生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗疲労剤
出願番号:2009508998
年次:2014
IPC分類:A61K 31/36,A61P 3/02,A61K 36/18,C07D 493/04


特許情報キャッシュ

小野 佳子 齋藤 佳世 立石 法史 前田 哲史 JP 5591533 特許公報(B2) 20140808 2009508998 20080312 抗疲労剤 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 竹内 茂雄 100101373 山本 修 100118902 鶴喰 寿孝 100157923 小野 佳子 齋藤 佳世 立石 法史 前田 哲史 JP 2007067240 20070315 20140917 A61K 31/36 20060101AFI20140828BHJP A61P 3/02 20060101ALI20140828BHJP A61K 36/18 20060101ALI20140828BHJP C07D 493/04 20060101ALN20140828BHJP JPA61K31/36A61P3/02A61K35/78 CC07D493/04 101C A61K 31/36 A61K 36/18 A23K 1/16 A23L 1/30 C07D 493/04 CAplus/REGISTRY(STN) TKDL(インド伝統的知識電子図書館) 特開平06−227977(JP,A) 特開平05−051388(JP,A) 国際公開第2007/119378(WO,A1) 国際公開第97/001968(WO,A1) 福田 靖子など,ゴマの食品科学,日本食品工業学会誌,1988年 8月,第35巻,第8号,p.552-562 平本 恵一など,酸化ストレスと疲労,医学のあゆみ,2003年 2月 1日,第204巻,第5号,p.309-313 片岡 洋祐,酸化ストレスと脳の疲労,医学のあゆみ,2003年 2月 1日,第204巻,第5号,p.314-318 SINGH Amanpreet et al.,Role of antioxidants in chronic fatigue syndrome in mice,Indian journal of experimental biology,2002年11月,Vol.40, No.11,p.1240-4 田中 雅彰,過労死と疲労−過労死に至る脳内メカニズム−,医学のあゆみ,2003年 2月 1日,第204巻,第5号,p.362-364 木戸 敏孝,慢性ストレスと疲労,医学のあゆみ,2003年 2月 1日,第204巻,第5号,p.365-369 11 JP2008054466 20080312 WO2008126587 20081023 12 20110221 谷尾 忍 本発明は、次の一般式(I)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはR1とR2、及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、そしてn,m,lは0又は1を表す)で表わされるセサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする抗疲労剤、及び抗疲労作用を有する医薬組成物(機能性食品を含む)に関する。 疲労は、一般に疲労感、倦怠感を主症状とするが、その他睡眠障害や意欲低下など多彩な症状を伴う疾患である。疲労感や倦怠感は体の異常を知らせる重要なアラーム信号の一つであり、健常時でも激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合などに、自覚するようになる。このような生理学的な疲労は通常、体を休めることにより元の正常な状態に回復し、長く続くことはない。1985年総理府の「健康に関する国民意識調査」では、約6割強の人が疲労を訴えているが、疲労を訴えている人の7割は「一晩の睡眠により疲労は回復する」と答えている。しかしながら、現代人は、長時間の労働や過度のストレス状況に置かれることが多く、また十分な休息を取るのが難しいため、疲労感や倦怠感の回復が困難になることもしばしばある。1999年厚生省疲労調査研究班が実施した疫学調査によると、疲労を自覚している人の割合は約6割と変わっていないが、このうちの6割もの人が6ヶ月以上にわたって疲れを感じていることが報告されている。すなわち、ここ14年で慢性的な疲労に悩む人が増加し、疲労の質が変化してきているのである(非特許文献1)。 また、最近になって、慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)なる疾患が難病の一つとして話題になっている。欧米では20年ほど前から発病が認められるが、日本ではようやく1991年ごろから厚生省の専門研究班が実態調査に乗り出した段階である。これは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状などの基本的な症状を示す。他方、過労死が大きな社会問題となっている。過労死は、長時間の過密の働きすぎによる突然死であると定義されている。過労死の問題は、医学的、経済的、社会的に非常に重要であると認識されているものである。 そこで、激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合の疲労を軽減しうる物質、疲労から正常な状態に回復を早めることができる物質等のいわゆる「抗疲労物質」が提案されている。たとえば、ある種のアミノ酸組成物(特許文献1)や、L−カルニチンおよびヒスチジン関連ジペプチド(特許文献2)、サンザシ抽出物(特許文献3)などに体力増強作用があることが報告されている。また、運動等による体力の消耗や疲労時等における栄養補給を目的として、アスコルビン酸を含む栄養補給組成物が有用であることが示されている(特許文献4)。 さらに、上記のアスコルビン酸は、慢性疲労症候群を処置する対症療法にも有効であることが知られ(非特許文献2)、アセチル−L−カルニチンも慢性疲労症候群の処置に有効であることが示唆されている(特許文献5)。 【0007】 一方、セサミン及び/又はエピセサミンについては、本出願人によって自律神経調節作用を有することが示されている(特許文献6)。また、アルコールやタバコ中毒からの離脱の際の中毒症状の緩和する作用が示されている(特許文献7)。しかし、これらいずれの文献にも抗疲労作用については何ら示唆も開示もなされていなかった。 【特許文献】 【特許文献1】 特開平9−124473号公報 【特許文献2】 特開2001−046021号公報 【特許文献3】 特開平8−47381号公報 【特許文献4】 特開平6−327435号公報 【特許文献5】 特開平8−26987号公報 【特許文献6】 国際公開WO2004−105749 【特許文献7】 米国特許第4427694号公報 【非特許文献】 【非特許文献1】 井上正康、倉恒弘彦、渡辺泰良 編、「疲労の科学」、株式会社講談社、222〜228頁 【非特許文献2】 In Vivo (1996) Nov-Dec;10(6):585-96 本発明は、ヒトや動物等に対して安全で、したがって、継続摂取が可能であり、かつ疲労の予防/および治療に有効である組成物、特に医薬組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、胡麻に含まれる成分であるセサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体に、持久力の向上、体力増強、疲労軽減、疲労回復を促進する活性があることを発見し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下に関する。1. 次の一般式(I):(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはR1とR2、及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、そしてn,m,lは0又は1を表す)で表わされるセサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする抗疲労剤。2. 前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がセサミンである上記1に記載の抗疲労剤。3. 疲労を伴う疾患を治療または予防するための、上記1または2に記載の抗疲労剤を含む医薬組成物。4. 疲労を伴う疾患が、慢性疲労症候群である、上記3に記載の医薬組成物。5. 上記1記載のジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の疲労の回復又は予防のための用途。6. 前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がセサミンである上記5に記載の用途。7. 疲労を伴う疾患を治療または予防するための、上記5または6に記載の用途。8. 疲労を伴う疾患が、慢性疲労症候群である、上記7に記載の用途。 本発明の抗疲労剤は、優れた持久力の向上、体力増強、疲労軽減、疲労回復の促進作用を有し、しかも、ヒトや動物等へ投与しても安全なので、継続摂取が可能である。したがって、本発明の抗疲労剤は、機能性食品を含む医薬組成物として、広く適用可能である。負荷強制水泳試験において、セサミン投与による水泳時間短縮抑制(疲労の軽減)を示すグラフである。強制運動試験において、セサミン投与によるラットの疲労回復の程度を、自発運動量で示すグラフである。強制運動試験において、セサミン投与によるラットの疲労予防の程度を、自発運動量で示すグラフである。血中疲労物質の測定において、セサミン投与によるケトン体の血清濃度の上昇抑制を示すグラフである。発明の実施するための最良の形態(ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体) 本発明で使用するジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体としては、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2,6−ビス−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2,6−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン等を挙げることができ、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、または混合して使用することができるが、中でも、セサミンを好適に用いることができる。 なお、本明細書中、セサミンとは、セサミンおよび/またはエピセサミンを表すものとする。また、特開2001−139579号公報に記載のセサミンの代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体であり、本発明に使用することができる。これら本発明で使用する化合物及び該化合物を主成分とする抽出物は、公知の方法、例えば特許第3075358号に記載の方法で得ることができる。 本発明で使用する化合物は、従来の食品中より見出した化合物又はその類縁化合物であるので安全性の面からも優れているのは明らかである。これはまた、7週齢のICR雄性マウスに対し、セサミン2.14g/day/kgを2週間連投(経口投与)したところ、何ら異常な症状は認められなかったことからも明らかである。(抗疲労作用及び剤) 上記のセサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の摂取により、顕著な抗疲労作用が得られる。ここで、疲労とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えたときにみられる一時的な身体的および精神的パフォーマンスの低下現象であり、パフォーマンスの低下は、身体的および精神的作業能力の質的あるいは量的な低下を意味する。また、本発明の「疲労」には、慢性疲労症候群や過労死をも包含するものとする。 本発明における「抗疲労作用」、すなわち「抗疲労剤」としての効果は、上記疲労を減弱させる作用や疲労を回復させる作用をいい、具体的には、運動や作用した部位(脳を含む)の働きの持続時間を向上させること、および同じ運動量や作用量での疲労物質の増加を抑制すること(持久力向上・体力増強)、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経などが疲労感知状態になっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態を通常状態に回復することを促進する効果をいう。 また、本発明の抗疲労剤が目的とする慢性疲労症候群とは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状などの基本的な症状を意味する。本発明の抗疲労剤は、この慢性疲労症候群を処置、すなわち慢性疲労症候群の各症状を緩和し、正常な状態に移行させることができる。さらに、本発明の抗疲労剤が目的とする過労死とは、重度の過労状態にあり、身体的活力を保つことができないにも関わらず、疲労を十分に感じることができなくなり、その結果、脳血管疾患や心疾患を発症して永久的労働不能や死亡に至った状態を意味する。本発明の抗疲労剤は、慢性疲労症候群を処置することができ、それにより過労死を予防しうるものである。 本発明の「抗疲労剤」としての効果は、次の試験により確認することができる。 第一は、水浸断眠試験における遊泳時間の測定である。水浸飼育のように、十分な睡眠や休息姿勢をとることができず、肉体的にも精神的にも休息できない環境で飼育されたマウスを用い、おもりを負荷させた状態で遊泳させ、10秒以上鼻が水没してしまうまでの時間を測定することにより、その疲労度を確認するものである。この動物モデルは肉体的及び精神的疲労モデルであるから、被験物質を投与することにより遊泳時間が延長されれば、身体的及び/又は精神的疲労が軽減されたこと、疲労状態のもとで身体的活力が維持されたこと(体力が増強されたこと)、持久力が向上したこと等、疲労に対する抵抗性があることが確認される。 第二は、強制運動試験における自発運動量の測定である。被験物質を投与したラットを用いてトレッドミルによる強制運動を行い、その後、動物の暗期の自発運動量を測定するものである。この動物モデルは運動疲労(肉体疲労)モデルであるから、被験物質の投与によって自発運動量が増加すれば、疲労に対する抵抗性があることが確認される。 第三は、血中の疲労物質量の測定である。すなわち、被験物質の投与によって、身体的あるいは精神的負荷を与えたときの血中の疲労物質濃度の増加を抑制する作用の有無を確認するものである。疲労の原因物質について同定はされていないが、候補物質の一つとして、ケトン体(アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸とアセトンの総称)を挙げることができる。ケトン体は、糖の利用性が低下した時、脂肪組織から動員された遊離脂肪酸がβ酸化を受けた結果として生成される代謝産物であることが知られている。ケトン体の生成が亢進し、肝外組織でのケトン体の利用を上回った場合、ケトン体の血中蓄積が起こり、ケトン血症(ケトーシス)となる。アセト酢酸や3−ヒドロキシ酪酸は中等度の強酸であるため、生体の緩衝能を越えてケトン体が蓄積した場合、血液が酸性に傾きアシドーシス状態がもたらされ、疲労感が生じる。(山本隆宣,医学のあゆみ Vol.204 No.5:325−329, 2003)。 ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体としてセサミンを用いた場合、上記の抗疲労作用の試験、すなわち水浸断眠試験、強制運動試験、疲労物質量の測定のいずれにおいても疲労に対する抵抗性があることが確認された。このことは、セサミンが抗疲労剤としてはもちろんのこと、慢性疲労症候群の予防や治療、過労死の予防にも有用であることを意味する。また、セサミンは、血中の疲労物質(ケトン体)の増加も抑制するので、ケトーシス改善剤としても有用であるといえる。アラニン、アスパラギン酸、グルタミンについて、生体内で血中ケトン濃度を減少させる効果が報告されている(Romano Nosadini, Biochem. J., 190, 323-332, 1980、Eugenio Cersosimo, Am. J. Physiol., 250, E248-E252, 1986)が、これらアミノ酸は、単回投与した場合のケトン体減少効果が一過性で、効果の持続時間が短いため、ケトーシス改善には単回投与を頻回に繰り返す必要があるという問題点があったが、本発明のセサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を含むケトーシス改善剤は、一日一回、2日間の連続摂取でケトン体濃度減少作用が得られる(実施例4参照)ものであり、摂取の容易さからも優れたケトーシス改善剤であるといえる。 本発明の抗疲労剤は、上記のとおり、これを服用することにより疲れにくくなり、また疲労回復にも効果がある。すなわち、スポーツなどの筋肉運動に際して肉体疲労を感じたとき、計算作業等の連続作業に際して精神疲労を感じたときに服用して疲労の回復を図ることができることはいうまでもないが、予め服用してから労働、スポーツなどを行うと疲労を予防することもできる。また、スポーツを行う前や途中で摂取することにより、持久力向上が期待できる。さらに、日常的に摂取することにより、精神的な疲労やそれに伴う疾患をも予防することができる。 本発明の抗疲労剤は、医薬品や食品(機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の経口投与可能なもの)として使用できる。本発明の抗疲労剤は、包装、容器または説明書に有効成分の種類、剤の用途、持久力向上および抗疲労効果等の効能、および/または摂取方法を表示して用いてもよい。 本発明の抗疲労剤を医薬品として使用する場合、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を単独で、あるいは、薬理学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤等とともに、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、丸剤等の形態で経口投与、あるいは注射剤等の非経口の形態で投与できる。投与量や投与形態は、対象、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択すればよいが、例えば、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体としてセサミンを選択し、ヒト(成人)を対象に抗疲労作用を得ることを目的として経口投与する場合には、一般に、1日当たり1〜200mg、好ましくは5〜100mg程度となるように、1日に1〜2回程度の頻度で連続投与するとよい。本発明者らは、マウスやラットの疲労動物モデルを用いて検討した結果、セサミンを予め服用して精神的および肉体的疲労の軽減を図る場合には、10〜100mg/kg、好ましくは10〜80mg/kg、より好ましくは12.5〜80mg/kg、更に好ましくは50〜80mg/kg程度を服用することで抗疲労作用が得られることを確認している。また、発生した肉体疲労に対して疲労回復を促進するためにセサミンを服用する場合には、100mg/kg以上、好ましくは150mg/kg以上、より好ましくは180mg/kg以上を服用することで抗疲労作用が得られることを確認している。 一方、非経口投与の場合は1日当たり0.1〜20mg、好ましくは0.5〜10mg程度となるように、1週間に3回程度の頻度で、好ましくは2日に1回程度の頻度で、静脈注射により投与するとよい。 本発明の抗疲労剤を食品として使用する場合、有効成分の含有量はセサミンの抗疲労作用が得られる量であれば特に限定されず、食品の形態(カプセル、タブレット、飲料等)により適宜選択すればよい。ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の種類により異なるが、通常、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。また、飲料形態の場合、好ましくは0.0005〜0.05重量%、より好ましくは0.002〜0.01重量%とすることができる。 本発明の抗疲労剤には、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の効果を損なわない、すなわちジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、ホルモン、栄養成分、香料などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも一般的に医薬、食品に用いられるものが使用できる。 本発明の抗疲労剤は、ヒトのみならず、作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物にも効果を有する。 以下実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1.水浸断眠試験 被検サンプルとして、(セサミン/エピセサミン混合物、セサミン:エピセサミン=1:1(重量比))を用いた。 疲労に対する効果を判定する試験として、Tanakaらの方法(Neurosience, Let.352, 159−162, 2003)を一部改変した方法で実施した。すなわち、被検動物としてBalb/c系雄性マウス(8週齢)を用い、平均体重が均等になるようにマウスを各群12匹からなる5群に分けた。そのうち、4群は水浸飼育群として、床敷(ペーパーチップ)のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。2日間の水浸中に、被検サンプルとしてセサミンを1日1回、12.5、50、200mg/5mlオリーブ油/kg体重で2日間強制経口投与した(水浸飼育セサミン投与群)。対照群には1日1回、オリーブ油(5ml/kg)を強制経口投与した(水浸飼育対照群)。残りの1群は通常飼育群として、通常の床敷(ペーパーチップ)を敷いた飼育ケージで飼育し、1日1回、オリーブ油を強制経口投与した(通常飼育対照群)。2日後、マウスの尾に体重の8%相当の重りをつけて、直径18cm、水深30cmの水槽で遊泳させ、10秒以上水没するまでの時間を測定した。 水浸飼育群のマウスが通常飼育群のマウスよりも遊泳時間が短縮するが、セサミン投与群マウスにおいて遊泳時間の短縮をどれだけ抑制できるかにより、疲労に対する効果を判定した。結果を図1に示す。(図中、*はスチューデントt検定による危険率0.05%の有意差を示す。) 図1の結果から明らかなとおり、水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群にくらべ有意に短縮した。一方、水浸飼育セサミン投与群は、遊泳時間の短縮が顕著に抑制された。水浸飼育対照群の遊泳時間を100%とした場合、セサミンを12.5mg/kg与えた群では遊泳時間は150%に、セサミンを50mg/kg与えた群では遊泳時間は300%に、セサミンを200mg/kg与えた群では遊泳時間は133%になり、遊泳時間の短縮が大きく抑制された。特に、セサミンを12.5〜50mg/kg与えた場合(より好ましくは50mg/kg与えた場合)に、遊泳時間の短縮が大きく抑制された。このことから、セサミンは、水浸断眠負荷による疲労を有意に軽減(疲れにくくする)し、疲労回復効果があることが明らかである。実施例2.強制運動試験 被検サンプルとして、実施例1と同様のセサミンを用いた。 Sprague Dawley系雄性ラット(6週齢)を1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。試験開始前日にラットを各群8匹からなる5群に分けた。全ての動物を試験当日朝より絶食状態にし、1群のみ運動負荷を施さない安静群とした。それ以外の4群の動物に対して、トレッドミル強制歩行装置(MK-680、室町機械製)により3時間の運動負荷を与えた。運動負荷終了後、被検サンプルとしてセサミンを20、60、180mg/kgの用量でオリーブ油(5ml/kg)に溶解したものを、ゾンデを用いて強制経口投与した。負荷対照群には、オリーブ油を5ml/kgの用量でゾンデを用いて強制経口投与した。その後、動物を自発運動測定装置(Supermex、室町機械製)に移し、暗期の自発運動量を測定した。 強制運動負荷を与えた場合に、ラットの疲労がセサミン投与によりどれだけ回復されるかを、自発運動量により判定した。結果を図2に示す。図2の結果から明らかなとおり、運動負荷対照群の自発運動量は、無負荷対照群にくらべ大きく減少した。このことは、このラットモデルが運動負荷疲労状態を反映したモデルであることを示す。このモデル動物において、セサミン投与群では、180mg/kg与えた場合に、自発運動量の増加が確認された。セサミン投与により、運動疲労による回復を促進できることが明らかとなった。実施例3.強制運動試験 被検サンプルとして、実施例1と同様のセサミンを用いた。 Sprague Dawley系雄性ラット(10週齢)を1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。ラットを各群8匹からなる3群に分けた後、AIN93Gにセサミンが最終濃度0、0.02、0.1% (w/w)となるように混和した飼料を調製し、各飼料を1週間自由摂取させた。その後、トレッドミル強制歩行装置(MK-680、室町機械製)により3時間の運動負荷を与えた。運動負荷終了後、動物を自発運動測定装置(Supermex、室町機械製)に移し、暗期の自発運動量を測定した。 本実験において、セサミンを予め摂取しておいた場合に強制運動負荷により起こるラットの疲労がどれだけ予防されるかを、ラットの自発運動量により判定した。結果を図3に示す。セサミンを摂取させていない運動疲労コントロール群の運動量を基準にすると、セサミン0.02%混餌摂取群ではほとんど変わらないのに対し、セサミン0.1%混餌摂取群でその運動量は亢進した。セサミン0.1%の混餌投与は、体重換算するとおよそ80mg/kgに相当する。このことから、セサミンの予めの継続摂取により肉体疲労予防できることが明らかとなった。また、運動前のセサミン摂取による肉体疲労の予防には、実施例2よりも低用量で効果が認められた。このことは予め服用しておくか疲労後に服用するかで有効量が異なることを示唆している。実施例4.血中疲労物質の測定 生体の代謝物疲労をケトン体の変動を指標として検討した。マーカーへの影響を見るため、実施例1を若干改変して水浸断眠負荷動物を作成した。すなわち、被検動物としてBalb/c系雄性マウス(8週齢)を用い、平均体重が均等になるようにマウスを各群7−10匹からなる3群に分けた。そのうち、2群は水浸飼育群として、床敷(ペーパーチップ)のかわりに水温23℃の水道水を水深5mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸させた。3日間の水浸中に、被検サンプルとしてセサミンを1日1回、50mg/kg体重の用量を5ml/kg体重のオリーブ油に溶かして3日間強制経口投与した(水浸飼育セサミン投与群)。対照群にはオリーブ油(5ml/kg)をセサミン投与群と同じ頻度で強制経口投与した(水浸飼育対照群)。残りの1群は通常飼育群として、通常の床敷(ペーパーチップ)を敷いた飼育ケージで飼育し、オリーブ油(5ml/kg)をセサミン投与群と同じ頻度で強制経口投与した(通常飼育対照群)。 3日後、マウスより採血した血液を用いて、血清中のケトン体を酵素法によって生化学自動分析装置(株式会社日立製作所 7070形)で測定した。 ケトン体の測定結果を図4に示す。図中、*はスチューデントt検定により危険率0.05%で、また、**は危険率0.01%で有意な差であることを示す。図4の結果から明らかなとおり、水浸飼育対照群(オリーブ油)の血清中のケトン体濃度は、通常飼育対照群(cont)にくらべ有意に増加した。一方、水浸飼育セサミン投与群(セサミン)は、ケトン体濃度の増加が有意に抑制された。 以上の結果から、セサミンは、水浸飼育によるケトン体産生を抑制し、疲労軽減および疲労回復効果、ケトーシスの予防および治療効果があることが示唆された。 次の一般式(I):(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはR1とR2、及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、そしてn,m,lは0又は1を表す)で表わされるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の、抗疲労剤(飲食品を除く)の製造における使用であって、 前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体はセサミン及び/又はエピセサミンであり、 前記抗疲労剤はリボフラビンを含まない、 前記使用。 前記抗疲労剤は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を唯一の有効成分とする、請求項1に記載の使用。 前記抗疲労剤が疲労の回復または予防に用いられる、請求項1または2に記載の使用。 前記抗疲労剤は、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、及び丸剤からなる群から選ばれる形態を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。 前記抗疲労剤は、その包装、容器または説明書に抗疲労効果の表示を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。 疲労を伴う疾患を治療または予防するための、次の一般式(I):(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはR1とR2、及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、そしてn,m,lは0又は1を表す)で表わされるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする抗疲労剤を含む医薬組成物であって、 前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体はセサミン及び/又はエピセサミンであり、 前記抗疲労剤はリボフラビンを含まない、前記医薬組成物。 前記抗疲労剤は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を唯一の有効成分とする、請求項6に記載の医薬組成物。 疲労を伴う疾患が、慢性疲労症候群である、請求項6または7に記載の医薬組成物。 次の一般式(I):(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはR1とR2、及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、そしてn,m,lは0又は1を表す)で表わされるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする抗疲労剤(飲食品を除く)を投与することを含んでなる、抗疲労作用を発揮させる方法(医療行為を除く)であって、 前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体はセサミン及び/又はエピセサミンであり、 前記抗疲労剤はリボフラビンを含まない、 前記方法。 前記抗疲労剤は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を唯一の有効成分とする、請求項9に記載の方法。 前記抗疲労作用が疲労の回復または予防である、請求項9または10に記載の方法。


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