タイトル: | 特許公報(B2)_アンドログラホリドを有効成分とする抗疲労剤及び経口組成物 |
出願番号: | 2009517839 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/365,A23K 1/16,A23L 1/30,A23L 2/52,A61K 31/381,A61P 1/14,A61P 3/02,C07D 307/58 |
浅見 純生 齋藤 佳世 前田 哲史 立石 法史 JP 5714227 特許公報(B2) 20150320 2009517839 20080530 アンドログラホリドを有効成分とする抗疲労剤及び経口組成物 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 竹内 茂雄 100101373 山本 修 100118902 浅見 純生 齋藤 佳世 前田 哲史 立石 法史 JP 2007144623 20070531 20150507 A61K 31/365 20060101AFI20150416BHJP A23K 1/16 20060101ALI20150416BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150416BHJP A23L 2/52 20060101ALI20150416BHJP A61K 31/381 20060101ALI20150416BHJP A61P 1/14 20060101ALI20150416BHJP A61P 3/02 20060101ALI20150416BHJP C07D 307/58 20060101ALI20150416BHJP JPA61K31/365A23K1/16 302BA23L1/30 ZA23L2/00 FA61K31/381A61P1/14A61P3/02C07D307/58 A61K31/365 BIOSIS MEDLINE EMBASE REGISTRY 特表2003−522166号公報 特開平8−34740号公報 特開2000−103718号公報 国際公開第2006/101538号 中国特許出願公開第1962650号明細書 国際公開第2005/074953号 国際公開第2007/095718号 国際公開第2003/080062号 米国特許出願公開第2003/044512号明細書 Phytomedicine,1999年,Vol.6,p.217−223 Food Chemistry,2007年 1月,Vol.100,p.81−90 食品と開発 ,2007.Feb ,Vol.42 No.2 p22−31 4 JP2008060011 20080530 WO2008149802 20081211 17 20101104 2013017691 20130912 蔵野 雅昭 安藤 倫世 内田 淳子 本発明は、アンドログラホリドを有効成分とする抗疲労剤に関する。より具体的には、本発明は、アンドログラホリドを有効成分とする疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための、医薬組成物又は飲食物に関する。本発明はさらに、アンドログラホリド及びα-リポ酸を有効成分とする新規経口組成物、並びに疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための抗疲労剤に関する。 疲労は、一般に疲労感、倦怠感を主症状とし、その他、睡眠障害や意欲低下など多彩な症状を伴う状態であり、現代社会に生きる多くの人が日常向き合っている現象である。疲労感や倦怠感は体の異常を知らせる重要なアラーム信号の一つであり、健常時でも激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合などに、自覚するようになる。このような生理学的な疲労は通常、体を休めることにより元の正常な状態に回復し、長く続くことはない。しかし、現代人は、長時間の労働や過度のストレス状況に置かれることが多く、また十分な休息を取るのが難しいため、疲労感や倦怠感の回復が困難になることもしばしばある。ここ14年で慢性的な疲労に悩む人が増加し、疲労の質が変化してきているという報告もある(非特許文献1)。 一方、現代日本においては、長時間過密の働き過ぎによる突然死であると定義される「過労死」も大きな社会問題となっている。過労死は医学的、経済的、社会的にも非常に重要であると認識されているにも関わらず、その発症メカニズムについてはほとんど解明されていないが、精神的疲労、肉体的疲労の蓄積がその大きな要因であると考えられている。 また、慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)という疾患が難病の一つとして話題になっている。1988年に米国疾患対策センター(CDC)により提唱された疾患で、これまで健康に生活してきた人に、原因不明の激しい全身疲労感とともに、微熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、思考力低下、集中力低下、睡眠障害などの精神的症状、肉体的症状が起こり、長期間この状態が続いて健全な社会生活が送れなくなるという病気である。日本ではようやく1991年ごろから厚生省の専門研究班が実態調査に乗り出した段階で、その原因は分からず、診断基準も十分確立していない。過労死が社会問題となっている今日、慢性疲労症候群も早期の原因究明が望まれるところであるが、現状では上記の通り、その診断基準も確立されていない。 また、疲労には精神的要因によるものと肉体的要因によるものがあるが、これらは密接に結びついている場合が多く、区分することは一般的に難しいと言われている。肉体的な疲労が続くと、全身の倦怠感、脱力感等次第に精神的にも疲れを感じるようになり、同時に集中力の低下や意欲の喪失、眠気の誘発等をきたす。肉体的、精神的疲労によって、内臓機能が低下する、いわゆる臓器疲労が誘発されることもある。睡眠障害と疲労との関連も注目され、徹夜により不快感を伴う疲労が起こり、日常生活にも悪影響を生じることが多い。 このような背景の中、疲労の軽減、疲労から正常な状態への回復を目的として、いわゆる「抗疲労物質」が提案されている。例えば、ある種のアミノ酸組成物の体力増強作用(特許文献1)、L−カルニチン及びヒスチジン関連ジペプチドの体力増強作用(特許文献2)、サンザシ抽出物の持久力向上、筋肉組織強化、筋肉疲労回復促進作用(特許文献3)等が報告されている。また、特許文献4は、運動等による体力の消耗や疲労時等における栄養補給を目的として、インスリン分泌亢進アミノ酸及び抗酸化作用を有する食品素材(アスコルビン酸を含む)を含有する栄養補給組成物を開示する。アスコルビン酸は、慢性疲労症候群を処置する対症療法にも有効であるとの報告がある(非特許文献2)。また、特許文献5は、慢性疲労症候群の患者では血清中のアシルカルニチンが減少しており、アシルカルニチン代謝異常の処置にアセチル−L−カルニチンの投与が有効であることを記載する(特許文献5)。 一方、アンドログラホリドに関しては、アンドログラホリドを含有するとして知られている植物である穿心蓮を1日に200mg摂ることにより寒冷期の風邪予防効果があること、1日に1200mg以上摂ることにより風邪の諸症状を緩和することが言われていた。さらにアンドログラホリド及びその誘導体が、抗癌剤、抗ウイルス薬、抗マラリヤ薬、抗細菌薬、肝保護薬、免疫調節薬等として使用し得ること(特許文献6)、アンドログラホリドが血小板活性化因子アセチルヒドラーゼの機能を調整する作用(特許文献7)、アンドログラホリドが酸化ストレスによる肝臓グルタチオン活性の低下を上昇させる作用(非特許文献3)については報告があったが、疲労負荷に対する作用、抗疲労作用については全く報告が無かった。特開平9-124473号公報特開2001-046021号公報特開平8-47381号公報特開平6-327435号公報特開平8-26987号公報特表2003-522166号公報特開2007-176934号公報疲労の科学、井上正康、倉恒弘彦、渡辺恭良編、講談社、222-228頁、2001In Vivo (1996) Nov-Dec;10(6):585-96Biochemical Pharmacology(1993)Vol.46, No.1, pp.182-185 スポーツ選手のような特殊な生活を送る人のためのみならず、普通の生活を送る人が日常的に健全な生活を送るために、また、動物においても、競走馬などのレース用の動物から家畜、動物園などの施設で飼育されている動物、ペットを含む動物のために、抗疲労作用のある組成物が求められている。特に肉体的な疲労のみならず、精神的な疲労、臓器の疲労及びこれらの複合的な疲労に対し効果的な組成物が希求されている。しかしながら、従来の抗疲労物質は主に運動による筋肉の疲労を対象とし、また、カフェインやエチルアルコールを含有し、興奮、不眠などを伴うことも多かった。また、疲労を自覚している多くの人々は一晩休息を取っても疲労は回復しないと答えており、そのまま放置すると過労状態や慢性疲労症候群のような病的疲労状態に陥ってしまう可能性が考えられる。しかし、何とか日常生活を送ることができる場合には、日々の生活の煩雑さに追われ、病院へ行く手間を惜しんでそのまま放置していることが多いため、日常的に継続摂取可能な組成物が望まれている。 本発明は、ヒトや動物等に対して安全で、日常的に継続摂取が可能であり、抗疲労作用を有する、疲労に関連する疾患又は状態の予防又は処置に有効である組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の食品成分を鋭意探索した結果、アンドログラホリドに抗疲労作用、具体的には、精神的疲労、臓器疲労の負荷軽減作用、回復促進作用、肉体疲労の予防作用、負荷軽減作用、回復促進作用及びそれらに伴う持久力の向上、体力増強等の作用があることを発見し、しかも、疲労負荷前、疲労負荷中、疲労負荷後のいずれの時期に投与しても抗疲労作用を発揮することを見出し、さらにはこの抗疲労作用はアンドログラホリドとα-リポ酸とを組み合わせることで、アンドログラホリド単独又はα-リポ酸単独で得られる抗疲労作用に比べて増強されることをも見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、アンドログラホリドを有効成分とする抗疲労剤を提供する。 本発明はまた、疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための医薬組成物又は飲食物である、前記の抗疲労剤を提供する。 本発明はまた、前記疲労に関連する疾患又は状態が、慢性疲労症候群、過労死、過労、肉体的疲労(例えば筋肉疲労)、精神的疲労(例えば睡眠不足に起因する疲労)及び臓器(内臓、特に肝臓及び/又は脾臓)疲労、好ましくはこれらの2つ以上の組み合わせ、からなる群から選択される、前記の抗疲労剤を提供する。 本発明はまた、ヒトを含む動物の1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.01〜500mg/kg体重(好ましくは0.1〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1〜10mg/kg体重、特に好ましくは0.25〜10mg/kg体重)含有する、前記の抗疲労剤を提供する。 本発明はまた、ヒト(成人)1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.1〜100mg(好ましくは0.1〜50mg、より好ましくは0.1〜10mg、特に好ましくは0.25〜10mg)含有する、前記の抗疲労剤を提供する。 1日の摂取は、単回又は複数回(例えば2又は3回)に分けて実施することができる。すなわち本発明はまた、ヒト(成人)1回の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.03〜50mg(好ましくは0.05〜25mg、より好ましくは0.03〜5mg、特に好ましくは0.13〜5mg)含有する、前記の抗疲労剤を提供する。 本発明はまた、抗疲労有効成分としてアンドログラホリドとα-リポ酸を含有し、アンドログラホリド又はα-リポ酸を単独の有効成分とする場合より優れた抗疲労作用を発揮する経口組成物を提供する。本発明の経口組成物は、抗疲労剤として用いることができる。 さらに本発明は、前記の疲労に関連する疾患又は状態が、精神的疲労又は睡眠不足による疲労に関連する疾患又は状態である、前記の抗疲労剤を提供する。 さらに本発明は、経口用である、前記の抗疲労剤を提供する。 さらに本発明は、疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置する医薬組成物又は飲食物の製造のための、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸の使用に関する。 さらに本発明は、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸を投与することを含む、疲労に関連する疾患又は状態の予防又は処置方法に関する。 さらに本発明は、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸を有効成分として含有する、抗疲労作用を有する医薬組成物又は飲食物を提供する。 さらに本発明は、前記の抗疲労剤を含有することを特徴とする、疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための医薬組成物又は飲食物を提供する。 さらに本発明は、カプセル剤又はサプリメント又は飲料の形態である、前記の抗疲労剤を提供する。 さらに本発明は、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸を疲労負荷中に少なくとも1回投与することを含む、精神的疲労、肉体的疲労及び/又は臓器疲労の負荷を軽減する方法に関する。 さらに本発明は、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸を疲労負荷後に少なくとも1回投与することを含む、精神的疲労及び/又は肉体的疲労(特に肉体的疲労)回復を促進する方法に関する。 さらに本発明は、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸を疲労負荷前に少なくとも1回投与することを含む、肉体的疲労(筋肉疲労)の負荷を予防又は軽減する方法に関する。 本発明の抗疲労剤、具体的には疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための医薬組成物又は飲食物は、優れた抗疲労作用を有し、しかも、ヒトや動物等へ投与しても少量で効果が得られ安全なので、日常的に継続摂取が可能である。本発明の抗疲労剤は、投与時期を選ばず、疲労を感じたときに服用して疲労の早期回復を図ること、予め服用してから労働、スポーツなどを行うことにより疲労を予防することができる。また、スポーツを行う前や途中で摂取することにより、持久力向上が期待できる。上記の効果には即効性も期待できる。さらに、日常的に摂取することにより、肉体的疲労、精神的疲労、臓器疲労に関連する疾患又は状態を予防することができる。そして、本抗疲労剤は疲労によりもたらされるシワや肌荒れを予防することができる。 本発明において、有効成分としてアンドログラホリドをα-リポ酸と共に用いる態様によれば、上記の抗疲労効果をアンドログラホリド又はα-リポ酸の単独使用で得られる効果に比べて相乗的に向上させることができる。ここで、抗疲労効果の相乗的な向上とは、それぞれ単独で用いた場合には認められない効果(相乗効果)が得られることを意味する。例えば、本明細書の実施例5において、通常飼育群の遊泳時間から水浸飼育対象群の遊泳時間を引いた時間を100%としたとき、各薬剤投与群の遊泳時間の増加率は、アンドログラホリド単独投与群では5%増加し、またα-リポ酸単独投与群では13%増加したのに対し、アンドログラホリドとα-リポ酸を組み合わせて投与した群では、51%増加したことから、2成分の併用により相乗的な効果の向上が得られたといえる。図1は、実施例1における、アンドログラホリドの投与(図1(A):0.5, 2.0, 8.0mg/kg体重/日、図1(B):0.25mg/kg体重/日、図1(C):200mg/kg体重/日)と水浸飼育後の重り負荷強制水泳試験での遊泳時間との関係を示すグラフである。図2は、実施例2における、アンドログラホリドの投与と、水浸飼育後の血清中GOT量(A)、血清中GPT量(B)及び肝臓TBARS量(C)との関係を示すグラフである。図3は、実施例3における、アンドログラホリドの投与と強制運動後の自発運動量(0〜2時間の測定値:探索行動(A)、2〜14時間の測定値:暗期自発運動(B))との関係を示すグラフである。図4は、実施例4における、アンドログラホリドの投与と強制運動後の血中クレアチンキナーゼ活性との関係を示すグラフである。図5は、実施例5における、アンドログラホリド及び/又はα-リポ酸の投与と水浸飼育後の重り負荷強制水泳試験での遊泳時間との関係を示すグラフである。 (アンドログラホリド) 本発明の抗疲労剤、医薬組成物又は飲食物(以下、単に「本発明の組成物」ということもある。)に有効成分として含まれるアンドログラホリド(3-[2-decahydro-6-hydroxy-5-(hydroxyl-methyl)-5,8a-dimethyl-2-methylenenaphthyl]ethylidene)dihydro-4-hydrofuran-2(3H)-one)は、下記式(I)で示される既知の化合物である。 本明細書中において、「アンドログラホリドを有効成分として含む」というときは、所望の効果を発揮する限り、上記アンドログラホリド、その立体異性体、多型体(以下、「アンドログラホリド類」ということもある)を単独又は2種以上混合して含むことが出来る。 アンドログラホリドは、例えばキツネノマゴ科植物である穿心蓮(センシンレン、アンドログラフィス、Andrographis paniculata)より抽出、精製するか、市販品を購入することにより容易に得ることができる。アンドログラホリドを得るための具体的な抽出、精製方法としては、乾燥した穿心蓮を粉砕し、メタノール、ヘキサン等で順次抽出して抽出物を得、これを更にカラムクロマトグラフィ等で精製する方法を例示することができる。また、市販品の具体例としては、和光純薬、アルドリッチ社、シグマ社、カルバイオケム社より供給されている「アンドログラホリド」を例示することができる。 本発明で使用するアンドログラホリド類としては、上記の抽出、精製品、合成品及び市販品のいずれを用いても良く、アンドログラホリド類を含有する植物の抽出物等を用いても良い。例えば、上述の穿心蓮には、葉にアンドログラホリド、デオキシアンドログラホリド、ネオアンドログラホリド、ホモアンドログラホリド、アンドログラファン、アンドログラフォン、アンドログラフォステリン等が、根にアンドログラホリド、アンドログラフィン等が、全草に14-デオキシ-11-オキソアンドログラホリド、14-デオキシ-11,12-ジデヒドロアンドログラホリドが含まれることが知られる(中薬大辞典 第三巻1985(昭和60)年12月10日初版第1刷発行)。 本発明の組成物に含まれるアンドログラホリド類は、薬学的に許容される塩の形で使用してもよく、体内でアンドログラホリドとなるような形態(プロドラッグ)で使用してもよい。そのような塩を形成する酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、没食子酸、アスパラギン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、その一種又は二種以上を使用することができる。 (α‐リポ酸) 本発明の組成物に有効成分として含めてよいα‐リポ酸(チオクト酸、1,2-ジチオラン-3-ペンタン酸)は、医薬又は飲食物として服用又は食用可能なものであって、アンドログラホリドと組み合わせた場合に抗疲労作用増強効果を発揮するものであれば、その由来及び製造方法に何ら限定されない。また、D体、L体及びラセミ体のいずれであってもよく、簡便に入手可能な市販のラセミ体等を用いることができる。 α-リポ酸は、体内で生合成される物質で、身体中ほぼすべての細胞に存在し、エネルギー代謝において、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸等の酸化的脱炭素反応を触媒する補酵素として重要な役割を果たしている。また、抗酸化能を有し、ビタミンC、ビタミンE、CoQ10、グルタチオンなどの内因性抗酸化剤の再生にも寄与することが知られている。 本発明の組成物に含まれるα-リポ酸は、薬学的に許容される塩の形で使用してもよく、体内でα-リポ酸となるような形態(プロドラッグ)で使用してもよい。また、種々の誘導体として使用することもできる。そのようなα-リポ酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、α-リポ酸の誘導体としては、アルキル又はアルケニルエステル類、アミド類、還元体であるジヒドロリポ酸あるいはそのアルキル又はアルケニルエステル及びアミド等が挙げられる。本発明においては、上記の一種又は二種以上を選択して使用することができる。 上記のアンドログラホリドを摂取すると、顕著な抗疲労作用が得られ、またその抗疲労作用は、さらに所定量のα-リポ酸を組み合わせて摂取することで相乗的に増強されることを本発明者らは見出した。抗疲労作用を有する組成物は、疲労に関連する疾患又は状態の予防又は処置に有用である。 本発明において、「疲労」とは、肉体的及び/又は精神的負荷を連続して与えたときにみられる一時的な肉体的、精神的及び/又は臓器のパフォーマンスの低下現象であり、このパフォーマンスの低下は、肉体的、精神的及び/又は臓器の作業能力の、質的又は量的な低下を意味する。肉体的疲労に伴う精神的疲労(例えば全身の倦怠感、脱力感、集中力の低下、意欲の喪失、眠気の誘発等)、精神的疲労に伴う臓器疲労等、これらが複合して生じる上記のパフォーマンスの低下現象も上記疲労に含まれる。 本発明によって提供される「抗疲労剤」は、「抗疲労作用」を有する組成物である。本明細書中において、「抗疲労作用」とは、上記疲労を予防、軽減、回復する作用をいい、具体的には、運動や作用した部位(作用した部位とは、機能を果たすために働いた脳、内臓を含む体の部位を意味する)の働きの持続時間を延長させること(持続時間の短縮を防ぐこと)、同じ運動量や作用量での疲労物質の変動を抑制すること(持久力向上、体力増強、疲労軽減)、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経、内臓などが疲労感知状態になっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態の通常状態への回復を促進することを含む。ここで、持久力とは肉体的持久力、精神的持久力及び臓器の持久力のいずれも含み、ある一定の運動状態を継続して行うことができる能力をいう。抗疲労作用により、例えば、「長時間水泳をし続けることができる」「長時間仕事をしていても疲れない」「毎日の生活で疲れが残らない」等が可能になる。 本明細書中において、「疲労に関連する疾患又は状態」とは、上述の疲労に関連する疾患又は状態であって、肉体的疲労、精神的疲労及び臓器疲労に関連するものを含み、例えば慢性疲労症候群、過労、筋肉疲労、睡眠不足に起因する疲労、ストレスに起因する疲労、肝臓疲労等が挙げられ、これらの2つ以上の組み合わせも含む。ここで、慢性疲労症候群とは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状等を基本的な症状とし、米国疾病対策センター(CDC)の慢性疲労症候群(CFS)診断基準においては:微熱ないし悪寒;喉の痛み;首あるいは腋のリンパ節の腫れ;原因不明の脱力感;筋肉の痛み又は不快感;軽く動いただけでその後24時間以上続く全身倦怠感;頭痛;関節の痛み;精神神経症状(羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力の低下、抑うつ);睡眠障害(不眠や過眠);等の肉体的症状、精神的症状を伴うことが病的な慢性疲労の特徴と考えられている。従って、これらの症状も、本発明における「疲労に関連する状態又は疾患」に含まれる。 本明細書中において、疾患又は状態を予防又は処置するとは、該疾患又は状態の悪化を防ぐこと、該疾患又は状態を改善、緩和し、正常な状態に移行すること、並びに該疾患又は状態を予防することを含む。 疲労に対する被験物質の効果は、被験物質の投与と組み合わせて、持久力を測定する、感覚的疲労回復を問診する等、当業者に知られる様々な方法で確認することが出来るが、本発明者らは、本発明の組成物の疲労に対する効果を以下のような試験により確認した。 第一は、後述の実施例1に詳述する、水浸断眠試験における遊泳時間の測定である。水浸飼育のように、充分な睡眠や休息姿勢をとることができず、肉体的にも精神的にも休息できない環境で飼育されたマウスを用い、重りを負荷した状態で遊泳させ、10秒以上鼻が水没してしまうまでの時間を測定することにより(重り負荷強制水泳試験)、その疲労度を確認するものである。 様々な軽い疲労の負荷に対して動物はかなり高い適応を示し、連日の軽い複合疲労の負荷では疲労耐性動物ができてしまい、疲労モデル動物形成は非常に難しいとの報告があるが、水浸飼育したラットでは、前頭葉など限局した脳部位でのグルコース消費の低下、脳のモノアミンレベルの変化(脳21(2004)Vol.7, No.1,pp.41-45)、脳や肝臓での疲労関連遺伝子の変動等が見られ、疲労モデルとして確立している(Journal of Neurochemistry (2005) 95, 1156-1166)(Biochemical and Biophysical Research Communications (2007) 353, 1068-1073)。また、この水浸飼育ラットを通常飼育に戻し回復過程を調べたところ、水浸飼育ラットの休息時間(通常飼育時間)の延長に比例して重り負荷強制水泳試験での遊泳時間の延長が確認され、これに対応する脳分画モノアミン量の変動も確認されている。 すなわち、この動物モデルは肉体的及び精神的疲労モデル、並びに以下に説明する臓器疲労モデルであるから、被験物質を投与することにより遊泳時間が延長されれば、肉体的及び/又は精神的疲労に対する抗疲労作用が確認される。このような抗疲労作用は、疲労の負荷の軽減、疲労状態のもとでの肉体的活力の維持(体力増強)、持久力向上等にも関与すると考えられる。 第二は、後述の実施例2に詳しく記載する、肝臓疲労の測定である。水浸飼育のように、充分な睡眠や休息姿勢をとることができない環境で飼育された上述のモデルでは、全身に疲労症状が認められる。このモデルの肝臓においては、通常飼育群と比較して血中のGOT及びGPT量が増加していた。肝細胞が損傷を受けると、肝臓細胞中に存在する酵素GOT(glutamic oxaloacetic transaminase)、GPT(glutamic pyruvic transaminase)が血液中に逸脱することが知られる。よって、血中のGOT、GPTを測定することで肝臓の損傷度が明らかになる。また、このモデルにおいて肝臓の過酸化脂質が増加することが明らかとなった(TBARS:Thiobarbituric acid reactive substances量により測定)。長期間の全身性疲労状態により、肝臓機能の変調、酸化還元系バランスの破綻等により過酸化脂質が蓄積したと推察され、本モデルが臓器疲労モデルであることを支持すると考えられる。 すなわち、この動物モデルは臓器疲労モデルでもあるから、被験物質を投与することにより例えば前記のGOT、GPT、TBARS等、臓器疲労マーカーの変動を正常値に戻すこと、臓器マーカーの変動を抑制することが確認されれば、臓器疲労に対する抗疲労作用が確認される。このような抗疲労作用は、内臓全般の活動を正常にして代謝を整え、それにより、肉体的、精神的疲労の、負荷軽減、活力維持、持久力向上等にも関与すると考えられる。 第三は、後述の実施例3に詳しく記載する、強制運動試験における自発運動量の測定である。ラットを用いてトレッドミルによる強制運動を行い、その後被験物質を投与し、動物の自発運動量を測定するものである。この動物モデルは運動疲労(肉体疲労)モデルであるから、被験物質の投与によって自発運動量が増加すれば、肉体疲労に対する抗疲労作用が確認される。このような抗疲労作用は、持久力向上、運動パフォーマンス向上にも関与すると考えられる。 第四は、後述の実施例4に詳しく記載する、疲労物質量の測定である。すなわち、肉体的又は精神的負荷を与えたときの疲労物質量に対する、被験物質投与の影響を確認するものである。疲労物質については、負荷される疲労の種類、強度、持続時間等によって変動するため、指標として明確には確定していないが、候補物質の一つとして、血中のクレアチンキナーゼを挙げることができる。クレアチンキナーゼはクレアチンリン酸から高エネルギーリン酸基をADPに転移する反応を触媒する酵素であり、生体内エネルギー系において、瞬発的な短時間の運動を行うときの骨格筋の収縮運動等、エネルギー大量消費時にクレアチンリン酸を消費してATPを供給する生理的機能を担うと考えられている。また、生体内各組織にあるが特に筋肉に大量に含まれ、筋肉疲労時に物理的及び化学的(例えば活性酸素)負荷によって筋肉細胞が損傷を受け、筋肉細胞からクレアチンキナーゼが血液中に逸脱することが知られる。よって血中クレアチンキナーゼ活性を測定することで筋肉の損傷度が明らかになると言われる。すなわち、被験物質を投与することにより血中クレアチンキナーゼ活性の上昇の抑制が確認されれば、肉体的疲労、特に筋肉疲労に対する抗疲労作用が確認される。このような抗疲労作用により、筋肉の損傷が軽減され、それにより体力増強、筋力増強にもつながると考えられる。 また、いずれの試験においても、投与時期と疲労負荷時期を適宜設定することで、被験物質の抗疲労作用を様々な観点から確認することが出来る。すなわち:(i)疲労負荷中に被験物質を投与することで、被験物質が疲労負荷を軽減するか否かを確認することができ;(ii) 疲労負荷後に被験物質を投与することで、被験物質が疲労回復を促進するか否かを確認することができ;(iii) 被験物質投与後、疲労負荷を与えることで、被験物質が疲労を予防、軽減するか否かを確認することができる。 アンドログラホリドを摂取すると、上記の試験、すなわち水浸断眠試験、臓器疲労の測定、強制運動試験、疲労物質量の測定のいずれにおいても抗疲労作用が確認された。さらには、アンドログラホリドと所定の量のα-リポ酸を組み合わせて摂取すると、水浸断眠試験において相乗的に抗疲労作用が向上することが確認された。このことは、アンドログラホリド及びアンドログラホリドとα-リポ酸の組み合わせが、抗疲労作用、すなわち疲労予防作用、疲労軽減作用及び疲労回復作用を有するのはもちろんのこと、例えば慢性疲労症候群の予防や治療等、疲労に関連する疾患又は状態の予防又は処置にも有用であることを意味する。 本発明の組成物は、後述の実施例から明らかなように、疲労負荷中に摂取して疲労の負荷を軽減すること、疲労後に摂取することにより疲労回復を促進すること、疲労負荷前に摂取して疲労の負荷を予防、軽減することができる。従って、本発明の組成物の投与時期は得ようとする効果に応じて適宜決定することができ、効果の発揮を望む場合毎に摂取してもよく、日常的に摂取して効果を発揮させることも可能である。すなわち、スポーツなどの筋肉運動に際して肉体疲労を感じたとき、計算作業等の連続作業に際して精神疲労を感じたときに服用して疲労回復の促進を図ることができることはいうまでもないが、予め服用してから労働、スポーツなどを行うことで疲労を予防することもできる。また、スポーツを行う前や途中で摂取することにより、持久力向上が期待できる。さらに、日常的に摂取することにより疲労やそれに伴う疾患をも予防することができる。 アンドログラホリドを含有する穿心蓮は古来経口摂取され、安全性が高いと考えられ、マウスに穿心蓮を毎日0.5g/kgずつ10日間続けて内服させても、成長、食欲、排便、精神状態、赤血球及び白血球の数、ヘモグロビン及び白血球の分類数値のいずれにおいても異常が見られないことが確認されている。但しマウス2匹の腹腔内に穿心蓮の煎剤(0.5g/匹)又は水抽出物(生薬1g/匹)を注射すると、24時間以内に死亡したことも報告されている(中薬大辞典初版 第三巻)。アンドログラホリドについて、本発明者らは、マウスに対し1000mg/kg体重投与しても異常が見られなかったことを確認している。従って、本発明の組成物中におけるアンドログラホリドは安全性が高い有効成分であるため、所望の作用を奏し毒性を呈さない量である限り、その配合量は特に制限されず、対象、病態やその進行状況、呈味に及ぼす影響(若干苦味有り)その他の条件によって適宜選択すればよい。 本発明者らがマウスやラットの疲労動物モデルを用いて検討した結果、アンドログラホリドを予め服用して、又は疲労負荷中に服用して、精神的、肉体的及び臓器疲労の予防、軽減を図る場合には、0.25〜200mg/kg体重を服用することで所望の抗疲労作用が発揮された。また、発生した肉体的疲労に対して、疲労回復を促進するためにアンドログラホリドを服用する場合には、0.5〜8 mg/kg体重で所望の抗疲労作用が発揮された。従って、本発明の組成物中におけるアンドログラホリドの含有量は、ヒトを含む動物1日摂取量当たり、対象の体重に対し0.01〜500mg/kg体重、好ましくは0.1〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1〜10mg/kg体重、特に好ましくは0.25〜10mg/kg体重となる。特にヒト(成人)を対象に抗疲労作用を得ることを目的としてアンドログラホリドを経口投与する場合には、一般に、1日の摂取量あたり0.1〜100mg、好ましくは0.1〜50mg、より好ましくは0.1〜10mg、特に好ましくは0.25〜10mgとなるように投与するとよい。 なお、アンドログラホリドをその誘導体又はそれらの塩等として配合する場合には、対応するアンドログラホリド量に換算して上記の量を参照することにより、その配合量を決定することができる。 α−リポ酸は、体内に存在する物質であり、医薬品として、チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体疲労時)、亜急性壊死性脳脊髄炎、中毒性(ストレプトマイシン、カナマイシンによる)及び騒音性(職業性)の内耳性難聴に適用されており、その安全性は高いと考えられ、所望の作用を奏し毒性を呈さない量である限り、その配合量は、対象、病態やその進行状況、呈味に及ぼす影響、その他の条件によって適宜選択することができる。 本発明者らがマウスの疲労動物モデルを用いて検討した結果、α‐リポ酸を単独で、又はアンドログラホリドと組み合わせて、疲労負荷中に服用して、精神的及び肉体的疲労の予防及び/又は軽減を図る場合には、50mg/kg体重を服用することで、単独での抗疲労効果及びアンドログラホリド(0.25mg/kg体重)との相乗的抗疲労効果が発揮された。 以上のことから、本発明の組成物中におけるα-リポ酸の含有量は、1日摂取量当たり、対象の体重に対し、1〜200mg/kg体重、好ましくは1〜100mg/kg体重投与することが望ましいであろう。特にヒト(成人)を対象に抗疲労作用を得ることを目的としてα-リポ酸を経口投与する場合には、一般に、1日の摂取量あたり10〜400mg、好ましくは10〜200mg、より好ましくは10〜100mg程度となるように投与するとよい。 すなわち、本発明の組成物は、ヒトを含む動物の1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.01〜500mg/kg体重、好ましくは0.1〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1〜10mg/kg体重、特に好ましくは0.25〜10mg/kg体重含有し、さらにそれぞれの場合において、α-リポ酸を1〜200mg/kg体重、好ましくは1〜100mg/kg体重含有する。あるいは、ヒト(成人)1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.1〜100mg、好ましくは0.1〜50mg、より好ましくは0.1〜10mg、特に好ましくは0.25〜10mg含有し、さらにそれぞれの場合において、α-リポ酸を10〜400mg、好ましくは10〜200mg、より好ましくは10〜100mg含有する。 1日の摂取は、単回又は複数回(例えば2又は3回)に分けて実施することができる。すなわち本発明の組成物は、ヒト(成人)1回の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.03〜50mg、好ましくは0.05〜25mg、より好ましくは0.03〜5mg、特に好ましくは0.13〜5mg含有し、さらにそれぞれの場合において、α-リポ酸を3〜200mg、好ましくは3〜100mg、より好ましくは3〜50mg含有する。 なお、α-リポ酸をその誘導体、その塩等として配合する場合には、対応するα-リポ酸量に換算して上記の量を参照することにより、その配合量を決定することができる。 なお、本発明の組成物は、ヒトのみならず、作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物にも抗疲労作用を有する。 アンドログラホリドは、pH、水分、酸化、光、熱等に対する安定性が十分高い。従って、アンドログラホリドは、そのままで本発明の組成物中に用いてもよく、目的に応じて当業者に公知の手法を用いて飲食品、調味料、アルコール飲料、機能食品、医薬品等の種々の形態にすることもできる。特に本発明の組成物は、経口投与用医薬品、食品(機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康食品、食事療法用食品、総合健康食品、サプリメント等)とすることができる。 それらの具体的形態としては、固形状、半流動状、流動状などを挙げることが出来る。固形状食品としては、キャンデー、ドロップ、トローチ、ガム、ビスケット状、シート状、タブレットやカプセルなどの錠剤、顆粒粉末などの形態の一般食品及び健康食品があげられる。半流動状食品としては、ペースト状、ゼリー状、ゲル状などの、また、流動状食品としては、ジュース、清涼飲料、茶、ドリンク剤(例えば、スポーツドリンク)、酒類等の形態の一般食品及び健康食品があげられる。 また、本発明の組成物がさらにα-リポ酸を含む場合、α-リポ酸をアンドログラホリドと同じ投与単位中に含んでもよく、あるいはこれらの有効成分を別々の投与単位中に含んでもよい。 本発明の組成物は、必要に応じて、上記アンドログラホリド類及びα-リポ酸の他に、任意の添加剤、通常の医薬組成物や飲食物に用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、糖類、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、香料、凝固剤、pH調整剤、増粘剤、エキス粉末、生薬、無機塩等が挙げられる。 なお、本発明の組成物には、包装、容器又は説明書に有効成分の種類、その具体的な用途(例えば、持久力向上のため、体力増強のため、疲労軽減のため、疲労回復促進のため、慢性疲労緩和のため、臓器疲労緩和のため、健康維持のため等)及び/又はその具体的な用い方(例えば、摂取量、摂取回数、摂取方法)を表示することができる。 後述の実施例から明らかなように、本発明者らは、アンドログラホリド及びアンドログラホリドとα-リポ酸の組み合わせが肉体的疲労のみならず、精神的疲労、臓器疲労に対しても効果を有することを確認している。従って、アンドログラホリド又はアンドログラホリドとα-リポ酸の組み合わせを、例えば特許文献1〜5に記載の、従来の、体力増強作用や疲労回復促進作用を有する組成物、疲労時等の栄養補給を目的とした組成物と、同時に又は別々に、組み合わせて経口摂取することにより、種々の体力増強作用、持久力向上作用、抗疲労作用の、相加的又は相乗的な発揮が期待できる。 本発明の組成物に含ませることができる他の有効成分としては、例えば:ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸などのビタミン類;バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、アラニン、グルタミン、アルギニンなどの必須アミノ酸類; カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラル類;α-リノレン酸、EPA、DHA、アラキドン酸、オクタコサノール、タウリン、グルクロン酸、テアニン、γ-アミノ酪酸、CoQ10、L-カルニチン、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、ペプチド類、タンパク類等が挙げられるがこれらに限定されない。 本発明の組成物は、疲労が原因として引き起こされるシワや肌荒れ等の美容のためにも使用することができる。疲労の蓄積は新陳代謝の低下をまねき、その結果、シワや肌荒れ等を引き起こすことが知られている。 以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 水浸断眠試験(遊泳時間の測定) Tanakaらの方法(Neuroscience Let.352,159−162,2003)を一部改変した方法を用いて、水浸断眠疲労に対するアンドログラホリドの効果を調べた。すなわち、被験動物として8週齢の雄性Balb/cマウスを用い、平均体重が均等になるようにマウスを5群に群分けした(1群5〜10匹)。そのうち、4群は水浸飼育群として、床敷のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。2日間の水浸飼育中、アンドログラホリド(アルドリッチ社、純度98%)を1日1回、0.5、2、8mg/kg体重の量で、強制経口投与した(水浸飼育アンドログラホリド投与群)。2日間の水浸飼育中、1日1回蒸留水を強制経口投与したものを対照群とした(水浸飼育対照群)。残りの1群は通常飼育群として、通常の床敷を敷いた飼育ケージで飼育し、2日間の飼育中、1日1回蒸留水を強制経口投与した(通常飼育対照群)。2日後、マウスの尾に体重の8%相当の重りをつけ、直径18cm、水深30cmの水槽で強制遊泳させ、マウスが10秒以上水没するまでの時間(遊泳時間)を測定した(重り負荷強制水泳試験)。 水浸飼育群のマウスは水浸断眠に起因する疲労により、通常飼育群のマウスと比べて遊泳時間が短縮する。アンドログラホリドを投与した場合に水浸飼育群のマウスにおける遊泳時間の短縮がどれだけ回復するかを調べることにより、水浸断眠疲労に対するアンドログラホリドの効果を判定した。結果を図1(A)に示す。図中、*はスチューデントt検定により危険率0.05%で、また、**は危険率0.01%で有意な差であることを示す。 図1(A)の結果から明らかなように、水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群と比べ有意に短縮した。一方、水浸飼育アンドログラホリド投与群においては、遊泳時間の短縮が用量依存的に抑制された。このことから、アンドログラホリドを水浸断眠負荷中に投与すると、水浸断眠負荷による疲労が有意に軽減されると考えられた。 また、アンドログラホリドの量を、1日1回、0.25mg/kg体重とする以外は、上記と同様にして試験した結果を図1 (B)に示す。0.25mg/kg体重の量であっても、遊泳時間の短縮が抑制されることが確認された。さらに、アンドログラホリドの量を、1日1回、200mg/kg体重とする以外は、上記と同様にして試験した結果を図1(C)に示す。200mg/kg体重の量であっても、遊泳時間の短縮が抑制されることが確認され、マウスに対する毒性は見られなかった。 実施例2 肝臓疲労の測定 Tanakaらの方法(Neuroscience Let.352,159−162,2003)を一部改変した方法を用いて、水浸断眠疲労に対するアンドログラホリドの効果を調べた。すなわち、被験動物として8週齢の雄性Balb/cマウスを用い、平均体重が均等になるようにマウスを3群に群分けした(1群5〜10匹)。そのうち、2群は水浸飼育群として、床敷のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。2日間の水浸飼育中、アンドログラホリド(アルドリッチ社、純度98%)を1日1回、8mg/kg体重の量で、強制経口投与した(水浸飼育アンドログラホリド投与群)。2日間の水浸飼育中、1日1回蒸留水を強制経口投与したものを対照群とした(水浸飼育対照群)。残りの1群は通常飼育群として、通常の床敷を敷いた飼育ケージで飼育し、2日間の飼育中、1日1回蒸留水を強制経口投与した(通常飼育対照群)。2日後、マウスより血液及び肝臓を採取した。血液から血清を分取し、血清中のGOT(glutamic oxaloacetic transaminase)及びGPT(glutamic pyruvic transaminase)を小型生化学自動分析装置(株式会社日立製作所7070形)で測定した。また、肝臓からは過酸化脂質をTBARS(Thiobarbituric acid reactive substances)量により測定した。TBARSは肝臓重量あたり4(w/v)倍量の1.15%KCl溶液を加えフィスコトロン(日音医理科器械製作所製)を用いて試料ホモジネートを調製し、Ohkawa et al. Anal. Biochem. 95. 351-358, 1979の方法に準じてTBARS値を算出した。結果を図2(A)〜(C)に示す。図中、*はスチューデントt検定により危険率0.05%で、また、**は危険率0.01%で有意な差であることを示す。 図2の結果から明らかなように、水浸飼育対照群の血清中GOT量(図2(A))、血清中GPT量(図2(B))及び肝臓TBARS量(図2(C))は、通常飼育対照群と比べ有意に増加した。一方、水浸飼育アンドログラホリド投与群においては、これらのマーカーの増加が抑制された。このことから、アンドログラホリドを水浸断眠負荷中に投与すると、水浸断眠負荷による肝臓疲労が有意に軽減されると考えられた。 実施例3 強制運動試験 被験動物として6週齢の雄性Sprague Dawley系ラットを用いた。試験開始前日にラットを各群8匹からなる5群に群分けし、試験当日朝より全てのラットを絶食状態にした。そのうち、4群は運動負荷群として、トレッドミル強制歩行装置(MK-680、室町機械製)により運動負荷(ベルト速度10m/分、傾斜角5%登坂、3時間)を与えた。運動負荷終了後、アンドログラホリド(アルドリッチ社、純度98%)を0.5、2、8mg/kg体重の量で強制経口投与した(運動負荷アンドログラホリド投与群)。運動負荷終了後、蒸留水を強制経口投与したものを対照群とした(運動負荷対照群)。残りの1群は運動負荷を施さずに蒸留水を強制経口投与した(運動無負荷対照群)。その後、ラットを赤外線センサーによる自発運動測定装置(Supermex、室町機械製)に移し、0〜2時間(探索行動)、2〜14時間(暗期)の自発運動量を測定した。 運動負荷群のラットでは、運動無負荷群のラットよりも探索行動(新規環境に対する探索行動)及び暗期(暗期活動期の自発行動)の自発運動量が減少する。このことは、このラットモデルが運動負荷疲労状態を反映したモデルであることを示すと考えられる。アンドログラホリドを投与した場合に運動負荷群ラットにおける自発運動量の減少がどれだけ回復するかを調べることにより、運動負荷疲労に対するアンドログラホリドの効果を判定した。結果を図3に示す。図中、**はスチューデントt検定により危険率0.01%で有意な差であることを示す。図3(A)は0〜2時間(探索行動)の自発運動量を、図3(B)は2〜14時間(暗期)の自発運動量を示す。測定開始から2時間の間では、探索行動とともに投与した素材の興奮作用も測定に影響すると考えられたため、2時間後〜14時間後の測定と区別した。 図3の結果から明らかなように、運動負荷対照群の自発運動量は、いずれの期間でも運動無負荷対照群にくらべ有意に減少した。一方、運動負荷アンドログラホリド投与群において、アンドログラホリドを2mg/kg投与した時、自発運動量の増加が確認された。このことから、アンドログラホリドを運動負荷後に投与すると、運動負荷による疲労の回復を促進すると考えられた。 実施例4 血中疲労物質の測定 生体の筋肉疲労を血中クレアチンキナーゼ量の変動を指標として検討した。被験動物として6週齢の雄性Sprague Dawley系ラットを用い、実施例3を若干改変して強制運動負荷動物を作成した。強制運動負荷開始2日前にラットを各群8匹からなる5群に分けた。そのうち3群について、アンドログラホリド(アルドリッチ社、純度98%)を0.5、2、8mg/kg体重の量で1日2回、強制運動負荷当日も含めて計5回、強制運動負荷開始前に強制経口投与した(運動負荷アンドログラホリド投与群)。残りの2群は対照群として、同様に蒸留水を強制経口投与した。強制運動負荷当日は、全ての動物を被験サンプル投与後より絶食状態にし、対照群のうち1群は運動負荷を施さず、蒸留水を強制経口投与した(運動無負荷対照群)。そのほかの4群の動物に対して、トレッドミル強制歩行装置(MK-680、室町機械製)により運動負荷(ベルト速度15m/分より1m/分ずつ漸増後、25m/分で20分、傾斜角10%登坂)を与えた。採血は、運動負荷直後に尾静脈より行い、血漿中のクレアチンキナーゼ活性を酵素法により生化学自動分析装置(株式会社日立製作所 7070形)で測定した。 運動負荷群のラットでは、運動無負荷群のラットよりもクレアチンキナーゼ活性が上昇する。このことは、このラットモデルが運動負荷により筋肉疲労を生じていることを示すと考えられる。アンドログラホリドを投与した場合に運動負荷群ラットにおけるクレアチンキナーゼ活性の上昇がどれだけ抑制されるかを調べることにより、筋肉疲労に対するアンドログラホライド投与の効果を判定した。結果を図4に示す。 図4の結果から明らかなように、運動負荷対照群のクレアチンキナーゼ活性は、運動無負荷対照群に比べ大きく上昇した。一方、運動負荷アンドログラホリド投与群において、アンドログラホライドを2mg/kg投与した時、クレアチンキナーゼ活性の低下が確認された。このことから、アンドログラホリドを運動負荷前に投与すると、運動負荷による筋肉疲労を抑制すると考えられた。 実施例5 アンドログラホリド及び/又はα‐リポ酸投与下での水浸断眠試験 実施例1に記載の手法に準じて、アンドログラホリド及びα-リポ酸をそれぞれ単独で、又は組み合わせてマウスに投与した際の、水浸断眠疲労に対する効果を調べた。被験動物として8週齢の雄性Balb/cマウスを用い、平均体重が均等になるようにマウスを5群に群分けした(1群5〜6匹)。そのうち、4群は水浸飼育群として、床敷のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。2日間の水浸飼育中、アンドログラホリド(アルドリッチ社、純度98%)及び/又はα-リポ酸を、1日1回、2日間強制経口投与した。蒸留水を1日1回強制経口投与したものを対照群とした(水浸飼育対照群)。残りの1群は通常飼育群として、通常の床敷を敷いた飼育ケージで飼育し、2日間の飼育中、1日1回蒸留水を強制経口投与した(通常飼育対照群)。2日後、実施例1と同様の手法を用いて重り負荷強制水泳試験を実施した。実施例5: (5a)アンドログラホリド0.25mg/kg体重、(5b)α-リポ酸50mg/kg体重、(5c) アンドログラホリド0.25mg/kg体重+α-リポ酸50mg/kg体重 実施例5の結果を図5に示す。水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群と比べ有意に短縮し、一方、水浸飼育アンドログラホリド0.25mg/kg体重の単独投与群(5a)、又はα-リポ酸50mg/kg体重(5b)の単独投与群のそれぞれにおいて、遊泳時間の短縮が抑制された。さらに、アンドログラホリド及びα-リポ酸の組み合わせ投与群では、アンドログラホリド(0.25mg/kg体重)とα-リポ酸(50mg/kg体重)の組み合わせ(5c)において、相乗的に遊泳時間の短縮が抑制された。すなわち、通常飼育対象群の遊泳時間から水浸飼育対象群の遊泳時間を引いた時間を100%としたとき、各薬剤投与群の増加率は、アンドログラホリド単独投与群では5%増加し、またα-リポ酸単独投与群では13%増加したのに対し、アンドログラホリドとα-リポ酸とを組み合わせて投与した群では、相乗的に、51%増加した。 実施例6 処方例 (製剤例1)カプセル剤(ヒト成人1日当り1粒摂取する。) 下記成分(1)〜(3)をそれぞれ量り取り、合計200mgをカプセルに充填した。 (成分) (mg)(1)アンドログラホリド(アルドリッチ社製、純度98%) 50(2)デキストリン 145(3)二酸化ケイ素 5 (製剤例2)飲料(ヒト成人1日当たり1本摂取する。) 下記成分(1)〜(5)を成分(6)に溶解し、120mLずつ褐色瓶に分注した後にレトルト殺菌(121℃、15分)し、アンドログラホリド含有飲料を得た。 (成分) (%)(1)アンドログラホリド(アルドリッチ社製、純度98%) 0.25(2)ホエーペプチド(DVM JAPAN社製 WE80B) 1.77(3)アスコルビン酸ナトリウム 0.12(4)ショ糖 2.65(5)クエン酸 0.21(6)精製水 95.0 (製剤例3)動物用飼料 下記成分(1)〜(8)を配合し、アンドログラホリド含有動物用飼料を得た。 (成分) (重量%)(1)とうもろこし 10〜50(2)マイロ 5〜30(3)大麦 0〜20(4)大豆油粕 0〜40(5)ふすま 0〜20(6)ミネラル 0〜5(7)ビタミン 0〜3(8)アンドログラホリド(アルドリッチ社製、純度98%) 0.001〜0.05 アンドログラホリド及びα-リポ酸を有効成分とする、疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための抗疲労剤であって、 当該疲労に関連する疾患又は状態が、過労、精神的疲労及び臓器疲労からなる群から選択され、 ヒトを含む動物1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.25〜500mg/kg体重及びα-リポ酸を1〜200mg/kg体重含有する、上記抗疲労剤。 アンドログラホリド及びα-リポ酸を有効成分とする、疲労に関連する疾患又は状態を予防又は処置するための抗疲労剤であって、 当該疲労に関連する疾患又は状態が、過労、精神的疲労及び臓器疲労からなる群から選択され、 ヒト成人1日の摂取量当たり、アンドログラホリドを0.25〜100mg及びα-リポ酸を10〜200mg含有する、上記抗疲労剤。 単回摂取、複数回摂取又は日常的摂取をするための、請求項1又は2に記載の抗疲労剤。 動物用医薬、動物用飼料もしくは動物用飲料の添加物、動物用飼料又は動物用飲料である、請求項1に記載の抗疲労剤。