タイトル: | 公開特許公報(A)_グリセリン飲料 |
出願番号: | 2009257491 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/047,A61P 3/00,A61P 43/00,A61K 47/36 |
窪田 金嘉 JP 2011088879 公開特許公報(A) 20110506 2009257491 20091021 グリセリン飲料 株式会社クレッセンドコーポレーション 596069874 窪田 金嘉 A61K 31/047 20060101AFI20110408BHJP A61P 3/00 20060101ALI20110408BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110408BHJP A61K 47/36 20060101ALI20110408BHJP JPA61K31/047A61P3/00A61P43/00 101A61K47/36 3 書面 15 4C076 4C206 4C076AA12 4C076BB01 4C076CC50 4C076EE39 4C076FF67 4C076FF68 4C076GG02 4C206AA01 4C206AA02 4C206AA04 4C206CA05 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA04 4C206MA05 4C206NA06 4C206ZA89 4C206ZA94 4C206ZA96 4C206ZC02 本発明は、運動時の熱障害の予防及び保護のため、有効成分としてグリセリンを含んで成る飲料用であり、デキストリンによるグリセリンの粉末化及びこれらの有効成分の組み合せの使用、に関する。 グリセリンは、無色透明のシロップ状の液体で、匂いがなく、甘みがあります。その名前はギリシャ語のglykys(甘い)に由来し、1779年にスウェーデン人のK.W.シェーレがオリーブ油加水分解物の中から発見しました。 当初は、膠(にかわ)やコルクの製造に使われていましたが、その用途は次第に織物やインクの染色助剤に拡がっていきました。 また、1867年にA.B.ノーベルがグリセリンからダイナマイトを製造、グリセリンの用途拡大の一大転機を迎えることとなりました。 グリセリンは、高等植物や海草、動物などに広く含まれ、私たち人間も、皮下や筋肉などに「脂質」という形で蓄えられています。 グリセリン骨格の3個の水酸基すべてに脂肪酸がエステル結合したものが「脂質」あるいは「油脂」と呼ばれています。グリセリンには、ヤシの実などの「油脂」を原料とした天然グリセリンと、石油を原料とする合成グリセリンとがあります。 通常、天然グリセリンは油脂を加水分解して得られる水溶液(甘水)を精製、濃縮し、粗製グリセリンを製造、さらに蒸留、精製して製品化する方法で生産されています。 現在では資源の再生産の立場から世界的にも天然グリセリンが主流となっており、国内および海外で天然グリセリンが製造、販売されております。 グリセリンの特性は、保湿性、吸湿性、粘稠性、熱安定性、溶解性、可塑性、安全性に富み、安心して利用できる素材です。 グリセリンの物理・化学的性質は、無色透明な殆ど臭いのない、甘みのある粘性がある液体で、水、アセトン、エタノールに溶解します。 グリセリンの用途は、医薬品(パップ剤、浣腸、坐薬、軟膏など)、化粧品(クリーム、ローションなど)、トイレタリー、食品、モノグリセライド、カプセル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、セロファン、フィルム、ハミガキ、マウスウオッシュ、インキ、香料、タバコ、タバコのフィルター、火薬、不凍剤、石鹸、繊維、紙、溶剤、コンデンサー等、あらゆる分野で利用されています。 さらに世界ではグリセリンの用途は上記のみではなく、運動時の飲料用としても利用されてきました。但し、いままでの飲料用の使用方法は液体を摂取するものでした。 「1991年の東京世界選手権、1992年、1996年のオリンピック、1995年Mar del Plataパンアメリカンゲームなどでグリセリン飲料が適切な水分量を維持するために非常に効果があることがわかった」と「中長距離ランナーの科学的トレーニング」(デビッド・マーティン+ピーター・コー著、征矢英昭+尾縣貢監訳、講談社)に書かれています。 調べてみると、アメリカやヨーロッパでは1970年代から研究が進み、すでに多くの実践者がいて、その飲料も販売されていました。 グリセリンを摂取すると体の組織の中に水を蓄え、体液の電気化学的性質を長時間保持することが出来るので、脱水による事故を防げるのです。 しかし一時期、グリセリンには副作用があるということでアメリカオリンピック委員会では大量使用すると禁止薬物になったことがありました。これはタダやたら飲めばいいと考えた人たちが、飲みすぎて下痢を起すことがあったからです。しかし、濃度と量を守れば副作用の心配はありません。今では禁止薬物のリストに入っていません。 国際アンチドーピング機構(WADA)から発表される禁止表国際基準(WorldAnti−Doping Code)を調査してみました。 過去にさかのぼってわかる範囲で言うと、2005年以来一貫してグリセリンが禁止薬物のリストに入っていないのです。 日本のスポーツ界もこの基準にしたがって、グリセリン飲料はドーピングの検査対象ではありません。国内試合でも国際試合でも、グリセリンの摂取は安心して使用できます。 安心して使えて効果があるのに、日本ではグリセリン飲料が使用された経緯がありません。2002年の段階で日本人での有効性の研究すら行われていませんでした。 「中長距離ランナーの科学的トレーニング」著者のピーター・コーは科学者でありコーチです。彼は息子のセバスチャン・コーを世界のトップランナーに育て上げています。 セバスチャン・コーは、1980年代に10年もの間世界の陸上中距離界をリードし、世界記録を12回も更新しています。 デビッド・マーチンは、実践的運動生理学者で、アメリカ陸上競技男子強化委員会のマラソン部門の委員長として、またアメリカのスポーツ科学理事会の小委員会委員長として、長距離選手の育成に生理学者として永年携わっています。長距離選手の育成のために、グリセリン飲料を利用したことは言うまでもありません。 本発明の目的は、先行技術の欠点を回避するための方法を発見することが課題であり、「中長距離ランナーの科学的トレーニング」の著者であるデビッド・マーティン・ピーター・コーが実践してきた「グリセリン飲料」の安全で効果的な摂取方法の確立と本発明のグリセリン粉末組成物を使用することです。 本発明に従うと、運動時の熱障害に対する紫外線及び近赤外線の有害効果の処置および予防のため、グリセリンを含有する飲料に適切に適応される組成物において、デキストリンにより粉末化されたグリセリンを含有することを特徴とする組成物の生成です。 グリセリンが総重量に基づいて0.001重量%〜40重量%の量で存在していることを特徴とし、デキストリンが総重量に基づいて0.001重量%〜90重量%の量で存在していることを特徴とする組成物の生成です。 本発明に従う有効成分組み合せ物、およびこのような有効成分組み合せ物を含んで成る飲料用グリセリン粉末組成物はすべての点で極めて満足な調製物です。本発明に従う組成物が先行技術の組成物よりも、−運動時における熱障害を副作用なく予防する、−関節部位又は筋肉部位及び皮膚のバリヤー特性をよりよく維持または回復する、−組成物の摂取量が正確であるため安全・安心であり、効果を有する、−グリセリンの粉末化により摂取方法が簡単であり、保存及び携帯に便利である、ことは先行業者により予知されることができなかったことです。 本発明に従って使用されるグリセリン粉末配合の有効成分組み合せ物、或は本発明に従って使用される有効成分組み合せ物を有効量含有する飲料用組成物の使用は、驚くべきことに個々の成分に関して相乗的効果を有することです。 グリセリン飲料による科学的な検証は、1987年にリードセルによって行われたのが最初のようです。その後1990年代に盛んに行われました。 気温が高い状態で、疲労困憊まで運動を続けるなどの実験が繰り返し行われた結果、グリセリンローディング(グリセリン飲料摂取)をすると、ただの水分補給(ハイパーハードレーション)と比べて、次のような効果があることがわかりました。 ・約2時間から4時間の間に、約600cc〜1lの水分を体にためることが出来る。・心拍数と体温の変化は、気候、時期等の違いから研究報告がまちまちである。・多くの実験では、より長時間運動を続けることが出来る。・多くの実験では、汗がよく出て体温が上がらない。・からだに異常を起こすような生理的変化がない。・効果をあげるにはグリセリンの濃度、飲む量、運動開始のいつ飲むのかが大切である。・グリセリンが薄すぎる場合、熱くも寒くもない状態、運動強度が低い状態では、ほとんど効果がない(特に、温度が高く、2時間から4時間以上の長時間の運動で効果がある)。・逆にグリセリンが濃すぎるときは、頭痛がするなどの症状があらわれる。・グリセリンを飲むタイミングにより、効果がまちまちである。 1990年代から研究発表されてきたグリセリン飲料に対する実験は、液状のグリセリンでの摂取方法です。実験でも液状のグリセリンを正確に簡単に測ることは容易ではない。まして、運動選手がグリセリン飲料を摂取するには、一時期オリンピックのドーピング対象になったように、グリセリン液を正確に摂取することは難しい。グリセリン液を粉末化することで、グリセリン含有量が定量化するため正確に摂取することできる。 体重増加量水分摂取開始から終了後90分までの尿量血漿浸透圧およびヘマトクリットの経時的変化体重増加量グリセリン負荷が運動前後の体重に及ぼす影響水分摂取開始から運動前までの尿量水分摂取開始から運動前までの血漿浸透圧の経時的変化5分ごとの平均パワー出力の経時的変化最大努力区間(40〜70分)のそう仕事量運動中の心拍数の経時的変化運動中の血糖値及び血中乳酸値の経時的変化運動中の血漿浸透圧の経時的変化運動前後の鼓膜温の変化運動中の主観的尺度の経時的変化二次元気分尺度:各項目の経時的変化 グリセリン粉末は、自然状態に維持しかつその新鮮さを保持しつつ素材から商品化への加工工程において、使用原料、熱、水、圧力、空気、酸化等の品質劣化要因の少ない商品形態に配慮しなければならない。また、一日の生産量、消費量、摂取量、取扱い易さ、コスト、関係法規の要因も考慮しなければならない。 グリセリン粉末の製品化は、自体公知の食品添加物、賦形剤、医薬担体と自体公知の方法で配合し、特性を生かした効能効果を有する前記グリセリン粉末にすることができる。用いる食品添加物は特に限定するものではなく、目的とする効能効果の具体的用途に応じて当業者が適宜選択できる。また、グリセリン粉末の形態も特に限定するものではなく、具体的用途に応じていろいろな形状にすることができる。 筑波大学での共同研究筑波大学征矢英昭教授の指導のより国内で行われたグリセリンローディングの実験・「グリセリン飲料の摂取による運動前のハイパーハイドレーションが高温環境下における持久的能力に及ぼす影響」(田代浩一、西保岳、大森肇)平成15年度筑波大学卒論(株式会社クレッセンドコーポレーションと共同研究)・「グリセリン摂取による運動前のハイパーハイドレーションは高温・多湿環境下における持久的能力を向上させる」(西島壮、田代浩一、窪田金嘉、吹田真士、征矢英昭)グリセリン計画書に基づく検証・「暑熱下の脱水を防ぐグリセリンローディング」(西島壮、征矢英昭)体育の科学54巻10号・グリセリン実験「水分摂取はどこまで減らせるか?」田代卒論に対しての実験 日本では、いままでグリセリンローディングの研究がまったく行われていませんでした。しかし、今まで見てきたように高温多湿の夏を持つ日本では、運動時の水分補給はとくに重要な意味を持ちます。ですから、日本でのハイパーハイドレーションの研究は、大変重要だと考えられます。 また、グリセリンを大量に摂取すると、頭痛、目のかすみ、下痢、吐き気を催すことがあるので、日本人の体質ではグリセリンを摂取して問題が起きないことの確認も大切になります。 そこで、筑波大学で、最も効果のある使い方と安全性とを検証を行いました。平成15年から行われてきた筑波大学での実験の結果がどのようなものになったかをここでご紹介します。これは、国際的に権威ある学術誌「International Journal of SportandHealth Science」にも掲載されていて、全文をインターネットサイトでも読めます。 実験1 水分摂取方法の検証健康な筑波大学男子学生6名が、水だけを飲んだ場合とグリセリンを飲んだ場合でどのくらい保水効果に違いがあるかの比較の実験を行いました。 グリセリンの飲み方は、低濃度(1g〜1.5g)のグリセリンを一度に飲んだ場合(低濃度1回法)と、少しずつ分けて飲んだ場合(bolus法)の二種類で比較しました。 1 体重および尿量の変化水分摂取前と摂取後90分に体重測定をしました。結果は、水だけを飲んだ場合は37±136g減り、低濃度のグリセリンを一度に飲んだ場合(低濃度1回法)で463±72gの増加、少しずつ分けて飲んだ場合(bolus法)は、773±130g増加となりました。(図1)統計学的にも有意な増加傾向が認められました。 平均値は、水だけよりも低濃度1回法で500g、bolus法で810gも増加しています。水分摂取後にどのくらいおしっこに出たかを調べると、水だけを飲んだ場合は、1470±94.7ml、zoukasita.低濃度1回法では909±108ml、bolus法では645±105mlとなりました。これも、有意に尿量が減少しています。(図2) 水分摂取前における血漿浸透圧の値はそれぞれ、水だけの場合(287±2mOsm/kg)、低濃度1回法(285±2mOsm/kg)、グリセリン飲料を分けて飲んだbolus法は、(286±2mOsm/kg)で有意な差が認められました。 2 血漿浸透圧およびヘマトクリットの経時的変化水分摂取前における血漿浸透圧の値はそれぞれ、水だけの場合(287±2mOsm/kg)、低濃度1回法(285±2mOsm/kg)、グリセリン飲料を分けて飲んだbolus法は、(286±2mOsm/kg)で有意な差が認められました。 ヘマトクリットはそれぞれ、水だけ(43.3±0.6%)、低濃度1回法(44.3±0.5%)、bolus法(43.6±0.8%)で、有意差は認められませんでした。(図3) 3 グリセリン飲料の摂取による体調への影響被験者の中に、グリセリン飲料を飲んだときに頭痛やめまい、およびグリセリン独特の甘味による喉ごしの不快感を抱くものが数名いましたが、飲んだあと次第に自覚症状が和らいでいき、終了後60分程度で自覚症状はなくなっています。これらの問題に対しては、その後グリセリンの粉末化で大幅な改善がおこなわれました。 実験2 運動による効果の検証実験2では、実験1で最も保水効果のあったbolus法と、水だけを飲んだ場合との比較を行いました。 被験者は、筑波大学陸上部男子中距離選手7名で行いました。実験は、グリセリン飲料を飲んだ場合(bolus法)と、通常のスポーツ飲料薄めた水を飲んだ場合で調べました。 負荷が被験者に適したものかを調べるために、血中乳酸濃度IT値を測定してから、自転車のペダリングを70分間行って調べました。 70分間の内、最初の40分間は一分間に60回転の速さでこぎ、そのあと最大努力で30分間こぐ、という方法で行いました。室温を30.3±0.6℃、湿度を50.8±2.3%に調整しました。 1)体水分量水分の摂取前と運動前、運動後で体重を測定して、体重の増加量をしらべました。水分摂取前から運動前にかけての体重増加量は、水だけを飲んだ場合が130±106gの体重増加だったものが、グリセリン飲料を飲んだ場合では920±102gの体重増加となりました。(図4) 統計学的に有意に増加しています。増加量の平均値の差は790.3gでした。運動後でもグリセリン飲料を飲んだ場合は、777±209gの体重減少なのに比べて、水だけの場合は、1676±119mlもの体重減少となりました。統計学的に有意な違いで、平均値の差は899gでした。(図5) また水を飲む前から運動前までの尿の量は、水だけを飲んだ場合が1224±105mlでグリセリン飲料を飲んだ場合が560±86.4mlで、やはり統計学的に有意に減少しました。(図6) 血中乳酸濃度LT値:乳酸は疲労物質といわれていますが、血液中の乳酸の濃度は、静かにしているときでも4〜16mg/dl程度はあります。静かにしているところから運動を始めて、少しずつ運動強度を増やしながら血液の乳酸濃度を測定していくとどうなるでしょうか。初めのうちは乳酸の生成量と利用量が同じなので大きな変化はありません。しかし、だんだんと乳酸の濃度は上昇し始めます。ある強度を越えると、急に血液の乳酸の濃度が上昇し始めます。この血中乳酸濃度が急増する領域を「乳酸性閾値」「LT:Lactate Threshold」と呼びます。 2)血漿浸透圧水分を摂取する前の血漿浸透圧の値は、水だけを飲んだ場合が291±1.0mOsm/kg、グリセリン飲料を飲んだ場合が、290±0.6mOsm/kgでした。グリセリン飲料を飲んだ場合は、水分摂取前に比べて120分と運動前において有意に増加を示しました。また、120分においてグリセリン飲料の摂取と水だけの摂取した場合との間に有意な差がみられました。(図7) 3)−1 運動パフォーマンスへの影響1)5分毎の平均パワー出力の経時的変化5分毎の平均パワー出力は、ペースを維持している40分までは水だけを飲んだ場合とグリセリン飲料を飲んだ場合では同じように一定の値を維持していました。それ以後の最大努力でのペダリング中の30分間では有意差は見られませんでしたが、それでもグリセリン飲料を飲んだ方が平均パワー出力は常に高値を示しました。(図8) 2)最大努力区間における総仕事量最大努力区間での総仕事量は、平均してグリセリン飲料を飲んだものが308±16.6kJで、水だけを飲んだほうが259±35.9kJとなりました。グリセリン飲料を飲んだほうが高いのですが、有意差は見られませんでした。(図9) しかし、被験者による個人差は大きく、水だけの場合に比べてグリセリン飲料を飲んだ場合で総仕事量が増大した被験者は6人中2人(プラセボを100とした場合の増加率:152.6%、121.3%)、ほぼ変化なかった被験者は3人(102.4%、98.9%、99.5%)、低下した被験者は1人(92.7%)という内容となりました。 3)−2 生理的指標心拍数は運動開始とともに増加し、運動終了時には水だけを飲んだ場合は177±8bpm、グリセリン飲料を飲んだ場合は187±5bpmとなりましたが、有意差は見られませんでした。(図10) 血糖値は、運動前に水だけを飲んだ場合は79.2±2.9mg/dl、グリセリン飲料を飲んだ場合は80.4±3.1mg/dlと最も高くなりました。運動を開始すると両方とも減っていき、運動終了まで低い値が続きました。(図11) 血中の乳酸値は運動を開始して上昇し、10分から60分までは大きな変化はありませんでした。60分から70分にかけて上昇し、終了時の値は水だけを飲んだ場合は2.7±0.94mM、グリセリン飲料を飲んだ場合は3.85±0.76mMでした。(図11)両方の間には有意差は見られませんでしたが、運動開始後40分以後はグリセリン飲料を飲んだ場合は水だけを飲んだ場合よりもわずかに高値を示しました。 血漿浸透圧は運動を開始後の40分で運動前に比べ有意に上昇し、その後70分まで上昇を続けました。両者を比較すると、70分で水だけを飲んだ場合は301±4mOsm/kg、グリセリン飲料を飲んだ場合は304±2mOsm/kgにまで上昇しました。(図12) 鼓膜温は運動中正確に計測することが出来ないので、運動前後の値を記録しました。運動前の水だけを飲んだ場合は36.1±0.2℃、グリセリン飲料を飲んだ場合は36.2±0.3℃で運動後の水だけを飲んだ場合は37.4±0.2℃、グリセリン飲料を飲んだ場合は37.4±0.2℃となりました。(図13) 3)−3 主観的指標RPE(主観的運動強度)は運動を始めてから終了まで上昇を続け、終了時にはで水だけを飲んだ場合は18.8±1.0、水だけを飲んだ場合は19.3±0.5にまで上昇しましたが、有意な差はありませんでした。(図14) 温度感覚尺度の値は運動開始後上昇しました。運動開始後40分を過ぎてから水だけを飲んだ場合はグリセリン飲料を飲んだ場合に比べて有意な差はありませんでしたがわずかに低い値を示していました。(図14) 渇き尺度の値は運動を始めてから終了まで上昇を続け、終了時にはで水だけを飲んだ場合は7.5±1.4、グリセリン飲料を飲んだ場合は、7.7±1.2にまで上昇しましたが、有意差は見られませんでした。(図14) 3−)4 心理指標1)POMS実験の前後に心理指標POMSで、水だけを飲んだ場合とグリセリン飲料を飲んだ場合比較しましたが、有意差は見られませんでした。(図15) 2)覚醒度2次元気分尺度の経時的変化エネルギー覚醒は、水だけを飲んだ場合とグリセリン飲料を飲んだ場合の間で有意差は見られませんでしたが、水分摂取開始から120分まではグリセリン飲料を飲んだ場合に対して水だけを飲んだ場合はわずかに高値を示しました。 しかし150分では差はなくなりました。また、運動開始後両群とも低下しましたが、40分でグリセリン飲料を飲んだ場合に若干の高値を示しました。また運動前から40分にかけてグリセリン飲料を飲んだ場合にでは上昇したが、水だけを飲んだ場合では変化がありませんでした。緊張覚醒、および覚醒度はどちらについても有意な差は認められませんでした。(図15) 快適度は有意な差はありませんでしたが、水分の摂取開始から120分まではグリセリン飲料を飲んだ場合より水だけを飲んだ場合が若干の高値を示しました。しかし150分では差は無くなりました。また、運動開始後どちらも低下しましたが、40分でグリセリン飲料を飲んだ場合がわずかに高値を示しました。(図15) 実験1 水分摂取方法の検証1 保水効果について 水分摂取前から摂取後90分にかけて、水だけを飲んだ場合と比べてグリセリン飲料を 飲んだ場合は、有意に体重が増加し、尿量も減少して予想通りの結果となりました。 透圧が上昇したことで、利尿が抑制されて、体の水分量が増え、ハイパーハイドレーシ ョン状態で水分摂取が終わってから90分間もの間維持されたことが確認されました。 また、体重増加量の平均値の差は水だけ合と比べてbolus法で810gでした。これは今回の実験の参考にしたMontnerら(1995)の報告(摂取後60分の時点で730±30gの差よりも高値を示して、より大きな保水効果が認められたことになります。 このような体の水分量の増加は、運動中の脱水での運動パフォーマンスの低下を遅延させる可能性を示しています。 それと同様に、高温多湿環境下で起こりやすい脱水が原因で生じる熱中症などの予防策として使用することも有用だと考えられます。 2 グリセリン飲料摂取による体調の変化について被験者のなかに、グリセリン飲料を摂取した際に軽い頭痛やめまい、およびグリセリン独特の甘みによる喉の不快感を抱く被験者が数名いましたが、このことは実際のスポーツ現場に置いて使用する際には大きな問題となる可能性がありました。喉の不快感の問題は、その後グリセリンの粉末化を成功させるなどの対策により改善しました。 実験2 グリセリン飲料摂取が高温環境下における運動パフォーマンスを向上させるかについての生理的および心理的側面からの検証 1 保水効果について水分摂取前に対する体重変化量は、グリセリン飲料を飲んだ場合が水だけを飲んだ場合と比べて低値を示しました。このことからグリセリン飲料を飲んだ場合は、運動前に通常以上の水分量が体に残っていたために、運動で汗をかいて起きる脱水症状の危険性を低くさせることが考えられます。 運動前のグリセリンによるハイパーハイドレーションは、持久的パフォーマン向上だけでなく、脱水症状や熱中症を予防するなど、より安全なスポーツ環境を整えるために非常に有効である可能性が高いことがわかりました。 2 運動パフォーマンスについて運動パフォーマンスに関しては、5分毎の平均パワー出力と最大努力区間での総仕事量のどちらにも統計的な有意差は見られませんでした。 しかしHitchinsら(1990)の結果と同様に最大努力区間での平均パワー出力はグリセリン飲料を飲んだ場合は常に水だけを飲んだ場合よりも若干の高値を示していました。 また各被験者別に総仕事量の上昇率を見ると、6人中2人は上昇、3人は変化なし、1人が減るという結果となりました。これらのことから、グリセリン飲料を飲んだ場合の運動パフォーマンは、個人差が大きいことがわかりました。 パフォーマンス向上のためではなく、脱水症状を予防するためのグリセリン飲料であることをよく理解して使っていただくことが重要だと思われます。 まとめこの研究により、以下のことが明らかになりました。ハイパーハイドレーションに関して顕著な効果を確認することが出来ました。その結果、グリセリン飲料を摂取することは、暑熱下におけるトレーニングや、日常活動に起こる熱中症などの脱水障害の予防に効果を発揮すると考えられます。 日本ではこの研究のように、グリセリン飲料の摂取と運動パフォーマンスの関係について検討した研究はまったく行われていないのが現状であり、今後さまざまな条件(運動形態、環境、負荷強度)を設定し、さらなる検討を重ねていくことが必要であると思われます。 留意点なおこの研究は、体育の科学54巻10号に掲載されていますが、グリセリン飲料を摂取する場合の留意点があります。以下の点を注意して、グリセリンローディングで、熱中症を予防していただけたらと思います。 グリセリン飲料を摂取後に、稀に軽い頭痛、目のかすみ、下痢の症状が現れることがあるが60分ぐらいで改善される。運動を始める前に60〜90分程度の余裕をみることがよい。また、これらの症状は個人差があるので、自分の体質に合うかの確認を行うことが望まれる。但し、グリセリンローディングを継続することで、体質は改善される。 その他の留意点としては、肥満、腎疾患、循環器系疾患、肝臓疾患などの疾病を有するもの、および妊婦はグリセリンローディングを行うべきでないとされている。 また、血中グリセリン濃度が高い状態が続くと腎機能を損なう危険があるので、長期間の繰り返しの使用も避けるべきであろう。故に、グリセリン濃度を低濃度で正確に摂取する方法が重要になります。 本発明のグリセリンの粉末化を成功させるなどの対策が,グリセリンの摂取量を簡単で正確に適量摂取でき、安心・安全な摂取方法であると確信します。 スポーツ選手は、水分補給の重要性を痛感させられるような経験をお持ちではないかと思います。本発明に従って、グリセリン粉末化によるグリセリン飲料は、スポーツ界の救世主になると確信します。 水分補給をきちんとしなければならないのは、スポーツ選手ばかりではありません。長時間、外で働かなければならない人々は大勢います。農作業、漁業に携わる人たち、建築や道路工事の現場で働く人たち、室温の高い工場内で働く人たち、また医療現場においても、非常に大勢の人たちが水分補給は体調維持に重要な要因です。そういう人たちにとっても、このグリセリン粉末化によるグリセリン飲料という手法は、グリセリンの摂取量を簡単で正確に適量摂取でき、安心・安全な摂取方法として水分補給に充分役立つと考えています。 グリセリンを含有する飲料に適切に適応される組成物において、粉末化されたグリセリンを含有することを特徴とする組成物。 グリセリンが総重量に基づいて0.001重量%〜40重量%の量で存在していることを特徴とする、請求項1記載の使用。 デキストリンが総重量に基づいて0.001重量%〜90重量%の量で存在していることを特徴とする、請求項1記載の使用。 【課題】デキストリンにより粉末化されたグリセリンを含有することを特徴とする組成物の提供。【解決手段】グリセリンが総重量に基づいて0.001重量%〜40重量%の量で存在し、デキストリンが総重量に基づいて0.001重量%〜90重量%の量で存在していることを特徴とする組成物。【選択図】なし