タイトル: | 公表特許公報(A)_メチル移行領域のメチル化を測定してがんの有無を判別する方法 |
出願番号: | 2009517939 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09,G01N 33/574 |
リュウ ムンガン ホン スンジン キム ヨンホ ジョン ユチェ JP 2009542201 公表特許公報(A) 20091203 2009517939 20060819 メチル移行領域のメチル化を測定してがんの有無を判別する方法 オリエントバイオ カンパニーリミテッド 509005904 インダストリーアカデミック コーポレーション ファンデーション, ザ カトリックユニバーシティ オブ コリア 509004837 亀谷 美明 100095957 金本 哲男 100096389 萩原 康司 100101557 リュウ ムンガン ホン スンジン キム ヨンホ ジョン ユチェ KR 10-2006-0063146 20060705 C12Q 1/68 20060101AFI20091106BHJP C12N 15/09 20060101ALI20091106BHJP G01N 33/574 20060101ALI20091106BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AG01N33/574 Z AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW KR2006003267 20060819 WO2008004719 20080110 23 20090204 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA01 4B024CA20 4B024HA12 4B063QA01 4B063QA19 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QS16 4B063QS25 4B063QX01 本発明は、メチル移行領域のメチル化の有無を測定してがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法及びメチル化確認用のプライマーに関する。 がんは、遺伝子の変化により発病する遺伝疾患であると認識されている。DNAは、塩基配列によってアミノ酸の配列及びタンパク質の機能を決定するが、タンパク質の発現有無はDNAメチル化に影響される。すなわち、特定の遺伝子の機能と発現は塩基配列とDNAメチル化によって左右されると言え、腫瘍組織においてはこれらの2種類、すなわち、遺伝子的な形態の変化及び後生的な形態の変化を両方とも観察することができる。このため、同じがん組織において遺伝子的な変化及び後生学的な変化を両方とも確認することができるならば、がんの発病原因をより細かく理解することができ、この理解に基づき、がんの予防と治療に活用することができるであろう。 これまで知られている腫瘍組織に見られるDNAメチルの変化としては、下記の3種類が挙げられる。1)腫瘍組織は、DNAメチル化と脱メチル化を両方とも示す。2)DNAメチル化は遺伝子と隣り合うCpG島において起こるのに対し、脱メチル化は主として反復塩基配列において起こる。3)腫瘍DNAのメチル化と脱メチル化は腫瘍の発生と進行において相互独立した役割を果たす。 このように、腫瘍DNAメチルの変化ががんの発病と進行に寄与する役割の詳細は未だ知られていないのが現状である。しかしながら、腫瘍DNAメチルの変化は、細胞の成長と分化、老化過程における様々なDNAメチルの変化が知られるに伴い、遺伝子不安定性により発生する極めて異質的な悪性表現型を理解する上で新たな関心分野となっている。 ヒト遺伝体は、発生初期に後成遺伝子のリプログラミング過程により人間の各組織への分化が進行し、後成遺伝子は、発生の初期にほとんど確立されて一生を通じて維持される領域と、細胞分化と反復塩基配列RNAの核内密度に影響される可変的なメチル移行領域と、に分けられる。ヒト遺伝体の40%以上を占めている逆転位体は、内因性レトロウイルス様遺伝因子に由来する反復塩基配列であって、自らはメチル化を誘導すると同時に、周りのDNAにメチル化を伝搬して様々なDNAメチル化を遺伝体の全般に亘って形成する核心的な役割を果たすということを把握することができる。 一方、単純反復塩基配列標識子により検出される染色体欠失は遺伝体の量的減少を随伴し、遺伝体の量的減少が及ぼす影響は各個体の遺伝体の量を厳しく維持しようとする遺伝体補償機序を作動することが予想される。このため、染色体欠失は量的減少を補償するために核酸脱メチル化変化を誘導するため、染色体欠失が核酸メチル化変化を通じて様々ながん進行を主導すると見られる。また、このような脱メチル化過程は妊娠初期に胎盤形成を誘導するために細胞の侵襲と転移のための後成遺伝子が活性化していて、分娩と共に退化・欠失される内因性プログラムに類似する遺伝子発現様相を示すことになる。 そこで、本発明においては、腫瘍組織における染色体欠失の度合に対する遺伝子型によるメチル化の変位の度合を確認し、遺伝子型によるメチル化変化の度合は既存のCpG島よりはCpG島と隣接逆転位体との間に形成される可変領域であるメチル移行領域においてさらに多く現れるということを究明し、がん診断に重要な役割を果たすことができるということを確認した。Balmain A, Gray J, Ponder B. Thegenetics and genomics of cancer. Nat Genet 2003; 33 S:238-24Hong SJ, Choi SW, Lee KH, Lee S, Min KO,Rhyu MG. Preoperative genetic diagnosis of gastric carcinoma based onchromosomal loss and microsatellite instability. Int J Cancer. 2005 Jan10;113(2):249-58.Kim KM, Kwon MS, Hong SJ, Min KO, SeoEJ, Lee KY et al. Genetic classification of intestinal-type and diffuse-typegastric cancers based on chromosomal loss and microsatellite instability.Virchows Arch 2003; 443(4):491-50Choi SW, Lee KJ, Bae YA, Min KO, KwonMS, Kim KM et al. Genetic classification of colorectal cancer based onchromosomal loss and microsatellite instability predicts survival. Clin CancerRes 2002; 8(7):2311-2322. 本発明の目的は、内視鏡組織においてがん転移の度合はもとより、予後をも正確に予測可能な手術前遺伝学的な診断法を提供することである。 上記の目的を達成するために、本発明は、メチル移行領域のメチル化の有無を測定してがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法を提供する。 また、本発明は、前記メチル移行領域のメチル化の有無を確認可能なプライマーを提供する。 さらに、本発明は、染色体欠失(Loss Of Heterozygosity;LOH)と染色体不安定性の度合を測定可能な単純反復塩基配列標識子群を提供する。以下、本発明を詳述する。 本発明は、メチル移行領域のメチル化の有無を測定してがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法を提供する。 ヒトの遺伝子上流の転写調節部に位置する隣接逆転位体とCpG島塩基配列との間に形成される可変領域である新規なメチル移行領域は、反復塩基配列の転写密度に応じて異なるレベルのメチル化部位が形成される領域である。この領域は、逆転位体反復塩基配列の転写密度に応じて異なるレベルのメチル化部位が形成される領域であって、がん診断に重要な役割を果たす。なお、個人別の可変化の度合が異なり、しかも、正常組織と腫瘍との間の違いが大きなため、がん診断になお一層有用である。 がん進行と関連する遺伝子を選別する基準としては、1)遺伝子と逆転位体との間の距離、2)遺伝子に近い逆転位体の種類、3)遺伝子周辺の逆転位体の密度、4)遺伝子と遺伝子との間の距離、5)CpG島塩基配列と逆転位体との位置関係、及び6)核内の逆遺伝体の密度が挙げられる。これらを基準として、がん診断と関連して製作された40個の後成遺伝子は、CpG島塩基配列が豊富な領域において製作されたRABGEF1、STAG、CHGBなどの標識子と、CpG島塩基配列の少ないTNFRSF14、SERPINB5、ANGPTL7、TFF2、BGLAP、MSLN、DDX53、MAGEA2と、に分けられ、CpG島塩基配列と隣接逆転位体との間の距離に応じて近位と遠位の2領域以上において考案されたVDR、ST14、CDKN2A、MYBPC2、RUNX3、RUNX2、MLH1、PTENなどに区分可能である。 遺伝子上流にAluよりもL1やLTRの方が相対的に多く位置しており、遺伝子開始部にCpG島塩基配列が少ない場合には、メチル移行領域ががんの進行及び予測になお一層有用である。また、遺伝子開始部にCpG島塩基配列が多い場合、隣接逆転位体とCpG島塩基配列の途中領域において製作された標識子であるほど予測力が高いことを確認した。 メチル化の有無は、通常の方法を用いて測定することができ、大韓民国公開特許第2004−0015705号公報、大韓民国公開特許第2006−0026595号公報、大韓民国公開特許第2003−0069752号公報などに記載の方法を用いて測定することができる。 また、本発明は、前記メチル移行領域のメチル化の有無を確認可能なプライマーを提供する。 前記プライマーは、下記表1に示す配列よりなる群から選ばれる正方向プライマーと逆方向プライマーであって、メチル移行領域のメチル化の度合を極めて正確に測定することができ、電気泳動用とマイクロアレイチップ用など種々の診断法に適用可能である。 また、本発明は、メチル移行領域のメチル化の有無を測定可能なプライマーを含むがん診断用のキットを提供する。 キットに含まれるプライマーとしては、RABGEF1、STAG、CHGB、TNFRSF14、SERPINB5、ANGPTL7、TFF2、BGLAP、MSLN、DDX53、MAGEA2、VDR、ST14、CDKN2A、MYBPC2、RUNX3、RUNX2、MLH1またはPTEN遺伝子のメチル移行領域配列に相補的に結合して増幅可能なあらゆる配列が採用可能であり、好ましくは、上記表1に示すプライマー配列よりなる群から選ばれる正方向及び逆方向のプライマーである。プライマーの製作は、当業界における通常の方法を用いて行うことができ、前記診断キットにおいてプライマーにより増幅されたPCR産物の確認は、当業界における通常のPCR解析装置を用いて行うことができる。 さらに、本発明は、染色体欠失と染色体不安定性の度合を測定可能な単純反復塩基配列標識子群を提供する。 本発明においては、頻繁な染色体欠失を示すがん関連染色体を選択する40個の単純反復配列標識子を提供し、これを使用することにより、ヘテロ接合部の欠失の度合に応じて、初等度、LOH−L(低等度)、LOH−H(高等度)の染色体欠失型とMSI型の4種類に区分可能であることを確認した。これらの遺伝子変位を高危険遺伝子型(LOH−H及びLOH−B)と低危険遺伝子型(LOH−L及びMSI)に分類することができ、2期と3期の胃がん患者の生存率に対する極めて重要な予測因子であることが確認された(図4、図5及び図6)。 このため、胃がんの臨床病理学的な特性を最も表わす反復配列不安定性と染色体欠失の度合に基づいて、既存の形態学的な病期により予測できなかった転移と再発について説明可能な遺伝型に対する分類を設けた。 前記標識子群は、下記表2に示す配列よりなる群から選ばれる正方向及び逆方向の標識子である。 さらに、本発明は、単純反復塩基配列標識子群を含むがん診断用のキットを提供する。 キットに含まれるプライマーは、上記表2に示す配列よりなる群から選ばれる正方向及び逆方向のプライマーである。プライマーの製作は、当業界における通常の方法を用いて行うことができ、プライマーにより増幅されたマーカー遺伝子のPCR産物の確認は、当業界における通常のPCR解析装置を用いて行うことができる。 本発明者らは、染色体欠失の度合が高いほど脱メチル化の度合が増大し、染色体欠失の度合が低いほどメチル化の度合が増大するという相関関係を究明した。このため、同じ病変に対してメチル化の度合の解析と染色体欠失LOHを同時に測定するならば、既存の染色体欠失の非連続性による不正確性を大幅に低減することができる。本発明において提供する遺伝学的な方法ないし腫瘍のサイズとの組み合わせによる予測された琳派節転移の度合はCTによる病期よりも正確であり、このような手術前遺伝学的な診断は胃がんの臨床的な行路に関する情報を提供するであろう。このため、本発明において提供する手術前の遺伝学的な診断は手術と治療方針を立てる上で極めて有用であると見られる。本発明の概略ブロック図であって、遺伝子転写開始部と隣接逆転位体との間に位置するメチル移行領域は、組織や細胞の反復塩基配列の転写密度に応じて異なるレベルのメチル化部位が形成される領域であって、組織特異的であり、且つ、個人別偏差があるということを示す図である。この可変領域における後成遺伝標識子を用いてがん細胞への進行過程を予測する。胃がんにおいて染色体欠失が起こった染色体の数と病変のサイズをもって、腸型においてはLOH−H(高等度、4〜8個欠失)、LOH−L(低等度、0〜3個欠失)の染色体欠失型に、且つ、びまん型においてはLOH−H(高等度、4〜8個欠失)、LOH−L(低等度、3〜2個欠失)、LOH−B(初等度、0〜1個欠失)に区分し、内視鏡組織の遺伝子型と手術組織の遺伝子型との比較及びがん病変のサイズに基づいて手術前診断にLOHを活用する方法を示す図である。染色体不安定性が発生した低危険群(ケース10)と高危険群(ケース25)のそれぞれに対して正常組織と腫瘍組織を比較して可変領域後成遺伝標識子により重合酵素連鎖反応と電気泳動を行った結果を示す図である。 ケース10:低危険群(染色体不安定性が現れた場合) ケース25:高危険群(染色体不安定性はないが、高等度の染色体欠失がある。) U:脱メチル化標識子により増幅した結果 M:メチル化標識子により増幅した結果 %:メチル化の度合を百分率に換算した値胃がんにおいて染色体腕4p、5q、9p、13q、17p、18qに位置する40個の単純反復配列標識子により正常組織と腫瘍組織に対して重合酵素連鎖反応と電気泳動を行った結果を示す図である。*によって示される部分は、正常組織と比較したときに染色体欠失が起こった領域であり、ケース25はLOH−H(高等度)の染色体欠失を示している。臨床2期と3期による手術後胃がん患者130名における生存曲線に関する図である。遺伝子型により患者を分類したとき、低等度危険群(低等度欠失型、染色体不安定性)においては高い生存率を示し、高等度危険群(高等度欠失型、初等度欠失型)においては低い生存率を示している。がん診断に染色体欠失の度合と可変領域のメチル化の度合を併用する場合、高危険群(LOH−H、LOH−B)と低危険群(LOH−L、MSI)との区分が明確になる結果を示す図である。 以下、本発明を実施例により詳述する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。<実施例1>新規なメチル移行領域のメチル化の度合を測定するPCR標識子を用いたがん診断<1−1>顕微切断及びDNA抽出 パラフィンブロックに固定されたがん組織見本を5μmの厚さに細かく切り、キシレンによりワックス除去を行った後、エタノールに水和させた。ヘマトキシリン−エオシンにより染色してスライドガラスに固定した。顕微鏡観察をしながら、スライドガラスから針を用いてがん組織領域と正常組織領域をそれぞれ別々に掻き取った。以上のようにしてそれぞれの領域から掻き取った組織細胞を細胞破砕緩衝溶液に入れ、37℃の温度条件下において3時間、且つ、50℃の温度条件下において3時間放置した。そして、PCR解析を始める前に、熱を加えてタンパク質分解酵素Kを不活性化させた。<1−2>メチル化パターンの解析−試料確保のための重亜硫酸変形及びメチル化特異PCR 前記実施例<1−1>において得たDNAにNaOHを入れ、10分間37℃の温度条件下において放置した後、ここにヒドロキノンと重亜硫酸ナトリウム(pH5.0)を新鮮に作成して混合した。次いで、上記の混合物の上に鉱油を載せて50℃の温度条件下において16時間かけて反応させた。次いで、Wizard DNA purification resin(米国プロメガ社製)を用いて純粋精製して溶離した後、NaOHを0.3Mになるように入れて室温において5分間反応させることにより変形を完了した。エタノール沈殿のためにグリコーゲンと酢酸ナトリウムの存在下においてエタノールを加えて混合した後、−20℃の温度条件下において一晩中放置した。次いで、30分間遠心分離して沈降させた後、70%エタノールにより洗浄し、蒸留水に溶かして即座で使用したり−20℃に保管した。 PCR反応液は、1X PCR緩衝溶液、dNTPs、P32−dTTP、プライマー、及び重亜硫酸による変形DNAまたは未変形DNAを含む。反応は、95℃の温度条件下において5分間ホットスタートし、Taq重合酵素を加えた後、増幅反応後に最後に72℃の温度条件下において10分間延長した。PCR産物をポリアクリルアミドゲルに搬入して電気泳動を行った後、放射型光スキャナー(BAS2500、日本富士写真フィルム社製)により観察した。メチル化の度合(%)は標準検量線を用いて求め、図中のバンド下に%にて表記した。図3中、Uは脱メチル化標識子により増幅した結果、Mは、メチル化標識子により増幅した結果を示し、%はメチル化の度合を百分率に換算した値である。 図3は、染色体不安定性が生じた低危険群(ケース10)と高危険群(ケース25)のそれぞれに対して正常組織と腫瘍組織を比較し、可変領域の後成遺伝標識子及びCpG島塩基配列の付近において製作された標識子を用いて重合酵素連鎖反応と電気泳動を行った結果である。CpG島塩基配列の付近において製作された標識子の場合、正常組織と腫瘍との違いが比較的に小さいが、CpG島塩基配列から外れた本発明のメチル移行領域において製作された標識子の場合、低危険群(ケース10)においてはメチル化、高危険群(ケース25)の場合には脱メチル化の傾向を示している。CpG島塩基配列の付近において製作された標識子の場合、正常組織と腫瘍との違いが比較的に小さいが、メチル移行領域標識子はより優れたがん診断領域であることを示している。例えば、高危険群(ケース25)においてP15やRASSF1AなどのCpG島塩基配列領域において製作された標識子は正常組織と腫瘍との違いが小さいのに対し、本発明のメチル移行領域の方のMLH1、MAGEA2などの標識子は正常組織と腫瘍との違いが大きいことが分かる。高危険群(ケース25)におけるMLH1−0.6kbの場合、CpG島塩基配列領域において製作された染色体欠失の度合による違いや、正常組織と腫瘍との間のメチル化の度合に違いを示さず、がん診断予測力に劣る標識子であることを確認することができたが、本発明のメチル移行領域においては正常組織と腫瘍との間の違いを明らかに確認することができた。<実施例2>単純反復配列標識子によるLOH(ヘテロ接合部の欠失)の度合測定 胃がんにおいて染色体腕4p、5q、9p、13q、17p、18qに位置する40個の単純反復配列標識子により正常組織と腫瘍組織に対して重合酵素連鎖反応と電気泳動を行った。その結果、ケース10の場合、15個のホモ接合標識子のうち40%以上において高等度の染色体不安定性を示し、ケース25の場合にはLOH−H(高等度)の染色体欠失を示している。<実施例3>内視鏡病変と手術病変における染色体欠失の度合の比較 内視鏡病変が全体の病変の遺伝子型を代表可能であるならば、手術前遺伝子の診断に内視鏡病変染色体欠失の解析を利用することができる。胃がん患者における91組の内視鏡病変と手術病変を比較した結果、96%が類似する遺伝子型を示す代表性があり、胃がん患者の手術前に内視鏡病変遺伝子が診断可能である。<実施例4>LOHの度合及び病変のサイズとの組み合わせによる手術組織の正確度 130名の胃がん患者に対する多病所研究において、琳派節転移はサイズとは無関係に高危険遺伝子型において頻繁であり、低危険遺伝子型は5cm以上の病変において83%であった。腸膜侵襲は、遺伝子型とは無関係に、病変が小さな(<5cm)場合よりも、病変が大きな(>5cm)場合に頻繁であった。内視鏡病変の遺伝子型と病変のサイズを組み合わせて予測する場合、手術組織に対する予測正確度は、琳派節転移及び腸膜侵襲のそれぞれに対してROC領域(Receiver operating characteristics area)が0.815及び0.685と優れていた。 <実施例5>染色体欠失(LOH)の度合と病変のサイズとの組み合わせによる手術組織予測の正確度とコンピュータ断層撮影の正確度との比較 下記表3は、LOHの度合と病変サイズとの組み合わせ検査の正確度とコンピュータ断層撮影の正確度を比較した実施例である。同図を参照すると、腸膜侵襲(ROC領域=0.691 vs 0.548)や琳派節転移(ROC領域=0.691 vs 0.642)の結果より、コンピュータ断層撮影よりも、遺伝子検査と病変サイズを組み合わせた予測の方が予測度が高いことが分かる。<実施例6>染色体欠失(LOH)の度合と染色体不安定性による遺伝子型の分類と生存率との関係 図5は、臨床2期と3期による手術後胃がん患者130名における生存曲線を示すものである。遺伝子型により患者を分類したとき、低危険群(低等度欠失型、染色体不安定性)においては高い生存率を示し、高危険群(高等度欠失型、初等度欠失型)においては低い生存率を示している。<実施例7>染色体欠失の度合と可変領域のメチル化の度合を並行測定して遺伝子診断の予測正確性を高める 図6は、染色体欠失の度合を高等度、低等度、初等度、染色体不安定性に区分する場合、メチル化の度合を並行して調べることにより染色体欠失の度合の区分がなお一層明確になることを示すものである。図6のA、Bは、染色体欠失によってメチル化の度合が減少することを示すグラフであり、図6のC、Dは、染色体欠失の度合が増大するに伴いメチル化の度合は減少する傾向を示している。染色体欠失の度合によって、高等度、初等度の欠失においてはメチル化が減少し、低等度、染色体不安定性においてはメチル化が増大する傾向を示している。このような染色体欠失とメチル化の度合が有意差を示す点を用いてがん診断時における予測力をなお一層高めることができる。すなわち、可変領域のメチル化の度合とLOHの度合との相関関係が高いため、メチル化の度合はLOHの不連続性による不正確性を大幅に低減して2種類の測定方法を同じ病変の解析に適用すれば、既存の遺伝子診断の正確性を大幅に高めることができる。 本発明は、1)メチル移行領域のメチル化を測定してがん診断に活用可能な標識子群を提供し、2)染色体欠失と関連する単純反復塩基配列標識子群を提供する他、3)メチル移行領域のメチル化の度合と染色体欠失の度合を同時に解析してがん予測の正確性を画期的に改善する方法を考案した。従って、本発明は、病変の小さな一部である内視鏡組織においてがん転移の度合はもとより、予後をも正確に予測可能な手術前遺伝学的な診断法を提供する結果、手術と治療方針を立てる上で極めて有用である。 配列番号1〜160はがん診断と関連するメチル移行領域後成遺伝標識子40個に対する正方向プライマー及び逆方向プライマーであって、配列番号1〜4はRABGEF1、−0.2kb、配列番号5〜8はSTAG1、−0.4 kb、配列番号9〜12はCHGB、−0.3 kb、配列番号13〜16はVDR、−0.7kb、配列番号17〜20はVDR、+1.0 kb、配列番号21〜24はST14、−0.3 kb、配列番号25〜28はST14、−0.8kb、配列番号29〜32はCDKN2A、−0.1 kb、配列番号33〜36はCDKN2A、−1.5 kb、配列番号37〜40はCDKN2A、+0.8kb、配列番号41〜44はPPARG、−0.2 kb、配列番号45〜48はMYBPC2、−1.2 kb、配列番号49〜52はMYBPC2、−0.7kb、配列番号53〜56はRB1、−0.4 kb、配列番号57〜60はRUNX3、−0.5 kb、配列番号61〜64はRUNX3、−1.7kb、配列番号65〜68はRUNX3、+1.0 kb、配列番号69〜72はPAX5、−1.0 kb、配列番号73〜76はMLH1、−0.6kb、配列番号77〜80はMLH1、−1.0 kb、配列番号81〜84はCDH1、0 kb、配列番号85〜88はPTEN、−1.4kb、配列番号89〜92は−0.9 kb、配列番号93〜96はKIAA1752、+0.4 kb、配列番号97〜100はFLJ43855、−1.1kb、配列番号101〜104はRUNX2、−0.7 kb、配列番号105〜108はRUNX2、−3.0 kb、配列番号109〜112はRUNX2、−3.8kb、配列番号113〜116はRUNX2、+1.6 kb、配列番号117〜120はMUC8、+2.0 kb、配列番号121〜124はESR2、−0.9kb、配列番号125〜128はE2F4、0 kb、配列番号129〜132はTNFRSF14、−0.6 kb、配列番号133〜136はSERPINB5、−0.3kb、配列番号137〜140はANGPTL7、+0.5 kb、配列番号141〜144はTFF2、−0.2 kb、配列番号145〜148はBGLAP、−0.5kb、配列番号149〜152はMSLN、−0.8 kb、配列番号153〜156はDDX53、0 kb、配列番号157〜160はMAGEA2、−0.1kbに対する正方向及び逆方向のプライマーである。配列番号161〜240は染色体欠失と染色体不安定性の度合を測定可能な単純反復塩基配列標識子群であって、配列番号161と162はD3S1597、配列番号163と164はD3S1552、配列番号165と166はD3S1312、配列番号167と168はD3S1478、配列番号169と170はD3S1619、配列番号171と172はD4S1609、配列番号173と174はD4S2946、配列番号175と176はD4S174、配列番号177と178はD4S391、配列番号179と180はD4S230、配列番号181と182はD5S519、配列番号183と184はD5S346、配列番号185と186はD5S409、配列番号187と188はD5S349、配列番号189と190はD5S422、配列番号191と192はD8S261、配列番号193と194はD8S262、配列番号195と196はD8S503、配列番号197と198はD8S552、配列番号199と200はD8S277、配列番号201と202はD9S157、配列番号203と204はD9S200、配列番号205と206はD9S270、配列番号207と208はD9S199、配列番号209と210はD9S288、配列番号211と212はD13S267、配列番号213と214はD13S263、配列番号215と216はD13S135、配列番号217と218はD13S286、配列番号219と220はD13S118、配列番号221と222はTP53、配列番号223と224はD17S122、配列番号225と226はD17S796、配列番号227と228はD17S1358、配列番号229と230はD17S1566、配列番号231と232はD18S67、配列番号233と234はD18S57、配列番号235と236はD18S474、配列番号237と238はD18S70、配列番号239と240はD18S58に対する正方向及び逆方向のプライマーである。 RABGEF1(RAB guanine nucleotide exchange factor 1)、STAG(stromal antigen)、CHGB(chromogranin B)、TNFRSF14(tumor necrosis factor receptor superfamily 14)、SERPINB5(serine proteinase inhibitor, clade B, member 5)、ANGPTL7(angiopoietin−like 7)、TFF2(trefoil factor 2)、BGLAP(bone gamma−carboxyglutamate (gla) protein)、MSLN(mesothelin)、DDX53(DEAD box polypeptide 53)、MAGEA2(melanoma antigen family A)、VDR(vitamin D (1,25− dihydroxyvitamin D3) receptor)、ST14(suppression of tumorigenicity 14)、CDKN2A(cyclin−dependent kinase inhibitor 2A)、MYBPC2(myosin binding protein C, fast type)、RUNX3(runt−related transcription factor 3)、RUNX2(runt−related transcription factor 2)、MLH1(MutL DNA mismatch repair protein)及びPTEN(Phosphatase and Tensin homolog deleted on chromosome Ten)よりなる群から選ばれる1以上の遺伝子のメチル移行領域を含むがん診断用の遺伝子マーカー。 メチル移行領域のメチル化の有無を測定するステップを含むがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法。 メチル移行領域は、RABGEF1、STAG、CHGB、TNFRSF14、SERPINB5、ANGPTL7、TFF2、BGLAP、MSLN、DDX53、MAGEA2、VDR、ST14、CDKN2A、MYBPC2、RUNX3、RUNX2、MLH1及びPTENよりなる群から選ばれる1以上の遺伝子のメチル移行領域であることを特徴とする請求項2に記載の方法。 メチル移行領域のメチル化の有無を確認可能なプライマー。 前記プライマーは、配列番号1〜160に記載の配列よりなる群から選ばれる正方向プライマーと逆方向プライマーであることを特徴とする請求項4に記載のプライマー。 請求項4に記載のプライマーを含むがん診断用のキット。 染色体欠失(LOH)と染色体不安定性の度合を測定可能な単純反復塩基配列標識子群。 前記標識子群は、配列番号161〜240に記載の配列よりなる群から選ばれる正方向及び逆方向の標識子であることを特徴とする請求項7に記載の標識子群。 請求項7に記載の標識子群を含むことを特徴とするがん診断用のキット。 染色体欠失の度合を測定するステップをさらに含む請求項2に記載の方法。 請求項7に記載の標識子群をさらに含む請求項6に記載のがん診断用のキット。 【課題】本発明は、メチル移行領域のメチル化の有無を測定してがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法及びメチル化確認用のプライマーに係り、がん診断に重要と考えられる新規なメチル移行領域を究明し、その領域のメチル化を測定可能なプライマーを提供することにより、メチル移行領域のメチル化の度合と染色体欠失の度合を同時に解析してがん予測の正確性を画期的に高めることができる。【解決手段】RABGEF1、STAG、CHGB、TNFRSF14、及び、その他多種からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のメチル移行領域を含むがん診断用の遺伝子マーカー。メチル移行領域のメチル化の有無を測定するステップを含むがんの有無、がん転移の度合または予後を確認する方法。【選択図】図1 配列表