生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アロマターゼ阻害剤
出願番号:2009257749
年次:2010
IPC分類:A61K 36/18,A61P 43/00,A61P 5/24,A61P 5/26,A61P 5/32,A61P 35/00,A61P 3/06


特許情報キャッシュ

範本 文哲 森元 康夫 JP 2010059187 公開特許公報(A) 20100318 2009257749 20091111 アロマターゼ阻害剤 クラシエ製薬株式会社 306018343 範本 文哲 森元 康夫 JP 2007301111 20071121 A61K 36/18 20060101AFI20100219BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100219BHJP A61P 5/24 20060101ALI20100219BHJP A61P 5/26 20060101ALI20100219BHJP A61P 5/32 20060101ALI20100219BHJP A61P 35/00 20060101ALI20100219BHJP A61P 3/06 20060101ALI20100219BHJP JPA61K35/78 CA61P43/00 111A61P5/24A61P5/26A61P5/32A61P35/00A61P3/06 2 2009542580 20081120 OL 19 4C088 4C088AB66 4C088AC05 4C088BA37 4C088NA14 4C088ZA70 4C088ZC10 4C088ZC11 4C088ZC20 4C088ZC33 本発明は、アロマターゼ阻害作用を有する薬剤に関する。更に詳しくは、本発明は生体内で男性ホルモン(アンドロゲン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素であるアロマターゼの活性を阻害して、男性ホルモンの減少又は女性ホルモンの増加を抑制し、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に有効な薬剤に関する。 近年、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜癌、閉経後乳癌等のエストロゲン依存性疾患では、病巣局所においてエストロゲン合成が亢進し(in situ estrogen)、それにより生じた局所エストロゲンが病巣の増殖・進展に深く関与することが明らかにされてきた(非特許文献1、2)。 従来、閉経後女性の乳癌等エストロゲン依存性疾患の治療には、エストロゲン受容体に結合して抗エストロゲン作用を示す薬剤であるタモキシフェンが用いられてきた。しかし、同薬剤については耐性発現の問題があるため、現在ではエストロゲン合成を担う律速酵素であるアロマターゼの阻害剤が治療薬として注目されている(非特許文献1、2)。 アロマターゼとは、男性ホルモン、即ちアンドロゲン(アンドロステンジオン、テストステロン)のステロイド骨格のA環を芳香化して女性ホルモン、即ちエストロゲン(エストロン、エストラジオール)に変換する性ホルモン生合成系の最終段階を担う律速酵素である(図1)。 閉経前女性における主たるエストロゲンの供給源は卵巣であるが、閉経後女性においては、エストロゲンは主として副腎から分泌されたアンドロゲンが筋肉や脂肪等の末梢組織のアロマターゼによって変換されることによって供給される。そのために、特に閉経後乳癌のホルモン療法において、アロマターゼはその標的酵素として注目されている。 前記の閉経後乳癌等の治療に用いられているアロマターゼ阻害剤に関しては、主に合成化合物を中心とする研究が多く、既に市販又は臨床試験中の阻害剤はその構造からType1(ステロイド系)とType2(非ステロイド系)に大別される(図2)。しかし、これらの合成化合物は臨床では肝障害や投与部位の疼痛等の副作用に加えて、Stevens−Johnson症候群を招来する懸念があるため、服用期間中に定期的な検査を受ける必要があるという問題点がある(非特許文献3)。 従って、安全で副作用のない天然素材で治療や予防効果が期待できる医薬品又は健康食品の開発が望まれている。更に、そのような素材を基に、新薬開発のための新たな先導化合物の発見も期待されている。 しかしながら、多種・多様な成分を有する天然素材、例えば生薬や植物からアロマターゼ阻害剤を探索する研究はほとんど行われていない(非特許文献4)。 一方、近年、男性においては、中高年以降に起きるいわゆる「男性更年期障害」が問題となっている。 「更年期障害」と言えば、以前は女性特有の疾患と考えられていたが、近年では男性にも更年期障害が存在することが認知されてきた。男性更年期障害の症状には易疲労、うつ、精力減退等があるが、その原因には加齢による男性ホルモンの減少が考えられている(非特許文献5)。 臨床では、男性ホルモンの減少に起因する男性更年期に対して、テストステロン等男性ホルモンの補充療法が行なわれているが、それには肝障害や前立腺癌、脱毛等の副作用が懸念されている(非特許文献6)。 そこで、本発明者は、前記の男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素であるアロマターゼに着目し、本酵素を阻害することで男性ホルモンの減少を防ぐことができるのではないかと考えた。 男性では加齢と共に男性ホルモンから女性ホルモンへの変換率が増加することが報告されている(非特許文献7)。また、性腺機能低下又は男性ホルモン欠乏症の男性に対してアロマターゼ阻害剤を投与することで、血中テストステロン値が回復又は増加することが報告されている(非特許文献8、特許文献1)。 更に、近年、男性更年期年齢にあたる中高年以降では、前記のような易疲労、うつ、精力減退等の諸症状の他に、上半身型の脂肪蓄積パターン、即ち内臓脂肪蓄積が高頻度で認められることから、メタボリックシンドロームの発症との関連が注目されている。即ち、メタボリックシンドロームの原因の一つにも加齢に伴うテストステロン等の男性ホルモンの減少が関与することが示唆されている(非特許文献9)。 また、男性においては、アロマターゼは他の部位に比べて内臓脂肪に多く分布し、加齢と共に本酵素の活性が増加することが知られている(非特許文献10)。更に、内臓脂肪蓄積の程度と血中テストステロン値とは逆相関を示すことが知られている。これらのことから、内臓脂肪におけるアロマターゼは、テストステロンの減少に起因する内臓脂肪蓄積において重要な因子として働いていると考えられている(非特許文献11)。 ちなみに、高齢男性へのテストステロン補充は、体脂肪量、血中レプチン値、食事摂取量を減少させ、基礎代謝を亢進させる。また、性腺機能低下症の男性では、加齢とともに体脂肪量の有意な増加が認められるが、テストステロンの投与によって体脂肪量が減少することが報告されている(非特許文献12)。 そこで、本発明者は、前記のアロマターゼを標的として、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患に対して治療及び/又は予防効果を示す、副作用のない薬剤を求めて、アロマターゼ阻害活性を有する新規素材の探索を行った。Chen S, Aromatase and breast cancer, Frontiers in Bioscience,3;d922−933,1998.Simpson ER and Dowsett M., Aromatase and its inhibitors:significance for breast cancer therapy, Recent Prog Horm Res.,57;317−38,2002.磯村八州男、岡田稔、アロマターゼ阻害薬の研究開発動向,ファルマシア,30巻,754−758,1994.Dietmar G, Gerhard S.,Aromatase inhibitors from Urtica dioca Roots,Planta Med.,61;138−140,1995. 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Syder PJ,et al.,Effects of testosterone replacement in hypogonadal men, J Clin Endocrinol Metab.,65;2670−2677,2000.特表平10−505848号公報 閉経後女性の乳癌の治療にあっては、乳癌細胞のエストロゲン受容体に結合し抗エストロゲン作用を示す薬剤であるタモキシフェンが従来使用されてきたが、その場合には耐性発現による乳癌の再発という問題点があった。一方、近年、男性ホルモンからのエストロゲン合成を抑制するアロマターゼ阻害剤が上記乳癌のようなエストロゲン依存性疾患に対する有効な治療薬として注目されている。しかしながら、我が国においては臨床使用が承認されているアロマターゼ阻害剤は僅かで、かつ様々な副作用のために、その使用は制限されている。 一方、最近、テストステロン低下に起因する男性更年期障害に対する関心が高まっている。また、内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームが社会的に大きな関心が寄せられている。更に、男性更年期にあたる中高年以降の男性においては、テストステロン等の男性ホルモンの低下が、内臓脂肪蓄積と関連することが示唆されている。しかしながら、このような男性更年期障害や内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームに有効な治療又は予防法はほとんどない。 本発明の課題は、男性ホルモン及び女性ホルモンの生合成の最終段階を調節する酵素であるアロマターゼを標的として、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に有効かつ安全な薬剤を提供することである。 上記実情に鑑み、本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意探索研究を行った。その結果、37種類の生薬、即ち、紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物にアロマターゼ阻害活性を見出し、本発明を完成するに至った。更に、インヨウカクの成分であるicariin及びマリアアザミの成分であるsilybin、silymarinについても同様にアロマターゼ阻害活性を見出した。 即ち、本発明は、1.紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラ或いは抽出物からなる群より1種又は2種以上選択される生薬の抽出物を含有することを特徴とするアロマターゼ阻害剤である。2.1に記載のアロマターゼ阻害剤を含有することを特徴とする性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防剤である。本願発明のアロマターゼ阻害剤は、男性ホルモン及び女性ホルモンの生合成の最終段階を調節する酵素であるアロマターゼを阻害することにより、男性ホルモンの減少又は女性ホルモンの増加を抑制し、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防を効果的に行うことができる。また本願発明のアロマターゼ阻害剤は天然素材からなる生薬由来の成分であることから、副作用がなく安全に使用することができる。 本発明者らは、様々な天然素材の中からアロマターゼ活性を阻害する物質を探索した結果、紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物がアロマターゼ活性を阻害するという知見を得た。これらの生薬についての詳細は次の通りである。 (1)紅景天(コウケイテン)はベンケイソウ科(Crassulaceae)の全弁紅景天(Rhodiola sacra Fu)又はその他同属植物の地下部を乾燥させたものである。 (2)夏枯草(カゴソウ)はシソ科(Labiaceae)のウツボグサ(Prunellavulgaris L.var.lilacina Nak.)の果穂を乾燥したものである。 (3)甘茶(アマチャ)はユキノシタ科(Saxifragaceae)の落葉低木ガクアジサイの変種であるアマチャ(Hydrangea macrophylla var. thunbergii)の若い葉を蒸して揉み、乾燥させものである。 (4)マリアアザミはキク科(Asteraceae)のオオアザミ(Silybum marianum L.、別名Carduus marianus L.)の痩果を乾燥したものである。 (5)ジャスミン茶は緑茶とジャスミン(Jasminum sambac (L.) Ait.)の花弁を混合し、乾燥したものである。 (6)ボクソクはブナ科(Fagaceae)のクスギ(Querus acutissima)またはその他近縁植物の樹皮を乾燥したものである。 (7)甜茶(テンチャ)はユキノシタ科(Saxifragaceae)のロウレンシュウキュウ(Hydrangea strigosa Rehd.)或いはヤクシマアジサイ(Hydrangea umbellate Rehd.)の若葉を乾燥させたものである。 (8)旱連草(カンレンソウ)はキク科(Compositae)のタカサブロウ(Eclipta prostrata)の全草を乾燥したものである。 (9)楊梅皮(ヨウバイヒ)はヤマモモ科(Myricaceae)の山桃(Myrica rubra Sieb. et Zucc.)の樹皮を乾燥したものである。 (10)フランス海岸松はマツ科(Pinaceae)のPinus pinasterあるいはP.maritimaの樹皮を乾燥したものである。 (11)檳榔(ビンロウ)はヤシ科(Arecaceae)の植物ビンロウ(Arecacatechu L.)の種子を乾燥したものである。 (12)アスパラガスはユリ科(Liliaceae)のオランダキジカクシ(Asparagus offcinalis L.)の根茎また根を乾燥したものである。 (13)漏芦(ロウロ)はキク科(Compositae)の祈州漏芦(Rhaponticum uniflorum DC.)オオルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)の根を乾燥させたものである。 (14)良姜(リョウキョウ)はショウガ科(Zingiberaceae)の高良姜(Alpinia officinarum Hance)の根茎を乾燥したものである。 (15)ルイボス茶マメ科(Leguminosae)のAspalathus linearisの針葉樹様の葉を乾燥したものである。 (16)大黄(ダイオウ)はタデ科(Polygonaceae)の掌葉大黄(Rheum palmatum L.)、唐古特大黄(R.tanguticum Maxim.ex Rgl.)、葯用大黄(R.officinale Baillon)又はR.coreanum Nakaiまたはそれらの種間の雑種の根茎を乾燥させたものである。 (17)プーアル茶は加熱によって酸化発酵を止めた緑茶を、コウジカビ(Aspergillus)で発酵させ、乾燥したものである。 (18)緑茶(リョクチャ)はツバキ科(Theaceae)の茶の木(Camellia sinensis Kunt)の葉を乾燥したものである。 (19)オウゴンはシソ科(Labiatae)のコガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の根を乾燥させたものである。 (20)西洋オトギリソウは金絲桃科(Hypericaceae)のセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum L.)の地上部を乾燥したものである。 (21)甘草(カンゾウ)はマメ科(Leguminosae)のウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisch.)又は西北甘草(G.glabra L.)の根とストロンを乾燥させたものである。 (22)千里光(センリコウ)はキク科(Compositae)のタイキンギク(Senecio scandens Buch.−Ham.)の全草を乾燥したものである。 (23)ウィンターグリーンはツツジ科(Ericaceae)のGaultheria procumbensの葉を乾燥したものである。 (24)訶子(カシ)はシクンシ科(Combretaceae)のTerminalia chebula Retz.の成熟した果実を乾燥したものである。 (25)野梧桐(ヤゴトウ)はトウダイグサ科(Euphorbiaceae)の赤芽槲(Mallotus japonicus)の樹皮を乾燥したものである。 (26)何首烏(カシュウ)はタデ科(Polygonaceae)のツルドクダミ(Polygonum multiflorum Thunberg)の塊根を乾燥したものである。 (27)インヨウカクはメギ科(Berberidaceae)のEpimedium pubescens Maximowicz、E.brevicornum Maximowicz、E. wushanense T.S.Ying、ホザキイカリソウ(E.sagittatum Maximowicz)、キバナイカリソウ(E.koreanum Nakai)、イカリソウ(E.gradiflorum Morr.)又はトキワイカリソウ(E.sempervirens Nakai)の茎と葉を乾燥したものである。 (28)ガラナはムクロジ科(Sapindaceae)のPaullina cupana H.B.Kの種子を乾燥したものである。 (29)桜皮(オウヒ)はバラ科(Rosaceae)の植物ヤマザクラ(Prunus jamasakura Sieb.ex Koidz.)又は同属近縁植物の樹皮を乾燥したものである。 (30)艾葉(ガイヨウ)はキク科(Compositae)のヨモギ(Artemisia princeps Pamp.)又はヤマヨモギ(A. montana Pamp.)の全草又は葉を乾燥したものである。 (31)地黄(ジオウ)はゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のアカヤジオウ(Rehmannia glutinosa Liboschitz var.purpurea Makino)又はR.glutinosa Liboschitzの根を乾燥したものである。 (32)山茱萸(サンシュユ)はミズキ科(Cornaceae)のサンシュユ(Cornus officinalis Siebold et Zuccarini)の偽果の果肉を乾燥したものである。 (33)細辛(サイシン)はウマノスズクサ科(Aristolochiaceae)のウスバサイシン(Asiasarum sieboldii Miq.)又はケイリンサイシン(A.heterotropoides F.Schm.var.mandshuricum F.Maekawa)の根及び根茎を乾燥したものである。 (34)桂皮(ケイヒ)はクスノキ科(Lauraceae)の桂樹(Cinnamomum cassia Blume)の樹皮を乾燥したものである。 (35)芍薬(シャクヤク)はボタン科(Paeoniaceae)のシャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.)の根を乾燥したものである。 (36)松葉(マツバ)はマツ科(Pinaceae)赤松(Pinus densiflora Sieb.et Zucc.)または黒松(P.thunbergii Parl.)の葉を乾燥したものである。 (37)アムラはトウダイグサ(Euphorbiaceae)科のEmblica officinalis Gaertnの果実を乾燥したものである。 また、これらの生薬のうちのインヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinの化学構造式は次の通りである。なお、silymarinはsilybin, silychristin,silydiani等のフラバノン誘導体の混合物である。 本発明で使用する生薬の材料となる各々の植物体の使用部位は、前述した部位が好ましいが、その他にも、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草等から選ばれる1種又は2種以上の部位を用いることが出来る。なお、抽出物としては、これら各種の生薬から溶媒を用いて直接抽出することで得られるものの他、圧搾処理を施した後に得られる圧搾液及び/又は残渣に溶媒を加えて抽出することで得られるものも、本発明における抽出物の定義の範囲に含まれる。 本発明における生薬の抽出物は公知の方法で製造したものでよく、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類又はこれらの混合溶媒のような抽出溶媒を用いて、常温抽出又は加熱抽出することにより製造でき、必要により、減圧又は加圧下で抽出してもよい。得られた抽出エキスは、そのまま使用することも可能であるが、通常、濃縮又は凍結乾燥で乾固したものを使用する。 以下に、抽出例を挙げて説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。 実施例1〔生薬抽出方法(1)〕 夏枯草(果穂)、甘茶(葉)、ジャスミン茶(葉、花)、ボクソク(樹皮)、甜茶(葉)、旱連草(全草)、楊梅皮(樹皮)、フランス海岸松(樹皮)、檳榔(種子)、漏芦(根)、良姜(根茎)、ルイボス茶(葉)、大黄(根)、プーアル茶(葉)、緑茶(葉)、オウゴン(根茎)、甘草(根)、千里光(全草)、ウィンターグリーン(葉)、訶子(果実)、野梧桐(皮)、何首烏(塊根)、インヨウカク(葉)、桜皮(皮)、艾葉(全草)、地黄(根)、山茱萸(果肉)、細辛(根)、桂皮(皮)、芍薬(根)、松葉(葉)の各乾燥物100gに各300Lの精製水を加え、80℃にて1時間加温還流で2回抽出し、濾過した抽出液を定法により凍結乾燥した。その結果、乾燥固形分としてそれぞれ18.5g、31.0g、27.3g、31.2g、13.8g、17.6g、20.4g、23.6g、17.8g、21.5g、22.0g、19.8g、35.5g、14.9g、12.7g、32.1g、33.7g、14.3g、15.1g、21.4g、24.3g、35.3g、15.2g、21.1g、12.3g、33.6g、30.8g、29.3g、25.1g22.1g、15.0gを得た。 実施例2〔生薬抽出方法(2)〕 アスパラガス(根茎、根)乾燥物100gに300Lの30%エタノール/精製水を、ガラナ(種子)乾燥物100gに300Lの35%エタノール/精製水を、紅景天(地下部)乾燥物100gに300Lの50%エタノール/精製水を、西洋オトギリソウ(地上部)乾燥物及びアムラ(果実)乾燥物各100gに各300Lの60%エタノール/精製水を、マリアアザミ(果皮)乾燥物100gに300Lの80%エタノール/精製水を加え、80℃にて1時間加温還流で2回抽出し、濾過した抽出液を定法により凍結乾燥した。その結果、乾燥固形分としてそれぞれ16.4g、17.9g、30.3g、27.5g、26.3g、3.5gを得た。 実施例3〔被検化合物〕 インヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinについては、市販の標準品を使用した。 即ち、icariin(LKT, Laboratories, Inc, USA, Lot No.2591307)、silybin(Extrasynthese, France, Lot No.02112642)及びsilymarin(LKT, Laboratories, Inc, USA, Lot No.2397805)を使用した。 実施例4 〔アロマターゼ阻害活性の測定〕 アロマターゼ阻害活性の測定は、既知論文(Sresser DM,Tuner SD,et al.,A High−throughput screen to identify inhibitors of aromatase(CYP19),Analytical Biochemistry,284;427―430,2000.)にて公表された方法に基づき、BD Biosciences社(米国)製の試薬を用いて行った。なお。比較例(ポジティブコントロール)としてはchrysin(Extrasynthese, France, Lot No.06042506)を使用した(図2)。 即ち、96穴マイクロプレートを用い、予め用意したNADPH産生系溶液(NADPH−Cofactor Mix)144μLと被検抽出物溶液6μLとを混合した後、37℃で10分間インキュベートし、酵素と基質の溶液(Enzyme Substrate Mix)100μLを加え混合後、37℃で30分間反応させた。その後、反応停止液75μLを加え、生成した基質の代謝物であるHFC(7−hydroxy−4−trifluoromethyl coumarin)量をプレートリーダー(SPECTRAFluor, TECAN)を用い、励起波長409nm, 蛍光波長 538nmにて蛍光強度を測定することにより求めた。なお、ブランクには、10分間インキュベート後に、酵素と基質の溶液に代わりに反応停止液75μLを添加した。アロマターゼ阻害率は式1により算出した。 A=(被検試料無添加の酵素反応後の吸光度−そのブランクの吸光度) B=(各濃度の被検試料の酵素反応後の吸光度−その各ブランクの吸光度) また、非特異的な阻害作用(例えばタンニンによる蛋白凝固作用)を避けるために、試薬に付帯する対照蛋白質をNADPH産生系溶液に添加した。 被検試料溶液については、濃度を段階的に希釈して各濃度における阻害率を求め、その結果から内挿法により、アロマターゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50値を求めた。 [試験結果] 約400種類の抽出物についてアロマターゼ阻害活性を測定した結果、次の37種類の生薬抽出物に濃度依存的、かつ最高濃度100μg/mLにおいて50%以上の阻害活性が認められた。表1〜4にはこれらの生薬抽出物のIC50値を阻害作用の強い順に示した。 即ち、阻害作用が認められたものは、 紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物の計37種類であり、それぞれのIC50値は6.1μg/mL、7.4μg/mL、7.4μg/mL、7.7μg/mL、7.8μg/mL、8.9μg/mL、9.0μg/mL、10.1μg/mL、10.3μg/mL、10.7μg/mL、11.3μg/mL、13.2μg/mL、13.4μg/mL、15.2μg/mL、16.0μg/mL、17.2μg/mL、17.8μg/mL、17.8μg/mL、20.1μg/mL、21.2μg/mL、22.7μg/mL、23.5μg/mL、26.9μg/mL、27.7μg/mL、30.1μg/mL、31.9μg/mL、35.0μg/mL、37.6μg/mL、37.8μg/mL、40.4μg/mL、44.7μg/mL、52.0μg/mL、58.0μg/mL、59.3μg/mL、72.5μg/mL、78.9μg/mL、98.4μg/mLであった(表1〜4参照)。 これら37種類の生薬は古くから中国及び中国以外の国々でも使われているが、アロマターゼ阻害作用を有することはこれまで全く知られておらず、本発明により初めて得られた新知見である。 なお、葛根、枳実、大棗、南天実、桔梗、厚朴、柴胡、陳皮、菟絲子、麦門冬、防已、荊芥、茯苓、附子、冬虫夏草、沢瀉、山薬、ホミカ、香附子、辛夷、刺五加、紅参、竹節人参、杜仲、白朮、蒼朮、吉草根、反鼻、生姜、セネガ、ホップ、赤ブドウ葉、アグニ、西洋カボチャ種子、西洋ヤナギ、カミツレ、イラクサ、ペパーミント、オリーブ葉、キビ種子、牛蒡、シベリア人参、西洋タンポポ、朝鮮アザミ、ニンニク、メリーサ葉、ニラ種子、ザクロ種子、西洋サンザシ、西洋ヤナギ、セロリ種子、タイム、ラベンダー、ハイビスカス、ローズヒップ、ローズマリー、南瓜子、オート麦、アイブライト、ニガウリ、芫花、玉米須、徐長郷、当帰葉、白僵蚕、エゾウコギ、白頭翁、モロヘイヤ、地楡、浮漂、蔵木瓜、桑根、青皮、功労葉、白薇、竹茹、カロコン、金絲草、柚子、野菊花、巻柏、秦皮、竜胆、南沙参、麻子仁、防風、独活、槐角、蒲公英、縮砂、黄柏、延胡索、牛膝、土貝母、十薬、射干、升麻、桑白皮、茜草、川棟子、山豆根、合歓皮、ビャクシ、辣椒、大腹皮、オウギ、黄連、ヨクイニン、山梔子、柴胡、菊花、朝鮮人参等については、100μg/mLにおいてアロマターゼ阻害活性が50%未満であるか、または100μg/mLにおいて阻害活性が50%以上であっても阻害活性に濃度依存性は認められなかった。 また、インヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinのアロマターゼ阻害活性を検討したところ、いずれも濃度依存的な阻害活性を示し、IC50値はそれぞれ0.754μM、4.86μM、3.79μMであった(表5)。ちなみに、これらの中でicariinは比較例のchrysinより強いアロマターゼ阻害活性を示した。 これらの化合物はいずれも公知の成分であるが、アロマターゼ阻害活性を有することはこれまで全く知られておらず、本発明により初めて得られた新知見である。 [結論] 本発明により初めてアロマターゼ阻害活性が見出された37種類の生薬抽出物については、これらを含有する医薬品又は健康食品は、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に寄与し得ると考えられる。 また、これらの生薬うちのインヨウカクに含まれる成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる成分であるsilybin、silymarinについては、これらを化学修飾することで新規なアロマターゼ阻害剤を開発するための先導化合物を提供することができると期待される。図1は、アロマターゼと男性ホルモン(androgens)及び女性ホルモン(estrogens)との関係を示した図である。図2は、閉経後女性の乳癌の治療に用いられるアロマターゼ阻害剤の構造式を示した図である。図3は、本発明における比較例(ポジティブコントロール)であるchrysinの構造式を示した図である。 甜茶の抽出物を含有することを特徴とするアロマターゼ阻害剤。 請求項1に記載のアロマターゼ阻害剤を含有することを特徴とする性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防剤。 【課題】男性ホルモン(アンドロゲン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素であるアロマターゼの活性を阻害して、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に有効かつ安全な薬剤を提供する。【解決手段】紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラからなる群より1種又は2種以上選択される生薬の抽出物を含有することを特徴とする性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防剤。【選択図】なし


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特許公報(B2)_アロマターゼ阻害剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アロマターゼ阻害剤
出願番号:2009257749
年次:2010
IPC分類:A61K 36/73,A61P 43/00,A61P 5/24,A61P 15/12,A61P 5/32,A61P 35/00,A61P 3/06


特許情報キャッシュ

範本 文哲 森元 康夫 JP 4536823 特許公報(B2) 20100625 2009257749 20091111 アロマターゼ阻害剤 クラシエ製薬株式会社 306018343 範本 文哲 森元 康夫 JP 2007301111 20071121 20100901 A61K 36/73 20060101AFI20100812BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100812BHJP A61P 5/24 20060101ALI20100812BHJP A61P 15/12 20060101ALI20100812BHJP A61P 5/32 20060101ALI20100812BHJP A61P 35/00 20060101ALI20100812BHJP A61P 3/06 20060101ALI20100812BHJP JPA61K35/78 HA61P43/00 111A61P5/24A61P15/12A61P5/32A61P35/00A61P3/06 A61K 36/73 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2004−175734(JP,A) 特開平6−192114(JP,A) 2 2009542580 20081120 2010059187 20100318 18 20091210 鶴見 秀紀 本発明は、アロマターゼ阻害作用を有する薬剤に関する。更に詳しくは、本発明は生体内で男性ホルモン(アンドロゲン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素であるアロマターゼの活性を阻害して、男性ホルモンの減少又は女性ホルモンの増加を抑制し、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に有効な薬剤に関する。 近年、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜癌、閉経後乳癌等のエストロゲン依存性疾患では、病巣局所においてエストロゲン合成が亢進し(in situ estrogen)、それにより生じた局所エストロゲンが病巣の増殖・進展に深く関与することが明らかにされてきた(非特許文献1、2)。 従来、閉経後女性の乳癌等エストロゲン依存性疾患の治療には、エストロゲン受容体に結合して抗エストロゲン作用を示す薬剤であるタモキシフェンが用いられてきた。しかし、同薬剤については耐性発現の問題があるため、現在ではエストロゲン合成を担う律速酵素であるアロマターゼの阻害剤が治療薬として注目されている(非特許文献1、2)。 アロマターゼとは、男性ホルモン、即ちアンドロゲン(アンドロステンジオン、テストステロン)のステロイド骨格のA環を芳香化して女性ホルモン、即ちエストロゲン(エストロン、エストラジオール)に変換する性ホルモン生合成系の最終段階を担う律速酵素である(図1)。 閉経前女性における主たるエストロゲンの供給源は卵巣であるが、閉経後女性においては、エストロゲンは主として副腎から分泌されたアンドロゲンが筋肉や脂肪等の末梢組織のアロマターゼによって変換されることによって供給される。そのために、特に閉経後乳癌のホルモン療法において、アロマターゼはその標的酵素として注目されている。 前記の閉経後乳癌等の治療に用いられているアロマターゼ阻害剤に関しては、主に合成化合物を中心とする研究が多く、既に市販又は臨床試験中の阻害剤はその構造からType1(ステロイド系)とType2(非ステロイド系)に大別される(図2)。しかし、これらの合成化合物は臨床では肝障害や投与部位の疼痛等の副作用に加えて、Stevens−Johnson症候群を招来する懸念があるため、服用期間中に定期的な検査を受ける必要があるという問題点がある(非特許文献3)。 従って、安全で副作用のない天然素材で治療や予防効果が期待できる医薬品又は健康食品の開発が望まれている。更に、そのような素材を基に、新薬開発のための新たな先導化合物の発見も期待されている。 しかしながら、多種・多様な成分を有する天然素材、例えば生薬や植物からアロマターゼ阻害剤を探索する研究はほとんど行われていない(非特許文献4)。 一方、近年、男性においては、中高年以降に起きるいわゆる「男性更年期障害」が問題となっている。 「更年期障害」と言えば、以前は女性特有の疾患と考えられていたが、近年では男性にも更年期障害が存在することが認知されてきた。男性更年期障害の症状には易疲労、うつ、精力減退等があるが、その原因には加齢による男性ホルモンの減少が考えられている(非特許文献5)。 臨床では、男性ホルモンの減少に起因する男性更年期に対して、テストステロン等男性ホルモンの補充療法が行なわれているが、それには肝障害や前立腺癌、脱毛等の副作用が懸念されている(非特許文献6)。 そこで、本発明者は、前記の男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素であるアロマターゼに着目し、本酵素を阻害することで男性ホルモンの減少を防ぐことができるのではないかと考えた。 男性では加齢と共に男性ホルモンから女性ホルモンへの変換率が増加することが報告されている(非特許文献7)。また、性腺機能低下又は男性ホルモン欠乏症の男性に対してアロマターゼ阻害剤を投与することで、血中テストステロン値が回復又は増加することが報告されている(非特許文献8、特許文献1)。 更に、近年、男性更年期年齢にあたる中高年以降では、前記のような易疲労、うつ、精力減退等の諸症状の他に、上半身型の脂肪蓄積パターン、即ち内臓脂肪蓄積が高頻度で認められることから、メタボリックシンドロームの発症との関連が注目されている。即ち、メタボリックシンドロームの原因の一つにも加齢に伴うテストステロン等の男性ホルモンの減少が関与することが示唆されている(非特許文献9)。 また、男性においては、アロマターゼは他の部位に比べて内臓脂肪に多く分布し、加齢と共に本酵素の活性が増加することが知られている(非特許文献10)。更に、内臓脂肪蓄積の程度と血中テストステロン値とは逆相関を示すことが知られている。これらのことから、内臓脂肪におけるアロマターゼは、テストステロンの減少に起因する内臓脂肪蓄積において重要な因子として働いていると考えられている(非特許文献11)。 ちなみに、高齢男性へのテストステロン補充は、体脂肪量、血中レプチン値、食事摂取量を減少させ、基礎代謝を亢進させる。また、性腺機能低下症の男性では、加齢とともに体脂肪量の有意な増加が認められるが、テストステロンの投与によって体脂肪量が減少することが報告されている(非特許文献12)。 そこで、本発明者は、前記のアロマターゼを標的として、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患に対して治療及び/又は予防効果を示す、副作用のない薬剤を求めて、アロマターゼ阻害活性を有する新規素材の探索を行った。Chen S, Aromatase and breast cancer, Frontiers in Bioscience,3;d922−933,1998.Simpson ER and Dowsett M., Aromatase and its inhibitors:significance for breast cancer therapy, Recent Prog Horm Res.,57;317−38,2002.磯村八州男、岡田稔、アロマターゼ阻害薬の研究開発動向,ファルマシア,30巻,754−758,1994.Dietmar G, Gerhard S.,Aromatase inhibitors from Urtica dioca Roots,Planta Med.,61;138−140,1995. 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Syder PJ,et al.,Effects of testosterone replacement in hypogonadal men, J Clin Endocrinol Metab.,65;2670−2677,2000.特表平10−505848号公報 閉経後女性の乳癌の治療にあっては、乳癌細胞のエストロゲン受容体に結合し抗エストロゲン作用を示す薬剤であるタモキシフェンが従来使用されてきたが、その場合には耐性発現による乳癌の再発という問題点があった。一方、近年、男性ホルモンからのエストロゲン合成を抑制するアロマターゼ阻害剤が上記乳癌のようなエストロゲン依存性疾患に対する有効な治療薬として注目されている。しかしながら、我が国においては臨床使用が承認されているアロマターゼ阻害剤は僅かで、かつ様々な副作用のために、その使用は制限されている。 一方、最近、テストステロン低下に起因する男性更年期障害に対する関心が高まっている。また、内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームが社会的に大きな関心が寄せられている。更に、男性更年期にあたる中高年以降の男性においては、テストステロン等の男性ホルモンの低下が、内臓脂肪蓄積と関連することが示唆されている。しかしながら、このような男性更年期障害や内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームに有効な治療又は予防法はほとんどない。 本発明の課題は、男性ホルモン及び女性ホルモンの生合成の最終段階を調節する酵素であるアロマターゼを標的として、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に有効かつ安全な薬剤を提供することである。 上記実情に鑑み、本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意探索研究を行った。その結果、37種類の生薬、即ち、紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物にアロマターゼ阻害活性を見出し、本発明を完成するに至った。更に、インヨウカクの成分であるicariin及びマリアアザミの成分であるsilybin、silymarinについても同様にアロマターゼ阻害活性を見出した。 即ち、本発明は、1.紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラ或いは抽出物からなる群より1種又は2種以上選択される生薬の抽出物を含有することを特徴とするアロマターゼ阻害剤である。2.1に記載のアロマターゼ阻害剤を含有することを特徴とする性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防剤である。本願発明のアロマターゼ阻害剤は、男性ホルモン及び女性ホルモンの生合成の最終段階を調節する酵素であるアロマターゼを阻害することにより、男性ホルモンの減少又は女性ホルモンの増加を抑制し、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防を効果的に行うことができる。また本願発明のアロマターゼ阻害剤は天然素材からなる生薬由来の成分であることから、副作用がなく安全に使用することができる。 本発明者らは、様々な天然素材の中からアロマターゼ活性を阻害する物質を探索した結果、紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物がアロマターゼ活性を阻害するという知見を得た。これらの生薬についての詳細は次の通りである。 (1)紅景天(コウケイテン)はベンケイソウ科(Crassulaceae)の全弁紅景天(Rhodiola sacra Fu)又はその他同属植物の地下部を乾燥させたものである。 (2)夏枯草(カゴソウ)はシソ科(Labiaceae)のウツボグサ(Prunellavulgaris L.var.lilacina Nak.)の果穂を乾燥したものである。 (3)甘茶(アマチャ)はユキノシタ科(Saxifragaceae)の落葉低木ガクアジサイの変種であるアマチャ(Hydrangea macrophylla var. thunbergii)の若い葉を蒸して揉み、乾燥させものである。 (4)マリアアザミはキク科(Asteraceae)のオオアザミ(Silybum marianum L.、別名Carduus marianus L.)の痩果を乾燥したものである。 (5)ジャスミン茶は緑茶とジャスミン(Jasminum sambac (L.) Ait.)の花弁を混合し、乾燥したものである。 (6)ボクソクはブナ科(Fagaceae)のクスギ(Querus acutissima)またはその他近縁植物の樹皮を乾燥したものである。 (7)甜茶(テンチャ)はユキノシタ科(Saxifragaceae)のロウレンシュウキュウ(Hydrangea strigosa Rehd.)或いはヤクシマアジサイ(Hydrangea umbellate Rehd.)の若葉を乾燥させたものである。 (8)旱連草(カンレンソウ)はキク科(Compositae)のタカサブロウ(Eclipta prostrata)の全草を乾燥したものである。 (9)楊梅皮(ヨウバイヒ)はヤマモモ科(Myricaceae)の山桃(Myrica rubra Sieb. et Zucc.)の樹皮を乾燥したものである。 (10)フランス海岸松はマツ科(Pinaceae)のPinus pinasterあるいはP.maritimaの樹皮を乾燥したものである。 (11)檳榔(ビンロウ)はヤシ科(Arecaceae)の植物ビンロウ(Arecacatechu L.)の種子を乾燥したものである。 (12)アスパラガスはユリ科(Liliaceae)のオランダキジカクシ(Asparagus offcinalis L.)の根茎また根を乾燥したものである。 (13)漏芦(ロウロ)はキク科(Compositae)の祈州漏芦(Rhaponticum uniflorum DC.)オオルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)の根を乾燥させたものである。 (14)良姜(リョウキョウ)はショウガ科(Zingiberaceae)の高良姜(Alpinia officinarum Hance)の根茎を乾燥したものである。 (15)ルイボス茶マメ科(Leguminosae)のAspalathus linearisの針葉樹様の葉を乾燥したものである。 (16)大黄(ダイオウ)はタデ科(Polygonaceae)の掌葉大黄(Rheum palmatum L.)、唐古特大黄(R.tanguticum Maxim.ex Rgl.)、葯用大黄(R.officinale Baillon)又はR.coreanum Nakaiまたはそれらの種間の雑種の根茎を乾燥させたものである。 (17)プーアル茶は加熱によって酸化発酵を止めた緑茶を、コウジカビ(Aspergillus)で発酵させ、乾燥したものである。 (18)緑茶(リョクチャ)はツバキ科(Theaceae)の茶の木(Camellia sinensis Kunt)の葉を乾燥したものである。 (19)オウゴンはシソ科(Labiatae)のコガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の根を乾燥させたものである。 (20)西洋オトギリソウは金絲桃科(Hypericaceae)のセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum L.)の地上部を乾燥したものである。 (21)甘草(カンゾウ)はマメ科(Leguminosae)のウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisch.)又は西北甘草(G.glabra L.)の根とストロンを乾燥させたものである。 (22)千里光(センリコウ)はキク科(Compositae)のタイキンギク(Senecio scandens Buch.−Ham.)の全草を乾燥したものである。 (23)ウィンターグリーンはツツジ科(Ericaceae)のGaultheria procumbensの葉を乾燥したものである。 (24)訶子(カシ)はシクンシ科(Combretaceae)のTerminalia chebula Retz.の成熟した果実を乾燥したものである。 (25)野梧桐(ヤゴトウ)はトウダイグサ科(Euphorbiaceae)の赤芽槲(Mallotus japonicus)の樹皮を乾燥したものである。 (26)何首烏(カシュウ)はタデ科(Polygonaceae)のツルドクダミ(Polygonum multiflorum Thunberg)の塊根を乾燥したものである。 (27)インヨウカクはメギ科(Berberidaceae)のEpimedium pubescens Maximowicz、E.brevicornum Maximowicz、E. wushanense T.S.Ying、ホザキイカリソウ(E.sagittatum Maximowicz)、キバナイカリソウ(E.koreanum Nakai)、イカリソウ(E.gradiflorum Morr.)又はトキワイカリソウ(E.sempervirens Nakai)の茎と葉を乾燥したものである。 (28)ガラナはムクロジ科(Sapindaceae)のPaullina cupana H.B.Kの種子を乾燥したものである。 (29)桜皮(オウヒ)はバラ科(Rosaceae)の植物ヤマザクラ(Prunus jamasakura Sieb.ex Koidz.)又は同属近縁植物の樹皮を乾燥したものである。 (30)艾葉(ガイヨウ)はキク科(Compositae)のヨモギ(Artemisia princeps Pamp.)又はヤマヨモギ(A. montana Pamp.)の全草又は葉を乾燥したものである。 (31)地黄(ジオウ)はゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のアカヤジオウ(Rehmannia glutinosa Liboschitz var.purpurea Makino)又はR.glutinosa Liboschitzの根を乾燥したものである。 (32)山茱萸(サンシュユ)はミズキ科(Cornaceae)のサンシュユ(Cornus officinalis Siebold et Zuccarini)の偽果の果肉を乾燥したものである。 (33)細辛(サイシン)はウマノスズクサ科(Aristolochiaceae)のウスバサイシン(Asiasarum sieboldii Miq.)又はケイリンサイシン(A.heterotropoides F.Schm.var.mandshuricum F.Maekawa)の根及び根茎を乾燥したものである。 (34)桂皮(ケイヒ)はクスノキ科(Lauraceae)の桂樹(Cinnamomum cassia Blume)の樹皮を乾燥したものである。 (35)芍薬(シャクヤク)はボタン科(Paeoniaceae)のシャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.)の根を乾燥したものである。 (36)松葉(マツバ)はマツ科(Pinaceae)赤松(Pinus densiflora Sieb.et Zucc.)または黒松(P.thunbergii Parl.)の葉を乾燥したものである。 (37)アムラはトウダイグサ(Euphorbiaceae)科のEmblica officinalis Gaertnの果実を乾燥したものである。 また、これらの生薬のうちのインヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinの化学構造式は次の通りである。なお、silymarinはsilybin, silychristin,silydiani等のフラバノン誘導体の混合物である。 本発明で使用する生薬の材料となる各々の植物体の使用部位は、前述した部位が好ましいが、その他にも、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草等から選ばれる1種又は2種以上の部位を用いることが出来る。なお、抽出物としては、これら各種の生薬から溶媒を用いて直接抽出することで得られるものの他、圧搾処理を施した後に得られる圧搾液及び/又は残渣に溶媒を加えて抽出することで得られるものも、本発明における抽出物の定義の範囲に含まれる。 本発明における生薬の抽出物は公知の方法で製造したものでよく、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類又はこれらの混合溶媒のような抽出溶媒を用いて、常温抽出又は加熱抽出することにより製造でき、必要により、減圧又は加圧下で抽出してもよい。得られた抽出エキスは、そのまま使用することも可能であるが、通常、濃縮又は凍結乾燥で乾固したものを使用する。 以下に、抽出例を挙げて説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。 実施例1〔生薬抽出方法(1)〕 夏枯草(果穂)、甘茶(葉)、ジャスミン茶(葉、花)、ボクソク(樹皮)、甜茶(葉)、旱連草(全草)、楊梅皮(樹皮)、フランス海岸松(樹皮)、檳榔(種子)、漏芦(根)、良姜(根茎)、ルイボス茶(葉)、大黄(根)、プーアル茶(葉)、緑茶(葉)、オウゴン(根茎)、甘草(根)、千里光(全草)、ウィンターグリーン(葉)、訶子(果実)、野梧桐(皮)、何首烏(塊根)、インヨウカク(葉)、桜皮(皮)、艾葉(全草)、地黄(根)、山茱萸(果肉)、細辛(根)、桂皮(皮)、芍薬(根)、松葉(葉)の各乾燥物100gに各300Lの精製水を加え、80℃にて1時間加温還流で2回抽出し、濾過した抽出液を定法により凍結乾燥した。その結果、乾燥固形分としてそれぞれ18.5g、31.0g、27.3g、31.2g、13.8g、17.6g、20.4g、23.6g、17.8g、21.5g、22.0g、19.8g、35.5g、14.9g、12.7g、32.1g、33.7g、14.3g、15.1g、21.4g、24.3g、35.3g、15.2g、21.1g、12.3g、33.6g、30.8g、29.3g、25.1g22.1g、15.0gを得た。 実施例2〔生薬抽出方法(2)〕 アスパラガス(根茎、根)乾燥物100gに300Lの30%エタノール/精製水を、ガラナ(種子)乾燥物100gに300Lの35%エタノール/精製水を、紅景天(地下部)乾燥物100gに300Lの50%エタノール/精製水を、西洋オトギリソウ(地上部)乾燥物及びアムラ(果実)乾燥物各100gに各300Lの60%エタノール/精製水を、マリアアザミ(果皮)乾燥物100gに300Lの80%エタノール/精製水を加え、80℃にて1時間加温還流で2回抽出し、濾過した抽出液を定法により凍結乾燥した。その結果、乾燥固形分としてそれぞれ16.4g、17.9g、30.3g、27.5g、26.3g、3.5gを得た。 実施例3〔被検化合物〕 インヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinについては、市販の標準品を使用した。 即ち、icariin(LKT, Laboratories, Inc, USA, Lot No.2591307)、silybin(Extrasynthese, France, Lot No.02112642)及びsilymarin(LKT, Laboratories, Inc, USA, Lot No.2397805)を使用した。 実施例4 〔アロマターゼ阻害活性の測定〕 アロマターゼ阻害活性の測定は、既知論文(Sresser DM,Tuner SD,et al.,A High−throughput screen to identify inhibitors of aromatase(CYP19),Analytical Biochemistry,284;427―430,2000.)にて公表された方法に基づき、BD Biosciences社(米国)製の試薬を用いて行った。なお。比較例(ポジティブコントロール)としてはchrysin(Extrasynthese, France, Lot No.06042506)を使用した(図2)。 即ち、96穴マイクロプレートを用い、予め用意したNADPH産生系溶液(NADPH−Cofactor Mix)144μLと被検抽出物溶液6μLとを混合した後、37℃で10分間インキュベートし、酵素と基質の溶液(Enzyme Substrate Mix)100μLを加え混合後、37℃で30分間反応させた。その後、反応停止液75μLを加え、生成した基質の代謝物であるHFC(7−hydroxy−4−trifluoromethyl coumarin)量をプレートリーダー(SPECTRAFluor, TECAN)を用い、励起波長409nm, 蛍光波長 538nmにて蛍光強度を測定することにより求めた。なお、ブランクには、10分間インキュベート後に、酵素と基質の溶液に代わりに反応停止液75μLを添加した。アロマターゼ阻害率は式1により算出した。 A=(被検試料無添加の酵素反応後の吸光度−そのブランクの吸光度) B=(各濃度の被検試料の酵素反応後の吸光度−その各ブランクの吸光度) また、非特異的な阻害作用(例えばタンニンによる蛋白凝固作用)を避けるために、試薬に付帯する対照蛋白質をNADPH産生系溶液に添加した。 被検試料溶液については、濃度を段階的に希釈して各濃度における阻害率を求め、その結果から内挿法により、アロマターゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50値を求めた。 [試験結果] 約400種類の抽出物についてアロマターゼ阻害活性を測定した結果、次の37種類の生薬抽出物に濃度依存的、かつ最高濃度100μg/mLにおいて50%以上の阻害活性が認められた。表1〜4にはこれらの生薬抽出物のIC50値を阻害作用の強い順に示した。 即ち、阻害作用が認められたものは、 紅景天、夏枯草、甘茶、マリアアザミ、ジャスミン茶、ボクソク、甜茶、旱連草、楊梅皮、フランス海岸松、檳榔、アスパラガス、漏芦、良姜、ルイボス茶、大黄、プーアル茶、緑茶、オウゴン、西洋オトギリソウ、甘草、千里光、ウィンターグリーン、訶子、野梧桐、何首烏、インヨウカク、ガラナ、桜皮、艾葉、地黄、山茱萸、細辛、桂皮、芍薬、松葉、アムラの抽出物の計37種類であり、それぞれのIC50値は6.1μg/mL、7.4μg/mL、7.4μg/mL、7.7μg/mL、7.8μg/mL、8.9μg/mL、9.0μg/mL、10.1μg/mL、10.3μg/mL、10.7μg/mL、11.3μg/mL、13.2μg/mL、13.4μg/mL、15.2μg/mL、16.0μg/mL、17.2μg/mL、17.8μg/mL、17.8μg/mL、20.1μg/mL、21.2μg/mL、22.7μg/mL、23.5μg/mL、26.9μg/mL、27.7μg/mL、30.1μg/mL、31.9μg/mL、35.0μg/mL、37.6μg/mL、37.8μg/mL、40.4μg/mL、44.7μg/mL、52.0μg/mL、58.0μg/mL、59.3μg/mL、72.5μg/mL、78.9μg/mL、98.4μg/mLであった(表1〜4参照)。 これら37種類の生薬は古くから中国及び中国以外の国々でも使われているが、アロマターゼ阻害作用を有することはこれまで全く知られておらず、本発明により初めて得られた新知見である。 なお、葛根、枳実、大棗、南天実、桔梗、厚朴、柴胡、陳皮、菟絲子、麦門冬、防已、荊芥、茯苓、附子、冬虫夏草、沢瀉、山薬、ホミカ、香附子、辛夷、刺五加、紅参、竹節人参、杜仲、白朮、蒼朮、吉草根、反鼻、生姜、セネガ、ホップ、赤ブドウ葉、アグニ、西洋カボチャ種子、西洋ヤナギ、カミツレ、イラクサ、ペパーミント、オリーブ葉、キビ種子、牛蒡、シベリア人参、西洋タンポポ、朝鮮アザミ、ニンニク、メリーサ葉、ニラ種子、ザクロ種子、西洋サンザシ、西洋ヤナギ、セロリ種子、タイム、ラベンダー、ハイビスカス、ローズヒップ、ローズマリー、南瓜子、オート麦、アイブライト、ニガウリ、芫花、玉米須、徐長郷、当帰葉、白僵蚕、エゾウコギ、白頭翁、モロヘイヤ、地楡、浮漂、蔵木瓜、桑根、青皮、功労葉、白薇、竹茹、カロコン、金絲草、柚子、野菊花、巻柏、秦皮、竜胆、南沙参、麻子仁、防風、独活、槐角、蒲公英、縮砂、黄柏、延胡索、牛膝、土貝母、十薬、射干、升麻、桑白皮、茜草、川棟子、山豆根、合歓皮、ビャクシ、辣椒、大腹皮、オウギ、黄連、ヨクイニン、山梔子、柴胡、菊花、朝鮮人参等については、100μg/mLにおいてアロマターゼ阻害活性が50%未満であるか、または100μg/mLにおいて阻害活性が50%以上であっても阻害活性に濃度依存性は認められなかった。 また、インヨウカクに含まれる公知成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる公知成分であるsilybin、silymarinのアロマターゼ阻害活性を検討したところ、いずれも濃度依存的な阻害活性を示し、IC50値はそれぞれ0.754μM、4.86μM、3.79μMであった(表5)。ちなみに、これらの中でicariinは比較例のchrysinより強いアロマターゼ阻害活性を示した。 これらの化合物はいずれも公知の成分であるが、アロマターゼ阻害活性を有することはこれまで全く知られておらず、本発明により初めて得られた新知見である。 [結論] 本発明により初めてアロマターゼ阻害活性が見出された37種類の生薬抽出物については、これらを含有する医薬品又は健康食品は、閉経後女性の乳癌のみならず、男性更年期障害及び内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドローム等の性ホルモン依存性疾患の治療及び/又は予防に寄与し得ると考えられる。 また、これらの生薬うちのインヨウカクに含まれる成分であるicariin及びマリアアザミに含まれる成分であるsilybin、silymarinについては、これらを化学修飾することで新規なアロマターゼ阻害剤を開発するための先導化合物を提供することができると期待される。図1は、アロマターゼと男性ホルモン(androgens)及び女性ホルモン(estrogens)との関係を示した図である。図2は、閉経後女性の乳癌の治療に用いられるアロマターゼ阻害剤の構造式を示した図である。図3は、本発明における比較例(ポジティブコントロール)であるchrysinの構造式を示した図である。 甜茶の抽出物を含有することを特徴とするアロマターゼ阻害剤。 請求項1に記載のアロマターゼ阻害剤を含有することを特徴とするエストロゲン依存性の子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜癌及び閉経後女性の乳癌、男性ホルモンの減少に起因する男性更年期障害及びテストステロンの減少に起因する内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームの治療及び/又は予防剤。


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