生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_精神安定剤および機能性食品
出願番号:2009508890
年次:2014
IPC分類:A61K 31/122,A61P 25/24,A61P 25/22,A61P 25/18


特許情報キャッシュ

佐藤 俊郎 加茂 修一 河原 瑠美 JP 5537151 特許公報(B2) 20140509 2009508890 20080327 精神安定剤および機能性食品 株式会社J−オイルミルズ 302042678 中嶋 伸介 100106448 鈴木 征四郎 100080252 佐藤 俊郎 加茂 修一 河原 瑠美 JP 2007099323 20070405 20140702 A61K 31/122 20060101AFI20140612BHJP A61P 25/24 20060101ALI20140612BHJP A61P 25/22 20060101ALI20140612BHJP A61P 25/18 20060101ALI20140612BHJP JPA61K31/122A61P25/24A61P25/22A61P25/18 A61K31/00−31/327, A61P1/00−43/00 CAplus (STN), REGISTRY(STN), MEDLINE (STN), EMBASE (STN), BIOSIS (STN), JSTPlus (JDreamIII), JMEDPlus(JDreamIII), JST7580 (JDreamIII), PubMed 特開2003−226639(JP,A) 国際公開第2004/043462(WO,A1) 国際公開第2006/004294(WO,A1) 国際公開第06/005185(WO,A1) 特表2004−501937(JP,A) 特表2004−515508(JP,A) COCCHETTO,D.M. et al,Behavioral perturbations in the vitamin K-deficient rat,Physiol Behav,1985年,Vol.34, No.5,p.727-34 日本醸造協会誌,2004年,99(12),P.867-872 4 JP2008000770 20080327 WO2008126367 20081023 9 20101111 澤田 浩平 本発明は、精神安定剤およびこれを含有する機能性食品に関し、より詳細には食品由来で安全性の高い精神安定剤およびこれを含有する機能性食品に関する。 近年、精神的苦痛や肉体的苦痛からくる過度のストレスによって生じる精神疾患、特にうつ病、不安症、自律神経失調症などが増え、深刻な問題となっている。この様な背景から、化学物質を有効成分とする抗うつ薬や抗不安薬が数多く開発され、使用されている。従来の医薬品は、副作用、依存性などの問題があることも知られている。 安全な食品由来成分で上記の機能を有するものがあれば望ましい。抗うつ作用や抗不安作用の知られている食品または食品成分には、GABA、朝鮮人参、セントジョーンズワート、羅布麻エキスなどがある。また、抗ストレス作用の知られている食品または食品成分には、テアニン、大豆ペプチド、カカオポリフェノール、マツタケ、マイタケなどがある(非特許文献1)。しかし、いずれも、作用効果が緩和である。抗ストレス食品の開発と展望 横越英彦監修 シーエムシー出版(2006年) 食経験豊富で安全な食品成分または栄養素で、抗不安、抗うつ、抗ストレス性などの精神安定作用を発揮するものが好ましいところ、そのような物質は現在知られていない状況にあって、本発明の目的は、より安全で食経験豊富な食品成分に由来し精神安定作用効果を高い物質を提供することにある。 本発明者らは、食品から摂取されたビタミンK1やビタミンK2が体内組織においてメナキノン-4(MK-4)へ変換されることを見出し、特に脳でMK-4の濃度が高くなっていることから、ビタミンKの脳での機能解明を試みてきた。これらの研究を経て、本発明者らは、ビタミンKには、抗不安、抗うつ、抗ストレス作用などの精神安定作用があることを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は、ビタミンKを含有する精神安定剤を提供するものである。 本明細書では、「精神安定剤」の用語を、抗不安剤、抗うつ剤、抗ストレス剤等の上位概念の意味で使用する。 従来知られている脳におけるビタミンKの機能は、スフィンゴ脂質の濃度(Carrie, I et.al. (2004) J. Nutr. 134, 167-172)やスルファチドの代謝への関与の示唆にとどまり、現在のところ明確ではない(Denisova, NA & Booth, SL (2005) Nutr. Rev. 63, 111-121)。したがって、ビタミンKが脳で何らかの生理作用に関与することが示唆されるものの、ヒトを含む動物にビタミンKを投与することによって精神安定効果が得られることは全く予見されていなかった。 ビタミンKには、植物によって作られるビタミンK1、微生物によって作られるビタミンK2、および合成物のビタミンK3がある。ビタミンK2は、さらにイソプロノイド側鎖の長さの違いによって、MK-4からMK-15まで分類される。ビタミンKは、上記したように体内でMK-4に転換されるため、本発明の医薬に使用するビタミンKは、ビタミンK1およびビタミンK2のいずれでもよい。好ましくは、生理活性のより高いビタミンK2であり、より好ましくは、メナキノン−4および/またはメナキノン−7である。 本発明は、また、上記精神安定剤を含有するサプリメント、健康食品または機能性食品を提供する。 本発明のビタミンKを有効成分として含有する抗不安剤によれば、人体にとって安全性の高い精神安定剤を得ることができる。ヒトが一日あたり必要とされるビタミンKの目安量は55〜80μg(日本人の食事摂取基準2005年版)であるが、許容上限摂取量は設定されておらず、ビタミンKは安全性の高い物質といえる。したがって、本発明の精神安定剤は、従来知られている抗不安剤、抗うつ剤および抗ストレス剤よりも安全性の点で優れる。 脂溶性であるビタミンKは、従来の抗不安剤、抗うつ剤、抗ストレス剤よりも体内に蓄積されやすいため、作用が長続きするという効果もある。 本発明の精神安定剤は、また、機能性食品や健康食品として日常的に摂取することが極めて容易であるので、うつ病などの疾病の予防も企図される。本発明に従うビタミンK群および比較例のコントロール群(媒体対照群)のマウスの飼料摂取1週間の体重変化を示すグラフである。データは、10匹の平均値±標準偏差で示した。コントロール群とメナキノン-4群あるいはメナキノン-7群の値を、Student’s t検定で解析した結果、有意差は認められなかった。本発明に従うビタミンK群および比較例のコントロール群のマウスの恐怖条件付け誘発無動時間(60秒毎)を示すグラフである。データは、平均値±標準誤差で示した。二元配置分散分析の結果、メナキノン-4ならびにメナキノン-7はコントロール群と比べてそれぞれ、P<0.01およびP<0.05の危険率で有意に無動時間の短縮が認められた。 以下に、本発明の精神安定剤の一実施形態を詳細に説明する。まず、本発明の精神安定剤に使用可能なビタミンKには、ビタミンK1〜K3がある。ビタミンK1は、緑黄色野菜、豆類、植物油、海藻類、魚介類などに多く含まれる。ビタミンK1は、脂肪に可溶な淡黄色油状であって、熱に対して安定であるが、光に対しては不安定である。ビタミンK1は、酸化物であってもよい。 ビタミンK1は、青しそ、エゴマ、モロヘイヤ、パセリ、春菊、小松菜、ほうれん草、三つ葉、アルファルファ、はしばみの葉、栗の葉、大麦の若茎、からす麦の若茎、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、植物油(大豆油、ナタネ油、ゴマ油、落花生油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、米ぬか油、オリーブ油)などから、公知の方法(例えば特開平5-155803)によって、抽出および精製される。ビタミンK1は、合成によっても得られる。本発明には、市販のビタミンK1も制限なく使用することができる。 ビタミンK2には、ナフトキノン骨格につく側鎖イソプレノイド基の長さに応じてメナキノン-4(MK-4)からメナキノン-15(MK-15)の同族体が存在する。ビタミンK2は、微生物が産生し、納豆や、チーズなどの乳製品に多く含まれるが、例えばチーズにはMK-6〜MK-9が、納豆にはMK-7が多量に含まれている。ビタミンK2は腸管内の細菌によっても作り出される。 ビタミンK2は、例えば特開平08-073396、特開平11-92414、特開平10-295393、特開2001-136959などに記載の方法に従って、納豆菌などの微生物によって醗酵生産される。本発明には、市販のビタミンK2も制限なく使用することができる。 食品から摂取されたビタミンK1やビタミンK2は、生体内で側鎖がはずれ、ゲラニル基に転換され、MK-4に変換されることが知られている。このため、MK-4は、ビタミンK依存性タンパク質のGla化とは別の直接的な作用があると考えられ、活性型のMK-4とも言われる。MK-4を直接摂取するよりも、納豆由来のMK-7を摂取した方が脳内でMK-4が顕著に増えることも知られている(小崎瑠美ら,(2006),ビタミン,80,203)。 ビタミンK3は合成物である。ビタミンK3は、多量に摂取すると副作用が心配される。よって、これまでの食経験から、野菜から抽出精製されるビタミンK1や納豆菌などを用いた醗酵物から抽出されるビタミンK2が、安全性がより高い点で好ましい。さらに好ましくは、安価かつ容易に生産可能なビタミンK2が好ましい。食経験のあるメナキノン−4(MK-4)およびメナキノン−7(MK-7)の単独使用または併用が特に好ましい。 本発明の精神安定剤には、必須成分のビタミンKに加えて、抗うつ効果や抗ストレス効果の従来知られている食品成分やハーブなどの一種または二種以上を添加してもよい。 本発明の精神安定剤には、必須成分のビタミンKや適宜の抗うつ効果や抗ストレス効果のある食品成分やハーブ物質のほかに、薬理学上使用可能な媒体、賦形剤、助剤などを、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。 上記媒体などの具体例として、乳糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、白糖、精製白糖、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、パラチノース、還元パラチノース、粉末還元麦芽糖、水アメ、カルメロース、デキストリン、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、アミノ酸、カオリン、無水ケイ酸、ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、脂肪酸またはその塩、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、アルコール、植物油、オリーブ油、ダイズ油、トウモロコシ油、脂肪油、油脂、粘性パラフィン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの担体または賦形剤;結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、マクロゴールなどの結合剤;コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、マクロゴール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステルなどの滑沢剤;潤滑剤;結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントなどの崩壊剤;大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールなどの界面活性剤;乳化剤;リン酸ナトリウムなどの溶解補助剤;吸収促進剤;塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸などのpH調整剤;天然樹脂などの光沢剤;安定化剤;酸化防止剤;保存剤;湿潤剤;着色剤;芳香剤;無痛化剤などが挙げられる。 本発明の精神安定剤に含有されるビタミンKの含有量は、組成物の摂取量によって変わってくるが、通常、0.0001〜100重量%でよく、好ましくは0.001%〜90重量%、より好ましくは0.01〜70重量%、さらに好ましくは1〜50重量%の範囲である。ビタミンKの含有量が0.0001重量%以下であると、抗不安、抗うつ、および/または抗ストレス効果を得るのに必要な量を摂取できない場合がある。 本発明の精神安定剤は、医薬、サプリメント、機能性食品または健康食品として使用するために、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤などの形態に加工される。ビタミンKは脂溶性であるため、形態は錠剤またはカプセル剤が好ましい。 本発明の精神安定剤は、パン、米飯、スープ、総菜、菓子、キャンディなどの一般加工食品の加工時に原料に直接添加されてもよい。 本発明の精神安定剤を医薬として使用する場合の摂取方法は、特に限定されない。例えば、経口摂取、経皮投与、輸液、注射(筋肉内、腹腔内、皮下または静脈)などである。好ましくは、患者の負担が少ない点で、錠剤またはカプセル剤の経口摂取である。 本発明の精神安定剤の用途には、ヒトのうつ病、不安症、神経症、恐怖症性不安障害、対人恐怖症、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、自律神経失調症、妄想状態、幻覚、躁病、てんかん、これらの症状に起因する不眠症、疲労、ふるえ、けいれん、発汗、動悸、頻脈、疼痛、胸痛、頭痛、夜尿症などが挙げられる。 本発明の精神安定剤の医薬としての用量用法は、患者の症状、体重、投与間隔、投与方法、ならびに他の臨床的作用を左右する種々の因子を考慮して決定され得る。典型的には、成人男性一日あたりのビタミンK摂取量として、通常、10μg〜100mgでよく、20μg〜100mgが好ましい。治療目的で使用する場合は、6mg〜100mgで使用可能であるが、さらに強い効果を求める場合成人体重60kgの場合は、1800mgまで使用可能である。 本発明の精神安定剤をサプリメント、機能性食品、健康食品または一般の食品に用いる場合には、安全性を考慮して、成人男性一日あたりのビタミンKの摂取量として、10μg〜45mgが好ましく、50μg〜45mgがさらに好ましい。 本発明の精神安定剤は、ヒト以外にも、家畜動物、愛玩動物などの哺乳動物へ摂取する抗不安、抗うつおよび/または抗ストレス性の機能を有する医薬や機能性食品として用いてもよい。投与方法は、注射などの非経口摂取、機能性食品や配合飼料の形態の経口摂取がある。 以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕 外界の刺激は、感覚器を通して脳に入り、扁桃体および海馬-外側中隔系に送られ、ここで有益か有害かが判断される(これを生物学的価値評価という)。評価された情報は、扁桃体および海馬に記憶されると同時に、生体反応が起こり、情動表出として観察者により視認される。ヒトや動物は、経験により得られた生物学的価値評価の情報を学習(獲得)し、再び同じ刺激を受けたときに扁桃体および海馬-外側中隔系において比較され、このときの反応を条件付け情動反応という。例えば、ラットやマウスを限定した箱に入れて、これらが嫌悪する電気刺激を負荷し、6日後に再度同じ箱に入れると電気刺激されていないにもかかわらず、ある期間すくみ行動(無動)を起こす。この無動を恐怖条件付け誘発無動という。現在、無動の時間の短縮を指標として、抗不安および抗うつ作用を評価する動物モデルが広く用いられている。例えば、市販抗うつ薬である塩酸ミルナシプラン30mg/kgの7日間の経口投与で改善されることが確認されている。 上記の不安評価系を用いて、本発明の精神安定剤に市販の抗うつ薬と同様の効果があるかどうかを調べた。具体的には、ビタミンKと媒体とからなる試料、ならびにコントロールとして媒体のみからなる試料を、それぞれ、恐怖条件付けマウスに7日間、強制経口投与し、各試料のマウス無動時間への影響を調べた。(準備) 媒体として使用するメチルセルロース(製品名:メトローズ(登録商標)SM-400、以下MCという)を、信越化学工業株式会社より購入し、0.5w/v%となるよう注射用水(株式会社大塚製薬工場製)に溶解した。 本発明に従う抗不安剤の有効成分として用いるビタミンKとして、メナキノン-4およびメナキノン-7を、和光純薬工業より購入し、必要量を秤量後、0.5%MCに所定濃度となるように懸濁した。コントロール群には、媒体(0.5%MC)のみを投与した。 10週齢の雄マウス(C57BL/6NCrlCrlj、SPFグレード)を、日本チャールス・リバー株式会社より購入し、5日間の検疫期間、その後5日間馴化し、体重測定ならびに一般状態の観察を1日1回行い、体重推移および一般状態に異常の認められない動物を実験に供した。 マウス10匹/群の群分けは、コンピュータ(前臨床試験CPシステム)を用いて無作為抽出法により各群の平均体重がほぼ均一になるように行った。動物は、入手日に耳パンチ法および背部の毛刈法の併用により識別した。群分け後は、油性インク(群毎に色を変える)を用いて尾部へ記入することにより識別した。 飼育環境は、設定温度23℃(許容範囲:20〜26℃)、設定湿度55%(許容範囲:40〜70%)、明暗各12時間(照明:午前6時〜午後6時)、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)に維持された飼育室で動物を飼育した。動物は、検疫・馴化期間中および群分け後ともに、オートクレーブ処理した床敷を入れた平床式プラスチック製ケージ(W:175×D:245×H:125mm)を用いて1ケージ5匹の群飼育とした。 飼料として、固型飼料(ANG93G、オリエンタル酵母工業株式会社)を、給餌器に入れ自由に摂取させた。飲料は、給水瓶を用いて自由に摂取させた。試料の投与は、定法に従って、ディスポーザブルマウス用経口ゾンデ(有限会社フチガミ器械製)を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(テルモ社製)を用いて強制経口投与した。なお、投与操作時には試料をスターラーで撹拌しながら使用した。ビタミンKの投与量は体重kgあたり、30mgとなるように投与した。投与液量は、投与日の体重値より、10ml/kgで算出した。(試験方法) 一般状態および死亡の有無を、1日1回投与前に観察した。体重測定は、1日1回、投与前に測定した。電気刺激および無動時間の測定は、フェアードコンディション計測装置(Acti Metrics社)を用いた。群分けしたマウスをフェアードコンディション計測装置の中に入れ、恐怖条件付けの電気刺激を行い、同時に無動時間を測定した。電気刺激は、15秒毎に1秒の0.3mAの刺激を240秒間行った。電気刺激終了直後に、マウスに試料を投与した。投与7日後、コントロール(0.5%MC)群およびビタミンK投与群は、最終投与から2時間〜2時間1分後に再度、フェアードコンディション計測装置の中に入れ、電気刺激無しの条件で4分間の無動時間を測定した。なお、無動時間は、60秒毎の% of freezingとして表した。なお、マウスの呼吸に関する骨格筋とひげの動き以外が観察されない状態を無動とし、観察される状態を活動と判定した。(統計解析方法) 体重値は、群毎の平均値、標準偏差を算出した。無動時間は、0〜240秒の% of freezingを算出し、群毎の60秒毎および0〜240秒の% of freezingの平均値、標準偏差を算出した。有意差検定は、コントロール群とビタミンK群との間でそれぞれ2群間比較検定を行った。60秒毎の% of freezingの有意差検定は、二元配置分散分析を行い、0〜240秒の% of freezingの有意差検定は、コントロール群と被験物質群との間でそれぞれF検定による等分散性の検定を行い、等分散の場合はStudentのt検定を、不等分散の場合はWelch検定を行った。有意確率(p値)は、すべての組み合わせについて表示した。また、いずれの検定も危険率5%未満を有意とし、5%未満(p<0.05)と1%未満(p<0.01)とに分けて表示した。なお、上記の有意差検定に使用するソフトウエアは、市販の統計プログラム(SAS software ReL.8.2 TS 020. SAS前臨床パッケージVersion 5.0; SAS Institute Japan株式会社)とした。得た成績でヒストグラムおよび正規分布を確認し、検定法を確認した。ヒストグラムおよび正規分布の確認は、市販の統計プログラム(JMP、SASリリース5.1.1; SAS Institute Japan株式会社)を用いた。(結果) コントロール群とビタミンK群において、死亡はみられず、一般状態に異常はみられなかった。図1に示すように、体重は、コントロール群とメナキノン-4群、メナキノン-7群のいずれも、投与期間を通して、ほぼ同じ値を推移し、群間に差は認められなかった。 恐怖条件付け誘発無動時間(60秒毎)の結果を、図2に示す。これは、各60秒間のうちに動きのなかった時間の比率(%)を示したもので、%が高いほど恐怖、不安、ストレスを感じていることを表している。 コントロール群(媒体対照群;0.5%MC群)の無動時間は、39.85〜47.03%を示した。一方、メナキノン-4群の無動時間は、0〜60秒で31.99%とコントロール群と比較して若干低かった。その後、メナキノン-4群の無動時間は、徐々に短縮し、180〜240秒では22.29%であった。コントロール群とメナキノン-4群の二元配置分散分析した結果、P<0.01で有意差が認められた。また、メナキノン-7の無動時間は0〜60秒で38.84%とコントロール群と比較してほぼ同じであったが、その後徐々に無動時間は短縮し、180〜240秒で20.83%であり、無動時間の有意な短縮が認められた。 ビタミンK投与群において、測定開始時である0〜60秒でコントロール群と比較して無動時間はメナキノン-4では若干低く、メナキノン-7では同程度であるが、測定時間が経過するにつれて無動時間はさらに短縮していった。このことは、恐怖条件付けされた場所に再び暴露されたマウスは不安を惹起したが、その後、電気刺激を受けないことを認知し、時間の経過とともに不安が寛解されていったためと考えられる。以上のことから、ビタミンKには、抗不安および抗うつの指標である恐怖条件付け誘発無動時間の短縮が認められ、ビタミンKを投与することによって、抗不安、抗うつ、抗ストレスなどの精神安定作用が発揮されることがわかった。 以上、本発明をその好ましい実施態様について詳細に説明してきた。しかし、当業者は本願の開示を考慮することによって、本発明の範囲および精神の範囲内で変形および改良を行い得ることが理解される。本発明の実施態様には、以下が挙げられる。1. ビタミンKを有効成分として含有する精神安定剤。2. ビタミンKの含有量が0.0001〜100重量%である、上記1項に記載の精神安定剤。3. 前記ビタミンKがビタミンK2である、上記1項に記載の精神安定剤。4. 前記ビタミンKがメナキノン−4および/またはメナキノン−7である、上記1項に記載の精神安定剤。5. 上記いずれか一項の精神安定剤を含むサプリメント、健康食品または機能性食品。6. ヒト用である、上記1項に記載の精神安定剤。7. ヒト用である、上記5項に記載のサプリメント、健康食品または機能性食品。8. ビタミンKを有効成分として含有する、精神安定剤を投与することからなる、不安症、うつ病および/ストレスの治療方法。9. ビタミンKを有効成分として含有する、精神安定剤を投与することからなる、不安症、うつ病および/ストレスの予防方法。10. 精神安定剤を製造するためのビタミンKの使用。 ビタミンK2を有効成分として含有する、痴呆を伴う躁うつ病、分裂病及び反応性精神疾患用途以外の精神安定剤(ただし、食品を除く)。 前記ビタミンK2がメナキノン−4および/またはメナキノン−7である、請求項1に記載の痴呆を伴う躁うつ病、分裂病及び反応性精神疾患用途以外の精神安定剤(ただし、食品を除く)。 抗不安剤、抗うつ剤および/または抗ストレス剤である、請求項1に記載の精神安定剤。 ビタミンK2を有効成分として含有させることからなる、痴呆を伴う躁うつ病、分裂病及び反応性精神疾患用途以外の精神安定剤(ただし、食品を除く)の製造方法。


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