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タイトル:特許公報(B2)_神経突起形成促進剤
出願番号:2009511854
年次:2013
IPC分類:A61K 31/4468,A61P 27/02,A61P 27/04,C07D 211/58


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藪田 知穂 矢野 史子 東 光佳 JP 5179477 特許公報(B2) 20130118 2009511854 20080418 神経突起形成促進剤 千寿製薬株式会社 000199175 アステラス製薬株式会社 000006677 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 山本 健二 100122688 村田 美由紀 100117743 藪田 知穂 矢野 史子 東 光佳 JP 2007112248 20070420 20130410 A61K 31/4468 20060101AFI20130321BHJP A61P 27/02 20060101ALI20130321BHJP A61P 27/04 20060101ALI20130321BHJP C07D 211/58 20060101ALN20130321BHJP JPA61K31/4468A61P27/02A61P27/04C07D211/58 A61K 31/4468 国際公開第2004/039403(WO,A1) 特表2003−522120(JP,A) European Journal of Pharmacology,2005年,Vol.527,p.111-120 5 JP2008057583 20080418 WO2008133198 20081106 15 20101118 深草 亜子 本発明は、神経突起形成促進剤に関する。詳しくは、アミド化合物の神経突起形成促進作用による角膜知覚改善剤または視覚機能改善剤に関する。 レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)、レーザー角膜切削形成術(レーシック;LASIK)、レーザー上皮角膜曲率形成術(ラセック;LASEK)、角膜移植などの角膜手術後には、角膜神経が切断されるため、通常約3週間から1年間角膜知覚機能の低下症状が起きると言われている。例えば、LASIK後には明らかに角膜神経が切断されていること(非特許文献1)、また、LASIK後には神経像が認められないか、あるいは神経線維束が短く連結していない角膜領域において、角膜の知覚が低下することが報告されている(非特許文献2)。 PRKおよびLASIK後の角膜知覚の低下が涙腺応答低下、涙液減少の原因であることが示唆されている(非特許文献3)。この角膜知覚機能低下のため、角膜手術後の患者では瞬目回数が減少し、ドライアイ症状が認められることが問題となっている。一方、ドライアイ患者では涙液分泌の減少が角膜上皮の病理学的変化と角膜知覚の低下を導くことが示唆されている(非特許文献4)。すなわち、角膜知覚の低下が涙液分泌を減少させ、角膜表面の症状を重篤化させることが問題となっている。また、PRKおよびLASIKにより引き起こされたドライアイによって角膜創傷治癒が障害されたり(非特許文献3)、LASIKの術後に再発性の角膜糜爛が認められたりしたとの報告もある(非特許文献5)。 しかし、現在、角膜手術後の低下した角膜知覚の回復は自然回復に委ねられ、またドライアイの治療においても角膜知覚を回復させるための積極的治療は施されていないのが現状である。また、神経麻痺性角膜症、角膜潰瘍、糖尿病性角膜症などの角膜神経変性を伴う疾患でも角膜知覚低下が引き起こされるが、適切な治療法はない。また、角膜の神経に関して、三叉神経節で分岐する第1枝(ophthalmic branch)由来の神経のほとんどが角膜に分布し、角膜の術後知覚回復、角膜上皮の修復などに深く関わっていることが報告されている(非特許文献4)。 網膜神経節細胞は網膜の出力細胞であり、その神経突起は視神経線維とも呼ばれ、網膜内層、神経線維層(最も硝子体に近い側)を走行し、視神経乳頭に集合の後、眼球を出て視神経を形成し視覚情報を大脳皮質に伝達する役割を担っている。様々な網膜疾患や眼圧上昇(緑内障)等が視神経を萎縮、変性を引き起こし、視覚機能障害を招くことが知られている。これらの視覚機能障害には、網膜内の視覚情報伝達経路の機能を回復することができる薬剤、特に網膜神経細胞の神経突起の新生や伸長促進が可能な薬剤が有用と考えられる。 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドは、コリン作用活性の強化作用を有する化合物である(特許文献1)。このアミド化合物は、哺乳類の中枢神経系における障害、より詳しくは、健忘症や認知症などの治療に有用であることが予想される化合物である。また、このアミド化合物は、ラット海馬スライスを用いた実験でソマトスタチンのリリースを高めること、ラット海馬ニューロンにおいて、ソマトスタチンが誘発するカルシウムの流入抑制を阻害すること、およびソマトスタチン神経伝達システムの活性化を介して認知性機能障害を改善することが示唆されている(非特許文献6、特許文献2)。また、N−(1−アセチルピペラジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドが神経栄養因子産生促進剤として用いられることが知られている(特許文献3)。 ソマトスタチンは、in vitro実験においてウサギ三叉神経細胞の神経突起の形成を促進すること、また、ウサギを用いたin vivo試験において、ソマトスタチンの点眼投与は、角膜知覚機能を改善することが知られている(特許文献4、特に試験例2、試験例3)。しかしながら、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドが眼組織の神経細胞においてソマトスタチンのリリースを高めるかどうかについては知られておらず、さらには、このアミド化合物が神経突起形成を促進することについても知られていない。国際公開第2000/042011号パンフレット国際公開第2000/072834号パンフレット国際公開第2003/084542号パンフレット国際公開第2004/039403号パンフレットTuuli, U. L. et al., Experimental Eye Research 1998, 66, pp.755-763Tuuli, U. L. et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science 2000, 41, pp.393-397Ang, R. T. et al., Current Opinion in Ophthalmology 2001, 12, pp.318-322Xu, K.-T. et al., Cornea 1996,15,pp.235-239Solomon, R. et al., The Ocular Surface 2004, 2, pp.34-42Tokita, K. et al., European Journal of Pharmacology 2005, 527, pp.111-120 本発明の目的は、眼組織神経突起形成促進剤の提供である。また、本発明の目的は、眼組織神経突起形成促進剤の医薬としての用途を提供することである。 本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意検討した結果、三叉神経細胞または網膜神経細胞における作用が全く知られていなかったN−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドが意外にも神経突起の形成を促進することを見出し、このような作用を通じて、角膜知覚の低下などの眼組織の神経障害に伴う疾患に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明は、以下に示す通りである。〔1〕N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する眼組織神経突起形成促進剤。〔2〕N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する角膜神経突起形成促進剤。〔3〕角膜知覚の改善、ドライアイの治療または角膜上皮障害の治療に用いられるものである前記〔2〕記載の剤。〔4〕N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する網膜神経突起形成促進剤。〔5〕視覚機能障害の改善に用いられるものである前記〔4〕記載の剤。〔6〕眼組織神経突起形成促進剤を製造するための、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の使用。〔7〕角膜神経突起形成促進剤を製造するための、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の使用。〔8〕角膜神経突起形成促進剤が角膜知覚の改善、ドライアイの治療または角膜上皮障害の治療に用いられるものである前記〔7〕記載の使用。〔9〕網膜神経突起形成促進剤を製造するための、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の使用。〔10〕網膜神経突起形成促進剤が視覚機能障害の改善に用いられるものである前記〔9〕記載の使用。〔11〕眼組織神経突起の形成の促進を必要とする対象に、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、眼組織神経突起の形成を促進させる方法。〔12〕角膜神経突起の形成の促進を必要とする対象に、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、角膜神経突起の形成を促進させる方法。〔13〕角膜知覚の改善、ドライアイまたは角膜上皮障害の治療に用いられるものである前記〔12〕記載の方法。〔14〕網膜神経突起の形成の促進を必要とする対象に、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、網膜神経突起の形成を促進させる方法。〔15〕視覚機能障害の改善に用いられるものである前記〔14〕記載の方法。 本発明のN−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する医薬は、三叉神経細胞の神経突起形成促進作用を有することから、1)角膜神経の損傷によって引き起こされる角膜知覚低下の改善に有用であり、2)角膜上皮障害またはドライアイに伴う角膜知覚低下の改善に有用である。また、本発明のN−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する医薬は、網膜神経細胞の神経突起形成促進作用を有することから、視覚機能障害の改善に有用である。図1は、全細胞数中に占める神経突起形成細胞の比率(%)を示す。縦軸は、全細胞に占める神経突起形成細胞の割合を示す。図中*はコントロール群に対する有意差(p<0.005)を示す。図2は、抗ニューロフィラメント抗体で染色された網膜神経細胞の写真である。図3は、角膜フラップ作製後の角膜知覚の経時的推移を示すグラフである。 本発明は、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する眼組織神経突起形成促進剤を提供する。また、本発明は、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する、角膜神経突起形成促進剤および網膜神経突起形成促進剤を提供する。眼組織神経突起形成促進剤、角膜神経突起形成促進剤、角膜知覚改善剤、網膜神経突起形成促進剤および視覚機能障害改善剤をまとめて、本発明の医薬と称する。 本発明における「眼組織神経」とは、眼組織に存在するあらゆる神経をいい、角膜神経、網膜神経、動眼神経、毛様体神経節を始めとする様々な神経を含む。 本発明における「角膜神経」とは、知覚神経である三叉神経の支配を受け角膜周囲に形成される輪状神経叢、角膜実質に網目状に分布する実質内神経叢、ボーマン膜直下で形成される上皮下神経叢、ボーマン膜を貫通したところで形成される基底細胞神経叢および神経線維をいう。本発明における「網膜神経」とは、神経節細胞から形成される神経線維(視神経)および神経伝達に関与する視細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞から形成される神経線維をいう。本発明における「神経突起」とは、ニューロン(神経細胞)の細胞体から出る突起(樹状突起および軸索)をいい、「形成」とは、細胞体から前記神経突起が生成および/または伸長することをいう。本発明における「形成促進」とは、下記有効成分によって細胞体から前記神経突起が生成および/または伸長することをいう。 本発明の医薬に有効成分として含まれるN−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド(「FK962」CAS No.283167−06−6)は、国際公開第2000/042011号パンフレット(特に実施例6)に記載されたアミド化合物である。このアミド化合物の薬学的に許容される塩は、慣用の無毒性の塩であって、酸付加塩、たとえば無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など)、有機酸付加塩(例えば、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など)、アミノ酸との塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、金属塩、たとえばアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)およびアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)などがあげられる。 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩は、国際公開第2000/042011号パンフレット(特に実施例6)の記載に準じて合成することができる。 本発明の医薬は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなど)において、角膜神経、網膜神経などの眼組織における神経突起形成促進剤として有用である。 本発明の医薬は、角膜神経突起の形成を促進させることによって、角膜神経の損傷、切断または欠損によって引き起こされる角膜知覚低下を改善することができる。すなわち、本発明の医薬は、角膜知覚改善剤として有用である。 本発明の医薬は、角膜神経の損傷、切断または欠損を伴う疾患、例えば、角膜上皮障害、ドライアイ(涙液減少症;涙液蒸発亢進型ドライアイ;シェーグレン症候群;スティーブンス−ジョンソン症候群;角膜上皮糜爛、眼瞼縁炎、眼類天疱瘡、春季カタル、アレルギー性結膜炎、ビタミンA欠乏症などに伴うドライアイなど)、神経麻痺性角膜症、角膜潰瘍、糖尿病性角膜症、角結膜炎(流行性角結膜炎、単純ヘルペス角膜炎)、円錐角膜、角膜変性症等に伴う角膜知覚の低下を改善する治療薬として有用である。ここで言う角膜上皮障害とは、角膜潰瘍、角膜上皮剥離、乾性角結膜炎、慢性表層角膜炎、角膜糜爛、遷延性角膜上皮欠損などの内因性疾患、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装着等による外因性疾患、または物理的もしくは化学的障害によって、角膜上皮が損傷を受けることを意味する。また、本発明の医薬は、白内障手術、硝子体手術やPRK、LASIK、LASEKまたは角膜移植手術などの角膜手術に伴う角膜知覚の低下を改善する治療薬として有用である。 角膜知覚の低下およびその改善は、コシュ・ボネ(Cochet-Bonnet aesthesiometer)角膜知覚計等の知覚計を用いて常法により測定することができる。 ドライアイ患者では涙液機能の低下が、角膜知覚の低下をもたらし、この角膜知覚低下がさらなる涙液機能の低下を導くことが知られている。この悪循環が、ドライアイ症状を亢進させ、さらには角膜上皮障害を引き起こすことが報告されている。例えば、Mathersの論文(CLAO J. 2000, 26, 159.)には、涙腺と角膜は、疾病の発症において密接に一体化したものであり、涙腺の疾病は眼表面に影響し、眼表面の疾病は涙腺に影響する「corneal lacrimal gland feedback model」が記載されている。そして、角膜知覚低下が涙液分泌低下を招き、次いで角膜障害へと導き、その結果として、涙腺障害を引き起こし、これらが悪循環することが示されている(特に161頁、右カラムの39〜45行目)。Angらの論文(Curr Opin Ophthalmol. 2001, 12, 318.)には、点状表層角膜症等の角膜上皮障害の主な原因が角膜知覚の低下であり、その結果として涙腺へのフィードバックが低下し、涙液の産生が減少することが述べられている。また、Xuらの論文(Cornea 1996, 15, 235.)には、涙液の減少が角膜上皮の形態学的変化を引き起こし、角膜知覚の低下を引き起こすことが述べられている(例えば238頁、右カラムの44〜47行目)。一方、Fujishimaらの論文(Cornea 1996, 15, 368.)では、アルドース還元酵素阻害薬を用いた研究において、涙液動態の改善が角膜知覚の改善の結果であることが示唆されている。したがって、本発明の医薬は、角膜知覚の低下を改善することによって角膜知覚低下と涙液機能低下との悪循環を改善することから、ドライアイまたは角膜上皮障害の治療剤としても有用である。特に、本発明の医薬は、角膜知覚の低下に伴うドライアイまたは角膜上皮障害の治療剤として有用である。 本発明の医薬は、網膜神経突起を形成させることによって、網膜神経が損傷、切断、変性または欠損によって引き起こされる視覚機能障害を改善する治療薬として有用である。すなわち、本発明の医薬は、視覚機能障害改善剤として有用である。本発明における視覚機能障害とは、網膜神経および視神経の損傷、変性等による網膜神経節細胞および視神経線維の減少;視神経萎縮、神経線維の軸索消失、視神経の神経線維髄鞘の脱落、視神経の欠損等により生じる、視力喪失、視力の低下、視野狭窄、色覚異常および霧視;ならびに網膜電図および視覚誘発電位の異常等の諸症状を呈する視力障害をいう。 本発明の医薬は、視神経炎、視神経乳頭毛細血管腫、虚血性視神経症、網膜神経線維層欠損、網膜性視神経萎縮、視神経断裂、外傷性視神経症、うっ血乳頭、視神経乳頭欠損、視神経低形成、中毒性視神経萎縮、緑内障等に伴う視覚機能障害を改善する治療薬として有用である。 本発明の医薬は、網膜神経疾患、網膜血管閉塞症、網膜静脈周囲炎、Eales病、虚血性眼症候群、網膜細動脈瘤、高血圧および腎疾患ならびに血液疾患による網膜症、糖尿病性網膜症、網膜ジストロフィー、黄斑ジストロフィー、網脈絡膜症、黄斑変性、黄斑浮腫、網膜色素上皮剥離、変性網膜分離症、網膜芽細胞腫、網膜色素上皮腫等の網膜の炎症に伴う視覚機能障害を改善する治療薬として有用である。さらに、網膜移植時における網膜神経節細胞をはじめとする視細胞の生育と機能維持、視神経移植時における視神経再生に有効である。 本発明の医薬は、患者に対して経口的又は非経口的に投与することができ、投与形態としては、経口投与、眼局所投与(点眼投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与等)、静脈内投与、経皮投与等などが挙げられ、必要に応じて、製薬学的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが挙げられ、非経口投与に適した剤型としては、例えば、点眼剤、眼軟膏、注射剤、貼付剤、ローション剤、クリーム剤などが挙げられる。これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用い、調製することができる。また、本化合物はこれらの製剤の他に眼内インプラント用製剤やマイクロスフェアー等のDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。本発明の医薬は、上述の治療効果を奏する限りその投与経路は特に限定されないが、好ましくは眼局所投与される。眼局所投与用剤形には、例えば、点眼剤や眼軟膏剤が挙げられる。 本発明の医薬の投与対象としては、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)が挙げられる。 例えば、本発明の医薬を点眼剤または眼軟膏剤として用いる場合、安定剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、溶解補助剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、乳化剤(例えば、ポリビニルピロリドン、大豆レシチン、卵黄レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80など)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸、イプシロンアミノカプロン酸など)、粘稠剤(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなど)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類、エデト酸ナトリウム、ホウ酸など)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなど)、pH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸など)、清涼化剤(例えば、l−メントール、d−カンフル、d−ボルネオール、ハッカ油など)、軟膏基剤(白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン、植物油(オリーブ油、椿油、落花生油など)など)などを添加剤として加えることができる。これら添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途などによって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよい。 本発明の医薬を点眼剤または眼軟膏剤とする場合、製剤分野で通常用いられている方法に従って製造すればよく、例えば第15改正日本薬局方、製剤総則、点眼剤の項および眼軟膏剤の項に記載された方法に基づき製造することができる。 本発明は、本発明の医薬を製造するため、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。 本発明の医薬の投与量は、対象となる疾患により異なり、一概には言えないが、効果を発揮させる標的組織中の薬物濃度が0.001nM(N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドとして0.26pg/mL、以下同じ)〜1000nM(260ng/mL)であり、好ましくは0.001nM(0.26pg/mL)〜10nM(2.6ng/mL)、より好ましくは0.01nM(0.0026ng/mL)〜1nM(0.26ng/mL)、さらにより好ましくは0.05nM(0.013ng/mL)〜0.5nM(0.13ng/mL)となるように設定することができる。 本発明の医薬を角膜知覚改善剤として成人の眼に局所的に使用する場合には、0.01nM(0.0026ng/mL)〜100nM(26ng/mL)、好ましくは0.1nM(0.026ng/mL)〜10nM(2.6ng/mL)、より好ましくは0.5nM(0.13ng/mL)〜5nM(1.3ng/mL)の有効成分を含有する点眼液を、1回約20〜約50μL、1日あたり1〜8回、好ましくは1〜5回点眼するのがよい。 本発明の医薬は眼組織神経突起形成の促進、角膜神経突起形成の促進または網膜神経突起形成の促進作用を有することから、本発明は、かかる促進を必要とする対象に、N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、眼組織神経突起の形成、角膜神経突起の形成または網膜神経突起の形成の促進方法も提供する。 本発明の促進方法の対象としては、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなど)があげられ、好ましくはヒトである。 本発明の促進方法における有効成分N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩の投与方法、投与剤型および投与量については、上記本発明の医薬の記載に準じて適宜設定される。 本発明の角膜神経突起形成の促進方法は、角膜知覚の改善、ドライアイの治療または角膜上皮障害の治療に用いられることが好ましい。 本発明の網膜神経突起形成の促進方法は、視覚機能障害の改善に用いられることが好ましい。 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。試験例1:培養ウサギ三叉神経細胞の神経突起形成促進作用1.使用動物 オリエンタル酵母工業株式会社より購入した日本白色種ウサギ(生後4日目、オス)を使用した。2.被験物質 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド(以下、化合物Aと称する)を使用した。3.試験方法A)細胞培養 ウサギ三叉神経細胞の単離はChanらの報告にしたがって行った(Kwan Y. Chan and Richard H. Haschke. Exp. Eye Res. 41: 687-699, 1985)。すなわち、ウサギに、ペントバルビタールナトリウム注射液(大日本住友製薬)麻酔下で、生理食塩水で心臓灌流を施した後、その三叉神経節を切り出した。切り出した三叉神経節をHanks’ balanced salt solution(HBSS、Invitrogen)で洗浄後、300μg/mLのコラゲナーゼ・ディスパーゼ(Roche)で37℃、40分間処理し、120×gで5分間遠心分離して細胞を回収した。最終濃度0.1%EDTAを添加したNeurobasal(登録商標、Invitrogen)で酵素反応を停止させ、培養液で懸濁後、120×gで5分間遠心分離し、三叉神経細胞を調製した。 調製した細胞を、ポリリジン/ラミニンコーティング済みの8ウェルチャンバースライド(ファルコン)上に約3×103細胞/ウェルとなるよう播種し、播種後24時間培養した。24時間後、培養液中に化合物A(最終濃度0.1nM(0.026ng/mL))、陽性対照としてNGF(最終濃度1μg/mL)、またはコントロールとしてPBSをそれぞれ添加した。添加後、さらに48時間培養した。 培養液は、NeurobasalにB27サプリメント(Invitrogen)(最終濃度2%(v/v))およびL−グルタミン(Invitrogen)(最終濃度1mM)およびシトシン−1−β−D(+)アラビノフラノシド(最終濃度10μM)を含むものを用いた。培養条件は、二酸化炭素濃度5%、空気濃度95%、湿度100%、温度37℃とした。B)染色 添加48時間培養後のウサギ三叉神経細胞を、10%中性緩衝ホルムアルデヒド液に、室温にて20分浸して固定した。神経細胞体および神経突起を構成するニューロフィラメントを特異的に認識する抗ニューロフィラメント200抗体(シグマアルドリッチ)を用いて固定した標本を蛍光染色し、染色された細胞を蛍光顕微鏡(オリンパス)下で観察した。染色された細胞像は蛍光顕微鏡からコンピュータに画像として取り込んだ。C)画像解析 培養ウサギ三叉神経細胞の神経突起形成の程度を評価するために、コンピュータに取り込んだ染色細胞の画像において、細胞体直径および神経突起長を画像解析ソフト(Image−Pro Plus Ver.4.5.1, メディアサイバネティクス)を用いて計測した。細胞体直径の2倍以上長さの神経突起を有する細胞を神経突起形成細胞として、その細胞数の全細胞数に占める比率(%)を算出した(Otori Y, Wei JY, Barnstable CJ. Invest. Ophthalmol Vis Sci (1998) 39, 972-981)。4.試験結果 図1は、全細胞数中に占める神経突起形成細胞の比率(%)を示すグラフである。神経突起形成細胞の比率は、コントロール群で29.5±8.7%、0.1nM 化合物A添加群で63.3±5.2%、NGF添加群で70.0±17.6%であった。統計学的解析の結果、0.1nM 化合物A、NGF添加群はいずれもコントロール群に対して有意な突起形成促進作用が認められた(N=6、5、5(順同)、平均値±標準偏差、*:p<0.005;Dunnettの多重比較検定)。 以上の結果より、化合物Aは培養ウサギ三叉神経細胞の神経突起形成促進作用を有することが明らかにされた。さらに、化合物Aは、一般的にポジティブコントロールとして用いられるNGF(1μg/mL)よりも低濃度で三叉神経細胞の神経突起形成促進作用を示した。試験例2:ウサギ網膜細胞の神経突起形成促進作用1.使用動物 オリエンタル酵母工業株式会社より購入した日本白色種ウサギ(生後4日目、オス)を使用した。2.被験物質 化合物Aを使用した。3.試験方法1)細胞培養 ペントバルビタールナトリウム注射液(大日本住友製薬)麻酔下で、生理食塩水で心臓灌流を施した後、ウサギから眼球を摘出し網膜を単離した。Hanks’ balanced salt solution(HBSS、Invitrogen)に懸濁させたパパイン溶液(1mg/mL、シグマアルドリッチジャパン株式会社)に単離した網膜を入れ、37℃で30分間酵素消化を行った。以後、試薬の調製にLeibovitz’s L−15 Medium(L−15、Invitrogen)を用いた。静置後、上清を捨て、3mLのトリプシンインヒビター溶液(2mg/mLトリプシンインヒビター、0.004%DNase、1mg/mL Bovine Serum AlbuminをL−15に溶解、pH7.4)を加えピペッティングした。静置した後、上清を捨て、さらに3mLのトリプシンインヒビター溶液を加えピペッティングし、この操作をさらにもう1回繰り返し、120×gで5分間遠心分離し上清を除いた。高濃度のトリプシンインヒビター溶液(10mg/mLトリプシンインヒビター、10mg/mL Bovine Serum AlbuminをL−15に溶解、pH7.4)を2mL加えてピペッティングし、120×gで5分間遠心分離し上清を捨てた。細胞は0.05% Bovine Serum Albumin(BSA)を含むL−15溶液(Invitrogen)10mLに懸濁し、抗マクロファージ抗体を添加した(最終濃度1μg/mL)。室温で20分間インキュベートした後、120×gで5分間遠心分離して上清を捨て、20mLの0.05%BSA/L−15に懸濁し、あらかじめ二次抗体(抗マウスIgG抗体、日本ケミコン)でコートしておいたディッシュに播種した。37℃で40分間インキュベートした後、浮遊している細胞溶液を120×gで5分間遠心分離することにより細胞を回収した。その細胞をポリリジン/ラミニンコーティング済みの8ウェルチャンバースライド(ファルコン)上に約3×103細胞/ウェルとなるよう播種し、播種後24時間培養した。24時間後、培養液中に、化合物A(最終濃度0.1nM(0.026ng/mL))、陽性対照としてNGF(最終濃度1μg/mL)、またはコントロールとしてPBSをそれぞれ添加した。添加後、さらに48時間培養した。培養液は、NeurobasalにB27サプリメント(Invitrogen)(最終濃度 2%(v/v))およびL−グルタミン(Invitrogen)(最終濃度1mM)およびシトシン−1−β−D(+)アラビノフラノシド(最終濃度10μM)を含むものを用いた。培養条件は、二酸化炭素濃度5%、空気濃度95%、湿度100%、温度37℃とした。2)染色 細胞の染色は試験例1と同様の方法で行った。4.試験結果 結果を図2に示す。図2は、抗ニューロフィラメント抗体で染色された網膜神経細胞の写真である。化合物Aを添加した細胞で顕著な神経突起の形成が確認された。製剤例1 点眼剤化合物A 0.026μgポリソルベート80 0.1gリン酸二水素ナトリウム 0.1g塩化ナトリウム 0.9g塩化ベンザルコニウム 0.005g水酸化ナトリウム 適量滅菌精製水 適量 全量 100mL(pH7.0)以上を混和して点眼剤とする。製剤例2 眼軟膏剤化合物A 1μg精製ラノリン 10g白色ワセリン 100g以上を混和して眼軟膏剤とする。試験例3 培養ウサギ三叉神経細胞の神経突起形成促進作用1.使用動物 オリエンタル酵母工業株式会社より購入した日本白色種ウサギ(生後4日目、オス)を使用した。2.被験物質 化合物Aを使用した。3.試験方法A)細胞培養 ウサギ三叉神経細胞の単離は、Chanらの報告にしたがって行った(Kwan Y. Chan and Richard H. Haschke. Exp. Eye Res. 41: 687-699, 1985)。すなわち、ウサギに、ペントバルビタールナトリウム注射液(大日本住友製薬)麻酔下で、生理食塩水で心臓灌流を施した後、三叉神経節を切り出した。切り出した三叉神経節をHanks’balanced salt solution(HBSS、Invitrogen)で洗浄後、300μg/mLのコラゲナーゼ・ディスパーゼ(Roche)で37℃、40分間処理し、120×gで5分間遠心分離して細胞を回収した。最終濃度0.1%EDTAを添加したNeurobasal(登録商標、Invitrogen)で酵素反応を停止させ、培養液で懸濁後、120×gで5分間遠心分離し、三叉神経細胞を調製した。 調製した細胞を、ポリリジン/ラミニンコーティング済みの8ウェルチャンバースライド(ファルコン)上に約3×103細胞/ウェルとなるよう播種し、播種後24時間培養した。24時間後、培養液中に化合物A(最終濃度:0.001nM(0.00026ng/mL)、0.1nM(0.026ng/mL)、10nM(2.6ng/mL)、1000nM(260ng/mL))、陽性対照としてNGF(最終濃度1μg/mL)、またはコントロールとしてPBSをそれぞれ添加した。添加後、さらに48時間培養した。 培養液は、NeurobasalにB27サプリメント(Invitrogen)(最終濃度2%(v/v))およびL−グルタミン(Invitrogen)(最終濃度1mM)およびシトシン−1−β−D(+)アラビノフラノシド(最終濃度10μM)を含むものを用いた。培養条件は、二酸化炭素濃度5%、空気濃度95%、湿度100%、温度37℃とした。B)染色 48時間培養後のウサギ三叉神経細胞を、10%中性緩衝ホルムアルデヒド液に、室温にて20分浸して固定した。神経細胞体および神経突起を構成するニューロフィラメントを特異的に認識する抗ニューロフィラメント200抗体(シグマアルドリッチ)を用いて固定した標本を蛍光染色し、染色された細胞を蛍光顕微鏡(オリンパス)下で観察した。染色された細胞像は蛍光顕微鏡からコンピュータに画像として取り込んだ。C)画像解析 培養ウサギ三叉神経細胞の神経突起形成の程度を評価するために、コンピュータに取り込んだ染色細胞の画像において、細胞体直径および神経突起長を画像解析ソフト(Image-Pro Plus Ver.4.5.1、メディアサイバネティクス)を用いて計測した。細胞体直径の2倍以上長さの神経突起を有する細胞を神経突起形成細胞として、その細胞数の全細胞数に占める比率(%)を算出した(Otori Y, Wei JY, Barnstable CJ. Invest. Ophthalmol Vis Sci (1998) 39, 972-981)。4.試験結果 表1に細胞数中に占める神経突起形成細胞の比率(%)を示す。0.001nM、0.1nM、10nM、1000nMの化合物A添加群の神経突起形成細胞の比率(%)は、いずれもコントロールに対して高かった。また、統計学的解析の結果、0.1nM化合物A、NGF添加群はいずれもコントロール群に対して有意な突起形成促進作用が認められた(平均値±標準偏差、*:p<0.05;Dunnettの多重比較検定)。 以上の結果より、化合物Aは0.1nMを至適濃度とし、一般的にポジティブコントロールとして用いられるNGF(1μg/mL)よりも低濃度で三叉神経細胞の神経突起形成促進作用を示した。試験例4 ウサギ角膜知覚低下に対する改善効果1.使用動物 北山ラベスより購入した体重2.5〜3.0kgの日本白色種ウサギを使用した。動物は、入荷後から試験終了日まで、室温23±3℃、湿度55±10%、12時間照明(8:00点灯、20:00消灯)に設定された飼育室内で1ケージあたり1匹収容して飼育した。動物には固型飼料(ラボRストック、日本農産工業)を1日100〜120g制限給餌し、水道水を自由に摂取させた。2.被験物質 被験物質として化合物Aを用いた。被験物質は以下に示す基剤に1nM(0.00000026%)となるように溶解し点眼液を調製した。対照群には被験物質を含まない下記基剤を点眼投与した。基剤処方:リン酸二水素ナトリウムニ水和物 0.1g塩化ナトリウム 0.9g水酸化ナトリウム 適量精製水 適量 100mL(pH7.0)3.試験方法1)群分け フラップ作製の前日に動物の前眼部肉眼観察とフルオレセインによる角膜染色斑の観察を行ない、それらに異常が認められないウサギを選定し、コシュ・ボネ角膜知覚計(Luneau社製)を用いて角膜知覚の初期値を測定した。角膜知覚の初期値が均一になるようにSAS前臨床パッケージ(Version 5.0、SASインスティテュートジャパン)を用いて単変数完全無作為化割付け手法により群分けした。2)角膜フラップの作製 動物にセラクタール(2%キシラジン:バイエルジャパン)とケタラール(5%ケタミン筋注用:第一三共)の混合液(0.5:1)を筋肉内注射(0.9mL/kg)することで全身麻酔を施した。眼球を十分に露出したのち、ウサギ眼用アダプターを装着したマイクロケラトーム(MK-2000、ニデック社)を用い(Arbelaez MC. et al. J. Refract Surg. 2002 May-Jun; 18(3 Suppl):S357−60)、130μm厚で直径8.5mmの角膜フラップを作製した。顕微鏡下でフラップを確実に元の位置に戻し、フラップの位置が動かないように動物を観察しながら麻酔から覚醒させた。覚醒後は0.3%ガチフロキサシン点眼液(ガチフロ点眼液、千寿製薬)を投与した。3)投与 フラップ作製翌日にフラップの剥がれを認めない個体に被験物質点眼液または基剤を6週間点眼投与した。点眼投与は、手術眼に対して2時間間隔で1日4回、マイクロピペットを用いて1回あたり50μLずつとした。手術後6日間は被験物質点眼液または基剤の点眼の前に、0.3%ガチフロキサシン点眼液を投与した。4)角膜知覚測定 コシュ・ボネ角膜知覚計を用いて、手術後1週、2週、4週または6週の角膜知覚を測定した。なお、測定者には測定するウサギがいずれの投与群に属するか分からないよう、ブラインドで測定した。5.試験結果 図3は角膜フラップ作製後の角膜知覚の経時的推移を示した。基剤点眼群は、角膜フラップ作製1週後で全個体が知覚を消失した後、6週後にかけて経時的に知覚が回復した。それに対し、薬液点眼群も角膜フラップ作製1週後で全個体が知覚を消失したが、4週後以降は基剤点眼群よりも知覚が回復する傾向を示した。また、角膜フラップ作製後初めて知覚が確認できた時期(知覚消失に対して知覚の測定値が5mmフィラメント長以上を示した最初の時期)を比較したところ、基剤点眼群で平均5.5週だったのに対し、薬液点眼群では平均4.1週だった。以上のことより、薬液点眼群の方がフラップ作製後の角膜知覚低下に対し、早期回復することがわかった。 本発明の医薬は、1)角膜神経の損傷によって引き起こされる角膜知覚低下の改善、および2)角膜上皮障害またはドライアイに伴う角膜知覚低下の改善に有用である。また、本発明の医薬は、視覚機能障害の改善に有用である。 本出願は、日本で出願された特願2007−112248(出願日:2007年4月20日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する眼組織神経突起形成促進剤。 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する角膜神経突起形成促進剤。 角膜知覚の改善、ドライアイの治療または角膜上皮障害の治療に用いられるものである請求項2記載の剤。 N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含有する網膜神経突起形成促進剤。 視覚機能障害の改善に用いられるものである請求項4記載の剤。


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