タイトル: | 公開特許公報(A)_生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む神経変性疾患の治療または予防のための組成物 |
出願番号: | 2009244191 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61K 31/685,A61P 25/28,A61P 43/00 |
垣塚 彰 福士 順平 JP 2011088860 公開特許公報(A) 20110506 2009244191 20091023 生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む神経変性疾患の治療または予防のための組成物 国立大学法人京都大学 504132272 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 松谷 道子 100106518 志賀 美苗 100127638 櫻井 陽子 100138911 橋本 諭志 100146259 垣塚 彰 福士 順平 A61K 45/00 20060101AFI20110408BHJP A61K 31/685 20060101ALI20110408BHJP A61P 25/28 20060101ALI20110408BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110408BHJP JPA61K45/00A61K31/685A61P25/28A61P43/00 111 6 OL 18 特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月25日 社団法人日本生化学会発行の「第82回 日本生化学会大会 プログラム・講演要旨集」において発表 4C084 4C086 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA02 4C084ZC20 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA41 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZC20 本発明は、生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む、神経変性疾患の治療または予防のための組成物、特にポリグルタミン病の治療または予防のための前記組成物に関する。 ポリグルタミン病は、原因遺伝子内のコード領域に異常伸張したCAGリピートを持つ遺伝性神経変性疾患の総称である。ポリグルタミン病における神経障害では、伸長ポリグルタミンを含む異常タンパク質の凝集・蓄積、小胞体ストレス、転写の異常、酸化ストレスなどが重要であることが知られており、これらの現象を抑制する幾つかの化合物がポリグルタミン病の神経細胞の変性・細胞死を抑制することが報告されている。しかしながら、決定的にポリグルタミン病の治療に結びつく成果はこれまでのところ得られていない。 また、ポリグルタミン病、アルツハイマー病をはじめとして多くの神経変性疾患は、それぞれ原因遺伝子が異なるにもかかわらず、神経細胞における異常タンパク質の凝集・蓄積、神経細胞の変性・細胞死など、共通の表現型を有することがこれまでの研究から明らかになっている。かかる共通性から、特定の神経変性疾患の治療薬は、他の神経変性疾患にも有効に作用することが期待されている。Journal of Neurochemistry, Vol. 110, Issue 6, Pages 1737-1765 (September 2009) 本発明は、異常タンパク質の凝集・蓄積を特徴とする神経変性疾患の新規治療薬を提供することを目的とする。 本発明者らは、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼のリン脂質組成を調べ、伸長ポリグルタミンの発現により変性した複眼においてリノール酸を含むリン脂質が相対的に低下することを見出した。前記モデルショウジョウバエに各種リン脂質を経口投与したところ、リノール酸含有リン脂質の投与により効果的にショウジョウバエの複眼変性が抑制され、本願発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む、神経変性疾患を治療または予防するための組成物、特に神経変性疾患がポリグルタミン病である前記組成物を提供する。 また、本発明は、リノール酸含有リン脂質またはその混合物を含む、神経変性疾患を治療または予防するための組成物、特に神経変性疾患がポリグルタミン病である前記組成物を提供する。 さらに、本発明は、リノール酸含有リン脂質の分解酵素の阻害薬を含む、神経変性疾患を治療または予防するための組成物、特に神経変性疾患がポリグルタミン病である前記組成物を提供する。 本発明により、生体内のリノール酸含有リン脂質を増強することによって神経変性疾患を治療または予防することが可能となった。本発明は、神経変性疾患の治療や予防に新たな選択肢を提供する。本発明の組成物は、本来食品や生体内に存在する物質を増強するという点で、副作用のリスクが少ないことが期待される。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおけるDiOC6(3)染色の蛍光強度の低下。Gal4:無毒のタンパク質である酵母由来転写因子Gal4蛋白質を複眼組織に発現するショウジョウバエ(野生型ショウジョウバエと同等)(以下、対照標準ショウジョウバエ)、Q92:ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼の抗KDEL抗体による免疫染色像。PhC:位相差顕微鏡画像(Phase Contrast Image)。加齢にともなうDiOC6(3)染色の蛍光強度の減少。ポリグルタミン病モデルマウスにおけるDiOC6(3)染色の蛍光強度の低下。矢印は伸長ポリグルタミン発現プルキンエ細胞、矢じりは伸長ポリグルタミン非発現プルキンエ細胞を示す。薄層クロマトグラフィーにおけるDiOC6(3)とリン脂質の相互作用。アスタリスク(*)はDiOC6(3)染色前にも観察されていたスポットを示す。G: 対照標準ショウジョウバエ、Q:ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおけるDiOC6(3)染色の蛍光強度の変化。複眼(eye)、脳(brain)、他の体部分(body)の結果を示す。左図の縦軸は、他の体部分の蛍光強度により標準化した複眼または脳のPCとPEの蛍光強度の合計を示す。右図はPE/PC比を示す。羽化後10日目の対照標準ショウジョウバエおよびポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼のリン脂質組成。伸長ポリグルタミン発現により減少したリン脂質の二段階質量分析スペクトル。FA:脂肪酸、LPE:リゾホスファチジルエタノールアミン、PI:ホスファチジルイノシトール、LPA:リゾホスファチジン酸、LPI:リゾホスファチジルイノシトール。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける複眼変性のレシチンおよびPE(18:2/18:2)添加による抑制。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける複眼色素量低下のレシチンおよびPE(18:2/18:2)添加による回復。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける異常リン脂質組成の卵黄レシチンおよびPE(18:2/18:2)添加による回復。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける複眼変性のPlaaノックダウンによる抑制。羽化後10日目(上)および40日目(下)の結果を示す。Gal4:対照標準ショウジョウバエ、Q92:ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ、Q92/Plaa KD:Plaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ。Plaa:ホスホリパーゼA2活性化蛋白質遺伝子。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおけるDiOC6(3)染色の蛍光強度の低下のPlaaノックダウンによる回復。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける異常リン脂質組成のPlaaノックダウンによる回復。Plaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼におけるPE(36:4)の二段階質量分析スペクトル。対照標準ショウジョウバエ(1)、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(2)、およびPlaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ (3)の脳における伸長ポリグルタミンの凝集量の比較。 本発明は、生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む、神経変性疾患の治療または予防のための組成物に関する。リノール酸は、9および12位にシス二重結合をもつ炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸である。本発明において「リノール酸含有リン脂質」とは、脂肪酸として1以上のリノール酸を有するリン脂質を意味する。生体内のリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)などがある。本明細書において「PE(36:4)」と表記する場合、脂肪酸の炭素数が合計36、二重結合数が合計4であるホスファチジルエタノールアミン(PE)を意味し、「PE(18:2/18:2)」とは、炭素数18、二重結合数2の脂肪酸(すなわちリノール酸)を2つ含むホスファチジルエタノールアミン(PE)を意味する。 本発明の「生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質」には、生体内のリノール酸含有リン脂質の量を増加する物質、およびその減少を抑制する物質の両方が含まれる。生体内のリノール酸含有リン脂質を増加する物質としては、リノール酸含有リン脂質およびその混合物が挙げられ、生体内のリノール酸含有リン脂質の減少を抑制する物質としては、リノール酸含有リン脂質の分解酵素の阻害薬が挙げられる。 本発明の組成物に含まれる「リノール酸含有リン脂質」は、天然リン脂質であっても、合成リン脂質であってもよい。本発明に好適なリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルコリン(PC)であり、例えば1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(PE(18:2/18:2))が使用できる。 本発明の「リノール酸含有リン脂質の混合物」は、複数種類のリノール酸含有リン脂質を含むものであり、さらにリノール酸含有リン脂質以外の成分を含んでいてもよい。かかる混合物としては、卵黄レシチン、大豆レシチンなどが例示される。これらは、シグマアルドリッチジャパン株式会社、ナカライテスク株式会社などから入手可能である。 「リノール酸含有リン脂質の分解酵素の阻害薬」としては、リン脂質分解酵素であるホスホリパーゼA2およびホスホリパーゼBの阻害薬が挙げられる。ホスホリパーゼA2阻害薬としては、塩酸ジラゼブ、AACOCF3(アラキドノイル−トリフルオロメチル−ケトン)が知られている。また、ホスホリパーゼBの阻害薬としては、1,12−ビス−(トリブチルホスホニウム)ドデカンが知られている。また、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼBの発現を抑制するアンチセンスDNA、siRNAも使用可能である。 本発明の対象とする神経変性疾患は、神経細胞における異常タンパク質の凝集・蓄積を特徴とする疾患である。これにはポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。本発明は、ポリグルタミン病に特に好適である。 ポリグルタミン病は、原因遺伝子内のコード領域に異常伸張したCAGリピートを持つ神経変性疾患であり、伸長ポリグルタミンを含む異常タンパク質の凝集・蓄積を特徴とする。ポリグルタミン病には、脊髄小脳失調症1型(SCA1)、2型(SCA2)、3型(SCA3)(マシャドー・ジョセフ病(MJD))、6型(SCA6)、7型(SCA7)、17型(SCA17)、歯上核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン病(HD)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)が含まれる。 本発明の組成物は、神経変性疾患の治療または予防のために使用することができる。本発明の組成物は、経口または非経口のいずれの経路で投与されるものであってもよい。その剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤が挙げられる。本発明の組成物は、有効成分である生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質に加えて、賦形剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤など、適当な添加剤を含んでもよい。本発明の組成物の投与量は、有効成分、投与経路、剤形、対象の年齢、体重、症状などにより適宜変更されるが、成人1日あたり、例えばリノール酸含有リン脂質の量として100mg〜10g、あるいはホスホリパーゼA2阻害薬の量として塩酸ジラゼブの場合150〜300mgであり、これを1日1回または数回に分けて投与することができる。1.ポリグルタミン病モデルショウジョウバエの作製 ショウジョウバエの複眼組織に伸長ポリグルタミンを発現させて組織変性を誘導するモデルが、ヒトポリグルタミン病の疾患モデルとして用いられている(実験医学、Vol. 24 NO. 10、2006、p204-9)。文献(Higashiyama H, Cell Death Differ 9:264-273 2002)に記載の方法にしたがい、92個の伸長ポリグルタミンを発現するpGMR-FlagQ92プラスミドDNAを直接受精卵にマイクロインジェクションし、遺伝子組み換えショウジョウバエを作成した。2.ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおけるリン脂質の低下 羽化後5日目の対照標準ショウジョウバエ(GMR-Gal4/+)およびポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)の脳水平切片を、小胞体染色用のDiOC6(3) (Invitrogen)および核染色用のTOTO-3(Invitrogen)により染色した。その結果、上記モデルショウジョウバエにおいて、DiOC6(3)染色の蛍光強度の低下が観察された(図1)。一方、小胞体局在蛋白質を検出する抗体である抗KDEL抗体(Stressgen)による免疫染色の強度は、伸長ポリグルタミン発現によっては低下しなかった(図2)。 羽化後2、5、および10日目のポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)の脳水平切片を観察したところ、DiOC6(3)染色の蛍光強度の減少の加齢に伴う進行がみられた(図3)。 また、文献(Ikeda H, Nat Genet 13:196-202 (1996))に記載の方法にしたがい、64個の伸長ポリグルタミンを小脳プルキンエ細胞に発現するポリグルタミン病モデルマウスを作成した。8週齢の雌ポリグルタミン病モデルマウス(L7-HAQ64C/+)の小脳切片を、抗カルビンジン抗体(プルキンエ細胞を検出)、DiOC6(3)、および抗ヘマグルチニン(HA)抗体(ポリグルタミンを検出)により染色した。伸長ポリグルタミンを発現するプルキンエ細胞(抗カルビンジン抗体陽性、抗HA抗体陽性の細胞)ではDiOC6(3)染色の蛍光強度が低下しており(図4)、哺乳動物においてもショウジョウバエと同様の現象が観察されることがわかった。3.ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおけるリノール酸含有リン脂質の減少 DiOC6(3)の結合標的を調べるため、ショウジョウバエの各種組織の脂溶性画分を薄層クロマトグラフィーにより解析した。羽化後5日目のショウジョウバエの複眼、脳、および脳以外の部分からの脂溶性画分をシリカゲルプレートにアプライし、有機溶媒で展開し、そしてDiOC6(3)またはプリムリン(ナカライテスク株式会社)(リン脂質を染色)で染色した。その結果、主なものとして、PEおよびPCの2種類のリン脂質の群とトリグリセリド(TG) が検出された(図5)。 DiOC6(3)染色の蛍光強度を統計学的に解析したところ、複眼のPEとPCを合わせた蛍光強度が、伸長ポリグルタミンの発現により有意に減少していた(図6左)。また、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼では、PE/PC比が減少していた(図6右)。 次いで、羽化後10日目の対照標準ショウジョウバエ(GMR-Gal4/+)およびポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)の複眼のリン脂質組成を、液体クロマトグラフィー/質量分析装置(LC/MS)(日本ウォーターズ株式会社、サーモフィッシャー株式会社)により調べた。PEおよびPIにおける各分子種の相対量を図7に示す。ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおいて、PE(36:4)、PE(34:2)、PI(36:4)などのリン脂質の割合に低下が見られた。二段階質量分析の結果、これらのリン脂質はリノール酸を含んでいることが明らかとなった(図8)。4.ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける複眼変性および異常リン脂質組成のリノール酸含有リン脂質の投与による抑制 リノール酸含有リン脂質を豊富に含む卵黄レシチン(シグマアルドリッチジャパン株式会社、ナカライテスク株式会社)、大豆レシチン(シグマアルドリッチジャパン株式会社)、または1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(PE(18:2/18:2)(Avanti Polar Lipids, Inc.)を、レシチンは各40 mg/ml、PE(18:2/18:2)は2 mg/mlの最終濃度で通常エサに添加したエサを用いて、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエを育成し、羽化後10日目の複眼を観察した。その結果、これらの添加により、伸長ポリグルタミン発現による複眼組織の色素脱落が顕著に抑制された(図9)。また、色素沈着試験により色素量を定量したところ、複眼の色素量が改善していた(図10)。 通常エサ、および卵黄レシチンまたはPE(18:2/18:2)を添加したエサで飼育したポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)(羽化後5日目)の複眼のリン脂質組成を、LC/MSにより調べた。伸長ポリグルタミン発現により誘発されるリノール酸含有リン脂質の減少は、卵黄レシチンまたはPE(18:2/18:2)の添加により部分的に回復していた(図11)。5.ポリグルタミン病モデルショウジョウバエにおける複眼変性および異常リン脂質組成のホスホリパーゼA2活性化蛋白質遺伝子(plaa)のノックダウンによる抑制 リン脂質分解酵素であるホスホリパーゼA2を活性化するホスホリパーゼA2活性化蛋白質の遺伝子(plaa)をRNAiによりノックダウンした。Plaaを組織特異的にノックダウンするショウジョウバエ系統は、国立遺伝学研究所より分与された(Stock IDは5105R-2である)。 対照標準ショウジョウバエ(GMR-Gal4/+)、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)、およびplaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Gal4/+; GMR-Q92/UAS-5105R2)の外眼部形態を観察した。Plaaのノックダウンにより、伸長ポリグルタミン発現による複眼変性の顕著な抑制が観察された(図12)。 次いで、羽化後5日目のポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)およびplaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Gal4/+; GMR-Q92/UAS-5105R2)の脳切片(厚さ10μm)を、DiOC6(3)(Invitrogen)または抗Flag抗体(シグマアルドリッチジャパン株式会社)(伸長ポリグルタミン(polyQ)を検出)により染色した。Plaaのノックダウンにより、伸長ポリグルタミン発現によるDiOC6(3)染色の蛍光強度の減少が回復した(図13)。 また、羽化後3日目の対照標準ショウジョウバエ(GMR-Gal4/+)、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+)、およびplaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Gal4/+; GMR-Q92/UAS-5105R2)の複眼のリン脂質組成をLC/MSにより解析した。伸長ポリグルタミン発現によるPE(36:4)およびPI(36:4)の減少は、plaaのノックダウンにより部分的に回復した(図14)。 Plaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエの複眼におけるPE(36:4)の組成を二段階質量分析(LC/MS/MS)により解析した。その結果、リノール酸含有PEに由来するスペクトル (279.4 および476.1) が検出された(図15)。 さらに、対照標準ショウジョウバエ(GMR-Gal4/+、レーン1)、ポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Q92/+、レーン2)、およびplaaノックダウンポリグルタミン病モデルショウジョウバエ(GMR-Gal4/+; GMR-Q92/UAS-5105R2、レーン3)の脳における伸長ポリグルタミン凝集量を比較した。各ショウジョウバエの脳からタンパク質を抽出し、抗Flag抗体(伸長ポリグルタミン(polyQ)を検出)および蛋白質量のコントロール抗elav抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank (アイオワ大学)より供与)を用いてウエスタンブロット法を行った。脳における伸長ポリグルタミンの凝集量は、plaaのノックダウンにより変化はみとめられなかった(図16)。 生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む、神経変性疾患の治療または予防のための組成物。 神経変性疾患がポリグルタミン病である、請求項1の組成物。 該物質が、リノール酸含有リン脂質またはその混合物である、請求項1または2の組成物。 該物質が、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、卵黄レシチン、および大豆レシチンからなる群から選択される、請求項3の組成物。 該物質が、リノール酸含有リン脂質の分解酵素の阻害薬である、請求項1または2の組成物。 該物質がホスホリパーゼA2阻害薬である、請求項5の組成物。 【課題】生体内のリノール酸含有リン脂質を増強する物質を含む、神経変性疾患を治療または予防するための組成物、特に神経変性疾患がポリグルタミン病である前記組成物を提供する。【解決手段】該組成物は1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、卵黄レシチン、および大豆レシチンからなる群から選択される物質を含有する。該物質がリノール酸含有リン脂質の分解を阻害するホスホリパーゼA2阻害薬である。【選択図】なし