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タイトル:特許公報(B2)_紫蘇のフレッシュで自然な芳香を有する蒸留酒類及びその製造方法
出願番号:2009519311
年次:2013
IPC分類:C12G 3/12,C12G 3/06


特許情報キャッシュ

鹿島 隆則 JP 5174020 特許公報(B2) 20130111 2009519311 20080613 紫蘇のフレッシュで自然な芳香を有する蒸留酒類及びその製造方法 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 小笠原 有紀 100141265 鹿島 隆則 JP 2007156984 20070614 20130403 C12G 3/12 20060101AFI20130314BHJP C12G 3/06 20060101ALI20130314BHJP JPC12G3/12C12G3/06 C12G FSTA(DIALOG) Foodline(DIALOG) Foods Adlibra(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) JSTPlus(JDreamII) G-Search 特開2005−143503(JP,A) 特開2007−060962(JP,A) 創立50周年記念 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 講演要旨集,2006年11月 6日,pp.19-20 <212土曜広場>苫小牧 無糖シソジュース発売 その名も「おいしそ」「ふるさと小包」札幌でも,北海道新聞夕刊,1998年11月 7日 食品ヒット大賞特集:優秀ヒット賞 しそ焼酎鍛高譚(合同酒精),日本食糧新聞,2004年 2月25日,p.23 風味すっきり「青ジソ焼酎」大分市産大葉を活用,朝日新聞 西部地方版/大分,2007年 9月21日,p.26 桜焼酎「さくらの彩」、青紫蘇焼酎「しその彩」新発売−厳選手摘みの”和素材”を使った、自然な香りと味わい,サントリーニュースリリース No.9887,2007年 8月20日,[Online][検索日2008年7月9日] 10 JP2008060826 20080613 WO2008153118 20081218 19 20110525 西村 亜希子 本発明は、紫蘇を原料の一部として使用する蒸留酒の風味の向上と改善に関する。さらに詳細には、本発明は、紫蘇を使用する、風味が向上・改善された蒸留酒の製造方法に関する。さらには、上記蒸留酒と水又は/及び他の酒とを混和してなるアルコール飲料に関する。 紫蘇科植物は、約180属3500種ほどが知られ、世界のほぼ全域に分布している。精油成分を含み芳香を持つものが多く、古くから有用植物として世界各地で用いられてきた。 ヨーロッパでは、紫蘇科植物は、薬用・香料植物として知られている。紫蘇科植物の中には、メントールを含むハッカ、ペパーミントの原料となるセイヨウハッカ、スペアミントオイルを含むミドリハッカなどのハッカ属諸種を始め、香料として有名なラベンダー、ローズマリーオイルの原料となるマンネンロウ、食品香料であるセージ、マジョラム、サボリー、タイムなどがある。 紫蘇は、中国でも薬用として用いられてきた。中医学(漢方)では、主に赤紫蘇の葉を「蘇葉」(そよう)または「紫蘇葉」(しそよう)といい、半夏厚朴湯や香蘇散に配合する。また、成熟した果実を「蘇子」(そし)といい、咳、喘息、便秘などの治療に用いる。 日本で広く栽培されている紫蘇(Perilla frutescens var. crispa)は、中国中南部の原産とされており、古くから日本に伝えられたものである。紫蘇(Perilla frutescens var. crispa)は、中医学の流れから薬用に用いられるほか、全草から芳香が認められること、鮮やかな色彩が着色にも使えることもあって、薬味・生食・漬物など、幅広い用途に使われている。例えば、若芽(赤紫蘇のムラ芽・青紫蘇の青芽)は刺身のツマや薬味に、花穂(穂紫蘇)は刺身のツマやてんぷらに、青紫蘇の葉(大葉)は薬味やてんぷら・刺身のツマに、赤紫蘇の葉は梅干や漬物の着色に利用される。また、紫蘇ふりかけとして、日常の食事に供されることも多い。 このように、日本では紫蘇の爽やかな香りや鮮やかな色彩が古くから愛されており、紫蘇は、最も幅広く、身近に使われる食材のひとつであるといえる(非特許文献1、2)。 こういった紫蘇に対する日本人の嗜好は、近年酒類にも広がってきている(特許文献1)。特に「鍛高譚」(合同酒精社製)を始めとする紫蘇焼酎が人気を集めている。また、近年梅酒がブームとなっているが、それも単なる梅酒ではなく、紫蘇を同時に漬け込んだものが商品化されている。 日本人にとって馴染み深い紫蘇の芳香は、茎葉に含まれるテルペンの1つであるペリルアルデヒドによるもので、紫蘇の精油の55%を占めると言われている。特開2005−143503号公報平凡社 世界大百科事典TBS ブリタニカ ブリタニカ国際大百科事典 ペリルアルデヒド単体を官能評価すると、確かに紫蘇らしい芳香は認められるものの、やや油っぽく、草のような臭いが感じられる。したがって、紫蘇を使用する蒸留酒において、ペリルアルデヒド成分のみを増大させても、フレッシュで自然な芳香を紫蘇の得ることは難しい。これに対して、従来の技術では、ペリルアルデヒドの増大に重点が置かれており、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を有する蒸留酒は得られなかった。 本発明は、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を有する良質の蒸留酒及びその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、紫蘇の芳香の主成分であるペリルアルデヒドだけでなく、リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンといった特定の香気成分を付加することによって、紫蘇を原料の一部として使用する蒸留酒の香気が大きく改善され、蒸留酒が紫蘇のフレッシュかつ自然な芳香を有するようになることを見出した。また、上記のような品質を実現するために該蒸留酒に含有させるべき香気成分量を設定した。さらに、蒸留時における蒸留原料の温度管理を適切に行うことにより、上記の香気成分を蒸留酒に付与できることも見出し、本発明を完成させたものである。 本発明は、以下のような蒸留酒、それを実現するための製造方法、及び得られた蒸留酒を含有するアルコール飲料を提供する。1. 紫蘇を用いて製造される蒸留酒であって、次の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;を含有し、(B)該当成分重量の総和が、該蒸留酒1L当り、純アルコール換算値で、4.0mg以上であることを特徴とする蒸留酒。2. 紫蘇を用いて製造される蒸留酒であって、次の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;を含有し、その含有重量は、該蒸留酒1L当り、純アルコール換算値で、 (A)が2.5mg以上 かつ(B)該当成分重量の総和が4.0mg以上であることを特徴とする蒸留酒。3. 紫蘇を用いて製造される蒸留酒であって、次の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;を含有し、該蒸留酒1L当りの(A)の含有重量に対する(B)該当成分の重量の総和の比が、0.9以上((B)/(A)≧0.9、純アルコール換算値)である、蒸留酒。4. 紫蘇(Perilla frutescens var. crispa)が、赤紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)又は青紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. viridis)から選ばれる上記1〜3のいずれかに記載の蒸留酒。5. 紫蘇が、次の(1)〜(3): (1)生の紫蘇の葉又は茎; (2)生の紫蘇の葉又は茎を、乾燥、箭断、粉砕、又は酵素処理したもの;あるいは (3)(1)又は(2)を水又は水性溶液で抽出して得られる抽出液から選択される1種又は2種以上である、上記1〜3のいずれかに記載の蒸留酒。6. 蒸留酒が焼酎である上記1〜3のいずれかに記載の蒸留酒。7. アルコールを含有する蒸留原料と紫蘇とを蒸留釜に張り込む工程、及び 該蒸留原料を、 (C)留出開始時の蒸留原料の温度、及び (D)蒸留終了時の蒸留原料の温度が、それぞれ、50℃≦(C)≦78℃ かつ 55℃≦(D)≦90℃で蒸留する工程、を含む蒸留酒の製造方法。8. 紫蘇が、次の(1)〜(3): (1)生の紫蘇の葉又は茎; (2)生の紫蘇の葉又は茎を、乾燥、箭断、粉砕、又は酵素処理したもの;あるいは (3)(1)又は(2)を水又は水性溶液で抽出して得られる抽出液から選択される1種又は2種以上である、上記7に記載の蒸留酒の製造方法。9. 前記紫蘇が、生の紫蘇の葉及び/又は茎であり、前記蒸留工程において、次の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;が抽出され、(B)該当成分重量の総和が、該蒸留酒1Lあたり、純アルコール換算値で、4.0mg以上であることを特徴とする、上記8に記載の蒸留酒の製造方法。10. 前記蒸留工程において、120mmHg(約16kPa)〜350mmHg(約46.7kPa)の減圧下で蒸留を行う、上記7に記載の蒸留酒の製造方法。11. 蒸留酒が焼酎である、上記7に記載の蒸留酒の製造方法。12. 上記1〜3のいずれかに記載の蒸留酒を水又は/及び他の酒と混和してなるアルコール飲料。13. 前記アルコール飲料が、次の香気成分(A)及び(B)、(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;を含有し、(B)該当成分の重量の総和が、容器詰めされたアルコール飲料1L当たり、純アルコール換算値で、2.5mg以上である、上記12に記載のアルコール飲料。14. 上記1〜3のいずれかに記載の蒸留酒に果実を浸漬することにより得られるアルコール飲料。15. 上記13に記載のアルコール飲料に果実を浸漬することにより得られるアルコール飲料。 蒸留酒の製造工程において、蒸留釜に張り込まれたアルコールを含有する蒸留原料の温度を適切に管理することにより、蒸留原料とともに張り込まれた紫蘇の香気成分をバランスよく回収し、紫蘇のフレッシュで自然な芳香を持つ蒸留酒を得ることができる。このようにして得た蒸留酒を他の酒類などと混和することによって、紫蘇のフレッシュで自然な芳香を持つ、新規なアルコール飲料を得ることができる。 また、本発明の蒸留方法にしたがえば、新規な設備投資も不要であり、製造コストを最小に抑制しつつ良質の蒸留酒を得ることができる。 (蒸留酒) 本発明における蒸留酒とは、アルコールを含有する蒸留原料を蒸留して得られる酒をいう。すなわち、製造工程に1回以上の蒸留工程を持つ製法により造られる酒をいう。使用する蒸留機は、単式蒸留機が好ましい。蒸留酒の例としては、焼酎、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ブランデー、ラム、テキーラ等を挙げることができる。しかしながら、これら以外の蒸留酒でもよい。 (アルコールを含有する蒸留原料) 本発明におけるアルコールを含有する蒸留原料とは、アルコールを含有しており、蒸留に付すことにより蒸留酒を製造することができるものをいい、酒類の原料となり得るものであればいかなるものも用いることができる。例えば、一般に酒類の製造において「醪(もろみ)」と呼ばれる、含糖物質を酵母によってアルコール発酵させた発酵物を用いることができる。含糖物質としては、米・麦(大麦、ライ麦、小麦、カラス麦、裸麦など)・そば・とうもろこし・あわ・きび・ひえ、などの穀類、さつまいも・じゃがいも・さといも・きくいも・やまのいも・ながいも・じねんじょ、などのいも類、かぼちゃ・トマト・にんじん、などの野菜類、ぶどう・りんご・デーツ(なつめやし)などの果実類、糖蜜、などを挙げることができる。また、含糖物質を発酵させた発酵物以外にも、草根木皮などの糖質を含まない植物原料をアルコール水溶液に浸漬した浸漬液を蒸留原料として用いることもできる。 (紫蘇) 本発明では、蒸留の際に、アルコールを含有する蒸留原料とともに紫蘇を用いる。本発明に使用できる紫蘇(Perilla frutescens var. crispa)には、赤紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)又は青紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. viridis)のいずれか、あるいはその両方が含まれる。両方を使用する場合の重量比は特に限定されず、要求される品質に合わせて適宜選択して使用することができる。なお、青紫蘇は、日本では大葉と呼ばれるものも含む。 本発明で蒸留原料とともに用いられる紫蘇は、生の葉、茎又はその両方をそのまま、或いは適当な大きさに切断したものであってもよく、また、蒸留前に加工処理が施されたものでも良い。加工処理とは、生の紫蘇の葉又は茎を、乾燥、箭断、粉砕、又は酵素処理等することをいう。酵素処理とは、酵素を用いて植物組織を崩壊させる処理をいう。酵素処理に用いる酵素は、植物組織を崩壊させるのに使用できる酵素であれば特に制限されず、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼなどを用いることができ、処理条件は、それぞれの酵素に最適な条件あるいは要求される品質に合わせて適宜選択して決定することができる。また、本発明で蒸留原料とともに用いられる紫蘇は、生の紫蘇又は処理した紫蘇を、水又は水性溶液(例えば、アルコール水溶液)で抽出した抽出液の形態であってもよい。 使用する紫蘇の量は本発明の蒸留酒に所定の香味を与えることができる量であれば良い。所望の品質や製造する蒸留酒の種類によって適切な紫蘇の使用量は変化する。紫蘇の使用量の自由度はきわめて大きいが、現実的な生産効率などの観点から、適切な使用量を決定することができる。適切な紫蘇の使用量の例としては、焼酎を製造する場合であれば、例えば、蒸留直前における蒸留原料中のアルコール100重量部当り、生の葉又は茎として、10〜80重量部、より好ましくは15〜50重量部である。焼酎以外の蒸留酒を製造する場合は、例えば、蒸留直前における蒸留原料中のアルコール100重量部当り、生の葉又は茎として、4重量部以上である。なお、この場合の紫蘇の生の葉又は茎の重量とは、紫蘇を添加した時点での紫蘇の生の葉又は茎の重量を指す。 製造工程において、紫蘇を蒸留原料に添加する時期は、蒸留前であれば制限されない。例えば、本発明に用いる蒸留原料が含糖物質をアルコール発酵させた発酵物(醪)である場合は、発酵前の含糖物質に紫蘇を添加して発酵に付してもよいし、蒸留直前の蒸留原料に紫蘇を添加してもよい。また、紫蘇焼酎を製造する場合は、酵母によって発酵した麹含有物に二次原料を添加したもの、いわゆる二次醪に紫蘇を添加してもよい。 (焼酎) 本発明における焼酎は、日本の酒税法第3条第10号に記載の「単式蒸留しょうちゅう」の定義に従う。要するに、単式蒸留機で蒸留して得られた蒸留酒のうち、アルコール分45度以下で、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、ジンなどに該当しないものである。本発明における焼酎に使用する原料は、通常使用されるものであれば特に限定されないが、紫蘇のフレッシュで自然な芳香にマッチするものを用いることが好ましい。特に、ふくよかで柔らかい香りが紫蘇の爽やかな芳香にマッチすることから、米を用いることが好ましい。本発明における焼酎に使用する麹に用いる原料についても同様である。また、本発明における麹の使用量は、本発明の効果を妨げない範囲であれば何ら制限されない。 (蒸留条件) フレッシュで自然な紫蘇芳香を有する蒸留酒を得るためには、以下の蒸留条件を満足することが肝要である。 得られる蒸留酒が、下記の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド、及び(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分、を含有するように蒸留条件を決定する。(A)成分を含有し、かつ、該蒸留酒1Lあたりの(B)成分の合計含有量が、純アルコール換算値で4.0mg以上であると、蒸留酒にフレッシュで自然な紫蘇の芳香を付与することができる。(B)成分の合計含有量が、純アルコール換算値で10mg以上、より好ましくは20mg以上、さらに好ましくは35mg以上であると、フレッシュさがさらに高まるため好ましい。さらに、(A)成分の含有量が、純アルコール換算値で2.5mg以上、より好ましくは、5.0mg以上、さらに好ましくは、7.5mg以上、最も好ましくは15mg以上であると、紫蘇の芳香がより強くなるため、好ましい。また、(A)成分が2.5mg以上かつ(B)該当成分重量の総和が4.0mg以上であると、紫蘇の芳香とフレッシュさとがバランスよく感じられるため、好ましい。さらに、(A)成分が5.0mg以上かつ(B)成分の総和が10mg以上、より好ましくは、(A)成分が15mg以上かつ(B)成分の総和が20mg以上であると、フレッシュで自然な紫蘇の芳香が強く感じられるようになるため、好ましい。 また、(A)成分の含有量に対して、(B)成分の合計含有量が十分に高い場合には、(A)成分であるペリルアルデヒドのやや油っぽい草のような匂いがマスクされ、蒸留酒の香気が改善されるため、好ましい。詳細には、(A)の含有重量(純アルコール換算値)に対する(B)該当成分の重量の総和の比が0.9以上(すなわち、(B)/(A)が0.9以上)であると蒸留酒の香気が大きく改善され、好ましい。 このような香気成分含有量を有する蒸留酒は、蒸留時の蒸留原料の温度管理を適切に行うことにより得ることができる。その温度条件は以下の通りである。蒸留釜に張り込まれた蒸留原料が、 (C)留出開始時の蒸留原料の温度 (D)蒸留終了時の蒸留原料の温度 について、50℃≦(C)≦78℃ かつ 55℃≦(D)≦90℃となる蒸留条件。 本発明において、所定の蒸留温度より低い場合は、紫蘇の香気を十分に生じさせにくい。一方、所定の蒸留温度より高い場合は、煮詰まった焦げ臭気又はオイルっぽい香味を生じるようになり、フレッシュな紫蘇らしい芳香に欠ける蒸留酒となる。上記の温度条件は、50℃≦(C)≦72℃ かつ 58℃≦(D)≦82℃であると、紫蘇のフレッシュで自然な芳香が強まるため、より好ましい。さらに、60℃≦(C)≦72℃ かつ 70℃≦(D)≦82℃であると、紫蘇の芳香がより一層強まり、さらに好ましい。また、(D)−(C)が10℃以上であると、芳香が強まるため好ましい。なお、蒸留に際しては、紫蘇を添加して一定時間以上経過した蒸留原料に対して、上記の温度を加えるとよい。 このとき、上記(C)・(D)の温度条件を実現するためにはどのような方法を用いてもよい。例えば、蒸留に供する蒸留原料のアルコール度数に応じて減圧度を変え、その一定減圧度のもとで蒸留原料を加温して蒸留実施することにより、上記(C)・(D)の温度条件を実現することができる。この減圧条件の管理による温度制御は、もっとも簡便であり、また、新たな設備を設けたり、改修をする必要がないので、設備投資に要する費用を必要とせず、製造コスト的にも有利であるから、好ましい。蒸留時の熱源はどのような方法を用いてもよいが、間接加熱によるほうが焦げ臭などの異臭がつかず好ましい。 以下に上記の減圧条件管理による焼酎の蒸留温度制御を例に取って説明する。通常の焼酎の減圧蒸留では、蒸留釜内の気圧を約60 mmHg(約8kPa)から約100 mmHg(約13.3kPa)程度に減圧保持し、醪温度が約50℃で蒸留が終了するように実施する。しかし、蒸留釜内の気圧を、たとえば約200 mmHg(約26.7 kPa)に減圧保持して醪を加熱していけば、醪のアルコール度数が約17%の場合、醪温度が約50℃で蒸留液の留出が始まり、醪温度が約63〜64℃で蒸留を終了することができる。すなわち、通常の減圧蒸留より高い温度で蒸留することができる。これにより、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を発現させることができる。しかし、減圧度の管理はあくまでも醪温度の管理の一手段である。 参考のため、蒸留工程における、減圧度と醪(約17%のアルコール度数)の温度(実測値または理論値)との関係を以下の表1に示す。(上記の表において、760mmHgの常圧蒸留、60mmHgの減圧蒸留、及び150mmHgの微減圧蒸留における釜下温度は実測値であり、200、250、300mmHgの微減圧蒸留における釜下温度は理論値である。) (アルコール飲料) 本発明で得られる蒸留酒は、水又は/及びリキュール類、スピリッツ類などの他の酒と混和してアルコール飲料とすることもできる。また、糖類、酸味料、香料等を添加してもよい。 本発明で蒸留酒と混和できる他の酒は、本発明の効果を妨げないものであれば、種類、配合量ともに何ら制限されないが、糖蜜又はとうもろこし由来の連続式蒸留焼酎、原料アルコール、ウォッカ、アクアビット、あるいはクセの少ない香気を持つ麦・米焼酎など、あまり個性が強くなく、柔らかい風味を持つ酒類が好ましい。 本発明の蒸留酒と水又は他の酒とを混和してなるアルコール飲料は、前述の香気成分(B)、すなわち、リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分を、容器詰めされたアルコール飲料1Lあたり、純アルコール換算値で、2.5mg以上((B)成分の合計値)含有すると、フレッシュな紫蘇の特徴が感じられる飲料となり、好ましい。また、容器詰めされたアルコール飲料1Lあたりの(B)該当成分の合計重量が純アルコール換算値で4.0mg以上であるとフレッシュな紫蘇の芳香が強くなるため、より好ましい。さらに、(B)該当成分の合計重量が5.4mg以上であると、紫蘇の芳香がより一層強くなるため、さらに好ましい。 本発明で得られる蒸留酒は、フレッシュで爽やかな芳香を持つので、果実を浸漬して果実酒の原料とすることもできる。本発明の蒸留酒に浸漬できる果実の種類としては、特に限定はないが、仁果類(カリン、リンゴ、ナシなど)、核果類(梅、杏、桃、スモモ、サクランボなど)、柑橘類(ミカン、イヨカン、金柑、夏ミカン、タンカン、八朔、ポンカン、オレンジ、カボス、ダイダイ、グレープフルーツ、シークヮーサー、スダチ、柚子、レモン、ライムなど)、熱帯果樹(アセロラ、パイナップル、バナナ、グァバ、ナツメヤシ、パパイヤ、マンゴーなど)、その他の果実(ビワ、イチジク、柿、ザクロ、ナツメ、イチゴ、キウイ、メロン、ヤマモモ、コケモモ、カシス、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリー、ブラックベリーなど)が好ましい。 本発明におけるアルコール飲料には、果汁を配合することもできる。果汁としては、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁あるいは濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよい。濃縮果汁を用いる場合、果実由来の混濁成分や難溶性成分の不溶化により、沈殿や増粘などの問題を引き起こすことがあることため、果汁の一部または全部が清澄化処理された果汁、すなわち透明果汁又は半透明果汁を用いることが好ましい。清澄化処理の方法としては、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法等が知られているが、そのいずれの方法で処理されたものであってもよい。濃縮果汁は場合によって、糖類、はちみつ等で糖度を調整したもの、あるいは酸度が調整されたものであってもよい。また、透明果汁の他に、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。本発明におけるアルコール飲料に含まれる果汁は、その種類及び量に通常使用される範囲内であれば特に制限はない。1種類の果汁を単独使用しても、2種以上を併用してもよい。また、本発明におけるアルコール飲料に配合可能な果汁の量は、発明の効果を妨げない範囲であれば、特に制限されない。 本発明におけるアルコール飲料には、紫蘇のフレッシュな芳香を際立たせるために、炭酸ガスを含有させることもできる。また、本発明の紫蘇のフレッシュで自然な芳香を維持し、開封した際の香り立ちを向上させるため、本発明のアルコール飲料は容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。 以下の実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 紫蘇焼酎の製造(1) (紫蘇焼酎の仕込) 下記の表2に示す配合にて仕込を行った。 乾燥米麹(白)、アルファ化米は、いずれも飯田商事(株)より購入したものを使用した。酵母は協会2号(日本醸造協会より購入)を使用した。協会2号は所定の通り復水し、一次醪中で生菌数が約5×105/mLになるよう添加した。 紫蘇は、青紫蘇(大葉)を用いた。大葉は市販されているものを使用した。紫蘇は、よく水洗いした後、そのまま八つ切りにして二次醪に投入した。 一次醪は28℃恒温室にて6日間、二次醪は同恒温室にて12〜13日間発酵させた。以上により生成した紫蘇焼酎醪は、容量18.66L、アルコール度数17.1%であった。 (蒸留) 5L容ステンレス製単式蒸留釜に3200mLの醪を張り込み、減圧蒸留を実施した(120mmHgにて蒸留したサンプルのみ2460mL張り込んだ)。加温は、恒温水槽によって行った。減圧度は、60、80、100、120、150、200mmHgの6水準とした。得られる紫蘇焼酎原酒のアルコール度数が約40〜45%になると推定される時点で蒸留終了した。留出開始時と蒸留終了時の醪温度を測定し、また、得られた紫蘇焼酎原酒の容量とアルコール度数を測定した。 (アルコール度数の測定) 京都電子工業製 振動式密度計によって測定した。本発明におけるアルコール度数は、特に断りがない限り容量%である。 (ガスクロマトグラフィ(GC)による香気成分の分析) 蒸留して得られた原酒中のペリルアルデヒド、ベンズアルデヒド及びテルペン類の分析を、HP社製GC分析システム(HP6890)を用いて行った。分析条件は、次の通りである:オーブンを45℃で1分間保持した後、5℃/分にて230℃まで昇温し、5分間保持した。注入口温度は250℃とし、スプリット比は15:1とした。カラムはUltra2 5%Phenyl Methyl Siloxane(Agilent社製、内径0.32mm、カラム長50m)を用い、キャリアガスはヘリウムを3.2mL/分で流した。検出器はFID(水素炎イオン化検出器)を用い、260℃で検出した。分析により得られた香気成分量(mg/L)は、原酒のアルコール度数で除し、アルコール100%あたりの成分量(純アルコール換算値(mg/L)と呼ぶ)で表した。 GC分析の結果を、表3に示す。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)のGC分析結果も併せて表3に示す。ペリルアルデヒドを(A)、その他のテルペン類及びベンズアルデヒドを(B)とする。(B)該当成分量の総和も表3に示す。 減圧度60、80、100mmHgで蒸留した紫蘇焼酎サンプルNo.1〜3からは、リモネン、シネオールが検出されたが、ペリルアルデヒドは検出されなかった。減圧度120、150、200mmHgで蒸留した紫蘇焼酎サンプルNo.4〜6からは、ペリルアルデヒドとともに、リモネン、シネオールといったテルペン類が検出された。他社焼酎製品Pからは、ペリルアルデヒドは検出されたが、テルペン類は検出されなかった。他社製品Q及びRからは、ペリルアルデヒドに加えてリモネン、シネオール、リナロール、及びベンズアルデヒドが検出されたが、これら(B)成分はペリルアルデヒドに比べて非常に少量であり、成分量比(B)/(A)がそれぞれ約0.088及び約0.19だった。 (官能評価) 上記のように減圧度の異なる蒸留条件で製造した原酒6サンプルを、純水によってアルコール度数20%に割り水して、訓練された専門パネル6名にて官能評価を行った。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)も同様にアルコール度数20%に割り水して官能評価を行った。これらの官能評価結果、サンプルNo.1〜6の蒸留時の減圧度、張込量、醪温度、蒸留により得られた原酒の容量、アルコール度数、(A)成分の量、(B)成分の量、及び比(B)/(A)を表4に示す。醪温度の「開始」は留液の留出開始時、「終了」は蒸留終了時の醪温度である。 100mmHg以下の減圧度で蒸留したサンプルNo.1〜3からは、紫蘇らしい香りは感じられなかった。(A)ペリルアルデヒドが検出されなかったためと考えられる。120mmHg及び150mmHg蒸留サンプルNo.4及び5は、フレッシュで自然な紫蘇の芳香が認められた。200mmHg蒸留サンプルNo.6は、フレッシュで自然な紫蘇の芳香がより強く感じられた。これらの蒸留サンプルNo.4〜6には、軽快で爽やかな香りがあり、ペリルアルデヒドのやや油っぽい草のような香りがマスクされているように感じられた。これに対し他社紫蘇焼酎商品Pは紫蘇らしさはあるもののフレッシュな芳香が少なく、Q及びRからは、ペリルアルデヒドの好ましくない香りであるやや油っぽい草様の臭いが若干感じられ、本発明品のようなフレッシュで自然な芳香が感じられないことが指摘された。 実施例2 紫蘇焼酎の製造(2) (紫蘇焼酎の仕込) 実施例1と同様にして、仕込を行った。生成した紫蘇焼酎醪は、容量18.36L、アルコール度数15.2%であった。 (蒸留) 5L容ステンレス製単式蒸留釜に3000mLの醪を張り込み、減圧蒸留実施した。加温は、マントルヒーターによって行った。減圧度は、150、200、250、300、350mmHgの5水準とした。得られる紫蘇焼酎原酒のアルコール度数が約40〜45%になると推定される時点で蒸留終了した。留出開始時と蒸留終了時の醪温度を測定し、得られた紫蘇焼酎原酒の容量とアルコール度数を実施例1と同様にして測定した。 (GCによる香気成分の分析) 得られた紫蘇焼酎原酒をGC分析した結果を、表5に示す。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)のGC分析結果も併せて表5に示す。ペリルアルデヒドを(A)、その他のテルペン類及びベンズアルデヒドを(B)とする。(B)該当成分量の総和も示す。 減圧度150、200、250、300、350mmHgで蒸留した紫蘇焼酎サンプルNo.7〜11からは、ペリルアルデヒドとともに、リモネン、シネオール、リナロールといったテルペン類や、ベンズアルデヒドが検出された。他社焼酎製品Pからは、ペリルアルデヒドは検出されたが、テルペン類は検出されなかった。他社製品Q及びRからは、ペリルアルデヒドのほかにリモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒドが検出されたが、これら(B)成分はペリルアルデヒドに比べて量が少なく、(B)/(A)がそれぞれ約0.088及び約0.19だった。 (官能評価) 上記のように減圧度の異なる蒸留条件で製造した原酒5サンプルを、純水によってアルコール度数20%に割り水して、訓練された専門パネル6名にて官能評価を行った。比較として、他社紫蘇焼酎製品3品(P、Q、R)の官能評価も行った。これらの官能評価結果、サンプルNo.7〜11の蒸留時の減圧度、張込量、醪温度、蒸留により得られた原酒の容量、アルコール度数、(A)成分の量、(B)成分の量、及び比(B)/(A)を表6に示す。醪温度の「開始」は留液の留出開始時、「終了」は蒸留終了時の醪温度である。 その結果、150mmHg蒸留サンプルNo.7でフレッシュで自然な紫蘇の芳香が認められ、200mmHg蒸留サンプルNo.8ではフレッシュで自然な紫蘇の芳香がより強く感じられた。250、300、350mmHg蒸留サンプルNo.9〜11はフレッシュで自然な紫蘇の芳香が強く感じられたが、香りの強さとしては200mmHgサンプルNo.8とほぼ変わらないように感じられた。これらのサンプルNo.7〜11には、軽快で爽やかな香りがあり、ペリルアルデヒドのやや油っぽい草のような香りがマスクされているように感じられた。これに対し他社紫蘇焼酎商品Pは紫蘇らしさはあるもののフレッシュな芳香が少なく、Q及びRからは、ペリルアルデヒドの好ましくない香りであるやや油っぽい草様の臭いが若干感じられ、本発明品のようなフレッシュで自然な芳香が感じられないことが指摘された。 実施例3 紫蘇焼酎を含有するアルコール飲料 (紫蘇焼酎の仕込) 下記の表7に示す配合にて仕込を行った。 乾燥米麹(白)、アルファ化米は、いずれも飯田商事(株)より購入したものを使用した。酵母は協会2号(日本醸造協会より購入)を使用した。協会2号は所定の通り復水し、一次醪中で生菌数が約5×105/mLになるよう添加した。 紫蘇は、青紫蘇(大葉)を用いた。大葉は市販されているものを使用した。紫蘇は、よく水洗いした後、そのまま二次醪に投入した。 一次醪は醪温度が約21〜23℃にて2日間、二次醪は9日間発酵させた(醪温度は約21〜33℃)。以上により生成した紫蘇焼酎醪は、容量4.9L、アルコール度数16.0%であった。 (蒸留) 5L容ステンレス製単式蒸留釜に4900mLの醪を張り込み、減圧蒸留実施した。加温は、マントルヒーターによって行った。減圧度は、180mmHgとした。得られる紫蘇焼酎原酒のアルコール度数が約40〜45%になると推定される時点で蒸留終了した。得られた紫蘇焼酎原酒の容量は1760mL、アルコール度数は42.6%であった。 (GCによる香気成分の分析) 得られた紫蘇焼酎原酒をGC分析した結果を、表8に示す。ペリルアルデヒドを(A)、その他のテルペン類及びベンズアルデヒドを(B)とする。(B)該当成分量の総和も示す。 このようにして得られた紫蘇焼酎原酒(サンプル12)と、他の酒類とを混和し、純水にてアルコール度数20%に調整したアルコール飲料サンプルNo.13〜24を作成し、それぞれについて官能評価を実施した。アルコール飲料サンプルNo.13〜18は、該飲料中の紫蘇焼酎原酒の含有量が、純アルコール率でそれぞれ10、15、20、30、40、50%となるよう、糖蜜原料の連続式蒸留アルコールを混和したものである。アルコール飲料サンプルNo.19〜24は、該飲料中の紫蘇焼酎原酒の含有量が、純アルコール率でそれぞれ10、15、20、30、40、50%となるよう、本格麦焼酎製品を混和したものである。なお、純アルコール率とは、アルコール飲料中に含まれる全アルコール容量に対する、特定の原酒に由来するアルコールの容量の割合を示したものである。糖蜜原料の連続式蒸留アルコールにはほとんど香気成分が存在せず、無味無臭である。したがって糖蜜原料の連続式蒸留アルコールを混和したサンプルNo.13〜18における結果により、紫蘇原酒を水で希釈した場合も同様の結果になると推定できる。また、本格麦焼酎製品は、フーゼルアルコールやエステル成分などの酒類特有の香気成分をふんだんに含有しているため、本格麦焼酎製品を混和したサンプルNo.19〜24における結果は、紫蘇焼酎を香り高い酒類と混和した場合の結果と同様であると推定できる。 訓練された専門パネル5名により官能評価を実施した。評点の基準は、次の通りである。 4点:フレッシュで自然な紫蘇の芳香が強く感じられる。 3点:フレッシュで自然な紫蘇の芳香が感じられる。 2点:紫蘇の芳香が認められる。 1点:紫蘇の芳香が全く感じられない。 官能評価点数は、訓練された専門パネル5名の評点の平均点とし、平均点が3点を超えたとき、本発明の特徴である、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を有するとした。 表9に紫蘇焼酎原酒と糖蜜原料の連続式蒸留アルコールとを混和したアルコール飲料の、表10に紫蘇焼酎原酒と本格麦焼酎製品とを混和したアルコール飲料の、それぞれ純アルコール率、官能評価点数、訓練された専門パネルの意見、香気成分(A)及び(B)の総量、ならびに成分量比(B)/(A)を示す。 表9の結果から、紫蘇原酒を糖蜜原料の連続式蒸留アルコールで希釈した場合、アルコール飲料中に(B)成分が2.5mg/L程度含有されていると紫蘇らしいフレッシュな芳香が現れることがわかった。また、アルコール飲料中の(B)成分の含有量が4.0mg/L以上となると紫蘇のフレッシュな芳香がより強くなった。 表10の結果から、紫蘇原酒を香りの強い酒類で希釈した場合、アルコール飲料中に(B)成分が2.5mg/L程度含有されているとフレッシュな紫蘇の特徴がほんのりと認められるようになることがわかった。また、(B)成分の含有量が4.0mg/L以上となるとフレッシュな紫蘇の芳香がはっきりと現れた。さらに、(B)成分の含有量が5.4mg/L以上となると、フレッシュな紫蘇の芳香がより強くなった。 実施例4 紫蘇焼酎の製造(3) (仕込) 実施例1における表2の乾燥米麹及びアルファ化米を、それぞれ乾燥麦麹及び蒸し麦として、麦を原料として用いた紫蘇焼酎原酒を実施例1と同様にして製造した。蒸し麦は、焼酎用大麦を、蒸し後の含水率(重量%)が約35〜40%になるよう蒸したものを使用した。 乾燥麦麹(白)、焼酎用大麦は、いずれも飯田商事(株)より購入したものを使用した。酵母は協会2号(日本醸造協会より購入)を使用した。協会2号は所定の通り復水し、一次醪中で生菌数が約5×105/mLになるよう添加した。紫蘇は、市販の青紫蘇(大葉)を使用した。紫蘇は、よく水洗いした後、そのまま八つ切りにして二次醪に投入した。一次醪は28℃恒温室にて7日間、二次醪は同恒温室にて11日間発酵させた。以上により得られた紫蘇焼酎醪(麦)は、容量12.14L、アルコール度数17.2%であった。 (蒸留) 5L容ステンレス製単式蒸留釜に3000mLの醪を張り込み、減圧蒸留した。加温は、恒温水槽によって行った。減圧度は、150mmHg及び200mmHgの2水準とした。得られる紫蘇焼酎原酒(麦)のアルコール度数が約40〜45%になると推定される時点で蒸留終了した。留出開始時と蒸留終了時の醪温度を測定し、得られた紫蘇焼酎原酒(麦)の容量とアルコール度数を測定した。なお、ここで得られた紫蘇焼酎原酒(麦)は、日本の酒税法では厳密には「スピリッツ類」となるが、アルコール度数以外は焼酎と同等であるため、便宜上「焼酎」と記載することにする。 (官能評価) 上記のように減圧度の異なる蒸留条件で製造した紫蘇焼酎原酒(麦)2サンプルを、純水によってアルコール度数20%に割り水して、訓練された専門パネル6名にて官能評価を行った。これらの官能評価結果、サンプルNo.25及び26の蒸留時の減圧度、張込量、醪温度、蒸留により得られた原酒の容量、及びアルコール度数を表11に示す。醪温度の「開始」は留液の留出開始時、「終了」は蒸留終了時の醪温度である。 150mmHg蒸留サンプルNo.25ではフレッシュで自然な紫蘇の芳香が認められ、200mmHg蒸留サンプルNo.26ではフレッシュで自然な紫蘇の芳香がより強く感じられた。これらのサンプルには軽快で爽やかな香りがあり、ペリルアルデヒドのやや油っぽい草のような香りがマスクされているように感じられた。 以上のように、原料として麦を使用した場合にも本発明の効果があることが示された。しかし、実施例1〜3のように原料として米を使用した場合と比べて、麦を使用した場合には、得られた紫蘇焼酎原酒に麦焼酎特有の青臭さや刺激感が付与されていることも指摘され、本発明の「フレッシュで自然な紫蘇の芳香」という効果を得るためには、米原料の酒類に特有の、ふくよかで柔らかい品質が、麦原料の酒類に比べてより好ましいことが指摘された。 アルコールを含有する蒸留原料と紫蘇とを単式蒸留釜に張り込む工程、及び 該蒸留原料を、 (C)留出開始時の蒸留原料の温度、及び (D)蒸留終了時の蒸留原料の温度が、それぞれ、50℃≦(C)≦78℃ かつ 55℃≦(D)≦90℃で蒸留する工程、を含み、前記紫蘇が、生の紫蘇の葉及び/又は茎であり、前記蒸留工程において、次の香気成分(A)及び(B):(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;が抽出され、(B)該当成分重量の総和が、該蒸留酒1Lあたり、純アルコール換算値で、4.0mg以上である、蒸留酒の製造方法。 前記蒸留工程において、120mmHg(約16kPa)〜350mmHg(約46.7kPa)の減圧下で蒸留を行う、請求項1に記載の蒸留酒の製造方法。 (A)ペリルアルデヒドの含有重量が、前記蒸留酒1L当り、純アルコール換算値で、2.5mg以上である、請求項1又は2に記載の蒸留酒の製造方法。 前記蒸留酒1L当りの(A)の含有重量に対する(B)該当成分の重量の総和の比が、0.9以上((B)/(A)≧0.9、純アルコール換算値)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸留酒の製造方法。 紫蘇(Perilla frutescens var. crispa)が、赤紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)又は青紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. viridis)から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸留酒。 蒸留酒が焼酎である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸留酒の製造方法。 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された蒸留酒を水又は/及び他の酒と混和してなるアルコール飲料。 前記アルコール飲料が、次の香気成分(A)及び(B)、(A)ペリルアルデヒド;(B)リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α−ピネン及びβ−ピネンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の香気成分;を含有し、(B)該当成分の重量の総和が、容器詰めされたアルコール飲料1L当たり、純アルコール換算値で、2.5mg以上である、請求項7に記載のアルコール飲料。 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された蒸留酒に果実を浸漬することにより得られるアルコール飲料。 請求項8に記載のアルコール飲料に果実を浸漬することにより得られるアルコール飲料。


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