジノヘキサン、グアニル尿素、ビグアニド、1-o-トリルビグアニド等も用いられる。 塩基性加硫促進剤としてのグアニジンは、多価アミン架橋性基含有アクリルゴム100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.3〜6重量部の割合で用いられ、前記ジアザ化合物は約0.01〜1重量部、好ましくは約0.03〜0.5重量部の割合で用いられる。また、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7とシリカとの混合物は、多価アミン架橋性基含有アクリルゴム100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.2〜5重量部の割合で用いられる。塩基性加硫促進剤の添加割合がこれも少ないと、ジウレタン化合物加硫剤を用いても加硫が進行せず、一方これ以上の割合で用いられる、スコーチが短くなり好ましくない。 このような新たな加硫系を用いた加硫反応について検討する。本発明のジウレタン化合物は、従来用いられていたヘキサメチレンジアミンカーバメートの脱保護反応が進行する温度である100℃では分解されず、塩基性加硫促進剤の作用によって分解する。 より具体的には、アルキレンジアミン化合物、好ましくはH2N(CH2)nNH2(n=4〜6)、特に好ましくはn=6のヘキサメチレンジアミンを〔2-(1,3-ジチアニル)メチル〕基〔Dmoc〕でジ置換したジウレタン化合物を加硫剤〔HMDA-Dmoc〕として単独で用いた場合、ヘキサメチレンジアミンカーバメートの脱炭酸温度では加硫が進行せず、塩基性加硫促進剤の作用によって加硫は進行し、その反応機構は、次式の如くであると考えられる。したがって、塩基性加硫促進剤の配合量を適宜調節することにより、所望の加硫物物性を維持したまま、高速加硫、耐スコーチ性を実現させることが可能となる。 アクリルゴム組成物の調製は、カルボキシル基含有アクリルゴムおよびゴムの配合剤等として一般に用いられているカーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、滑剤、老化防止剤、その他必要な配合剤をバンバリーミキサ等の密閉型混練機で混練した後、加硫剤および加硫促進剤を加え、オープンロールを用いて混合することにより行われる。調製されたアクリルゴム組成物は、一般に約150〜200℃、約1〜60分間のプレス加硫によって加硫され、必要に応じて約150〜200℃、約1〜10時間のオーブン加硫が行われる。 次に、実施例について本発明を説明する。 実施例1 温度計、環流冷却管および攪拌機を備えた内容量200mlの三口フラスコ中に、2-(p-トルエンスルホニル)エタノール HOCH2CH2SO2(p-C6H4)CH3 11.91g(59.7ミリモル)、ヘキサメチレンジイソシアネート5.00g(29.4ミリモル)およびトルエン100mlを仕込み、反応器を80℃に加温し、8時間攪拌した。 反応終了後冷却し、不溶部をろ別し、減圧下に45℃で12時間乾燥し、白色の粉末状固体〔HMDA-Tsec〕を14.6g(収率86.5%)得た。 得られた固体は、1H NMRおよびFT-IRを用いて構造を同定した。 1H NMR:(a)2.45ppm (s 6H) (b),(c)7.2-7.8ppm (m 8H) (d)3.4ppm (t 4H) (e)4.4ppm (t 4H) (f)3.1ppm (q 4H) (g)1.6ppm (m 4H) (h)1.3ppm (m 4H) FT-IR:3339cm-1:第2級アミンのN-H伸縮振動 1693cm-1:ウレタン結合由来のC=O伸縮振動 1322,1142cm-1:スルホン結合(-SO2-) 実施例2 (1)内容量5Lの丸底フラスコ中に、第3ブチルメチルエーテル2Lおよび既知の方法により合成した2-(エトキシカルボニル)-1,3-ジチアンの粗生成物253.3g(1.2モル)を仕込み、さらにNaBH4 148.2g(3.9モル)を仕込んだ。この丸底フラスコに滴下ロートを取り付け、ここにメタノール650mlを仕込み、室温条件下で3時間以上かけて滴下を行い、滴下終了後40〜45℃で5時間攪拌した。 反応終了後、室温迄冷却し、次いで容量が約半分になる迄濃縮した後、1N塩酸を加えたものについて、酢酸エチル800mlを用いて3回抽出操作を行い、有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。それを減圧下で蒸留した後、不溶部をろ別することにより、目的とする前駆体である1,3-ジチオニル-2-メタノール142g(収率78.8%)を得た。 1H NMR: (a)2.0ppm (m 2H) (b)2.8ppm (m 4H) (c)3.9ppm (t 1H) (d)3.8ppm (d 2H) (e)3.0ppm (br 1H) (2)環流冷却管を備えた内容量5Lの丸底フラスコ中に、トリエチルアミン67.4g、1,3-ジチオニル-2-メタノール100g(0.67モル)、1,6-ジイソシアネートヘキサン53.3g(0.35モル)および1,4-ジオキサン1.8Lを仕込み、100℃で4時間環流させた。反応終了後、約200mlになる迄反応混合物を濃縮し、これにエタノール800mlを加え、さらに還流した。反応混合物を室温迄冷却した後、析出固体をろ別し、フラッシュクロマトグラフィーおよびエタノールでの再結晶による精製を行うことで、目的とする化合物〔HMDA-Dmoc〕107g(収率65%)を得た。 1H NMR: (a)2.0ppm (m 4H) (b)2.8ppm (m 8H) (c)4.1ppm (t 2H) (d)4.4ppm (d 4H) (e)4.9ppm (br 2H) (f)3.2ppm (m 4H) (g)1.5ppm (m 4H) (h)1.3ppm (m 4H) 実施例3 脂肪族ジアミン加硫タイプカルボキシル基含有アクリルゴム 100重量部 (ユニマテック製品ノックスタイトPA-522HF) FEFカーボンブラック(N550) 60 〃 ステアリン酸 1 〃 4,4′-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン 2 〃 (大内新興化学製品ノクラックCD) HMDA-Tsec 1.75 〃 1,3-ジ-o-トリルグアニジン(大内新興化学製品ノクセラーDT) 2 〃 以上の各成分の内、加硫剤および加硫促進剤を除く各成分をバンバリーミキサで混練した後、オープンロールを用いて加硫剤および加硫促進剤の添加が行われた。このようにして調製されたアクリルゴム組成物は、180℃で8分間のプレス加硫および175℃、4時間のオーブン加硫によって加硫された。 アクリルゴム組成物である生地の加硫特性および加硫物物性の測定が、次のようにして行われた。 ムーニー・スコーチ試験:JIS K6300-1準拠(125℃) t5の値(単位:分)は長い程成形時の生地ヤケの懸念が 少なく、ヤケに起因する不良が少ない 一般には、t5の値が10分以上であれば、射出成形、圧縮 成形、押出成形でのヤケに起因する不良が少なくなる 加硫試験:JIS K6300-2準拠(180℃、12分間) 東洋精機製ロータレスレオメーターRLR-3使用 加硫速度の評価は、加硫試験のtc10、tc90およびME(MH-ML)で判断 でき、tc10およびtc90が短くかつMEが大きい程加硫速度は速い 常態値:JIS K6251、JIS K6253準拠 圧縮永久歪:JIS K6262準拠(150℃または175℃、70時間) 実施例4 実施例3において、1,3-ジ-o-トリルグアニジン量が4重量部に変更された。 比較例1 実施例3において、HMDA-Tsecの代りに、0.5重量部のヘキサメチレンジアミンカーバメート(ユニマテック製品ケミノックスAC-6)が用いられた。 比較例2 実施例3において、HMDA-Tsecの代りに、0.5重量部の4,4-ジアミノジフェニルエーテルが用いられた。 比較例3 比較例1において、1,3-ジ-o-トリルグアニジンが用いられなかった。 比較例4 実施例3において、1,3-ジ-o-トリルグアニジンが用いられなかった。 以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表1に示される。 表1 測定項目 実施例3 実施例4 比較例1 比較例2 比較例3 比較例4ムーニー・スコーチ試験 MLmin (pts) 36 35 42 38 43 42 t5 (分) >60 25.4 4.8 8.7 5.2 >60 加硫試験 tc10 (分) 1.78 1.68 0.51 1.29 0.67 1.31 tc90 (分) 9.18 8.56 3.69 8.19 6.76 9.43 ML (N・m) 0.15 0.14 0.17 0.16 0.18 0.15 MH (N・m) 0.29 0.59 0.81 0.66 0.54 0.15 ME(MH-ML) (N・m) 0.14 0.45 0.64 0.5 0.36 0 常態値 硬さ (デュロA) 62 66 64 68 61 成形 不可 100%引張応力(MPa) 2.4 3.5 3.8 4.2 2.4 成形 不可 引張強さ (MPa) 8.4 9.2 10.4 11.1 9.2 破断伸び (%) 380 310 240 270 320 圧縮永久歪 150℃、70時間 (%) 21 12 8 11 22 175℃、70時間 (%) 29 20 12 15 37 実施例5 脂肪族ジアミン加硫タイプカルボキシル基含有アクリルゴム 100重量部 (ノックスタイトPA-522HF) FEFカーボンブラック(N550) 60 〃 ステアリン酸 1 〃 4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン 2 〃 (ノクラックCD) HMDA-Dmoc 1.5 〃 1,3-ジ-o-トリルグアニジン(ノクセラーDT) 2 〃 以上の各成分を用い、実施例3と同様にアクリルゴム組成物の調製および加硫が行われた。 アクリルゴム組成物である生地の加硫特性および加硫物物性の測定が実施例3と同様に行われた。 実施例6 実施例5において、1,3-ジ-o-トリルグアニジン量が4重量部に変更された。 比較例5 実施例5において、1,3-ジ-o-トリルグアニジンが用いられなかった。 以上の実施例5〜6および比較例5で得られた結果は、次の表2に示される。 表2 測定項目 実施例5 実施例6 比較例5ムーニー・スコーチ試験 MLmin (pts) 36 36 t5 (分) >60 22.3 >60 加硫試験 tc10 (分) 1.65 1.61 tc90 (分) 8.92 8.10 ML (N・m) 0.15 0.16 MH (N・m) 0.32 0.69 ME(MH-ML) (N・m) 0.17 0.53 常態値 硬さ (デュロA) 62 64 成形不可 100%引張応力(MPa) 2.8 3.6 引張強さ (MPa) 8.9 9.2 破断伸び (%) 340 280 圧縮永久歪 150℃、70時間 (%) 18 14 175℃、70時間 (%) 26 20 表2の結果から、次のようなことがいえる。(1)比較例5では、180℃でレオメーターの測定を行ったが加硫トルクは上がらず、加硫は進行しなかった。このことから、実施例2(2)で得られた生成物は180℃では熱分解しないことが分かる。(2)また、実施例5〜6は、1,3-ジ-o-トリルグアニジンのような塩基性化合物が存在する場合、ビスカーバメート構造が分解し、ヘキサメチレンジアミンが発生することを証明している。 一般式 R2(SO2)m(CH2)nOCONH-R1-NHCOO(CH2)n(SO2)mR2(ここで、R1はC1〜C20の直鎖状または分岐状の2価脂肪族アルキレン基、2価脂環式シクロアルキレン基または2価芳香族基であり、R2は式または式で表わされる基であり、nは0、1または2であり、mは0または1である)で表わされるジウレタン化合物。 式で表わされる請求項1記載のジウレタン化合物。 式で表わされる請求項1記載のジウレタン化合物。 一般式 H2NR1NH2(ここで、R1はC1〜C20の直鎖状または分岐状構造の2価の脂肪族アルキレン基、2価の脂環式シクロアルキル基または2価芳香族基である)で表わされるジアミン化合物に、一般式 ClCOO(CH2)n(SO2)mR2(ここで、R2は式または式で表わされる基であり、nは0、1または2であり、mは0または1である)で表わされるクロロホーメート化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載のジウレタン化合物の製造法。 一般式 OCNR1NCO(ここで、R1はC1〜C20の直鎖状または分岐状構造の2価の脂肪族アルキレン基、2価の脂環式シクロアルキル基または2価芳香族基である)で表わされるジイソシアネート化合物に、一般式 R2(SO2)m(CH2)nOH(ここで、R2は式または式で表わされる基であり、nは0、1または2であり、mは0または1である)で表わされる水酸基含有化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載のジウレタン化合物の製造法。 多価アミン架橋性基含有アクリルゴム、加硫剤としての請求項1、2または3記載のジウレタン化合物および塩基性加硫促進剤を含有してなるアクリルゴム組成物。 多価アミン架橋性基含有アクリルゴムが脂肪族ジアミン加硫タイプカルボキシル基含有アクリルゴムである請求項6記載のアクリルゴム組成物。 多価アミン架橋性基含有アクリルゴム100重量部当り、加硫剤としてのジウレタン化合物が0.1〜10重量部、塩基性加硫促進剤としてのグアニジン化合物が0.1〜10重量部の割合で用いられた請求項6記載のアクリルゴム組成物。 多価アミン架橋性基含有アクリルゴム100重量部当り、加硫剤としてのジウレタン化合物が0.1〜10重量部、塩基性加硫促進剤としての1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7または1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン-5が0.01〜1重量部の割合で用いられた請求項6記載のアクリルゴム組成物。 多価アミン架橋性基含有アクリルゴム100重量部当り、加硫剤としてのジウレタン化合物が0.1〜10重量部、塩基性加硫促進剤としての1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7とシリカとの混合物が0.1〜10重量部の割合で用いられた請求項6記載のアクリルゴム組成物。 請求項6乃至10のいずれかに記載のアクリルゴム組成物から型成形された加硫成形品。 請求項6乃至10のいずれかに記載のアクリルゴム組成物から押出成形された加硫成形品。


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