タイトル: | 公開特許公報(A)_有機化合物中の官能基の測定方法 |
出願番号: | 2009228713 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 31/00,G01N 31/12 |
林 聡史 福岡 正輝 JP 2011075455 公開特許公報(A) 20110414 2009228713 20090930 有機化合物中の官能基の測定方法 積水化学工業株式会社 000002174 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 林 聡史 福岡 正輝 G01N 31/00 20060101AFI20110318BHJP G01N 31/12 20060101ALI20110318BHJP JPG01N31/00 VG01N31/00 YG01N31/12 Z 3 OL 7 2G042 2G042AA01 2G042BD03 2G042BD13 2G042BD15 2G042DA10 2G042FA01 2G042FB02本発明は、定量的かつ簡便な有機化合物中の官能基の測定方法に関する。有機化合物中の官能基を測定するため、様々な方法が検討されている。例えば、エポキシ樹脂中に存在する未反応オキシラン環を測定するための方法として、滴定法、IR(赤外分光分析)法が検討されている。ここで、滴定法とは、JIS K 7236に準じて、例えば、被検試料をクロロホルムに溶解し、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、クリスタルバイオレット指示薬溶液を加え、過塩素酸酢酸溶液で滴定する手法等をいう(指示薬滴定法)。なお、指示薬滴定法の代わりに電位差滴定法を用いてもよい。また、過剰塩酸で被検試料の官能基を塩素化処理し、アルカリ試薬で滴定して未反応の塩酸量を知ることで被検試料中の官能基を定量する滴定法もある。これらの滴定法によれば、確かに、エポキシ樹脂のみをサンプルとした場合については、未反応オキシラン環の測定が可能である。しかしながら、上記滴定法は、酸塩基反応を利用した滴定であるので被検試料中に酸性基あるいは塩基性基が存在するとオキシラン環と同様に滴定されてしまう。例えば、エポキシ樹脂の基本骨格中に塩基性基を持つもの(グリシジルアミン化合物のアミノ基等)や、酸性基あるいは塩基性基を構造に含む硬化剤が被検試料中に存在すると正確な定量を行うことができない。一方、IR法とは、試料の赤外分光分析によって得られるIRチャートから目的とする官能基特有のIR吸収ピークを利用する手法である(非特許文献1)。このIR法によれば、確かに、単体化合物の未反応オキシラン環の存在不存在については把握できる。しかしながら、未反応オキシラン環量の正確な測定を行おうとすると、IRチャートにおけるオキシラン環由来のピークと基準となるピークとの対比が必要となる。そして、そのオキシラン環由来のピークは、一般的に910〜915cm−1付近にピークを示すので、被検試料に配合させている化合物由来のピークがオキシラン環由来ピーク付近にあると、配合物のIRチャートからオキシラン環ピークを検出、分離することは不可能となる。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として広く用いられる酸無水物や、多くの有機化合物に含まれる炭素二重結合は、910cm−1付近に大きな吸収ピークを示すものが多い。従って、配合物中にこれらの化合物を有する被検試料のIR法では、エポキシ樹脂中の未反応オキシラン環の正確な定量は不可能である。このように、従来、例えば、エポキシ樹脂中の未反応オキシラン環の正確な測定を行うことは不可能であった。 木材学会誌 Vol.23,No.4,p.187〜192(1977)本発明は、上記現状に鑑み、定量的かつ簡便な有機化合物中の官能基の測定方法を提供することを目的とする。本発明は、有機化合物中の官能基を測定する方法であって、有機化合物中の官能基とハロゲン化水素を化学反応させ、前記官能基にハロゲンを共有結合させる工程、前記ハロゲン化水素と化学反応した有機化合物を洗浄し、未反応のハロゲンを取り除く工程、前記未反応のハロゲン化水素が取り除かれた有機化合物を燃焼させる工程、及び、前記燃焼の後の残留物のハロゲン量を測定する工程を含む有機化合物の官能基の測定方法である。以下に本発明を詳述する。本発明は、有機化合物中の官能基とハロゲン化水素を化学反応させ、該官能基にハロゲンを共有結合させる工程を含む。本明細書において有機化合物とは、炭素原子を構造の基本骨格に有する化合物の総称であり、詳しくは「化学大事典 第9巻、共立出版社製」の有機化合物の項に表記されるものを意味する更に、本発明に好適な有機化合物は前記オキシラン環、オキセタン環、チイラン環、及びエチレンイミン環からなる群から選択される少なくとも1種の官能基の反応を利用して、一次元以上に高分子量化させたもの、又は、上記官能基以外の官能基による反応を利用して、一次元以上に高分子量化させて、かつ、側鎖あるいは主鎖中に前記オキシラン環、オキセタン環、チイラン環、及びエチレンイミン環からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が含まれるものである。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法の測定対象となる官能基としては、ハロゲン化水素と共有結合し得るものであれば特に限定されず、例えば、オキシラン環、オキセタン環、チイラン環、及び、エチレンイミン環等が挙げられる。なかでも、上記官能基がオキシラン環、オキセタン環、チイラン環、及び、エチレンイミン環からなる群から選択される少なくとも1種である場合には、これらの環の歪みのため比較的容易にハロゲン化水素と反応するので、本発明の有機化合物の官能基の測定方法を好適に用いることができる。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法に用いるハロゲン化水素としては特に限定されず、例えば、塩化水素、塩化臭素、塩化ヨウ素、塩化フッ素が挙げられる。このうち、塩化フッ素は、腐食性が強く反応操作を行いにくい。上記ハロゲン化水素は、塩化水素、塩化臭素、及び、塩化ヨウ素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記有機化合物中の官能基とハロゲン化水素を化学反応させ、該官能基にハロゲンを共有結合させる工程は、ハロゲン化水素を確実に反応させるため、溶媒中で行ってもよい。上記溶媒は特に限定されなが、一般的にハロゲン化水素が親水性、有機化合物が疎水性であることから、両親媒性溶媒が好適に用いられる。上記両親媒性溶媒は特に限定されず、例えば、1,4−ジオキサン、ピリジン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。なかでも、1,4−ジオキサン、ピリジンが好適である。本発明の高分子化合物中の官能基の測定方法では、上記ハロゲン化水素を官能基に結合させる工程後、ハロゲン化水素と化学反応した有機化合物を洗浄し、未反応のハロゲンを取り除く工程を行う。上記官能基と結合していないハロゲンが残留していると、被検試料を燃焼させた後に、測定したい官能基と結合していたハロゲンと見分けがつかなくなり、官能基と結合していないハロゲンの分まで官能基があるものとカウントしてしまう。上記洗浄方法は特に限定されず、通常の有機化合物の洗浄方法、即ち分析漏斗を用いる方法、デカンテーション操作を行う方法等が挙げられる。なかでも例えば、反応に使用した溶媒や水、もしくはこれらの両方で数回デカンテーション操作を実施する方法が、効果的に洗浄できることから好適である。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法では、上記洗浄する工程後、未反応のハロゲン化水素が取り除かれた有機化合物を燃焼させる工程を行う。有機化合物を燃焼させることにより、被検試料の有機部分を取り除くことができる。上記燃焼方法は特に限定されず、例えば、JIS K 7229の酸素フラスコ燃焼法に準じた方法等が挙げられる。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法では、上記有機化合物を燃焼させる工程後、燃焼の後の残留物のハロゲン量を測定する工程を行う。上記ハロゲン量の測定方法は特に限定されず、例えば、イオンクロマトグラフィ法、JIS K 7229の電位差滴定法、硝酸銀滴定法等が挙げられる。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法においては、ハロゲン化水素と被検試料中の官能基とが当モル量反応することから、残留物のハロゲン量の測定値から被検試料中に含まれていた官能基の量を算出することができる。本発明の有機化合物中の官能基の測定方法によれば、例えば、硬化後のエポキシ樹脂中に含まれる未反応のエポキシ基の量を極めて容易に測定することができる。本発明によれば、定量的かつ簡便な有機化合物中の官能基の測定方法を提供することができる。以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。本実施例及び比較例では、各評価方法によりエポキシ樹脂について硬化反応後(加熱処理後被検試料)のオキシラン環量を測定し、得られた値と硬化反応前(加熱処理前被検試料)のオキシラン環量とを比較することによりエポキシ基の反応率を算出し、評価方法の実用性の比較を行った。(加熱処理前被検試料の調製)エポキシ樹脂としてYL980(ジャパンエポキシレジン社製)100重量部、エピキュアYH306(ジャパンエポキシレジン社製)60重量部、及び、2MZA(四国化成社製)4重量部を混合して加熱処理前被検試料を得た。該加熱処理前被検試料におけるエポキシ当量EESは、185×164÷100=303.4と算出することができる。(加熱処理後被検試料の調製)加熱処理前被検試料を、170℃のオーブン中で1時間加熱することによって硬化反応を行い、加熱処理後被検試料を得た。加熱処理後被検試料は、縦30mm、横30mm、厚さ0.25mmのサイズに切り出して用いた。(実施例1)塩酸(和光純薬社製、精密分析用)5gと1,4−ジオキサン(和光純薬社製、試薬特級)500gとを混合し、塩酸−ジオキサン溶液を調製した。得られた塩酸−ジオキサン溶液25mlとエタノール(和光純薬社製、試薬特級)25mlとを混合し、そこに上記サイズの加熱処理後被検試料を浸し、23℃で24時間放置した。放置後、加熱処理後被検試料を溶液中から取り出し、精製水で洗浄、その後エタノールで洗浄した。洗浄後、23℃、24時間、加熱処理後被検試料乾燥した。乾燥後の加熱処理後被検試料から、10mgのサンプルを精秤して採取した。JIS K7229 4.1(2)に準拠したろ紙を約25mm角にカットし、精秤したサンプルを包み込んだ。白金バスケットにろ紙で被検試料を包み込んだサンプルをセットした。JIS K7229 4.1(3)に準拠した500ml容量のフラスコで共栓すりと、白金バスケットを備える石英製の酸素フラスコ燃焼装置を準備した。フラスコに0.01%の過酸化水素水を30ml秤り取り、過酸化水素水を飛び散らさない様に、フラスコ内を5分間酸素で置換し、密閉した。白金バスケットにセットしたサンプルを酸素フラスコ内で燃焼させた。燃焼中は、流水中で冷却し、冷却後精製水でフラスコ表面を洗い流した。燃焼終了後、1時間精置した。フラスコを浸透させ、燃焼生成物を過酸化水素水に吸着させた。得られた燃焼生成物について、イオンクロマトグラフィ装置(DIONEX社製)により塩素の量を測定した。加熱処理後被検試料中に含まれる未反応オキシラン環の量として、エポキシ当量(EE)を算出した(JIS K7236 3.定義 参照)。即ち、加熱処理後被検試料中のエポキシ当量EEEは、下記式(1)により算出することができる。 EEE=(3546/x)−36.46 (1) xは、測定された塩素量(wt%)また、オキシラン環反応率Rは、下記式(2)により算出することができる。 R(wt%)=(EEE−EES)×100/EEE (2)なお、上記方法による測定を3回行い、各々の回におけるオキシラン環の反応率(%)と、3回のオキシラン環の反応率の値のバラツキ(標準偏差)を求めた。結果を表1に示した。(比較例1)加熱処理後被検試料約0.5gを密封できる容器中に精秤した。塩酸(和光純薬社製、精密分析用)5gと1,4−ジオキサン(和光純薬社製、試薬特級)500gとを混合し、塩酸−ジオキサン溶液を調製した。得られた塩酸−ジオキサン溶液25mlをホールピペットで容器に加え、密閉してよく混合した。次いで、エタノール(和光純薬社製、試薬特級)をメスシリンダーで加え、良く混合した後、密閉して23℃で24時間静置した。静置後、容器にクレゾールレッド0.1%溶液を約10滴加えた。0.1mol/lのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬社製、容量分析用)を用いて滴定を行った。溶液が黄色から紫になった点を滴定終了点とした。同一条件で空試験を実施した。加熱処理後被検試料のエポキシ当量EEEは、下記式(3)により算出することができる。 EEE=36.46×1000/{[(BT−ST)×f×3.646]/S}(3) S:採取した試料量(g) BT:空試験に要したエタノール性水酸化カリウム溶液の量(ml) ST:本試験に要したエタノール性水酸化カリウム溶液の量(ml) f:0.1mol/lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター得られたエポキシ当量EEEを用い、上記式(2)によりオキシラン環反応率Rを求めた。なお、上記方法による測定を3回行い、各々の回におけるオキシラン環の反応率(%)と、3回のオキシラン環の反応率の値のバラツキ(標準偏差)を求めた。結果を表1に示した。(比較例2)IR法によるオキシラン環の反応率は、通常は以下の方法により評価することができる。即ち、KBr法(詳しくは「機器分析のてびき(1)」(株式会社化学同人社出版)に記載される)により資料を調製した後、FT−IR分光分析装置を用いて測定範囲4000〜650cm−1、分解能4cm−1、スキャン回数32回の条件でIRスペクトルを得る。次いで、得られたIRスペクトルから910〜915cm−1のエポキシ基由来のピーク及び基準となる830cm−1の芳香環由来のピークを同定してその吸光度を求め(A910及びA830)、その吸光度比Dを算出する。加熱処理前被検試料の吸光度比DS及び加熱処理後被検試料の吸光度比DEを求めて、下記式(4)によりオキシラン環の反応率Rを求めることができる。 R(wt%)=(DS−DE)×100/DS (4)しかしながら、加熱処理前被検試料では、910cm−1付近に他の成分の大きなピークが重なるためエポキシ基由来のピークを特定できなかった。また、硬化後被検試料ではエポキシ基由来のピークが小さくて特定が非常に困難であった。結局、IR法では、オキシラン環の反応率Rを求めることはできなかった。表1より、実施例1では、エポキシ樹脂中の未反応オキシラン環の定量的な測定及び反応率の算出が可能であることが確認された。また実験の繰り返しデータは非常に精度の高いものとなった。比較例1でもオキシラン環の反応率Rを求めることは可能であったが、データ間のバラツキが大きく、精度が低いものであった。本発明によれば、定量的かつ簡便な有機化合物中の官能基の測定方法を提供することができる。有機化合物中の官能基を測定する方法であって、有機化合物中の官能基とハロゲン化水素を化学反応させ、前記官能基にハロゲンを共有結合させる工程、前記ハロゲン化水素と化学反応した有機化合物を洗浄し、未反応のハロゲンを取り除く工程、前記未反応のハロゲン化水素が取り除かれた有機化合物を燃焼させる工程、及び、前記燃焼の後の残留物のハロゲン量を測定する工程を含むことを特徴とする有機化合物中の官能基の測定方法。有機化合物中の官能基が、オキシラン環、オキセタン環、チイラン環、及び、エチレンイミン環からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の有機化合物中の官能基の測定方法。ハロゲン化水素が、塩化水素、塩化臭素、及び、塩化ヨウ素からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機化合物中の官能基の測定方法。 【課題】定量的かつ簡便な有機化合物中の官能基の測定方法を提供する。【解決手段】有機化合物中の官能基を測定する方法であって、有機化合物中の官能基とハロゲン化水素を化学反応させ、前記官能基にハロゲンを共有結合させる工程、前記ハロゲン化水素と化学反応した有機化合物を洗浄し、未反応のハロゲンを取り除く工程、前記未反応のハロゲン化水素が取り除かれた有機化合物を燃焼させる工程、及び、前記燃焼の後の残留物のハロゲン量を測定する工程を含む有機化合物中の官能基の測定方法。【選択図】 なし