タイトル: | 公開特許公報(A)_還元型グルタチオン油性懸濁製剤 |
出願番号: | 2009248188 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61K 9/10,A61P 27/02 |
石井 玲子 服部 学 JP 2011093831 公開特許公報(A) 20110512 2009248188 20091028 還元型グルタチオン油性懸濁製剤 ライオン株式会社 000006769 石井 玲子 服部 学 A61K 38/00 20060101AFI20110415BHJP A61K 9/10 20060101ALI20110415BHJP A61P 27/02 20060101ALI20110415BHJP JPA61K37/02A61K9/10A61P27/02 1 OL 6 4C076 4C084 4C076AA23 4C076BB24 4C076CC10 4C076DD34A 4C076DD38A 4C076FF63 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA01 4C084BA15 4C084BA23 4C084DC31 4C084MA23 4C084MA58 4C084NA03 4C084ZA332 本発明は、グルタチオンを含有した製剤に関する。詳しくは、還元型グルタチオンを含有した油性懸濁製剤に関するものである。 グルタチオンは、細菌からヒトに至るまで普遍的に存在するペプチド性のチオールであり、細胞内において主要な抗酸化剤として、また毒物などを細胞外に排出する役割を果たしている。 グルタチオンは、生体内の眼、特に水晶体に多く含まれ、組織の透明性維持に関与していると言われている。眼科では、初期老人性白内障や角膜疾患の治療に用いられる(例えば、特許文献1参照)。 一方、グルタチオンは水溶液状態において非常に安定性が悪いため、使用時に薬物を溶解する方法(用時溶解法)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、用事溶解する方法は使用者にとって便利なものではなく、一剤型のものが望まれていた。 また、溶解後も冷暗所(1〜15℃)保存が必要など、使用中も制限が伴っており、利便性が悪いという問題を有していた。 すなわち、安定性の悪いグルタチオンを安定に配合できれば、一剤型で保存方法の簡便な製剤が開発できる。しかしながら、そのような製剤が未だ開発されていないのが現状である。特表2001−504132号公報医療用タチオン点眼用2% 本発明は、グルタチオンを安定に配合した一剤型の製剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、水溶液中で安定性の悪いグルタチオンを油性基材に配合し、油性懸濁製剤とすることによって安定性に優れた一剤型の製剤が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。 従って本発明は、下記油性懸濁型点眼剤を提供する。[1].還元型グルタチオンを含有する油性懸濁型点眼剤。 本発明により、グルタチオンを安定に配合した一剤型の製剤が提供できる。 本発明で使用されるグルタチオンは、還元型グルタチオンであり、医薬品用として使用されるものであれば、特に制限なく使用することができる。グルタチオンの化学式は、C10H17N3O6Sで表され、分子量は、307.32である。グルタチオンには還元型と酸化型が存在するが、本発明では、特に注記しない限り、還元型グルタチオンを「グルタチオン」と称する。 本発明で使用されるグルタチオンの粒子径は、油性懸濁製剤の点眼時に刺激(異物感)を感じない粒子径であることが望ましいため、グルタチオンの粒子径は75μm以下であることが好ましい。 グルタチオンの配合量は、特に制限されないが、有効性や副作用の点から、組成物全体に対して、0.01〜4g/100mL(以下、W/V%で表記する)が好ましく、より好ましくは0.04〜2W/V%であり、さらに好ましくは0.1〜2W/V%であり、特に好ましくは0.5〜1W/V%である。配合量が0.01W/V%未満であると、有効性が得られない場合があり、4W/V%を超えると眼の刺激感や掻痒感等が起こる場合がある。 本発明に用いられる油性基剤としては、生体適合性が高い油成分であれば任意のものが使用できる。具体的には、例えば、ヒマシ油、ダイズ油、オリブ油、ゴマ油、ツバキ油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、ナタネ油等の液体植物油及び流動パラフィンなど、プロピレングリコールなどの2価の多価アルコール、β−オクチルドデカノールなどの天然及び高級アルコール類が例示できる。 本発明に用いられる分散剤(懸濁安定剤)としては、外観の均一性の点から、ステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸等を配合することが好ましい。これら、分散剤の配合量は、特に制限されるものではなく、通常、組成物中に好ましくは、0.05〜2.0W/V%、より好ましくは、0.1〜1.0W/V%の範囲で配合することができる。少ないと分散の均一性が得られない場合が有り、多すぎると、眼への刺激性が強くなるなどの問題を生じる場合がある。 本発明の油性懸濁製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、油性薬物、溶解補助剤、保存剤、香料を配合することができる。 油性薬物としては、ビタミンA、ビタミンA誘導体、ビタミンE、ビタミンE誘導体などが挙げられる。れら、薬物の配合量は、特に制限されるものではなく、通常、組成物中に好ましくは0.001〜2W/V%、より好ましくは0.01〜1.0W/V%の範囲で配合することができる。 溶解補助剤としては、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、プルロニックなどの非イオン界面活性剤が例示できる。これら、溶解補助剤の配合量は、特に制限されるものではなく、通常、組成物中に好ましくは0.01〜1W/V%、より好ましくは0.05〜0.5W/V%の範囲で配合することができる。多すぎると、眼への刺激性が強くなるなどの問題を生じる場合がある。 保存剤としては、フェニルエチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン等が例示できる。 香料としては、ベルガモット油、ローズ油、ハッカ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ラベンダー油などの精油、l−メントール、dl−カンフル、d−ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールなどのテルペノイド化合物が例示できる。これら香料の配合量は、0.0005〜0.5W/V%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.2W/V%である。これらの香料を配合することで、基剤の油の基剤臭をマスキングし、良好な香りを楽しむことができるため好ましい。 本発明の組成物は、通常の眼科用組成物の製造方法に準じて製造することができ、必要に応じて加熱、冷却、乳化、高圧乳化、滅菌、ろ過などを行うことができる。 本発明の組成物は、多回投与容器、単回投与容器のいずれにも充填できる。また、容器の材質としては、ガラス,ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 本発明の組成物は、グルタチオンの安定性をさらに向上させるために、充填容器内のヘッドスペースを窒素充填し封入することが好ましい。また、充填容器をポリエチレンやアルミ等の袋に封入する際にも、これらフィルム包装内を窒素充填することによりさらに安定性は向上するため好ましい。脱酸素剤(商品名:エージレス、三菱ガス化学(株))をフィルム内に封入することによりグルタチオンの安定性が向上するため好ましい。 以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。<グルタチオン定量法> グルタチオンの定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により以下の条件で実施した。 [HPLC条件] 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm) カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。 カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相:リン酸二水素カリウム6.8g及び1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム2.02gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpH3.0に調整した。この液970mLにメタノール30mLを加えた。 流量:グルタチオンの保持時間が約5分になるように調整した。<残存率> グルタチオンの残存率(%)は以下の式により算出した。グルタチオン残存率(%) =加速試験でのグルタチオン定量値/調製直後のグルタチオン定量値×100<液剤の調製及び保存方法> 100mL共栓付きメスシリンダーにプロピレングリコール((株)ADEKA)をとり,グルタチオン(協和醗酵キリン(株))を添加し、スターラーと攪拌子を用いて分散させ、さらに、流動パラフィン(丸石製薬(株))を添加し、分散させ、流動パラフィンでメスアップした。これを50℃の恒温庫にて保存した。比較例は精製水を用いて分散、メスアップした。 保存前と50℃、3日間保存後の液中のグルタチオンの定量を行った。保存後の液剤は測定前に、攪拌して分散させて実施した。 使用した原料は下記の通りである。グルタチオン:L−グルタチオン、協和醗酵キリン(株)、日局製造専用流動パラフィン:日本薬局方流動パラフィン、丸石製薬(株)プロピレングリコール:局方プロピレングリコール、(株)ADEKA その結果、油性懸濁製剤である実施例1は、水溶液である比較例1に対し、グルタチオンの安定性が非常に優れていた。 参考例として、タチオン点眼用2%(アステラス製薬(株))を50℃、3日間保存したときの残存率は24%であった。 実施例1の調製方法に準じて、表2〜4に記載の油性懸濁製剤を調製した。これらの油性懸濁製剤も安定性が良好であった。 還元型グルタチオンを含有する油性懸濁型点眼剤。 【課題】還元型グルタチオンの安定性が良好な製剤を提供することを課題とする。【解決手段】油性懸濁剤とすることで、還元型グルタチオンの安定性が格段に向上する。【選択図】なし