生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_ジストニアおよびジストニア様症状の予防および治療におけるカリウムチャンネル活性剤
出願番号:2009508198
年次:2009
IPC分類:A61K 45/00,A61K 31/44,A61K 31/404,A61K 31/27,A61P 25/00


特許情報キャッシュ

クリス ルンフェルト アンゲリカ リヒター JP 2009535370 公表特許公報(A) 20091001 2009508198 20070430 ジストニアおよびジストニア様症状の予防および治療におけるカリウムチャンネル活性剤 クリス ルントフェルト 508328464 Chris Rundfeldt 矢野 敏雄 100061815 山崎 利臣 100094798 久野 琢也 100099483 杉本 博司 100110593 星 公弘 100128679 二宮 浩康 100135633 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 100114890 ラインハルト・アインゼル 230100044 クリス ルンフェルト アンゲリカ リヒター EP 06009064.4 20060502 A61K 45/00 20060101AFI20090904BHJP A61K 31/44 20060101ALI20090904BHJP A61K 31/404 20060101ALI20090904BHJP A61K 31/27 20060101ALI20090904BHJP A61P 25/00 20060101ALI20090904BHJP JPA61K45/00A61K31/44A61K31/404A61K31/27A61P25/00 171 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW EP2007003830 20070430 WO2007128462 20071115 43 20090105 4C084 4C086 4C206 4C084AA17 4C084MA52 4C084MA55 4C084MA60 4C084MA63 4C084NA14 4C084ZA22 4C084ZA94 4C084ZC61 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC13 4C086BC17 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086MA55 4C086MA56 4C086MA60 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA22 4C086ZA94 4C086ZC61 4C206AA01 4C206AA02 4C206HA22 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA72 4C206MA75 4C206MA80 4C206MA83 4C206ZA22 4C206ZA94 4C206ZC61 1.技術分野 本発明は、ヒトおよび動物双方において、ジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアの予防、軽減および薬物治療に関する。 2.発明の背景 2.1 ジストニアおよびジストニア症状の分類 ジストニアは、多くの場合、捻転または反復運動および姿勢異常を引き起こす持続性、時に有痛性の筋収縮を特徴とする神経学的症候群である。ジストニアは、両腕および両足、体幹、頸部、頭部または顔面を含めた身体のいずれかの部分を侵す恐れがある。この障害は、身体のいくつかの随意筋を含みうる。ジストニアは、誤診の多い難治性の運動障害である(Fahn et al.1998;Saunders−Pullman and Bressman,2005)。 一般に、ジストニアは、発症年齢、症状の分布および病因に従って分類される。ジストニアの症状は、小児期(すなわち早期発症)、青年期または成人期に始まりうる。発症の年齢は、重要な予後の指標となる。一般に、症状の発症が早いほど、他の身体の部分に広がりやすい(Greene et al.,1995)。例えば、全身性ジストニアまたはドーパ反応性ジストニアの症状は、多くの場合、小児期に始まるが、通常、局所性ジストニアは、青年期に引き起こされる。早期発症ジストニアの多くの症例は、先天的遺伝子欠損の結果として引き起こされると考えられる。他の症例は、自然な遺伝子変化により生じうる。頸部ジストニア(痙性斜頸)、眼瞼痙攣、書痙および痙攣性発音障害などの特定の局所性ジストニアは、後期発症ジストニアの例である。 症状の分布に基づくジストニアの分類は、局所性ジストニア、分節性ジストニア、多巣性および全身性ジストニアを含む(Jankovic and Fahn,1998)。症状は、局所性または身体の一領域、例えば、頸部または腕部あるいは脚部に限定しうる。多くの様々な型の局所性ジストニアがある。眼瞼痙攣は、瞼の運動を制御する筋の不随意収縮を特徴とする。症状は、間欠性、無痛性、持続的なまばたきの増加、有痛性、機能盲につながる閉眼に及ぶ恐れがある。さらに、痙性斜頸として知られる頸部ジストニア患者において、頭頸部の筋痙攣は、有痛性であり、頸部を不自然な位置または姿勢に捻転させる恐れがある。これらの有痛性痙攣は、間欠性または持続性である場合がある。顎口腔および舌ジストニアは、口を開閉させる顔面下部の強制的な収縮を特徴とする。さらに咀嚼および舌運動異常を生じる恐れがある。さらに喉頭ジストニアとして知られる痙攣性発音障害において、喉頭筋が侵される。これは、音声の変化につながる(嗄声、絞扼性またはささやき声質)。四肢ジストニアにおいて、腕部、手部、脚部または足部の1つまたは複数の筋の不随意収縮がある。これらの局所性ジストニアの型は、書痙および他の職業性ジストニアを含む。 患者の中には、身体の分節または関与する2つの隣接領域、例えば頭部と頸部または腕部と体幹に症状を有する。他の患者において、症状は、多巣性であり、互いに隣接しない身体の2つの領域、例えば、両腕または腕部と脚部に出現しうる。全身性ジストニアにおいて、症状は、腕部または脚部に始まって進行し、より広範囲になる。最終的には、体幹および身体の残りの部分を含む。 病因の点から、ジストニアは、特発性または原発性(未知の病因)および症候性または二次性(症状としてのジストニア)型に分けられる。ジストニアおよびジストニア症状の病因は様々である。多くの場合、実際の原因は、不明のままである。特発性ジストニアの多くの症例は、遺伝性であり、かつ(複数の)欠陥遺伝子の結果として引き起こされると考えられる。原発性ジストニアという語句は、特発性ジストニア型として好ましく、この場合、異常遺伝子が原因として発見されている(Fahn et al.,1998)。例えば、早期発症原発性ジストニア(いわゆる原発性捻転ジストニア)のほとんどの症例は、DYT−1遺伝子の突然変異による。この疾患遺伝子の結果として引き起こされる早期発症ジストニアは、最も一般的であり、重篤な型の遺伝性ジストニアである。これらの患者において、通常、ジストニアは、単独症状として引き起こされ、基礎疾患と関連しない。原発性ジストニアの他の遺伝的原因はあまりない(Saunders−Pullman and Bressman,2005)。 二次性ジストニアは、特定の環境因子または脳を侵す「傷害」により生じうる。それは、ウィルソン病、多発性硬化症などの別の基礎疾患の症状として引き起こされる恐れがあり、または脳卒中および神経系の損傷などの傷害により(例えば、出生時の酸素欠乏により、または自動車事故時の損傷の結果として)または薬物の副作用として引き起こされる恐れがある(Jankovic and Fahn,1998;Saunders−Pullman and Bressman,2005)。成人において、二次性ジストニアの最も一般的な型は、薬物誘発性ジスキネジア(ジストニアおよび他の運動障害)を含む。遅発性ジストニアは、持続性神経ペプチド誘発性ジストニアの1型である。このような遅発性ジストニアを引き起こす恐れがある薬物は、特定の神経弛緩薬または抗精神病薬(精神障害の治療に使用)である。これらの薬剤は、ハロペリドールまたはクロルプロマジンを含むがそれだけに限定されない。さらに、中枢ドーパミン受容体を遮断、すなわち、ドーパミン受容体拮抗薬である他の薬剤は、遅発性ジストニアを引き起こす恐れがある。これらのジストニア様症状の最も一般的な形態は、ジスキネジアと呼ばれる。別に、レボドパおよびドーパミン受容体作用薬などのドーパミン作動薬は、パーキンソン病患者の(ジストニアを含めた)ジスキネジアを誘発する恐れがある(Fahn et al.,1998)。ほとんどの患者において、症状は、薬物投与継続後のある時点で生じる。興味深いことに、症状は、治療中止後でも継続しうる。 ジストニアは、特定の非変性、神経化学障害(「ジストニアプラス症候群」として知られる)に関連する可能性があり、これは、パーキンソン病などの他の神経学的特徴を特徴とし、レボドパに反応する(いわゆる、ドーパ反応性ジストニア)。ジストニアはまた、特定の、通常、遺伝性の神経変性障害(いわゆる、「遺伝変性ジストニア」)の主要な特徴である。しかし、これらの障害のある患者の中には、ジストニアは進行せず、他の神経学的特徴が、主要な所見である可能性がある。「遺伝変性」という用語は、これらの障害の多くが遺伝性であることから使用されるが、いくつかは、未知の原因のものであることに留意することが重要である。遺伝変性ジストニアは、多数の障害、例えば、特定のX染色体劣性、常染色体優性、常染色体劣性および/またはパーキンソン症候群を含む。このような障害は、以下の症状を含むがそれだけに限定されない:X染色体ジストニアパーキンソン病(Lubag病)、若年性パーキンソン病、ハンチントン病、ウィルソン病、神経有棘赤血球症、レット症候群、パーキンソン病、他の常染色体劣性障害(例えば、毛細血管拡張性失調症、ハレルフォルデン・スパッツ病およびホモシスチン尿症)、特定のミトコンドリア障害(例えば、リー病)、進行性核上性麻痺および皮質基底核変性を含めた他のパーキンソン病障害。 ジストニアはまた、他の発作性神経学的運動障害と関連して引き起こされる恐れがあり、これは、ジストニア性チックおよび発作性ジスキネジアを含む。発作性ジスキネジアは、発作性運動障害の群であり、これは、ジストニアと他の不随意運動、例えば、舞踏病、アテトーシスまたはバリスムのいくつかの組み合わせを含むことができる。促進および増悪因子により区別される、発作性ジスキネジアの主要な4型、発作性非運動誘発性ジストニア(発作性ジストニア性舞踏アテトーシス;略して発作性ジストニア)、発作性運動誘発性ジスキネシア(発作性運動誘発性舞踏アテトーシス)、労作性および催眠薬性発作性ジスキネジア(Nardocci et al.,2002)がある。例えば、全身性ジストニア(主要な特徴)の発作性ジストニアの発作のある患者において、最大数時間持続し、ストレスおよびカフェインにより誘発させることができる。 発作性ジスキネジアとは別に、他のジストニア(上記を参照)の型は、通常、持続性であるが、ストレスおよび運動により悪化する恐れがある。薬物誘発性ジスキネジアにおいて、多くの場合、ジストニア症状は、薬物摂取量に依存して変動する。さらに、いわゆる労作性ジストニアは、特定の運動、すなわち、音楽家痙攣および書痙の局所性ジストニアにより悪化する恐れがある(Jankovic and Fahn,1998)。ジストニア様症状はまた、下肢静止不能症候群の患者、トゥーレット症候群の患者およびチックの患者にも引き起こされる。ジストニア様症状は、神経性筋強直症(さらにアイザックス症候群として知られる)、筋波動症、下肢静止不能症候群、スティッフパーソン症候群、多発性硬化症および橋中央ミエリン溶解の患者にも認めることができる。 神経性筋強直症の過度の筋活性の結果、患者に筋痙攣、筋強直様症状、過度の発汗、筋波動症および繊維束攣縮が存在する可能性がある。非常に少ない神経性筋強直症の症例では、モルバン症候群と呼ばれる障害を引き起こす、臨床経過の中枢神経系所見を進行させる恐れがあり、これらはまた、血清試料にカリウムチャンネルに対する抗体を有しうる。 2.2 疫学 他の十分知られている神経学的状態、例えば、重症の筋無力症および運動神経疾患に比べ、ジストニアの有病率が高いにも関わらず、ジストニアの頻度におけるデータが限られている(Saunders−Pullman and Bressmann,2005)。関連症状の多様性および疾患重症度ならびに軽度の症例の患者の中には未受診のままである事実により、総人口のジストニアの具体的な頻度を決定することが困難である。現在のジストニアの有病率推定値は、局所性ジストニアにおける100000人当たり6.1人から全原発性ジストニアにおける100000人当たり34人に及ぶ。ジストニアおよびその種々の形態における疫学的研究は少ない。2000年に参考文献に報告された欧州の大規模な試験では、原発性ジストニアの未分析年間有病率(1996年〜1997年)は、100万人当たり152人と推定された。原発性ジストニアのうち、局所性ジストニアは、100万人当たり117人で最も高い相関率であった。他のジストニアの有病率は、以下のように推定された:頸部ジストニア100万人当たり57人;眼瞼痙攣100万人当たり36人および書痙100万人当たり14人。年齢調整された相関率は、分節性および局所性ジストニアにおいて男性に比べ女性において実質的に高値であった。この例外は、書痙であった。著者らは、これらの限定されたデータは、おそらく過小評価されていると指摘する(Saunders−Pullman and Bressmann,2005)。 2.3.病態生理学 標準的な技法を使用して、特発性ジストニア患者のCNS内に病理形態学的変化を検出することができなかったが、多くの場合、症状の型は、基底核、特に線条体の病変に関連する(Bhatia and Marsden,1994)。脳組織または機能の一貫した、または特異的な変化は、原発性ジストニア患者に見られず、これらの障害の(1つまたは複数の)根本的な基礎欠損は不明のままである。特発性ジストニアは、おそらく神経伝達物質の活性異常、例えば、基底核内のドーパミン伝達の不均衡の結果であると示唆されている。この仮説は、薬理学的見解に基づくが、ドーパ反応性ジストニアを除くジストニアの病因におけるドーパミンの重要性は、不明確のままである。多くのジストニアにおける基礎神経化学的な根拠を、二次性ジストニアがドーパミン前駆体であるL−ドーパ治療(例えば、パーキンソン病の治療に使用)またはドーパミン受容体遮断薬(拮抗薬)療法により生じうるエビデンスを含めた多数の因子により示唆することができる。前述のように、ジストニアプラス症候群はまた、非変性の神経化学的障害であり、これは、ジストニアに加えて神経学的特徴があることにより原発性ジストニアと区別される(例えば、ミオクローヌスまたはパーキンソン病)。具体的に、ドーパ反応性ジストニア(DRD)およびいくつかのDRD変異体は、ドーパミンの生成および/または他の基底核の神経伝達物質の減少により生じることが示されている。 特定の神経伝達物質の活性異常はまた、遺伝変性障害において明らかとなっている(例えば、パーキンソン病、レット症候群など)。さらに、遺伝変性ジストニア(例えば、ウィルソン病、ハンチントン病、神経有棘赤血球症など)に認められた特定の二次性ジストニアおよび特異的な神経変性変化に関連する局所性脳病変の解剖学的研究により、このようなジストニアの原因として基底核およびその連絡(例えば、視床、大脳皮質またはまれに脳幹)の機能障害と関係し、さらに、原発性ジストニアが基底核の異常により生じうる理論を支持する。 病態生理学は、おそらくジストニアの型において様々であるが、様々な型のジストニアは、運動機能を制御する基底核内の具体的なニューロンの活性異常に関連するエビデンスがある(Wichmann and DeLong,1996;Vitek and Giroux,M.,2000)。 2.4 治療 ジストニアの治療には3つの主要なアプローチ:経口薬物療法、局所性ジストニア患者のジストニア筋への直接治療剤の投与および薬物療法の効果が得られない患者における外科手術がある。理学療法は、薬物療法の補足としての役割を果たすことができる。治療の第1ステップは、ジストニアの原因を決定する試みであり、二次性ジストニアのため、基礎原因を治療することによりジストニアを改善することができる。ジストニアのほとんどの症例において、治療は、単に症候的に姿勢、運動機能を改善し、関連の疼痛を緩和するよう計画される(Jankovic,2004)。例えば、多発性硬化症またはパーキンソン病などの神経学的状態の治療は、ジストニア症状を軽減することができる。いくつかの症例において、神経弛緩薬の中止または減量は、改善を遅らせる。興味深いことに、神経弛緩薬治療は、ジストニアの原因でありうるが、多くの場合、この薬物療法の中止は、完全な寛解につながらず、神経弛緩薬治療により生じる適応変化がジストニアを生じることを示す。現在、特発性ジストニアの経過を反転することができる治療は知られていない。しかし、通常、治療の組み合わせにより、ある程度まで症状を管理することができるが、多くの場合、薬物関連の副作用に犠牲を払う。特定の治療の選択は、大部分が経験的な試験により導かれる。多くの場合、薬物反応は期待を裏切り、ジストニアの型に依存する(Fahn,1995)。 例えば、ドーパ反応性ジストニア(DRD)患者は、少量のレボドパ投与で顕著に改善する。それゆえ、多くの場合、神経学者は、DRDが原因であるのかを決定するため、全身性ジストニア患者にレボドパ治療の経過を試みる。他の型のジストニア患者のほとんどは、レボドパまたは他のドーパミン作動薬、例えば、ドーパミン作用薬による効果を得られない。 多くの場合、局所性ジストニアは、ボツリヌス毒素での治療が効果的である。ボツリヌス毒素(BTX)は、局所性ジストニアに対して作用する生物学的治療剤であり、この時、微量の市販の毒素を過活動筋に直接注射する。この治療は、数か月間筋を弛緩させる。 DRDおよび局所性ジストニアとは別に、しかし、多くの場合、薬物治療は、期待を裏切る(Fahn,1995)。ベンゾジアゼピンは、神経系および脳の化学活性を干渉するクラスの薬物であり、神経細胞間の連絡を減少させるよう作用する。結果的に、このような医薬品は、筋を弛緩させ、ジストニアに関連する症状を緩和することができる。ベンゾジアゼピンは、経口医薬品であり、これを使用して局所性、分節性および全身性ジストニアを治療することができる。ジアゼパムおよびクロナゼパムは、ジストニアの治療に最も一般的に使用されるベンゾジアゼピンの2型である。これらの薬物の主要な副作用は、眠気であり、これは、投与量を減量することに制御することができる。相対的に高用量時の副作用は、鬱状態、人格変化または重篤な場合、精神病を含みうる。これらの薬物はまた、中毒の可能性が高く、耐性の発達により、長期間の治療により治療効果を失う恐れがある。バクロフェンは、痙性患者の治療に使用される薬物である。さらに、この薬物は、ジストニア患者にも投与されている。バクロフェンの主要な作用部位は、脊髄であり、この場合、それは、GABAB自己受容体を刺激することにより筋活性を刺激する神経伝達物質の放出を減少させる。バクロフェンを使用して、原発性および二次性ジストニアをともに治療する。この薬物は、経口または脊髄に直接薬物を送達する外科手術により埋め込まれたポンプを介して投与することができる(鞘内バクロフェン)。抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を遮断し、それにより筋収縮を不活性化する。これらの薬物を経口投与し、局所性、分節性および全身性ジストニアの治療に使用する。トリヘキシルフェニジルおよびジフェンヒドラミンは、ジストニアの治療に使用される最も一般的な抗コリン薬である(ジフェンヒドラミンはまた、抗ヒスタミン薬物である)。この治療形態は、小児においてより効果があり、この時、多くの場合、小児は、成人に比べ高用量のトリヘキシフェニジルを耐容することができる。疾患経過の早期に薬物治療を開始する患者において、より高い治療効果を生じることができる。副作用は、特に高用量時に重篤である可能性がある。これらは、意識混濁、眠気、幻覚、健忘症、人格変化、口渇、霧視および尿閉を含む恐れがある。ドーパミン遮断またはドーパミン枯渇剤は、ジストニア患者の治療にも使用することができる。これらの薬剤の可能な陽性結果は、ドーパミン遮断薬がジストニアも引き起こしうるために矛盾する。それにも関わらず、中には、これらの薬剤による効果を示す患者もいる。テトラベナジンは、最も広く使用されるドーパミン遮断薬である。患者の中には、テトラベナジンをリチウムと併用することができ、これは、運動緩慢および鬱状態などのテトラベナジンの副作用の減少に役立つ可能性がある。他のドーパミン遮断薬は、一般に使用されず、それは、これらが遅発性ジストニアをより誘発しやすい可能性があるためである。神経弛緩薬であるクロザピンおよびオランザピンは、ジストニアの治療に有用である可能性があり、遅発性ジストニアを引き起こす可能性が低い。 2.5 神経カリウムチャンネル開口剤 K+イオンに選択的なチャンネルは、多くの細胞型の機能に不可欠な役割を果たす(Rudy,1988;Hille,1993)。これらは、種類および機能ともに例外的に多様化する。個々の細胞は、通常、数種のチャンネルを発現することができ、かつ発現する。 このようなチャンネルは、種々の機構を介して調節され(Rudy,1988)、様々な遺伝子ファミリーに分類することができる。K+チャンネル間の差はまた、分子生物学試験により明らかになっており、これらが分子構造においてかなり異なることを示す(Takumi et al.,1988;Kubo et al.,1993;Ruppersberg et al.,1993)。現在、K+チャンネルは、多様化した薬理学的手技の標的物質である。心臓のK+チャンネルを活性させる電位差は、アミオダロンおよびソタロールなどのクラスIIIの抗不整脈薬により遮断され、この作用は、心臓活動電位の再分極を遅らせ、心臓不応性を増加させる(Colatsky et al.,1990)。抗糖尿病薬スルホニルウレア系のグリベンクラミドおよびトルブタミドは、ATP感受性K+チャンネル、KATPの遮断薬であり、これらの薬物は、β細胞を産生するインスリンを侵す(Bernardi and Lazdunski,1993)。レブクロマカリム、アプリカリムおよびピナシジルなどのK+チャンネル開口剤は、現在、高血圧、末梢性虚血および閉塞性気道疾患の治療に評価され、さらに、KATPチャンネルに影響を及ぼす(Edwards and Weston,1993)。Ca2+活性化K+チャンネル亜型、すなわち、大容量のCa2+活性化K+チャンネル(BKmax)の調節因子は、神経保護活性に評価されている。このようなCa2+活性化K+チャンネルは、ほとんどのニューロン、平滑筋および横紋筋細胞ならびに分泌性上皮細胞に発現する(McKay et al.,1994)。休止細胞を開口する内向き整流性K+チャンネルは、おもにK+イオンの濃度勾配による休止期膜電位の発生に関与する。このようなチャンネルの全細胞容量はかなり小さいが、細胞膜電位に対する寄与は大きく、それは、神経細胞の入力抵抗が高く、開口チャンネルが脱感作しないためである。このようなチャンネルの選択的開口は、てんかんおよび神経変性を含めたいくつかの疾患の治療標的物質として検討されている(Doupnik et al.,1995)。 ごく最近、K+チャンネルの他のファミリーもまた、治療標的物質として関心を引いている。最近、Kv7チャンネルファミリーとして新たに命名されたKCNQチャンネルファミリーの様々なメンバーは、多様化した組織において別々に発現する。KCNQ1(Kv7.1)が心筋で発現する一方、KCNQ2、3および4のサブユニットは、神経細胞におもに発現し、抗痙攣薬および鎮痛剤であるレチガビンの標的物質である(Rundfeldt and Netzer,2000)。KCNQ3および5サブユニットもまた、膀胱平滑筋細胞に発現し、尿失禁治療の新しい標的物質として作用することができる。さらに、他のカリウムチャンネル、すなわち、Kv1ファミリーのメンバーとしてのKv1.3チャンネルは、他の組織の免疫細胞に発現し、自己免疫疾患および慢性炎症の治療における免疫調節の標的物質として検討され(Vennekamp et al.2004)、その一方、同ファミリーの異なるメンバーであるKv1.5チャンネルは、心臓不整脈の治療の標的物質である。これらの両チャンネルの開口剤の役割は、未だに決定されていない。 2.6 結論 ジストニアは、特発性疾患、いくつかの遺伝性および/または変性障害に生じる症状または薬物治療を含む外因性原因の結果、すなわち、製剤を用いた特定の疾患の治療の副作用でありうる。この運動障害の予防、治療または改善に利用可能な広域の薬物にも関わらず、多くの症例において、治療は不十分であり、原因治療に利用できない。カリウムチャンネルは、多様性であり、これらが様々な細胞型の不可欠な機能に関与する場合、多数の疾患の標的物質として検討されている。カリウムチャンネルの高度な多様性により、および多くの場合、器官特異的分布により、カリウムチャンネル調節因子は、多数の疾患のための興味深い薬物となる可能性を担持する。しかし、ジストニアを治療するためのカリウムチャンネル調節およびとりわけ、KCNQチャンネルの調節ならびにKirチャンネルの調節につながる利用可能なデータはない。 3.発明の概要 神経弛緩薬誘発性ジストニアおよびレボドパ誘発性ジスキネジア、神経性筋強直症、筋波動症およびジストニア様症状を生じる他の疾患を含むジストニア関連ジスキネジアを含めたジストニアのより良好な治療を見つける試みにおいて、本発明者らは、ジストニアがおもな特徴である発作性ジスキネジアの遺伝的動物モデルであるdtsz突然変異ハムスターの神経細胞に発現する様々なカリウムチャンネルの活性剤(すなわち、神経カリウムチャンネル活性剤)を試験した。このモデルは、既に報告されており、このモデルに効果的であることが認められている薬物はまた、ヒトのジストニア治療に使用されている(Richter and Loescher,1998;Richter,2005)。さらに、化合物をまた、L−ドーパ誘発性ジストニアのモデルにおいて試験した(L−ドーパ誘発性ジスキネジア)。モデルは、Cenci、LeeおよびBjorklundにより開発され(L−DOPA−induced dyskinesia in the rat is associated with striatal overexpression of prodynorphin− and glutamic acid decarboxylase mRNA,Eur J Neurosci.1998;10:2694−706)、より重篤なジストニアを示すよう修正されていた。 ジストニア/ジスキネジアのこれら2つの予測動物モデルのジストニア症状を抑制する場合に、様々な神経カリウムチャンネルの活性剤が非常に高い活性を示すことが認められたのは予期しないことであった。抗痙攣剤であるレチガビンを使用するKCNQチャンネルの活性化(Rundfeldt and Netzer,2000)は、有益な効果を発揮することが認められた。鎮痛剤であるフルピルチンを使用することによるGタンパク質結合内向き整流性カリウムチャンネル(Kirチャンネル)の活性化(Jakob and Krieglstein,1997;Kornhuber et al.,1999)もまた、効果的であることを認めた(別紙1および2を参照)。活性剤であるマキシポストを使用することにより、大容量のカルシウム活性化カリウムチャンネルであるBKmaxチャンネルの刺激が活性することも認めた。3つのチャンネルファミリー全ては区別されるが、これらは、一般的特徴につながり、すなわち、これらは全て、膜電位を安定化し、神経細胞の過分極につながることを説明する。従って、これらのデータに基づき、膜電位の安定化および神経細胞の膜電位の過分極につながるカリウムチャンネル活性化(すなわち、神経カリウムチャンネルの活性化)は、ジストニアの新しい治療方法であると結論することができる。検討されたこれらのカリウムチャンネルのうち、KCNQチャンネルファミリー(新たに命名:Kv7チャンネルファミリー)をさらに検討した。選択的Kv7.2/7.3チャンネル遮断薬10,10−ビス(4−ピリジニルメチル)−9(10H)−アントラセノン(XE−991)を使用し、作用薬であるレチガビンの活性を阻害する拮抗薬の効果を評価した。3および6mg/Kgi.p.の用量を投与したKCNQチャンネル遮断薬が、ハムスターに観察されたジストニア発作を悪化させたことは興味深く、予期しないことであった。さらに、XE−991の前処置により、レチガビンの抗ジストニア効果が弱められた(別紙2を参照)。この実験は、ジストニアにおける神経カリウムチャンネルの役割をさらに強調する。従って、これらのデータは、神経カリウムチャンネルの活性化が抗ジストニア効果を生じるという見解をさらに支持する。運動障害に関するこの症状の改善は、他の薬理学的効果と区別される。公知の鎮痛剤であるKv7.2/7.3チャンネル開口剤およびさらにフルピルチンをこのような化合物の有益な効果全体にわたって加えることができ、それは、多くの場合、ジストニアが筋骨格痛に関連するためである(Nielsen et al.,2004)。この効果の組み合わせ、すなわち、抗ジストニア効果および鎮痛作用は、これらのKv7チャンネル開口剤に特有のものであり、ジストニア誘発性有痛性筋痙攣を緩和するために重要である。 4.本発明の詳細な説明 4.1 様々な神経カリウムチャンネルのモデル活性剤およびジストニアを治療する可能性のある薬物として使用される化学物質 4.1.1 フルピルチン 抗侵害受容効果のあるトリアミノピリジン化合物であるフルピルチン(エチル−N−[2−アミノ−6−(4−フルオロフェニルメチルアミノ)ピリジン−3−イル]−カルバメート)は、商標Katadolon(商標)の商品名で中枢介在性疼痛の治療において、ドイツおよび他の国でも販売される。それは、外科手術、がん、外傷、歯痛、変性リウマチ様関節症および炎症性リウマチ様関節炎ならびに肝臓疾患に関連する疼痛を治療するために欧州で使用されている鎮痛剤である。それは、非アヘン剤疼痛経路を通る、おそらく視床または脊髄疼痛経路を含めた中枢神経系を介して作用する。中には、全てではないが、フルピルチン試験において、疼痛を緩和するアヘン剤と同様の効果があることを認めた。さらに、フルピルチンは、アヘン剤以上の明らかな効果を提供し、すなわち、それは、中毒性がなく、乱用の報告がない。薬物は、非常に良好な耐容性を示し、患者の心血管系に効果がない。 初期の報告では、作用の様々な潜在的機序を同定したが、後期では、神経カリウムチャンネル、すなわち、内向き整流性カリウムチャンネルGIRKのその活性化能に焦点があてられた。これは、フルピルチンがSNEPCO(選択的神経カリウムチャンネル開口剤;Kornhunber et al.,1999)であるという概念の発展につながる。フルピルチンは、様々な疾患の治療において活性することが認められた。いくつかの特許では、フルピルチンの使用の取扱いを登録している。初期の報告は、鎮痛作用に焦点をあてた。後に、これは、イヌおよびネコの関節炎の治療にフルピルチンを使用するまでに及んだ("VERWENDUNG VON FLUPIRTINE ZUR LINDERUNG VON SCHMERZEN BEI DEGENERATIVEN GELENKERKRANKUNGEN VON HUNDEN UND KATZEN"と題した欧州特許第1242078号)。さらに、オピオイドの併用療法が請求され、鎮痛作用をさらに改良した("Kombinationspraeparat aus Flupirtine und Morphin zur Behandlung von Schmerzen und zur Vermeidung der Morphin−Abhaengigkeit"と題した欧州特許第0595311号)。 後に、とりわけ神経保護効果および細胞保護効果において、いくつかの特許、例えば、"Primary and secondary neuroprotective effect of flupirtine in neurodegenerative diseases"と題した独国特許第69429435号翻訳/欧州特許第0716602号または"Use of flupirtine for the prophylaxis and therapy of disorders which are associated with an unphysiologically high cell death rate"と題した独国特許出願公開第19625582(A1)号、または"VERWENDUNG VON FLUPIRTINE GEGEN ZELLSCHAEDEN DURCH APOPTOSE UND NEKROSE"と題した欧州特許第0912177号に刊行された。これは、"VERWENDUNG VON FLUPIRTINE ZUR THERAPIE UND PROPHYLAXE VON MYOKARDINFARKT,SCHOCKNIERE UND SCHOCKLUNGE"と題した欧州特許第0912177号の他の器官系まで及ぶ。異なる治療標的物質を造血系に対して、すなわち、"Use of flupirtine for the prophylaxis and therapy of diseases associated with an impairment of the haematopoetic cell system"と題した独国特許出願公開第19541405(A1)号/欧州特許第0859613号において定義した。フルピルチンで治療される他の疾患は、独国特許出願公開第10048969号(A1)号、"VERWENDUNG VON FLUPIRTINE ZUR TINNITUSBEHANDLUNG"、欧州特許第0659410号"Pharmaceutical composition comprising flupirtine and its use to combat muscular tension"、国際出願第00/59487号"Flupirtine in the treatment of fibromyalgia and related conditions"、国際出願第01/39760号"Method of treating batten disease"、米国特許第5284861号"Pharmaceutical composition comprising flupirtine and its use to combat Parkinson disorders"を含む。フルピルチンは、薬物がパーキンソン病の症状を軽減し、抗パーキンソン病薬L−ドーパの活性を増強するというパーキンソン病の動物モデルにおいて活性すると説明される。さらに、フルピルチンの神経保護効果により、薬物は、パーキンソン病の進行を弱めると説明される(G.Schuster,M.Schwarz,F.Block,G.Pergande,and W.J.Schmidt,1998:Flupirtine:A Review of Its Neuroprotective and Behavioral Properties.CNS Drug Reviews Vol.4,No.2,pp.149−164)。 さらに、特許出願は、様々な剤形、例えば独国特許出願公開第10255415(A1)号、"Cutaneous application of flupirtine"または欧州特許第0615754号"Oral forms of administration containing solid flupirtine with controlled release of active substance"を記載して登録されている。 しかし、フルピルチンの広範な使用および試験にも関わらず、それは、ジストニア重症度の低下およびジストニア関連筋痛を緩和する目的でジストニアおよびジストニア関連ジスキネジアの治療に有用であると以前には知られていなかった。パーキンソン患者において、L−ドーパ誘発性ジストニア/ジスキネジアの割合が高いことに留意する。この薬物誘発性ジストニアの症状は、基礎的なパーキンソン病症状と明らかに区別され、L−ドーパ誘発性ジスキネジアの治療は、パーキンソン病患者における未だ満たされていない医療ニーズの1つである。本発明は、神経カリウムチャンネル活性剤の使用モデル薬物の1つとしてのフルピルチンがL−ドーパ誘発性ジスキネジアおよび神経弛緩薬誘発性ジスキネジアを含めたジストニアの症状を軽減するのに予期せぬ効果があるという発見に基づく。 4.1.2 レチガビン レチガビンである2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニル−アミノベンゼンは、例えば、米国特許第5384330号に記載の公知の抗痙攣化合物である。レチガビンは、KCNQ2/3カリウムチャンネルの選択的活性剤として同定された(例えば、国際出願第01/01970号を参照)。他の報告者らは、レチガビンがKCNQ4およびKCNQ5チャンネルで活性することも記載している。 レチガビンおよび他のKCNQ2/3調節因子は、鎮痛剤、解熱剤、筋弛緩剤、抗不安薬として説明され、片頭痛、両極性障害および単極性鬱病、耳鳴において、および依存症および薬物中毒の低下に使用するものである(国際出願第01/01970号)。レチガビンはまた、神経因性疼痛を減少する場合に活性すると説明される。レチガビンおよびその誘導体の効果は、様々な特許にも記載されている(国際出願第01/10381号、国際出願第01/22953号、国際出願第02/00217号、国際出願第02/032419号、国際出願第02/49628号、国際出願第02/72088号、国際出願第02/80898号)、これらは、参考として本明細書で援用される。 4.1.3 マキシポスト ラセミ化合物として、およびさらに鏡像異性体およびそのプロドラッグ双方に関して、マキシポスト(BMS204352)である3−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)−2H−インドール−2−オンは、カルシウム活性化大容量のカリウムチャンネル(BKmax)の潜在的および効果的な開口剤であり、その作用は、Ca2+依存性が高い。脳卒中の動物モデルにおいて、マキシポストを中大脳動脈閉塞2時間後に投与した場合、マキポストは、顕著に梗塞体積を減少させた。従って、それは、脳卒中および神経変性患者に有効であり、神経保護効果を発揮することができる。他では、マキシポストが、尿失禁の治療に有用なカリウムチャンネル開口剤であることを記載し(国際出願第02/032419号)、これは参考として本明細書で援用される。 4.1.4 さらなる調節因子 他の神経カリウムチャンネル活性剤も、上記のジストニアの予防および治療に有用である。 これは、とりわけ、サブユニット2〜5チャンネルおよびそのヘテロマルチマーに焦点をあてたKCNQチャンネルの活性剤、カルシウム活性化カリウムチャンネル(大容量および小容量カルシウム活性化カリウムチャンネル)の活性剤およびGタンパク質結合内向き整流性カリウムチャンネルの活性剤に関する。 KCNQ2〜KCNQ5チャンネルを活性化するKCNQチャンネル活性剤は、国際出願第2002/000217号、国際出願第2002/066036号、国際出願第2002/066426号、国際出願第2002/072088号、国際出願第2002/096858号、国際出願第2004/047739号、国際出願第2004/047745号、国際出願第2004/047744号、国際出願第2004/047743号、国際出願第2004/047738号、国際出願第2004/058739号、国際出願第2004/058704号、国際出願第2004/060281号、国際出願第2004/060880号、国際出願第2004/080950号、国際出願第2004/080377号、国際出願第2005/025293号、国際出願第2005/087754号に記載され、これは、参考として本明細書で援用される。 カルシウム活性化カリウムチャンネル:1つの大ファミリーがCa2+活性化K+チャンネルであり、これは、神経活性および経上皮輸送に重要な機能を果たす。このイオンチャンネルファミリーは、チャンネルの単一チャンネル容量に基づいて3群に分けられる。これらは、BKチャンネル(大容量K+チャンネル)、IKチャンネル(中容量K+チャンネル)およびSKチャンネル(小容量K+チャンネル)である。BKチャンネルおよびSKチャンネルがCNSに存在する一方、IKチャンネルは、CNSに存在しない。 BKチャンネル活性剤は、欧州特許第0747354号、国際出願第1998/016222号、国際出願第2002/030868号、欧州特許第0477819号、欧州特許第0617023号および国際出願第1999/036068号に記載される。A−411873を含めた他の化合物は、Gopalakrishnan and Shiehにより記載される(Gopalakrishnan M,Shieh CC.Potassium channel subtypes as molecular targets for overactive bladder and other urological disorders.Expert Opin Ther Targets.2004 Oct;8(5):437−58)。これらの明細書は、参考として本明細書で援用される。 SKチャンネルは、ニューロンおよび他の興奮性細胞型の活動電位に続く中期の後過分極(mAHP)を構成する。mAHPは、緊張により発火するニューロンのスパイク間の間隔を設定するよう機能し、ニューロンの活動電位の発火パターンを制御する。これまで、公知の活性剤は少ないが、一実施例の化合物は、NS309およびその後続の化合物NS4591であり、ともにNeurosearch AS製であるが、これらはまた、IKチャンネル活性剤として活性し(Strobaek et al.(2004)Biochim.Biophys.Acta 1665:1−5)、これは、参考として本明細書で援用される。 例えば、KW7158およびその類似体により活性化されるA型カリウムチャンネルの他のGタンパク質結合神経カリウムチャンネル活性剤は、国際出願第1998/046587号に記載され、これは、参考として本明細書で援用される。 4.2.化学形態 本発明は、いかなる特定の化学形態のフルピルチン、レチガビンまたはマキシポストに限定されず、薬物は、遊離塩基として、または薬学的に許容される酸付加塩としてのどちらかで患者に与えられることができる。後者の場合、一般に、塩酸塩が好ましいが有機または無機酸由来の他の塩もまた使用することができる。このような酸の例として、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタン硫酸、亜リン酸、硝酸、過塩素酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボン酸、エナント酸および同等物を含むがそれだけに限定されない。フルピルチン、2−アミノ−3−カルベトキシアミノ−6−(4−フルオロベンジルアミノ)−ピリジンおよびその生理学的に許容される塩の調製は、独国特許第1795858号および第3133519号に記載される。レチガビン(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)1−1−エトキシカルボニルアミノベンゼン、さらにN−(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルとして表示の調製は、米国特許第5384330号に記載される。マキポスト(BMS204352、3−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)−2H−インドール−2−オン)の調製は、国際出願第98/16222号に記載される。本発明はまた、とりわけ、フルピルチン、レチガビンまたはマキシポストにより活性化される内向き整流性カリウムチャンネルのファミリーにおける神経カリウムチャンネルの現在未知の活性剤まで及ぶ。 4.3.用量 患者に投与されるフルピルチン、レチガビンまたはマキシポストの1日投与量合計は、少なくとも、ジストニアに関連する1つまたは複数の症状を予防、低下または排除するのに必要な量であるものとする。典型的な1日投与量は、20〜400mgであり、一般に、1日投与量は、1600mgを超えないものとする。患者の中には、高用量に耐性があり、2000mg以上の1日投与量は、難治性の症例において、またはフルピルチン、レチガビンまたはマキシポストの血清濃度および半減期を低下しうる薬剤(例えば、カルバマセピン、フェニトイン、フェノバルビタールおよびリファムピンなどのチトクロームP450誘発性化合物)の併用薬治療を受ける患者ならびに喫煙者の場合に考慮することができる。対照に、高齢患者、腎臓または肝臓機能障害の患者およびチトクロームP450系を阻害する併用薬物を投与される患者は、低量の開始および維持用量、例えば、5〜200mgを投与されるものとする。これらの用量は、簡単なガイドラインであり、個々の患者に選択される実際の用量は、臨床状態に基づいて主治医により決定され、当該分野で公知の方法を使用する。フルピルチン、レチガビンまたはマキシポストを、単回もしくは複数回の用法用量または必要とされる用法用量としてのどちらかで提供することができる。実施例として、患者にフルピルチン、レチガビンまたはマキシポスト100mgを1日3回または別法としてフルピルチン、レチガビンまたはマキシポスト200mgを1日2回経口投与することができる。個々の症状および実現される緩和の程度および期間に基づいて1日1回の投与も可能である。実施例と同じくフルピルチンにおける欧州特許第0615754号の記載の放出制御製剤、実施例と同じくフルピルチンにおける独国特許出願公開第10255415(A1)号に記載の皮膚型または他の製剤は、同様に使用することができるが、前記疾患の臨床効果は、これらの具体的な剤形の使用法に依存しない。 4.4.剤形および投与経路 いくつかの投与経路および剤形は、本発明に適合し、フルピルチン、レチガビンまたはマキシポストは、単一活性剤もしくは他のジストニア症状の治療に使用され、またはジストニアの進行を低下させる治療的活性剤と併用のどちらかで投与することができる。経口送達に適切な組成物が好ましいが、使用することができる他の経路は、経口、内服、肺、直腸、鼻、膣、舌下、経皮、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内および皮下経路を含む。具体的な剤形は、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、エアロゾル、坐剤、皮膚パッチ、非経口および油水性懸濁液、溶液および乳液を含めた経口液体を含む。除放性剤形を使用することができる。全ての剤形を当該分野の標準的な方法を使用して調製することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.,A.Oslo Editor,Easton PA(1980)を参照)。種々の送達経路の剤形の調製の具体的なガイダンスは、米国特許第4668684号、第5503845号および第5284861号により提供される。 フルピルチン、レチガビンまたはマキシポストを含めた神経カリウムチャンネル活性剤を医薬製剤、例えば、タルク、アラビアゴム、ラクトース、スターチ、スレテリン酸マグネシウム、ココアバター、水性もしくは非水性溶剤、油、パラフィン誘導体、グリコールなどとして一般に使用されるベヒクルおよび賦形剤のいくつかと併用することができる。着色剤および風味剤もまた、製剤、特に経口投与のものに添加することができる。溶液を、水または生理学的に相容性のある有機溶剤、例えば、エタノール、1,2−プロピレングリコール、ポリグリコール、ジメチルスルホキシド、脂肪アルコール、トリグリセライド、グリセリンの部分エステルおよび同等物を使用して調製することができる。フルピルチン、レチガビンまたはマキシポストを含有する非経口組成物を従来の技法を使用して調製することができ、滅菌等張生理食塩液、水、1,3−ブタンチオール、エタノール、1,2−プロピレングリコール、水と混合したポリグリコール、リンゲル液などを含むことができる。 本発明の方法は、ジストニアまたはジストニア症状に苦しむ患者に望ましい治療効果を誘発し、補助し、または維持するのに有用である。本発明の方法はまた、疾患の進行の結果として、または薬物治療の結果のどちらかとして、例えば、パーキンソン病、精神病、ハンチントン病またはアルツハイマー病患者のジストニア症状の進行の予防に有用でありうる。本発明の方法は、ヒトの使用に制限されないが、さらにジストニア症状または関連の運動障害に苦しむ動物にも使用することができる。 神経カリウムチャンネル活性剤の投与は、単回療法または併用療法としてであってよい。神経カリウムチャンネル活性剤は、基礎疾患、すなわち、例えば、L−ドーパ誘発性ジスキネジア症例であるパーキンソン病、または神経弛緩薬誘発性ジストニア症例である精神病の治療に登録された医薬品を併用して、または筋弛緩剤および2.4節のジストニア治療に記載された原発性または二次性ジストニア症状の治療に有用な他の薬剤を併用して投与することができる。 実施例1:ジストニアモデルにおけるレチガビンまたはフルピルチンの効果(研究報告)。 実施例2:ジストニアモデルにおけるカリウムチャンネル開口剤および遮断薬の効果。 実施例3:L−ドーパ誘発性ジスキネジアの慢性モデルにおける神経カリウムチャンネル活性剤の実施例としてフルピルチンおよびレチガビンの効果。 実施例1 dtsz突然変異ハムスターにおけるレチガビンおよびフルピルチンの試験 目的:発作性ジストニアの予測モデルにおける神経カリウムチャンネル活性剤の抗ジストニア効果を検討する。様々な神経カリウムチャンネルの役割を評価するため、Kv7チャンネルの選択的活性剤であるレチガビンを使用した。さらに、内向き整流性カリウムチャンネルおよびKv7カリウムチャンネルを活性化することが知られるフルピルチンを使用した。 材料および方法 動物 本実験において使用したdtsz突然変異ハムスター(シリアンゴールデンハムスター)は、別のところで詳細に記載されているように選択育種により得た(Richter and Loescher,1998)。この近交系の突然変異ハムスターにおいて、劣性遺伝子により、運動障害を移す。全ての動物群は、雌雄のハムスターからなり、それは、ジストニア重症度または薬物反応性における性関連の差を示さなかったためである(Richter and Loescher,1998)。動物は、制御された環境条件(23〜25℃、湿度50〜60%、13時間明/11時間暗サイクル)下において出生し、飼育され、標準的Altromin7204餌料および水を自由摂取させた。経口投与の場合、実験2時間前に絶食させた。全ての実験を制御温度(23〜25℃)にて午前中(08.30〜12.00a.m.)に実施した。 ジストニア発作の誘発およびジストニア重症度スコア。以前に詳細に報告されているように(総説において、Richter and Loescher,1998,Richter,2005を参照)、dtsz突然変異ハムスターは、長期持続性ジストニア発作を呈し、これは、ハンドリングなどの軽度ストレスにより誘発することができる。薬物試験において、ジストニア発作は、3重刺激法、すなわち、(1)動物を飼育ケージから離し、秤上に載せ、(2)等張生理食塩液(またはレチガビンもしくはフルピルチン、以下を参照)を腹腔内(i.p.)注射し、または咽頭カニューレを介して等張生理食塩液(またはレチガビン、以下を参照)を経口投与し、(3)新しいプラスチックケージに動物を入れることからなるストレス性刺激により再現可能に誘発することができる(Richter and Loescher,1998)。この手順後、dtszハムスターは、一連の運動異常および姿勢異常を発現する。これらの動物において、ジストニアは、主症状である。ジストニア重症度は、以下のスコアシステム(Richter and Loescher,1998)により採点することができる:ステージ1、フラット姿勢;ステージ2、顔面の歪み、前肢を交差しながらの立ち上がり、前足過伸展の歩行障害;ステージ3、後肢過伸展のため、動物はつま先での歩行傾向;ステージ4、捻転運動および平衡感覚の喪失;ステージ5、尾部までの後肢過伸展;ステージ6、捻転状態の固定、四肢を前方に緊張性伸展した猫背姿勢。個々の最高ステージに達した後、ハムスターは、2〜5時間以内に回復する。通常、新しいケージにハムスターを入れて3時間以内に、ジストニアの個々の最高ステージに達する。それゆえ、薬物またはベヒクル(薬物投与前および投与後の対照を記録)投与後に達する個々の最高ステージを決定するためにジストニア発作を誘発後3時間の動物を観察しなければならない。 本試験において、21日齢で離乳後のジストニアの存在において、生理食塩液注射を含めた3重刺激手順により全ての動物を試験した。ジストニアは、30〜42日齢でジストニア重症度が最高となる年齢依存時間経過を示す(Richter and Loescher,1998)。試験に使用された突然変異ハムスターの全ての群は、ジストニア重症度および様々なステージまでの潜時が再現可能となるまで、離乳後2〜3日毎に3重刺激(生理食塩液の注射)により繰り返し試験した。薬物実験は、30〜42日齢のハムスター、すなわち、ジストニアの最高重症度の日齢で行った。 薬物実験 Kv7.2/7.3チャンネル活性剤であるレチガビン(5、7.5および10mg/kgi.p.ならびに10および20mg/kgp.o.)およびフルピルチン(10および20mg/kgi.p.)の効果をdtszハムスター6〜10匹の群において試験した。本実験に使用された動物の合計数は、68であった。実験前に生理食塩液に化合物を新たに溶解した。ジストニア発作を上記のように3重刺激手順により誘発したが、生理食塩液の代わりに、活性化合物を注射した(注射量:5ml/kgi.p.またはp.o.)。ベヒクルを用いた薬物投与前および投与後の対照試験(注射量:5ml/kg生理食塩液i.p.またはp.o.)を同動物の薬物試験2〜3日前および2〜3日後に行った。通常、ジストニアの個々の最高ステージが3時間以内に達するため、ハムスターを3重刺激後3時間観察した。この期間中、ジストニア重症度、様々なステージまでの潜時および副作用を記録した。重症度スコア(およびステージまでの潜時の)の採点者は、動物をベヒクルまたは有効成分で処置したかについて注意しなかった。溶液の調製を行った2人目が行動的影響において動物を観察した。副作用を定量化しなかったが、以前に記載されるように、スコアシステムにおいて自発運動および運動失調を決定した(Loescher and Richter,1994)。個々の最高ステージにおいて、薬物投与前および薬物投与後の対照間で2ステージ以上の差のある動物を評価から削除した(68動物中8匹)。さらに、1匹の動物を安楽死させなければならず、それは、10mg/kgの高用量のレチガビンをi.p.注射後、全身状態が悪化したためである。 同動物群の対照試験(薬物投与前および投与後)と薬物試験との間のジストニア重症度およびジストニア発症までの潜時(ステージ2までの潜時;第1表を参照)の有意差をフリードマン検定により算出し、有意差(少なくともP<0.05)がある場合、この後に、対応のある追試のためのウィルコクソン符号順位検定を使用してどの対応標本が異なるかを決定した。 結果 KCNQチャンネル開口剤(レチガビンおよびフルピルチン)処置後のジストニア重症度の平均+S.E.を第1〜3図に示す。ジストニア発症までの潜時の平均+S.E.を、第1表に要約する。レチガビンおよびフルピルチンの実験で観察された個々のデータを第2〜8表に示す。ジストニア重症度の効果を第2〜8表のAに要約し、ジストニア発症までの潜時を第2〜8表のBに要約する。 第1図に示すように、腹腔内注射後に、レチガビンは、ジストニアを用量依存的に改善した。10mg/kgの用量で、レチガビンは、ジストニアの進行を有意に抑制し(投与後1および2時間目を参照)、最高重症度を有意に低下した(注射後3時間目を参照)が、注射後2時間目に制約した重症度の有意な減少を示すように、7.5mg/kgの低用量は、重症度を低下させる傾向が見られたのみであった。5mg/kgの用量で、レチガビンは、ジストニア重症度におけるいかなる有意な効果も発揮しなかった。10mg/kgで処置した1匹のハムスターにおいて完全な予防を観察した(第4表のAを参照)。レチガビンは、7.5mg/kgの用量でジストニア発症までの潜時を増大させたが(第1表)、5および10mg/kgでは、単にジストニア発作の開始を遅延させる傾向のみが見られた(さらに第2〜4表のBを参照)。行動的影響は、中等度〜明らかな自発運動の低下であり(場合により、持続期間の短い自発運動の増加と解釈した)、投与後の1時間目以内の運動失調であった。ハムスターは、10mg/kgを注射後、はじめの5分間は疼痛を伴い苦悶した。10mg/kgi.p.処置5日後に5mg/kgi.p.を投与された4匹のハムスターは、全身状態の悪化を示した。これらのハムスターのうち3匹は、2〜3日以内に回復したが、1匹は、安楽死させなければならなかった。外転により結腸の拡張を示した。 レチガビンのi.p.注射後の腹部の副作用から、経口投与後のレチガビンの効果を試験した。第2図に示すように、レチガビンは、経口投与量20mg/kgでジストニア重症度を有意に減少させたが、10mg/kgの経口投与では、抗ジストニア効果を発揮しなかった。両経口投与量で、レチガビンは、ジストニア発症までの潜時における有意な効果を発揮しなかった(第1表)。腹腔内注射後の観察とは対照に、レチガビンは、経口投与量10および20mg/kgで重篤な副作用を生じなかった。10mg/kgp.o.で処置した2匹のハムスターは、自発運動の中等度の減少を示した。高用量の20mg/kgp.o.で、7匹の動物が中等度の運動失調を呈し、5匹のハムスターが投与後1時間目に中等度の自発運動の低下を示した。 第3表に示すように、フルピルチンは、10mg/kgi.p.の用量で有意な抗ジストニア効果を生じなかった。高用量の20mg/kgi.p.で、フルピルチンは、ジストニアの進行を遅延させ(1および2時間目)、最高重症度を低下させ(3時間目)かつジストニア発症までの潜時を増大させ、作用の迅速な開始を示した(第3図、第1表)。副作用は、10mg/kgの投与後1時間目以内の中等度の自発運動の低下および運動失調であった。20mg/kgの用量で、フルピルチンは、より顕著な運動失調(最大90分間の持続)および明らかな自発運動の低下(注射後5〜15分間)後に自発運動の増加を引き起こした(注射後15〜60分間)。 結論 本発明のデータは、発作性ジスキネジアの動物モデルにおける神経カリウムチャンネル活性剤であるレチガビンおよびフルピルチンの有益な効果をはじめて明らかにする。これらのデータは、Kv7.2/7.3チャンネルを含めた神経カリウムチャンネル、Gタンパク質結合内向き整流性カリウムチャンネルおよびBKmaxを含めた他の神経カリウムチャンネルの機能障害が、ジスキネジアの病態生理学の研究において注目に値することを示唆する。レチガビン(少なくとも経口投与後)およびフルピルチンの十分な耐量時で抗ジストニア効果を認めた。抗癇癪剤であるレチガビンおよび鎮痛剤であるフルピルチンは、ヒトに十分な耐性があるため(Fatope,2001)、本発明における、これらのハムスターモデルの神経カリウムチャンネル活性剤の明白な抗ジストニア効果の発見は、レチガビンおよびフルピルチンを含めたそれぞれの化合物が発作性ジスキネジアの新規の治療的アプローチを提供することができることを示唆する。さらに、Kv7.2/7.3チャンネル開口剤および神経因性または筋介在性疼痛に対するフルピルチンの公知の効果は、この障害の改善に寄与することができ、それは、多くの場合、ジストニア症状が有痛性筋痙攣を伴うためである(Nielsen et al.,2004)。 発作性ジストニアと対照に、発作性ジスキネジアの他の型(夜間ジスキネジア、発作性運動誘発性ジスキネジア)は、同個人または家族において癇癪を合併する恐れがある(Du et al.,2005;Guerrini,2001)。公知のレチガビンの抗痙攣効果および本明細書で明らかにした抗ジストニア活性の点から、Kv7.2/3チャンネル活性剤はまた、他の型の遺伝性ジスキネジアの治療に興味深い候補物質でありうる。 Kv7(7.2、7.3および7.5)チャンネルは、中型有棘ニューロンにおいて発現する。これらのチャンネルは、これらの投射型ニューロンの興奮性の潜在的調節因子であることが報告されている(Shen et al.,2005)。これらは、線条体コリン作動性介在ニューロンにより調節され、すなわち、コリン作動性放電様式(tone)の増加が中間型有棘ニューロンにおけるKv7チャンネル開口の低下を生じ、興奮性を増加させることができる。それゆえ、Kv7(Kv7.2、7.3または7.5)チャンネルの変化または他の神経カリウムチャンネルの変化は、基底核疾患に重要でありうる。種々の型のジストニアおよびジスキネジアの様々な原発性欠損にも関わらず、おそらくジストニア障害につながる一般的な機序である。原発性ジストニアおよび遺伝性ジスキネジアの患者のジストニア症候群は、基底核出力の低下につながる線条体活性の増加と関連するというエビデンスがある(Bennay et al.,2001, Gernert et al.,2002;Vitek,2002;Yamada et al.,2005)。それゆえ、レチガビン、フルピルチンおよびマキシポストを含めるがそれだけに限定されない神経カリウムチャンネル活性剤およびとりわけ、Kv7チャンネル開口剤は、レボドパ誘発性ジスキネジアを含めた種々の型のジストニアおよびジスキネジアに効果がありうる。 レチガビンがγ−アミノ酪酸(GABA)の作用を増強し、脳のグルタミン酸濃度を低下させることが認められていることを注記しなければならない(Rundfeldt and Netzer,2000b;Sills et al.,;2000)。dtszハムスターのGABA増強薬物の抗ジストニア効果の点から、Kv7チャンネルの開口がおもにその抗ジストニア効果に介在する場合、Kv7チャンネル遮断薬のみおよびレチガビンと合わせた効果を明らかにしなければならない。これらの実験は、協力契約上、独立して行われるだろう。 第1表 ジストニア発症までの潜時における神経カリウムチャンネル開口剤であるレチガビンおよびフルピルチンの効果。ジストニア発作の最初の明らかな兆候までの時間として潜時状態を決定した(ステージ2)。データは、兆候のある動物数(n)の平均±S.E.として示す。薬物投与前および薬物投与後の対照に対する有意差は、星印(*P<0.05)をつける。 図1. 5.0、7.5および10mg/kgの腹腔内(i.p.)注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるレチガビンの効果。各組の3つのバーのうち白いバーは、薬物投与2日前に得られた対照値を示す(薬物投与前対照)。黒いバーは、同動物群の薬物投与日を指す。各組の3つのバーのうち灰色のバーは、薬物投与2日後に得られた対照値を示す(薬物投与後対照)。ジストニアの個々の最高重症度は、通常、薬物またはベヒクル注射を含めた3重刺激によりジストニアを誘発後3時間以内に達する。図は、等張生理食塩液(対照試験)またはレチガビンの注射1、2および3時間目以内に達する個々のジストニアの最高重症度スコアの平均を示し、対照記録中および活性化合物処置後のdtszハムスターのジストニア進行を反映する。星印は、薬物投与前および投与後の対照と比較してジストニアの有意な減少を示す(*P<0.05、**P<0.01;片側検定のP値)。データは、平均±S.E.として示す(動物数:第1表を参照)。 図2. 10および20mg/kgの経口投与後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるレチガビンの効果。各組の3つのバーのうち白いバーは、薬物投与2日前に得られた対照値を示す(薬物投与前対照)。黒いバーは、同動物群の薬物投与日を指す。各組の3つのバーのうち灰色のバーは、薬物投与2日後に得られた対照値を示す(薬物投与後対照)。図は、等張生理食塩液(対照試験)またはレチガビンの咽頭カニューレを介した経口投与1、2および3時間以内に達する個々のジストニアの最高重症度スコアの平均を示す。星印は、薬物投与前および投与後の対照と比較してジストニアの有意な減少を示す(*P<0.01;片側検定のP値)。データは、平均±S.E.として示す(動物数:第1表を参照)。さらなる説明において、第1図の説明を参照。 図3. 10および20mg/kgの腹腔内(i.p.)注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるフルピルチンの効果。各組の3つのバーのうち白いバーは、薬物投与2日前に得られた対照値を示す(薬物投与前対照)。黒いバーは、同動物群の薬物投与日を指す。各組の3つのバーのうち灰色のバーは、薬物投与2日後に得られた対照値を示す(薬物投与後対照)。図は、等張生理食塩液(対照試験)またはレチガビンの注射後1、2および3時間目以内に達する個々のジストニアの最高重症度スコアの平均を示す。星印は、薬物投与前および投与後の対照と比較してジストニアの有意な減少を示す(*P<0.05、**P<0.01;片側検定のP値)。データは、平均±S.E.として示す(動物数:第1表を参照)。 第2〜8表の説明個々のデータを第2〜8表に示す。A. 薬物投与前および投与後の対照記録におけるKv7チャンネル開口剤(薬物)またはベヒクル投与後1、2および3時間目以内に達するジストニアの個々の最高重症度スコア。B. 薬物投与前および投与後の対照記録におけるKv7チャンネル開口剤(薬物)またはベヒクル処置後の遺伝性ジストニアハムスターにおけるジストニア発作の発症までの潜時(潜時状態)およびステージ6までの潜時(潜時最大)。ジストニア発作の最初の明らかな兆候までの時間(分)として潜時状態を決定した(ステージ2)。発症までの潜時のデータは、作用開始についての情報を提供する。 第2表:レチガビン5mg/kg(0.9%NaClに溶解)i.p.;日齢:生存37〜39日 2A.ジストニア重症度(スコア) フリードマン(P=):1時間目0.569、2時間目0.685、3時間目0.814(有意差なし) ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:有意差なし、両側:有意差なし)対薬物投与前:1時間目0.149/0.297、2時間目0.438/0.875、3時間目0.250/0.5対薬物投与後:1時間目0.407/0.813、2時間目0.313/0.625、3時間目0.250/0.5 2B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.328(有意差なし)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.055、両側P=0.109対薬物投与後:片側P=0.032、両側P=0.063(片側:対薬物投与前および投与後の対照 有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第3表:レチガビン7.5mg/kg(0.9%NaClに溶解)i.p.;日齢:生存38日 3A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン(P=):1時間目0.430、2時間目0.012(有意)、3時間目0.052ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:2時間目 有意、3時間目 有意差なし、フリードマンのため、両側:対薬物投与前および投与後の対照2時間目 有意差なし)対薬物投与前:1時間目0.125/0.25、2時間目0.016/0.031、3時間目0.032/0.063対薬物投与後:1時間目0.125/0.25、2時間目0.032/0.063、3時間目0.032/0.063 3B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.008(有意)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.016、両側P=0.031(有意)対薬物投与後:片側P=0.016、両側P=0.031(有意)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第4表:レチガビン:10mg/kg(0.9%NaClに溶解)i.p.;日齢:生存32〜39日 4A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン:1時間目P=0.006(有意)、2時間目P<0.001(有意)、3時間目P<0.001(有意)ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:有意、両側:有意)対薬物投与前:1時間目0.004/0.008、2時間目0.004/0.008、3時間目0.004/0.008対薬物投与後:1時間目0.008/0.016、2時間目0.002/0.004、3時間目0.002/0.004 4B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.236(有意差なし)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.473、両側P=0.945対薬物投与後:片側P=0.039、両側P=0.078(片側:対薬物投与前および投与後の対照 有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第5表:レチガビン10mg/kg(0.9%NaClに溶解)p.o.;日齢:生存37〜40日 5A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン(P=):1時間目0.964、2時間目0.027(有意)、3時間目0.192ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:対薬物投与前および投与後の対照2時間目 有意差なし、1および3時間目 有意差なし、両側:有意差なし)対薬物投与前:1時間目0.5/1.0、2時間目0.016/0.031、3時間目0.063/0.125対薬物投与後:1時間目0.5/1.0、2時間目0.063/0.125、3時間目0.25/0.5 5B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.486(有意差なし)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.344、両側P=0.688対薬物投与後:片側P=0.438、両側P=0.875(片側:有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第6表:レチガビン:20mg/kg(0.9%NaClに溶解)p.o.;日齢:生存32〜36日 6A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン:1時間目P<0.001(有意)、2時間目P<0.001(有意)、3時間目P<0.001(有意)ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:有意、両側:有意)対薬物投与前:1時間目0.002/0.004、2時間目0.004/0.008、3時間目0.004/0.008対薬物投与後:1時間目0.008/0.016、2時間目0.004/0.008、3時間目0.004/0.008 6B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.061(有意差なし)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.007、両側P=0.014対薬物投与後:片側P=0.014、両側P=0.027(フリードマンのため有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第7表:フルピルチン:10mg/kg(0.9%NaClに溶解)i.p.;日齢:生存32〜38日 7A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン(P=):1時間目0.531、2時間目1.00、3時間目0.967(有意差なし)ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:有意差なし、両側:有意差なし)対薬物投与前:1時間目0.157/0.313、2時間目0.422/0.844、3時間目0.344/0.688対薬物投与後:1時間目0.25/0.5、2時間目0.438/0.875、3時間目0.407/0.813 7B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.531(有意差なし)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.282、両側P=0.563対薬物投与後:片側P=0.157、両側P=0.313(片側:有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 第8表:フルピルチン:20mg/kg(0.9%NaClに溶解)i.p.;日齢:生存36〜38日 8A.ジストニア重症度(スコア)フリードマン:1時間目P=0.002、2時間目P=0.003、3時間目P<0.001(有意)ウィルコクソン(P=):片側/両側:(片側:有意、両側:有意)対薬物投与前:1時間目0.016/0.031、2時間目0.01/0.02、3時間目0.004/0.008対薬物投与後:1時間目0.001/0.002、2時間目0.004/0.008、3時間目0.004/0.002 8B.潜時開始(ステージ2の潜時)および潜時最大(ステージ6までの潜時)潜時状態:フリードマン:P=0.038(有意)ウィルコクソン:対薬物投与前:片側P=0.007、両側P=0.014(有意)対薬物投与後:片側P=0.042(有意)、両側P=0.084(有意差なし)潜時最大:薬物投与および対照試験中にステージ6に達したのは5匹以下の動物であるため測定せず(n.d.)。 実施例2 発作性ジストニアモデルであるdtsz突然変異ハムスターのKv7.2/7.3チャンネル遮断薬XE−991の効果。 目的:カリウムチャンネル開口剤であるレチガビンおよびフルピルチンの抗ジストニア効果に関して(実施例1を参照)、dtsz突然変異ハムスターのジストニア発作の重症度における選択的Kv7.2/7.3チャンネル遮断薬XE−991(10,10−ビス(4−ピリジニルメチル)−9(10H)−アントラセノン)の効果を検討した。さらに、レチガビンの抗ジストニア効果がXE−991で併用処置することにより弱まる恐れがあるかについて検討した。 結果:Kv7.2/7.3チャンネル遮断薬XE−991は、ジストニアの悪化を引き起し、すなわち、3および6mg/kgi.p.の用量でジストニアの最高重症度を上昇させた(図4)。ジストニア発症の潜時は、XE−991で処置後に減少傾向にあった(図示せず)。動物8匹中2匹は、中等度〜明らかな自発運動の増加および中等度運動失調(最大180分間)を呈し、6mg/kg投与10〜20分後に最初の顔面の歪みを示した。高用量で処置したハムスター全ては、顔面の歪み、流涎および排便の増加を呈した。さらに、投与後1時間目に明らかな自発運動の増加および運動失調を観察した。第4図に示すように、レチガビン(10mg/kgi.p.)投与10分前のXE−991(3mg/kgi.p.)の前処置は、レチガビンの抗ジストニア効果を弱めた。 結論:本発明の結果は、Kv7.2/7.3チャンネルの活性化がレチガビンの抗ジストニア効果に介在することを明らかに示す。これらのデータは、Kv7.2/7.3チャンネルの機能障害がジストニアおよびジストニア関連ジスキネジアの病態生理学の研究において注目に値し、Kv7.2/7.3チャンネル活性剤は、これらの運動障害の処置において興味深い化合物であるという示唆を支持する。 図4. レチガビン(10mg/kgi.p.)投与10分後の3および6mg/kgのみまたは3mg/kgの腹腔内注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるKCNQチャンネル遮断薬XE−991の効果。各組の3つのバーのうち白いバーは、薬物投与2日前に得られた対照値を示す(薬物投与前対照)。黒いバーは、同動物群の薬物投与日を指す。各組の3つのバーのうち灰色のバーは、薬物投与2日後に得られた対照値を示す(薬物投与後対照)。図は、等張生理食塩液(対照試験)またはXE−991の注射1、2および3時間目以内に達する個々のジストニアの最高重症度スコアの平均を示し、対照記録中および活性化合物処置後のdtszハムスターのジストニアの進行を反映する。星印は、薬物投与前および投与後の対照と比較してジストニア重症度の有意な増加を示す(*P<0.05、**P<0.01)。データは、平均±S.E.として示す。 実施例3 L−ドーパ誘発性ジスキネジアの慢性モデルにおける神経カリウムチャンネル活性剤の実施例としてのフルピルチンおよびレチガビンの効果。 理論:特発性パーキンソン症候群は、一般的な神経変性疾患であり、この場合、黒質のドーパミン作動性ニューロンの進行性変性が線条体ドーパミン濃度の低下につながる。患者の特性を考慮すると、デカルボキシラーゼ阻害剤と併用のレボドパ(例えば、ベンセラジド)は、多くの症例において今なお治療的「至適基準」を表す。しかし、多くの患者は、長期治療後にジスキネジアを発症する。これらの自然発生的な不随意ジストニアおよび舞踏病性運動の病態生理学は、明らかではないが、線条体投射型ニューロンの活性の増加が重要な役割を果たすようである。これらのニューロンは、Kv7チャンネル、すなわち、神経カリウムチャンネルの1型を発現し、これは、電位差依存活性化後の過分極を引き起こす。発作性ジストニアの突然変異ハムスターモデルにおけるこれまでの観察に基づいて、神経カリウムチャンネル開口剤およびとりわけ、フルピルチンおよびレチガビンは、ジストニアの症状を低下させることができると結論した。このモデルは、他の形態のジストニア、すなわち、L−ドーパ誘発性ジスキネジアおよび神経弛緩薬誘発性ジスキネジア、筋波動症ならびに神経性筋強直症における予測指標であることも検討されている。データを実施例1および2に要約した。神経カリウムチャンネル開口剤レチガビンおよびフルピルチンが、発作性ジストニアの動物モデルにおいて抗ジストニア性であることを証明したように、ハムスターモデルで得た結果を多くの疾患関連モデルにおいて検証した。選択されたモデルは、L−ドーパ誘発性ジスキネジアモデルである。実際の神経カリウムチャンネル開口剤が、このような薬物誘発性ジスキネジアの新しい治療の選択肢であることを検証するため、the Department of Pharmacology of the Free University of BerlinにてL−ドーパ誘発性ジスキネジアのモデルを確立した(A.Richter教授)。 方法:Cenci,Lee and Bjorklund(L−DOPA−induced dyskinesia in the rat is associated with striatal overexpression of prodynorphin− and glutamic acid decarboxylase mRNA,Eur J Neurosci.1998;10:2694−706)により、モデルを開発し、より重篤なジスキネジアを示すよう修正した。要するに、ラットを、はじめに内側前脳束で一方側を損傷させ、中脳線条体ドーパミン経路をほぼ完全に喪失させる。回復後、ラットに、L−DOPAおよびベンセラジドをともに1日量投与する。3週間以内に、ラットは、典型的なジスキネジア運動を発症し、ともに前肢および口腔領域を侵される。これらのジスキネジア運動は、慢性であり、数週間の治療休止後でもLDOPA惹起で再発し、慢性変化を生じたことを示す。ジスキネジアをCenciらが開発した簡易および信頼性のあるスコアシステムを使用して定量化することができる。 雌のSprague−Dawleyラットの左内側前脳束に6−OHDA8μgを一方側に注射することにより、ドーパミン除神経損傷を実施した。注射2週間後のアンフェタミン誘発性回転挙動において全てのラットを試験した。90分間にわたり>4同側回転/分を示すラットは、線条体ドーパミン枯渇90%以上であると推測した。損傷後4週間で、2群にレボドパ20mg/kgおよびベンセラジドまたはベヒクル15mg/kgのいずれかで20日間の長期治療を開始した。採点において、200分にわたりおよび30分間毎に、ジスキネジアを3つの亜型(四肢、軸方向および口舌)に分類し、0(=非存在)〜4(=恒久性、抑制不能)をスコアした。 結果および考察:薬物試験において、レチガビン(2.5および5mg/kg)をレボドパおよびベヒクルそれぞれに加えて投与した。各観察時間の重症度スコアを加えることにより、ベヒクル対照と比較した薬物作用の効果を検出した。レチガビンは、2.5mg/kg(p<0.05)の腹腔内(i.p.)投与後の観察110〜140分目および5mg/kgのi.p.注射後の50、80(それぞれp<0.05)および110(p<0.01)分からジスキネジアの重症度を有意に低下させた。高用量のレチガビンは、観察1時間目に顕著な自発運動の抑制および運動失調を引き起こした。 フルピルチンの効果を試験するために、本化合物をこれらのラットにL−DOPA投与後に10mg/kgi.p.の用量で投与した。個々の多様性を考慮して完全なクロスオーバー法を利用した。予測通り、フルピルチンはまた、典型的なジスキネジア症状を抑制することができ、十分な耐性があった。本試験は、継続中であり、全用量を包含するまでに及ぶだろう。さらに、本特許出願により包含される他の神経カリウムチャンネル開口剤を試験するだろう。これらのデータは、すでにフルピルチンがL−DOPA誘発性ジスキネジアのある後期ステージのパーキンソン患者を治療する唯一の可能性を含むことを示す。フルピルチンがL−DOPA活性を増強することも示されたので、初期薬物療法にフルピルチンを加えることは、これらの患者において治療効果全体にわたる改善を期待することができる。本試験の結果は、Kv7チャンネルおよびより一般的な神経カリウムチャンネルの開口剤が、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療に興味深い候補物質であることを示唆する。レチガビンおよびフルピルチンともに、患者により十分耐性があることが知られている。さらに、多くの場合、有痛性筋変形に苦しむジスキネジア患者には、これらの化合物の鎮痛作用の効果があるだろう。作用機序に基づいて、化合物は、症状を軽減させるだけでなく、レボドパ誘発性ジスキネジアの進行を遅延することができるようである。図1は、5.0、7.5および10mg/kgの腹腔内(i.p.)注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるレチガビンの効果を示している。図2は、10および20mg/kgの経口投与後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるレチガビンの効果を示している。図3は、10および20mg/kgの腹腔内(i.p.)注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるフルピルチンの効果を示している。図4は、レチガビン(10mg/kgi.p.)投与10分後の3および6mg/kgのみまたは3mg/kgの腹腔内注射後の突然変異ハムスターのジストニア重症度におけるKCNQチャンネル遮断薬XE−991の効果を示している。 哺乳類動物の運動障害の治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 前記運動障害が原発性ジストニア、発作性ジストニア、二次性ジストニア、薬物誘発性ジストニア/ジスキネジア、遅発性ジストニア、神経弛緩薬誘発性ジストニア、パーキンソン病患者の治療誘発性ジストニア/ジスキネジア、遺伝変性ジストニア、ハンチントン病患者のジストニア、トゥーレット症候群患者のジストニア、下肢静止不能症候群患者のジストニア、チック患者のジストニア様症状、ジストニア関連ジスキネジア、発作性ジスキネジア、発作性非運動誘発性ジスキネジア、発作性ジストニア舞踏病、発作性運動誘発性ジスキネジア、発作性運動誘発性舞踏病、労作誘発性ジスキネジア、睡眠薬性発作性ジスキネジア、薬物誘発性ジスキネジア、筋波動症、神経性筋強直症から選択される請求項1に記載の使用。 請求項1または2に記載の前記運動障害の治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤フルピルチン(エチル−N−[2−アミノ−6−(4−フルオロフェニルメチルアミノ)ピリジン−3−イル]−カルバメート)またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 請求項1または2に記載の前記運動障害の治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤レチガビン(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼン)またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 請求項1または2に記載の前記運動障害の治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤マキシポスト(BMS204352)、3−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)−2H−インドール−2−オンまたはその鏡像異性体あるいはその薬学的に許容される誘導体の使用。 前記哺乳類動物がヒトである請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。 哺乳類動物が愛玩動物、とりわけ、ネコまたはイヌである請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。 フルピルチンの遊離塩基形態に基づいて算出し、1日当たり200〜1800mgの1日投与量でフルピルチンを投与する請求項3に記載の使用。 レチガビンの遊離塩基形態に基づいて算出し、1日当たり200〜1800mgの1日投与量でレチガビンを投与する請求項4に記載の使用。 1日当たり10〜600mgの1日投与量でマキポストを投与する請求項5に記載の使用。 投与経路が経口、静脈内、直腸、非経口、経皮および吸入経路から選択される請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。 前記活性剤が薬学的に許容される塩またはアミドである請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。 神経カリウムチャンネル開口剤を前記基礎疾患の治療に一般的に使用される医薬品と併用して投与する治療法における請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。 本発明は、ヒトおよび動物双方において、フルピルチン、レチガビンおよびマキシポストなどの神経カリウムチャンネル開口剤を投与することにより、ジストニアおよびジスキネジアならびに運動障害に関する他の疾患の予防、軽減および薬物治療に関する。 20071123A16333全文3 哺乳類動物のジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアの治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 前記ジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアが原発性ジストニア、発作性ジストニア、二次性ジストニア、薬物誘発性ジストニア/ジスキネジア、遅発性ジストニア、神経弛緩薬誘発性ジストニア、パーキンソン病患者の治療誘発性ジストニア/ジスキネジア、遺伝変性ジストニア、ハンチントン病患者のジストニア、トゥーレット症候群患者のジストニア、下肢静止不能症候群患者のジストニア、チック患者のジストニア様症状、ジストニア関連ジスキネジア、発作性ジスキネジア、発作性非運動誘発性ジスキネジア、発作性ジストニア舞踏病、発作性運動誘発性ジスキネジア、発作性運動誘発性舞踏病、労作誘発性ジスキネジア、睡眠薬性発作性ジスキネジア、薬物誘発性ジスキネジアから選択される請求項1に記載の使用。 請求項1または2に記載の前記ジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアの治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤フルピルチン(エチル−N−[2−アミノ−6−(4−フルオロフェニルメチルアミノ)ピリジン−3−イル]−カルバメート)またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 請求項1または2に記載の前記ジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアの治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤レチガビン(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼン)またはその薬学的に許容される誘導体の使用。 請求項1または2に記載の前記ジストニア、ジストニア症状およびジストニア関連ジスキネジアの治療、阻害または予防のための医薬品製造における活性剤としての神経カリウムチャンネル開口剤マキシポスト(BMS204352)、3−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)−2H−インドール−2−オンまたはその鏡像異性体あるいはその薬学的に許容される誘導体の使用。 前記哺乳類動物がヒトである請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。 哺乳類動物が愛玩動物、とりわけ、ネコまたはイヌである請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。 フルピルチンの遊離塩基形態に基づいて算出し、1日当たり200〜1800mgの1日投与量でフルピルチンを投与する請求項3に記載の使用。 レチガビンの遊離塩基形態に基づいて算出し、1日当たり200〜1800mgの1日投与量でレチガビンを投与する請求項4に記載の使用。 1日当たり10〜600mgの1日投与量でマキポストを投与する請求項5に記載の使用。 投与経路が経口、静脈内、直腸、非経口、経皮および吸入経路から選択される請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。 前記活性剤が薬学的に許容される塩またはアミドである請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。 神経カリウムチャンネル開口剤を前記基礎疾患の治療に一般的に使用される医薬品と併用して投与する治療法における請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。


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