タイトル: | 公表特許公報(A)_脂肪酸の脱炭酸の方法 |
出願番号: | 2009500765 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 45/48,C07C 49/04,C07B 61/00 |
ブレボールド,エエルコ ヤンブロールズ,ステフアン ハルテ,マルク・ヘンドリクス マス・カブレ,フランシスコ・レネ JP 2009530335 公表特許公報(A) 20090827 2009500765 20070320 脂肪酸の脱炭酸の方法 アルベマール・ネーザーランズ・ベーブイ 506417681 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 ブレボールド,エエルコ ヤンブロールズ,ステフアン ハルテ,マルク・ヘンドリクス マス・カブレ,フランシスコ・レネ EP 06075689.7 20060320 C07C 45/48 20060101AFI20090731BHJP C07C 49/04 20060101ALI20090731BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090731BHJP JPC07C45/48C07C49/04 EC07B61/00 300 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW EP2007002465 20070320 WO2007107337 20070927 16 20081113 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC13 4H006AC25 4H006AC26 4H006AC44 4H006BA06 4H006BA09 4H006BA16 4H006BA19 4H006BA20 4H006BA21 4H006BA25 4H006BA26 4H006BA66 4H006BA68 4H006BB60 4H006BB61 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC13 4H039CA62 4H039CG10 4H039CG40 4H039CL25 本発明は、カルボン酸からのケトンの製造に関する。さらに特に、それは脂肪酸を該脂肪酸を脱炭酸するために有効な条件下でハイドロタルサイト触媒と接触させることによる約20個より大きい炭素数を有するケトンの製造方法に関する。 最近、有用な炭化水素生成物源としての植物油および動物脂肪の使用に商業的関心が集められている。大部分の天然脂肪および油は個々のトリグリセリドの複雑な混合物であり;これらの化学種は、その鎖長が約4〜約22個の炭素原子であることができるがより一般には約16〜約18個の間である3つの脂肪酸とグリセロールがエステル化されるグリセリドを含んでなる。「脂肪酸」という用語は、トリグリセリド反応物質のカルボン酸部分に対応するカルボン酸を意味するために本明細書において用いられる。植物および動物に存在する天然脂肪酸は、典型的に、それらがアセチルCoAから生合成される方法のために偶数のみの炭素原子を含んでなる。それに反して、細菌は奇数のそして分枝鎖状脂肪酸を合成する能力を有する。その結果として、反芻動物脂肪は、第一胃における細菌の作用のためにかなりの割合の分枝鎖状脂肪酸を含有することができる。 歴史的に、トリグリセリドとアルカリ金属水酸化物との反応(鹸化)は、石鹸および洗剤の製造に長い間使用されている。さらに、脂肪酸鎖のモノアルキルエステルを形成するためのトリグリセリドのエステル交換反応は、石油ベースのディーゼル燃料に対するますます用いられる代替品、バイオディーゼルの製造における中心反応である。構成脂肪酸鎖を遊離させるためにトリグリセリドを加水分解することの化学は一般に既知であるが(実際にはインビボにおけるトリグリセリドの酵素生合成に対する逆反応である)、これらのカルボン酸部分のさらなる転化の可能性は広く調べられていない。 本発明の1つの態様は、制御された脱炭酸によるカルボン酸部分からの約30個より大きい炭素数を有する有用な(utile)ケトンの誘導に関する。四酢酸鉛のような均一触媒の存在下での脂肪酸の脱炭酸は、文献において広く提示されている。脂肪酸の化学活性化なしに脱炭酸を可能にすることができる不均一経路は、比較して詳細に研究されていない。 特許文献1(Armour and Company)は、8〜22個の間の炭素原子を有する脂肪酸を、アルデヒドとケトンの両方を生成せしめるために少なくとも5重量パーセントのシリカを含有する水滑石と該酸を接触させることにより、触媒的に脱炭酸する方法を記述する。ステアロン、パルミトンおよびカプリロンが反応生成物として形成され得るが、それらはそうでなければ13〜18個の炭素原子を有する高度不斉メチルケトンによって占められる全生成物の15重量パーセントより多くを構成しない。この引用は、その天然鉱物存在量のために触媒としての水滑石の使用を示唆するが、それは酸化マグネシウムペレットと比較して触媒寿命もしくは反応効率の点においていかなる利点も提供しないことを認識する。 特許文献2(King et al.)は、i)カルボキシル化化合物を生成せしめるために有効な条件下で活性水素含有化合物を二酸化炭素シントンと接触させ、そしてii)カルボキシル化化合物を脱炭酸するために有効な条件下で該カルボキシル化化合物を金属酸化物触媒と接触させる2段階の方法を記述する。段階ii)のための金属酸化物触媒は、ハイドロタルサイトのような交換性陰イオン粘土材料を含んでなることができ、そして2段階の方法はケトンを得るために用いることができる(これらの種の鎖長はこの書類に開示されないが)。しかしながら、段階i)において使用される活性水素化合物は必ず有機化合物、そして好ましくはアルコールである。 Parida et al.[非特許文献1]は、酢酸のケトン化におけるハイドロタルサイトの使用を記述し、ここで、触媒活性はハイドロタルサイトのMg:Al比を制御することにより最適化される。本書類の特定の教示は、より長鎖の酸にも、特に、脂肪酸に相対的な(comparative)鎖長および/もしくは構造の酸にも適用されない。さらに、Sels et al.[非特許文献2]はParida et al.の教示の価値およびさらなる適用を疑問視する。 従って、30より大きい炭素数を有するケトンへの脂肪酸の効率のよい転化の方法を提供する当該技術分野における必要性がある。英国特許出願第836,205号明細書米国特許第5,164,497号明細書Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 151(2000)185−192Catalysis Reviews,43(4),443−288(2001)[発明の記述] 本発明の1つの態様によれば、約10〜約21個の炭素原子を含有する脂肪酸を該酸を脱炭酸するために有効な条件下でハイドロタルサイト触媒と接触させることを含んでなる約20〜約40個の間の炭素数を有するケトンの製造方法が提供される。ハイドロタルサイト触媒は、脱炭酸条件下で脂肪酸および水による陽イオンの浸出に非常に耐性を示すことが見出されている。 該脂肪酸は、一般式R−COOH(ここで、Rは約9〜約20個の炭素原子、好ましくは約15〜約20個の炭素原子を有する炭化水素残基を構成する)を特徴とすることができる。本発明の1つの好ましい態様によれば、Rは低オレフィン性(olefinicity)の炭化水素、より好ましくは<2の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素部分を構成する。 本発明の方法は、対称ケトンへの脂肪酸の転化において非常に効率がよいことが見出された。理論によって拘束されることなしに、触媒上で起こる反応は、二酸化炭素と水が分離される二量化を構成する。以下の式1は、単一の脂肪酸源のこの提示される機序を例示する: 2R-COOH--ハイドロタルサイト触媒-→R-C(O)-R+CO2+H2O [式1] 本発明の1つの好ましい態様によれば、脱炭酸反応は約70%より大きい、そしてより好ましくは約85%より大きいケトンへのカルボン酸の転化率を達成することを特徴とする。 本発明の実行に適当な脱炭酸条件は:約225℃〜約500℃の間の範囲の温度;約0.01〜約10barの間の範囲の圧力、約0.1〜約20hr−1の重量毎時空間速度(WHSV)を含んでなる。 さらに、該脂肪酸は不活性流動性希釈剤の存在下でハイドロタルサイト触媒と接触させることが可能である。これに関して適当な気体は窒素、メタン、水素、一酸化炭素もしくはその混合物よりなる群から選択することができるが、その中で窒素は最も好ましい。適当な液体希釈剤はベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジブチルエーテルおよびその混合物よりなる群から選択することができる。希釈剤を用いる場合、該希釈剤対該脂肪酸のモル比は約1〜約20の範囲であることが好ましい。 本発明の1つの好ましい態様によれば、該脂肪酸を気相における場合に窒素ガス希釈剤の存在下でハイドロタルサイト触媒と接触させ、該希釈剤対該脂肪酸のモル比は約5〜約15の範囲であり、そしてここで、該脱炭酸条件は:約1〜約5barの範囲の反応圧力;約275℃〜約450℃の範囲の温度;および約0.1〜約3hr−1の重量毎時空間速度(WHSV)を含んでなる。 本発明の別の態様によれば:a)約16〜約21個の炭素原子を含有する構成カルボン酸部分を有するトリグリセリドを加水分解してグリセロールと該カルボン酸部分に対応する脂肪酸を生成せしめること;b)カルボン酸を脱炭酸するのに有効な条件下で該脂肪酸をハイドロタルサイト触媒と接触させることを含んでなる約30〜約40個の間の炭素数を有するケトンの製造方法が提供される。 本発明の1つの好ましい態様によれば、該加水分解反応は置換酸触媒、強酸触媒および水相と油相を形成するのに十分な水の存在下で起こる。好ましくは、該置換酸触媒はギ酸、酢酸およびプロピオン酸よりなる群から選択される。同様に、強酸触媒は硫酸を含んでなることが好ましい。 該加水分解は:強酸触媒;ならびにギ酸、酢酸およびプロピオン酸よりなる群から選択される置換酸触媒の存在下で、約50℃〜約180℃の範囲の温度で起こることが非常に好ましい。 ハイドロタルサイトは、それぞれの層の間の間隔に様々な陰イオンもしくは分子を受け取ることができる構造を有する層状複水酸化物類に属する。それらは、陰イオン交換特性を示すと言われる。The Journal of the Chemical Society of Japan,1995,No.8,pp.622〜628によれば、ハイドロタルサイトは(電荷均衡化)一般式: [M2+(1−x)M3+x(OH)2]x+[An−(x/n).yH2O]x−により表すことができ、ここで、M2+はMg2+、Co2+、Ni2+もしくはZn2+のような2価の金属イオンであり;M3+はAl3+、Fe3+もしくはCr3+のような3価の金属イオンであり;An−はOH−、Cl−、CO32−もしくはSO42−のようなn価の陰イオンであり;そしてxは通常は0.1〜0.33である。そのようなものとして、ハイドロタルサイトは、正電荷を有する、無限シートを形成するように稜を共有する金属水酸化物正八面体からなる2次元主要層、および各々負電荷を有する中間層を含んでなる層状結晶構造を有する。ハイドロタルサイト粒子の可能な化学構造の中で、水酸化マグネシウムおよびアルミニウム八面体の層を含有するMg−Alベースのハイドロタルサイトは、それらの熱安定性および熱変色に対する耐性のために一般的になっている。 ハイドロタルサイトを製造する一般的な方法は、必要な2価および3価金属イオンを含有する水性金属塩溶液を(それから陰イオン性中間層が得られる)炭酸イオンの水溶液と混合することを含んでなり;このようにして得られる混合物を温度、圧力およびpHの制御された条件下で共沈反応に供する。特定のプレート表面直径もしくは厚さを有するハイドロタルサイト粒子を得るために、水熱合成などにおいて用いられるもののようなより特定の反応条件を使用することが必要である。Cavani,et al(Catalysis Today 11(2),1991,203)、国際特許出願公開第WO1993/03903号(Preston)および第WO2004/056705号(Council of Scientific and Industrial Research)、中国特許出願第CN 1600690号(Ying et al.)および日本特許第2005060164号(Nittetsu Mining Company)は、複数の異なる技術および/もしくは金属源を用いるハイドロタルサイトの製造およびその成分バイメタル層化のさらなる方法を開示し;それらの開示は、引用することにより本明細書に組み込まれる。 本発明の1つの好ましい態様によれば、ハイドロタルサイトは約3.5〜約4.0、より好ましくは約3.7〜約3.9の範囲のMg:Al比;および約3〜約4オングストロームの範囲の層間隔を有することを特徴とする。さらに、触媒の多孔度は約0.5cc/g〜約0.7cc/g、より好ましくは約0.7〜約0.8cc/gの範囲であり、そして触媒の密度は約0.5〜約0.6g/cm3の範囲であることが好ましい。 本発明の1つのさらなる態様によれば、追加の活性金属成分を提供するために周期表のVIII族からの金属をハイドロタルサイトの表面上に担持することができる。該金属は典型的にそれらの酸化物もしくは硫化された状態で提供され、そして好ましくは該金属はMn、Fe、Co、Ni、Pd、Ptおよびその混合物よりなる群から選択される。該追加成分の包含は、脱炭酸経路および適用可能な場合には上記の式1に示される「二量化」経路を阻害するよりむしろ促進するはずである。これらの金属は、それらが該金属とハイドロタルサイトの総重量に基づき約0.1〜約5wt.%の間(酸化物に換算)を含んでなるように包含されることが好ましい。 約16〜約21個の間の炭素原子を有する脂肪酸は、産業および天然源の両方から一般的である。該方法は、次に置換されるかもしくは非置換であることができる、飽和および不飽和脂肪酸の両方に適用できると予想される。しかしながら、ハイドロタルサイト触媒と接触させる酸は約50%を越える、より好ましくは約75%を越える、そして最も好ましくは約90%を越える飽和脂肪酸を含んでなることが好ましい。好ましくは、飽和脂肪酸はパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびその混合物を含んでなる。 不飽和酸が脂肪酸源(もしくは「供給(feed)」)に存在する場合、そのような酸はオレイン酸のような単不飽和であることが好ましい。好ましくは、脂肪酸は約10mol.%未満、より好ましくは約5mol.%未満、そして最も好ましくは約1mol.%未満の多不飽和脂肪酸を含んでなるべきである。 脂肪酸は、液体もしくは蒸気もしくは超臨界液体状態またはその混合物においてMg−Alハイドロタルサイトと接触させることができる。これに関連して、蒸気相反応は出発物質の一般的な蒸気状態をさすものとし、そして本発明のこの段階を行う好ましい方法である。 脱炭酸反応は、少なくとも1つの不活性気体希釈剤の存在下で行うことができる。所望のケトンの製造を妨げるべきでない適当な気体希釈剤には、窒素、メタン、水素および一酸化炭素が包含され;これらの中で窒素および水素は最も好ましい。ある状況において、窒素および水素は、所望される特定の生成物への反応の選択性を増すことにおいてそして/もしくは触媒分解を限定することにおいて有用な希釈剤であることが示されている。液体希釈剤を用いる場合、それは好ましくは出発物質の優れた溶媒であり、反応条件下で不活性であり、そしてケトン生成物から容易に分離可能であるべきである。蒸留による分離が行われる場合、希釈剤はケトンと共沸混合物を形成せずそしてその沸点がケトンのものから適切に離れている液体であることができる。その関連で、有用な希釈剤にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジブチルエーテルなどが包含される。 カルボン酸の希釈度は、希釈剤の使用を制限する任意の方法の制約によりかなり異なり得る。例えば、大量の気体希釈剤の使用は、そのような容量を供給するエネルギーコストおよびケトン生成物を単離することにおける困難の増加のために不都合であり得る。従って、気体希釈剤を使用する場合、カルボン酸は出発物質/担体供給の約1〜約95モルパーセントの間、そしてより好ましくはその約5〜約50モルパーセントの間を構成することが好ましい。液体希釈剤を使用する場合、希釈剤は1〜90wt%の間(カルボン酸と希釈剤の総重量に基づく)、そしてより好ましくはその約5〜約50wt.%の間を含んでなることが好ましい。 気相における場合に酸がMg−Alハイドロタルサイトと接触する場合、原料は典型的に気化器に送り込まれ、そこで酸はまた任意の気体希釈剤とも混ぜ合わされる。この希釈剤は、脂肪酸の蒸発を導くようにここで働く。脂肪酸および/もしくは希釈剤は、好ましくは気化器に入る前に加熱され、そしてさらに気化器からの脂肪酸および希釈剤の出口フローは、好ましくは気化器のものより低い温度までそれが冷却するのを防ぐためにさらに加熱される。 使用する場合には希釈剤と一緒に、脂肪酸原料をいわゆる反応ゾーンにおいてMg−Alハイドロタルサイトと接触させる。そのようなゾーンは、例えば、固定床反応器、流動床反応器もしくはスラリー反応器内に含まれることができる。脱炭酸方法はまた、ガラスライニング(glass−lined)ステンレス鋼もしくは同様のタイプの反応装置において行うこともできる。反応ゾーンは、過度の温度変動を制御するためにそして任意の可能な「暴走」反応温度を防ぐために1つもしくはそれ以上の内部および/もしくは外部熱交換器を装着できることが好ましい。 脱炭酸反応条件は大気圧以下(subatmospheric)もしくは大気圧〜大気圧以上(superatmospheric)条件の間であることができ、約0.1〜約10barの間、そして好ましくは約1〜約5barの間の圧力で段階(ii)反応を行うことが望ましい。触媒のキログラム当たりの時間当たりの脂肪酸の質量流として定義される重量毎時空間速度(WHSV)は、好ましくは約0.1〜約20hr−1、より好ましくは約0.1〜約10hr−1の範囲である。 脱炭酸段階の温度は一般的に約150℃〜約500℃の範囲であるように選択されるが、好ましくは約225℃〜約425℃、そしてより好ましくは約300℃〜約400℃である。この温度で、脂肪酸はクラッキングもしくは熱分解を受け得ることが可能であり;しかしながら、これらの望ましくない反応は、脱炭酸触媒としてのハイドロタルサイトの選択(および当業者に明らかであるような適切な処理条件の選択)によって最小限に抑えられる。 滞留時間は、とりわけ反応の温度および圧力、カルボン酸のタイプ、ならびにハイドロタルサイトと接触させる材料における希釈剤の割合によって決まる脱炭酸化合物生成物を生成せしめるために十分な期間である。一般に、反応時間は約0.5〜約100時間の範囲であるが、好ましくは1〜10時間である。 脱炭酸の生成物は反応ゾーンから、好ましくは連続的な流れとして取り除かれる。脱炭酸により得られる任意のケトンは、蒸留により副生成物(オリゴマーもしくはポリマー種および脂肪酸鎖からの低分子量「フラグメント」のような)から分離することができる。例えば、粗反応生成物は、充填蒸留カラムを通して大気圧もしくは減圧で蒸留分離に供することができる。 約31〜約41個の間の炭素原子を有する得られるケトンは、室温および室内圧力で固体である。脱炭酸が行われる装置の目詰まりを防ぐために、脱炭酸生成物を反応ゾーンから取り除くチューブおよびケトンが中に集められる任意の容器を加熱することが必要であり得る。 本発明の1つの好ましい態様によれば、脱炭酸する反応物質は、約16〜約21個の炭素原子を含有する構成カルボン酸部分を有するトリグリセリドを加水分解してグリセロールと該カルボン酸部分に対応するカルボン酸を生成せしめることにより得られる。 トリグリセリド反応物質は好ましくは生物学的起源のものであり、そして特に天然に存在する動物、魚および植物脂肪に由来する。魚および動物油からのトリグリセリドは通常は15個の炭素原子を上回る鎖長を有する酸を含有し、そして通常は大量の単および多不飽和酸を含有することが既知である。同様に、ある植物種からのトリグリセリドは、主に飽和酸の傾向がある10、12もしくは14個の炭素原子を有するかなりの量のより短鎖の酸を含有する。従って、当業者は本発明により必要とされるようなカルボン酸部分を得るために使用すべき(単独でもしくは組み合わせて)適切な動物、魚および植物油を認識している。 これに関連して、有用な供給源(単独でもしくは組み合わせて使用することができる)には、ココナッツオイル、ヤシ油、パーム核油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ナタネ油、コーンオイル、カラシ油、ヒマワリ油、黄色グリース、トラップグリース(trap grease)、ラード、食用獣脂、非食用獣脂およびその混合物が包含される。これらの中で、最も好ましい供給源はナタネ油である。 脂肪酸の供給源としてのそのような油およびグリースの品質は、有用なトリグリセリド分子に加えて油内に含まれる遊離脂肪酸(FFA)の量と関連することが多い。[遊離脂肪酸(FFA)は、それら自体がトリグリセリドから分解している可能性がある。]しかしながら、微量金属、リン脂質、カロテノイド、アフロトキシン(aflotoxins)、殺生物剤およびポリ塩素化炭化水素のような他の不純物もまたそのような油に存在し得る。従って、動物および植物油の等級および製造により、遊離脂肪酸およびこれらの不純物を除くためにそれらを前処理することが必要であり得る。 実際に適用される前処理方法は、もちろん、使用する油のタイプにより決まるが、一般に脱ゴム、脱臭(真空蒸留)、蒸気ストリッピング(steam stripping)、苛性ストリッピング(caustic stripping)、溶媒抽出および漂白よりなる群から選択される少なくとも1つの方法を含んでなる。 トリグリセリドと水を混ぜる場合、得られる反応混合物は、それが油相と水相を含んでなる点において不均一である。反応混合物を攪拌に供さない場合、使用する水の量は2つの液層(下の水相の上に重なる油相)の形成をもたらすために十分であることがこの反応段階に必須である。加水分解反応が進むにつれて、生成物は2相、カルボン酸生成物ならびに低レベルのモノ−およびジグリセリド不純物を含有する油相とグリセロールを含有する水相の間で分配する。この分配は水相および油相における平衡に影響を与え、そして反応を完了させることに寄与する。 加水分解反応の速度をさらに高めるために、トリグリセリドと水を高い温度(>250℃)および圧力(700psi)の条件下で混ぜることができる。しかしながら、高価な装置の使用を必要とする。好ましい反応条件は、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,218,386号(Proctor and Gamble)に記述される。この引用は、加水分解反応を促進するための強酸触媒および置換酸触媒の使用を記述する。この場合、用いる水の量は、油相と水相の上記の形成をもたらすために十分でなければならない。(これがどれほどの量であるかは、トリグリセリド反応物質および置換酸触媒により決まる。)この相形成は、速い比較的完全な反応およびグリセリド(例えばトリアセチン)よりむしろグリセリンの形成をもたらす水相について上記に示した機能のために重要である。 好ましくは、置換酸触媒はギ酸、酢酸およびプロピオン酸よりなる群から選択される。当業者は多数の適当な強酸触媒を認識しているが、この能力(capacity)において硫酸を使用することが好ましい。 これらの触媒の使用は、加水分解の有用な速度の達成においてより低い温度を用いることを可能にする。触媒される加水分解反応は約50℃〜約180℃の間、そしてより好ましくは約60℃〜約150℃の間の温度で起こることが好ましい。 理論によって拘束されることなしに、水はこの触媒される加水分解反応において3つの役割を有すると考えられる。第一に、水はトリグリセリドの酸分解を導く強酸触媒のプロモーターとして働くことができ;第二に、それが十分な量で存在するならば、それは水溶性グリセリドを抽出しそしてそれによりトリグリセリド可溶化反応を完了に向かわせるように働く水相を提供するのに役立ち、そして第三に、それは水溶性グリセリドを加水分解してグリセリンとトリグリセリド反応物質のカルボン酸部分に対応するカルボン酸を生成せしめるように、そして置換酸を遊離してトリグリセリド可溶化段階において機能するように反応する。 記述される加水分解反応において、トリグリセリド反応物質に基づく水の重量パーセンテージが約5%〜約100%の間であるような量で水を使用する。しかしながら、水は反応混合物の約10重量%より多くを含んでなることが好ましい。 酸触媒加水分解に関して、加える水の量は触媒の過剰希釈を防ぐために制御されなければならない。当業者は、必要な油相と水相の形成をもたらすための水の既定量に加える置換酸触媒、強酸触媒および原料(トリグリセリド源)の適切な量および濃度を選択することができる。 加水分解反応後に、16〜21個の間の炭素原子を有するカルボン酸は単蒸留もしくは水洗および蒸留のいずれかにより油相層から容易に得られる。必要に応じてグリセロールおよび任意の他の関連成分を中和続いて蒸留により水相から回収することができる。 本発明の加水分解段階は、いくつかの異なる接触パターンのいずれか1つにおいて実施することができる。例えば、バッチ法には、一段階および多段階法の両方を包含することができ、後者は加水分解の速度が遅くなるまで容器において第一バッチトリグリセリドを反応させること、それから油相を分離することそして次に反応物質を新たにすることを含む。一般にバッチ処理のために、適当な装置は攪拌器を備えた反応容器もしくはポットからなる。連続処理のために、適当な反応器は、十分な滞留時間にわたって油相と水相の間の密接な接触を与えるために十分な長さのチューブを含んでなることができる。代わりの連続処理系は、一連の攪拌タンク反応器、栓流反応器もしくは対向流系を含むことができる。そのような連続系には、反応物質が導入される複数の場所を含むことができる。 本発明の脱炭酸反応は、利用する場合には加水分解段階と一緒に、必要に応じて消費されていない出発物質を再利用して、バッチもしくは連続的方法で行うことができる。いずれの場合においても、出発物質の量および相対モル比を導入しそして/もしくは調整するための適当な手段を用いることが好ましい。 本発明の方法において得られるケトンは、脱炭酸の生成物から蒸留により分離されようともしくはそうでないにしても、それら自体が複数の目的のために使用することができるかもしくは他の有用な生成物を得るためにさらなる処理に供することができる。ケトンは例えば溶媒、香味料および香りとして用途を見出すことができるが、医療処置における[特にパーキンソン病および糖尿病への]、バイオミメティック表面における[ケトンは多数の被子植物のエピクチクラワックス(epicuticular wax)に一般的であるという認識を受けて]そしてバルク食料としての[いわゆるケトン体生成食療法(ketogenic diet)における]ケトンの使用に関心が増している。 本発明の1つの好ましい態様によれば、得られるケトンを該ケトンの少なくとも水素化脱酸素反応を含んでなるさらなる処理に供する。 以下の実施例は、本発明の触媒系の製造および使用をさらに説明する。 3.7のMgO/Al2O3比を有するハイドロタルサイトを脱炭酸触媒として使用した。触媒を3.4cmの直径および153cmの高さを有する電気的に加熱したチューブに保持した。チューブの触媒床部分は約850mlであり、そして約500gのハイドロタルサイトで満たされた。この部分は、それぞれ触媒床の下および上の位置について15cmおよび30cmの高さである2つのガラスパール部分内に含まれた。パールは3〜4mmの間の直径を有した。第一の熱電対を触媒床の真上のガラスパールの上層に保持した。3つのさらなる熱電対を触媒床上に分けた。 使用する原料酸は、Akzo Nobel Chemicals GmbHから入手可能な製品名Kortacid 1895下で提供されるステアリン酸であった。該製品の96.9モル%は飽和C18カルボン酸であり、そしてC16〜C20カルボン酸の全成分は99.2モル%であった。 脱炭酸の前に、脂肪酸を貯蔵タンクにおいて融解状態で保持した。同時に加熱しながら気化器にこのタンクから脂肪酸を供給した。酸の蒸発のための駆動ガスとして使用する窒素の予熱流と脂肪酸を気化器内で混合した。気化器の温度は、5〜15%のピッチフロー(pitch flow)があるように制御され、ピッチは適当なポンプで引き出された。そのフローもまた気化器の温度により制御される蒸気流は、その温度が触媒床のものに近い電気的に加熱されたチューブを通って触媒床に運ばれた。次に、触媒を保持するチューブの上部に蒸発脂肪酸および窒素希釈剤の供給を導入した。 要約すると、以下の方法条件を用いた: 脂肪酸をケトン、水および二酸化炭素に転化した。触媒床の後で、生成物は第一凝縮器において部分的に液化され;得られる液体部分は生成物タンクに送られた。残りの蒸気流(主に水および軽質留分(light ends))を第二凝縮器に通し;液体部分をタンクに集め、排ガスを水で洗い、そして排出した。[C35ケトンは室温および室内圧力で固体であるので、それを液体状態で保持する(そして装置の目詰まりを防ぐ)ために生成物タンクを加熱した。] 生成物を3つの技術を用いて分析した: a)脂肪酸滴定:未反応の脂肪酸含有量をNaOHでの滴定により分析する。分析には、wt.%の量を計算するために285の分子量をステアリン酸に使用した。 b)1H−NMR:これは:i)ケトンの収率のためのCH2−C=O(ケトン):CH3(末端基)の比率およびii)脂肪酸の転化を決定するためのCH2−C=O(脂肪酸):CH3(末端基)の比率を決定するために使用する。 c)HSPEC:この分析は分子量に基づく分離であり、そしてC35ケトンの分子量を有する生成物の含有量を決定するために使用する。 以下の表はこれらの分析の結果を例示する: 前述のものから、本発明はより長鎖のケトンへの脂肪酸の転化の効率のよい方法、そして特に対称ケトンへの脂肪酸の転化の非常に効率のよい方法を提供することは明らかである。 本発明の実施における様々な他の態様および改変は、上記の本発明の範囲および精神からそれることなしに当業者に明らかであり、そして彼らによって容易に行われ得ることが理解される。 約10〜約21個の炭素原子を含有する脂肪酸を該酸を脱炭酸するのに有効な条件下でハイドロタルサイト触媒と接触させることを含んでなる約20〜約40個の間の炭素数を有するケトンの製造方法。 a)約10〜約21個の炭素原子を含有する構成カルボン酸部分を有するトリグリセリドを加水分解してグリセロールと該カルボン酸部分に対応する脂肪酸を生成せしめること、および b)カルボン酸を脱炭酸するのに有効な条件下で該脂肪酸をハイドロタルサイト触媒と接触させることを含んでなる約20〜約40個の間の炭素数を有するケトンの製造方法。 該脂肪酸が飽和脂肪酸を実質的に含んでなる請求項1に記載の方法。 置換酸触媒、強酸触媒および水相と油相を形成するのに十分な水の存在下で該加水分解反応が起こる請求項3に記載の方法。 該置換酸触媒がギ酸、酢酸およびプロピオン酸よりなる群から選択される請求項4に記載の方法。 強酸触媒が硫酸を含んでなる請求項5に記載の方法。 該加水分解が約50℃〜約180℃の範囲の温度で起こる請求項4に記載の方法。 該脱炭酸反応が約85%より大きいケトンへの脂肪酸の転化率を達成することを特徴とする請求項4に記載の方法。 該脱炭酸条件が:約300℃〜約400℃の間の範囲内の温度;約0.01〜約5barの間の範囲内の圧力;および約0.1〜約10hr−1の重量毎時空間速度(WHSV)を含んでなる請求項4に記載の方法。 該脂肪酸を不活性気体希釈剤の存在下でハイドロタルサイト触媒と接触させ、該希釈剤対該脂肪酸のモル比が約1〜約20の範囲内である請求項4に記載の方法。 該希釈剤が窒素、メタン、水素、一酸化炭素もしくはその混合物よりなる群から選択される気体である請求項10に記載の方法。 該脂肪酸を気相における場合に窒素ガス希釈剤の存在下でハイドロタルサイト触媒と接触させ、該希釈剤対該脂肪酸のモル比が約5〜約15の範囲内であり、そして該脱炭酸条件が:約1〜約5barの範囲内の反応圧力;約300℃〜約400℃の範囲内の温度;および約0.1〜約3hr−1の重量毎時空間速度(WHSV)を含んでなる請求項1に記載の方法。 ハイドロタルサイト触媒が約3.5〜約4.0の範囲内のMg:Al比および約3〜約4オングストロームの範囲内の層間隔を有する請求項1に記載の方法。 ハイドロタルサイト触媒がその表面上にMn、Fe、Co、Ni、Pd、Ptおよびその混合物よりなる群から選択される金属を含んでなる金属成分を該金属成分が金属成分とハイドロタルサイトの総重量に基づき約0.1〜約5wt.%の間(酸化物に換算)を含んでなるように担持する請求項1に記載の方法。 約10〜約21個の炭素原子を含有する脂肪酸を該酸を脱炭酸するために有効な条件下でハイドロタルサイト触媒と接触させることを含んでなる約20〜約40個の間の炭素数を有するケトンの製造方法。さらに特に、該脱炭酸条件は:約300℃〜約400℃の間の範囲の温度;約0.01〜約5barの間の範囲の圧力;および約0.1〜約10hr−1の重量毎時空間速度(WHSV)を含んでなる。