タイトル: | 特許公報(B2)_グルクロン酸転移酵素測定用蛍光プローブ |
出願番号: | 2009501231 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12Q 1/48,G01N 33/15,G01N 21/78 |
長野 哲雄 浦野 泰照 富安 里江 JP 5299920 特許公報(B2) 20130628 2009501231 20080226 グルクロン酸転移酵素測定用蛍光プローブ 国立大学法人 東京大学 504137912 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 長野 哲雄 浦野 泰照 富安 里江 US 60/903,534 20070227 20130925 C12Q 1/48 20060101AFI20130905BHJP G01N 33/15 20060101ALI20130905BHJP G01N 21/78 20060101ALI20130905BHJP JPC12Q1/48 ZG01N33/15 ZG01N21/78 C C12Q 1/00−1/70 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) WPI 特表2006−519013(JP,A) J. AM. CHEM. SOC.,2005年,Vol.127,p.4888-4894 J. AM. CHEM. SOC.,2004年,Vol.126,p.14079-14085 J. AM. CHEM. SOC.,2001年,Vol.123,p.2530-2536 現代化学,2002年,12月号(No.381),p.44-50 7 JP2008053218 20080226 WO2008105376 20080904 15 20110214 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの) 北村 悠美子 本発明はグルクロン酸転移酵素測定用の蛍光プローブに関する。 様々な薬剤の薬物代謝酵素に対する反応性や阻害活性を網羅的に測定することは、薬剤投与による副作用発現や薬物間相互作用などを予測する上で非常に重要である。例えば、シトクロムP450は代表的な薬物代謝酵素であり、シトクロムP450に対して阻害作用を有する薬剤は副作用発現の可能性を有することから、各種薬剤のシトクロムP450に対する阻害活性を効率的に測定できるハイ・スループット・スクリーニング(HTS)系が開発されてきた。一方、薬剤の代謝過程では、抱合化酵素であるグルクロン酸転移酵素(UDP-g1ucuronosyltransferase;以下、本明細書において「UGT」と略す場合がある)により解毒されるものもあり、シトクロムP450以外の薬物代謝酵素が、より重要な役割を果たすことも少なくない。 UGTは第II相抱合反応酵素の一種であり、ビリルビンやステロイドホルモンなどの内因性物質と、薬物や発癌性物質、環境汚染物質などの外因性物質を基質としており、主な薬物の代謝の約15%を担っている。そして、UGTアイソザイムの遺伝子多型に基づく代謝活性変化が原因でアセトアミノフェンやラモトリギン、ロラゼパムなどの薬物の消失動態を変化させる可能性が報告されてきた。その中で最も明確にUGT遺伝子多型の影響が示された研究として、転移性大腸癌などの固形腫瘍の治療に用いられている塩酸イリノテカン(トポイソメラーゼI阻害剤)の活性代謝物SN-38の代謝解毒を担うUGTアイソザイムの一種UGT1A1の遺伝子多型に関する研究が挙げられる(Isomura, M., et a1., Gan To Kagaku Ryoho., 32, 1908, 2005)。 プロドラッグである塩酸イリノテカンは、体内でカルボキシエステラーゼによって活性型のSN-38に変換された後、さらにSN-38はUGT1A1によるグルクロン酸抱合を受けて不活性型へと解毒化されるが、UGT1A1の低活性患者では活性型から不活性型への移行が悪くSN-38が長時間体内に貯留し、そのため副作用が発生する危険性が高くなる。また、この結果は、塩酸イリノテカンなどUGTにより解毒される薬剤を投与する場合、他の併用薬剤によるUGT1A1阻害により重篤な副作用が発現する可能性も示唆している。従って、近年、薬物代謝酵素としてのUGTが注目されており、特にUGT1A1アイソザイムに対する関心が高い。 このような観点から、薬剤開発候補のスクリーニングにおいて、副作用発現の予測のために候補化合物のUGT阻害作用を調べる必要があるが、現在利用可能な試験方法はHPLCなどの精製装置を用いる定量分析法であり、煩雑で時間がかかるという問題がある。このため、簡便かつ短時間に多数の被検化合物についてUGT阻害活性を測定できるHTS系の開発が期待されている。特にUGT活性を高感度に測定することが可能な蛍光プローブを用いて、簡便かつ高速にUGT阻害活性を測定できるHTS系が切望されている。UGT活性を蛍光で検出するためのプローブとして、近年、クマリン骨格を持つスコポレチンが見出された(http://www.bdbiosciences.com/discovery_1abware/gentest/products/pdf/)。しかしながら、このプローブは300nm付近の励起光により蛍光を発する短波長励起型プローブであることから、細胞内のバックグラウンド蛍光による影響を受けやすく細胞や組織を用いた試験に適用できないという問題を有しており、またモル吸光係数の値が小さく感度が低いという問題も有している。 本発明の課題はグルクロン酸転移酵素(UGT)活性を蛍光により測定するための手段を提供することにある。より具体的には、UGT活性を高感度に測定可能な蛍光プローブを提供することが本発明の課題である。 フルオレセインは水中において優れた蛍光特性を有する蛍光性化合物であり、多くの蛍光プローブの母核として利用されている蛍光性化合物である。本発明者らは、UGT活性測定用蛍光プローブの母核として、クマリン骨格に代えてフルオレセイン骨格を利用してUGT活性測定用蛍光プローブを提供することができないかと考え鋭意研究を行ったが、フルオレセイン自体はイン・ビトロにおいてUGTとの反応性に乏しく、UGT活性測定用蛍光プローブとしての利用は不可能であるとの結論に至った。本発明者らはさらに研究を行ったところ、驚くべきことに、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をエステル化した誘導体や、該カルボキシ基をアミノ基に置き換えそれをアミド化した誘導体類がUGTに対して反応性が向上することを見出した。また、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を置換した他のフルオレセイン誘導体も、同様にUGTに対する反応性を有していることを見出し、フルオレセインにおいてUGTとの反応がフルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基により阻害されているとの結論を得た。本発明は上記の知見を基にして完成された。 すなわち、本発明により、グルクロン酸転移酵素測定用蛍光プローブであって、フルオレセイン誘導体[ただし、該フルオレセイン誘導体は、フルオレセインのベンゼン環における2位のカルボキシ基が他の一価の置換基(ただし該置換基はスルホ基以外の置換基であり、該置換基はカルボキシ基又はスルホ基を有することはない)で置換されており、該フルオレセイン誘導体はベンゼン環上の2位以外の位置に任意の置換基を有していてもよく、該フルオレセイン誘導体はフルオレセインの2位及び/又は7位にアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい]を含む蛍光プローブが提供される。 上記発明において、グルクロン酸転移酵素としては任意のアイソザイム又はそれらの任意の混合物を測定対象とすることができるが、UGT1A1が好ましい。 また、本発明により、グルクロン酸転移酵素活性の測定方法であって、グルクロン酸転移酵素と上記フルオレセイン誘導体とを反応させ、反応の前後における蛍光の変化を検出する工程を含む方法が提供される。 さらに、本発明により、薬物候補化合物のスクリーニング方法であって、被検化合物の存在下及び非存在下においてグルクロン酸転移酵素と上記フルオレセイン誘導体とを反応させ、反応の前後における蛍光の変化を検出する工程、及び被検化合物の存在下及び非存在下において検出されたそれぞれの蛍光の変化に違いが認められた場合には、該被検化合物がグルクロン酸転移酵素に対しての作用を有しており、薬物候補化合物としては不適であると判定する工程を含む方法が提供される。フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を他の置換基で置き換えたフルオレセイン誘導体とUGT1A1との反応性を蛍光法に基づいて測定した結果を示した図である。フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を他の置換基で置き換えたフルオレセイン誘導体とUGT1A1との反応性を吸光法に基づいて測定した結果を示した図である。フルオレセインの2位及び/又は7位にメトキシ基又は塩素原子を導入したフルオレセイン誘導体とUGT1A1との反応性を測定した結果を示した図である。(A)、(B)、及び(C)は、それぞれ例2に示した化合物群の結果を示す。蛍光増大型プローブとUGT1A1との反応性を測定した結果を示した図である。(A)は6-カルボキシフルオレセインジメチルエステル、(B)は5,6-ジカルボキシフルオレセイントリメチルエステルの結果を示す。本発明の蛍光プローブを用いてUGT1A1に対する阻害剤であるβ-エストラジオール又はクリシンによるUGT活性の阻害作用を測定した結果を示した図である。(A)はβ-エストラジオール、(B)はクリシンの結果を示す。 フルオレセインのベンゼン環における2位のカルボキシ基に置き換わる一価の置換基はスルホ基以外の置換基であり、該置換基はカルボキシ基又はスルホ基を有することはない。この一価の置換基としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、アロイルアミノ基、又はヘテロアロイルアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。 アルキル基としては、例えば、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのC1〜C6アルキル基などを用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピルメチル基などを挙げることができる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアルカノイル基など)のアルキル部分についても同様である)。 アルケニル基は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよく、1個又は2個の二重結合を含むことができる。例えばC2〜C6アルケニル基などが挙げられ、より具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基などを挙げることができる。 アルキニル基は直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、1個又は2個の三重結合を含むことができ、1個の三重結合と1個の二重結合を含んでいてもよい。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基などを挙げることができる。 アリール基としては単環性又は縮合多環性の芳香族炭化水素基を用いることができ、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ヘテロアリール基としては、環構成原子として1個又は2個以上のヘテロ原子を含む単環性又は縮合多環性の芳香族基を用いることができる。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、又はイオウ原子などが挙げられ、2個以上のヘテロ原子を含む場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。より具体的には、フリル基、チエニル基、ピロール基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピリミジル基などを挙げることができる。アリール基又はヘテロアリール基は部分飽和であってもよく、完全飽和であってもよい。アリール部分又はヘテロアリール部分を有する基(アロイル基やヘテロアロイル基など)のアリール部分又はヘテロアリール部分についても同様である。 上記フルオレセイン誘導体はベンゼン環上の2位以外の位置に任意の置換基を有していてもよい。このような置換基は2個以上存在していてもよく、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。隣接する2個の置換基が結合して環構造を形成していてもよい。 ベンゼン環上の2位以外の位置に存在可能な置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子(ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などが挙げられる)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。 上記フルオレセイン誘導体は、2位及び/又は7位にアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。アルコキシ基としてはメトキシ基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。 上記フルオレセイン誘導体のうち、フルオレセインのベンゼン環の2位カルボキシ基をアルキル基、好ましくはメチル基で置き換えたフルオレセイン誘導体;フルオレセインのベンゼン環の2位カルボキシ基をアルキル基、好ましくはメチル基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にアルコキシ基、好ましくはメトキシ基を導入したフルオレセイン誘導体;あるいは、これらのフルオレセイン誘導体の2位及び/又は7位、好ましくは2位及び7位にアルコキシ基、好ましくはメトキシ基を導入したフルオレセイン誘導体が好ましい。また、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を2-ナフトイルアミノ基で置き換えたフルオレセイン誘導体も好ましい。さらにフルオレセイン誘導体が、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をニトロ基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にメチル基を導入したフルオレセイン誘導体も好ましいが、これらに限定されることはない。 上記フルオレセイン誘導体は、置換基の種類に応じて塩を形成する場合もある。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。上記フルオレセイン誘導体の塩としては、生理学的に許容される塩が好ましい。具体的な塩の例としては、塩酸塩、硫酸塩、若しくは硝酸塩などの鉱酸塩、又は酒石酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、若しくは酢酸塩などの有機酸塩などの酸付加塩、あるいはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、若しくはカルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はメチルアミン塩、若しくはトリエチルアミン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。また、上記フルオレセイン誘導体又はその塩は、水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、それら任意の水和物又は溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。 上記のフルオレセイン誘導体のうちいくつかは公知化合物であり、また種々のフルオレセイン誘導体の製造方法が知られているので、当業者は上記のフルオレセイン誘導体を容易に製造することができる(J. Am. Chem. Soc., 127, pp.4888-4894, 2005; J. Am. Chem. Soc., 126, pp.14079-14085, 2004; J. Am. Chem. Soc., 123, pp.2530-2536, 2001)。 本発明のグルクロン酸転移酵素測定用プローブは上記フルオレセイン誘導体を含み、上記フルオレセイン誘導体がグルクロン酸転移酵素と反応して0-グリコシド体に変化することにより、反応の前後において蛍光特性又は吸光度に変化を生じることを特徴としている。典型的には、上記フルオレセイン誘導体がすでに蛍光を有する場合にはグルクロン酸転移酵素との反応後に実質的に蛍光が消失し、あるいは後述するようなPeT理論によって蛍光を適切に減弱させたフルオレセイン誘導体である場合には、反応後に実質的に蛍光を発するようになる。このような反応前後における上記フルオレセイン誘導体の蛍光特性の変化を検出することにより、グルクロン酸転移酵素の存在などを測定することができる。上記フルオレセイン誘導体がすでに蛍光を有しているか、あるいは実質的に無蛍光であるかは、本発明者らによりすでに提案されているPeT理論により容易に予測可能であり(J. Am. Chem. Soc., 126, pp.14079-14085, 2004; J. Am. Chem. Soc., 125, pp.8666r8671, 2003)、当業者は測定目的に応じて適宜所望のフルオレセイン誘導体を設計及び製造して本発明のグルクロン酸転移酵素測定用プローブとして利用することができる。本明細書において用いられる「測定」という用語については、定量及び定性を含めて最も広義に解釈する必要がある。また、本明細書において、本発明のグルクロン酸転移酵素測定用プローブを、総称して、あるいは蛍光測定用と吸光測定用プローブを代表させて「蛍光プローブ」ということがある。 本発明の蛍光プローブの使用方法は特に限定されず、従来公知の蛍光プローブと同様に用いることが可能である。通常は、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに上記フルオレセイン誘導体を溶解し、グルクロン酸転移酵素と反応させればよい。細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、蛍光スペクトルを測定することにより、細胞又は組織中のグルクロン酸転移酵素活性を測定することも可能である。本発明の蛍光プローブを適切な添加物と組み合わせて組成物の形態で用いてもよい。例えば、緩衝剤、溶解補助剤、pH調節剤などの添加物と組み合わせることができる。 本発明の蛍光プローブは、細胞や生体組織のバックグランド蛍光の影響が少ない480nm〜510nm付近に吸収極大波長を有し、480nm〜510nm付近の波長におけるモル吸光係数が大きいフルオレセイン誘導体を含み、高感度にグルクロン酸転移酵素活性を測定できることから、薬物候補化合物のスクリーニング方法に利用することができる。 グルクロン酸転移酵素に対して阻害作用や活性化作用など何らかの作用を有する被検化合物は薬物候補化合物としては一般的には不適である。本発明の蛍光プローブを用いることにより、多数の被検化合物をスクリーニングしてグルクロン酸転移酵素に対して作用を有する被検化合物を検出することができ、そのような被検化合物を薬物候補化合物として不適であると判定することができる。より具体的には、ヒトUGT発現ミクロゾーム(バキュロウイルス系)、コントロールキクロゾームなどを用い、被検化合物の存在下及び非存在下においてグルクロン酸転移酵素と上記フルオレセイン誘導体とを反応させて反応の前後における蛍光の変化を検出し、その結果、被検化合物の存在下及び非存在下において検出されたそれぞれの蛍光の変化に違いが認められた場合には、該被検化合物がグルクロン酸転移酵素に対しての作用を有しており、薬物候補化合物としては不適であると判定することができる。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。例1 以下のプロトコールによりフルオレセイン(化合物1)、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を他の置換基で置き換えたフルオレセイン誘導体(誘導体2〜16)及び従来のクマリン骨格化合物スコポレチン(化合物17)とUGT1A1との反応性を検討した。3000μLキュベット内において以下の組成で溶液を調整(全量3000μL)プローブ:フルオレセイン誘導体 (1μM or 10μM)MgC12 (8mM)アラメチシン(Alamethicin) (0.025mg/mL)UDP-グルクロン酸 (2mM)+0.1M Tris-HCI 緩衝液(pH7.5)で全量2940μL↓UGT1A1 ミクロゾーム溶液(5.0mg/mL)60μLを添加(最終濃度0.1mg/mL)↓攪拌又はピペッティングしながら蛍光又は吸光測定(37℃) 本実施例において、蛍光性化合物を基質として使用する場合は、フルオレセイン誘導体1μMを用いてキュベット内を攪拌子で攪拌しながら480nm〜510nmの励起光を照射して蛍光測定し、スコポレチンを使用する場合にはスコポレチン1μMを用いてキュベット内を攪拌子で攪拌しながら300nm付近の励起光を照射して蛍光測定し、蛍光強度の減少を反応の進行として観測した。また、ニトロ基などを有する弱蛍光性化合物を基質として使用する場合には、フルオレセイン誘導体10μMを用いてキュベット内をピペッティングしながら480nm〜510nmの吸光測定し、吸光度の減少を反応の進行として観察した。 下記のフルオレセイン誘導体類を基質として使用した(下記の式中、Meはメチル基を示す)。 結果を図1及び図2に示す。これらの結果から明らかなように、フルオレセイン自体(化合物1)はUGT1A1と全く無反応性であることが認められた。一方、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を他の置換基(水素原子、アルキル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基など)で置き換えたフルオレセイン誘導体(誘導体2〜16)はUGT1A1に対して反応性を有しており、反応が進行するにつれて蛍光あるいは吸光度に変化が生じることが確認された。なかでもフルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をメチル基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にメトキシ基を導入したフルオレセイ夢誘導体(誘導体11、以下「2-Me-4-OMe-TG」と呼ぶ)は蛍光減少速度が速く、かっ0.1%以下まで蛍光強度が低下するというUGT活性測定への使用に優れた性質を有していた。また、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を2-ナフトイルアミノ基で置き換えたフルオレセイン誘導体(誘導体9)も「2-Me-4-OMe-TG」と同様の性質を有していた。さらにフルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をニトロ基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にメチルを導入したフルオレセイン誘導体(誘導体15)は、「2-Me-4-OMe-TG」よりも吸光度の減少速度が速かった。一方、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をアミノ基で置き換えたフルオレセイン誘導体(誘導体6)もわずかではあるが反応性を有していた。例2 以下のプロトコールによりフルオレセインの2位及び/又は7位にメトキシ基又は塩素原子を導入したフルオレセイン誘導体(下記(A)、(B)、(C)に記載の化合物)とUGT1A1との反応性を検討した。結果を図3に示す。図3(C)にみるように、フルオレセインメチルエステル(誘導体4)に塩素原子を導入することにより蛍光減少速度が低下する傾向が認められたが、メトキシ基の導入により蛍光減少速度が高まることが確認された。これは図3(B)で2-MeTG(誘導体2)にメトキシ基を導入した場合でも同様であった。3000μL キュベット内において以下の組成で溶液を調製(全量3000μL)プローブ:(下記(A)、(B)、(C)に記載の化合物)(1μM)MgCl2(8mM)アラメチシン(Alamethicin)(0.025mg/mL)UDP-グルクロン酸 (2mM)+0.1M Tris-HCl 緩衝液(pH7.5)で全量2940μL↓UGT1A1 ミクロゾーム溶液 (5.0mg/mL)60μLを添加(最終濃度0.1mg/mL)↓攪拌しながら蛍光測定(37℃)例3 例1及び例2ではUGTとの反応により蛍光が減少する蛍光減少型のフルオレセイン誘導体が得られたので、UGTとの反応により蛍光が増大する蛍光増大型のフルオレセイン誘導体を提供すべく検討を行なった。フルオレセインの構造は、ベンゼン環部位とキサンテン環部位に機能的に分けて考えることができる。そのうち、ベンゼン環部位の置換基の適切な選択によりPeTを用いた蛍光制御が可能である(J. Am. Chem. Soc., 123, pp.2530-2536, 2001)。一方、キサンテン環部位のフェノール性ヒドロキシ基がフェノレート型からO-グリコシド型になることで電子供与能が低下することが知られている(J. Am. Chem. Soc., 127, pp.4888-4894, 2005)。このためベンゼン環部位の置換基を適切に選択することで、UGTとの反応前のフェノレート型ではPeTによる蛍光消光が起こり、UGTとの反応後の0-グリコシド型では発蛍光する蛍光増大型フルオレセイン誘導体の開発が可能であると考えられる(J. Am. Chem. Soc., 126, pp.14079-14085, 2004)。このような観点から6-カルボキシフルオレセインジメチルエステル及び5,6-ジカルボキシフルオレセイントリメチルエステルを蛍光増大(d-PeT)型のフルオレセイン誘導体として設計し、UGT1A1との反応性を確認した。結果を図4に示した。図4(A):6-カルボキシフルオレセインジメチルエステル、(B):5,6-ジカルボキシフルオレセイントリメチルエステルにみるように、反応時間の経過に伴う蛍光強度の上昇が観測され、UGT反応の進行を蛍光量の増加により検出可能な蛍光増大(d-PeT)型蛍光プローブとして機能することが示された。例4 本発明のフルオレセイン誘導体を用いて96穴マイクロプレート上でUGT阻害剤の阻害活性を蛍光検出できるかどうかを以下のプロトコールにより検証した。フルオレセイン誘導体として2-Me-4-OMe-TGを用い、UGT阻害剤としてβ-エストラジオール及びクリシンを用いた。96穴プレートウェル内において以下の組成で溶液を調製(全量160μL)プローブ:2-Me-4-OMe-TG (0.2μM)UGT阻害剤 (0、1、5、10、50、100μM)MgC12 (8mM)アラメチシン(Alamethicin) (0.025mg/mL)UDP-グルクロン酸 (2mM)+0.1M Tris-HCl 緩衝液 (pH7.5)で全量160μLに調整↓UGT1A1 又は コントロールミクロゾーム溶液 (0.5mg/mL)40μLを添加(最終濃度0.1mg/mL)コントロールミクロゾーム溶液は、UGT1A1を発現させていないミクロゾーム溶液をUGT阻害剤濃度0μMで使用した。↓180秒間振塗し、反応開始230秒後に蛍光測定(室温) 結果を図5に示す。UGT阻害剤の増加に伴い蛍光強度変化が減少して行く様子、すなわち反応の進行が阻害されていく様子が観察された。このことから、2-Me-4-OMe-TGを用いることによって96穴マイクロプレートなどを使用したHTS系を構築することが可能であることが示された。例5:化合物の合成 常法(J. Am. Chem. Soc., 126, pp.14079-14085, 2004; J. Am. Chem. Soc., 123, pp.2530-2536, 2001)に従って酸性条件下の縮合反応により2,7-ジメトキシフルオレセイン及びそのメチルエステル、並びに2,7-ジメトキシフルオレセイン誘導体を合成した。ここで2,7-ジメトキシフルオレセイン誘導体は2,7-ジヒドロキシフルオレセイン誘導体をヨウ化メチルによりメチル化することにより得た(下記スキーム中、Meはメチル基を示す)。 本発明により提供される蛍光プローブは、グルクロン酸転移酵素活性を蛍光により高感度に測定するための手段として有用である。グルクロン酸転移酵素UGT1A1の活性測定用プローブであって、UGT1A1との反応の前後において蛍光特性が変化するフルオレセイン誘導体[ただし、該フルオレセイン誘導体は、フルオレセインのベンゼン環における2位のカルボキシ基が他の一価の置換基(ただし該置換基はスルホ基以外の置換基であり、該置換基はカルボキシ基又はスルホ基を有することはない)で置換されており、該フルオレセイン誘導体はベンゼン環上の2位以外の位置に任意の置換基を有していてもよく、該フルオレセイン誘導体はフルオレセインの2位及び/又は7位にアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい]を含むプローブ。蛍光測定用又は吸光測定用である請求項1に記載のプローブ該フルオレセイン誘導体が、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をアルキル基で置き換えたフルオレセイン誘導体;フルオレセインのベンゼン環の2位カルボキシ基をアルキル基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にアルコキシ基を導入したフルオレセイン誘導体;あるいは、これらのフルオレセイン誘導体において2位及び/又は7位にアルコキシ基を導入したフルオレセイン誘導体である請求項1又は2に記載のプローブ。該フルオレセイン誘導体が、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基を2-ナフトイルアミノ基で置き換えたフルオレセイン誘導体である請求項1又は2に記載のプローブ。該フルオレセイン誘導体が、フルオレセインのベンゼン環の2位のカルボキシ基をニトロ基で置き換え、かつ該ベンゼン環の4位にメチル基を導入したフルオレセイン誘導体である請求項1又は2に記載のプローブ。グルクロン酸転移酵素UGT1A1の活性の測定方法であって、グルクロン酸転移酵素と請求項1に記載のフルオレセイン誘導体とを反応させ、反応の前後における蛍光又は吸光度の変化を検出する工程を含む方法。薬物候補化合物のスクリーニング方法であって、被検化合物の存在下及び非存在下においてグルクロン酸転移酵素UGT1A1と請求項1に記載のフルオレセイン誘導体とを反応させ、反応の前後における蛍光又は吸光度の変化を検出する工程、及び被検化合物の存在下及び非存在下において検出されたそれぞれの蛍光又は吸光度の変化に違いが認められた場合には、該被検化合物がグルクロン酸転移酵素UGT1A1活性に対しての作用を有しており、薬物候補化合物としては不適であると判定する工程を含む方法。