生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_核酸抽出方法及び核酸抽出キット
出願番号:2009221912
年次:2011
IPC分類:C12N 15/09


特許情報キャッシュ

山田 泰子 中野 敬子 JP 2011067150 公開特許公報(A) 20110407 2009221912 20090928 核酸抽出方法及び核酸抽出キット 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 井上 学 100100310 戸田 裕二 100098660 山田 泰子 中野 敬子 C12N 15/09 20060101AFI20110311BHJP JPC12N15/00 A 18 6 OL 13 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA11 4B024HA20 本発明は生体試料などの核酸を含有する試料から核酸を抽出し精製分離する技術に関する。 感染症の診断やゲノム解析などを目的として,生体材料(前血,尿,スワブなど)から核酸を抽出精製する方法の1つに,カオトロピック塩の存在下で核酸をガラスやシリカゲル粒子へ結合させ核酸を回収する原理に基づく方法がある(非特許文献1参照)。この方法によれば,ヨウ化ナトリウム,過塩素酸ナトリウム,またはグアニジンチオシアン酸塩等の高濃度カオトロピック塩を用いると,DNAがアガロースから単離,精製される(非特許文献2参照)。 核酸は抽出の後に,増幅して数や濃度を増加させることが多い。増幅方法の一つにポリメラーゼ連鎖反応(PCR,Polymerase Chain Reaction)がある。PCRによれば,核酸を配列特異的に増幅することが可能なため,遺伝子診断などに広く応用されている。このPCR法を日常的に臨床で使用する際に,いくつかの問題点が存在する。その中でも核酸精製時に除去できなかった阻害物質の影響で,PCR反応が阻害されることが知られている。阻害物質は,ヘモグロビンなどの検体に含まれる成分や核酸の抽出工程で使用される界面活性剤などである。このような背景から,核酸の抽出および精製工程は重要であると指摘されている(非特許文献3参照)。 核酸は抽出の後に,NASBA法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)に使用されることもある。NASBA法は,転写反応を利用した RNA に特異的な定温核酸増幅法である(非特許文献4参照)。ゲノム DNA の影響を受けることなく鋳型 RNA に相補的な1本鎖アンチセンスRNAが増幅産物として得られる。さらに,増幅効率変動の影響を受け難いという利点を有する。しかしながら,PCR法と同様にヘモグロビンや界面活性剤などの阻害物の影響を受けるため,核酸の抽出および精製工程は重要である。 抽出工程は手動で行われてきたが,その操作が煩雑で熟練性を要することから,病院の検査室などへの新規に遺伝子検査を導入する際の障害となっており,この工程の自動化が望まれている。自動化に適した核酸の抽出方法として,特許文献1,特許文献2に記載の方法および特許文献3に記載の装置を用いた方法がある。さらに,自動化装置による抽出に適した試薬としては,特許文献3に記載の試薬を用いた方法では,高濃度の塩および高濃度のアルコールを含む溶液から分離精製すべき核酸を核酸結合性固相担体に接触させて結合させ,次いで,より低濃度の塩を含む溶液によって核酸結合性固相担体から脱離して目的の核酸を得ることができる。 特許文献3の核酸抽出工程の試薬組成において,カオトロピック剤としてグアニジンチオシアン酸塩と界面活性剤としてTritonX-100(登録商標)などを用いている。特開平11‐127854特開平11‐266864特表平8‐501321Boom,R.(1990)「核酸の迅速で簡易な精製法」.Clin.Microbiol.,28,495-503Vogelstein, B., Gillespice, D.(1979)「アガロースからのDNAの調製的および分解的精製」,Proc.Natl. Acad.Sci.,USA 76,615-619大島ほか,JJCI. A,22(2),145 - 150(1997)Compton J, Nucleic acid sequence-based amplification. Nature, 1991, (7), 350, 91-92 特許文献3に記載の試薬を用いた核酸の精製分離方法では,核酸の抽出率が低いという問題があった。また,特許文献1に記載の抽出用チップを用いた方法では,高濃度の塩および高濃度のアルコールを含む溶液から分離精製すべき核酸を結合させる工程がある。この工程で,溶液の起泡性が高いために核酸を含む泡の飛沫でサンプル間のコンタミネーションが生じることや,核酸結合性固相担体の液面を検知する際に,溶液の泡を液面として誤って検知してしまう問題があった。そこで,核酸を含有する生物材料からの核酸の抽出率を向上させるとともに,コンタミ防止による精度向上,液面検知精度向上,操作性向上,核酸抽出までの時間を短縮,試薬使用量低減による低コスト化が求められていた。 本発明では,核酸結合性固相担体の状態によらず抽出性能を向上する核酸抽出方法を提供することを目的とする。 本発明では,上記課題を解決するために,リボ核酸またはデオキシリボ核酸を含有する材料からの核酸を回収する核酸抽出方法において,第1の混合溶液に含まれる核酸を固相担体に吸着させる工程と,エタノールを含む第2の溶液を用いて前記核酸を吸着した担体を洗浄する工程と,前記洗浄した担体に吸着した核酸を溶出させて回収する工程とを含み,前記核酸を担体に吸着させる工程で,前記第1の混合溶液は,カオトロピック塩,緩衝溶液,界面活性剤の混合溶液とリボ核酸を含有する材料に加えたものであり,当該界面活性剤は,HLB値が3.5<HLB≦20の非イオン性界面活性剤であり,炭素数やPOE鎖長が後述の所定の範囲の界面活性剤を用いたものであることを特徴とする核酸抽出方法を提供する。 界面活性剤の役割には,下記4つがある。 1.タンパク質や脂質など検体に含まれる核酸以外の疎水性の夾雑物を可溶化。 2.大気中やカラムの材料からシリカに付着した有機物を可溶化。 3.カオトロピック剤が核酸とシリカに付着した水を除去する。除去された水を界面活性剤の親水基が取り込む。 4.高濃度のカオトロピック塩の析出防止。 上記1〜3は核酸とシリカの結合を促進または強固にして抽出率を向上する。特に,2.の役割によって経時劣化で核酸結合性固相担体の状態が変わっても安定した抽出率を得られる。 また,上記4.により再溶解が不要となり,操作性が向上して抽出工程の時間短縮に繋がる。 HLB値(Hydrophile-Lipophile Balance)は非イオン性界面活性剤の親水-疎水性のバランスを表す値で,値が大きいと親水性が高い。HLB値が高いと上記4つの役割が増強されると考えられるため,抽出性能を向上する。これは,疎水基(アルキル基長)の絶対値をみて,疎水基長が長い方が疎水性のタンパク質や脂質となじみやすく,さらに,HLB値が高いことで水に溶解しやすくなるためである。 また,POE(Polyoxyethylene)鎖が長いと親水性が高くなるため,上記4つの役割を増強するには望ましい。 非イオン性界面活性剤の一つであるノニルフェニルポリオキシエチレンエーテルCnH2n+1(OE)mHのとき,POE鎖の長さmが15で起泡性は最大となる。また,mが15〜100で起泡性は低くなる。また,脂肪酸炭素数の起泡性は炭素数が増加するにつれて高くなり,C14のとき最大をとり,さらにCが増加すると低くなる。これらの知見から,抽出率向上と起泡性を低くする観点で,親水基と炭素数の適正値としてHLB値が13.5より大きいことが望ましい。さらには,18以上20以下がより望ましい。ここで炭素数の適正値としては,POE鎖長mは12〜85,または炭素数nは12〜55であることが望ましい。さらには,POE鎖長は30〜50がより望ましい。 また,カラムなどの容器へ微量の溶液を精度良く注入する際,液面検知の精度向上とコンタミ防止が重要であるが,起泡性が低いことで達成できる。 本発明により,核酸を含有する生物材料からの核酸の抽出率を向上させるとともに,分注が容易となる。また,コンタミネーションが混入することや核酸結合性固相担体の液面を検知する際の誤検知を防止できる。本発明の実施例での核酸抽出プロセスを説明する図である。本発明の実施例で用いる核酸捕捉用カラムのモデルである。本発明の実施例1において,エマルゲン130k濃度によるRNA抽出率である。本発明の実施例6において,界面活性剤種類によるロバスト性評価である。本発明の比較例において,pHによる抽出率である。本発明の比較例において,HLB値による抽出率である。本発明の実施例、比較例で用いる界面活性剤のpH、HLB値、POE鎖長の一覧である。 以下,本発明の実施例を説明する。実施例で用いる界面活性剤のpH,HLB値,POE鎖長は,図7に示してある。 核酸抽出のフローチャートを図1に示す。核酸抽出は,溶解工程,結合工程,洗浄工程,溶出工程の順に行う。 <溶解工程> 本発明の核酸の精製分離方法では,核酸を含有する生物材料,高濃度の塩,および界面活性剤を含む混合溶液から核酸を核酸結合性固相担体に結合させ,水溶液からなる溶出液によって核酸を核酸結合性固相担体から溶出させる。 核酸を含有する生物材料としては,全血,血清,喀痰,尿等,生体組織,培養細胞,培養細菌等の生物試料,あるいは,素精製状態のRNA,DNAを含む物質等を対象とすることができる。 生物材料の溶解は,乳鉢,超音波,マイクロウェーブ,ホモジナイザーなどによる物理的な方法,あるいは,界面活性剤,タンパク質変性剤などによる化学的な方法,あるいは,タンパク質分解酵素による生化学的な方法,及び,それらを組み合わせた方法により行われる。 <結合工程> 本発明では,リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)を捕捉する結合試薬(混合溶液)に界面活性剤を含む。本発明の核酸抽出方法では,核酸結合性固相担体と核酸の選択的結合効果に基づくものであり,この効果は所定濃度のカオトロピック剤と界面活性剤の存在下で得られる。 核酸結合性固相担体としては,ガラス粒子,シリカ粒子,ガラス繊維濾紙,シリカウール,あるいは,それら破砕物,ケイソウ土など,酸化ケイ素を含有する物質が好ましく例示される。以下では,酸化ケイ素を含有する好ましい材料を総称してシリカと呼ぶ。 混合溶液と核酸結合性固相担体の接触は,固相と混合溶液を容器内で攪拌,混合する方法,あるいは,固相を固定化したカラムなどに混合溶液を通過させる方法により行う。固相と混合溶液を接触させた後,固相と混合溶液を分離する。 <洗浄工程> 核酸が結合した核酸結合性固相担体の洗浄は,例えば,固相に洗浄液を接触させた後,固相から洗浄液を分離することで行う。 洗浄液は固相に結合した核酸を溶出せず,且つ,非特異的結合物の除去を効率的に行う。 <溶出工程> 核酸を核酸結合性固相担体から溶出する手段は,固相に溶出液を接触させ,固相に結合した核酸を溶出液へ溶出させた後,固相から溶出液を分離することで行う。溶出液としては,核酸分解酵素除去,あるいは核酸分解酵素失活化処理を行った水や低塩濃度緩衝液などを用いる。また,溶出を加温下で行うことにより,溶出効率は向上する。 核酸を溶出させた溶出液は,増幅工程の反応液としてPCR,NASBAなどに用いることができる。 本発明を生物材料からRNAを抽出する場合を例として説明する。RNA選択的抽出方法はシリカとRNAの選択的結合効果に基づくものであり,この効果は所定濃度のカオトロピック剤と所定濃度の界面活性剤の存在下で得られる。 RNAを含有する生物材料としては,血清を対象として実施例を説明する。 血清の溶解は,界面活性剤,タンパク質変性剤などによる化学的な方法により行われる。 カオトロピック剤としては,グアニジンチオシアン酸塩を用いる。 界面活性剤としては,ポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル(エマルゲン130k),ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル(エマルゲン430),ポリオキシエチレン(85)モノテトラドデシルエーテル(エマルゲン4085),ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)(エマノーンCH‐60(k)),ポリオキシエチレン(12)モノラウレート(エマノーン1112),ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)(エマノーンCH‐40),ポリオキシエチレン(10)モノオレート(エマノーン4110),(全て花王(株)製,エマルゲン及びエマノーンは登録商標)を用いる。濃度は,10vol%以上が望ましい。 カオトロピック剤としてグアニジンチオシアン酸塩,4.0mol/L,界面活性剤濃度10〜50%において,高純度のRNAが良好な抽出率で得られる。特に,混合液におけるグアニジンチオシアン酸塩濃度を4.0mol/L,エマルゲン130k濃度を20%においては,RNAが高抽出率で得られる。 核酸結合性固相担体としてはガラス繊維濾紙を用いる。 洗浄液1には,より高濃度のカオトロピック剤として5M GuSCN,低濃度の界面活性剤TritonX-100 10%,25mMのEDTA,1.0(wt/v)% SDS(Sodium Dodecyl Sulfate),100mM MES(pH4.5)を用いる。 洗浄液2には,エチルアルコール 70vol%,酢酸カリウム水溶液15mM の混合溶液を用いる。 溶出工程で使用する溶出液には,Tris 緩衝溶液 10mM (pH8.0),EDTA 1mMの混合溶液を用いる。 本発明のさらに望ましい形態としては,以下のものがある。 結合工程の溶液が酸性側であると抽出率が高い。しかしながら,酸性が強すぎると核酸が不安定となるため,核酸を含む混合溶液のpHは4.7‐8.0であることが望ましい。 また,溶液の高濃度の塩が結晶化しやすいため,使用者が使用前に試薬を再溶解しなければならず作業工程を増加し,操作が煩雑であった。また,核酸結合性固相担体により核酸吸着能にばらつき,経時的に核酸吸着能が低下する問題があった。 これに対し,上記したような溶液を用いることにより,溶液が結晶化しないため使用前の試薬の再溶解が不要で使用者の取り扱いが容易,抽出時間を短縮,使用量低減できるため低コストであり,担体の状態によらず抽出率を向上する核酸抽出方法を提供できる。 本実施例では,カオトロピック剤としてグアニジンチオシアン酸塩を用いた血清からのRNA抽出を行う。 以下,実施例を用いて本発明に関わる核酸回収方法及び核酸回収装置を説明するが,本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。 <RNAの抽出> 核酸抽出のフローチャートを図1に示す。核酸抽出は,溶解工程,結合工程,洗浄工程,溶出工程の順に行う。 溶解工程として,20ng/μL Total RNA, Mouse Liver (ユニーテック(株)社製)をTris-EDTA(pH8.0)の緩衝液に溶解してRNA溶液を生成する。RNA溶液に細胞溶解液(グアニジンチオシアン酸塩4mol/L,10mmol/L MES,pH4.5)と結合溶液の混合溶液800μLを添加し,細胞内の核酸を遊離状態とする。この時,混合液におけるグアニジンチオシアン酸塩濃度は4mol/L,エマルゲン130k濃度は,10〜50vol%となる。 結合工程として,図2に示すようなポリプロピレン製先端部2,3に核酸結合性固相担体としてシリカフィルタ3(Whatman社製 GF/F)を挿入した核酸捕捉用カラム4に,遊離状態の核酸,細胞溶解液,結合試薬を含む溶液を排出することで核酸と固相担体を接触させ分離する。 洗浄工程として,核酸捕捉用カラムにより核酸結合性固相担体を洗浄する。粒子状またはガラス繊維製濾紙,顆粒状の核酸結合性固相担体を用いた場合には,洗浄液1 1200μLを排出することで,固相と洗浄液を接触させ分離し,固相の非特異的結合物を除去する。 続いて,核酸捕捉用カラムにより洗浄液2 1400μLを2回排出することで,固相と洗浄液を接触させ分離し,固相の非特異的結合物を除去する。 溶出工程として,核酸捕捉用カラムにより溶出液(緩衝溶液Tris−EDTA(pH8.0)50μLを排出することで固相と溶出液を接触させ分離し,精製状態の核酸を含む溶出液を得る。 <抽出したRNAの定量> 溶出液の一部を蛍光試薬Quant-iT RiboGreen RNA Reagent (Molecular Probes Invitorogen detection technologies社製)と反応させ,濃度既知のRNAの蛍光強度と比較し,添加した抽出したRNA質量からRNA抽出率を算出した。結果を図3に示す。 図3より,エマルゲン130k 20vol%を用いた場合,RNAが高抽出率で得られることが示される。エマルゲン130kは,TritonX-100(ユニオンカーバイド社製,登録商標),Tween20よりも親水部(POE鎖)が大きい。POE鎖のエーテル酸素原子は,水の水素原子と水素結合を形成して溶解する。 カオトロピック剤が核酸の水和水を除去し,シリカに結合を促進するといわれており,POE鎖も核酸周囲の水を除去し核酸-シリカの結合を促進したことで,核酸抽出率が向上したと考えられる。 本実施例では,界面活性剤としてエマルゲン430(花王(株)製,HLB値16.2,POE鎖長30)を用いた。<手順> 実施例1のエマルゲン130をエマルゲン430に換え,他は実施例1と同様の方法で行った。<結果>抽出率はエマルゲン430濃度20%のとき,73%とTritonX-100よりも高くなった。 本実施例では,界面活性剤としてエマノーンCH-60(k)(花王(株)製)を用いた。<手順> 実施例1のエマルゲン130をエマノーンCH-60(k)に換え,他は実施例1と同様の方法で行った。<結果> 抽出率はエマノーンCH‐60(k)濃度10%,20%のときとほぼ同じだった。界面活性剤濃度10%に低減しても,TritonX-100の20%のときと抽出率はほぼ同じとなった。 界面活性剤の起泡性を評価した。<手順> 核酸捕捉用カラム4に結合溶液を通液し,通液後の泡の長さを測定した。評価対象の界面活性剤としては,エマルゲン130k,エマルゲン430,エマルゲン4085,エマノーンCH‐60(k),エマノーン1112,TritonX-100を用いた。<結果> 泡の高さ比較を表1に示す。泡の長さ,4cm以上を×とした。TritonX-100よりも起泡性は低い。 界面活性剤の結晶化のしやすさを評価した。<手順> 結合溶液の保管条件を10〜25℃にして目視により結晶が析出しているかを確認した。評価対象の界面活性剤は,実施例4と同じである。<結果> 結晶化のしやすさを表2に示す。 10℃にしたとき,TritonX-100では結晶が析出したが,エマルゲンとエマノーンは析出しなかった。 界面活性剤の,核酸結合性固相担体の表面状態によらず抽出率を高く確保できるとかどうかのロバスト性を評価した。長期保管したカラムで抽出した時の抽出率を調べた。<手順> 約6ヶ月保管した核酸捕捉用カラム4を用いて抽出した。<結果> 図4に示すように,エマルゲン,エマノーンは,TritonX-100と比較してばらつきが小さく,抽出率が向上した。比較例1 本実施例では,アミド系の非イオン性界面活性剤を用いた。<手順> 実施例1と同様の方法で行った。アミド系の非イオン性界面活性剤として,アミート102花王(株)製),アミノーンPK-02S(花王(株)製,登録商標),スタホームDFC(日油(株)製),ニッサンアノンGLM-R-LV(日油(株)製,登録商標)とエマルゲンを比較した。界面活性剤濃度は20 vol%である。<結果> アミド含有の界面活性剤は,抽出率20%以下と低かった。これは結合溶液の液性がアルカリ性となっていたためと考えられる。比較例2 本実施例では,各種非イオン性界面活性剤を用いてHLB値による抽出率を比較した。<手順> 実施例1と同様の方法で行った。比較した界面活性剤は比較例1と同じである。<結果> HLB値が10.8以下の界面活性剤は抽出率が20%以下と低かった。HLB値が13.5以上の界面活性剤は抽出率が60%以上と高い。親水性が高いため,抽出率が高くなったと考えられる。<実施例1,2,比較例1,2のまとめ> 図5に実施例1,2と比較例1,2のにおける,pHとRNA抽出率の関係を,図6に実施例1,2と比較例1,2のにおける,HLBとRNA抽出率の関係を示す。これによると,HLB値が13.5<HLB≦20であるとき,及びpHが4.7−8.0であるときにRNA抽出率が高くなることがわかる。1・・・ポリプロピレン製核酸結合性固相支持体,2・・・核酸捕捉用カラム母体,3・・・核酸結合性固相担体,4・・・核酸捕捉用カラム,5・・・精製核酸回収容器。 リボ核酸またはデオキシリボ核酸を含有する材料からの核酸を回収する核酸抽出方法において, 混合用液である第1の溶液に含まれる核酸を固相担体に吸着させる工程と, エタノールを含む第2の溶液を用いて前記核酸を吸着した担体を洗浄する工程と, 前記洗浄した担体に吸着した核酸を溶出させて回収する工程とを含み, 前記第1の溶液は,カオトロピック塩,緩衝溶液,界面活性剤の混合溶液とリボ核酸を含有する材料に加えたものであり,当該界面活性剤は,HLB値が13.5<HLB≦20の非イオン性でありPOE鎖の長さaが12≦a≦85である界面活性剤を用いたものであることを特徴とする核酸抽出方法。 前記界面活性剤のHLB値が18≦HLB≦20あり,POE鎖の長さaが30≦a≦50であることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。 リボ核酸またはデオキシリボ核酸を含有する材料からの核酸を回収する核酸抽出方法において, 混合用液である第1の溶液に含まれる核酸を固相担体に吸着させる工程と, エタノールを含む第2の溶液を用いて前記核酸を吸着した担体を洗浄する工程と, 前記洗浄した担体に吸着した核酸を溶出させて回収する工程とを含み, 前記第1の溶液は,カオトロピック塩,緩衝溶液,界面活性剤の混合溶液とリボ核酸を含有する材料に加えたものであり,当該界面活性剤は,HLB値が13.5<HLB≦20の非イオン性であり炭化水素鎖の長さnが12≦n≦55である界面活性剤を用いたものであることを特徴とする核酸抽出方法。 前記界面活性剤のHLB値が18≦HLB≦20であることを特徴とする請求項3に記載の核酸抽出方法。 前記第1の溶液は,pHが4.7−8.0であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の核酸抽出方法。 前記第1の溶液は,界面活性剤の濃度が10vol%以上であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の核酸抽出方法。 前記界面活性剤が,ポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(85)モノテトラドデシルエーテル,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.),ポリオキシエチレン(12)モノラウレート(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.),ポリオキシエチレン(10)モノオレート)の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の核酸抽出方法。 前記カオトロピック剤が,ヨウ化カリウム,グアニジン塩酸塩,及びグアニジンチオシアン酸塩の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の核酸抽出方法。 前記担体が,シリカ,アルミナ,ゼオライト,及び二酸化チタンの少なくとも一つを材料とすることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の核酸抽出方法。 リボ核酸またはデオキシリボ核酸を含有する材料からの核酸の回収に用いる核酸抽出キットにおいて, カオトロピック塩と,非イオン性界面活性剤と,HLB値が13.5<HLB≦20の直鎖構造の非イオン性でありPOE鎖の長さaが12≦a≦85である界面活性剤とを含む第1の溶液と,核酸を吸着させるための担体と, エタノールを含む第2の溶液と, 前記担体に吸着した核酸を,前記担体から遊離させるための溶出液とを有することを特徴とする核酸抽出キット。 前記界面活性剤のHLB値が18≦HLB≦20あり,POE鎖の長さaが30≦a≦50であることを特徴とする請求項10に記載の核酸抽出キット。 リボ核酸またはデオキシリボ核酸を含有する材料からの核酸の回収に用いる核酸抽出キットにおいて, カオトロピック塩と,非イオン性界面活性剤と,HLB値が13.5<HLB≦20の直鎖構造の非イオン性であり炭化水素鎖の長さnが12≦n≦55である界面活性剤とを含む第1の溶液と,核酸を吸着させるための担体と, エタノールを含む第2の溶液と, 前記担体に吸着した核酸を,前記担体から遊離させるための溶出液とを有することを特徴とする核酸抽出キット。 前記界面活性剤のHLB値が18≦HLB≦20であることを特徴とする請求項12に記載の核酸抽出キット。 前記第1の溶液は,pHが4.7−8.0であることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の核酸抽出キット。 前記第1の溶液は,界面活性剤濃度が10vol%以上であることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の核酸抽出キット。 前記界面活性剤が,ポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(85)モノテトラドデシルエーテル,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.),ポリオキシエチレン(12)モノラウレート(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.),ポリオキシエチレン(10)モノオレート)の少なくとも一つであることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の核酸抽出キット。 前記カオトロピック剤が,ヨウ化カリウム,グアニジン塩酸塩,及びグアニジンチオシアン酸塩の少なくとも一つであることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の核酸抽出キット。 前記担体が,シリカ,アルミナ,ゼオライト,及び二酸化チタンの少なくとも一つを材料とすることを特徴とする請求項10または請求項12に記載の核酸抽出キット。 【課題】 核酸の精製分離方法では,核酸結合性固相担体により核酸吸着能にばらつきが生じることと,経時的に核酸吸着能が低下する問題があった。【解決手段】 本発明では,遊離状態の核酸を含有する生物材料に,所定濃度のカオトロピック剤と所定濃度の界面活性剤を添加,混合し,混合液に核酸結合性固相担体を接触させ,核酸が結合した核酸結合性固相担体を洗浄し,核酸が結合した核酸結合性固相担体から核酸を溶出させる。このとき,界面活性剤としてHLB値が13.5<HLB≦20の非イオン性界面活性剤であり,POE鎖の長さaが12≦a≦85または炭化水素鎖の長さnが12≦n≦55である界面活性剤を用いる。【選択図】 図6


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