タイトル: | 特許公報(B2)_新規アミダーゼ、その遺伝子、ベクター、形質転換体、及びそれらを利用した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 2009507448 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 9/86,C12P 41/00,C12N 1/21 |
野尻 増俊 森山 大輔 西山 陶三 田岡 直明 JP 5284947 特許公報(B2) 20130607 2009507448 20080314 新規アミダーゼ、その遺伝子、ベクター、形質転換体、及びそれらを利用した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法 株式会社カネカ 000000941 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 野尻 増俊 森山 大輔 西山 陶三 田岡 直明 JP 2007074463 20070322 20130911 C12N 15/09 20060101AFI20130822BHJP C12N 9/86 20060101ALI20130822BHJP C12P 41/00 20060101ALI20130822BHJP C12N 1/21 20060101ALI20130822BHJP JPC12N15/00 AC12N9/86C12P41/00 JC12N1/21 C12N 15/00−15/90 C12N 9/86 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN) 国際公開第03/008540(WO,A1) Pohlmann,A. et al.,Accession No. Q0KBI0, Definition: Glutamyl/Aspartyl-tRNA(Gln/Asp) amidotransferasesubunit A.,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],2006年11月28日,<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=protein&id=122946926> 検索日2008.06.04 12 JP2008054704 20080314 WO2008120554 20081009 18 20110218 長谷川 茜 本発明は、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有する新規なポリペプチド、そのポリペプチドをコードするDNA、該DNAを含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、及びそれらを利用した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法に関する。 光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸、特に光学活性ニペコタミド及び光学活性ニペコチン酸は、農薬、医薬品等の合成原料及び中間体として有用な化合物である。従来、ラセミ体ニペコタミドを加水分解する方法については、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)MCI3434株由来のアミダーゼがラセミ体ニペコタミドに作用することが知られているが、立体選択性、生産性については不明である(特許文献1、非特許文献1)。特開2004−105152号公報Eur.J.Biochem.、2004年、271巻、1580頁 本発明の目的は、ラセミ体ニペコタミドを立体選択的に加水分解する活性を有する、新規アミダーゼ及びそれをコードするDNA、該DNAを含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、及びそれらを利用した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解するアミダーゼをカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株(FERM BP−10739)から単離し、それをコードするDNAを取得した。このDNAを用いて製造されるアミダーゼに富んだ形質転換体又は高濃度アミダーゼ溶液により、高い生産性で高い立体選択的なカルボン酸アミド類の加水分解反応が進行すること見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、以下の1又は複数の特徴を有する。 (1)本発明の一つの特徴は、以下の(a)、(b)又は(c)のポリペプチドである:(a)配列表配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列表配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有るポリペプチド、(c)配列表配列番号1で示されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチド。 (2)本発明の別の特徴は、以下の理化学的性質を有するポリペプチドである:(a)ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有する、(b)SDS−PAGEにより測定した分子量が52kDa程度である、(c)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適pHが8〜9である、(d)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適温度が50℃である、(e)pH7付近において50℃以下の温度で安定である。 (3)本発明の一つの特徴は、以下の(a)、(b)又は(c)のDNAである:(a)配列表配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、(b)配列表配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドをコードするDNA、(c)配列表配列番号2に示した塩基配列と70%以上の配列同一性を示す塩基配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。 (4)本発明の別の特徴は、前記DNAを含むベクターである。 (5)本発明の別の特徴は、前記ベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体である。 (6)本発明の別の特徴は、前記ポリペプチド、又は、前記形質転換体を、ラセミ体カルボン酸アミドと反応させる工程、並びに、生成した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸を採取する工程からなる、光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法である。 本発明により、新規アミダーゼ及びそれをコードするDNA、該DNAを含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、及びそれらを利用した光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法が提供される。 以下、本発明を、実施形態を用いて詳細に説明する。本発明はこれらにより限定されるものではない。 本明細書において記述されている、DNAの単離、ベクターの調製、形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)等の成書に記載されている方法により実施できる。また、本明細書の記述に用いられる%は、特に断りのない限り、%(w/v)を意味する。 1.アミダーゼ及びポリペプチド 本発明は、以下の理化学的性質を有する新規アミダーゼに関するものである。(a)ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有する。(b)SDS−PAGEにより測定した分子量が52kDa程度である。(c)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適pHが8〜9である。(d)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適温度が50℃である。(e)pH7付近において50℃以下の温度で安定である。 本発明のアミダーゼは、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有し、光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸を生成する活性を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドは、当該活性を有する微生物などの生物から単離することができる。ポリペプチドの起源となる微生物は特に限定されないが、カプリアビダス(Cupriavidus)属に属するバクテリアが挙げられ、特に好ましいものとしてはカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株(FERM BP−10739)があげられる。上記KNK−J915株は、本発明者らによって土壌から分離された菌株である。 上記のカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株については、FERM BP−10739の受託番号で、平成18年11月28日付けで、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。以下に、カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株(FERM BP−10739)の菌学的性質を示す。 A.形態(1)細胞形態 0.8〜1.0×1.5〜2.5μmの桿状。(2)運動性はない。(3)胞子はない。(4)グラム染色:陰性(5)コロニーの形態:円形、レンズ状、全縁滑らか、黄色 B.生理学的性質(1)ゼラチンの加水分解:陰性(2)デンプンの加水分解:陰性(3)硝酸塩の還元:陽性(4)カタラーゼ活性:陽性(5)オキシダーゼ活性:陽性(6)ウレアーゼ活性:陰性(7)O−F試験:酸化、発酵共に陰性(8)炭水化物の分解:Tween80は加水分解しない。アドニトール、サリシン、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、マンノース、ラフィノース、サッカロース、マルトース、セロビオース、ガラクトース、ラクトース、グリセロール、D−リボース、L−アラビノースからは酸を生成しない。フラクトースを酸化する。 本発明のポリペプチドを生産する微生物は、野生株または変異株のいずれでもあり得る。あるいは、細胞融合または遺伝子操作などの遺伝学的手法により誘導された微生物も用いられ得る。遺伝子操作された本発明のポリペプチドを生産する微生物は、例えば、これらの酵素を単離及び/または精製して酵素のアミノ酸配列の一部または全部を決定する工程、このアミノ酸配列に基づいてポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を決定する工程、このアミノ酸配列に基づいてポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を得る工程、このヌクレオチド配列を他の微生物に導入して組換え微生物を得る工程、及びこの組換え微生物を培養して、本発明の酵素を得る工程を包含する方法により得られ得る。 本発明のポリペプチドの実施形態としては、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができる。また、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと一定値以上の配列同一性を有し、且つ、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドは、当該ポリペプチドと同等であり、本発明に含まれる。 ここで配列の配列同一性は、例えば、相同性検索プログラムBLAST(W.R. Pearson & D.J. Lipman P.N.A.S. (1988) 85:2444-2448)を用いて2つのアミノ酸配列を比較解析した場合に、配列全体に対するIdentityの値で表される。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと一定値以上の配列同一性を有するポリペプチドとしては、当該ポリペプチドとの配列同一性が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上であるポリペプチドを挙げることができる。 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を、上記の相同性検索プログラムBLASTを用いて相同性検索をしたところ、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134株、ラルストニア メタリドゥランス(Ralstonia metallidurans)CH34株由来のアミダーゼとそれぞれ約78%、73%の配列同一性を示した。これらのアミノ酸配列はYP_295602およびYP_584021のアクセッションナンバーにてNational Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のデータベースに登録されており、何人もこれらの配列を取得することができる。 本発明のポリペプチドは、例えば、先述の、配列表配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを適当なベクターに連結した後、適当な宿主細胞に導入して発現させることにより得られる。 また、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に従い、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドに、アミノ酸の置換、挿入、欠失又は付加を生じさせることによっても取得できる。置換、挿入、欠失又は付加を生じさせるアミノ酸の数は、実施形態のポリペプチドが備える活性が失われない限り、その個数は制限されないが、好ましくは90アミノ酸以下であり、より好ましくは、その個数は制限され65アミノ酸以下、さらに好ましくは45アミノ酸以下、最も好ましくは、20アミノ酸以下である。 本発明のポリペプチドの起源となる微生物を培養するための培地としては、その微生物が増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いることができる。 本発明のポリペプチドの起源となる微生物からの該ポリペプチドの単離は、公知の蛋白質精製法を適当に組み合わせて用いることにより実施できる。例えば、以下のように実施できる。まず、当該微生物を適当な培地で培養し、培養液から遠心分離、あるいは、濾過により菌体を集める。得られた菌体を、超音波破砕機、あるいは、グラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残さを除き、無細胞抽出液を得る。そして、塩析(硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(アセトン又はエタノールなどによる蛋白質分画沈殿法)、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過等の手法を単独で、又は組み合わせて用いることにより、該無細胞抽出液から本発明のポリペプチドを単離することもできる。 以下に、カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株(FERM BP−10739)より単離された、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの物理学的、及び酵素学的性質を示す。1.分子量:52000(SDS−PAGEにより測定) 200000(ゲルろ過法により測定)2.サブユニット構成:4量体3.アミダーゼ反応至適pH:pH8.0〜9.04.アミダーゼ反応至適温度:50℃5.熱安定性:50℃以下で安定である。6.基質特異性:ニペコタミド、N−ベンジルニペコタミド、ピペコリン酸アミド、イソニペコタミド、インドリンカルボン酸アミドといった複素環化合物やプロピオン酸アミド、イソブチルアミド、マンデル酸アミド、フェニルプロピオン酸アミドといった脂肪族アミドに対して特に強い活性を示す。より好ましい基質としては、(S)−ニペコタミド、(R)−ピペコリン酸アミド、(R)−インドリンカルボン酸アミド、(S)−フェニルプロピオン酸アミドなどが挙げられる。 2.DNA 本発明のDNAは、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有し、光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸を生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAであり、後述する方法に従って導入された宿主細胞内で該ポリペプチドを発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。該ポリペプチドが取得できれば、該ポリペプチドの起源となる微生物より、当業者であれば公知の方法で本発明のDNAを取得できる。例えば、以下に示した方法で本発明のDNAを取得できる。 まず、単離された本発明のポリペプチドを適当なエンドペプチダーゼを用いて消化し、生じたペプチド断片を逆相HPLCにより分取する。そして、例えば、ABI492型プロテインシークエンサー(Applied Biosystems社製)により、これらのペプチド断片のアミノ酸配列の一部又は全部を決定する。 このようにして得られたアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、通常のDNA単離法、例えば、Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体DNAを調製する。この染色体DNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、例えば、ABI3130xl型 DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)等を用いて行うことができる。 該ポリペプチドをコードするDNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、i−PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))によりその全体の配列を決定することができる。 このようにして得られる本発明のDNAの実施形態としては、配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNAを挙げることができる。また、配列番号2において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有し、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、本発明に含まれる。「数個の塩基」とは、DNAによってコードされるポリペプチドが上記活性を失わない限り、その個数は制限されないが、好ましくは270塩基以下であり、より好ましくは200塩基以下、さらに好ましくは130塩基以下、最も好ましくは、70塩基以下である。 また、配列表配列番号2で示される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、且つ上記活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、本発明に含まれる。 さらに、配列表配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、且つ、ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに包含される。さらに、配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、且つ、ラセミ体カルボン酸アミドを加水分解し、光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸を生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに包含される。 配列表配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。 ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd Edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、更に好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。 本明細書において記述されている、上記DNAの単離、および後述するベクターの調製、形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等の成書に記載されている方法により実施できる。 3.ベクター 本発明のベクターは、適当な宿主細胞内で前記DNAがコードする遺伝子を発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。 このようなベクターは、通常、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、pUCN18が好適に使用できる。プラスミドpUCN18は、PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミドである。 前記制御因子は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。 上記の「作動可能に連結」という用語は、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。本発明のベクターの例としては、上記pUCN18に配列番号1に示すDNAを導入した、後述するプラスミドpNCSを挙げることができる(実施例4参照)。 4.宿主細胞 本明細書内に記載される宿主細胞としては、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、導入及び発現効率から細菌が好ましく、大腸菌が特に好ましい。本発明のDNAを含むベクターは、公知の方法により宿主細胞に導入できる。宿主細胞として大腸菌を用いる場合、例えば、市販のEscherichia coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を用いることにより、当該ベクターを宿主細胞に導入できる。 5.形質転換体 本発明の形質転換体」は、本発明のポリペプチドをコードするDNAを、前記ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られる。なお、本発明の「形質転換体」は、培養菌体は言うまでもなく、その処理物も含まれる。ここで言う処理物とは、例えば、界面活性剤や有機溶媒で処理した細胞、乾燥細胞、破砕処理した細胞、細胞の粗抽出液等のほか、公知の手段でそれらを固定化したものを意味する。ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性が残存する限りにおいては、これら処理物を本発明の反応に使用しうる。本発明の形質転換体の培養は、それが増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いて実施できる。 上記形質転換体の例としては、後述する実施例にあるE. coli HB101 (pNCS)が挙げられる。 6.光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法 本発明の「光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造」は、適当な溶媒中に、基質となるラセミ体カルボン酸アミドと、本発明のポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体とを添加することにより実施できる。 反応には水系溶媒を用いてもよいし、水系の溶媒と有機系の溶媒とを混合して用いてもよい。有機系溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ヘキサン、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。反応は例えば10℃〜70℃の温度で行われ、反応液のpHは例えば4〜10に維持する。反応は、バッチ方式あるいは連続方式で実施できる。バッチ方式の場合、反応基質は例えば0.1%から70%(w/v)の仕込み濃度で添加される。 基質となる「ラセミ体カルボン酸アミド」としては、例えば、ラセミ体ニペコタミド、ラセミ体ピペコリン酸アミド、ラセミ体インドリンカルボン酸アミド、ラセミ体フェニルプロピオン酸アミド等が挙げられるが、上述の反応条件において加水分解され、「光学活性アミド及び光学活性カルボン酸に変換されるものであれば、特に限定されない。上述の反応条件において、ラセミ体ニペコタミドを基質とした場合、(R)−ニペコタミド、(S)−ニペコチン酸、ラセミ体ピペコリン酸アミドを基質とした場合、(S)−ピペコリン酸アミド、(R)−ピペコリン酸、ラセミ体インドリンカルボン酸アミドを基質とした場合、(R)−インドリンカルボン酸アミド、(S)−インドリンカルボン酸、ラセミ体フェニルプロピオン酸アミドを基質とした場合、(R)−フェニルプロピオン酸アミド、(S)−フェニルプロピオン酸が得られる。反応で生じたアミド及び酸、例えば(R)−ニペコタミド、(S)−ニペコチン酸は、常法により、それぞれを単離、精製できる。加水分解反応で生じた(R)−ニペコタミドを含む反応液を、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出し、有機溶媒を減圧下で留去した後、蒸留、再結晶、または、クロマトグラフィー等の処理を行うことにより、単離、精製できる。或いは、反応液から微生物菌体を除去したろ液を塩酸等を用いて中和晶析し、析出した目的物をろ別することによっても単離、精製できる。また、反応液から微生物菌体を除去したろ液を二炭酸ジ−t−ブチル等を用いて誘導化し、析出した目的物をろ別することによっても単離、精製できる。 以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。 (実施例1)カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915(FERM BP−10739)由来アミダーゼの精製 以下に説明する各実施例では、アミダーゼ活性の測定は、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、N−ベンジルニペコタミド1%、及び酵素溶液を添加し、30℃で1時間反応後、高速液体クロマトグラフィー分析条件Aにより分析した。この条件において、1分間に1μmolのN−ベンジルニペコチン酸を生成する酵素活性を1unitと定義した。 高速液体クロマトグラフィー分析条件Aカラム:YMC−A303(4.6mmφ×250mm、YMC社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=9/1流速:1.0ml/分カラム温度:30℃測定波長:210nm。 肉エキス 1.0%、ポリペプトン 1.5%、バクト・イーストエキス 0.5%、NaCl 0.3%の組成からなる液体培地(pH7.0)100mlを500ml容坂口フラスコに分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。この液体培地にカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株を無菌的に接種し、35℃で72時間振とう培養を行った。得られた培養液4.2Lについて、遠心分離により菌体を集め、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)500mlで洗浄し、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)200mlに懸濁した。この懸濁した菌体をSONIFIER250(BRANSON社製)を用いて超音波破砕し、遠心分離にて菌体残渣を除去して無細胞抽出液を取得した。 この無細胞抽出液に20%飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、4℃で30分攪拌後、生じた沈殿を遠心分離により除去した。さらに、この上清に40%飽和となるまで硫酸アンモニウムを添加し、4℃で30分攪拌後、生じた沈殿を遠心分離により取得し、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で透析した。 透析後の酵素液を10mMリン酸緩衝液(pH8.0)であらかじめ平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650M(東ソー社製)カラム(400ml)に供し、酵素を吸着させ、同一緩衝液でカラムを洗浄後、0Mから0.3Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。 この活性画分に0.8Mとなるように硫酸アンモニウムを添加し、0.8Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)であらかじめ平衡化したPhenyl−TOYOPEARL 650M(東ソー社製)カラム(75ml)に供し、酵素を吸着させ、同一緩衝液でカラムを洗浄後、0.8Mから0Mまでの硫酸アンモニウムのリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。 この活性画分に0.8Mとなるように硫酸アンモニウムを添加し、0.8Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)であらかじめ平衡化したButyl−TOYOPEARL 650S(東ソー社製)カラム(25ml)に供し、酵素を吸着させ、同一緩衝液でカラムを洗浄後、0.8Mから0Mまでの硫酸アンモニウムのリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。 この活性画分を10mMリン酸緩衝液(pH8.0)で透析後、10mMリン酸緩衝液(pH8.0)であらかじめ平衡化したResource Q(Pharmacia Biotech社製)カラム(6ml)に供し、酵素を吸着させ、同一緩衝液でカラムを洗浄後、0Mから0.5Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。 この活性画分をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動により解析した結果、単一なバンドであったため、この活性画分に含まれる酵素を精製酵素とした。 精製酵素の比活性は1.7U/mg−proteinであった。以後、本酵素をHCSと呼ぶ。 (実施例2)精製HCSの酵素学的性質 基質としてN−ベンジルニペコタミドを用いて、実施例1で取得した精製酵素のアミダーゼ反応の至適pH、至適温度、及び熱安定性を加水分解反応によって生じるN−ベンジルニペコチン酸をHPLCで定量することによって調べた。至適pH測定時には各pHで30℃で1時間反応を行い、アセトニトリルの添加により停止し、分析は実施例1に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件Aで行った。至適温度測定時には各温度で1時間反応を行い、アセトニトリルの添加により停止し、分析は実施例1に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件Aで行った。熱安定性測定時には各温度において30分インキュベーションを行った後1時間反応を行い、アセトニトリルの添加により停止し、分析は実施例1に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件Aで行った。 結果を以下の表1に示した。 次に、HCSの基質特異性について調べた。基質化合物は1%の濃度で添加し、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)中、30℃で酵素反応を行い、分析は実施例1に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件A或いは、以下に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件Bで行った。 高速液体クロマトグラフィー分析条件Bカラム:SUMICHIRAL OA−5000(4.6mmφ×150mm、住化分析センター社製)溶離液:2mM CuSO4 水溶液流速:1.0ml/分カラム温度:30℃測定波長:254nm。 (RS)−ニペコタミドに対する活性を100として、その相対活性を表2に示した。 HCSのアミダーゼ活性は、ニペコタミド、N−ベンジルニペコタミド、ピペコリン酸アミド、イソニペコタミド、インドリンカルボン酸アミドといった複素環化合物やプロピオン酸アミド、イソブチルアミド、マンデル酸アミド、フェニルプロピオン酸アミドといった脂肪族アミドに対して特に強い活性を示し、フェニルアラニンアミドやベンズアミドに弱い活性を示した。 (実施例3)HCSのクローニング 実施例1で得られた精製HCSを用いて、ABI492型プロテインシーケンサー(Applied Biosystems社製)によりN末端アミノ酸配列を解析した。また、精製HCSを8M尿素存在下で変性させた後、アクロモバクター由来のリジルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列を解析した。これらのアミノ酸配列から予想されるDNA配列を考慮し、プライマー1(配列表配列番号3)及びプライマー2(配列表配列番号4)を合成した。プライマー2種(プライマー1及びプライマー2)各40pmol、カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株の染色体DNA100ng、dNTP各10nmol、ExTaq(宝酒造社製)2.5Uを含むExTaq用緩衝液50μlを調製し、熱変性(95℃、1分)、アニーリング(50℃、1分)、伸長反応(72℃、0.5分)を30サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。本反応に用いたカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株の染色体DNAの調製は、分子生物学実験プロトコール1(丸善)P.36に記載されている細菌ゲノムDNAの少量調製法により行なった。 増幅DNAをpT7Blue Vector(Novagen社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、増幅DNAはプライマー配列を除いて196塩基からなっていた。その配列を配列番号5に示す。以後この配列を「コア配列」と記す。 コア配列の5’側に近い部分の塩基配列をもとに、その相補配列となるプライマー3(配列表配列番号5)を作成し、更に3’側に近い部分の塩基配列をもとに、プライマー4(配列表配列番号6)を作製した。逆PCRの鋳型として、まずカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株の染色体DNAを制限酵素PstIにより消化し、その消化物をT4DNAリガーゼを用いて自己閉環した。この自己閉環物200ng、プライマー2種(プライマー3及びプライマー4)各50pmol、dNTP各10nmol、ExTaq(宝酒造社製)2.5Uを含む ExTaq用緩衝液50μlを調製し、熱変性(97℃、1分)、アニーリング(60℃、1分)、伸長反応(72℃、5分)を30サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。 増幅DNAをpT7Blue Vector(Novagen社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。この結果とコア配列の結果より、カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株由来のHCSをコードする遺伝子の全塩基配列を決定した。HCSをコードする遺伝子の全塩基配列を配列番号2に、また該遺伝子がコードする推定アミノ酸配列を配列番号1に示した。 (実施例4)HCS遺伝子を含む組換えベクターの作製 大腸菌においてHCSを発現させるために、形質転換に用いる組換えベクターを作製した。まず、HCS遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加し、かつ終始コドンの直後に新たな終始コドンとEcoRI部位を付加した二本鎖DNAを以下の方法により取得した。 実施例3で決定した塩基配列に基づき、HCS遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加したプライマー5(配列表配列番号7)、及びHCS遺伝子の終始コドンの直後にEcoRI部位を付加したプライマー6(配列表配列番号8)を合成した。プライマー2種(プライマー5及びプライマー6)各50pmol、カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株の染色体DNA10ng、dNTP各10nmol、ExTaq(宝酒造社製)2.5Uを含むExTaq用緩衝液50μlを調製し、熱変性(97℃、1分)、アニーリング(60℃、1分)、伸長反応(72℃、1.5分)を30サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。上記のPCRで得られたDNA断片をNdeI及びEcoRIで消化し、プラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とEcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNCSを構築した。 (実施例5) 形質転換体の作製 実施例4で構築した組換えベクターpNCSを用いて、E. coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E. coli HB101 (pNCS)を得た。 E. coli HB101の菌学的性質は、「BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE」(東洋紡績株式会社、1993年、116−119頁)およびその他種々の公知文献に記載されており当業者に周知である。上記E. coli HB101 (pNCS)は、遺伝子組換えによって特定の酵素を産生し得る性質以外は、E. coli HB101と同様の菌学的性質を有する。 (実施例6)形質転換体におけるHCSの発現 実施例5で得た形質転換体、および、ベクタープラスミドpUCN18を含む形質転換体であるE. coli HB101 (pUCN18)(比較例)のそれぞれを、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)5mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。遠心分離により菌体を集め、5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁した。これを、UH−50型超音波ホモゲナイザー(SMT社製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のアミダーゼ活性を測定し、比活性として表したものを、表3に示した。 表3に示すように、実施例5で得られた形質転換体において、アミダーゼ活性の発現が認められた。アミダーゼ活性は、実施例1に記載の方法で測定した。 (実施例7)ラセミ体ニペコタミドのS体選択的加水分解 ラセミ体ニペコタミド10.1gを水に溶解し、pH8.0に調整した基質溶液200mlに実施例6と同様に培養したE. coli HB101 (pNCS)の培養液2mlに添加し、45℃にて25時間攪拌した。反応終了後、反応液を70℃、30分加熱処理し、遠心分離にて菌体等の固形物を除去した後、反応液中の基質及び生成物を、クロロギ酸ベンジルを用いて誘導化した。得られた誘導体を高速液体クロマトグラフィーにて分析することにより、変換率(%)及び光学純度(%e.e.)を求めた結果、変換率は50.2%、(R)−ニペコタミドの光学純度は98.3%e.e.、(S)−ニペコチン酸の光学純度は97.1%e.e.であった。 変換率(%)=P/(S1+P)×100 (P:生成物量(mol)、S1:残存基質量(mol)) 光学純度(%e.e.)=(A−B)/(A+B)×100 (Aは対象とする鏡像異性体量でBは対応する鏡像異性体量)。 高速液体クロマトグラフィー分析条件[変換率の分析]カラム:YMC−A303(4.6mmφ×250mm、YMC社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=7/3流速:1.0ml/分カラム温度:35℃測定波長:210nm[光学純度の分析]カラム:CHIRALPAK AD−RH(4.6mmφ×150mm、ダイセル社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=7/3流速:0.5ml/分カラム温度:室温測定波長:210nm。 (実施例8)ラセミ体ピペコリン酸アミドのR体選択的加水分解 100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ラセミ体ピペコリン酸アミド1%、及び実施例1で得られた精製酵素溶液を添加し、30℃で反応後、高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより、変換率(%)及び光学純度(%e.e.)を求めた結果、変換率は18.3%、(R)−ピペコリン酸の光学純度は80.1%e.e.であった。 変換率(%)=P/(S1+P)×100 (P:生成物量(mol)、S1:残存基質量(mol)) 光学純度(%e.e.)=(A−B)/(A+B)×100 (Aは対象とする鏡像異性体量でBは対応する鏡像異性体量)。 高速液体クロマトグラフィー分析条件[変換率・光学純度の分析]カラム:SUMICHIRAL OA−5000(4.6mmφ×150mm、住化分析センター社製)溶離液:2mM CuSO4 水溶液流速:1.0ml/分カラム温度:30℃測定波長:254nm。 (実施例9)ラセミ体インドリンカルボン酸アミドのR体選択的加水分解 100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ラセミ体インドリンカルボン酸アミド1%、及び実施例1で得られた精製酵素溶液を添加し、30℃で反応後、無水酢酸を用いて誘導化した。得られた誘導体を高速液体クロマトグラフィーで分析することにより変換率(%)、光学純度(%e.e.)を求めた結果、変換率は39.2%、(R)−インドリンカルボン酸の光学純度は97.8%e.e.であった。 高速液体クロマトグラフィー分析条件[変換率の分析]カラム:YMC−A303(4.6mmφ×250mm、YMC社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=9/1流速:1.0ml/分カラム温度:30℃測定波長:210nm[光学純度の分析]カラム:SUMICHIRAL OA−5000(4.6mmφ×150mm、住化分析センター社製)溶離液:2mM CuSO4 水溶液/メタノール=7/3流速:2.0ml/分カラム温度:35℃測定波長:254nm。 (実施例10)ラセミ体フェニルプロピオン酸アミドのS体選択的加水分解 100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ラセミ体フェニルプロピオン酸アミド1%、及び実施例1で得られた精製酵素溶液を添加し、30℃で反応後、高速液体クロマトグラフィーで分析することにより変換率(%)、光学純度(%e.e.)を求めた結果、変換率は36.0%、(S)−フェニルプロピオン酸の光学純度は89.1%e.e.であった。 高速液体クロマトグラフィー分析条件[変換率の分析]カラム:YMC−A303(4.6mmφ×250mm、YMC社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=7/3流速:1.0ml/分カラム温度:35℃測定波長:210nm[光学純度の分析]カラム:CHIRALPAK AD−H(4.6mmφ×250mm、ダイセル社製)溶離液:ヘキサン/イソプロパノール/TFA=95/5/0.02流速:1.0ml/分カラム温度:30℃測定波長:254nm。 (実施例11)ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134株由来putative amidaseをコードするDNAによって形質転換した大腸菌の作製 実施例3で決定したカプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915(FERM BP−10739)由来の本発明の塩基配列と高い配列同一性を示した、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134株由来putative amidaseの塩基配列(配列表配列番号9)に基づき、開始コドン部分にNdeI部位を付加したプライマー7(配列表配列番号10)、及び終始コドンの直後にSacI部位を付加したプライマー8(配列表配列番号11)を合成した。プライマー2種(プライマー7及びプライマー8)各50pmol、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134株の染色体DNA10ng、dNTP各10nmol、ExTaq(宝酒造社製)2.5Uを含む ExTaq用緩衝液50μlを調製し、熱変性(97℃、1分)、アニーリング(60℃、1分)、伸長反応(72℃、1.5分)を30サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。上記のPCRで得られたDNA断片をNdeI及びSacIで消化し、プラスミドpUCN18のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とSacI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNREを構築した。構築した組換えベクターpNREを用いて、E. coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E. coli HB101 (pNRE)を得た。 (実施例12)ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134株由来putative amidaseをコードするDNAによって形質転換した大腸菌を用いたラセミ体N−ベンジルニペコタミドのS体選択的加水分解 100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ラセミ体N−ベンジルニペコタミド1%、及び実施例11で得られたE. coli HB101 (pNRE)の培養液を添加し、30℃で反応後、高速液体クロマトグラフィーで分析することにより変換率(%)、光学純度(%e.e.)を求めた結果、変換率は50.1%、残存する(R)−N−ベンジルニペコタミドの光学純度は99.4%e.e.であった。 変換率(%)=P/(S1+P)×100 (P:生成物量(mol)、S1:残存基質量(mol)) 光学純度(%e.e.)=(A−B)/(A+B)×100 (Aは対象とする鏡像異性体量でBは対応する鏡像異性体量)。 高速液体クロマトグラフィー分析条件[変換率の分析]カラム:YMC−A303(4.6mmφ×250mm、YMC社製)溶離液:20mM リン酸水溶液(pH2.5)/アセトニトリル=9/1流速:1.0ml/分カラム温度:35℃測定波長:210nm[光学純度の分析]カラム:CHIRALPAK AD−RH(4.6mmφ×150mm、ダイセル社製)溶離液:20mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)/アセトニトリル=7/3流速:0.5ml/分カラム温度:室温測定波長:210nm以下の(a)、(b)又は(c)のポリペプチド:(a)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列において1〜65個のアミノ酸が置換、挿入、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチド、(c)配列表配列番号1で示されるアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチド。以下の理化学的性質を有するポリペプチド:(a)ラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有する、(b)ゲルろ過法により測定した分子量が200000である、(f)ニペコタミド、N−ベンジルニペコタミド、ピペコリン酸アミド、イソニペコタミド、インドリンカルボン酸アミド、プロピオン酸アミド、イソブチルアミド、マンデル酸アミド、又はフェニルプロピオン酸アミドに対して基質特異性を示す、(g)カプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物に由来する。さらに以下の理化学的性質を有する請求項2に記載のポリペプチド:(c)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適pHが8〜9である、(d)ラセミ体ニペコタミドを基質として用いたときのアミダーゼ反応の至適温度が50℃である、(e)pH7付近において50℃以下の温度で安定である。カプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物に由来する請求項1に記載のポリペプチド。カプリアビダス エスピー(Cupriavidus sp.)KNK−J915株(FERM BP−10739)に由来する請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド。請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNA。以下の(a)、又は(c)のDNA:(a)配列表配列番号2に示される塩基配列からなるDNA、(c)配列表配列番号2に示した塩基配列と85%以上の配列同一性を示す塩基配列からなり、且つラセミ体ニペコタミドを(S)体選択的に加水分解する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。請求項6または7に記載のDNAを含むベクター。請求項8に記載のベクターで宿主微生物を形質転換して得られる形質転換体。宿主微生物が大腸菌である請求項9に記載の形質転換体。請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、または、請求項9および10のいずれかに記載の形質転換体をラセミ体カルボン酸アミドに作用させ、光学活性カルボン酸アミドを残存させ、光学活性カルボン酸を生成することを特徴とする光学活性カルボン酸アミド及び光学活性カルボン酸の製造方法。ラセミ体カルボン酸アミドが、ラセミ体ニペコタミド、ラセミ体ピペコリン酸アミド、ラセミ体インドリンカルボン酸アミド、および、ラセミ体フェニルプロピオン酸アミドからなる群より選ばれるいずれか一つであり、光学活性カルボン酸アミドが、(R)−ニペコタミド、(S)−ピペコリン酸アミド、(S)−インドリンカルボン酸アミド、および、(R)−フェニルプロピオン酸アミドからなる群より選ばれるいずれか一つであり、光学活性カルボン酸が、(S)−ニペコチン酸、(R)−ピペコリン酸、(R)−インドリンカルボン酸、および、(S)−フェニルプロピオン酸からなる群より選ばれるいずれか一つである請求項11に記載の製造方法。配列表