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タイトル:特許公報(B2)_感染性皮膚および粘膜疾患治療薬
出願番号:2009506327
年次:2011
IPC分類:A61K 33/20,A61K 47/02,A61K 9/08,A61P 31/04,A61P 31/10,A61P 31/12,A61P 1/00,A61P 11/00,A61P 15/00,A61P 27/00,A61P 17/00


特許情報キャッシュ

柴田 高 JP 4670107 特許公報(B2) 20110128 2009506327 20080324 感染性皮膚および粘膜疾患治療薬 大幸薬品株式会社 391003392 南条 雅裕 100113376 瀬田 あや子 100132942 柴田 高 JP 2007082821 20070327 20110413 A61K 33/20 20060101AFI20110324BHJP A61K 47/02 20060101ALI20110324BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110324BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110324BHJP A61P 31/10 20060101ALI20110324BHJP A61P 31/12 20060101ALI20110324BHJP A61P 1/00 20060101ALI20110324BHJP A61P 11/00 20060101ALI20110324BHJP A61P 15/00 20060101ALI20110324BHJP A61P 27/00 20060101ALI20110324BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110324BHJP JPA61K33/20A61K47/02A61K9/08A61P31/04A61P31/10A61P31/12A61P1/00A61P11/00A61P15/00A61P27/00A61P17/00 101 A61K 33/20 A61K 9/08 A61K 47/02 A61P 1/00 A61P 11/00 A61P 15/00 A61P 17/00 A61P 27/00 A61P 31/04 A61P 31/10 A61P 31/12 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平04−046003(JP,A) 特表平03−505203(JP,A) 国際公開第2003/082304(WO,A1) 特開昭62−106022(JP,A) 特開2000−063217(JP,A) 特開平11−278808(JP,A) CROUGHAN,W.S. et al,Comparative study of inactivation of herpes simplexvirus types 1 and 2 by commonly used antiseptic agents,Journal of clinical microbiology,1988年,Vol.26, No.2,p.213-5 THURSTON-ENRIQUEZ,J.A. et al,Inactivation of enteric adenovirus and felinecalicivirus by chlorine dioxide,Applied and Environmental Microbiology,2005年,Vol.71, No.6,p.3100-3105 HUANG,J. et al,Disinfection effect of chlorine dioxide on viruses, algaeand animal planktons in water,Water Research,1997年,Vol.31, No.3,p.455-460 11 JP2008055384 20080324 WO2008117767 20081002 29 20100409 松浦 安紀子 本発明は、病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚および粘膜における疾患の治療薬(感染性皮膚疾患ならびに感染性粘膜疾患に用いる治療薬の意。以下、総称して「皮膚疾患治療薬」ともいう)に関し、詳しくは溶存二酸化塩素を含有し、これまで効果的な治療方法がなかったヒトパピローマウイルスによる皮膚疾患など、難治性の皮膚疾患であってもこれを治癒し得る皮膚疾患治療薬に関する。 感染することにより皮膚疾患や皮膚粘膜疾患をもたらす病原性微生物、例えばヒトパピローマウイルスは、皮膚や粘膜の微小な傷から入り込み、手足の指などに疣贅(ゆうぜい)を起こすばかりか、尖圭コンジローマ(コンジローム)や種々の皮膚癌、子宮癌の原因ともなり、ウイルスの型によっては悪性の腫瘍になる可能性もある。現在、ヒトパピローマウイルスに起因する皮膚疾患には、例えばブレオマイシン軟膏の塗布などの薬物療法や、インターフェロン投与による免疫療法がとられている(特許文献1参照)。 周知のとおり抗生物質や抗菌薬、抗真菌薬の開発が進化をとげ、感染性の皮膚疾患に関しても、これら薬剤を使用することにより治癒するケースが多い。しかしながら、その一方で、抗生物質や抗菌薬の乱用により耐性菌が出現し、またインターフェロンを用いた場合にあっても治療抵抗性が生じ、皮膚疾患も難治性に展開する症例も目立ってきている。特表2005−525090公報 菌交代症や院内感染症も社会問題に発展していることからも考えると、ヒトの皮膚や皮膚粘膜に生じた疾患の治療薬として、既存の抗生物質や抗菌薬、真菌薬、インターフェロンに代わる新たな治療薬の開発が熱望されている。 本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微生物の感染によって発症する皮膚疾患を治療する新たな薬剤を提供するところにある。 上記目的を達成するための本発明の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬の第一特徴構成は、病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚疾患および粘膜疾患の治療薬であって、溶存二酸化塩素ガスを構成成分に有する二酸化塩素液剤を含有した点にある。 本発明の第二特徴構成は、病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚疾患および粘膜疾患の治療薬であって、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤を含有した点にある。 本発明の第三特徴構成は、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムとし、前記pH調整剤を25℃における5%水溶液のpHが2.5〜6.8となる緩衝性のある酸またはその塩とした点にある。 本発明の第四特徴構成は、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムとし、前記pH調整剤をリン酸またはその塩とした点にある。 本発明の第五特徴構成は、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムとし、前記pH調整剤をリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物とした点にある。 本発明の第六特徴構成は、前記微生物を細菌とした点にある。 本発明の第七特徴構成は、前記微生物を真菌とした点にある。 本発明の第八特徴構成は、前記微生物をウイルスとした点にある。 本発明の第九特徴構成は、前記ウイルスをヒトパピローマウイルスとした点にある。 本発明の第十特徴構成は、前記ウイルスをアデノウイルスとした点にある。 本発明の第十一特徴構成は、前記ウイルスをヘルペスウイルスとした点にある。 本発明の皮膚疾患治療薬は、皮膚や粘膜に疾患をもたらす広い範囲の病原性微生物に対して不活性化効果を有するとともに、当該微生物の感染による皮膚疾患を治療することができ、既存の抗生物質や抗菌薬、真菌薬に代わる新たな皮膚疾患治療薬となる。は、実施例3の子宮頸部炎治療における2月13日(初診時)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、実施例3の子宮頸部炎治療における2月17日(治療中)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、実施例3の子宮頸部炎治療における2月19日(治療中)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、実施例3の子宮頸部炎治療における2月24日(治療中)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、実施例4の子宮頸部悪性腺腫治療における1月19日(初診時)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、実施例4の子宮頸部悪性腺腫治療における2月26日(治療中)の患部状態を示す写真画像を示す図であり、は、本発明の皮膚疾患治療薬に関するコクサッキーウイルスB5不活性化効果を示したグラフ((a)は感作時間を1分とした場合、(b)は濃度を10ppmとした場合)を示す図である。 本発明の皮膚疾患治療薬は、病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚疾患および粘膜疾患の治療薬であって、溶存二酸化塩素ガスを構成成分に有する二酸化塩素液剤を含有する。〔実施態様1〕 本実施形態の皮膚疾患治療薬は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤を含有する。例えば、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムであり、pH調整剤は25℃における5%水溶液のpHが2.5〜6.8となる緩衝性のある酸またはその塩である。 また、亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムとし、pH調整剤をリン酸またはその塩としてもよい。 さらに、亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムとし、pH調整剤をリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物としてもよい。 本発明で使用できる亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。 なかでも、入手が容易という理由のみならず、二酸化塩素活性の持続性に優れているという点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。 本発明で使用し得るpH調整剤としては、緩衝性のある酸であれば好適に使用し得る。 有機酸またはその塩としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、グルタル酸、及びこれらの塩が挙げられる。 無機酸としては、リン酸、ホウ酸、メタリン酸、ピロリン酸、スルファミン酸などが挙げられる。無機酸の塩としては、例えば、リン酸二水素の塩(ナトリウム塩やカリウム塩、以下同様)、リン酸二水素塩とリン酸一水素塩の混合物などが挙げられる。pH調整剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。 保存安定性に優れ、それ故、長期保存後でも優れた抗微生物活性が得られるという点で、25℃における5%水溶液のpHが2.5〜6.8となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩の使用が好ましい。前記pHが2.5未満であっても、また6.8を超えても、溶存二酸化塩素の保存安定性が低下し、保存中における二酸化塩素液剤の液性(pH)の変動が大きくなる。 25℃における5%水溶液のpHが3.5〜6.0となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩を使用することが好ましく、pH4.0〜5.5であることがさらに好ましい。なかでも、無機酸としてリン酸またはその塩を使用することがさらに好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物を使用することがさらに好ましい。 二酸化塩素液剤は、例えば、次のように製造される。すなわち、(a)亜塩素酸塩を水に溶解して2000〜180000ppmの亜塩素酸塩水溶液を調整し、(b)二酸化塩素ガスを水中にバブリングして溶解することにより100〜2900ppmの二酸化塩素水溶液を調整し、そして、(c)亜塩素酸塩を水に溶解して2000〜180000ppmの亜塩素酸塩水溶液を調整した後、この溶液に、その1000ml当たり、pH調整剤0.5〜100gを溶解してpH調整剤を含有する亜塩素酸塩水溶液を調整する。 次に、前記(a)の亜塩素酸水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜300ml、前記(b)の二酸化塩素水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜800ml及び前記(c)のpH調整剤を含有する亜塩素酸水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜400mlを混合し室温で十分に攪拌して二酸化塩素液剤とする。 なお、二酸化塩素液剤の最終的なpHは4.5〜6.5とすることが好ましい。この範囲から外れると保存安定性が低下し、保存中の薬理活性が変動したり、例えば2年後といった長期保存後の薬理活性が弱くなる可能性がある。本発明における二酸化塩素液剤のさらに好ましいpH範囲は5.5〜6.0である。〔実施態様2〕 本実施形態の皮膚疾患治療薬は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及び酸性を示す界面活性剤からなる二酸化塩素液剤を含有する。例えば、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムであり、酸性を示す界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、プロピレングリコール及びエタノールよりなる混合界面活性剤である。 pH調整剤を用いない場合、酸性(25℃における5%水溶液のpHが3.5〜6.0となる緩衝性のある酸またはその塩であることが好ましく、pH4.0〜5.5であることがさらに好ましい)を示す界面活性剤を使用することができる。 酸性を示す界面活性剤として、特に限定するものではないが、例えば、リン酸エステル塩系界面活性剤(ポリオキシエチレンリン酸エステル、アルキルリン酸エステル塩など)、スルホン酸塩系界面活性剤(ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルまたはアルキルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩など)、硫酸エステル塩系界面活性剤(アルキルまたはアルキルベンゼン硫酸塩、オキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩など)、カルボン酸塩系界面活性剤(アルキルスルホコハク酸塩など)が挙げられる。また、市販されているショ糖脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、プロピレングリコール及びエタノールよりなる混合界面活性剤[ショクセンSE(三菱化学フーズ社製)]を使用することもできる。〔実施態様3〕 本実施形態の皮膚疾患治療薬は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤並びに高吸水性樹脂を含有する(ゲル状組成物)。 例えば、高吸水性樹脂はデンプン系吸水性樹脂、セルロース系吸水性樹脂または合成ポリマー系吸水性樹脂であり、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムであり、pH調整剤はリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物である。 溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤を含有する二酸化塩素液剤を高吸水性樹脂と混合してゲル状組成物とすることができる。 高吸水性樹脂としては、デンプン系吸水性樹脂(デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト共重合体などのグラフト化デンプン系高吸水性樹脂など)、セルロース系吸水性樹脂(セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系高吸水性樹脂、紙や布をリン酸エステル化したもの、布をカルボキシメチル化したものなど)、及び合成ポリマー系吸水性樹脂(架橋ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂、架橋ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート架橋体などのアクリル系高吸水性樹脂、架橋ポリエチレンオキシド系高吸水性樹脂など)が挙げられる。 市販されているものとしては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製、粉末)、サンウエット(三洋化成社製、粉末)]、架橋ポリアクリル酸系樹脂[アラソーブ(荒川化学社製、粉末)、ワンダーゲル(花王社製、粉末)、アクアキープ(住友精化社製、粉末)、ダイアウエット(三菱油化社製、粉末)]、イソブチレン/マレイン酸系樹脂[KIゲル(クラレ社製、粉末)]、及び、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂[スミカゲル(住友化学社製、粉末)]などがあり、本発明を実施するにおいて、これらを使用することもできる。 高吸水性樹脂を混合してゲル状組成物とする場合は、例えば、実施態様1のように調整された二酸化塩素液剤50〜99重量%を高吸収性樹脂(粉末)1.0〜50重量%に添加し、これらを室温で十分に攪拌して製造する。このような「ゲル状組成物」は、例えば、少なくとも一方に開口部を有する容器(特開昭61−40803号公報)に充填して一般用途に供することができるが、合成繊維を構成繊維とする紙または不織布により形成された容器であって、該容器の周縁が合成繊維の熱融着または合成樹脂接着剤によりシールされた容器中に充填して一般用途に供することもできる。前記合成繊維は、例えばポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など従来公知の熱可塑性合成繊維である。このような合成繊維を構成繊維とする紙または不織布により形成された容器は、「ゲル状組成物」の付着による目詰まりを防止しつつ、「ゲル状組成物」から二酸化塩素を持続的に気化させることができる。〔実施態様4〕 本実施形態の皮膚疾患治療薬は、溶存二酸化塩素ガス及び亜塩素酸塩からなる二酸化塩素液剤並びに酸性を示す高吸水性樹脂を含有する(ゲル状組成物)。 例えば、酸性を示す高吸水性樹脂は部分ナトリウム塩架橋ポリアクリル酸系樹脂であり、亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムである。 pH調整剤を用いない場合には、酸性(25℃における5%水溶液のpHが3.5〜6.0となる緩衝性のある酸またはその塩であることが好ましく、pH4.0〜5.5であることがさらに好ましい)を示す高吸水性樹脂を使用し、この樹脂に溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩を含ませてゲル状組成物とすることができる。 このような酸性を示す高吸水性樹脂としては、市販されている部分ナトリウム塩架橋ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製)]が用いられるが、これによって限定されない。〔実施態様5〕 本実施形態の皮膚疾患治療薬は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤並びに泡剤を含有する(発泡性組成物)。 泡剤は、例えば界面活性剤及び泡安定剤で構成するか、界面活性剤・泡安定剤・エアゾール噴射剤で構成する。また、例えば、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムであり、pH調整剤はリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物である。 溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤を含有する二酸化塩素液剤を泡剤と混合して発泡性組成物とすることができる。 泡剤は、(1)界面活性剤及び泡安定剤で構成されるか、または(2)界面活性剤、泡安定剤及びエアゾール噴射剤で構成される。 界面活性剤は、例えば、(1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤、(2)脂肪酸第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、(3)カルボキシベタイン型両性界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等のノニオン系界面活性剤、(5)フッ素系界面活性剤、あるいは(6)サポニンなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 泡安定剤は、例えば、(7)上記アニオン系界面活性剤にモノまたはジエタノールアミンを添加したもの、(8)上記ノニオン系界面活性剤に長鎖アルコールまたはアルキルスルホキシドを添加したもの、或いは(9)流動パラフィンなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 エアゾール噴射剤は、例えば液化天然ガス(LPG)、液化ブタン、ジメチルエーテル等の低毒性性の高圧ガスなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 泡剤を含ませて発泡性組成物とする場合は、例えば密閉容器内において、実施態様1のように調整された二酸化塩素液剤1.0〜20重量%に発泡剤5.0〜20重量%及び界面活性剤60〜95重量%を添加し、これらを室温で十分に攪拌することにより製造される。このような「発泡性組成物」は、例えばトリガー式泡形成容器、ポンプ式泡形成容器等に封入して供される。〔適応対象となる皮膚疾患(細菌性皮膚疾患)〕 細菌性皮膚疾患の原因菌としては、例えば黄色ブドウ球菌、緑膿菌、連鎖球菌、淋菌、梅毒菌などが挙げられ、これら細菌によって引き起こされる次のような疾患の治療用として本発明の皮膚疾患治療薬を使用することができる。即ち、尋常性ざ瘡(ニキビ)、伝染性膿痂疹(とびひ)、褥瘡(とこずれ)、麦粒腫(ものもらい)、眼瞼縁炎、歯槽膿漏などの歯周病、蜂窩織炎(ほうかしきえん)、毛包炎、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群などが挙げられる。また、外傷、熱傷および手術創などの二次感染の予防にも使用することができる。〔適応対象となる皮膚疾患(真菌性皮膚疾患)〕 真菌性皮膚疾患の原因菌としては、例えば白癬菌、マラセチア菌、カンジダなどが挙げられ、これら真菌によって引き起こされる次のような疾患の治療用として本発明の皮膚疾患治療薬を使用することができる。即ち、足部白癬、体部白癬、股部白癬、爪白癬、その他の白癬菌感染症、皮膚カンジダ症、外陰カンジダ症のようなカンジダ症、指間びらん症、乳児寄生菌性紅斑、爪囲炎、でん風、脂漏性皮膚炎などが挙げられる。〔適応対象となる皮膚疾患(ウイルス性皮膚疾患)〕 ウイルス性皮膚疾患の原因菌としては、例えば水痘・帯状疱疹ウイルス、単純性疱疹ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭種ウイルス)、ボックスウイルス、コクサッキーウイルスなどが挙げられ、これらウイルスによって引き起こされる次のような疾患の治療用として本発明の皮膚疾患治療薬を使用することができる。即ち、尖圭コンジローマ、手足口病、子宮頸部炎、子宮頸部悪性腺腫、咽頭乳頭腫症、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)、急性出血性結膜炎、口唇ヘルペス、顔面ヘルペス、カポジ水痘様発疹症、臀部ヘルペス、性器ヘルペス、ヘルペス性ひょう疽、多型滲出性紅斑、水痘、帯状疱疹、口腔粘膜炎、口内炎などが挙げられる。〔適用部位〕 本発明の皮膚疾患治療薬が使用できる身体の部位としては、例えば頭皮、顔、目(眼瞼、結膜または角膜)、耳(外耳、外耳道など)、鼻(鼻孔、鼻粘膜など)、口唇、口腔内、咽頭、喉頭、声門、気道粘膜、食道、胃、十二指腸、小腸、結腸、舌、歯肉(歯茎)、首、胴体部分や手足(手指・足指の間隙を含む)、陰茎、包皮陰部、外陰、膣、子宮頚部、子宮内膜、肛門、直腸、爪などが挙げられる。本発明の皮膚疾患治療薬は、粘膜にも好適に使用可能である。 また、人体のみならず、犬や猫などのペットや、家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジなど)の皮膚や皮膚粘膜にも使用することができる。〔使用形態(剤形)・使用量〕 本発明の皮膚疾患治療薬は、その剤形として液剤が好ましいが、これに限定されるものではなく、二酸化塩素液剤を従来公知の基材に含ませて、例えばクリーム状、ゲル状、ゼリー状、乳液状、ペースト状、泡状などの形態に調製したもの(例えば、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、噴霧剤、リニメント剤等)や、前記の形態に調製したものを用いたハップ剤、プラスター剤、テープ剤とすることができる。 なお、前記基材としては薬学的に許容されるものであれば特に限定はなく、ミツロウ、ホホバ油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、大豆油、アボカド油、椿油、落花生油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの油脂類、白色ワセリン、流動パラフィン、シリコーン油、揮発性シリコーン油、ペトロラタム等の鉱油、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、トリエタノールアミン、水などが挙げられる。 また、吸水性を保有するものに二酸化塩素液剤を含ませて、外耳や鼻孔、膣などに使用することもできる。 また、体内における粘膜、例えば消化管粘膜(胃や腸の粘膜)や子宮内膜、気管支粘膜などの患部に関しては、従来公知の内視鏡や、二酸化塩素液剤が封入されたタイムリリースカプセルを使用して直接、本発明の皮膚疾患治療薬を感染患部に投与することもできる。 本発明の皮膚疾患治療薬は、その形態に応じ、慣用的に用いられる製造方法(例えば、日本薬局方などに記載される通常の方法)に従って調製することができ、製造された皮膚疾患治療薬を、皮膚患部に塗布、噴霧、貼付または挿入して使用することができる。 その使用量は、患部の症状の程度や大きさ、疾患の種類等によって異なるので一概には言えないが、通常、二酸化塩素濃度として0.01ppm〜500ppm、好ましくは0.1ppm〜200ppm含む製剤を、1日あたり1回もしくは2〜5回適量使用する。[実施例]〔二酸化塩素液剤の調製例(1)〕 次のようにして二酸化塩素液剤を調製した。すなわち、二酸化塩素ガス2000ppm溶存水250mlに水680mlと亜塩素酸ナトリウム25%溶液80mlを加えて撹拌し、次にこの溶液のpHが5.5〜6.0となる量のリン酸二水素ナトリウム(25℃における5%水溶液のpHは4.1〜4.5)を加えて撹拌して、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムからなる二酸化塩素液剤1000mlを得た。〔二酸化塩素液剤の調製例(2)〕 リン酸二水素ナトリウムの代わりに有機酸であるクエン酸(25℃における5%水溶液のpHは1.8〜2.2)を使用したという以外は調整例1と同様にして二酸化塩素液剤を調製した。〔保存安定化試験〕 調整例1及び調製例2で得た二酸塩素液剤を従来公知の方法を用いて希釈し、100ppmと500ppmの濃度をもつ二酸化塩素液剤とした。これら液剤の保存安定性を調べるべく、二酸化塩素濃度(ppm)の経時的変化を測定した。なお、安定化試験は加速試験(保存温度:54℃、14日間が常温の1年に相当する)により行った。保存安定性の結果を表1,2に示す(反応当量以上のリン酸二水素ナトリウムを加えた場合と、反応当量以上のクエン酸を加えた場合の比較データを示す)。 表1,2から明らかなように、pH調整剤として、25℃における5%水溶液のpHが2.5〜6.8となるリン酸二水素ナトリウムを使用することにより、二酸化塩素液剤の保存安定性が飛躍的に向上することがわかる。〔臨床試験および抗ウイルス試験に用いた二酸化塩素液剤〕 後述する各臨床試験および抗ウイルス試験に供する二酸化塩素液剤は、公知の方法により各濃度に希釈したのち、合成樹脂製の容器に8ヶ月間放置したものを使用した。すなわち、調製例1及び調製例2で得た二酸塩素液剤を希釈後、直径2cmの開口部を持つ合成樹脂製の容器に入れ、蓋を閉じた状態で8ヶ月間、室温にて放置した。[実施例1]ウイルスによる皮膚疾患(尖圭コンジローム)の治療 尖圭コンジローム(Condyloma acuminatum)(原因ウイルスは、ヒトパピローマウイルス)に感染したと診断された男性(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた男性)の陰茎に対し、医師の監督下で処置した。すなわち、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度100ppm)を陰茎患部に1日3回、適量を塗布した。塗布した1日後、患部における白色硬結が赤色硬結に変化し、2日後には縮小し、3日後にはカサブタ様になり消失した。[実施例2]ウイルスによる皮膚疾患(子宮頸部炎)の治療 帯下を主訴に来院した女性(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた女性)を医師が診察した。子宮頸部は発赤し、びらんを認め、一部小隆起病変を認めた。また、初診時(1月20日)のヒトパピローマウイルス(HPV)のウイルス検査(PCR正常値0−1pg/ml)の数値が301.59pg/mlであったことから、医師は、疾患名をヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸部炎と診断した。 この女性に対する1回目の治療を1月25日に行なった。すなわち、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度:150ppm)の適量を約20×20cmの布(ガーゼ)に含ませ、これをタンポン状にして膣内に挿入し、約30分後に取り除いた。同様の治療を1月27日(2回目治療)および1月30日(3回目治療)にも行なった。その結果、子宮頸部の発赤は消失し、自覚症状は軽快した。また、HPVウイルス検査の数値は0.41pg/mlとなり、顕著な治療効果が確認された。[実施例3]ウイルスによる皮膚疾患(子宮頸部炎)の治療 来院した女性(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた25歳の女性)を医師が診察した結果、図1に示すように子宮頸部および膣前庭部に1mm前後の軽度びらん、及び発赤を伴う小隆起性病変を多数認めた。また、初診時(2月13日)にヒトパピローマウイルス(HPV)のウイルス検査を実施したところ33pg/mlであったことから、医師は疾患名をヒトパピローマウイルスによる子宮頸部炎と診断した。 1回目の治療を同日(2月13日)に行なった。すなわち、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度:150ppm)の適量を約20×20cmの布(ガーゼ)に含ませ、これをタンポン状にして膣内に挿入し、約30分後に取り除いた。同様の治療を2月15日(2回目治療)および2月17日(3回目治療)にも行なった。なお、3回目の治療を行う前の患部観察において、図2に示すように病変消失を確認した。 合計3回の治療を行ったあと、HPVウイルス検査を2月19日に行った結果、その数値は3.9pg/mlであった。またその時の病変は、図3に示すように一部粘膜面に凹凸を認めるものの、5日後の2月24日には、図4に示すように軽快していた。[実施例4]ウイルスによる皮膚疾患(子宮頸部悪性腺腫)の治療 来院した女性(45歳)を医師が膣鏡検査を行った結果、図5に示すように子宮頸部にびらんと出血を認めた(1月19日)。また同時にHPVウイルス検査を実施したところ、2353.55pg/mlと高値を示した。これにより医師は疾患名を子宮頸部悪性腺腫のステージ1と診断した。 この女性に対し主治医は、遺伝子組み換え型ヒト・インターフェロン・アルファ−2b(rIFN α−2b)膣用発泡性カプセル製剤(recombinant human interferon α-2b vaginal effervescent capsules)を投与して治療を試みたが効果は得られず、女性は別の病院に転院した。 転院先の病院の医師は、この女性(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた女性)に対し、2月26日までに3回にわたって次のような治療を試みた。すなわち、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度:150ppm)の適量を約20×20cmの布(ガーゼ)に含ませ、これをタンポン状にして膣内に挿入し、約30分後に取り除いた。 その結果、図6に示すように出血は止まり、子宮頸部の腫大も軽快し、自覚症状も改善した。またHPVウイルス検査の数値は1336.01pg/mlまで大幅に低下した。[実施例5]抗ウイルス試験(コクサッキーウイルスB5) コクサッキーウイルスB5(手足口病の原因ウイルス)に調製例1および調製例2で得た二酸化塩素液剤を加え、各感作時間経過後、チオ硫酸ナトリウム溶液にて薬剤を中和し、10倍希釈列を作成した。一方、マイクロプレート(96穴)にて、37℃、5%CO2の条件下で宿主細胞(LLCMK2細胞)を3日間培養した。この宿主細胞に前記の10倍希釈列液を接種し、のち5日間培養した。なお、比較対照用として、安定化二酸化塩素水溶液(亜塩素酸イオン水溶液)(有効二酸化塩素濃度10ppm)および次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度10ppm)を用いて同様の試験を行った。 ウイルスによる細胞変性効果(CPE)を指標としてTCID50(50% Tissue Culture Infective Dose)(log10)を算出し、各二酸化塩素液剤の抗ウイルス活性効果を評価した。ウイルス対照は液剤の代わりに蒸留水で希釈を行ったものを使用した。結果を図7(a),(b)に示す。図7からも明らかなように、本発明の皮膚疾患治療薬は、コクサッキーウイルスB5(手足口病)に対して顕著な不活性化効果を示し、濃度10ppm、感作時間1分間で次亜塩素酸ナトリウムより32倍、2分間で100倍の効果があった。[実施例6]抗真菌試験(白癬菌) 足部白癬(汗疱状白癬)と診断された患者20名(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた男女20名)に対し、医師は、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度:150ppm)が入ったスプレー容器を渡し、自宅で毎日朝と夜の1日2回、足の患部に向けて適量をスプレーして治療することを指示した。治療開始から2〜3日後、患者20名中15名において患部の痒みが消失し、1週間後の医師の診察において、18名の患部において小水泡が消えていた。[実施例7]抗細菌試験(ブドウ球菌) 細菌感染により膿胞が認められる尋常性ざ瘡の患者20名(本試験の目的を予め説明し、同意が得られた男女20名)に対し、医師は、調製例1で得られた二酸化塩素液剤(希釈時の二酸化塩素濃度:150ppm)が入った容器を渡し、自宅で毎日朝と夜の1日2回、これを市販の滅菌ガーゼに含ませ、毎日3分間程度、顔の患部に塗布するように指示した。1週間後の医師の診察において、患者20名中17名の患部において膿胞サイズが小さくなっていることを確認することができ、また新たな膿胞が発生した患者はいなかった。[実施例8]アデノウイルス感染症治療薬の可能性(1) 本実施例では、濃度10ppm以上の二酸化塩素液剤が、流行性角結膜炎などを発症するアデノウイルスを不活化し、かつこの二酸化塩素液剤は250ppmの濃度でも眼球に対して刺激を与えない旨を示したデータを開示する。 従って、少なくとも10〜250ppmの濃度をもつ二酸化塩素液剤はヒトにおける眼球結膜のアデノウイルス感染症(流行性角結膜炎)の治療薬として有効に使用することができる可能性がある。また、このように眼球粘膜の疾患に対して効果的、かつ安全に使用することができることから、少なくとも眼球結膜より薬物刺激が弱く出る粘膜部位(たとえば口腔粘膜など)における疾患の治療薬にも使用可能であることがわかる。以下、詳述する。(抗アデノウイルス試験) 抗アデノウイルス試験の実験方法は以下の通りである。 1.供試薬剤(1)調製例1で得られた二酸化塩素液剤(クレベリン(登録商標、大幸薬品株式会社製、二酸化塩素濃度500ppm)を使用しても構わない)(2)次亜塩素酸ナトリウム:半井化学株式会社製、特級;有効塩素濃度(122000ppm)(3)安定化二酸化塩素水溶液(亜塩素酸イオン水溶液)(キンダイ・ケミカル社製の「スプレッティ」(商品名))(濃度4988ppm) 2.ウイルス BK細胞(ウシ腎臓初代培養細胞)で培養した500mlのウイルス(イヌアデノウイルス2型 ワクチン株)培養液を3000rpmで2時間遠心後、沈渣に5mlの蒸留水を加えてウイルス浮遊液を調整した。ウイルス浮遊液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、使用時まで−80℃に凍結保存した。 3.薬剤濃度の調整 各種薬剤を滅菌蒸留水で希釈し、1250ppm、125ppm、12.5ppm、1.25ppm、0.125ppmおよび0.0125ppmの希釈列を調整した。 4.中和剤 薬剤中の二酸化塩素を中和するため、イーグルMEMを用いて0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液を調整し、0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌を行った。 5.ウイルスの薬剤処理 各濃度の薬剤(240μl)にウイルス(60μl)を加えて攪拌し、ウイルスと薬剤を15秒、30秒、60秒、120秒および180秒間感作した後、それぞれの反応液から40μlのウイルスを0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液(360μl)に加えて二酸化塩素を中和した。ウイルス対照は薬剤の代わりに蒸留水で希釈を行ったものを使用した。 6.薬剤処理ウイルス液の希釈 薬剤処理ウイルス液および蒸留水で希釈した対照ウイルス液を0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液で中和した後、中和ウイルス(30μl)をイーグルMEM(270μl)で希釈し、処理ウイルスの10倍希釈列を作成した。 7.ウイルスの感染価(TCID50)の測定 96wellのマイクロプレートにBK細胞(50μl/well)、A549細胞(50μl/well)およびVero細胞(50μl/well)を2日間培養後、希釈したウイルスを接種(50μl/well、4well/dilution)し、1時間吸着を行った後、4%牛胎児血清添加イーグルMEMを添加(50μl/well)した。37℃のCO2孵卵器で5から8日間培養を行い、CPEの観察を行った。TCID50の算出はKerberの公式(数1)から算出した。 結果を表3に示す。表3から、アデノウイルスが二酸化塩素10ppmで失活することが分かる。(眼球への刺激に関する試験) 眼球への刺激に関する試験の実験方法は以下の通りである。 1.供試薬剤(被験物質) 調製例1で得られた二酸化塩素液剤(二酸化塩素濃度250ppm)。 2.試験系(1)使用動物 雄性日本白色種ウサギ(コンベンショナル)を8匹(購入時体重:2.10〜2.30kg)購入し、8日間の予備飼育を行った。このうち、より健康で、特に眼に異常のない動物を6匹試験に供した。(2)識別方法 購入時に油性黒フェルトペンで右耳に入荷動物番号を、また群分けには油性赤フェルトペンで左耳に試験動物番号を記した。さらに、各ケージおよび飼育棚にもラベル表示を行って、その場所に動物を収納した。(3)群分け 群分けに当たっては、被験物質投与前日にウサギの両眼が肉眼的に異常のないことを確認した。さらに、フルオレセインナトリウムの2%水溶液0.1mlを点眼して直ちに20mlの注射用蒸留水で洗浄し、スリットランプ(株式会社ナイツ製)を用いて角膜に損傷のないことを確認した。 また、被験物質投与日に全動物の体重を測定し、体重が2.60〜2.75kgの範囲内の健康なウサギを用い、非洗眼と洗眼群で平均体重の差が小さくなるように群分けした。(4)飼育管理 動物は個別にアルミニウム製ブランケットケージ(幅320×奥550×高さ350mm)に収納し、温度22±3℃、湿度55±15%、換気回数10回以上/時間、人工照明8時間/日(午前9時〜午後5時)のウサギ飼育室(中動物飼育室2)で飼育し、毎日、飼育室・飼育棚を清掃した後、ネオクロールクリーン(四国化成工業社製)で床を消毒した。 飼料は市販の固形飼料RC4(オリエンタル酵母工業社製)を、飲料水は水道水(千早赤坂村村営水道水)を自動給水装置で自由に摂取させた。 3.試験方法(1)投与方法 ウサギ6匹を3匹ずつ2群に分け、一方を洗眼群、他方を非洗眼群とした。各動物の右眼に被験物質0.1mlを下眼瞼を袋状にした状態で単回投与し、眼球全体に行きわたらせるため上下眼瞼を閉じさせて約1秒間そのまま保持した。なお、各動物の左眼は無処理対照とした。非洗眼群はそのまま洗眼せずに、一方、洗眼群は1分後に注射用蒸留水30mlで洗眼して、いずれも1時間ステンレス製の首かせをしてケージに収納した。(2)観察および測定 観察期間中、毎日、動物の一般状態を観察し、被験物質投与日(0日)および観察終了日(7日後)に体重を測定した。 眼の状態は、被験物質投与1時間、24時間、72時間および4日、7日後に、非洗眼および洗眼群の右眼(被験物質投与)および左眼(無処理対照)について、表4の評価基準(Draize法)に基づいて、結膜(浮腫、分泌物、発赤)、角膜(混濁の程度、混濁の面積)、虹彩(程度)の状態を採点し、評価した。 4.試験結果 観察期間中、全例のウサギの一般状態に異常は認められず、体重も順調な増加を示した。 非洗眼群(試験動物番号1〜3)と洗眼群(試験動物番号4〜6)の平均体重の比較においてもほぼ同様の増加を示した。被験物質をウサギの右眼に0.1ml単回投与したとき、非洗眼群において、投与1時間後に全例(3例)の結膜に軽度の分泌物と軽度の発赤が認められたが、眼瞼浮腫は認められなかった。これらの症状は時間の経過とともに軽減し、24時間後には1例で消失し、48時間後には残りの2例でも消失した。なお、角膜および虹彩には観察期間中、異常は認められなかった。 尚、結果については、表5〜7に試験動物番号1〜3、表8,9に試験動物番号5,6の評価を示し、表10に試験動物番号1〜6の総合評価を示した。[実施例9]アデノウイルス感染症治療薬の可能性(2) イヌアデノウイルス2型をヒトアデノウイルス2型に変え、実施例8と同様の実験を行った。各薬剤の抗ウイルス活性を表11に示す。 (結論) 6匹のウサギを用いて被験物質を右眼に単回投与し、1分後に注射用蒸留水で洗眼する群(3匹)と洗眼しない群(3匹)とに分け、被験物質の眼刺激性について7日間にわたり観察した。左眼は無処理対照とした。非洗眼群において投与1時間後に全例の結膜に軽度の分泌物および軽度の発赤が認められたが、これらの症状は時間の経過とともに軽減し、48時間後には全例で消失した。一方、洗眼群においては投与1時間後に全例の結膜に軽度の発赤が認められたが、24時間後には全例で消失した。両群とも角膜および虹彩には異常が認められなかった。このように、被験物質(二酸化塩素液剤)の眼に対する刺激性は洗眼により軽減した。 上記したデータにより、少なくとも10〜250ppmの濃度をもつ二酸化塩素液剤はヒトにおける眼球結膜のアデノウイルス感染症(流行性角結膜炎)の治療薬として有効に使用することができる可能性があることがわかる。また、このように眼球粘膜の疾患治療薬として効果的、かつ安全に使用することができることから、少なくとも眼球結膜より薬物刺激が弱く出る粘膜部位(たとえば口腔粘膜など)における疾患の治療薬にも使用可能であることがわかる。[実施例10]ヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス活性 ヘルペスウイルス1型(HSV−1,Herpes simplex virus type1)(主に、口唇ヘルペスを生じ、ヘルペス口内炎、ヘルペス角膜炎、単純ヘルペス脳炎の原因となるウイルス)に対する抗ウイルス活性を測定した。実験方法は以下の通りである。 1.供試薬剤(1)調製例1で得られた二酸化塩素液剤(クレベリン(登録商標、大幸薬品株式会社製、二酸化塩素濃度500ppm)を使用しても構わない)(2)次亜塩素酸ナトリウム:半井化学株式会社製、特級;有効塩素濃度(122000ppm)(3)安定化二酸化塩素水溶液(亜塩素酸イオン水溶液)(キンダイ・ケミカル社製の「スプレッティ」(商品名))(濃度4988ppm)2.ウイルス CRFK細胞(ネコ腎臓細胞)で培養した500mlのウイルス(ヘルペスウイルス1型 kos)培養液を3000rpmで3時間遠心後、沈渣に4mlの蒸留水を加えてウイルス浮遊液を調整した。ウイルス浮遊液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、使用時まで−80℃に凍結保存した。3.薬剤濃度の調整 各種薬剤を滅菌蒸留水で希釈し、1250ppm、125ppm、12.5ppm、1.25ppmおよび0.125ppmの希釈列を調整した。4.中和剤 薬剤中の二酸化塩素を中和するため、イーグルMEMを用いて0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液を調整し、0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌を行った。5.ウイルスの薬剤処理 各濃度の薬剤(240μl)にウイルス(60μl)を加えて攪拌し、ウイルスと薬剤を15秒、30秒、60秒、120秒および180秒間感作した後、それぞれの反応液から40μlのウイルスを0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液(360μl)に加えて二酸化塩素を中和した。ウイルス対照は薬剤の代わりに蒸留水で希釈を行ったものを使用した。6.薬剤処理ウイルス液の希釈 薬剤処理ウイルス液および蒸留水で希釈した対照ウイルス液を0.0025Mチオ硫酸ナトリウム溶液で中和した後、中和ウイルス(100μl)をイーグルMEM(900μl)で希釈し、処理ウイルスの10倍希釈列を作成した。7.ウイルスの感染価(TCID50)の測定 96wellのマイクロプレートにCRFK細胞(50μl/well)を3日間培養後、希釈したウイルスを接種(50μl/well、4well/dilution)した。37℃のCO2孵卵器で5日間培養を行い、CPEの観察を行った。TCID50の算出は、上述した数1(Kerberの公式)から算出した。 結果を表12に示す。(結果)1.二酸化塩素のヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス活性 精製したヘルペスウイルス1型に各種濃度の二酸化塩素(最終濃度0.01〜10ppm)を15,30,60,120および180秒間感作後、ウイルス感染価を測定することにより、二酸化塩素のヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス活性を測定した。10ppmの二酸化塩素でウイルスを感作した場合、ウイルス感染価は15秒以内に3.5logの低下が認められ、30秒以上では4.5log以上のウイルス感染価の低下が認められた。しかし、1ppmでは30秒の感作で1.5logの低下が認められたが、180秒の感作でも2logの低下であった。2.次亜塩素酸ナトリウムのヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス活性 10ppmの次亜塩素酸ナトリウムでウイルスを感作した場合、二酸化塩素に比べ不活化されにくく、感染価は180秒の感作でも1log以下の低下であった。1ppm以下で感作した場合には、明らかな感染価の低下は認められなかった。3.安定化二酸化塩素水溶液(亜塩素酸イオン水溶液)のヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス活性 10ppmの安定化二酸化塩素水溶液で180秒間感作を行った場合でもウイルス感染価の低下は認められなかった。(考察) 大型ウイルスでDNAの遺伝子を持ち、エンベロプを有するヘルペスウイルス1型ウイルスに対する二酸化塩素系の消毒剤の二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウムおよび安定化二酸化塩素水溶液(亜塩素酸イオン水溶液)の抗ウイルス活性を測定した。 ヘルペスウイルス1型は、口唇ヘルペス、ヘルペス性口内炎、ヘルペス性角膜炎、カポジ水痘様発疹症、ヘルペス性脳炎などの原因ウイルスとして重要なウイルスである。 その結果、二酸化塩素は10ppmの濃度でウイルスと15秒間の感作を行うことで、感染価が3.0log以上低下したが、次亜塩素酸ナトリウムおよび安定化二酸化塩素水溶液では明らかな感染価の低下は認められなかった。[実施例11]ヘルペスウイルス2型に対する抗ウイルス活性 ヘルペスウイルス2型(HSV−2,Herpes simplex virus type2)(主に、性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎、ヘルペス脊髄炎の原因となるウイルス)に対する抗ウイルス活性を測定した。実験は、ヘルペスウイルス1型をヘルペスウイルス2型(標準株;UF strain)に変えたという以外は、実施例10と同様にして行った。 結果を表13に示す。 (総括) 本発明の皮膚疾患治療薬は、長期保存後であっても広範囲の病原性微生物による皮膚疾患に対して効果がることがわかる。しかも、低濃度で有効なため刺激性が少なく、人体、特に皮膚粘膜への悪影響も最小限に抑えることができ、皮膚疾患治療薬として臨床的にも幅広く使用することができる。 さらに以下のように付け加える。すなわち、本発明の皮膚疾患治療薬において、溶存二酸化塩素濃度を長期間一定に保持でき、前記皮膚疾患治療薬から二酸化塩素が少しずつガスとして放出され続けても、該皮膚疾患治療薬における二酸化塩素濃度を略一定の範囲内に保持させることができるといった優れた保存安定性が得られる。ここでいう「少しずつガスとして放出され続ける」なる意味は、例えば搬送中あるいは保存中、閉蓋していても自然に二酸化塩素がガスとして抜け出てしまうことを意味する。 緩衝性のある無機酸またはその塩(pH調製剤)として、リン酸またはその塩、好ましくはリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物を使用した場合にあっては、その他の無機酸(あるいはその塩)や有機酸を使用する場合と比べ、保存安定性が飛躍的に向上し(保存安定期間がさらに延長され)、また保存中における液性(pH)の経時的な揺れ(変動)も小さくなるといった効果を奏する。これにより、本発明の皮膚疾患治療薬を長期間(例えば1年〜3年)保存することを想定する場合、pH調製剤としてリン酸またはその塩、好ましくはリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物を使用し、亜塩素酸ナトリウムと組み合わせて組成物とすることが好ましい。リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物を選択し、これを亜塩素酸ナトリウムと組み合わせて用いることにより、保存安定性がさらに向上し、また保存中における二酸化塩素濃度の経時的な揺れがさらに小さくなる。すなわち、亜塩素酸ナトリウムが二酸化塩素に変わる反応の過剰な進行が極めて起こり難くなるため、自然分解や容器の蓋部分あるいは容器の壁面からの放散によって失われる二酸化塩素のみが亜塩素酸ナトリウム由来の亜塩素酸イオンから補充されるというガス平衡状態が保たれる。 このように、亜塩素酸ナトリウムの不要な消耗が抑制され、亜塩素酸ナトリウムが効率的に消費されるので、保存安定性がさらに向上し(延長され)、また保存中における二酸化塩素濃度の経時的な揺れ(変動)がさらに小さくなる(濃度の低下のみならず、濃度の上昇も抑制される)。 また、この皮膚疾患治療薬における、亜塩素酸ナトリウムから二酸化塩素を長期に亘って補給するメカニズムは、当該皮膚疾患治療薬を使用した皮膚や皮膚粘膜上でも発現する。これは、皮膚疾患治療薬の病原性不活性化作用が長く続き、より一層効果的に皮膚疾患を治療することができるといった優れた持続効果を患者にもたらす。 本発明は、病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚および粘膜における疾患の治療薬に利用できる。 病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚疾患および粘膜疾患の治療薬であって、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤であって、前記pH調整剤がリン酸またはその塩である二酸化塩素液剤(但し、亜塩素酸塩とは別に調製した二酸化塩素ガスを溶存させたものではないものを除く)を含有してなることを特徴とする感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 病原性微生物の感染により発症した感染部位の症状を改善すべく、前記感染部位に適用される皮膚疾患および粘膜疾患の治療薬であって、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤からなる二酸化塩素液剤であって、前記pH調整剤がリン酸またはその塩であり、前記溶存二酸化塩素ガスは、亜塩素酸塩とは別に調製した二酸化塩素ガスを溶存させたものである、二酸化塩素液剤を含有してなることを特徴とする感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記リン酸またはその塩が25℃における5%水溶液のpHが2.5〜6.8となる緩衝性のある酸またはその塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記pH調整剤がリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記微生物が細菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記微生物が真菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記微生物がウイルスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記ウイルスが、ヒトパピローマウイルスであることを特徴とする請求項8に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記ウイルスが、アデノウイルスであることを特徴とする請求項8に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。 前記ウイルスが、ヘルペスウイルスであることを特徴とする請求項8に記載の感染性皮膚および粘膜疾患治療薬。


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