タイトル: | 特許公報(B2)_カカオ酒の製造方法 |
出願番号: | 2009514164 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12G 3/02 |
佐々木 孝 JP 4395895 特許公報(B2) 20091030 2009514164 20080512 カカオ酒の製造方法 合名会社秋田富士酒造店 506257249 高橋 要泰 100135965 佐々木 孝 JP 2007130185 20070516 20100113 C12G 3/02 20060101AFI20091217BHJP JPC12G3/02 118 C12G 3/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開2006−101751(JP,A) 特開平10−052253(JP,A) 特開昭61−247370(JP,A) 特開昭54−107598(JP,A) 特開2003−284541(JP,A) 特開平09−234056(JP,A) 特開平10−286082(JP,A) 特開平11−196852(JP,A) 特開2002−065237(JP,A) 特開平10−276753(JP,A) 特開2002−045166(JP,A) 特開平01−257467(JP,A) 特開昭57−068779(JP,A) Lipids,2001年,Vol.36,p.67-71 7 JP2008058742 20080512 WO2008140073 20081120 8 20090512 水落 登希子 本発明は、カカオ酒及びその製造方法に関する。 従来、アルコール飲料の1つとして果実酒が知られている。果実酒は、透明でアルコール純度の高い焼酎に砂糖、果物を漬け込んで造るリキュールの一種である。焼酎に漬け込む材料として、果物、ハーブ、薬草、花など幅広いバリエーションをもっている。一般に、梅酒、イチゴ酒、サクランボ酒、ビア酒、アンズ酒、レモン酒等が知られ、よく飲まれている。 カカオ(Cacao)を利用した果実酒として、クレーム・ド・カカオがある。蒸留酒に焙煎カカオ豆を加えて香味成分や甘味、風味などを添加した褐色のものが一般的である。更に、これを蒸留して造られる無色透明のホワイト・カカオもある。カカオを利用した果実酒は、カクテルにも使用され、クレーム・ド・カカオとソーダを合わせたカカオフィズがよく知られている。 なお、本発明者は、以下に説明するようなカカオ酒及びその製造方法を開示した公開された特許文献等の存在を知らない。 しかし、果実「カカオ」を焼酎に漬け込むのではなく、果実「カカオ」自体を発酵させて製造するお酒に関しては全く知られていない。 そこで、本発明は、果実「カカオ」自体を発酵させて造る新規なカカオ酒を提供することを目的とする。 更に、本発明は、果実「カカオ」自体を発酵させて造る新規なカカオ酒の製造方法を提供することを目的とする。 これら目的に鑑みて、本発明に係るカカオ酒は、カカオ豆自体を発酵させて造ったカカオ酒である。 更に、本発明に係るカカオ酒の製造方法は、カカオ豆自体を発酵させて製造する。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、(1)カカオ豆を用意し、(2)カカオ豆を粉砕して水に浸漬し、(3)カカオ豆を蒸し、(4)蒸したカカオ豆に対して、(i)こうじ及び酵素の両方又はいずれか一方と、(ii)酵母と、 (iii)糖分のある果実又はその果汁と、(vi)水とを加えて、アルコール発酵させる諸段階を含む、カカオ酒の製造方法であってよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、カカオ豆の蒸し工程(3)の後で、更に、アルコール発酵工程(4)の前に、(3-1)蒸したカカオ豆に対して、(i)こうじ及び酵素の両方又はいずれか一方と、(ii)酵母と、 (iii)糖分のある果実又はその果汁と、(vi)水とを加えて、酵母の増殖を促す酒母工程を含んでもよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、前記糖分のある果実又はその果汁は、赤ブドウ、赤ブドウ果汁、干しぶどう、リンゴ、リンゴ果汁、ブルーベリー及びブルーベリー果汁から成る群から選択されたいずれかであってよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、前記糖分のある果実又はその果汁は、赤ブドウ又は赤ブドウ濃縮果汁であり、これを段階的に添加してもよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、アルコール発酵工程(4)及び酒母工程(3-1)において、前記こうじは、米こうじを使用してもよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、アルコール発酵工程(4)では、発酵工程の後半で低温発酵を採用してもよい。 更に、上記カカオ酒の製造方法において、用意するカカオは、発酵後のカカオ豆又は発酵前の生カカオ豆であってよい。 本発明によれば、果実「カカオ」自体を発酵させて造るカカオ酒を提供することが出来る。 本発明によれば、果実「カカオ」自体を発酵させて造るカカオ酒の製造方法を提供することが出来る。図1は、本実施形態に係るカカオ酒の製造方法を説明する図である。 以下、本発明に係るカカオ酒及びその製造方法の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ符号を付して重複した説明を省略する。 [第1の実施形態] 第1の実施形態は、カカオ酒及びその製造方法に関する。 (カカオ) カカオは、中央アメリカから南アメリカの熱帯地域を原産とするアオギリ科の常緑樹である。カカオの実(ポッド)は、長さ15〜30cm、直径7〜12cmの大きなアーモンド型(長楕円形、卵形)の果実で、厚さ1cm以上の堅い殻で覆われて、幹から直接ぶら下がる。このポッドの中に、パルプと呼ばれる甘く白くて粘りのある果肉があり、このパルプに包まれて20〜60粒の種子であるカカオ豆(cacao beans)が入っている。 ポッドから取りだしたカカオ豆は、発酵期間約5日の後、天日干しされる。乾燥後、洗浄、粉砕、梱包して、麻(ジュート)袋に入れられて出荷される。カカオ豆は、一般に、ココアやチョコレートの原料にされる。 本実施形態に係るカカオ酒及びその製造方法で使用されるカカオは、このようなカカオ豆又は発酵前の生カカオ豆である。 (カカオ酒) 本実施形態に係るカカオ酒は、カカオ豆を主原料として製造されるアルコール飲料である。カカオ酒は、蒸留酒にカカオ(Cacao)を浸漬して製造した果実酒「クレーム・ド・カカオ」とは異なり、蒸留酒等の他のアルコールを用いずに、カカオ自体を発酵させて造るアルコール飲料である。 (カカオ酒製造方法) 本実施形態に係るカカオ酒の製造方法は、日本酒の製造方法とよく似ている。図1を参照しながら説明する。カカオ酒の製造方法は、今までにない新規なものであるため、日本酒製造の用語を用いて説明する。 工程S01で、カカオ豆を用意する。 工程S02で、を使ってカカオ豆を細かく粉砕して糖化作用を受け易くし、その後、水に浸漬して必要な水分を吸収させる。この結果、カカオ豆はトロトロの状態となる。この状態で、一晩置く。 工程S03で、浸漬で水分を吸収したカカオを蒸す作業を行う。蒸し工程は、例えば、圧力0.8気圧、温度117度C、時間45分間の条件で、加圧蒸しを行う。蒸しあがったカカオは、人肌程度に冷まされる。 工程04で、糖化工程を行う。例えば、蒸しあがったカカオに対して、酵素を加えて、糖化工程を行う。酵素は、清酒醸造用の酵素を使用することが出来る。 清酒醸造用の酵素としては、試作時には、市場から商業的に入手できる、日本国愛知県名古屋市所在の天野エンザイム株式会社製の「グルクSB G」を利用した。「グルクSB G」は、枯草菌と糸状菌より厳選された菌株を独自の方法で培養し、精製した液化型、糖化型アミラーゼをバランス良く配合した複合酵素剤で、蒸米を効率良く液化糖化する作用がある。甘酒四段の単独糖化、汲出し四段における糖化力の増強作用を有している。例えば、蒸しあがったカカオ500gに対して、「グルクSB G」2gを加え、温度55度Cで8時間保持して、糖化工程を行う。 工程05で、酒母を造る。糖化工程を経たカカオに対して、米こうじ、酵母、糖分のある果実(又はその果汁)及び水を加え、酒母を造る。米こうじと共に又は米こうじの代わりに、酵素を使用してもよい。 酵素としては、上述の「グルクSB G」を使用することが出来る。 更に、所望により、乳酸を加えてもよい。 酵母は、清酒醸造用の清酒酵母を使用することが出来る。試作時には、市場から商業的に入手できる、秋田県総合食品研究所醸造試験所と秋田県酒造協同組合が共同で開発した「秋田流・花酵母(AK-1)」を使用した。酵母には、こうじの酵素によってできた糖をアルコールに変える働きがある。 糖分のある果実又はその果汁は、好ましくは、赤ブドウ又は赤ブドウ濃縮果汁である。それ以外にも、糖分のある果実又はその果汁として、干しぶどう、リンゴ、リンゴ果汁、ブルーベリー及びブルーベリー果汁を使用することが出来る。 この酒母の製造工程S05は、次工程S06のもろみ製造工程が本格的なアルコール発酵工程であるのに対して、その前段階として、酵母の増殖を促す工程である。従って、酒母製造工程は、任意であって、これを省略して、最初から酵母を増量することにより、直接、もろみ製造工程に進んでもよい。 工程S06で、もろみ(醪)を造る。酒母に対して、酒母製造工程S05と同じ、米こうじ、酵母、糖分のある果実(又はその果汁)及び水を加え、酒母を造る。米こうじと共に又は米こうじの代わりに、酵素を使用してもよい。 酵素としては、上述の「グルクSB G」を使用することが出来る。更に、所望により、乳酸を加えてもよい。 糖分のある果実又はその果汁は、好ましくは、赤ブドウ又は赤ブドウ濃縮果汁である。それ以外にも、糖分のある果実又はその果汁として、干しぶどう、リンゴ、リンゴ果汁、ブルーベリー及びブルーベリー果汁を使用することが出来る。こうして、糖分のある果実(又はその果汁)及び水を段階的に加えて、アルコール発酵させて、もろみを造る。段階的に加えることにより、糖化と発酵を促しつつアルコールを生成する。 例えば、酒母に対して、水及び赤ブドウ濃縮果汁を加え、Brix糖度を調整した後、酵母を添加して、もろみを造った。このとき、干しぶどう又は糖分のある果実(例えば、リンゴ,ブルーベリー等)又はその果汁を加えてもよい。 なお、酵母増殖工程である酒母製造工程S05を省略した場合、糖化工程S04を経たカカオに対して、酵母を増量して加える必要がある。こうして、直接、もろみ製造工程に進んでもよい。 試作では、酒母製造工程を省略し、糖化工程後のカカオ10gに対して、水50ミリリットル及び赤ブドウ濃縮果汁及び干しぶどう加え、更に米こうじ30gを加えて、アルコール発酵を行った。 1日目:発酵スタート、温度25度C 2日目:水50ミリリットル追加、温度が30度Cに上昇し、本格的な発酵が生じていることが確認できた、 3日目:赤ブドウ濃縮果汁1ミリリットル追加、温度30度C、 4日目:温度30度C、 5日目:温度が6度Cに下降した、この後、低温発酵に入った、 7日目:発酵工程終了、 工程S07で、新酒を造る。発酵の終わったもろみを搾って、お酒とカカオのカスに分離させる。発酵工程後のカカオ酒のBrix糖度は9.0であり、アルコール度数は11.35であった。 工程S08で、カカオ酒を造る。出来た新酒を、必要に応じて、加熱殺菌してお酒の腐敗や変質を防ぐ。澱(おり)が残っている場合には、低温で暗い場所に休ませて澱を沈殿させたり、濾過機でこして透明にする。火入れしたお酒を貯蔵タンクで貯蔵し、熟成させる。必要に応じて、更に二回目の火入れを行い加熱殺菌する。瓶詰めして出荷する。 以上により、カカオ酒を製造することができる。 (第1の実施形態の利点・効果) (1)新規なお酒であるカカオ酒を提供できる。 (2)新規なカカオ酒の製造方法を提供できる。 (3)段階的に赤ブドウ濃縮果汁を添加することにより、カカオ豆を発酵することが出来た。 (4)若干アルコール発酵を促す酒母製造工程又は本格的なアルコール発酵工程であるもろみ製造工程で米こうじを使用したことで、硫化臭が無く、香りが良くなった。 (5)アルコール発酵の後半で、低温発酵を採用したことで、同様に、硫化臭が無く、香りが良くなった。 (6)カカオ豆の有する効果を最大限に発揮できるカカオ酒を提供できる。具体的には、カカオ豆には、ポリフェノールが含まれている。ポリフェノールは、抗酸化作用を有し、癌や動脈硬化等様々な病気の原因といわれる活性酸素から身体を守ってくれる物質として、注目されている。特にカカオ豆に含まれているものをカカオマスポリフェノールという。カカオマスポリフェノールは、動脈硬化を防ぎ、癌予防に期待され、ストレスに打ち勝つ効果を有し、アレルギー・リウマチにも効果があるといわれている。 [第2の実施形態] 第2の実施形態は、カカオ豆を利用したカカオ納豆及びその製造方法である。カカオ納豆は、図1の製造工程の糖化工程S04の後、納豆菌を加え発酵させることにより製造することができる。 [第3の実施形態] 第3の実施形態は、カカオ豆を利用したカカオ酢及びその製造方法である。カカオ酢は、図1の製造工程のカカオ酒製造S08の後、酢酸菌を添加することにより製造することが出来る。 [第4の実施形態] 第4の実施形態は、カカオ豆を利用したカカオ健康食品及びその製造方法である。第1の実施形態でカカオ酒を造った後のカカオ粕を利用して、カカオ健康食品を製造する。カカオ粕に含まれているアルコール分を除去するため、乾燥工程をおき、そのままカカオ健康食品として利用する。所望により、乾燥工程の後に、果実、果汁、ドライフルーツ、糖類及び他の食品のいずれか1つ又は2つ以上を加えてもよい。 [その他] 以上により、本発明に係るカカオ酒及びその製造方法の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。当業者が容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明に含まれる。 本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。 カカオ酒の製造方法において、 (1)カカオ豆を用意し、 (2)カカオ豆を粉砕して水に浸漬し、 (3)カカオ豆を蒸し、 (4)蒸したカカオ豆に対して、 (i)こうじ及び酵素の両方又はいずれか一方と、 (ii)酵母と、 (iii)糖分のある果実又はその果汁と、 (vi)水とを加えて、アルコール発酵させる、諸段階を含む、カカオ豆自体を発酵させて製造するカカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 カカオ豆の蒸し工程(3)の後で、アルコール発酵工程(4)の前に、更に、 (3-1)蒸したカカオ豆に対して、 (i)こうじ及び酵素の両方又はいずれか一方と、 (ii)酵母と、 (iii)糖分のある果実又はその果汁と、 (vi)水とを加えて、酵母の増殖を促す酒母工程を含む、カカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 前記糖分のある果実又はその果汁は、赤ブドウ、赤ブドウ果汁、干しぶどう、リンゴ、リンゴ果汁、ブルーベリー及びブルーベリー果汁から成る群から選択されたいずれかである、カカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 前記糖分のある果実又はその果汁は、赤ブドウ又は赤ブドウ濃縮果汁であり、これを段階的に添加する、カカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 アルコール発酵工程(4)及び酒母工程(3-1)において、前記こうじは、米こうじを使用する、カカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 アルコール発酵工程(4)では、発酵工程の後半で低温発酵を採用する、カカオ酒の製造方法。 請求項1に記載のカカオ酒の製造方法において、 用意するカカオは、発酵後のカカオ豆又は発酵前の生カカオ豆である、カカオ酒の製造方法。