タイトル: | 特許公報(B2)_シトルリン含有飲料 |
出願番号: | 2009501212 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A23L 2/52,A23L 1/30,A61K 31/198,A61K 47/12,A61K 47/26,A61K 9/08,A61P 3/00,A61P 9/08,A61P 9/12,A61P 25/00,A61P 37/00,A61P 39/06 |
酒井 康 神村 彩子 JP 5534806 特許公報(B2) 20140509 2009501212 20080222 シトルリン含有飲料 協和発酵バイオ株式会社 308032666 酒井 康 神村 彩子 JP 2007043098 20070223 20140702 A23L 2/52 20060101AFI20140612BHJP A23L 1/30 20060101ALN20140612BHJP A61K 31/198 20060101ALN20140612BHJP A61K 47/12 20060101ALN20140612BHJP A61K 47/26 20060101ALN20140612BHJP A61K 9/08 20060101ALN20140612BHJP A61P 3/00 20060101ALN20140612BHJP A61P 9/08 20060101ALN20140612BHJP A61P 9/12 20060101ALN20140612BHJP A61P 25/00 20060101ALN20140612BHJP A61P 37/00 20060101ALN20140612BHJP A61P 39/06 20060101ALN20140612BHJP JPA23L2/00 FA23L1/30 ZA61K31/198A61K47/12A61K47/26A61K9/08A61P3/00A61P9/08A61P9/12A61P25/00A61P37/00A61P39/06 A23L,A61K 特開平04−152869(JP,A) 特開平09−224621(JP,A) 特開平10−210956(JP,A) 米国特許出願公開第2006/0147602(US,A1) 1 JP2008053013 20080222 WO2008105325 20080904 8 20110217 田村 聖子 本発明は、シトルリン、糖類および有機酸を含有する飲料に関する。 シトルリンは生体内のタンパク質を構成するアミノ酸ではないが、尿素回路の中間体の一つであり、アルギニンから血管拡張作用を有する物質として知られる一酸化窒素(NO)とともに生成し、さらにアスパラギン酸と縮合してアルギニンに再生される。シトルリンにはアンモニア代謝促進(非特許文献1)や血管拡張による血流改善(非特許文献2)、血圧低下(非特許文献3)、神経伝達(非特許文献4)、免疫賦活(非特許文献5)、活性酸素消去(特許文献1)などの有用な作用が知られている。 一方、アルギニンには成長ホルモン分泌促進作用が報告されている(非特許文献6)。成長ホルモンには、タンパク質合成、糖代謝、脂質代謝などを促進する作用があることから、アルギニンの摂取により筋肉増強、創傷治癒促進が期待される。また、アルギニンはNOの原料であり、アルギニンからNO合成酵素の作用によりNOが生成する。実際に、アルギニン摂取による血管拡張(非特許文献7)、血圧上昇抑制(非特許文献8)、性的機能改善(非特許文献9)などの効果が報告されている。また、その他に、アルギニンには、免疫賦活(非特許文献10)、インスリン分泌(非特許文献11)、アンモニア解毒(非特許文献12)、ポリアミン合成促進(非特許文献13)など、動物やヒトで経口摂取されることにより発揮される効果が数多く知られている。このため、該効果を期待して、アルギニンを医薬品や機能性食品等の形態で摂取することが行われている。特開2002−226370号公報「セル バイオケミストリー アンド ファンクション(Cell Biochemistry & Function)」、2003年、第21巻、p.85−91「ヨーロピアン ジャーナル オブ ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)」、2001年、第431巻、p.61−69「ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」、1991年、第88巻、p.1559−1567「ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)」、1997年、第112巻、p.1250−1259「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The journal ob biological chemistry)」、1994年、第269巻、p.9405−9408「ジャーナル オブ ラボラトリー アンド クリニカル メディシン(Journal of Laboratory & Clinical Medicine)」、2000年、第135巻、p.231−237「ジャーナル オブ ザ アメリカン カレッジ オブ カルディオォジー(Journal of the American College of Cardiology)」、2000年、第35巻、p.706−713「ラボラトリー インベスティゲーション(Laboratory Investigation)」、1993年、第68巻、p.174−184「ビー ジェイ ユー インターナショナル(BJU International)」、1999年、第83巻、p.269−273「サージェリー(Surgery)」、1990年、第108巻、p.331−336、336−337「ジャーナル オブクリニカル インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」、1966年、第45巻、p.1487−1502「ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン(New England Journal of Medicine)」、1957年、第256巻、p.941−943「ニュートリション(Nutrition)」、1999年、第15巻、p.563−569 アルギニンが有する種々の有用な機能を発揮させることができ、飲みやすく安定性に優れた飲料の開発が望まれている。 そこで本発明者らは種々検討の結果、アルギニンの代りにシトルリンを用い、さらに糖類、有機酸の含有量を最適化して製造した飲料が、体内にアルギニンを供給することができ、かつ飲みやすく安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)に関する。(1)シトルリン0.5〜10重量%、糖類0.1〜40重量%および有機酸0.1〜5重量%を含有する飲料。(2)pHが2〜5である上記(1)の飲料。(3)糖類がブドウ糖、果糖またはショ糖である上記(1)または(2)の飲料。(4)有機酸がクエン酸、リンゴ酸またはアスコルビン酸である上記(1)〜(3)のいずれか1項の飲料。 本発明により、アルギニンが有する種々の有用な機能を発揮させることができ、飲みやすく安定性に優れた飲料を提供することができる。 本発明で用いられるシトルリンとしては、L-シトルリンおよびD-シトルリンがあげられるが、L-シトルリンが好ましい。 シトルリンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得することができる。また、シトルリンは、市販品を購入することにより取得することもできる。 シトルリンを化学的に合成する方法としては、例えば、J. Biol. Chem. 122, 477 (1938)、J. Org. Chem. 6, 410 (1941)に記載の方法があげられる。 L-シトルリンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−075387号公報、特開昭63−068091号公報に記載の方法があげられる。 また、L-シトルリンおよびD-シトルリンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。 本発明では、シトルリンの代りにシトルリンの塩を用いてもよい。 シトルリンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。 酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩、アジピン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩があげられる。 金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。 アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。 有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。 アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。 上記のシトルリンの塩のうち、クエン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。 本発明で用いられる糖類としては、飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されることもなく、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、甘味料のいずれでも良い。該糖類としては、例えばブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、還元水飴、デキストリン、でんぷん、ソルビトール、マルチトール、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビア、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ソーマチンがあげられるが、ブドウ糖、果糖、ショ糖が好ましい。 本発明で用いられる有機酸としては、飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されない。該有機酸としては、例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、α−ケトグルタル酸、グルコン酸、カプリル酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸等があげられるが、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸が好ましい。 本発明では、有機酸の代りに有機酸の塩を用いてもよい。有機酸の塩としては飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されることもないが、通常ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が使用される。 本発明の飲料は、シトルリン、糖類、有機酸を添加する以外は、一般的な飲料の製造方法により製造することができる。 本発明の飲料は、通常の飲料に加える酸味料、抗酸化剤等の保存料、着色料、香料や各種添加剤を添加しても良い。また、健康機能の増強を期待して、ビタミンやミネラルや各種の機能成分を添加しても良い。また、二酸化炭素を圧入して、炭酸飲料としてもよい。 酸味料としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸があげられる。 抗酸化剤としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルがあげられる。 着色剤としては、飲料に使用できるものであれば特に制限はされないが、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号、カロチノイド色素、トマト色素があげられる。 香料としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えばレモンフレーバー、レモンライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、アップルフレーバーがあげられる。 本発明の飲料に含まれるシトルリンの濃度としては、通常は0.5〜10重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜10重量%である。 本発明の飲料に含まれる糖類の濃度としては、通常は1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。 本発明の飲料に含まれる有機酸の濃度としては、通常は0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましくは0.2〜1重量%である。 また、本発明の飲料のpHとしては、通常は2〜5、好ましくは3〜4であり、上記した有機酸、無機酸、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤で飲料のpH調整を行う。 シトルリンは経口吸収された後に体内でアルギニンに変換されることから、本発明の飲料を摂取することにより、アルギニンが有する種々の有用な機能を発揮させることができ、また、飲料中のシトルリン、糖類、有機酸を上記の濃度とすることにより、飲みやすく安定性に優れた飲料を提供することができる。 以下に、シトルリンが経口投与後に体内でアルギニンに変換されること(試験例1)、本発明の飲料を摂取した後の体感(試験例2)、本発明の飲料の保存安定性(試験例3、4)および味(試験例5)について調べた試験例を示す。試験例1 試験には、SDラット(オス、6週齢、日本エスエルシー社より購入)を用いた。飼育条件は、室温22±2℃、湿度35±15%、飼料および水は自由摂取とした。 L-シトルリン(協和醗酵工業社製)を蒸留水に完全に溶解し、L-シトルリン投与群5匹に体重1kgあたりL-シトルリンが0.5gとなるよう経口投与し、対象群5匹には蒸留水のみを経口投与した。ネンブタール注射液(大日本製薬社製)による麻酔状態下において、投与前、投与後5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、4時間後に、門脈および腹下大静脈から採血した。血清中のL-シトルリン濃度およびL−アルギニン濃度をHPLCで測定した結果を表1に示す。 表1より、経口投与したL-シトルリンが速やかに体内に吸収され、かつ体内でL-アルギニンに変換されることが明らかとなった。試験例2 被験者2名に対し、実施例1の飲料を毎日1本ずつ1週間摂取させた。摂取後において、被験者1名に「飲酒や運動した翌日の体調が良かった」「起床時、手指の先が温かく感じられた」、被験者1名に「夜、体が冷えず寝つきが良かった」との体感が得られた。試験例3 実施例1、比較例2および3の飲料について味覚官能試験を実施した。結果を表2に示す。 表2より、L-アルギニンを含有する比較例3の飲料とL-シトルリンを含有する実施例1の飲料はほぼ同じpHであるにも関わらず、飲みやすさに大きな違いがあることが明らかとなった。 また、実施例1の飲料におけるクエン酸濃度を種々変化させて味覚官能試験を実施した結果、クエン酸濃度が0.2重量%から1重量%の場合、特に飲みやすいことが明らかとなった。なお、クエン酸濃度が0.2重量%の場合の飲料のpHは3.6、クエン酸濃度が1重量%の場合の飲料のpHは3.06であった。試験例4 実施例1および比較例1の飲料をそれぞれ蓋付きの試験管に入れて、95℃、15分煮沸滅菌した後、60℃で2週間保存し、pHおよびメイラード反応の指標となる吸光度(OD460nm)を測定した。なお、吸光度の測定は飲料を蒸留水で10倍希釈して行なった。結果を表3に示す。 表3より、比較例1の飲料と比較して、クエン酸を含有する実施例1の飲料は保存安定性が向上することが明らかとなった。試験例5 実施例1および比較例2の飲料をそれぞれ蓋付きの試験管に入れて、95℃、15分煮沸滅菌した。それぞれ煮沸前と煮沸後のpHおよびメイラード反応の指標となる吸光度(OD460nm)を測定した。なお、吸光度の測定は飲料を蒸留水で10倍希釈して行なった。結果を表4に示す。 表4より、L-アルギニンを含有する比較例2の飲料と比較して、L-シトルリンを含有する実施例1の飲料は安定であることが明らかとなった。 以下に、本発明の実施例を示す。 シトルリンを含有する飲料 以上の成分を蒸留水に溶解して全体を30mlとした。本飲料のpHは3.54であった。比較例1 実施例1のクエン酸を蒸留水に置き換えた飲料を製造した。本飲料のpHは5.4であった。比較例2 実施例1のL−シトルリンをL−アルギニン(協和醗酵工業社製)に置き換えた飲料を製造した。本飲料のpHは9.74であった。比較例3 比較例2のクエン酸を1.5gに増量した飲料を製造した。本飲料のpHは3.88であった。 本発明により、アルギニンが有する種々の有用な機能を発揮させることができ、飲みやすく安定性に優れた飲料を提供することができる。シトルリン0.5〜10重量%、ブドウ糖、果糖またはショ糖5〜20重量%およびクエン酸、リンゴ酸またはアスコルビン酸0.2〜1重量%を含有し、pHが2〜5である飲料(ただし、炭酸入りたんぱく質飲料を除く)。